説明

車両用空調システム

【課題】 エアコンの冷暖房機能に不具合が生じた場合に、その不具合発生を検出し、早期かつ確実な不具合原因の特定が可能となる車両用空調システムを提供する。
【解決手段】 車両用空調システム1は、エアコンECU100に接続され車内空調制御に関与する車内ないし車外の環境状態を検出するセンサ120の検出値に基づいて、エアコン動作不良を検出し、該動作不良を検出した際に、不良発生時の、時刻、センサ情報、アクチュエータ情報、ECU内部RAM情報、ナビ情報等を制御ログとして収集・記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実開平3−28442号公報
【特許文献2】特開2005−263196号公報
【0003】
車両用空調システムでは、耐用年数をすぎると、エアコンの効きが悪くなる、あるいは冷暖房機能の一部が使用できないなど、ユーザーが異常あるいは故障と判断して、ディーラーに修理の依頼をするケースがある。こうした場合、ディーラーは制御ログ等を参照してその修理に当たることになる。その修理方法としては、特許文献1及び特許文献2のような技術の開示がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ディーラーによる修理の際に、不具合が再現しない等、故障要因の特定ができないケースが多数あり、こうした場合、その暫定対策としてエアコンECUの交換が行われることがある。このように、エアコンECUに必ずしも故障要因があるわけではないにも関らず交換が実施されることは、ECUの生産サイドとしては当然本意ではなく、できる限り避けたい事態である。
【0005】
上記の特許文献1及び特許文献2の場合は、あくまでセンサやアクチュエータが常時故障しており、且つ、完全に故障(例えば、センサのOPEN、SHORT等)している場合に限り、ECUの内部記憶装置のデータを参照して故障検出が可能とされるが、特定の条件下でのみ生ずる故障や、空調出力部分自体の物理的な故障や破損等は、検出することができなかった。
【0006】
本発明の課題は、エアコンの冷暖房機能に不具合が生じた場合に、その不具合発生を検出し、早期かつ確実な不具合原因の特定が可能となる車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用空調システムは、
エアコンECUに接続され、車内空調制御に関与する車内ないし車外の環境状態を検出するエアコン用環境センサと、
エアコン用環境センサの検出状態に基づいてエアコンの動作不良を検出するエアコン動作不良検出手段と、
動作不良が検出された場合に、エアコンECU又は当該エアコンECUに通信接続された関連ECUによる制御ログを収集する制御ログ収集手段と、
動作不良と対応付けて、収集された制御ログを予め定められた制御ログ記録部に記録する制御ログ記録手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によると、車内空調制御に関与するエアコン用環境センサの検出結果に基づいて、エアコンの動作不良を早期かつ確実に検出することができる。そして、早期に検出された動作不良に対し制御ログの収集・記録がなされる。例えば、エアコン用環境センサの検出結果が車内空調制御の制御パラメータとして(フィードバック値として)用いられる場合には、それらセンサの検出結果から車内空調制御の状態を判定して、車両用空調システムに何らかの完全な故障が生じる前に動作不良を検出し、制御ログを収集できる。これにより、検出された動作不良の原因特定も早期にかつ確実に行うことができので動作不良の原因究明が行い易くなり、不必要なエアコンECU交換が行われにくくなる。
【0009】
上記構成における制御ログ収集手段は、制御ログとして動作不良の検出時刻を収集することができる。これにより、動作不良時刻を特定できるので、エアコン動作不良の原因を特定し易くなる。
【0010】
上記構成における制御ログ収集手段は、制御ログとしてエアコン用環境センサからの入力値を収集することができる。これにより、各種エアコン用環境センサの検出値のうち、異常値を検出したセンサあるいはその検出値からエアコン動作不良の原因を特定することができる。
【0011】
上記構成における制御ログ収集手段は、制御ログとしてエアコンに組み込まれたアクチュエータの制御位置情報を収集することができる。車両用空調システムでは、例えば、エアミックスダンパー、吹出口切替ダンパー、内外気切替ダンパー等がモーター等により駆動されており、それらダンパーがどの位置にあるかを特定できることで、エアコン動作不良の原因を特定することができる。
【0012】
上記構成における制御ログ収集手段は、制御ログとしてエアコンECUのRAMに記憶されたエアコン制御指令値を収集することができる。これにより、エアコン制御指令値どおりの車内空調制御が実現されているかを判定する形で、エアコン動作不良の原因を特定することができる。
【0013】
上記構成において、関連ECUにエンジンECUを含めて、上記の制御ログ収集手段が、制御ログとして、エアコンと連携動作するエンジン系被制御対象物の制御情報を、エンジンECUから通信取得するものとできる。この場合、エアコンと連携動作するエンジン系被制御対象物をコンプレッサーとすることができる。
【0014】
上記構成において、関連ECUに車載用ナビゲーション装置用ECUを含めて、制御ログ収集手段が、制御ログとして車載用ナビゲーション装置が検出する現在位置情報、進行情報、及び車両傾斜角度情報のうち少なくとも1以上のものを、車載用ナビゲーション装置用から通信取得するものとできる。この構成によると、現在位置情報として車両の現在位置を示す緯度・経度や走行中の道路種別、進行情報として車両の進行方向及び走行速度(車速)、車両傾斜角度情報として車両の傾斜角度(傾き)等の情報を取得して、車両の現在状況や車両外の要因を考慮に入れて、エアコン動作不良の原因を究明できる。
【0015】
上記構成における制御ログ収集手段は、不良検出後から一定期間の間、同一種別の制御ログを繰り返し受信するものとできる。これにより、ノイズ等の影響を排除できるとともに、その一定期間内に収集された制御ログの推移を考慮に入れて、エアコン動作不良の原因を究明できる。
【0016】
上記構成において、制御ログ収集手段により収集された制御ログを車外に無線出力する制御ログ無線出力手段を備えることができる。これにより、エアコン動作不良が検出されたときに収集された制御ログを、例えば外部のディーラーのサーバーに送信し、ディーラー側にて早期の動作不良の原因究明を行うことができる。
【0017】
上記構成における制御ログ記録部は、車載用ナビゲーション装置のハードディスク内に設けることができる。制御ログ情報の情報量は、本発明においては従来の場合よりも大となるため、従来のようなエアコン内に設けられた不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリやEEPROM)よりも、大容量を有するナビゲーション装置のハードディスクに制御ログ記録部を設ける方が効率的である。
【0018】
上記構成において、車室内の希望設定温度を設定する温度設定手段と、車室内温度を検出する内気センサと、内気センサにより検出される車室内温度が、温度設定手段により設定された希望設定温度となるように、エアコン用環境センサからの入力値に基づいて車室内の温度制御を実行する温度制御手段と、を備えて構成することができ、さらに、エアコン動作不良検出手段は、エアコン用環境センサからの入力値に基づいて、車室内温度の温度制御開始後における希望設定温度への到達所要時間を算出する到達時間算出手段と、車室内温度を温度制御開始後の経過時間と対応付けて計測する車室内温度計測手段と、その計測結果に基づいて到達所要時間経過後の車室内温度を特定する到達車室内温度特定手段と、特定された車室内温度が希望設定温度を基準に定められた目標温度範囲から外れた場合を動作不良として判定する動作不良判定手段と、を有して構成することができる。この構成によると、具体的なシステム内の故障が生ずる前の段階で生ずる、エアコンの冷暖房能力の低下を検出してエアコンの動作不良検出を行うことができる。これにより、エアコン動作不良を早期に検出できる。
【0019】
また、この構成における到達時間算出手段は、環境センサからの入力値に基づいて、エアコンが搭載された車両の温度制御開始時の熱負荷を算出し、その算出された前記熱負荷と、エアコンの予め定められた最大冷暖房能力とに基づいて、到達所要時間を算出することができる。車両の熱負荷は、走行状態に応じて変化するものである。エアコンの最大冷暖房能力は、車両に搭載されたエアコンの種別により異なる。上記構成によると、車両の熱負荷と、種別に応じたエアコンの最大冷暖房能力とに基づいて、到達所要時間が算出されるので、エアコン動作不良を高精度に検出可能となる。
【0020】
上記構成において、エアコン用環境センサに、内気センサ、車外温度を検出する外気センサ、車両への日射量を検出する日射センサ、及び車室内表面温度を検出するIRセンサを含むことができ、熱負荷算出手段は、それらエアコン用環境センサからの入力値に基づいて熱負荷を算出することができる。この構成によると、車両用空調システムの制御に既に用いられているエアコン用環境センサを用いて熱負荷を算出できるので、熱負荷算出用に新たな追加機器を設ける必要が無い。
【0021】
上記構成における熱負荷算出手段は、複数のエアコン用環境センサからの各検出値を用いて熱負荷を算出するとともに、それらエアコン用環境センサのうち車外環境要因を検出対象とする車外環境センサについては、1つの熱負荷の算出に際して互いに異なるタイミングで複数回の検出処理を実行し、各タイミングでの検出値に基づく代表検出値を用いて熱負荷を算出するものとして構成できる。外気センサや日射センサ等の車外環境センサは、車両の現在状況(トンネル内走行中等)に応じて値が大きく変化することがある。そのため、複数回の検出処理による検出値の中から代表検出値を定めることで、検出値の変動を考慮して適切な熱負荷を算出することができる。
【0022】
この場合、代表検出値として、複数の前記検出値のうち熱負荷を最大化するものを採用することができる。これにより、エアコン動作不良の誤検出を防ぐことができる。
【0023】
上記構成における到達時間算出手段は、エアコンを冷房として使用している場合には、該エアコンの最大冷房能力を用いて到達所要時間を算出し、同じく暖房として使用している場合には、該エアコンの最大冷房能力とは別に定められた最大暖房能力を用いて到達所要時間を算出することができる。これにより、冷房と暖房とを区別する形で適切な到達所要時間を算出でき、エアコン動作不良の検出精度が増す。
【0024】
上記構成における到達時間算出手段は、現在の日付及び時刻を取得する時間情報取得手段を備え、取得した前記日付及び時刻の情報に基づいて、到達所要時間を補正しつつ算出することができる。この構成によると、季節や時刻等により、算出される到達所要時間を適切な値に補正できるので、エアコン動作不良の検出精度が増す。
【0025】
上記構成において、車両の窓の開閉状態を検出する窓開閉状態検出手段を備え、前記エアコン動作不良検出手段は、前記窓開閉状態検出手段により前記窓の開状態が検出された場合には、前記動作不良の検出を行わないよう構成することができる。窓が開状態にある場合には、車室内温度は外気の影響を受けるため、エアコン制御のみでの温度制御が不可能となる。上記構成によると、窓の開状態においてのみエアコン動作不良の検出が実行されるので、無駄な処理を省略できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の車両用空調システムの構成するECUの連携を示す図であり、図2は、車両用空調システムの概要を簡略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態における車両用空調システム1では、多重通信バス(例えばCAN,Flex Ray,LIN等)900を介して、エアコンECU100、車載用ナビゲーション装置80と通信可能に接続されたナビゲーションECU800、エンジン制御を司るエンジンECU200、パワーウィンドウ(窓)の開閉駆動制御等を実行するドアECU(窓開閉状態検出手段)300、その他複数のECU(例えばECU400)、及びDCM(Data Communication Module)500が、互いに通信可能に接続されている。
【0027】
車両用空調システム1では、エアコンECU100が多重通信バス900を介してDCM(制御ログ無線出力手段)500に接続されているので、エアコンECU100からの出力指令に基づいて、車両Cの外部への情報出力が可能である。具体的には、図2に示すように、このDCM500から情報を出力すると、中継基地局B経由でディーラーのPCサーバーDに送信される。そして、この情報はディーラー側のPCサーバーDにおいて保存される。また、逆にディーラー側のPCサーバーDからも情報出力が可能であり、中継基地局B経由で車両Cに送信できる。この場合、DCM500が情報を受信する。
【0028】
次に、エアコンECU100について説明する。図3は、車両用空調システムを構成するエアコンECUのブロック図である。図3に示すように、エアコンECUは、車室内の空調装置の制御を司る制御装置であり、CPU101、ワークメモリやエアコン制御指令値の記憶領域を備えるRAM102、各種プログラムを記憶するROM103、バスライン104、入出力部(図中では「I/O」と表示)105、不揮発性メモリである外部メモリ106(例えばフラッシュメモリやEPROM等で構成される)、他のECU等と接続されるシリアル通信バス900に接続される通信インターフェース(図中では「I/F」と表示)107を備えるマイクロプロセッサとして構成される。入出力部105には、各種操作部110(111〜119)、各種センサ120(121〜126)、各種駆動部130(131〜133)、及びエアコンの設定状態を表示する表示部(本実施形態においては液晶表示部)が接続されている。
【0029】
なお、エンジンECU200、ドアECU300、及びナビゲーションECU800は、エアコンECU100と同様に、CPU,ROM,RAMを含んで構成される周知のマイクロプロセッサとして構成される。エンジンECU200には、車両CのIG及びアクセサリーのオン・オフを実行するための始動操作部(図中のIGスイッチ)210、コンプレッサー駆動部230が接続され、ドアECU300にはパワーウィンドウを駆動する駆動部(図中の窓駆動部)330が接続されている。
【0030】
図4は、エアコンECU100により制御されるエアコンユニットUの全体構成を概略的に示す図である。エアコンユニットUは、いわゆるHVAC(Heating, Ventilating and Air-Conditioning)ユニットであり、車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能に構成されている。
【0031】
エアコンユニットUのダクト28には、車内空気を循環させるための内気吸込口42と、車外の空気を取込む外気吸込口41とが形成されており、内外気切替ダンパー24によりいずれかに切替えて使用される。これら内気吸込口42ないし外気吸込口41からの空気は、ブロワ21によってダクト28内に吸い込まれる。
【0032】
ダクト28内には、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ22が設けられている。そして、エバポレータ22よりも下流側(吹出口側)は、運転席側の吹出口43〜45へ至る経路と助手席側の吹出口46,47へ至る経路に分岐している。
【0033】
エバポレータ22の下流には、エバポレータ22からの冷気を加熱して暖気を発生させるヒータコア23(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)が設けられており、これら冷気と暖気とがエアミックスダンパー25,26の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出口43〜47から吹き出される。
【0034】
図5に示すように、フロントガラス曇り止め用のデフロスタ吹出口43はフロントガラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、運転席側フェイス吹出口45はインパネの正面中央右寄りと右隅に、助手席側フェイス吹出口46はインパネの正面中央左寄りと左隅に、運転席側フット吹出口44はインパネ下面右奥の運転席側足元に、助手席側フット吹出口47はインパネ下面左奥の助手席側足元に、それぞれ開口しており、図4に示すように吹出口切替用ダンパー32〜36によってそれぞれ開閉状態が切替えられる。
【0035】
ここで、内外気切替ダンパー24はサーボモーター74により、エアミックスダンパー25,26はサーボモーター71a,71bにより、それぞれ駆動される。また、吹出口切替用ダンパー32〜36は、それぞれの開閉状態を切替えるダンパー駆動ギア機構31を介してサーボモーター73により駆動される。
【0036】
これらサーボモーター(アクチュエータ)71〜74は、エアコンECU100によって回転が制御されるとともに、ロータの回転位置や回転速度などの情報を検出してエアコンECU100にフィードバックする。具体的には、駆動部131〜134がエアコンECU100から駆動指令信号の入力を受けて、対応するサーボモーター71〜74を駆動する。なお、サーボモーター71〜74には、DCサーボモーターを用いることができる。また、これに限らず、ステッピングモーターなど他の種類のモーターを用いても良い。
【0037】
また、エアコンECU100には、車内空調制御に利用される各種センサ120が接続されている。各種センサ120には、車室内温度を検出する内気センサ(車室内温度計測手段)121,外気温度を検出する外気センサ122,日射量を検出する日射センサ123,エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ124,エバポレータ通過後の空気温を検出するエバポレータ後センサ125等が、本発明のエアコン用環境センサとして含まれる。
【0038】
さらに、エアコンECU100には、車室内表面温度を検出するIRセンサ126が接続されている。IRセンサ126としては単眼IRセンサを用いてもよし、複数の赤外線検出素子がマトリクス状に配列されてなるマトリクスIRセンサを用いてもよい。これにより、車室内を予め定められた領域に区切り、区切られた領域毎に赤外線検出素子を対応させるようにすることで、それら各領域の熱輻射を具体的に特定することができる。なお、IRセンサ126も車内空調制御に関与する場合には、本発明のエアコン用環境センサに含めることも可能である。
【0039】
エアコンECU100には、操作パネルPが接続されている。操作パネルPは、図5に示すように、インパネ正面中央のフェイス吹出口45,46の下側に配置されており、各種操作部130や表示部141が設けられている。具体的には、操作パネルPには、AUTOスイッチ111,OFFスイッチ112,吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)113,内外気切替スイッチ114,風量切替スイッチ115,温度設定スイッチ(温度設定手段)116・116,デフロスタスイッチ117,A/Cスイッチ118,独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)119が設けられており、これらによって空調条件が設定される。
【0040】
なお、AUTOスイッチ111は、車内温度が、温度設定操作部116・116により設定された希望温度となるよう自動制御を実行するものである。OFFスイッチは、エアコンをオフ状態とするものである。
【0041】
吹出口切替スイッチ113は、ダンパー駆動ギア機構31を介して吹出口切替用ダンパー32〜36の開閉状態(制御位置)を切替えるものである。操作状態に応じて、デフロスタ吹出口119のみを開いた状態、フェイス吹出口118のみを開いた状態、フット吹出口117のみを開いた状態、フェイス吹出口118とデフロスタ吹出口119とを開いた状態、フット吹出口117とデフロスタ吹出口119とを開いた状態、フット吹出口117とフェイス吹出口118とデフロスタ吹出口119とを開いた状態のいずれかに切替えられる。
【0042】
内外気切替スイッチ114は、内外気切替ダンパー24の開閉状態(制御位置)を切替えるものであり、操作状態に応じて内気吸気・外気吸気を切替えることができる。
【0043】
風量切替スイッチ115は、各吹出し口から吹出される風量を調整するものであり、その操作状態に応じて各吹出口内部に設けられたファン(図示なし)の回転速度が変更される。
【0044】
温度設定スイッチ116・116には、運転席側の空調風の温度を設定する運転席側温度設定スイッチと、助手席側の空調風の温度を設定する助手席側温度設定スイッチとがあり、これによって、空調風の温度ひいては車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能となっている。
【0045】
デフロスタスイッチ117は、デフロスタ吹出口の開閉状態を切替えるスイッチである。A/Cスイッチは、エアコン機能のON・OFFを実行するスイッチである。
【0046】
独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)119は、運転席側と助手席側とで独立して空調制御する「独立制御」と、運転席側と助手席側とを一括して空調制御する「一括制御」とを切替え可能なスイッチである。
【0047】
エアコンユニットUがこのような構成を持つことにより、エアコンECU100は、CPU101によりエアコン制御プログラム103aが起動されると、操作パネルPの各種操作部110によって設定された空調条件に基づく周知のエアコン制御を実行する。つまり、エアコン制御プログラム103aが実行されることで、本発明の温度制御手段が機能する。
【0048】
続いて、車載用ナビゲーション装置80の構成について説明する。図6は車載用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)80の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置80は、位置検出器801,地図データ入力器806,操作スイッチ群807,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ811,音声案内などを行う音声合成回路824,スピーカ815,メモリ809,表示器810,送受信機813,ハードディスク装置(HDD)821,通信I/F(インターフェース)826,これらの接続された制御回路808,リモコン端末812等を備えて構成される。
【0049】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ802,車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ803,車両の走行距離を検出する距離センサ804,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS受信機805を有する周知の構成をなしている。
【0050】
操作スイッチ群7は、例えば表示器810と一体になったタッチパネル822もしくはメカニカルなスイッチ等の周知のものが用いられる。また、マイク831および音声認識ユニット830を用いて種々の指示を入力することも可能である。
【0051】
送受信機813は、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ814から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための装置である。また、送受信機813を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。
【0052】
制御回路808は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU881,ROM882,RAM883,入出力回路であるI/O884,A/D変換部886,描画部887,時計IC888,およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU881は、HDD821に記憶されたナビプログラム821pおよびデータにより制御を行う。また、HDD821へのデータの読み書きの制御はCPU881によって行なわれる。また、CPU881からHDD821に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ROM882にナビゲーション装置80として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。
【0053】
A/D変換部886は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器801などから制御回路808に入力されるアナログデータをCPU881で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0054】
描画部887は、HDD821等に記憶された地図データ821m(後述),表示用のデータや表示色のデータから表示器810に表示させるための表示画面データを生成する。
【0055】
時計IC888はリアルタイムクロックICとも呼ばれ、CPU881からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。CPU881は時計IC888から日時情報を取得する。また、GPS受信機805で受信したGPS信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、CPU881に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【0056】
HDD821には、ナビプログラム821pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである地図データ821mが記憶される。地図データ821mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、幅員、車線数、制限速度、道路種別等がリンク属性に含まれる。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク、距離コスト等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、地図データ821mが本発明の道路地図データ記憶手段に相当する。
【0057】
HDD821には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザーが独自にデータを書き込むことができ、ユーザーデータ821uとして記憶される。また、ナビゲーション装置80の動作に必要なデータや各種情報はデータベース821dとしても記憶される。なお、データベース821dが本発明のETC割引情報記憶手段に相当する。
【0058】
ナビプログラム821p,地図データ821m,ユーザーデータ821u,およびデータベース821dは、地図データ入力器806を介して記憶媒体820からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0059】
メモリ9はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置80の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ809は、ナビゲーション装置80がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ809の代わりにナビゲーション装置80の動作に必要な情報およびデータをHDD821に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置80の動作に必要な情報およびデータをメモリ809とHDD821に分けて記憶してもよい。
【0060】
表示器810は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路808(描画部887)から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器810として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。
【0061】
スピーカ815は周知の音声合成回路824に接続され、ナビプログラム821pの指令によってメモリ809あるいはHDD821に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路824においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【0062】
車速センサ823は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路808に送るものである。制御回路808では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。
【0063】
I/F826は、ナビゲーションECU800を介して他のECUや車載機器、センサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。
【0064】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置80は、制御回路808のCPU881によりナビプログラム821pが起動されると、ユーザーが操作スイッチ群807,タッチパネル822、リモコン端末812の操作あるいはマイク831からの音声入力によって、表示器810上に表示されるメニュー(図示せず)から目的地経路を表示器810に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0065】
すなわち、まず、ユーザーは目的地を検索する。目的地の検索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法、目的地の所在する地域から検索する方法,目的地の電話番号から検索する方法,五十音表から目的地の名称を入力して検索する方法,あるいはユーザーがよく利用する施設としてメモリ809に記憶されているものから検索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器801により車両の現在位置が求められ、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器810上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザーに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示器810およびスピーカ815の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの出力を行う。
【0066】
ところで、上記のような構成を有する本実施形態の車両用エアコンシステム1では、エアコンECU100がIGをオン(エンジン始動)とする信号をエンジンECU200から受信すると、CPU101により、ROM103に格納された冷暖房不良検出プログラム103bが実行される。なお、本実施形態においては、冷暖房不良検出プログラム103bが実行されることで、本発明のエアコン動作不良検出手段、制御ログ収集手段、制御ログ記録手段、到達時間算出手段、車室内温度計測手段、到達車室内温度特定手段、動作不良判定手段、熱負荷算出手段、時間情報取得手段、及び窓開閉状態検出手段が機能する。以下、冷暖房不良検出プログラム103bの流れを図7のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
まず、S1では、エンジンECU200からIGをオンとする信号を受信する。受信後、S2にて、車両の窓の開閉状態をチェックする。具体的には、エアコンECU100からドアECUに対し窓の開閉状態を反映する信号の送信要求を行い、その後、エアコンECU100は、ドアECUから返信された信号に基づいて車両の全窓の開閉状態を確認し、全閉状態であった場合にS3に進む。1つでも開いた窓があればS18に進み、ROM103に格納されたエアコン制御プログラム103aにより通常のエアコン制御を実行する。なお、以降、冷暖房不良検出プログラム103bの実行中に窓の開状態が1つでも検出された場合には、直ちに本プログラムの処理を中断してS18に進むものとする。なお、全閉が確認された後、S3から再度処理を実行するように構成してもよい。
【0068】
S3では、エアコンECU100に接続された各種センサ120(121〜126)の故障判定を行う。ここでは、エアコンに搭載される周知のセンサチェックを実行して、センサの入力状態から正常か故障かを判定するとともに、故障状態の場合はその故障が現在も継続しているのか、過去に発生したものであるのかを区別する。現在の状態が故障状態である場合にはS18に進み、ROM103に格納されたエアコン制御プログラム103aにより通常のエアコン制御を実行する。現在の状態が故障状態になければS4に進む。
【0069】
S4では、IG−ON後の経過時間t(sec)の計測を開始する。続いて、S5にて、車両熱負荷の算出に必要なセンサ情報を取得する。具体的には、内気センサ121,外気センサ122,日射センサ123,水温センサ124,エバポレータ後センサ125、IRセンサ126の検出値を取得する。なお、車外環境要因である外気温・日射量を検出対象とする車外環境センサについては、異なるタイミングで複数回の検出処理を実行し、各タイミングでの検出値に基づく代表検出値をセンサ検出値として定める。本実施形態における車外環境センサは、外気センサ122と日射センサ123とである。
【0070】
続いてS6に進む。S6では、車両の熱負荷Lを算出する。以下、算出方法の一実施例を説明する。車両熱負荷L(J)は次式の様に計算できる。
L(J)=A(J)+B(W)×t(sec) ・・・ (式1)
ここで、A(J)は、外部からの熱量の侵入をゼロと仮定した時、設定温度に到達させるのに必要な熱量であり、B(W)は、希望設定温度到達後に、設定温を維持するのに必要な負荷(熱量)であり、内気センサ121が検出する車室内温度をTr(℃)、外気センサ122が検出する外気温度をTam(℃)、温度設定操作部116による設定温度(希望設定温度)をTset(℃)、日射センサ123の日射量をTs(kW/m)、IRセンサ126が検出するIRセンサ検出温度をTir(℃)、車両ごとに特定される車室内空間容積をS(m)とすると、それぞれ以下の式で表される。
A(J)=S×{K1・(Tr−Tset)+K2・Tam+K3・Ts
+K4・Tir+C1}+C2 ・・・ (式2)
B(W)=S×(K5・Tset+K6・Tam+K7・Ts+C3)
+C4 ・・・ (式3)
なお、K1〜K4及び、C1〜C4は定数である。
【0071】
車両熱負荷L(J)が算出されると、次は、S7にて、各種センサ120からの入力値に基づいて、車室内温度の温度制御開始後における希望設定温度への到達所要時間t1を算出する。以下、算出方法の一実施例を説明する。最大冷暖房能力をK(W)とすると、エアコン制御開始後の経過時間t(sec)は、
t=L/K ・・・ (式4)
と表せるので、(式1)〜(式3)より、経過時間t(sec)は、
t={A/(K−B・t)}/K ・・・ (式5)
と表せる。そして、(式5)より、
t=A/(K−B) ・・・ (式6)
となる。ここで、t=t1とすると、到達所要時間t1(sec)は次式から容易に計算できる。
t1=f(tr,tam,ts,ir,tset) ・・・ (式7)
ただし、最大冷暖房能力をK(W)は、エアコンを冷房として使用している場合には、該エアコンの最大冷房能力K1を用い、同じく暖房として使用している場合には、該エアコンの前記最大冷房能力K1とは別に定められた最大暖房能力K2を用いる。
【0072】
次に、S8に進み、経過時間tが到達所要時間t1以上となったか否かを判定する。到達所要時間t1が経過していない場合には、S9〜S11を実行し、センサの検出値を更新して車両熱負荷L(J)を再計算し、到達所要時間t1を再度算出する。これらの処理はS5〜S7と同様であり、経過時間tが到達所要時間t1以上となるまで周期的(例えば、200msec周期)に繰り返し実行される。そして、S8では常に、繰り返し算出される到達所要時間t1の中で、最も長時間のものを選択して、経過時間tと比較するものとする。
【0073】
S8にて、経過時間tが到達所要時間t1以上となるとS12に進む。S12では、予めROM103に格納されたテーブルから、熱負荷計算に使用したセンサ条件に対応する判定閾値Ttを読み出し、S13では、希望設定温度Tset(℃)と車室内温度Tr(℃)との差の絶対値と、予め定められた誤差範囲設定値Ttと比較し、以下の式を満たすか否かを判定する。
|Tset−Tr|≦Tt ・・・ (式8)
【0074】
(式8)を満たす場合は、エアコンが正常動作していると判定されてS18に進み、上記した通常制御の実行を開始する。(式8)を満たさない場合は、エアコンの動作不良を検出したと判定されてS14〜S16に進み、制御ログの収集・記録を実行する。
【0075】
収集する制御ログとしては、(a)動作不良の検出時刻情報、(b)センサ入力値(希望設定温度、内気温(車室内温度)、外気温(車室外温度)、日射量、エバポレータ後温度等)、(c)アクチュエータ情報(アクチュエータの制御位置情報、例えば各種ダンパー開度等)、(d)ECU内部RAM情報(エアコン制御指令値、例えば目標吹出し温度、風量指示値等)、(e)ナビ情報(緯度、経度、進行方向、車の傾き、車速、走行道路種別等)、(f)多重通信データ(エンジンECU200との連携作動条件情報、例えばコンプレッサーとの連携作動条件情報等)が挙げられる。
【0076】
収集する制御ログは、上記の通り、エアコンECU100内から取得するものも含まれるが、エアコンECU100以外のECUから通信により取得するものも含まれるので、S14では、まず、外部のECUに対し、予め定められた制御ログ情報を送信するよう制御ログの取得要求信号を送信する。該取得要求信号を受信したECUは予め定められた制御ログを取得し、これをエアコンECU100に送信する。S15では、それら制御ログを収集する。なお、制御ログの収集は、予め定められた時間(例えば10分)をかけて行うものとする。S16では、収集した制御ログのデータをナビゲーション装置80に多重通信バス900経由で転送し、該ナビゲーション装置80のHDD821の制御ログ記録エリア821lにこれらを記憶させる。
【0077】
続いて、S17にて、エアコン動作不良発生をディーラー宛に通知する。具体的には、収集した制御ログをナビゲーション装置80のHDD821に転送保存すると同時に、エアコン動作不良の発生をディーラーのPCサーバーDに中継基地局B経由で無線出力する。ディーラーへの情報発信は、DCM500から発信する。発信後、S18に進みエアコンの通常制御を実行し、本プログラムは終了する。
【0078】
なお、ディーラーは後日、ユーザーのナビゲーション装置80から必要な制御ログのデータを吸い上げ、情報解析を行う。そして、不具合箇所が特定できれば、ユーザーへ連絡を行う。具体的には、ディーラーのPCサーバーDから中継基地局B経由で車両Cに、不具合箇所が特定されたことを無線送信し、車両に設けられた報知手段よりユーザーに報知してもよい。報知方法としては、例えば、表示部(例えばナビゲーション装置80の表示部810あるいはエアコンパネルPに設けられた液晶表示部141等)に表示する方法、あるいは、音声出力部(例えばナビゲーション装置80のスピーカ815等)から音声出力する方法、ユーザーの携帯電話に通知する方法等がある。
【0079】
以上のとおり、本実施形態においては、IGオン後に冷暖房機能不良検出プログラム103bが実行され、エアコンの動作不良を検出するとともに、そのときに制御ログの収集が行われる。エアコン動作不良の検出は、エアコン能力の低下により検出されるので、HVAC自体の故障や破損等のようなECU側で検出不可能な動作不良に関しても検出可能となるし、そのときに収集される制御ログは、上記に、(a)動作不良の検出時刻、(b)センサ入力値、(c)アクチュエータ情報、(d)ECU内部RAM情報、(e)ナビ情報、(f)多重通信データとあるように、エアコンECUが単独で取得可能な情報以外にも関連する情報(例えば、ナビゲーション装置80からエアコン動作不良発生時の車両の現在位置情報や走行情報や、エンジンECUからエアコン動作不良発生時のコンプレッサーとの連携作動条件情報等)を取得できるので、特定条件下のみで発生する動作不良であってもその原因を特定し易くなっている。
【0080】
具体的には、収集した制御ログから、エアコン動作不良時に、エアコン機能として冷房が使用されており、車両が高速道路走行中であったことが特定できれば、エンジンECU200からの通信データ異常等の原因が推定できる。また、収集した制御ログから、エアコン動作不良時に、エアコン機能として暖房が使用されており、取得した外気センサの入力値から低外気温状態であったことが特定でき、目標吹出し温度等のエアコン制御指令値に問題がなく、アクチュエータの制御位置情報等にも問題がないことが特定できた場合には、HVACの故障等の原因が推定できる。
【0081】
以上、本発明の実施例を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、エアコン動作不良の発生をディーラーのサーバーDに通知出力するための通報操作部141(図4の通報ボタン)を設けて、ユーザー自身がエアコン動作不良を認識した際に、例えば、冷暖房の効きの悪さをユーザーが認識した際に、その通報操作部141の操作するように構成できる。この通報操作部141は、エアコンパネルPに設置することで操作が容易となる。
【0083】
また、到達所要時間t1の経過後の判定閾値Ttを変更可能に構成することができる。具体的には、冷房時と暖房時、あるいは、季節や時刻、天候等の条件によって、設定値を変更しても良い。季節情報や時刻情報、天候情報は、ナビゲーション装置80から多重通信バス900を介して取得することができる。これにより、エアコン動作不良の検出精度を増すことができる。
【0084】
また、到達所要時間t1の算出に際して、現在の日付及び時刻を取得し、取得した日付及び時刻の情報に基づいて、到達所要時間t1を補正しつつ算出することもできる。この場合も、エアコン動作不良の検出精度を増すことができる。
【0085】
また、車両の熱負荷の算出は、ナビゲーション装置80より車の傾きと進行方向とを取得して、それらによって日射センサ123の検出値を補正した上で行ってもよい。具体的には、ナビゲーション装置80に、車体の傾斜角度を取得する傾斜角度取得手段としての機能を設け、該ナビゲーション装置80から車両の傾斜角度と、車両の進行方向とを取得して、これらの取得値から日射方向を算出し、車両熱負荷Lの算出に用いる日射センサ123の検出値(日射量)Tsを補正することができる。なお、進行方向は位置検出器801より取得できる。また、車の傾き(車両傾斜角度情報)は、位置検出器1により車両の現在位置と進行方向とを特定し、特定された位置の道路区間の勾配情報を地図データ21mより取得する形で得られる。この場合、地図データ21mとして各道路の勾配情報を予め記憶しておく必要がある。ナビゲーション装置80に傾斜計を接続して、その検出結果より車の傾きを取得することもできる。
【0086】
また、制御ログの取得は、制御ログを取得するエアコン動作不良検出後から一定期間の間、同一種別の制御ログを繰り返し受信する形で行うように構成することができる。具体的には、図7のS15において、それら制御ログを、予め定められた時間の中で繰り返し取得するようにして行うように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の車両用空調システムの構成するECUの連携を示す図。
【図2】車両用空調システムの概要を簡略的に示す図。
【図3】エアコンECUのブロック図。
【図4】エアコンユニットの全体構成を概略的に示す図。
【図5】車室内に配された吹出口の位置関係を示す図。
【図6】存在認識情報の代行送出処理の流れを示すフローチャート。
【図7】冷暖房不良検出処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用空調システム
100 エアコンECU
U エアコンユニット
110 操作部
116 温度設定スイッチ
101 CPU
102 RAM
103 ROM
120 センサ
121 内気センサ
122 外気センサ
123 日射センサ
124 水温センサ
125 エバポレータ後センサ
126 IRセンサ
130 駆動部
200 エンジンECU
210 始動操作部
230 コンプレッサー駆動部
300 ドアECU
330 窓駆動部
500 DCM
800 ナビゲーションECU
80 車載用ナビゲーション装置
821 HDD
900 多重通信バス
B 中継基地局
C 車両
D ディーラーのPCサーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンECUに接続され、車内空調制御に関与する車内ないし車外の環境状態を検出するエアコン用環境センサと、
前記エアコン用環境センサの検出状態に基づいてエアコンの動作不良を検出するエアコン動作不良検出手段と、
前記動作不良が検出された場合に、前記エアコンECU又は当該エアコンECUに通信接続された関連ECUによる制御ログを収集する制御ログ収集手段と、
前記動作不良と対応付けて、収集された前記制御ログを予め定められた制御ログ記録部に記録する制御ログ記録手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして前記動作不良の検出時刻を収集する請求項1記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして前記エアコン用環境センサからの入力値を収集する請求項1又は請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして前記エアコンに組み込まれたアクチュエータの制御位置情報を収集する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして前記エアコンECUのRAMに記憶されたエアコン制御指令値を収集する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
前記関連ECUはエンジンECUを含み、
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして、前記エアコンと連携動作するエンジン系被制御対象物の制御情報を、前記エンジンECUから通信取得するものである請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
前記エアコンと連携動作するエンジン系被制御対象物がコンプレッサーである請求項6記載の車両用空調システム。
【請求項8】
前記関連ECUは車載用ナビゲーション装置用ECUを含み、
前記制御ログ収集手段は、前記制御ログとして車載用ナビゲーション装置が検出する現在位置情報、進行方向情報、及び車両傾斜角度情報のうち少なくとも1以上のものを、前記車載用ナビゲーション装置用から通信取得するものである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
前記制御ログ収集手段は、前記不良検出後から一定期間の間、同一種別の制御ログを繰り返し受信するものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項10】
前記制御ログ収集手段により収集された前記制御ログを車外に無線出力する制御ログ無線出力手段を備える請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項11】
前記制御ログ記録部は、車載用ナビゲーション装置のハードディスク内に設けられる請求項1ないしないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項12】
車室内の希望設定温度を設定する温度設定手段と、
車室内温度を検出する内気センサと、
前記内気センサにより検出される前記車室内温度が、前記温度設定手段により設定された前記希望設定温度となるように、前記エアコン用環境センサからの入力値に基づいて車室内の温度制御を実行する温度制御手段と、を備え、
前記エアコン動作不良検出手段は、前記エアコン用環境センサからの入力値に基づいて、前記車室内温度の前記温度制御開始後における前記希望設定温度への到達所要時間を算出する到達時間算出手段と、前記車室内温度を前記温度制御開始後の経過時間と対応付けて計測する車室内温度計測手段と、その計測結果に基づいて前記到達所要時間経過後の前記車室内温度を特定する到達車室内温度特定手段と、特定された車室内温度が前記希望設定温度を基準に定められた目標温度範囲から外れた場合を前記動作不良として判定する動作不良判定手段と、を有するものである請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項13】
前記到達時間算出手段は、前記環境センサからの入力値に基づいて、前記エアコンが搭載された車両の前記温度制御開始時の熱負荷を算出し、その算出された前記熱負荷と、前記エアコンの予め定められた最大冷暖房能力とに基づいて、前記到達所要時間を算出するものである請求項12記載の車両用空調システム。
【請求項14】
前記エアコン用環境センサには、前記内気センサ、車外温度を検出する外気センサ、前記車両への日射量を検出する日射センサ、及び車室内表面温度を検出するIRセンサが含まれ、
前記熱負荷算出手段は、それらエアコン用環境センサからの入力値に基づいて前記熱負荷を算出する請求項13記載の車両用空調システム。
【請求項15】
前記熱負荷算出手段は、複数の前記エアコン用環境センサからの各検出値を用いて前記熱負荷を算出するとともに、それらエアコン用環境センサのうち車外環境要因を検出対象とする車外環境センサについては、1つの熱負荷の算出に際して互いに異なるタイミングで複数回の検出処理を実行し、各タイミングでの検出値に基づく代表検出値を用いて前記熱負荷を算出するものである請求項14記載の車両用空調システム。
【請求項16】
前記代表検出値として、複数の前記検出値のうち前記熱負荷を最大化するものを採用する請求項15記載の車両用空調システム。
【請求項17】
前記到達時間算出手段は、前記エアコンを冷房として使用している場合には、該エアコンの最大冷房能力を用いて前記到達所要時間を算出し、同じく暖房として使用している場合には、該エアコンの前記最大冷房能力とは別に定められた最大暖房能力を用いて前記到達所要時間を算出するものである請求項13ないし請求項16のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項18】
前記到達時間算出手段は、現在の日付及び時刻を取得する時間情報取得手段を備え、取得した前記日付及び前記時刻の情報に基づいて、前記到達所要時間を補正しつつ算出するものである請求項12ないし請求項17のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項19】
車両の窓の開閉状態を検出する窓開閉状態検出手段を備え、
前記エアコン動作不良検出手段は、前記窓開閉状態検出手段により前記窓の開状態が検出された場合には、前記動作不良の検出を行わない請求項12ないし請求項18のいずれか1項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−121916(P2008−121916A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303255(P2006−303255)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】