説明

車両用懸架装置

【課題】 第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングを有する車両用懸架装置において、油圧ジャッキで第1ばねの撓みをロックした後、第2ばねのばね荷重を調整するとき、第1ばねのガタを生じさせないようにすること。
【解決手段】 車両用懸架装置100Aにおいて、油圧ジャッキ40が、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングを有する車両用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用懸架装置として、特許文献1に記載の如く、第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングを有してなるものがある。このような車両用懸架装置は、図8に示す如くに構成され、ダンパ1を有する。ダンパ1は、シリンダ1Aにピストンロッド1Bを挿入し、ピストンロッド1Bのシリンダ1Aへの挿入端にピストン1Cを固定し、このピストン1Cに設けた減衰力発生装置1Dによりシリンダ1Aとピストンロッド1Bの伸縮動作に伴う減衰力を発生させる。また、この車両用懸架装置は、ダンパ1の外側に設けられる懸架スプリング2を有する。懸架スプリング2はダンパ1の軸方向にて直列配置される第1ばね2A(ばね定数K1)と第2ばね2B(ばね定数K2)とからなる。また、この車両用懸架装置では、ダンパ1の外側に設けられ、第1ばね2Aの一端が着座する第1ばね受3Aと、第1ばね2Aの他端と第2ばね2Bの一端との間に介装される第2ばね受3Bと、第2ばね2Bの他端が着座する第3ばね受3Cとを有する。
【0003】
そして、この車両用懸架装置では、ダンパ1の外側に油圧ジャッキ4を設けている。油圧ジャッキ4は、油圧源からの油圧を供給される油圧室5Aをシリンダ1Aの外周に固定したハウジング5に設けるとともに、この油圧室5Aに挿入されてダンパ1の軸方向に突き出されるプランジャ6を有する。第1ばね受3Aはハウジング5の開口端に支持され、第2ばね受3Bはプランジャ6の担持部6Aに担持可能にされている。第3ばね受3Cはピストンロッド1Bにおけるシリンダ1Aからの突出部に固定されている。
【0004】
この車両用懸架装置によれば、懸架スプリング2の合成ばね定数Kが、K=K1×K2/(K1+K2)になるから、第1ばね2Aのばね定数K1と、第2ばね2Bのばね定数K2を個別に選択することにより、合成ばね定数Kを多様に変更させる自由度が向上し、車両の乗り心地を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-331694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車両用懸架装置では、油圧ジャッキ4のプランジャ6をハウジング5の油圧室5Aに没入させる状態(図8(A))で、第1ばね2Aの一端が着座する第1ばね受3Aをハウジング5の開口端に支持し、第1ばね2Aの他端と第2ばね2Bの一端に挟まれる第2ばね受3Bをダンパ1の軸方向にてフリーにし、第2ばね2Bの他端が着座する第3ばね受3Cをピストンロッド1Bに固定しており、懸架スプリング2のばね定数を第1ばね2Aと第2ばね2Bの合成ばね定数Kに設定するものになる。
【0007】
この車両用懸架装置においては、油圧ジャッキ4のプランジャ6をハウジング5の油圧室5Aから突き出し、プランジャ6の担持部6Aにより第2ばね受3Bを担持する状態(図8(B))で、ダンパ1の軸方向に作用する車両荷重が、第2ばね2Bを介して、第2ばね受3Bから油圧ジャッキ4のプランジャ6に直に支持され、第1ばね2Aを伸縮させない、換言すれば、第1ばね2Aの撓みをロックするものになる。このとき、懸架スプリング2のばね定数は第2ばね2Bのばね定数K2に設定替えされたものになる。
【0008】
この車両用懸架装置において、油圧ジャッキ4のプランジャ6をハウジング5の油圧室5Aから更に突き出せば、油圧ジャッキ4のプランジャ6が第2ばね受3Bを持ち上げる状態(図8(C))になり、第2ばね2Bのプリセット長さを短くし、結果として第2ばね2Bのばね荷重を調整できるものになる。
【0009】
しかしながら、油圧ジャッキ4のプランジャ6により第1ばね2Aの撓みをロックした後、更に第2ばね2Bのばね荷重を調整したとき、図8(C)に示す如く、油圧ジャッキ4のプランジャ6により持ち上げられた第2ばね受3Bが第1ばね受3Aに対してなす間隔が第1ばね2Aの自由長より大きくなると、第1ばね2Aが第1ばね受3Aと第2ばね受3Bの間でガタを生じてしまう。ガタを生じた場合、第1ばね2Aと第1ばね受3A又は第2ばね受3Bの間に、ガタを抑えるばね等を装填する必要がある。
【0010】
本発明の課題は、第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングを有する車両用懸架装置において、油圧ジャッキで第1ばねの撓みをロックした後、第2ばねのばね荷重を調整するとき、第1ばねのガタを生じさせないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、シリンダにピストンロッドを挿入し、シリンダとピストンロッドの伸縮動作に伴い減衰力を生じるダンパと、ダンパの外側に設けられ、ダンパの軸方向にて直列配置される第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングと、ダンパの外側に設けられ、第1ばねの一端が着座する第1ばね受と、第1ばねの他端と第2ばねの一端との間に介装される第2ばね受と、第2ばねの他端が着座する第3ばね受とを有し、ダンパの外側に設けられる油圧ジャッキとを有してなる車両用懸架装置において、油圧ジャッキが、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にするようにしたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出されるプランジャを有し、プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部と、第2ばね受を担持する第2担持部とを備えるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されて並置され、ダンパの軸方向に突き出される第1プランジャと第2プランジャを有し、第1プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部を備え、第2プランジャが第2ばね受を担持する第2担持部を備えるとともに、第2プランジャは第2担持部が第2ばね受を担持する突き出し状態下で、第1プランジャに対し該第1プランジャを突き出す方向にて係合するようにしたものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において更に、前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなすようにしたものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第1プランジャを有し、この第1プランジャが第1ばねを担持する第1担持部を備え、油圧源からの油圧を供給されるサブ油圧室を第1プランジャ内に設けるとともに、このサブ油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第2プランジャを有し、この第2プランジャが第2ばねを担持する第2担持部を備えるようにしたものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において更に、前記第1プランジャの第1担持部と第2プランジャの第2担持部により、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にするようにしたものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において更に、前記第1プランジャの第1担持部により第1ばね受を担持するとともに、第2プランジャの第2担持部を第2ばね受から離隔させた状態で、第1ばねと第2ばねを圧縮し、それらの合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行可能にするようにしたものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれかに係る発明において更に、前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞状の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなすようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1)
(a)車両用懸架装置において、油圧ジャッキが、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする。
【0020】
従って、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行しているとき、第1ばね受と第2ばね受の間隔が第1ばねの自由長以下に設定されており、第1ばねのガタを生じさせることがない。
【0021】
(請求項2)
(b)前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出されるプランジャを有し、プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部と、第2ばね受を担持する第2担持部とを備える。
【0022】
これにより、油圧ジャッキのプランジャをハウジングの油圧室から突き出し、プランジャの第1担持部と第2担持部により、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0023】
更に、油圧ジャッキのプランジャをハウジングの油圧室から突き出せば、第1ばね受と第2ばね受の間隔が第1ばねの自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0024】
(請求項3)
(c)前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されて並置され、ダンパの軸方向に突き出される第1プランジャと第2プランジャを有し、第1プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部を備え、第2プランジャが第2ばね受を担持する第2担持部を備えるとともに、第2プランジャは第2担持部が第2ばね受を担持する突き出し状態下で、第1プランジャに対し該第1プランジャを突き出す方向にて係合する。
【0025】
これにより、油圧ジャッキの第1プランジャと第2プランジャをハウジングの油圧室から突き出し、第1プランジャの第1担持部と第2プランジャの第2担持部により、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0026】
更に、油圧ジャッキの第1プランジャと第2プランジャをハウジングの油圧室から突き出せば、第1ばね受と第2ばね受の間隔が第1ばねの自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0027】
(請求項4)
(d)前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなす。
【0028】
油圧ジャッキのプランジャが外側環状体をなす第1プランジャと、内側環状体をなす第2プランジャに2分され、第2プランジャは第2担持部が第2ばね受を担持する突き出し状態下で、第1プランジャに対し該第1プランジャを突き出す方向にて係合する。従って、第1プランジャの最大突き出し量を、第2プランジャが第1プランジャに対し突き出し方向にて係合するまでの単独突き出し量分だけ短縮でき、ハウジングにおける第1プランジャの収容高さをその分だけ短縮できる。
【0029】
また、第2プランジャはハウジングへの格納時に、第1プランジャの内周側に対し、該第2プランジャの上述の単独突き出し量分だけ重ねるように納められ、ハウジングにおける第2プランジャの収容高さをその分だけ短縮できる。
【0030】
これらにより、油圧ジャッキのハウジングの高さを短縮でき、ひいては車両用懸架装置の全長を短縮し、車両への組込性を向上できる。
【0031】
(請求項5、6)
(e)前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第1プランジャを有し、この第1プランジャが第1ばねを担持する第1担持部を備え、油圧源からの油圧を供給されるサブ油圧室を第1プランジャ内に設けるとともに、このサブ油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第2プランジャを有し、この第2プランジャが第2ばねを担持する第2担持部を備える。
【0032】
これにより、油圧ジャッキの第2プランジャを第1プランジャのサブ油圧室から突き出し、第1プランジャの第1担持部と第2プランジャの第2担持部により、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0033】
更に、油圧ジャッキの第1プランジャをハウジングの油圧室から突き出せば、第2プランジャの第2担持部が第2ばね受を担持しながら、第1プランジャがこの第2プランジャを伴って突き出るものになり、第1ばね受と第2ばね受の間隔が第1ばねの自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0034】
(請求項7)
(f)前記第1プランジャの第1担持部により第1ばね受を担持するとともに、第2プランジャの第2担持部を第2ばね受から離隔させた状態で、第1ばねと第2ばねを圧縮し、それらの合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行する。
【0035】
即ち、油圧ジャッキの第1プランジャをハウジングの油圧室から突き出せば、第2プランジャの第2担持部が第2ばね受から離隔した状態で、第1プランジャがこの第2プランジャを伴って突き出るものになり、第1ばねと第2ばねの合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行できる。
【0036】
(請求項8)
(g)前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞状の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなす。
【0037】
即ち、第2プランジャを第1プランジャの内側に重ねるように設置するものになり、油圧ジャッキの全体高さを短縮でき、ひいては車両用懸架装置の全長を短縮し、車両への組込性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は実施例1の車両用懸架装置を示す断面図である。
【図2】図2は車両用懸架装置の第1ばねロック動作と第2ばね調整動作を示す断面図である。
【図3】図3は実施例2の車両用懸架装置を示す断面図である。
【図4】図4は車両用懸架装置の第1ばねロック動作と第2ばね調整動作を示す断面図である。
【図5】図5は実施例3の車両用懸架装置を示す断面図である。
【図6】図6は車両用懸架装置の合成ばね調整動作を示す断面図である。
【図7】図7は車両用懸架装置の第1ばねロック動作と第2ばね調整動作を示す断面図である。
【図8】図8は従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施例1)(図1、図2)
図1に示す車両用懸架装置100Aは、ダンパ10を有する。ダンパ10は、シリンダ11にピストンロッド12を挿入し、ピストンロッド12のシリンダ11への挿入端に固定したピストン13をシリンダ11の内部の油室14内にて移動可能にし、このピストン13に設けた減衰力発生装置15によりシリンダ11とピストンロッド12の伸縮動作に伴う減衰力を発生させる。シリンダ11は車体側取付部材11Kを備え、ピストンロッド12は車輪側取付部材12Kを備える。
【0040】
また、車両用懸架装置100Aは、シリンダ11における油室14の上部に体積補償室16を区画するセパレータ17を備える。体積補償室16は、セパレータ17に設けたダイヤフラム18により区画される油溜室16Aと気体室16Bとからなり、油溜室16Aはセパレータ17に設けたオリフィス孔19により油室14と連通している。
【0041】
また、車両用懸架装置100Aは、ダンパ10の外側に設けられる懸架スプリング20を有する。懸架スプリング20は、ダンパ10の軸方向にて直列配置される第1ばね21(ばね定数K1)と第2ばね22(ばね定数K2)とからなる。車両用懸架装置100Aにあっては、懸架スプリング20の合成ばね定数Kが、K=K1×K2/(K1+K2)になるから、第1ばね21のばね定数K1と、第2ばね22のばね定数K2を個別に選択することにより、合成ばね定数Kを多様に変更させる自由度が向上し、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0042】
更に、車両用懸架装置100Aは、ダンパ10の外側に設けられ、第1ばね21の一端が着座する第1ばね受31と、第1ばね21の他端と第2ばね22の一端との間に介装される第2ばね受32と、第2ばね22の他端が着座する第3ばね受33とを有する。
【0043】
そして、車両用懸架装置100Aは、ダンパ10の外側に油圧ジャッキ40を設けている。油圧ジャッキ40は、シリンダ11に固定の外周スリーブ11Aに取着したハウジング41を一端閉塞の筒状体とし、このハウジング41の内部に油圧室42を形成し、外部油圧源の油圧を配管43により油圧室42に給排し、この油圧室42に挿入してあるプランジャ50をダンパ10の軸方向に突き出し可能にする。プランジャ50はハウジング41の内周とシリンダ11の外周スリーブ11Aのそれぞれに液密に摺動する環状体をなす。
【0044】
ここで、車両用懸架装置100Aは、第1ばね受31を油圧ジャッキ40のハウジング41の開口端、又はハウジング41の油圧室42から突き出されたプランジャ50の第1担持部51に担持される。第2ばね受32はプランジャ50の突き出し方向にて第1担持部51より突出している第2担持部52に担持される。第3ばね受33はピストンロッド12におけるシリンダ11からの突出部に固定される。
【0045】
即ち、車両用懸架装置100Aにあっては、油圧ジャッキ40が、油圧源からの油圧を供給される油圧室42をハウジング41内に設けるとともに、この油圧室42に挿入されてダンパ10の軸方向に突き出されるプランジャ50を有する。
【0046】
そして、プランジャ50が第1ばね受31を担持する第1担持部51と、第2ばね受32を担持する第2担持部52を備える。
【0047】
車両用懸架装置100Aは、初期状態で、図2(A)に示す如く、油圧ジャッキ40のプランジャ50をハウジング41の油圧室42に没入させ、第1ばね21の一端が着座する第1ばね受31をハウジング41の開口端に支持し、第1ばね21の他端と第2ばね22の一端に挟まれる第2ばね受32をダンパ10の軸方向にてフリーにしている。これにより、懸架スプリング20のばね定数を第1ばね21と第2ばね22の合成ばね定数Kに設定するものである。
【0048】
以下、車両用懸架装置100Aにおける第1ばねロック動作と第2ばね調整動作について説明する。
A.第1ばねロック動作(図2(B))
油圧ジャッキ40において、上述の初期状態下で、油圧源からの油圧を油圧室42に供給し、プランジャ50をダンパ10の軸方向に突き出す。
【0049】
これにより、プランジャ50の第1担持部51と第2担持部52のそれぞれが第1ばね受31と第2ばね受32のそれぞれを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する。
【0050】
プランジャ50の第2担持部52により第2ばね受32を担持することにより、ダンパ10の軸方向に作用する車両荷重が、第2ばね22を介して、第2ばね受32から油圧ジャッキ40のプランジャ50に直に支持され、第1ばね21を伸縮させない、換言すれば、第1ばね21の撓みをロックするものになる。懸架スプリング20のばね定数は第2ばね22のばね定数K2に設定替えされたものになる。
【0051】
このとき、第1ばね21の両端のそれぞれを担持している第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されているから、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0052】
B.第2ばね調整動作(図2(C))
油圧ジャッキ40において、上述Aの第1ばねロック動作の作動下で、油圧源からの油圧を更に油圧室42に供給し、プランジャ50をダンパ10の軸方向に更に突き出す。
【0053】
これにより、プランジャ50の第1担持部51と第2担持部52が上述Aの第1ばねロック動作を維持しながら、プランジャ50の第2担持部52が第2ばね受32を持ち上げ、結果として第2ばね22を第3ばね受33との間で圧縮して第2ばね22のばね荷重を調整するものになる。
【0054】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)車両用懸架装置100Aにおいて、油圧ジャッキ40が、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする。
【0055】
従って、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行しているとき、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されており、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0056】
(b)前記油圧ジャッキ40が、油圧源からの油圧を供給される油圧室42をハウジング41内に設けるとともに、この油圧室42に挿入されてダンパ10の軸方向に突き出されるプランジャ50を有し、プランジャ50が第1ばね受31を担持する第1担持部51と、第2ばね受32を担持する第2担持部52とを備える。
【0057】
これにより、油圧ジャッキ40のプランジャ50をハウジング41の油圧室42から突き出し、プランジャ50の第1担持部51と第2担持部52により、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0058】
更に、油圧ジャッキ40のプランジャ50をハウジング41の油圧室42から突き出せば、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0059】
(実施例2)(図3、図4)
実施例2の車両用懸架装置100Bが実施例1の車両用懸架装置100Aと異なる点は、油圧ジャッキ40に代わる油圧ジャッキ110を装備したことにある。
【0060】
油圧ジャッキ110は、シリンダ11に固定の外周スリーブ11Aに取着したハウジング111を一端閉塞の筒状体とし、このハウジング111の内部に油圧室112を形成し、外部油圧源の油圧を配管113により油圧室112に給排し、この油圧室112に挿入してある第1と第2のプランジャ120、130をダンパ10の軸方向に突き出し可能にする。
【0061】
第1プランジャ120と第2プランジャ130は、ハウジング111の油圧室112に挿入されて並置され、ダンパ10の軸方向に突き出される。ここで、第1プランジャ120は第1ばね受31を担持する第1担持部121を備え、第2プランジャ130は第2ばね受32を担持する第2担持部131を備える。更に、第2プランジャ130は第2担持部131が第2ばね受32を担持する突き出し状態下で、第1プランジャ120の係合部122に対し該第1プランジャ120を突き出す方向にて係合する係合部132を備える。
【0062】
第1プランジャ120はハウジング111の内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャ130が第1プランジャ120の内周とシリンダ11の外周スリーブ11Aのそれぞれに液密に摺動する内側環状体をなす。
【0063】
車両用懸架装置100Bは、初期状態で、図4(A)に示す如く、油圧ジャッキ110の第1プランジャ120と第2プランジャ130をハウジング11の油圧室112に没入させ、第1ばね21の一端が着座する第1ばね受31をハウジング111の開口端に支持し、第1ばね21の他端と第2ばね22の一端に挟まれる第2ばね受32をダンパ10の軸方向にてフリーにしている。これにより、懸架スプリング20のばね定数を第1ばね21と第2ばね22の合成ばね定数Kに設定するものである。
【0064】
以下、車両用懸架装置100Bにおける第1ばねロック動作と第2ばね調整動作について説明する。
A.第1ばねロック動作(図4(B))
油圧ジャッキ110において、上述の初期状態下で、油圧源からの油圧を油圧室112に供給する。第1プランジャ120は第1ばね21の一端が着座している第1ばね受31に衝合する。荷重が作用していない第2プランジャ130はダンパ10の軸方向に突き出され、第1ばね21の他端と第2ばね22の一端に挟まれている第2ばね受32に衝合する。
【0065】
これにより、第1プランジャ120の第1担持部121と第2プランジャ130の第2担持部131のそれぞれが第1ばね受31と第2ばね受32のそれぞれを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する。
【0066】
第2プランジャ130の第2担持部131により第2ばね受32を担持することにより、ダンパ10の軸方向に作用する車両荷重が、第2ばね22を介して、第2ばね受32から油圧ジャッキ110の第2プランジャ130に直に支持され、第1ばね21を伸縮させない、換言すれば、第1ばね21の撓みをロックするものになる。懸架スプリング20のばね定数は第2ばね22のばね定数K2に設定替えされたものになる。
【0067】
このとき、第1ばね21の両端のそれぞれを担持している第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されているから、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0068】
B.第2ばね調整動作(図4(C))
油圧ジャッキ110において、上述Aの第1ばねロック動作の作動下で、油圧源からの油圧を更に油圧室112に供給し、第2プランジャ130をダンパ10の軸方向に更に突き出す。このとき、第2プランジャ130の係合部132が第1プランジャ120の係合部122に係合し、第2プランジャ130は第1プランジャ120を伴って軸方向に突き出る。
【0069】
これにより、第1プランジャ120の第1担持部121と第2プランジャ130の第2担持部131が上述Aの第1ばねロック動作を維持しながら、第2プランジャ130の第2担持部131が第2ばね受32を持ち上げ、結果として第2ばね22を第3ばね受33との間で圧縮して第2ばね22のばね荷重を調整するものになる。
【0070】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)車両用懸架装置100Bにおいて、油圧ジャッキ110が、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする。
【0071】
従って、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行しているとき、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されており、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0072】
(b)前記油圧ジャッキ110が、油圧源からの油圧を供給される油圧室112をハウジング111内に設けるとともに、この油圧室112に挿入されて並置され、ダンパ10の軸方向に突き出される第1プランジャ120と第2プランジャ130を有し、第1プランジャ120が第1ばね受31を担持する第1担持部121を備え、第2プランジャ130が第2ばね受32を担持する第2担持部131を備えるとともに、第2プランジャ130は第2担持部131が第2ばね受32を担持する突き出し状態下で、第1プランジャ120に対し該第1プランジャ120を突き出す方向にて係合する。
【0073】
これにより、油圧ジャッキ110の第1プランジャ120と第2プランジャ130をハウジング111の油圧室112から突き出し、第1プランジャ120の第1担持部121と第2プランジャ130の第2担持部131により、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0074】
更に、油圧ジャッキ110の第1プランジャ120と第2プランジャ130をハウジング111の油圧室112から突き出せば、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0075】
(c)前記油圧ジャッキ110のハウジング111が一端閉塞の筒状体をなし、第1プランジャ120がハウジング111の内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャ130が第1プランジャ120の内周に液密に摺動する内側環状体をなす。
【0076】
油圧ジャッキ110のプランジャが外側環状体をなす第1プランジャ120と、内側環状体をなす第2プランジャ130に2分され、第2プランジャ130は第2担持部131が第2ばね受32を担持する突き出し状態下で、第1プランジャ120に対し該第1プランジャ120を突き出す方向にて係合する。従って、第1プランジャ120の最大突き出し量を、第2プランジャ130が第1プランジャ120に対し突き出し方向にて係合するまでの単独突き出し量分だけ短縮でき、ハウジング111における第1プランジャ120の収容高さをその分だけ短縮できる。
【0077】
また、第2プランジャ130はハウジング111への格納時に、第1プランジャ120の内周側に対し、該第2プランジャ130の上述の単独突き出し量分だけ重ねるように納められ、ハウジング111における第2プランジャ130の収容高さをその分だけ短縮できる。
【0078】
これらにより、油圧ジャッキ110のハウジング111の高さを短縮でき、ひいては車両用懸架装置100Bの全長を短縮し、車両への組込性を向上できる。
【0079】
(実施例3)(図5〜図7)
実施例3の車両用懸架装置100Cが実施例1の車両用懸架装置100Aと異なる点は、油圧ジャッキ40に代わる油圧ジャッキ210を装備したことにある。
【0080】
油圧ジャッキ210は、シリンダ11に固定の外周スリーブ11Aに取着したハウジング211を一端閉塞の筒状体とし、このハウジング211の内部に油圧室212を形成し、外部油圧源の油圧を配管213により油圧室212に給排し、この油圧室212に挿入している第1プランジャ220をダンパ10の軸方向に突き出し可能にする。第1プランジャ220は第1ばね受31を担持する第1担持部221を備える。
【0081】
同時に、油圧ジャッキ210は、外部油圧源の油圧を配管214により供給されるサブ油圧室215を第1プランジャ220内に設けるとともに、このサブ油圧室215に挿入されてダンパ10の軸方向に突き出される第2プランジャ230を有する。第2プランジャ230は第2ばね受32を担持する第2担持部231を備える。
【0082】
第1プランジャ220はシリンダ11の内周とシリンダ11の外周スリーブ11Aのそれぞれに液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャ230は第1プランジャ220の内周とシリンダ11の外周スリーブ11Aのそれぞれに液密に摺動する内側環状体をなす。
【0083】
車両用懸架装置100Cは、初期状態で、図6(A)に示す如く、油圧ジャッキ210の第1プランジャ220と第2プランジャ230のそれぞれをハウジング211の油圧室212と第1プランジャ220のサブ油圧室215のそれぞれに没入させ、第1ばね21の一端が着座する第1ばね受31を第1プランジャ220の第1担持部221に支持し、第1ばね21の他端と第2ばね22の一端に挟まれる第2ばね受32をダンパ10の軸方向にてフリーにしている。これにより、懸架スプリング20のばね定数を第1ばね21と第2ばね22の合成ばね定数Kに設定するものである。
【0084】
以下、車両用懸架装置100Cにおける第1ばねロック動作と第2ばね調整動作と合成ばね調整動作について説明する。
A.第1ばねロック動作(図7(A))
油圧ジャッキ210において、上述の初期状態下で、油圧源からの油圧をサブ油圧室215に供給し、第2プランジャ230をダンパ10の軸方向に突き出す。第2プランジャ230は第1ばね21の他端と第2ばね22の一端に挟まれている第2ばね受32に衝合する。
【0085】
これにより、第1プランジャ220の第1担持部221と第2プランジャ230の第2担持部231のそれぞれが第1ばね受31と第2ばね受32のそれぞれを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する。
【0086】
第2プランジャ230の第2担持部231により第2ばね受32を担持することにより、ダンパ10の軸方向に作用する車両荷重が、第2ばね22を介して、第2ばね受32から油圧ジャッキ210の第2プランジャ230に直に支持され、第1ばね21を伸縮させない、換言すれば、第1ばね21の撓みをロックするものになる。懸架スプリング20のばね定数は第2ばね22のばね定数K2に設定替えされたものになる。
【0087】
このとき、第1ばね21の両端のそれぞれを担持している第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されているから、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0088】
B.第2ばね調整動作(図7(B))
油圧ジャッキ210において、上述Aの第1ばねロック動作の作動下で、油圧源からの油圧を油圧室212に供給し、第1プランジャ220をダンパ10の軸方向に突き出す。第1プランジャ220は、該第1プランジャ220内に設置してある第2プランジャ230(第2プランジャ230の第2担持部231は第2ばね受32を担持している)を伴って軸方向に突き出る。
【0089】
これにより、第1プランジャ220の第1担持部221と第2プランジャ230の第2担持部231が上述Aの第1ばねロック動作を維持しながら、第2プランジャ230の第2担持部231が第2ばね受32を持ち上げ、結果として第2ばね22を第3ばね受33との間で圧縮して第2ばね22のばね荷重を調整するものになる。
【0090】
C.合成ばね調整動作(図6(B))
油圧ジャッキ210において、前述の初期状態下で、油圧源からの油圧を油圧室212に供給し、第1プランジャ220をダンパ10の軸方向に突き出す。第1プランジャ220は、該第1プランジャ220内に設置してある第2プランジャ230(第2プランジャ230の第2担持部231は第2ばね受32から離隔して第2ばね受32をフリーにしている)を伴って軸方向へ突き出る。
【0091】
これにより、第1プランジャ220の第1担持部221により第1ばね受31を担持するとともに、第2プランジャ230の第2担持部231を第2ばね受32から離隔させた状態で、第1プランジャ220の第1担持部221が第1ばね受31を持ち上げ、結果として第1ばね21と第2ばね受22を第3ばね受33との間で圧縮し、第1ばね21と第2ばね22の合成ばねのばね荷重を調整するものになる。
【0092】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)車両用懸架装置100Cにおいて、油圧ジャッキ210が、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする。
【0093】
従って、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行しているとき、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されており、第1ばね21のガタを生じさせることがない。
【0094】
(b)前記油圧ジャッキ210が、油圧源からの油圧を供給される油圧室212をハウジング211内に設けるとともに、この油圧室212に挿入されてダンパ10の軸方向に突き出される第1プランジャ220を有し、この第1プランジャ220が第1ばね21を担持する第1担持部221を備え、油圧源からの油圧を供給されるサブ油圧室215を第1プランジャ220内に設けるとともに、このサブ油圧室215に挿入されてダンパ10の軸方向に突き出される第2プランジャ230を有し、この第2プランジャ230が第2ばね22を担持する第2担持部231を備える。
【0095】
これにより、油圧ジャッキ210の第2プランジャ230を第1プランジャ220のサブ油圧室215から突き出し、第1プランジャ220の第1担持部221と第2プランジャ230の第2担持部231により、第1ばね受31と第2ばね受32とを同時に担持し、かつ第1ばね受31と第2ばね受32の間隔を第1ばね21の自由長以下に設定する第1ばねロック動作を形成できる。
【0096】
更に、油圧ジャッキ210の第1プランジャ220をハウジング211の油圧室212から突き出せば、第2プランジャ230の第2担持部231が第2ばね受32を担持しながら、第1プランジャ220がその第2プランジャ230を伴って突き出るものになり、第1ばね受31と第2ばね受32の間隔が第1ばね21の自由長以下に設定されている上述の第1ばねロック動作の作動下で、第2ばね22を圧縮して該第2ばね22のばね荷重を調整する第2ばね調整動作を実行できる。
【0097】
(c)前記第1プランジャ220の第1担持部221により第1ばね受31を担持するとともに、第2プランジャ230の第2担持部231を第2ばね受32から離隔させた状態で、第1ばね21と第2ばね22を圧縮し、それらの合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行する。
【0098】
即ち、油圧ジャッキ210の第1プランジャ220をハウジング211の油圧室212から突き出せば、第2プランジャ230の第2担持部231が第2ばね受32から離隔した状態で、第1プランジャ220がその第2プランジャ230を伴って突き出るものになり、第1ばね21と第2ばね22の合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行できる。
【0099】
(d)前記油圧ジャッキ210のハウジング211が一端閉塞状の筒状体をなし、第1プランジャ220がハウジング211の内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャ230が第1プランジャ220の内周に液密に摺動する内側環状体をなす。
【0100】
即ち、第2プランジャ230を第1プランジャ220の内側に重ねるように設置するものになり、油圧ジャッキ210の全体高さを短縮でき、ひいては車両用懸架装置100Cの全長を短縮し、車両への組込性を向上できる。
【0101】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、シリンダにピストンロッドを挿入し、シリンダとピストンロッドの伸縮動作に伴い減衰力を生じるダンパと、ダンパの外側に設けられ、ダンパの軸方向にて直列配置される第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングと、ダンパの外側に設けられ、第1ばねの一端が着座する第1ばね受と、第1ばねの他端と第2ばねの一端との間に介装される第2ばね受と、第2ばねの他端が着座する第3ばね受とを有し、ダンパの外側に設けられる油圧ジャッキとを有してなる車両用懸架装置において、油圧ジャッキが、第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする。これにより、第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングを有する車両用懸架装置において、油圧ジャッキで第1ばねの撓みをロックした後、第2ばねのばね荷重を調整するとき、第1ばねのガタを生じさせないようにすることができる。
【符号の説明】
【0103】
10 ダンパ
11 シリンダ
12 ピストンロッド
13 ピストン
14 油室
15 減衰力発生装置
20 懸架スプリング
21 第1ばね
22 第2ばね
31 第1ばね受
32 第2ばね受
33 第3ばね受
40 油圧ジャッキ
41 ハウジング
42 油圧室
50 プランジャ
51 第1担持部
52 第2担持部
100A 車両用懸架装置
100B 車両用懸架装置
100C 車両用懸架装置
110 油圧ジャッキ
111 ハウジング
112 油圧室
120 第1プランジャ
121 第1担持部
122 係合部
130 第2プランジャ
131 第2担持部
132 係合部
210 油圧ジャッキ
211 ハウジング
212 油圧室
215 サブ油圧室
220 第1プランジャ
221 第1担持部
230 第2プランジャ
231 第2担持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダにピストンロッドを挿入し、シリンダとピストンロッドの伸縮動作に伴い減衰力を生じるダンパと、
ダンパの外側に設けられ、ダンパの軸方向にて直列配置される第1ばねと第2ばねとからなる懸架スプリングと、
ダンパの外側に設けられ、第1ばねの一端が着座する第1ばね受と、第1ばねの他端と第2ばねの一端との間に介装される第2ばね受と、第2ばねの他端が着座する第3ばね受とを有し、
ダンパの外側に設けられる油圧ジャッキとを有してなる車両用懸架装置において、
油圧ジャッキが、
第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、
第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にすることを特徴とする車両用懸架装置。
【請求項2】
前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出されるプランジャを有し、
プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部と、第2ばね受を担持する第2担持部とを備える請求項1に記載の車両用懸架装置。
【請求項3】
前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されて並置され、ダンパの軸方向に突き出される第1プランジャと第2プランジャを有し、
第1プランジャが第1ばね受を担持する第1担持部を備え、第2プランジャが第2ばね受を担持する第2担持部を備えるとともに、
第2プランジャは第2担持部が第2ばね受を担持する突き出し状態下で、第1プランジャに対し該第1プランジャを突き出す方向にて係合する請求項1に記載の車両用懸架装置。
【請求項4】
前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなす請求項3に記載の車両用懸架装置。
【請求項5】
前記油圧ジャッキが、油圧源からの油圧を供給される油圧室をハウジング内に設けるとともに、この油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第1プランジャを有し、この第1プランジャが第1ばねを担持する第1担持部を備え、
油圧源からの油圧を供給されるサブ油圧室を第1プランジャ内に設けるとともに、このサブ油圧室に挿入されてダンパの軸方向に突き出される第2プランジャを有し、この第2プランジャが第2ばねを担持する第2担持部を備える請求項1に記載の車両用懸架装置。
【請求項6】
前記第1プランジャの第1担持部と第2プランジャの第2担持部により、
第1ばね受と第2ばね受とを同時に担持し、かつ第1ばね受と第2ばね受の間隔を第1ばねの自由長以下に設定する第1ばねロック動作と、
第1ばねロック動作の作動下で、第2ばねを圧縮して該第2ばねのばね荷重を調整する第2ばね調整動作とを実行可能にする請求項5に記載の車両用懸架装置。
【請求項7】
前記第1プランジャの第1担持部により第1ばね受を担持するとともに、第2プランジャの第2担持部を第2ばね受から離隔させた状態で、第1ばねと第2ばねを圧縮し、それらの合成ばねのばね荷重を調整する合成ばね調整動作を実行可能にする請求項6に記載の車両用懸架装置。
【請求項8】
前記油圧ジャッキのハウジングが一端閉塞状の筒状体をなし、第1プランジャがハウジングの内周に液密に摺動する外側環状体をなし、第2プランジャが第1プランジャの内周に液密に摺動する内側環状体をなす請求項5〜7のいずれかに記載の車両用懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207773(P2012−207773A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76058(P2011−76058)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】