説明

車両用暖機システム

【課題】蓄熱装置の構造の簡素化、小型化、軽量化を図りながらも、暖機対象機関の早期暖機や車内の即効暖房を効果的に行えるようにする。
【解決手段】蓄熱装置10を備えた車両用暖機システムで、蓄熱装置10は、自動変速機40の作動油が流通する作動油流通室17と、作動油との熱交換が可能な蓄熱材20を収容した蓄熱材収容室16とを有し、蓄熱材収容室16は、複数の分割室16aに分割されており、複数の分割室16aを連通する連通部16bと、連通部16bを開閉する開閉手段60とを備え、開閉手段60は、蓄熱材20中で板面61cに沿って回転する回転板61により、その開口部61aを連通部16bに対して移動させて連通部16bを開閉する。蓄熱材20の抵抗を低減でき連通部16bの開閉がスムーズに行えるので、回転駆動機構62を小型化、蓄熱装置20の構造の簡素化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や変速機などの早期暖機あるいは車内の即効暖房を行うことができる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に示すように、蓄熱により内燃機関(以下、「エンジン」という)や自動変速機の暖機を行う蓄熱装置を備えた車両用暖機システムがある。特許文献1に記載の蓄熱装置(蓄熱タンク)は、エンジンの冷却水を蓄熱媒体として用い、該蓄熱媒体を断熱性の高い容器に収容したものである。また、特許文献2に記載の蓄熱装置は、自動変速機の作動油が流通する流路を、セラミックや酸化マグネシウムなどの高熱容量材からなる蓄熱材層で被覆した構造である。このような蓄熱装置を備えた暖機システムを利用すれば、車両の始動時におけるエンジンや自動変速機の早期暖機、あるいは車内の即効暖房を効果的に行うことが可能となる。
【0003】
ところで、上記のような蓄熱装置では、暖機対象機関から流通する熱伝達媒体との熱交換による蓄熱・放熱を行う蓄熱材(蓄熱要素)として、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材(過冷却蓄熱材)を備えたものがある。このような過冷却蓄熱材は、熱伝達媒体からの熱供給により、熱を蓄熱して固相から液相へ相変化(融解)し、その後の温度低下により、液相の状態を保ったまま過冷却状態となる。一方、過冷却解除手段による過冷却状態の解除により、蓄熱を放出して液相から固相へ相変化(固化)するようになっている。ところが、このような過冷却蓄熱材では、蓄熱の際、蓄熱材中に固体(結晶)状態の箇所が残存している状態で熱供給が停止されると、その後の温度低下で固化が進行し、過冷却状態を維持できずに蓄熱を放出してしまうという問題がある。そのため、蓄熱材への蓄熱を行う際には、蓄熱材中に固体状態の箇所が無くなるように、蓄熱材の全体を完全に融解させる必要がある。
【0004】
この点、特許文献3に記載の蓄熱装置では、蓄熱材を複数の容器に分割して封入しているので、各容器に封入された蓄熱材ごとに蓄熱が行われるようになる。したがって、短時間の熱供給でも、固体状態の箇所が無くなるように蓄熱材の融解を促進させることが可能となる。しかしながら、特許文献3の蓄熱装置では、蓄熱材を収容する複数の容器それぞれに蓄熱材の過冷却状態を解除する手段(発核装置)を設置しているので、蓄熱装置の部品点数が多くなり、構造の複雑化、大型化を招いていた。
【特許文献1】特開平10−71837号公報
【特許文献2】特開2002−39335号公報
【特許文献3】特開平6−117787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、蓄熱装置の構造の簡素化、小型化、軽量化を図りながらも、暖機対象機関の早期暖機や車内の即効暖房を効果的に行える車両用暖機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明にかかる車両用暖機システムは、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱要素(20)と、該蓄熱要素(20)の過冷却状態を解除する過冷却解除手段(25)と、を有してなる蓄熱装置(10)と、暖機対象機関(30,40)と蓄熱装置(10)との間で熱伝達媒体を流通させる熱伝達媒体流路(31,34,36,41)と、を備え、蓄熱装置(10)は、熱伝達媒体流路(31,34,36,41)からの熱伝達媒体が流通する熱伝達媒体流通室(14,15,17,18)と、熱伝達媒体との熱交換が可能な蓄熱要素(20)を収容した蓄熱要素収容室(16)とを有し、蓄熱要素収容室(16)は、複数の分割室(16a)に分割されており、複数の分割室(16a)を連通する連通部(16b)と、該連通部(16b)の開閉状態を切り替える開閉手段(60)と、を備え、開閉手段(60)は、分割室(16a)内で連通部(16b)に対向して配置された開口部(61a)を有する平板状の回転体(61)と、該回転体(61)をその板面(61c)に沿って回転させる回転駆動機構(62)と、を備え、回転駆動機構(62)による回転体(61)の回転により、連通部(16b)に対する開口部(61a)の位置が変化することで連通部(16b)の開閉状態が切り替わることを特徴とする。なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【0007】
また、この場合、過冷却解除手段(25)は、複数の分割室(16a)のうちいずれか一の分割室(16a)のみに設け、蓄熱要素(20)の蓄熱時には、開閉手段(60)により連通部(16b)が開かれて複数の分割室(16a)が連通する一方、過冷却解除手段(25)による蓄熱要素(20)の過冷却状態の解除時には、開閉手段(60)により連通部(16b)が閉じられて蓄熱要素収容室(16)が複数の分割室(16a)に分割されるようにするとよい。これにより、蓄熱要素の全容量が大きい場合でも、各分割室に分割して収容した蓄熱要素ごとに蓄熱を行うことができるので、蓄熱を効率良く完了させることが可能となる。それに加えて、蓄熱要素の放熱を行わせる際は、複数の分割室を連通し、蓄熱要素を一体化した状態で蓄熱要素の過冷却状態を解除できるので、過冷却解除手段は、複数の分割室のうちいずれか一の分割室のみに設ければ足りる。したがって、蓄熱装置の部品点数を少なく抑えることができ、蓄熱装置の構造の簡素化、小型化、軽量化を図ることができる。これらにより、蓄熱装置の構造の簡素化を図りながらも、蓄熱要素への蓄熱および放熱を短時間で効率的に行うことができ、暖機対象機関の早期暖機や車内の即効暖房を効果的に行えるようになる。
【0008】
さらに、この車両用暖機システムでは、連通部の開閉状態を切り替える開閉手段として、分割室内で連通部に対向して配置された開口部を有する平板状の回転体と、該回転体をその板面に沿って回転させる回転駆動機構と、を備え、回転駆動機構による回転体の回転により、連通部に対する開口部の位置が変化することで連通部の開閉状態が切り替わるようにしている。この構成によれば、蓄熱要素中にある回転体をその板面に沿って回転させるので、蓄熱要素から受ける抵抗を極力低減した状態で回転体をスムーズに回転させることができ、連通路の開閉の切り替えが容易に行えるようになる。したがって、過冷却解除による放熱後に粘度が高くなって流動性が低下した蓄熱要素中などでも、小さな駆動力で確実に開閉部材を回転させることができるので、回転駆動機構の小型化及び構成の簡素化を図ることができ、蓄熱装置の小型化や低コスト化につながる。また、連通部の開閉動作に影響を与えることなく連通部の断面積の広さを確保できるようになるので、複数の分割室の間を必要十分に連通させることが可能となる。
【0009】
また、この構成に加えて、回転体(61)に設けた開口部(61a)の内周端面を、該回転体(61)の板面(61c)に対して傾斜する傾斜面(61b)としてもよい。本発明の開閉手段では、回転体の開口部内に蓄熱要素収容室の蓄熱要素が入り込んだ状態で回転体を回転させる必要があるが、開口部の内周端面を上記の傾斜面状に形成すれば、回転体が回転する際、開口部内の蓄熱要素が開口部の内周端面に沿って滑らかに移動するようになるので、開口部内の蓄熱要素で回転体の回転が妨げられずに済む。したがって、蓄熱要素から受ける抵抗をさらに低減した状態で回転体をスムーズに回転させることが可能となる。
【0010】
また、分割室(16a)における回転体の周囲に、該回転体(61)と蓄熱要素(20)との間を仕切るカバー部材(65)を設置してもよい。これによれば、蓄熱要素と回転体との接触面積を減らすことができるので、回転体が回転する際に蓄熱要素によって生じる粘着抵抗を低減することができる。したがって、回転体をよりスムーズに回転させることが可能となる。
【0011】
さらにこの場合、カバー部材(65)の内部に、熱伝達媒体流通室(17)に通じる通路(65b)を形成してもよい。これによれば、カバー部材に接する蓄熱要素と通路を流通する熱伝達媒体との間でも熱交換が行えるようになるので、蓄熱要素による熱伝達媒体の加温や熱伝達媒体による蓄熱要素への蓄熱の効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、上記の車両用暖機システムの実施態様として、連通部(16b)は、三室以上の分割室(16a)を連通するように二箇所以上に設けられており、開閉手段(60)は、該二箇所以上の連通部(16b)に対応して配置された複数の回転体(61)と、該複数の回転体(61)を連結する回転軸(63)とを備え、回転駆動機構(62)による回転軸(63)の回転で複数の回転体(61)が一体に回転するように構成してよい。これによれば、各分割室を連通する連通部を開閉可能とするための構成を簡単な機構で実現できる。
【0013】
この場合、上記複数の回転体(61)のうち少なくともいずれかの回転体(61)の開口部(61a)又はそれに対応する連通部(16b)を、回転体(61)の回転方向に沿う複数の位置に設けてもよい。これによれば、隣接する分割室が連通する連通部の断面積を広く確保でき、また、回転体の回転角度に応じて連通部の断面積を可変させることが可能となるので、蓄熱要素の蓄熱及び放熱を効率良く行え、車両で発生した熱エネルギーの効率的な利用の促進を図ることができる。
【0014】
また、この場合、上記複数の回転体(61)それぞれに設けた開口部(61a)又はそれに対応する連通部(16b)の少なくともいずれかを、回転体(61)の回転方向において互いに異なる位置に配置することで、開口部(61a)の一致により開通する連通部(16b)の数を回転体(61)の回転角度に応じて任意に設定できるようにしてもよい。これによれば、回転体の回転方向の角度を変化させるだけで、連通する分割室の個数を任意に設定することが可能となる。したがって、開閉手段の構成が簡単でありながら、蓄熱要素の蓄熱及び放熱を効率良く行えるようになり、車両で発生した熱エネルギーの効率的な利用の促進を図ることができる。
【0015】
また、本発明では、上記の開閉手段(60)が備える回転体(60)の回転により、蓄熱要素(20)の過冷却状態の解除動作が行われるようにしても良い。この具体例としては、開閉部材の移動により、開閉部材の面がそれに接する蓄熱要素に対して相対的に移動することで、その部分の蓄熱要素の過冷却状態が解除される(発核が行われる)ようにすることが挙げられる。
【0016】
また、本発明の車両用暖機システムでは、蓄熱装置(10)へ流通させる熱伝達媒体は、内燃機関(30)の冷却水、内燃機関(30)の潤滑油、あるいは変速機(40)の作動油とすることができる。これらにより、内燃機関や駆動系機関の早期暖機を効果的に行えるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる車両用暖機システムによれば、蓄熱装置の構造の簡素化を図りながらも、蓄熱要素の蓄熱および放熱を短時間で効率的に行うことができ、暖機対象機関の早期暖機や車内の即効暖房を効果的に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。車両用暖機システム1は、蓄熱材20を有してなる蓄熱装置10と、エンジン30の冷却水(LLC)を蓄熱装置10および車内暖房装置44のヒータコア45へ循環させる冷却水循環路31と、自動変速機(AT)40の作動油(ATF)を蓄熱装置10へ循環させる作動油循環路41とを備えている。冷却水循環路31は、エンジン30に形成された水ジャケット(図示せず)から導出され、蓄熱装置10に連通し、蓄熱装置10の下流側でヒータコア45を通り、エンジン30の水ジャケットに再度導入されている。エンジン30に導入される直前位置には、冷却水ポンプ32が介装されている。冷却水ポンプ32は、エンジン30のクランク軸(図示せず)の回転に連動して駆動するようになっている。また、作動油循環路41には、作動油を流通させる作動油ポンプ(電動ポンプ)42と、作動油の温度を検出する油温センサ43が設置されている。蓄熱装置10は、詳細な構成は後述するが、冷却水循環路31に連通する冷却水流通室15と、蓄熱材20を収容した蓄熱材収容室16と、作動油循環路41に連通する作動油流通室17とを備えている。
【0019】
ヒータコア45は、詳細な図示は省略するが、車内に臨む空気導入ダクト内に設置されている。空気導入ダクト内には、ヒータコア45に風を送るための送風ファン46が組み込まれている。送風ファン46は、電子制御ユニット(以下、ECUという。)50によって作動を制御されるようになっている。ヒータコア45の送風下流側には、車内に連通する送風ダクトが設けられている。
【0020】
また、車内のコントロールパネル(図示せず)には、車内暖房用の暖房スイッチ51、及びデフロスタ吹出口から温風を吹き出すためのデフロスタスイッチ55が設けられている。暖房スイッチ51およびデフロスタスイッチ55のオン/オフ信号は、ECU50に出力されるようになっている。したがって、送風ファン46は、暖房スイッチ51やデフロスタスイッチ55のオン信号に応じて作動し、空気導入ダクトを介して吸い込んだ車内の空気を、ヒータコア45を通して送風ダクトから再び車内に吹き込むようになっている。また、暖機システム1は、外気温を検出する外気温センサ54を備えている。外気温センサ54の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。また、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという。)56の操作信号は、ECU50に送られるようになっている。
【0021】
冷却水循環路31における蓄熱装置10とヒータコア45の間には、冷却水循環路31の開閉を切り替える切替バルブ(開閉弁)33が設置されている。切替バルブ33は、ECU50からの信号で開閉が制御されるようになっている。以下では、切替バルブ33がオフであるというときは、切替バルブ33が開かれて、蓄熱装置10及びヒータコア45の冷却水が流通する状態を示し、切替バルブ33がオンであるというときは、切替バルブ33が閉じられて、蓄熱装置10及びヒータコア45の冷却水が流通しない状態を示す。
【0022】
また、エンジン30の冷却水をラジエター47へ循環させるラジエター用循環路35が設けられている。ラジエター用循環路35は、エンジン30の水ジャケットから出て、冷却水循環路31における冷却水ポンプ32の上流側に合流している。ラジエター用循環路35には、ラジエター47に連通する主流路35aとラジエター47をバイパスするバイパス流路35bが設けられている。ラジエター47の下流側におけるバイパス流路35bの合流部には、電子制御サーモスタット弁(三方弁)37が介装されている。電子制御サーモスタット弁37は、ECU50からの信号で開閉方向が制御されるようになっている。また、ラジエター用循環路35には、冷却水の水温を検出する水温センサ38が組み込まれている。水温センサ38の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。
【0023】
図2は、電子制御サーモスタット弁37の構成例を示す図である。以下では、電子制御サーモスタット弁37がオフであるというときは、同図(a)に示す状態、すなわち、主流路35aを開いてバイパス流路35bを閉じた状態を指し、電子制御サーモスタット弁37がオンであるというときは、同図(b)に示す状態、すなわち、主流路35aを閉じてバイパス流路35bを開いた状態を指すものとする。
【0024】
ECU50は、水温センサ38で検出した冷却水温が所定温度(例えば100℃)未満の場合、電子制御サーモスタット弁37をオンにすることで、冷却水がラジエター47へ流れないように制御する。一方、冷却水温が所定温度(例えば110℃)以上になった場合、電子制御サーモスタット弁37をオフにすることで、冷却水をラジエター47へ導くように制御する。
【0025】
ECU50には、無線により外部機器と交信が可能な受信装置52が接続されている。これにより、ECU50は、エンジンスタートキー53に設けたウォームアップスイッチ53aのオン/オフ信号を遠隔受信できるようになっている。したがって、乗員が車外でエンジンスタートキー53のウォームアップスイッチ53aを操作した場合、ECU50でその信号が受信され、ECU50は暖機システム1にウォームアップ指令を発することができる。
【0026】
図3は、蓄熱装置10の詳細構成を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。蓄熱装置10は、筒状体からなる筐体11と、筐体11の内部に設置された該筐体11よりも若干小径の筒状体からなる中間部材12と、中間部材12の内部に設置された仕切部材13とを備えた三重構造になっている。仕切部材13は、内部に収納空間を有しており、対向する一対の側面には複数のフィン13aが形成されている。フィン13aは、筐体11の上下方向に沿って延びる板状で、多数が横方向に所定間隔で配列されている。フィン13aの間には、同図(b)に示すように、仕切部材13の外側に通じる隙間13bが設けられている。
【0027】
上記の各部材で構成される蓄熱装置10では、筐体11と中間部材12の間は、エンジン30の冷却水が流通する冷却水流通室15になっている。中間部材12と仕切部材13の間は、自動変速機40の作動油が流通する作動油流通室17になっている。仕切部材13の内部は、蓄熱材20が密封状態で充填される蓄熱材収容室16になっている。
【0028】
筐体11の上下端の開口には、蓋部材14a,14bが取り付けられている。下側の蓋部材14aには、作動油流通室17に作動油を導入する作動油入口17aが設けられており、上側の蓋部材14bには、作動油を導出する作動油出口17bが設けられている。また、筐体11の上端近傍と下端近傍の側面には、それぞれ冷却水流通室15に冷却水を導入する冷却水入口15aと、冷却水を導出する冷却水出口15bとが設けられている。
【0029】
蓄熱材収容室16は、仕切部材13におけるフィン13aの内部に形成された複数の分割室16aを有している。分割室16aは、図3(b)に示すように、平面視の形状が細長い略矩形状の室であり、各分割室16aの平面視における長手方向の中間位置には、隣接する分割室16aを直線状に貫通する貫通部16cが形成されている。貫通部16c内には、直線棒状の回転軸63が設置されており、回転軸63上には、軸方向に沿って所定間隔で複数枚の回転板(回転体)61が設置されている。各回転板61はいずれも同形の円形平板状で、各フィン13aの一方の側面に面接触するように配置されている。そして、各フィン13aの回転板61に対向する位置には、連通部16bが形成されている。連通部16bはフィン13aを貫通して両側の分割室16a,16aを連通させる円形の貫通穴からなり、各フィン13aに設けた連通部16bは、回転軸63の軸方向に沿って一直線に配列されている。一方、回転板61の外周近傍には、該回転板61を貫通する円形の開口部61aが形成されている。開口部61aは、回転板61が回転軸63周りで回転する際、その回転角度に応じてフィンの連通部16bに対する位置が変化することで、連通部16bを開閉するようになっている。すなわち、開口部61aが連通部16bと一致することで、連通部16bが開通する。一方、回転板61の回転角度により、開口部61aが連通部16b以外の位置にあるときは、回転板61によって連通部16bが閉鎖される。
【0030】
また、回転軸63を回転させるための回転駆動機構62が設置されている。回転駆動機構62は、回転軸63の回転角度を制御しながら回転させることが可能なステッピングモータなどで構成されており、該回転駆動機構62は、ECU50の指令で動作するようになっている。上記の回転板61と回転軸63及び回転駆動機構62で、各連通部16bの開閉状態を切り替える開閉手段60が構成されている。
【0031】
なお、図3(b)では、一枚のフィン13aに設けた連通部16bとそれに対応する一個の回転板61に設けた開口部61aをいずれも1個のみとしているが、一枚のフィン13aに複数の連通部16bを設けたり、一個の回転板61に複数の開口部61aを設けたりすることも可能である。また、一枚のフィン13aの連通部16bとそれに対応する一個の回転板61の開口部61aとを複数個ずつ設け、複数個の開口部61aが複数個の連通部16bに同時に一致するように構成すれば、分割室16aの間を連通する連通部16bの断面積を広く確保できるようになる。
【0032】
図4は、回転板61の詳細構成を示す図で、(a)は、図3のB−B矢視図、(b)と(c)はそれぞれ(a)のC−C矢視断面図である。同図に示すように、回転板61の開口部61aは、その内周端面が回転板61の板面(表面)61cに対して傾斜する傾斜面61bとして形成されている。すなわち、図4(b)に示す構成例では、開口部61aの内周端面が回転軸63方向の中央から両側に向かって次第に拡径する傾斜面61bになっており、内周端面の中央が開口部61aの中心に向かって鋭角状に突出している。また、図4(c)に示す構成例では、開口部61aの内周端面が回転軸63方向の一端から他端に向かって次第に拡径する傾斜面61bになっており、内周端面の一端が開口部61aの中心に向かって鋭角状に突出している。本実施形態の開閉手段60では、回転板61の開口部61a内に分割室16aの蓄熱材20が入り込んだ状態で回転板61を回転させる必要があるが、開口部61aの内周端面を上記のような傾斜面61bとすれば、回転板61が回転する際、開口部61a内の蓄熱材20が傾斜面61bに沿って滑らかに移動するようになるので、開口部61a内の蓄熱材20で回転板61の回転が妨げられずに済む。したがって、蓄熱材20から受ける抵抗を低減できるので、回転板61をスムーズに回転させることが可能となる。
【0033】
図5は、複数の分割室16aを連通する連通部16b及び回転板61に設けた開口部61aの配置構成の一例を模式的に示す図である。なお、以下の説明で、上下左右というときは、図5乃至図8に記載した各矢視図における上下及び左右を指すものとする。また、ここでは、説明の都合上、蓄熱装置10の分割室16aをP室、Q室、R室、S室の四室のみとし、P室、Q室、R室にそれぞれ回転板61を設置した場合を示している。P室とQ室を連通する連通部16bは、図5のI−I矢視に示すように、回転軸63の周囲において上下及び右側の三箇所に90度間隔で配置されている。また、Q室とR室を連通する連通部16bは、図5のII−II矢視に示すように、回転軸63の周りにおける上側と右側の二箇所に90度間隔で配置されている。また、R室とS室を連通する連通部16bは、図5のIII−III矢視に示すように、上側の一箇所のみに配置されている。一方、P室に設置した回転板61に設けた開口部61aと、Q室に設置した回転板61に設けた開口部61aと、R室に設置した回転板61に設けた開口部61aとは、いずれも回転板61の回転方向における同位相の位置に1個だけ形成されている。
【0034】
図6は、図5に示す配置構成における連通部16bの開閉状態を説明するための図である。同図を用いて、回転板61の回転に伴う連通部16bの開閉について説明する。なお、図6及び下記の図8では、連通部16bに一致して該連通部16bを開通させている開口部61aを白抜きで示し、連通部16bと一致していない開口部61aをハッチングで示している。まず、図6(a)に示すように、各回転板61の開口部61aが左側に位置するときは、いずれの連通部16bにおいても、開口部61aと連通部16bの位置が一致しておらず、三箇所の連通部16bのすべてが閉鎖された状態になっている。したがって、P室、Q室、R室、S室の間がそれぞれ区切られており、各室が独立している。その状態から、三個の回転板61が一体に回転して、図6(b)に示すように、開口部61aが下側に位置するときは、P室とQ室の間の連通部16bが開通し、Q室とR室の間の連通部16b、R室とS室の間の連通部16bは、いずれも閉鎖した状態となる。これにより、P室とQ室が連通し、R室とS室は互いに独立した状態になっている。その位置からさらに回転板61が回転して、図6(c)に示すように、各回転板61の開口部61aが図の向かって右側に位置するときは、P室とQ室の間の連通部16b、及びQ室とR室の間の連通部16bが開通し、R室とS室の間の連通部16bは閉鎖した状態となる。これにより、P室とQ室とR室が互いに連通し、S室は独立した状態になる。その位置からさらに回転板61が回転して、図6(d)に示すように、各回転板61の開口部61aが上側に位置するときは、P室とQ室の間の連通部16b、及びQ室とR室の間の連通部16b、及びR室とS室の間の連通部16bが開通する。これにより、P室とQ室とR室とS室のすべてが互いに連通した状態になる。
【0035】
図7は、連通部16b及び開口部61aの他の配置構成例を模式的に示す図である。同図に示す例では、P室とQ室を連通する連通部16b、Q室とR室を連通する連通部16b、R室とS室を連通する連通部16bのいずれもが、図5のI−I矢視、II−II矢視、III−III矢視に示すように、回転軸63の外周における上側一箇所にのみ設けられている。一方、P室に設置した回転板61の開口部61aは、IV−IV矢視に示すように、左右及び下側の三箇所に90度間隔で配置されている。また、Q室に設置した回転板61の開口部61aは、V―V矢視に示すように、右側と下側の二箇所に90度間隔で配置されている。また、R室に設置した回転板61の開口部61aは、VI―VI矢視に示すように、右側一箇所のみに配置されている。
【0036】
図8は、図7に示す配置構成での連通部16bの開閉状態を説明するための図である。同図を用いて、回転板61の回転に伴う連通部16bの開閉について説明する。まず、図8(a)に示すように、P室に設置した回転板61の三個の開口部61aが左右及び下側に位置し、Q室に設置した回転板61の二個の開口部61aが右側と下側に位置し、R室に設置した回転板61の一個の開口部61aが右側に位置するとき、いずれの連通部16bにおいても、開口部61aと連通部16bが一致せず、三箇所の連通部16bすべてが閉鎖された状態になっている。したがって、P室、Q室、R室、S室の間がそれぞれ区切られており、各室が独立している。その状態から、各回転板61が同図の時計回りに90度回転し、(b)に示す状態になったとき、P室とQ室の間の連通部16bが開通し、Q室とR室の間の連通部16b、R室とS室の間の連通部16bは、いずれも閉鎖した状態となる。これにより、P室とQ室が連通し、R室とS室は、互いに独立した状態となる。その位置からさらに回転板61が時計回りに90度回転し、(c)に示す状態になったとき、P室とQ室の間の連通部16b、及びQ室とR室の間の連通部16bが開通し、R室とS室の間の連通部16bは閉鎖した状態となる。これにより、P室とQ室とR室が互いに連通し、S室は独立した状態となる。その位置からさらに回転板61が時計回りに90度回転し、(d)に示す状態になったとき、P室とQ室の間の連通部16b、及びQ室とR室の間の連通部16b、及びR室とS室の間の連通部16bが開通する。これにより、P室とQ室とR室とS室のすべてが互いに連通した状態になる。
【0037】
図3に戻り、蓄熱装置10では、蓄熱材収容室16と作動油流通室17とが隣接して配置され、かつ、作動油流通室17と冷却水流通室15とが隣接して配置されている。したがって、蓄熱材収容室16の蓄熱材20と作動油流通室17の作動油との間で直接的に熱交換を行え、かつ、作動油流通室17の作動油と冷却水流通室15の冷却水との間で直接的に熱交換を行える。なお、冷却水流通室15の冷却水と蓄熱材収容室16の蓄熱材20との間でも、作動油流通室17の作動油を介して間接的に熱交換が行える。
【0038】
筐体11は、冷却水に対する防錆性などの耐久性があり、且つ断熱性の良好な材料、例えば、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で構成されている。この筐体11は、図示は省略するが、断熱性を高めるため、内部に真空の断熱層を形成してもよい。また、中間部材12および仕切部材13は、冷却水、作動油、蓄熱材20に対する耐久性があり、且つ比較的熱伝導性の高い材料、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成するとよい。
【0039】
蓄熱材20は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材であり、凝固点以下になっても液状のままで固化しない性質を有している。このような蓄熱材20として、例えば、酢酸ナトリウム水和物からなる蓄熱材が挙げられる。酢酸ナトリウム水和物は、後述する解除手段による過冷却状態の解除によって、平衡状態に戻って固化する際に発熱し、温度の低い他の媒体を加熱することができる。したがって、蓄熱材20は、作動油あるいは冷却水など熱伝達媒体からの熱供給により、熱を蓄熱して固相から液相へ相変化(融解)し、その後の温度低下により、液相の状態を保ったまま過冷却状態となる。一方、解除手段による過冷却状態の解除により、蓄熱を放出して液相から固相へ相変化(固化)する。
【0040】
さらに、本実施形態では、過冷却状態の解除により蓄熱材20が液相から固相へ相変化した状態で、分割室16aの回転板61をスムーズに回転させる必要がある。そのため、例えば、上記の酢酸ナトリウム水和物からなる蓄熱材20にゲル化剤や水を添加する処理などを施すことで、蓄熱材20が固相へ相変化した後も所定の流動性を有するようにしておくことが望ましい。なお、ここでいう所定の流動性とは、具体的には、固相状態の蓄熱材20において、固形状の成分が液体中に混合している混濁液状態(サスペンジョン)を指し、液体中に固形物が浮遊しているような状態をいう。蓄熱材20が固相へ相変化したときにこのような状態であれば、蓄熱材20に接している回転板61をスムーズに回転させることが可能となる。
【0041】
蓄熱材収容室16の蓄熱材20中には、蓄熱材20の過冷却状態を解除する解除手段(以下、発核装置という。)25が設置されている。図9は、発核装置25を示す概略側面図である。発核装置25は、蓄熱材20中に設置された円形平板状の金属バネ部材26と、金属バネ部材26に打撃を与えるソレノイド27とを備えている。ソレノイド27は、ECU50の指令に応じて動作する。金属バネ部材26は、同図(a)に示す状態において、ソレノイド27による打撃で中央部26aが押圧されると、同図(b)に示すように、該中央部26aが反転するようになっている。これにより、蓄熱材20中に核が生成(発核)され、蓄熱材20の過冷却状態が解除されて固化が始まる。なお、解除手段としては、蓄熱材20中に核を生成可能な手段であれば、何れの手段でもよく、上記以外にも、例えば、蓄熱材20中で金属摩擦あるいは電圧印加などを施す手段であってもよい。
【0042】
ここでは、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材の代表例として酢酸ナトリウム水和物を挙げたが、他にも、水和塩化合物(化学式としてMx・nH2O(n:整数)で表わされるもの)を挙げることができ、Na2SO4・10H2O,CaCl2・6H2Oを例示することができる。
【0043】
図10は、上記構成の暖機システム1における運転モードのタイムチャートを示すグラフである。同図に示すように、暖機システム1の運転モードは、モード0からモード3までの4段階に切り替わる。モード0は、エンジン30が停止している間のモードである。モード1は、IGスイッチ56がオンされてエンジン30が始動してから、冷却水温度が所定温度に達するまでのモードであり、この間、自動変速機40の作動油が蓄熱材20によって加熱される。また、エンジン30は自己暖機する。モード2は、冷却水温度が前記の所定温度に達した後、作動油の油温が所定温度に達したことで自動変速機40の暖機が完了したと判断されるまでのモードであり、この間、自動変速機40の作動油がエンジン30の冷却水によって加熱される。また、エンジン30の冷却水は、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御(DUTY制御)される。モード3は、自動変速機40の暖機が完了したと判断された後のモードであり、この間、自動変速機40の作動油がエンジン30の冷却水によって冷却される。また、エンジン30の冷却水は、モード2と同様、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御される。
【0044】
図11は、暖機システム1の制御手順を示すメインフローである。この制御手順では、まず、後述するモード切替のサブルーチンを実行する(ステップST1)。その結果に基づき、モード0であるか否かを判定する(ステップST2)。モード0であれば(Y)、モード0のサブルーチンを実行し(ステップST3)、モード0でなければ(N)、モード1か否かを判定する(ステップST4)。その結果、モード1であれば(Y)、モード1のサブルーチンを実行し(ステップST5)、モード1でなければ(N)、モード2か否かを判定する(ステップST6)。その結果、モード2であれば(Y)、モード2のサブルーチンを実行し(ステップST7)、モード2でなければ(N)、モード3のサブルーチンを実行する(ステップST8)。
【0045】
図12は、モード切替手順を説明するためのフローチャートである。モード切替では、まず、IGスイッチ56がオンであるか否かを判定する(ステップST10)。その結果、IGスイッチ56がオンでなければ(N)、モード0をセットする(ステップST11)。IGスイッチ56がオンであれば(Y)、モード2以上か否かを判定し(ステップST12)、モード2以上でなければ(N)、冷却水温TWが♯TW1Lより低いか否かを判定し(ステップST13)、冷却水温TWが♯TW1Lより低ければ(Y)、モード1をセットする(ステップST14)。♯TW1Lの具体例は、100℃である。また、先のステップST12でモード2以上である場合(Y)は、続けてモード2か否かを判定し(ステップST15)、モード2である場合(Y)、あるいは先のステップST13で冷却水温TWが♯TW1L以上である場合(N)は、作動油温TATFが♯TATF1Lより低いか否かを判定する(ステップST16)。♯TATF1Lの具体例は、100℃である。その結果、作動油温TATFが♯TATF1Lより低ければ(Y)、モード2をセットし(ステップST17)、作動油温TATFが♯TATF1L以上であれば(N)、モード3をセットする(ステップST18)。また、先のステップST15でモード2でない場合(N)は、モード3をセットする(ステップST18)。
【0046】
図13は、モード0の手順を説明するためのフローチャートである。モード0では、まず、ウォームアップ信号の入力の有無を判定する(ステップST0−1)。この結果、ウォームアップ信号の入力が無い場合(N)は、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。一方、ウォームアップ信号の入力が有る場合(Y)は、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST0−3)。♯TW3の具体例は、60℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW3以上であれば(N)、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。つまり、始動時に冷却水温が十分に高い場合は、蓄熱装置10によるエンジン30や自動変速機40の暖機は不要であると判断して、蓄熱材20を発核させず、蓄熱装置10の自己暖機は行わない。一方、冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25がオンであるか否かを判定する(ステップST0−4)。その結果、発核装置25がオフであれば(N)、発核装置25をオンする(ステップST0−5)。
【0047】
ここで、蓄熱材収容室16に設置された発核装置25をオンする際には、あらかじめ回転駆動機構62により、各回転板61を各連通部16bが開通する角度位置とし、複数の分割室16aを連通させておく。これにより、各分割室16a内の蓄熱材20が連通部16bを介して一体化した状態になるので、発核装置25の発核動作により、発核装置25が配置された一の分割室16a内で最初に起こる蓄熱材20の固化が、隣接する他の分割室16aの蓄熱材20に順次伝播し、やがて蓄熱材収容室16の蓄熱材20全体に拡散する。したがって、一の発核装置25による発核動作のみで、複数の分割室16aの蓄熱材20全体を固化させて蓄熱を放出させることができる。
【0048】
一方、先のステップST0−4で発核装置25がオンであれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST0−6)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。また、このモード0では、切替バルブ33はオフにしておき(ステップST0−7)、電子制御サーモスタット弁37はオフにしておく(ステップST0−8)。その後、モード0の手順を終了してメインフローに戻る。
【0049】
図14は、モード1の手順を説明するためのフローチャートである。モード1では、まず、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST1−1)。その結果、冷却水温TWが♯TW3以上であれば(N)、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。つまり、始動時に冷却水温が十分に高い場合は、蓄熱装置10によるエンジン30や自動変速機40の暖機は不要であると判断し、蓄熱材20を発核させず、蓄熱材20による冷却水や作動油の加熱を行わない。一方、冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25がオンであるか否かを判定する(ステップST1−3)。その結果、発核装置25がオンで無ければ(N)、発核装置25をオンする(ステップST1−4)。この場合も、蓄熱材収容室16に設置された発核装置25をオンする際、あらかじめ各回転板61を各連通部16bが開通する角度位置とし、複数の分割室16aを連通させておく。
【0050】
一方、先のステップST1−3で発核装置25がオンであれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST1−5)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。続けて、外気温が所定温度以上であり、かつデフロスタスイッチ55がオフであるか否かを判定する(ステップST1−6)。その結果、外気温が所定温度以下、またはデフロスタスイッチ55がオンである場合(N)は、切替バルブ33をオフすることで(ステップST1−7)、蓄熱装置10から出た冷却水をヒータコア45に流通させる。つまりこの場合は、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を行いながら、蓄熱装置10による車内暖房も行う。一方、外気温が所定温度以上であり、かつデフロスタスイッチ55がオフである場合(Y)は、切替バルブ33をオンすることで(ステップST1−8)、蓄熱装置10から出た冷却水をヒータコア45には流通させない。つまりこの場合は、蓄熱装置10による自動変速機40の暖機を優先的に行い、車内暖房は行わない。また、モード1では、電子制御サーモスタット弁37をオンしておき(ステップST1−9)、ラジエター47には冷却水を流通させず、冷却水が早期に温まるようにする。その後、モード1の手順を終了してメインフローに戻る。
【0051】
図15は、モード2の手順を説明するためのフローチャートである。モード2では、発核装置25をオフする(ステップST2−1)。さらに、切替バルブ33をオフすることで(ステップST2−2)、蓄熱装置10からの冷却水をヒータコア45に流通させる。そして、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定する(ステップST2−3)。その結果、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW1Hより低いか否かを判定する(ステップST2−4)。♯TW1Hの具体例は、105℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW1H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフすることで(ステップST2−6)、ラジエターに冷却水を流通させる。一方、冷却水温TWが♯TW1Hより低い場合(Y)は、電子制御サーモスタット弁37をオンのままとし(ステップST2−7)、ラジエター47に冷却水を流通させない。また、先のステップST2−3で電子制御サーモスタット弁37がオフである場合(N)は、冷却水温TWが♯TW1Lより高いか否かを判定する(ステップST2−5)。その結果、冷却水温TWが♯TW1Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフのままとし(ステップST2−6)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST2−7)。その後、スタートに戻り上記の手順を反復する。つまり、モード2では、冷却水温TWが♯TW1H以上に上昇した場合は、ラジエター47による冷却を行い、冷却水温TWが♯TW1L以下に低下した場合は、ラジエター47による冷却を停止する。これにより、図10に示すように、冷却水温TWが常に♯TW1Lと♯TW1Hの間の範囲内に収まるように制御する。
【0052】
図16は、モード3の手順を説明するためのフローチャートである。モード3では、まず、発核装置25はオフである(ステップST3−1)。また、切替バルブ33はオフであり(ステップST3−2)、蓄熱装置10から出た冷却水がヒータコア45に流通している。そして、作動油温TATFが♯TATF1Hよりも低いか否かを判定する(ステップST3−3)。♯TATF1Hの具体例は、110℃である。その結果、作動油温TATFが♯TATF1Hよりも低ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定する(ステップST3−4)。オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW1Hより低いか否かを判定する(ステップST3−5)。冷却水温TWが♯TW1H以上であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−7)、冷却水温TWが♯TW1Lより低ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−8)。一方、先のステップST3−4で電子制御サーモスタット弁37がオンでない場合(N)は、冷却水温TWが♯TW1Lより高いか否かを判定する(ステップST3−6)。その結果、冷却水温TWが♯TW1Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−7)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−8)。つまり、自動変速機40の作動油温が狙い範囲(TATF<♯TATF1H:110℃)にある場合は、冷却水温をそれ以上低くする必要がないため、該冷却水温を燃費優先のいわゆる燃費狙い値(♯TW1L:100℃<TW<♯TW1H:105℃)になるように制御する。
【0053】
一方、先のステップST3−3において、作動油温TATFが♯TATF1H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37が既にオンしているか否かを判定し(ステップST3−9)、オンしていれば(Y)、冷却水温TWが♯TW2Hより低いか否かを判定する(ステップST3−10)。♯TW2Hの具体例は、85℃である。冷却水温TWが♯TW2H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−12)、冷却水温TWが♯TW2Hより低い場合(Y)は、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−8)。一方、先のステップST3−9で電子制御サーモスタット弁37がオンでない場合(N)は、冷却水温TWが♯TW2Lより高いか否かを判定する(ステップST3−11)。♯TW2Lの具体例は、80℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW2Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−12)、冷却水温TWが♯TW2L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−8)。つまり、自動変速機40の作動油温が狙い範囲(TATF<♯TATF1H:110℃)と比べて高すぎる場合は、エンジン30の冷却水温を低く抑える必要があるため、該冷却水温を作動油の冷却を優先する温度(♯TW2L:80℃<TW<♯TW2H:85℃)となるように制御する。
【0054】
ここで、蓄熱材収容室16内の蓄熱材20が、モード1における過冷却状態の解除(発核)により固相(放熱完了)状態になっているときは、モード2あるいはモード3において、作動油流通室17を流通する作動油から熱が供給されることで、蓄熱材20への蓄熱が行われる。この場合、回転駆動機構62により回転板61の回転方向の角度を調整することで、各回転板61で各連通部16bを閉鎖して、各分割室16aが仕切られた状態にしておく。こうすることで、蓄熱材収容室16内の蓄熱材20の全容量が大きい場合でも、各分割室16aに分割して収容された蓄熱材20ごとに蓄熱を行わせることができるようになり、蓄熱材20への蓄熱を効率良く完了させることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の車両用暖機システム1によれば、発核装置25による発核(蓄熱材20の過冷却状態の解除)時には、開閉手段60により連通部16bを開いて複数の分割室16aを連通させるようにしている。これにより、複数の分割室16a内の蓄熱材20を一体化することができるので、発核装置25は、各分割室16aに設ける必要は無く、いずれか一の分割室16aにのみ設ければ足りる。したがって、発核装置25の設置数を少なくすることができるので、蓄熱装置10の部品点数を少なく抑えることができ、蓄熱装置10の構造の簡素化、小型化、軽量化を図ることができる。
また、蓄熱材20の蓄熱時には、開閉手段60により連通部16bを閉じて、蓄熱材収容室16を複数の分割室16aに分割するようにしている。これにより、蓄熱材収容室16の蓄熱材20の全容量が大きい場合でも、各分割室16aに分割して収容した蓄熱材20ごとに蓄熱を行うことができるので、蓄熱材20の蓄熱を効率良く完了させることが可能となる。
これらにより、蓄熱装置10の構造の簡素化を図りながらも、蓄熱材20の蓄熱および放熱を短時間で効率的に行うことができ、自動変速機40やエンジン30の早期暖機、あるいは車内の即効暖房を効果的に行えるようになる。
【0056】
また、この車両用暖機システム1では、連通部16bの開閉状態を切り替える開閉手段60として、分割室16a内で連通部16bに対向して配置された開口部61aを有する回転板61と、該回転板61をその板面61cに沿って回転させる回転駆動機構62と、を備え、回転駆動機構62による回転板61の回転により、連通部16bに対する開口部61aの位置が変化することで、連通部16bの開閉状態が切り替わるようにしている。この構成によれば、蓄熱材20中にある回転板61をその板面61cに沿って回転させるので、蓄熱材20から受ける抵抗を極力低減した状態でスムーズに回転させることができ、連通部16bの開閉の切り替えが容易に行えるようになる。したがって、過冷却解除(発核)による放熱後に粘度が高くなって流動性が低下した蓄熱材20中でも、小さな駆動力で確実に回転板61を回転させて連通部16bを開閉できるので、回転駆動機構62の小型化及び構成の簡素化を図ることができ、蓄熱装置10の小型化や低コスト化につながる。
【0057】
また、本実施形態では、回転板61に設けた開口部61aの内周端面を、該回転板61の板面61cに対して傾斜する傾斜面61bとしている。この点、本実施形態の開閉手段60では、回転板61の開口部61aに分割室16a内の蓄熱材20が入り込んだ状態で回転板61を回転させる必要があるが、開口部61aの内周端面を傾斜面61bとしていることで、回転板61が回転する際、開口部61a内の蓄熱材20が開口部61aの内周端面に沿って滑らかに移動するので、開口部61a内の蓄熱材20で回転板61の回転が妨げられずに済む。したがって、蓄熱材20から受ける抵抗をさらに低減した状態で回転板61をスムーズに回転させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態の車両用暖機システム1では、複数の分割室16aを連通する複数の連通部16bを備えており、開閉手段60は、該複数の連通部16bに対応して配置された複数の回転板61と、該複数の回転板61を連結する回転軸63とを備え、回転駆動機構62による回転軸63の回転で複数の回転板61が一体に回転するように構成している。このような機構を採用したことで、複数の分割室16aを連通する複数の連通部16bを同時に開閉できる機構を簡単な構成で実現している。
【0059】
また、図5及び図7に示す構成例では、各回転板61の開口部61a又はそれに対応する連通部16bを回転板61の回転方向に沿う複数の位置に設けている。これにより、回転板61の回転角度に応じて、開通する連通部16bの数、すなわち連通する分割室16aの数を可変させることが可能となるので、蓄熱材20の蓄熱及び放熱を効率良く行えて、車両で発生した熱エネルギーの効率的な利用の促進を図ることができる。
【0060】
また、図5及び図7に示す構成例では、上記複数の回転板61それぞれに設けた開口部61a又はそれに対応する連通部16bの少なくともいずれかを、回転板61の回転方向において互いに異なる位置に配置することで、回転板61の回転角度に応じて開口部61aの一致により開通する連通部16bの数を任意に設定できる。これによれば、回転板61における回転方向の角度を変化させるだけで、連通する分割室16aの個数を任意に設定することが可能となる。したがって、開閉手段60の構成が簡単でありながら、蓄熱材20の蓄熱及び放熱を効率良く行えるようになり、車両で発生した熱エネルギーの効率的な利用の促進を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態の開閉手段60では、図4(a)に示すように、蓄熱材20中で回転板61が回転するため、蓄熱材20に接触している回転板61の板面61cが蓄熱材20に対して相対的に移動することで、その部分の蓄熱材20に刺激が与えられて、該蓄熱材20中に核が生成(発核)されるようになる。このことを利用すれば、回転板61を回転させて連通部16bを開閉するだけで、蓄熱材20を発核させることができるので、蓄熱材20の過冷却状態の解除を簡単に行えるようになる。特に、本実施形態では、回転軸63を介して回転板61を回転させるという簡単な構成の開閉手段60により、蓄熱材20の放熱を効率良く行わせることが可能となる。
【0062】
また、回転板61の回転に伴う発核動作を利用すれば、複数の分割室16aにおいて同時に蓄熱材20を発核させることができるので、各分割室16aに収容された蓄熱材20の過冷却状態の解除を一の動作で同時に行うことが可能となる。したがって、蓄熱材20の放熱時間を短縮でき、蓄熱を利用した暖機を迅速に行えるようになる。なお、上記のような回転板61の回転による発核動作だけで各分割室16aに収容された蓄熱材20を十分に発核させることができる場合は、発核装置25の設置を省略することも可能である。
【0063】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる車両用暖機システムについて説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。
【0064】
図17は、第2実施形態の車両用暖機システムが備える蓄熱装置10−2の詳細構成を示す図で、図3(a)のA−A部分に相当する矢視断面図である。本実施形態の蓄熱装置10−2では、分割室16aにおける回転板61の外側に、該回転板61と蓄熱材20との間を仕切るカバー部材65を設置している。カバー部材65は、フィン13aの回転板61側の面に形成されており、回転板61の回転外周側の端面及び回転板61の板面(分割室16a側の面)61cとを囲む形状に形成されている。カバー部材65には、開口部61aに蓄熱材20を流通させるためのスリット部65aが設けられている。スリット部65は、連通部16bに一致したときの開口部61aに対向する位置に設けられており、カバー部材65を貫通するスリット状に形成されている。また、カバー部材65の内部には、フィン13aの外側に設けた作動油流通室17(隙間13b)に通じる通路65bが形成されており、該通路65bには、作動油流通室17からの作動油が流通するようになっている。
【0065】
本実施形態では、回転板61と蓄熱材20との間を仕切るカバー部材65を設置したことで、蓄熱材20と回転板61との接触面積を減らすことができるので、回転板61が回転する際に蓄熱材20によって生じる粘着抵抗を低減できる。したがって、蓄熱材20の状態に関わらず、回転板61をよりスムーズに回転させることが可能となる。
【0066】
また、カバー部材65の内部に、作動油流通室17に通じる通路65bを形成している。これにより、カバー部材65に接する蓄熱材20とカバー部材65の通路65bを流通する作動油(熱伝達媒体)との間でも熱交換が行えるようになるので、蓄熱材20による作動油の加温や作動油による蓄熱材20への蓄熱の効率を向上させることが可能となる。
【0067】
〔第3実施形態〕
図18は、第3実施形態の車両用暖機システム1−3の構成例を示す概略図である。この暖機システム1−3が備える蓄熱装置10−3は、第1実施形態の蓄熱装置10が備える作動油流通室17に代えて、エンジン30の潤滑油を流通させる潤滑油流通室14を備えている。また、それに伴い、自動変速機40と蓄熱装置10との間で作動油を循環させていた作動油循環路41に代えて、エンジン30と蓄熱装置10−3との間で潤滑油を循環させる潤滑油循環路36を設けている。なお、潤滑油循環路36には、潤滑油を流通させる潤滑油ポンプ(電動ポンプ)39が設置されている。
【0068】
蓄熱装置10−3では、蓄熱材収容室16(仕切部材13)が潤滑油流通室14内に設置されている。したがって、蓄熱材収容室16に収容された蓄熱材20は、潤滑油流通室14を流れる潤滑油からの熱供給で蓄熱される。また、発核装置25による過冷却状態の解除に伴う放熱は、主に潤滑油流通室14を流れる潤滑油に対して供給されるようになる。
【0069】
〔第4実施形態〕
図19は、第4実施形態の車両用暖機システムが備える蓄熱装置10−4の詳細構成を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。本実施形態の蓄熱装置10−4は、第1実施形態の蓄熱装置10が備える中間部材12を省略し、筐体11の内部に仕切部材13を設置した二重構造となっている。この蓄熱装置10−4では、筐体11と仕切部材13の間は、エンジン30の冷却水が流通する冷却水流通室15になっており、仕切部材13の内側は、蓄熱材20が密封状態で充填される蓄熱材収容室16になっている。本実施形態でも、蓄熱材収容室16が複数の分割室16aに分割されており、各分割室16aを連通する連通部16bを開閉するための開閉手段60が設置されている。なお、本実施形態では、蓄熱材収容室16に収容された蓄熱材20は、冷却水流通室15を流れる冷却水からの熱供給で蓄熱される。また、発核装置25による過冷却状態の解除に伴う放熱は、主に冷却水流通室15を流れる冷却水に対して供給されるようになる。
【0070】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、蓄熱装置10(10−2〜10−4)が備える蓄熱材収容室16の具体的な数や形状や配置、すなわち、各分割室16aや連通部16bや回転板61の具体的な数や形状や配置は一例であり、分割室16aや連通部16bや回転板61は、上記以外の数や形状や配置とすることも可能である。また、回転板61に設ける開口部61aや連通部16bの具体的な数や配置や形状も上記実施形態に示すものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。
【図2】電子制御サーモスタット弁の構成例を示す図である。
【図3】蓄熱装置の構成例を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】開閉手段の動作を説明するための図である。
【図5】分割室を連通する連通部及び回転板の開口部の配置構成の一例を模式的に示す図である。
【図6】図5に示す配置構成における連通部の開閉状態を説明するための図である。
【図7】連通部及び開口部の他の配置構成例を模式的に示す図である。
【図8】図7に示す配置構成での連通部の開閉状態を説明するための図である。
【図9】発核装置の構成例を示す図である。
【図10】暖機システムの運転モードのタイムチャートを示すグラフである。
【図11】暖機システムの制御手順を示すメインフローである。
【図12】運転モード切替手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】モード0の手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】モード1の手順を説明するためのフローチャートである。
【図15】モード2の手順を説明するためのフローチャートである。
【図16】モード3の手順を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の第2実施形態にかかる蓄熱装置の構成例を示す図で、図3(a)のA−A矢視に対応する部分の断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。
【図19】本発明の第4実施形態にかかる蓄熱装置の構成例を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用暖機システム
10 蓄熱装置
11 筐体
12 中間部材
13 仕切部材
14 潤滑油流通室(熱伝達媒体流通室)
15 冷却水流通室(熱伝達媒体流通室)
16 蓄熱材収容室(蓄熱要素収容室)
16a 分割室
16b 連通部
17 作動油流通室(熱伝達媒体流通室)
18 排気ガス流通室(熱伝達媒体流通室)
20 蓄熱材(蓄熱要素)
25 発核装置(過冷却解除手段)
30 エンジン(内燃機関)
31 冷却水循環路(熱伝達媒体流路)
34 排気ガス流路(熱伝達媒体流路)
35 ラジエター用循環路
36 潤滑油循環路(熱伝達媒体流路)
37 電子制御サーモスタット弁
38 水温センサ
40 自動変速機
41 作動油循環路(熱伝達媒体流路)
44 車内暖房装置
45 ヒータコア
46 送風ファン
47 ラジエター
51 暖房スイッチ
55 デフロスタスイッチ
56 イグニッションスイッチ(IGスイッチ)
60 開閉手段
61 回転板(回転体)
61a 開口部
61b 傾斜面
62 回転駆動機構
63 回転軸
65 カバー部材
65a スリット部
65b 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱要素と、該蓄熱要素の過冷却状態を解除する過冷却解除手段と、を有してなる蓄熱装置と、
暖機対象機関と前記蓄熱装置との間で熱伝達媒体を流通させる熱伝達媒体流路と、を備え、
前記蓄熱装置は、
前記熱伝達媒体流路からの熱伝達媒体が流通する熱伝達媒体流通室と、前記熱伝達媒体との熱交換が可能な蓄熱要素を収容した蓄熱要素収容室とを有し、
前記蓄熱要素収容室は、複数の分割室に分割されており、
前記複数の分割室を連通する連通部と、該連通部の開閉状態を切り替える開閉手段と、を備え、
前記開閉手段は、前記分割室内で前記連通部に対向して配置された開口部を有する平板状の回転体と、該回転体をその板面に沿って回転させる回転駆動機構と、を備え、
前記回転駆動機構による前記回転体の回転により、前記連通部に対する前記開口部の位置が変化することで前記連通部の開閉状態が切り替わる
ことを特徴とする車両用暖機システム。
【請求項2】
前記過冷却解除手段は、前記複数の分割室のうちいずれか一の分割室のみに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項3】
前記蓄熱要素の蓄熱時には、前記開閉手段により前記連通部が開かれて前記複数の分割室が連通し、
前記過冷却解除手段による前記蓄熱要素の過冷却状態の解除時には、前記開閉手段により前記連通部が閉じられて前記蓄熱要素収容室が複数の分割室に分割されることを特徴とする請求項2に記載の車両用暖機システム。
【請求項4】
前記回転体の回転により前記蓄熱要素の過冷却状態の解除動作が行われるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項5】
前記回転体に設けた前記開口部の内周端面が、該回転体の板面に対して傾斜する傾斜面になっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項6】
前記分割室における前記回転体の外側に、該回転体と前記蓄熱要素との間を仕切るカバー部材を設置した
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項7】
前記カバー部材の内部に、前記熱伝達媒体流通室に通じる通路が形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用暖機システム。
【請求項8】
前記連通部は、三室以上の前記分割室を連通するように二箇所以上に設けられており、前記開閉手段は、該二箇所以上の連通部に対応して配置された複数の回転体と、該複数の回転体を連結する回転軸とを備え、前記回転駆動機構による前記回転軸の回転で前記複数の回転体が一体に回転する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項9】
前記複数の回転体のうち少なくともいずれかの回転体の開口部又はそれに対応する前記連通部は、前記回転体の回転方向における複数箇所に設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の車両用暖機システム。
【請求項10】
前記複数の回転体それぞれに設けた前記開口部又はそれに対応する前記連通部の少なくともいずれかは、前記回転体の回転方向において互いに異なる位置に配置されており、
前記回転体の回転角度に応じて、前記開口部が一致することで開通する前記連通部の数を任意に設定できる
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車両用暖機システム。
【請求項11】
前記熱伝達媒体は、内燃機関の冷却水であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項12】
前記熱伝達媒体は、内燃機関の潤滑油であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項13】
前記熱伝達媒体は、変速機の作動油であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用暖機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−105570(P2010−105570A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280556(P2008−280556)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】