車両用操舵装置
【課題】 タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置を得る。
【解決手段】 タイヤ14の内周側に配置されるホイール22に、回転中心線TC廻りにタイヤ14を回転する為のホイールモータ24の回転軸24Aが連結される。このホイールモータ24と車体12側の支持部分に位置する操舵モータ16の回転軸16Aとの間を連結アーム26が連結する。これに合わせて連結アーム26は、操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされて、車体12に対して旋回可能に支持される。
【解決手段】 タイヤ14の内周側に配置されるホイール22に、回転中心線TC廻りにタイヤ14を回転する為のホイールモータ24の回転軸24Aが連結される。このホイールモータ24と車体12側の支持部分に位置する操舵モータ16の回転軸16Aとの間を連結アーム26が連結する。これに合わせて連結アーム26は、操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされて、車体12に対して旋回可能に支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置に関し、更には舵角の検出精度が高い車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の一般的な車両の操舵構造を示す。この図9に基づき従来技術を説明する。この操舵構造では、車体を支持する為のコイルバネ112やキングピン114を有するが、このキングピン114の軸線である操舵の中心軸Cとタイヤ116の接地中心を通る垂線Pとが離れて位置している為、操舵する際のモーメントが大きくなり、大きな操舵力が必要になる。
【0003】
この結果として、この操舵構造を構成する各部材の強度を高める必要性があることから、これら部材が大きく且つ重くなる欠点を有していた。またこれに伴って、操舵の為に必要とされるエネルギーも大きくなることから、ステアリングを廻す際に大きな力が必要となる欠点をも有していた。
【0004】
図9は、近年多用されている車両の操舵構造を示す。この図9に基づき別の従来技術を説明する。この操舵構造では、キングピン114の軸線である操舵の中心軸Cがタイヤ116に対して傾いてこの操舵の中心軸Cが路面A側でタイヤ116の接地中心を通る垂線Pに近づいて位置していることから、操舵する際のモーメントが小さくなる。
【0005】
そしてこの結果として、この操舵構造を構成する部材の強度を高める必要性が無くなる為、これら部材を小さく且つ軽くすることができる。また、操舵に必要とされるエネルギーも小さくなることから、ステアリングを廻す際に大きな力が必要とされない。
【0006】
但し、ステアリングを廻して操舵した時に、図10に示ようにタイヤ116の舵角が変化するのに伴いタイヤ116の接地部分である外周面と路面Aとの間の角度θが変化し、タイヤ116の路面に対するグリップ力が落ちる欠点があった。また、ステアリングを廻して操舵した時に、キングピン114の上端側を中心にタイヤ116が図10に示す円Bに沿って旋回することから、タイヤ116の旋回に大きな空間が必要とされて、タイヤ116が配置される車両のタイヤハウス内に広い空間が必要となる欠点をも有していた。
【0007】
一方、操舵装置の従来技術として、特許文献1である下記の特開2005−118336号公報に開示された構造が知られている。この操舵装置では、図11に示すように、車体フレーム120にセンターピン122及び一対のキングピン124が支持されると共に、前輪である一対のタイヤ128がこれらキングピン124とそれぞれ連結されるアーム部126を介して、連結板130にそれぞれ連結される構造になっていて、センターピン122に繋がるセンターアーム132の旋回で連結板130が車体の左右方向に移動するのに伴い、タイヤ128の舵角が変化するようになっている。
【0008】
従って、この操舵装置では、ステアリングを軽く操作できると共に、300度程度の角度範囲まで操舵ができて比較的に車両の小回りが効くようになるものの、アーム部126と連結板130とが干渉して300度の角度範囲までしか操舵できなかった。この為、直進方向を0度とした場合、例えば150度右にステアリングを切った後に、さらに10度多くして160度右にステアリングを切るといった連続的な操舵ができないので、車両の動きに制限を受けることになる。
【0009】
さらに、この特許文献1の操舵装置では、左右のタイヤが連結板130を介して繋がっていることから、同相でしか左右のタイヤを操舵できないことになり、その場で車両を旋回するなどという旋回半径の小さな操舵はできない。また、内輪差を吸収できない構造となっているので、車体幅の広い車両では、ステアリングを操作した場合でもコーナー等を上手く曲がれない欠点も有していた。
【0010】
図12は、従来技術の舵角センサの配置を示す概略平面図である。この図12に示すようにタイミングベルト144の回転を介してタイヤ116の舵角が変化される構造に従来は一般になっている関係から、タイヤ116の舵角を検出する為の舵角センサ142は、操舵の中心軸と別の例えばタイミングベルト144に隣り合った位置に配置されていて、このタイミングベルト144の回転量から舵角を間接的に検出していた。またこれとは別に、ステアリングシャフトに舵角センサ142を配置して、舵角を間接的に検出する場合もあった。
【特許文献1】特開2005−118336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上より、特許文献1が有する、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり、小旋回半径で旋回することができなかったり、或いは車体幅の広い車両ではコーナー等を上手く曲がれない等の欠点を解消しつつ、操舵力の低減やタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としないような構造は従来なかった。
他方、従来の操舵装置では、舵角センサがギアやベルト等によるバックラッシの影響を受ける為、舵角の検出精度が低かった。
【0012】
本発明は上記事実を考慮し、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置を提供することが第1の目的であり、舵角の検出精度が高い車両用操舵装置を提供することが第2の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る車両用操舵装置は、路面に接地するタイヤと、
前記タイヤの路面接地面の中心から、タイヤ径の中心方向に延びる線分が旋回軸とされて、車体に対して旋回可能に支持されつつ、前記タイヤと車体との間を連結する連結アームと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、例えば前輪側の2つのタイヤを個々に操舵できる構造となるが、操舵の際の中心軸ともなる旋回軸が、タイヤ中心の近傍位置とされる車体側の支持部分とタイヤの接地部分とを繋ぐ位置に配置されているので、操舵力が低減されることになる。また、この旋回軸はタイヤの回転中心線に対して垂直方向に延びることから、操舵に伴ってタイヤ外周面の路面に対する角度が変化しない結果、路面に対するタイヤのグリップ力が高いまま維持できる。
【0015】
一方、特許文献1のように連結板を使用して左右のタイヤを一体的に操舵する構造と異なり、本請求項では、タイヤの舵角の変化量に制限がなく、何度までであっても連続的にステアリングが切れるようになる。また、本請求項では、連結板を使用していないことから、左右のタイヤを別相で操舵できるので、車両のその場での旋回などの特殊な動きも可能となる。これらの結果から、本請求項では、タイヤの舵角の変化量に制限なく各タイヤを個々に操舵できるので、機動性に富んだ車両の動きが可能となる。
【0016】
上記の記載内容に伴い、各タイヤに取り付けられるホイールモータの回転量を各タイヤ毎に調整することで、内輪差を吸収できるようになる為、どんな車体にも適応でき、車体幅の広い車両であってもコーナー等を上手く曲がれるようになる。
【0017】
以上より、本請求項の車両用操舵装置によれば、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力が低減されると共にタイヤのグリップ力が高められるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間が必要とされないようになる。
【0018】
請求項2に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、車体への振動の伝達を緩衝する緩衝機構が、車体と連結アームとの間に配置されるという構成を有している。つまり、本請求項によれば、緩衝機構により従来の操舵装置と同様に車体への振動の伝達を緩衝できるので、搭乗者に乗り心地の面で悪影響を与えることもない。
【0019】
請求項3に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、車両のフレームとされる車体と路面に接地するタイヤを回転し得るホイールモータとの間を連結アームが連結する構造となっている。但し、この連結アームで車体とホイールモータとの間を連結する際に、車体側の支持部分とタイヤの接地部分とを繋ぎ且つタイヤの回転中心線に対して垂直方向に延びる線分が旋回軸とされて、連結アームが車体に対してこの旋回軸廻りで旋回可能に支持された構造に、請求項1と同様にされている。
【0020】
さらに本請求項では、連結アームを任意の旋回角に旋回させる操舵モータが、車体側の支持部分に設置されると共に、連結アームの車体に対する旋回角を検出する舵角センサが、この操舵モータに配置されている。つまり、旋回軸上に位置することになる操舵モータに、舵角センサを設置することで、この舵角センサが実質的に操舵の際の中心軸となる旋回軸上に配置されることになる。
【0021】
以上より、本請求項も請求項1と同様に作用することになるが、本請求項の車両用操舵装置ではさらに、操舵モータで舵角を変化する際に、舵角センサがギアやベルト等によるバックラッシの影響を受けないで舵角を検出できるようになることから、高精度に操舵角を検出でき、より緻密な舵角の制御が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明の上記構成によれば、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置を提供できるという優れた効果を有する。さらに、舵角の検出精度が高い車両用操舵装置を提供できるという優れた効果をも有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る車両用操舵装置の第1の実施の形態を、図1から図6に基づき説明する。
【0024】
本実施の形態に係る車両用操舵装置10は、例えば電気自動車等の車両に採用される。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の側面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の平面図である。そして、このような車両の車体12には、図1及び図2に示すように4つのタイヤ14が一般的に取り付けられていて、各タイヤ14で路面Aと接地される構造になっている。また、この車体12には、車両進行方向と直交して延びるブラケット12Aが車体12の一部として取り付けられている。このブラケット12Aのそれぞれ両端側の箇所には、回転軸16Aが直下に向いた形で、操舵モータ16が固定されつつ取り付けられている。さらに、この操舵モータ16の同軸上の位置とされる上端部には、この操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を検出する為の舵角センサ18が設置されている。
【0025】
これら操舵モータ16及び舵角センサ18は、ステアリングと繋がる図示しない制御装置に接続されている。舵角センサ18が操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を検出するのに伴い、この制御装置により操舵モータ16の回転軸16Aの回転量が制御されるようになっている。
【0026】
一方、4つのタイヤ14のうち、例えば前輪である2つのタイヤ14の内周側にはタイヤ14の支持部材であるホイール22が配置されている。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が0°の場合の図である。また、図5は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が90°の場合である。図3に示すように、この内の前輪側のホイール22には、タイヤ14の回転中心線TC廻りにタイヤ14を回転させる為のホイールモータ24の回転軸24Aが連結されている。そして、本実施の形態では、これらホイールモータ24と操舵モータ16の回転軸16Aとの間を金属製の連結アーム26が連結する構造とされている。
【0027】
つまり、操舵モータ16の回転軸16Aが連結アーム26の基端側に連結されることで、操舵モータ16を介して連結アーム26の基端側が車体12に旋回可能に連結されている。また、この連結アーム26の先端側にホイールモータ24が連結されて取り付けられている。これに伴って操舵モータ16が、連結アーム26だけでなくこの連結アーム26に連結されたホイールモータ24及びタイヤ14を任意の旋回角に旋回させる構造になっている。さらに、舵角センサ18が、これら連結アーム26及びタイヤ14の車体12に対する旋回角を検出し得る構造になっている。
【0028】
従って、操舵モータ16の回転軸16Aは連結アーム26の旋回中心となるので、車体12側の支持部分に位置することになる。これに合わせて連結アーム26は、この操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされて、車体12に対して旋回可能に支持されている。但し、図3及び図5に示すように、この連結アーム26は、旋回時の連結アーム26の横幅端から旋回軸Sまでの長さLがタイヤ14の半径Rより小さく形成されると共に、幅寸法Wもタイヤ14の幅寸法Dより細く形成されている。
【0029】
以上より、本実施の形態では、運転者により図示しないステアリングが操作された場合、これに伴い制御装置が新たな舵角を決定する。この舵角の決定に合わせて、操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を舵角センサ18が検出しつつ、連結アーム26が操舵モータ16により旋回されることで、ホイールモータ24及びタイヤ14も新たな舵角に対応した角度まで旋回されるような構造とされている。
【0030】
尚、本実施の形態では、車両の外枠とされる図示しないボディ及び図1に示すバッテリィ28等が車体12に搭載されている。この内のバッテリィ28が、ホイールモータ24、操舵モータ16及び制御装置等に接続されていて、これらホイールモータ24、操舵モータ16及び制御装置等にこのバッテリィ28から電源が供給されている。また、図1及び図2に示すように、後輪側の2つのタイヤ14は、車体12の後部に揺動板32を介してそれぞれ揺動可能に支持されると共に、ショックアブソーバ34及びコイルバネ36で車体12の後部にそれぞれ連結されている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る車両用操舵装置10の作用を以下に説明する。
本実施の形態によれば、車両のフレームとされる車体12と路面に接地するタイヤ14を回転し得るホイールモータ24との間を連結アーム26が連結する構造となっている。但し、この連結アーム26で車体12とホイールモータ24との間を連結する際に、車体12側の支持部分に位置する操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つ、タイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされている。そして、連結アーム26が車体12に対してこの旋回軸S廻りで旋回可能に支持された構造とされている。
【0032】
さらに、本実施の形態では、連結アーム26の車体12に対する旋回角を検出する舵角センサ18が、この操舵モータ16に配置された構造とされている。つまり、旋回軸S上に位置することになる操舵モータ16に、舵角センサ18を設置することで、実質的に操舵の際の中心軸ともなる旋回軸Sにこの舵角センサ18が配置されることになる。
【0033】
従って、本実施の形態では、前輪側の2つのタイヤ14を個々に操舵できる構造となるが、操舵の際に、この旋回軸Sがタイヤ14の中心位置を通過しているので、操舵力が低減されることになる。そして、この旋回軸Sはタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びていることから、操舵に伴ってタイヤ14の外周面の路面Aに対する角度が変化しない結果、路面Aに対するタイヤ14のグリップ力が高いまま維持できる。
【0034】
また、この旋回軸S廻りに旋回可能に連結アーム26が配置されていることから、操舵時において、タイヤ14の接地部分の幅方向中心TA廻りにタイヤ14が旋回しつつタイヤ14の向きが変化する。従って、操舵のための空間が小さくなって、タイヤ14が配置される車両のタイヤハウス内に広い空間を必要としない。
【0035】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が0°の場合の図である。また、図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が90°の場合の図である。例えば図3及び図4に示す状態から舵角を90°変更しようとしてステアリングを操作した場合、図5及び図6に示す状態にタイヤ14の向きが変更される。この際、本実施の形態では、タイヤ14の半径Rより旋回時における連結アーム26の横幅端から旋回軸Sまでの長さLが小さく形成されていると共に、タイヤ14の幅寸法Dより連結アーム26の幅寸法Wが細く形成されている。このことで、ボディ内のタイヤハウスを狭くした場合でも、操舵時において連結アーム26に邪魔されることがないので、より車両をコンパクトな構造にすることが可能となる。
【0036】
一方、本実施の形態では、連結板を用いて左右のタイヤを一体的に操舵する構造と異なり、上記のように各タイヤ14毎に操舵可能な構造としたことから、タイヤ14の舵角の変化量に制限がなく、何度までであっても連続的にステアリングが切れるようになる。更に、左右のタイヤ14を別相で操舵できるので、車両のその場での旋回などの特殊な動きも可能となる。つまりこれらの結果から、本実施の形態では、タイヤ14の舵角の変化量に制限なく各タイヤ14を個々に操舵できるので、機動性に富んだ車両の動きが可能となる。
【0037】
またこれに伴い、各タイヤ14に取り付けられるホイールモータ24の回転量を各タイヤ14毎に調整することで、内輪差を吸収できるようになる為、どんな車体12にも適応でき、車体幅の広い車両であってもコーナー等を上手く曲がれるようになる。
【0038】
以上より、本実施の形態の車両用操舵装置10によれば、タイヤ14の舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力が低減されると共にタイヤ14のグリップ力が高められるだけでなく、操舵に伴うタイヤ14の旋回に大きな空間が必要とされないようになる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、実質的に操舵の際の中心軸となる旋回軸S上に舵角センサ18を配置したことで、操舵モータ16により舵角を変化する場合に、舵角センサ18がギアやベルト等によるバックラッシの影響を受けないで、操舵モータ16の回転軸16Aから直接的に舵角を検出できるようになる。この結果として、本実施の形態では、高精度に操舵角を検出できるようになって、より緻密な舵角の制御が可能になる。
【0040】
次に、本発明に係る車両用操舵装置の第2の実施の形態を図7に示し、この図に基づき本実施の形態を説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。ここで、図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用操舵装置を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は正面図である。
【0041】
本実施の形態では第1の実施の形態と同様の構成を有している。さらに、本実施の形態では、舵角センサを内蔵した形の操舵モータ16が採用されると共に、車体12への振動の伝達を緩衝する緩衝機構42が、車体12と連結アーム26との間とされる車体12と操舵モータ16との間に配置されている。尚、この緩衝機構42は例えばショックアブソーバ44及びコイルバネ66により構成される。
【0042】
従って、本実施の形態に係る車両用操舵装置10によれば、第1の実施の形態と同様の構成を有していることから同様に作用するが、さらに、このショックアブソーバ42によって従来の操舵構造と同様に車体12への振動の伝達を緩衝できるので、搭乗者に乗り心地の面で悪影響を与えることもない。
【0043】
尚、上記第1の実施の形態では、緩衝機構が無い構造により車両用操舵装置を説明したが、緩衝機構を有した構造としても良い。また、上記第2の実施の形態において、操舵モータ16に舵角センサを内蔵した形としたが、第1の実施の形態と同様に操舵モータ16の端部に舵角センサを配置した構造としても良い。一方、上記各実施の形態では、前輪に本発明を採用することにしたが、後輪に本発明を採用しても良く、さらに四輪共に本発明を採用する構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が0°の場合の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が0°の場合の図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が90°の場合である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が90°の場合の図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る車両用操舵装置を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は正面図である。
【図8】従来の一般的な車両の操舵構造を示す正面図である。
【図9】近年多用されている車両の操舵構造を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図である。
【図10】図9の操舵構造により操舵された状態を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は(A)の矢印E方向から見た図である。
【図11】従来技術の操舵装置を示す斜視図である。
【図12】従来技術の舵角センサの配置を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用操舵装置
12 車体
14 タイヤ
16 操舵モータ
16A 回転軸(車体側の支持部分)
18 舵角センサ
26 連結アーム
24 ホイールモータ
42 緩衝機構
S 旋回軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置に関し、更には舵角の検出精度が高い車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の一般的な車両の操舵構造を示す。この図9に基づき従来技術を説明する。この操舵構造では、車体を支持する為のコイルバネ112やキングピン114を有するが、このキングピン114の軸線である操舵の中心軸Cとタイヤ116の接地中心を通る垂線Pとが離れて位置している為、操舵する際のモーメントが大きくなり、大きな操舵力が必要になる。
【0003】
この結果として、この操舵構造を構成する各部材の強度を高める必要性があることから、これら部材が大きく且つ重くなる欠点を有していた。またこれに伴って、操舵の為に必要とされるエネルギーも大きくなることから、ステアリングを廻す際に大きな力が必要となる欠点をも有していた。
【0004】
図9は、近年多用されている車両の操舵構造を示す。この図9に基づき別の従来技術を説明する。この操舵構造では、キングピン114の軸線である操舵の中心軸Cがタイヤ116に対して傾いてこの操舵の中心軸Cが路面A側でタイヤ116の接地中心を通る垂線Pに近づいて位置していることから、操舵する際のモーメントが小さくなる。
【0005】
そしてこの結果として、この操舵構造を構成する部材の強度を高める必要性が無くなる為、これら部材を小さく且つ軽くすることができる。また、操舵に必要とされるエネルギーも小さくなることから、ステアリングを廻す際に大きな力が必要とされない。
【0006】
但し、ステアリングを廻して操舵した時に、図10に示ようにタイヤ116の舵角が変化するのに伴いタイヤ116の接地部分である外周面と路面Aとの間の角度θが変化し、タイヤ116の路面に対するグリップ力が落ちる欠点があった。また、ステアリングを廻して操舵した時に、キングピン114の上端側を中心にタイヤ116が図10に示す円Bに沿って旋回することから、タイヤ116の旋回に大きな空間が必要とされて、タイヤ116が配置される車両のタイヤハウス内に広い空間が必要となる欠点をも有していた。
【0007】
一方、操舵装置の従来技術として、特許文献1である下記の特開2005−118336号公報に開示された構造が知られている。この操舵装置では、図11に示すように、車体フレーム120にセンターピン122及び一対のキングピン124が支持されると共に、前輪である一対のタイヤ128がこれらキングピン124とそれぞれ連結されるアーム部126を介して、連結板130にそれぞれ連結される構造になっていて、センターピン122に繋がるセンターアーム132の旋回で連結板130が車体の左右方向に移動するのに伴い、タイヤ128の舵角が変化するようになっている。
【0008】
従って、この操舵装置では、ステアリングを軽く操作できると共に、300度程度の角度範囲まで操舵ができて比較的に車両の小回りが効くようになるものの、アーム部126と連結板130とが干渉して300度の角度範囲までしか操舵できなかった。この為、直進方向を0度とした場合、例えば150度右にステアリングを切った後に、さらに10度多くして160度右にステアリングを切るといった連続的な操舵ができないので、車両の動きに制限を受けることになる。
【0009】
さらに、この特許文献1の操舵装置では、左右のタイヤが連結板130を介して繋がっていることから、同相でしか左右のタイヤを操舵できないことになり、その場で車両を旋回するなどという旋回半径の小さな操舵はできない。また、内輪差を吸収できない構造となっているので、車体幅の広い車両では、ステアリングを操作した場合でもコーナー等を上手く曲がれない欠点も有していた。
【0010】
図12は、従来技術の舵角センサの配置を示す概略平面図である。この図12に示すようにタイミングベルト144の回転を介してタイヤ116の舵角が変化される構造に従来は一般になっている関係から、タイヤ116の舵角を検出する為の舵角センサ142は、操舵の中心軸と別の例えばタイミングベルト144に隣り合った位置に配置されていて、このタイミングベルト144の回転量から舵角を間接的に検出していた。またこれとは別に、ステアリングシャフトに舵角センサ142を配置して、舵角を間接的に検出する場合もあった。
【特許文献1】特開2005−118336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上より、特許文献1が有する、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり、小旋回半径で旋回することができなかったり、或いは車体幅の広い車両ではコーナー等を上手く曲がれない等の欠点を解消しつつ、操舵力の低減やタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としないような構造は従来なかった。
他方、従来の操舵装置では、舵角センサがギアやベルト等によるバックラッシの影響を受ける為、舵角の検出精度が低かった。
【0012】
本発明は上記事実を考慮し、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置を提供することが第1の目的であり、舵角の検出精度が高い車両用操舵装置を提供することが第2の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る車両用操舵装置は、路面に接地するタイヤと、
前記タイヤの路面接地面の中心から、タイヤ径の中心方向に延びる線分が旋回軸とされて、車体に対して旋回可能に支持されつつ、前記タイヤと車体との間を連結する連結アームと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、例えば前輪側の2つのタイヤを個々に操舵できる構造となるが、操舵の際の中心軸ともなる旋回軸が、タイヤ中心の近傍位置とされる車体側の支持部分とタイヤの接地部分とを繋ぐ位置に配置されているので、操舵力が低減されることになる。また、この旋回軸はタイヤの回転中心線に対して垂直方向に延びることから、操舵に伴ってタイヤ外周面の路面に対する角度が変化しない結果、路面に対するタイヤのグリップ力が高いまま維持できる。
【0015】
一方、特許文献1のように連結板を使用して左右のタイヤを一体的に操舵する構造と異なり、本請求項では、タイヤの舵角の変化量に制限がなく、何度までであっても連続的にステアリングが切れるようになる。また、本請求項では、連結板を使用していないことから、左右のタイヤを別相で操舵できるので、車両のその場での旋回などの特殊な動きも可能となる。これらの結果から、本請求項では、タイヤの舵角の変化量に制限なく各タイヤを個々に操舵できるので、機動性に富んだ車両の動きが可能となる。
【0016】
上記の記載内容に伴い、各タイヤに取り付けられるホイールモータの回転量を各タイヤ毎に調整することで、内輪差を吸収できるようになる為、どんな車体にも適応でき、車体幅の広い車両であってもコーナー等を上手く曲がれるようになる。
【0017】
以上より、本請求項の車両用操舵装置によれば、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力が低減されると共にタイヤのグリップ力が高められるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間が必要とされないようになる。
【0018】
請求項2に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、車体への振動の伝達を緩衝する緩衝機構が、車体と連結アームとの間に配置されるという構成を有している。つまり、本請求項によれば、緩衝機構により従来の操舵装置と同様に車体への振動の伝達を緩衝できるので、搭乗者に乗り心地の面で悪影響を与えることもない。
【0019】
請求項3に係る車両用操舵装置の作用を以下に説明する。
本請求項によれば、車両のフレームとされる車体と路面に接地するタイヤを回転し得るホイールモータとの間を連結アームが連結する構造となっている。但し、この連結アームで車体とホイールモータとの間を連結する際に、車体側の支持部分とタイヤの接地部分とを繋ぎ且つタイヤの回転中心線に対して垂直方向に延びる線分が旋回軸とされて、連結アームが車体に対してこの旋回軸廻りで旋回可能に支持された構造に、請求項1と同様にされている。
【0020】
さらに本請求項では、連結アームを任意の旋回角に旋回させる操舵モータが、車体側の支持部分に設置されると共に、連結アームの車体に対する旋回角を検出する舵角センサが、この操舵モータに配置されている。つまり、旋回軸上に位置することになる操舵モータに、舵角センサを設置することで、この舵角センサが実質的に操舵の際の中心軸となる旋回軸上に配置されることになる。
【0021】
以上より、本請求項も請求項1と同様に作用することになるが、本請求項の車両用操舵装置ではさらに、操舵モータで舵角を変化する際に、舵角センサがギアやベルト等によるバックラッシの影響を受けないで舵角を検出できるようになることから、高精度に操舵角を検出でき、より緻密な舵角の制御が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明の上記構成によれば、タイヤの舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力を低減すると共にタイヤのグリップ力を高めるだけでなく、操舵に伴うタイヤの旋回に大きな空間を必要としない車両用操舵装置を提供できるという優れた効果を有する。さらに、舵角の検出精度が高い車両用操舵装置を提供できるという優れた効果をも有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る車両用操舵装置の第1の実施の形態を、図1から図6に基づき説明する。
【0024】
本実施の形態に係る車両用操舵装置10は、例えば電気自動車等の車両に採用される。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の側面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の平面図である。そして、このような車両の車体12には、図1及び図2に示すように4つのタイヤ14が一般的に取り付けられていて、各タイヤ14で路面Aと接地される構造になっている。また、この車体12には、車両進行方向と直交して延びるブラケット12Aが車体12の一部として取り付けられている。このブラケット12Aのそれぞれ両端側の箇所には、回転軸16Aが直下に向いた形で、操舵モータ16が固定されつつ取り付けられている。さらに、この操舵モータ16の同軸上の位置とされる上端部には、この操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を検出する為の舵角センサ18が設置されている。
【0025】
これら操舵モータ16及び舵角センサ18は、ステアリングと繋がる図示しない制御装置に接続されている。舵角センサ18が操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を検出するのに伴い、この制御装置により操舵モータ16の回転軸16Aの回転量が制御されるようになっている。
【0026】
一方、4つのタイヤ14のうち、例えば前輪である2つのタイヤ14の内周側にはタイヤ14の支持部材であるホイール22が配置されている。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が0°の場合の図である。また、図5は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が90°の場合である。図3に示すように、この内の前輪側のホイール22には、タイヤ14の回転中心線TC廻りにタイヤ14を回転させる為のホイールモータ24の回転軸24Aが連結されている。そして、本実施の形態では、これらホイールモータ24と操舵モータ16の回転軸16Aとの間を金属製の連結アーム26が連結する構造とされている。
【0027】
つまり、操舵モータ16の回転軸16Aが連結アーム26の基端側に連結されることで、操舵モータ16を介して連結アーム26の基端側が車体12に旋回可能に連結されている。また、この連結アーム26の先端側にホイールモータ24が連結されて取り付けられている。これに伴って操舵モータ16が、連結アーム26だけでなくこの連結アーム26に連結されたホイールモータ24及びタイヤ14を任意の旋回角に旋回させる構造になっている。さらに、舵角センサ18が、これら連結アーム26及びタイヤ14の車体12に対する旋回角を検出し得る構造になっている。
【0028】
従って、操舵モータ16の回転軸16Aは連結アーム26の旋回中心となるので、車体12側の支持部分に位置することになる。これに合わせて連結アーム26は、この操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされて、車体12に対して旋回可能に支持されている。但し、図3及び図5に示すように、この連結アーム26は、旋回時の連結アーム26の横幅端から旋回軸Sまでの長さLがタイヤ14の半径Rより小さく形成されると共に、幅寸法Wもタイヤ14の幅寸法Dより細く形成されている。
【0029】
以上より、本実施の形態では、運転者により図示しないステアリングが操作された場合、これに伴い制御装置が新たな舵角を決定する。この舵角の決定に合わせて、操舵モータ16の回転軸16Aの回転量を舵角センサ18が検出しつつ、連結アーム26が操舵モータ16により旋回されることで、ホイールモータ24及びタイヤ14も新たな舵角に対応した角度まで旋回されるような構造とされている。
【0030】
尚、本実施の形態では、車両の外枠とされる図示しないボディ及び図1に示すバッテリィ28等が車体12に搭載されている。この内のバッテリィ28が、ホイールモータ24、操舵モータ16及び制御装置等に接続されていて、これらホイールモータ24、操舵モータ16及び制御装置等にこのバッテリィ28から電源が供給されている。また、図1及び図2に示すように、後輪側の2つのタイヤ14は、車体12の後部に揺動板32を介してそれぞれ揺動可能に支持されると共に、ショックアブソーバ34及びコイルバネ36で車体12の後部にそれぞれ連結されている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る車両用操舵装置10の作用を以下に説明する。
本実施の形態によれば、車両のフレームとされる車体12と路面に接地するタイヤ14を回転し得るホイールモータ24との間を連結アーム26が連結する構造となっている。但し、この連結アーム26で車体12とホイールモータ24との間を連結する際に、車体12側の支持部分に位置する操舵モータ16の回転軸16Aとタイヤ14の接地部分の幅方向中心TAとを繋ぎ且つ、タイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びる線分が、旋回軸Sとされている。そして、連結アーム26が車体12に対してこの旋回軸S廻りで旋回可能に支持された構造とされている。
【0032】
さらに、本実施の形態では、連結アーム26の車体12に対する旋回角を検出する舵角センサ18が、この操舵モータ16に配置された構造とされている。つまり、旋回軸S上に位置することになる操舵モータ16に、舵角センサ18を設置することで、実質的に操舵の際の中心軸ともなる旋回軸Sにこの舵角センサ18が配置されることになる。
【0033】
従って、本実施の形態では、前輪側の2つのタイヤ14を個々に操舵できる構造となるが、操舵の際に、この旋回軸Sがタイヤ14の中心位置を通過しているので、操舵力が低減されることになる。そして、この旋回軸Sはタイヤ14の回転中心線TCに対して垂直方向に延びていることから、操舵に伴ってタイヤ14の外周面の路面Aに対する角度が変化しない結果、路面Aに対するタイヤ14のグリップ力が高いまま維持できる。
【0034】
また、この旋回軸S廻りに旋回可能に連結アーム26が配置されていることから、操舵時において、タイヤ14の接地部分の幅方向中心TA廻りにタイヤ14が旋回しつつタイヤ14の向きが変化する。従って、操舵のための空間が小さくなって、タイヤ14が配置される車両のタイヤハウス内に広い空間を必要としない。
【0035】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が0°の場合の図である。また、図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が90°の場合の図である。例えば図3及び図4に示す状態から舵角を90°変更しようとしてステアリングを操作した場合、図5及び図6に示す状態にタイヤ14の向きが変更される。この際、本実施の形態では、タイヤ14の半径Rより旋回時における連結アーム26の横幅端から旋回軸Sまでの長さLが小さく形成されていると共に、タイヤ14の幅寸法Dより連結アーム26の幅寸法Wが細く形成されている。このことで、ボディ内のタイヤハウスを狭くした場合でも、操舵時において連結アーム26に邪魔されることがないので、より車両をコンパクトな構造にすることが可能となる。
【0036】
一方、本実施の形態では、連結板を用いて左右のタイヤを一体的に操舵する構造と異なり、上記のように各タイヤ14毎に操舵可能な構造としたことから、タイヤ14の舵角の変化量に制限がなく、何度までであっても連続的にステアリングが切れるようになる。更に、左右のタイヤ14を別相で操舵できるので、車両のその場での旋回などの特殊な動きも可能となる。つまりこれらの結果から、本実施の形態では、タイヤ14の舵角の変化量に制限なく各タイヤ14を個々に操舵できるので、機動性に富んだ車両の動きが可能となる。
【0037】
またこれに伴い、各タイヤ14に取り付けられるホイールモータ24の回転量を各タイヤ14毎に調整することで、内輪差を吸収できるようになる為、どんな車体12にも適応でき、車体幅の広い車両であってもコーナー等を上手く曲がれるようになる。
【0038】
以上より、本実施の形態の車両用操舵装置10によれば、タイヤ14の舵角の変化に制限を受けたり等する欠点を解消しつつ、操舵力が低減されると共にタイヤ14のグリップ力が高められるだけでなく、操舵に伴うタイヤ14の旋回に大きな空間が必要とされないようになる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、実質的に操舵の際の中心軸となる旋回軸S上に舵角センサ18を配置したことで、操舵モータ16により舵角を変化する場合に、舵角センサ18がギアやベルト等によるバックラッシの影響を受けないで、操舵モータ16の回転軸16Aから直接的に舵角を検出できるようになる。この結果として、本実施の形態では、高精度に操舵角を検出できるようになって、より緻密な舵角の制御が可能になる。
【0040】
次に、本発明に係る車両用操舵装置の第2の実施の形態を図7に示し、この図に基づき本実施の形態を説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。ここで、図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用操舵装置を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は正面図である。
【0041】
本実施の形態では第1の実施の形態と同様の構成を有している。さらに、本実施の形態では、舵角センサを内蔵した形の操舵モータ16が採用されると共に、車体12への振動の伝達を緩衝する緩衝機構42が、車体12と連結アーム26との間とされる車体12と操舵モータ16との間に配置されている。尚、この緩衝機構42は例えばショックアブソーバ44及びコイルバネ66により構成される。
【0042】
従って、本実施の形態に係る車両用操舵装置10によれば、第1の実施の形態と同様の構成を有していることから同様に作用するが、さらに、このショックアブソーバ42によって従来の操舵構造と同様に車体12への振動の伝達を緩衝できるので、搭乗者に乗り心地の面で悪影響を与えることもない。
【0043】
尚、上記第1の実施の形態では、緩衝機構が無い構造により車両用操舵装置を説明したが、緩衝機構を有した構造としても良い。また、上記第2の実施の形態において、操舵モータ16に舵角センサを内蔵した形としたが、第1の実施の形態と同様に操舵モータ16の端部に舵角センサを配置した構造としても良い。一方、上記各実施の形態では、前輪に本発明を採用することにしたが、後輪に本発明を採用しても良く、さらに四輪共に本発明を採用する構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が0°の場合の図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が0°の場合の図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置の一部破断した正面図であって、舵角が90°の場合である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る車両用操舵装置を用いた車両の一部破断した要部拡大平面図であって、舵角が90°の場合の図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る車両用操舵装置を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は正面図である。
【図8】従来の一般的な車両の操舵構造を示す正面図である。
【図9】近年多用されている車両の操舵構造を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は概略正面図である。
【図10】図9の操舵構造により操舵された状態を示す図であって、(A)は概略平面図であり、(B)は(A)の矢印E方向から見た図である。
【図11】従来技術の操舵装置を示す斜視図である。
【図12】従来技術の舵角センサの配置を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用操舵装置
12 車体
14 タイヤ
16 操舵モータ
16A 回転軸(車体側の支持部分)
18 舵角センサ
26 連結アーム
24 ホイールモータ
42 緩衝機構
S 旋回軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接地するタイヤと、
前記タイヤの路面接地面の中心から、タイヤ径の中心方向に延びる線分が旋回軸とされて、車体に対して旋回可能に支持されつつ、前記タイヤと車体との間を連結する連結アームと、
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
車体への振動の伝達を緩衝する緩衝機構と、備え、
前記緩衝機構は、前記車体と前記連結アームとの間に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
連結アームの車体に対する旋回角を検出する舵角センサと、備え、
前記舵角センサは、前記旋回軸上に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
【請求項1】
路面に接地するタイヤと、
前記タイヤの路面接地面の中心から、タイヤ径の中心方向に延びる線分が旋回軸とされて、車体に対して旋回可能に支持されつつ、前記タイヤと車体との間を連結する連結アームと、
を備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
車体への振動の伝達を緩衝する緩衝機構と、備え、
前記緩衝機構は、前記車体と前記連結アームとの間に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
連結アームの車体に対する旋回角を検出する舵角センサと、備え、
前記舵角センサは、前記旋回軸上に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−76379(P2007−76379A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262723(P2005−262723)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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