説明

車両用空調システム

【課題】空調によるエネルギ消費を直感的に把握できるようにして、効率のよい車室内の空調操作を促すことのできる車両用空調システムを提供すること。
【解決手段】エンジンの駆動力を伝達して走行する車両に搭載される車両用空調システム10であって、空調空気を冷却するために冷媒を圧縮するコンプレッサ19と、空調空気を加熱する補助ヒータ14bと、コンプレッサの駆動に合わせてアイドリング回転数を向上させるなどの制御をする熱量調整機能と、を備えており、エアコンECU27は、コンプレッサ、補助ヒータおよび熱量調整機能の稼働による消費エネルギ量を算出して、当該空調システムにおける設定基準エネルギ量と比較し、その比較結果を複数段階の簡易レベルにして表示パネル24に表示出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関し、詳しくは、主に空調で消費されるエネルギを把握可能にするものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には環境性能と燃費性能の向上が要求されているとともに、空調システムを搭載するのが一般的になっている。この空調システムを無暗に稼働させると、オーバーヒートに繋がる場合があることから、車両の運転状態を把握しつつ所望の空調を行い得るように調整することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、この種の空調システムとしては、省エネルギの観点から、冷房に関わるコンプレッサの稼働を把握可能に稼働状態(稼働率、断続比)を表示することが提案されている(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−13847号公報
【特許文献2】特公平3−79553号公報
【特許文献3】特開平1−278828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような空調システムにあっては、コンプレッサの稼働率を乗員が把握しても理解できなければ適切に操作することはできない。すなわち、乗員は、コンプレッサなどの空調システムが備える空調部品の消費エネルギを把握・考慮することなく、空調が燃費に与える影響を理解しないまま空調の調整を行いがちである。例えば、メーカが車室内を快適環境に維持するための想定操作からかけ離れた操作がなされており、暑いときには設定温度を最低に設定し、また、寒いときには最高温度に設定することが行われるなど、燃費が悪化する操作が日常的に行われている。
【0006】
そこで、本発明は、空調によるエネルギ消費を直感的に把握できるようにして、効率のよい車室内の空調操作を促すことのできる車両用空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用空調システムに係る発明の第1の態様は、内燃機関の駆動力を伝達して走行する車両、あるいは動力源としての内燃機関を搭載したハイブリッド車両に搭載される車両用空調システムであって、空調空気を冷却するために冷媒を圧縮するコンプレッサと、空調空気を加熱する電気ヒータと、空調性能に影響を与える熱量調整を行う熱量調整機能と、を備えており、前記コンプレッサ、前記電気ヒータおよび前記熱量調整機能の稼働により消費するエネルギ量を算出する算出部と、該算出部が算出する消費エネルギ量と予め設定されている基準エネルギ量とを比較する比較部と、該比較部が比較した結果を報知する報知部と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
上記課題を解決する車両用空調システムに係る発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記報知部は、前記比較結果を複数段階の簡易レベルにして表示出力することを特徴とするものである。
【0009】
上記課題を解決する車両用空調システムに係る発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様の特定事項に加え、前記比較部は、外気温度に応じた前記基準エネルギ量が予め設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記課題を解決する車両用空調システムに係る発明の第4の態様は、上記第1から第3のいずれか1つの態様の特定事項に加え、前記算出部は、前記コンプレッサの消費エネルギ量を当該コンプレッサの駆動トルクを電力変換して算出することを特徴とするものである。
【0011】
上記課題を解決する車両用空調システムに係る発明の第5の態様は、上記第1から第4のいずれか1つの態様の特定事項に加え、前記算出部は、前記内燃機関の冷却水の温度を上昇させることを目的とした回転速度の上昇条件と、前記内燃機関の駆動力を伝達する機構の前段に設けられているロックアップクラッチ付きトルクコンバータのロックアップ解除要求条件と、前記コンプレッサの駆動を高めることを目的とした前記内燃機関の回転速度の上昇条件と、のそれぞれに応じた消費エネルギ量の加算値を前記熱量調整機能の消費エネルギ量として算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の上記の第1の態様によれば、空調システム全体としての詳細データを収集演算することなく、空調の主要部で消費するエネルギ量の基準エネルギ量との比較結果を報知することができ、使用者はその比較結果を参考に空調を調整操作することができる。
【0013】
本発明の上記の第2の態様によれば、空調の消費エネルギ量の基準エネルギ量との比較結果を複数段階の簡易レベルで(イメージとして)表示出力することにより、空調操作の良し悪しを報知することができ、消費エネルギ量だけの場合と比較して、より簡易に報知し、かつ、容易に把握することができる。また、空調システムの電力消費に関する詳細データを必要としないことから、簡潔な制御手順で実現することができ、また、電流センサなどの追加部品等を必要とすることもなく、安価かつ簡易に実現することができる。
【0014】
本発明の上記の第3の態様によれば、外気温に応じた基準エネルギ量と比較して空調の消費エネルギ量を評価することができ、客観的に空調に使用する消費エネルギ量を把握することができる。
【0015】
本発明の上記の第4の態様によれば、コンプレッサの駆動トルクを消費エネルギ量として電力変換して算入することができ、エンジンのトルクを空調で使用する分を消費エネルギ量として把握することができる。
【0016】
本発明の上記の第5の態様によれば、空調に関わる内燃機関の稼動なども含めて消費エネルギ量として算入することができ、エンジンを空調で使用する分を消費エネルギ量として把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用空調システムの一実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す概念ブロック図である。
【図2】その処理手順を実行する際の情報のやり取りを説明する機能ブロック図である。
【図3】その処理手順中の一処理を説明するフローチャートである。
【図4】その処理手順中の図3と異なる一処理を説明するフローチャートである。
【図5】その図4中で参照するマップを示す表である。
【図6】その処理手順中の図3、図4と異なる一処理を説明するフローチャートである。
【図7】その処理手順中の図3、図4、図6と異なる一処理を説明するフローチャートである。
【図8】その処理手順全体を説明するフローチャートである。
【図9】その図8中で参照するマップを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図9は本発明に係る車両用空調システムの一実施形態を示す図である。
【0019】
図1において、空調システム10は、エンジン付き電気自動車(車両)、所謂、HEV(Hybrid Electric Vehicle)の車室R内の暖房・冷房・除湿・換気等の空調を行うHVAC(Heating,Ventilating,and Air Conditioning)システムである。
【0020】
この空調システム10は、空気流路11内に上流側から強制的に空気を引き込んで下流側に向かって吹き出させることにより空気の流れを形成する送風ファン(送風機)12と、空気流路11内を通過する空気を冷却するエバポレータ13と、空気流路11内を通過する空気を加熱するヒータコア14aおよび補助ヒータ(電気ヒータ)14bと、送風ファン12が空気流路11内に空気を取り込む流路を車室Rの外部側吸込口(外気流路)Toまたは内部側吸込口(内気流路)Tiに切り換える吸込口ダンパ15と、空気流路11内を通過する空気の一部をヒータコア14aや補助ヒータ14bに接触する流路に流し込むように調整するエアミックスダンパ16と、空気流路11から吹き出させる流路を車室R内に設置されている吹出口B1〜B3のいずれかに切り換える吹出口ダンパ17と、車室R内の空気の温度(以下、単に内気温度ともいう)を検出する内気温度検出センサ(内気温度検出部)21と、車室R外の外気温度を検出する外気温度検出センサ(外気温度検出部)22と、空調システム10の各種設定の入力操作をする空調操作パネル23と、この空調操作パネル23からの入力設定情報や各種センサの検出情報などを表示出力する表示パネル24と、送風ファン12、補助ヒータ14bなどの各種機能部に電力供給しつつ空調操作パネル23からの各種設定や各種センサ21〜23の検出情報に基づいて各種ダンパ15〜17の開閉の駆動制御をするエアコンECU(electronic control unit)27と、エンジンおよび電動モータの駆動を協調制御して効率よく走行することを実現しつつ走行時に電動モータを発電機として機能させて回生エネルギ(電力)を回収し不図示の蓄電池に充電するなどの統括制御を実行するとともに、エバポレータ13のコンプレッサ19を駆動制御するHEV・ECU29と、を備えて構成されている。空調システム10は、エアコンECU27がHEV・ECU29との間でCAN(Controller Area Network)通信することにより協働して車室R内を快適環境に調節維持するようになっている。
【0021】
ここで、エバポレータ13は、空気流路11内に設置されて冷媒の蒸発による気化熱を利用することにより、通過する(接触する)空気を冷却するようになっており、エンジンの駆動力で稼働するコンプレッサ19が不図示のコンデンサ(復水器)で液化した冷媒を導入する前に膨張弁で膨張気化させるように循環させることにより、その冷媒の気化熱で熱交換冷却するようになっている。また、このエバポレータ13は、エンジン停止時にも冷媒を循環可能に電動モータなどの駆動源を備えていてもよい。コンプレッサ19は、固定容量タイプあるいは可変容量タイプのいずれでもよく、また、本実施形態のようにエンジン駆動式に限らず、電動式でもよい。
【0022】
ヒータコア14aは、エンジンの冷却水を循環させるラジエータ部の熱交換を利用して、通過する空気を加熱するように空気流路11内に設置されている。補助ヒータ14bは、PTC(Positive Temperature Coefficient)セラミックヒータであり、ヒータコア14aがエンジンの稼働時に有効であることから、エンジン停止時などに通電することにより補助的に機能させて、空気流路11内に流通する空気を加熱する。
【0023】
エアコンECU27は、予め準備されている制御プログラムや各種パラメータ等に従って各種の入力設定情報や温度検出センサ21、22などの各種検出情報に基づいて空調制御を実行することにより車両の車室R内の温湿度環境を調整するようになっており、また、同時に、図2に示すように、空調システム10関連で消費するエネルギ量(図中には単に消費量と表示)を集計して基準値と比較判定し、表示パネル24に表示(報知)して乗員(ドライバ)の把握をサポートする機能31も備えている。
【0024】
具体的には、エアコンECU27は、車室R内の冷房ようのコンプレッサ19が消費するエネルギ量を収集取得する冷房把握部32、車室R内の暖房用の補助ヒータ14bが消費するエネルギ量を収集取得する暖房把握部33、エンジンや装置各部を温めるために暖気運転するなど熱量調整機能としてのエンジン駆動により消費されるエネルギ量を収集取得する暖気等把握部34、空調システム10のエネルギ消費の評価基準となる判定基準値を算出取得する基準把握部35としても機能するようになっている。
【0025】
冷房把握部32は、エンジンの駆動力でコンプレッサ19を稼働させる際に算出する制御データである駆動トルクPをHEV・ECU29から受け取って電力値に変換する処理32aを実行することにより消費エネルギ量を把握するようになっている。
【0026】
この電力変換処理32aでは、図3のフローチャートに示すように、まずは、空調システム10の稼働を要求する操作(空調ON)が空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS11)、空調ONの入力操作が確認された場合に、コンプレッサ19の駆動の有無を確認し(ステップS12)、停止している場合には消費エネルギ量は「0kW」とする(ステップS12)。一方、コンプレッサ19の駆動を確認した場合には算出駆動トルクを受け取って(ステップS13)、その駆動トルクを予め設定されている変換定数を用いる次式で電力変換することにより消費エネルギ量として電力値を算出する(ステップS15)。
消費エネルギ量(kW)=駆動トルク×変換定数
【0027】
この後には、空調システム10の稼働停止操作(空調OFF)が空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS16)、空調OFFの入力操作が確認されない場合にはステップS12に戻って同様の処理を繰り返す一方、空調OFFの入力操作が確認された場合にはこの処理を終了する。
【0028】
このように、電力変換処理32aでは、コンプレッサ19を稼働させるための駆動トルクを電力変換して消費エネルギ量を把握するので、エンジン制御に広く適用することができ、特別な検出・計測手段を必要とすることなく、安価に構築することができる。なお、HEV・ECU29が駆動トルクを算出して制御していない場合にはエアコンECU27で駆動トルクを算出すればよく、また、電動コンプレッサを搭載する場合には、その電力消費量をそのまま用いればよい。
【0029】
暖房把握部33は、補助ヒータ(PTC)14bを稼働させる際に算出する制御データである駆動段数を利用(取得)して対応する電力値から消費エネルギ量を把握する処理33aを実行するようになっている。
【0030】
この把握処理33aでは、図4のフローチャートに示すように、まずは、空調システム10の空調ONが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS21)、空調ONの入力操作が確認された場合に、算出設定されている駆動段数を取得して(ステップS22)、その駆動段数に対応して予め設定されている図5に示す消費量マップを参照し消費エネルギ量を取得する(ステップS23)。例えば、0段の場合には「0kW」、1段の場合には「AkW」、2段の場合には「BkW」というようにして、設定駆動段数に対応する電力値を取得する。
【0031】
この後には、空調システム10の空調OFFが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS24)、空調OFFの入力操作が確認されない場合にはステップS22に戻って同様の処理を繰り返す一方、空調OFFの入力操作が確認された場合にはこの処理を終了する。なお、この補助ヒータ14bの電力消費は、電流センサを搭載などしている場合には、そのセンタが検出する電力値を流用するようにしてもよい。
【0032】
暖気等把握部34は、車両各部の主に車室R内の温度調節関連でエンジン駆動を利用するときのエンジン制御信号CをHEV・ECU29から受け取って電力値に変換する処理34aを実行することにより消費エネルギ量を把握するようになっている。
【0033】
この電力変換処理34aでは、図6のフローチャートに示すように、まずは、空調システム10の空調ONが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS31)、空調ONの入力操作が確認された場合に、例えば、エンジンの冷却水の水温を所定以上に上昇させるためにエンジンの駆動力を利用する制御1が実施されているか否か確認して(ステップS32)、実施されていない場合には消費エネルギ量は「0kW」とする(ステップS33)一方、実施されている場合には、予め設定されている制御内容に応じたエンジン駆動に対応する電力値「αkW」を消費エネルギ量として加算取得する(ステップS34)。
【0034】
次いで、トルクコンバータのエンジンとミッションとの直接接続を接断するためのロックアップクラッチのロックアップを解除させてミッションのオイル温度を所定以上に上昇させるためにその解除要求によりエンジンの駆動力を利用する制御2が実施されているか否か確認して(ステップS36)、実施されていない場合には消費エネルギ量は「0kW」とする(ステップS37)一方、実施されている場合には、同様に、その制御内容に対応する電力値「βkW」を消費エネルギ量として加算取得する(ステップS38)。
【0035】
次いで、同様の処理を実行するのに加えて、冷房時にコンプレッサ19が稼働するためにエンジンの単位時間当たりのアイドリング回転数を上昇させた状態でエンジンの駆動力を利用する制御n(n:存在する制御個数)が実施されているか否か確認して(ステップS42)、実施されていない場合には消費エネルギ量は「0kW」とする(ステップS43)一方、実施されている場合には、同様に、その制御内容に対応する電力値「γkW」を消費エネルギ量として加算取得する(ステップS44)。
【0036】
この後には、空調システム10の空調OFFが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS49)、空調OFFの入力操作が確認されない場合にはステップS32に戻って同様の処理を繰り返す一方、空調OFFの入力操作が確認された場合にはこの処理を終了する。なお、制御nには、例えば、冷房性能を向上させることを目的としてコンプレッサ19の駆動を高めるために、また、エンジンの冷却水のラジエータファンの駆動(電気負荷)増大に対応するために、エンジンの単位時間当たりの回転速度を上昇させるなどの制御処理などが挙げられる。この制御nの順番は、そのエンジン固有の特性毎に合わせて設定すればよく、また、その順序も適宜入れ替えてもよいことは言うまでもない。
【0037】
基準把握部35は、外気温度検出センサ22から検出データを受け取って、その外気温度の外部環境時に消費する適正エネルギ量として予め設定されている基準値を判定基準値グラフ(図7中を参照)から取得して保持する把握処理35aを実行するようになっている。
【0038】
この把握処理35aでは、図7のフローチャートに示すように、まずは、空調システム10の空調ONが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS51)、空調ONの入力操作が確認された場合に、外気温度を検出データから算出(取得)して(ステップS52)、その外気温度に対応して設定されている消費エネルギ量の基準値を参照(取得)し(ステップS53)、外気温度に応じた適正基準値を不図示のメモリ内に一時的に記憶保持する(ステップS54)。
【0039】
この後には、空調システム10の空調OFFが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS55)、空調OFFの入力操作が確認されない場合にはステップS52に戻って同様の処理を繰り返す一方、空調OFFの入力操作が確認された場合にはこの処理を終了する。
【0040】
そして、エアコンECU27は、サポート機能31として、次の消費エネルギ量(1)〜(3)を積算して算出した、空調システム10を利用する一定期間中の平均的な判定レベルを報知する平均報知処理36と、空調システム10を利用する瞬時的な変化の判定レベルを報知する瞬時報知処理37の一方を選択に応じて実行(双方可能にしてもよい)するようになっている。
(1)冷房把握部32が取得したコンプレッサ19の消費エネルギ量
(2)暖房把握部33が取得した補助ヒータ14bの消費エネルギ量
(3)暖気等把握部34が取得した暖気時等のエンジン駆動による消費エネルギ量
【0041】
具体的には、サポート機能31は、上記の消費エネルギ量(1)〜(3)を積算して、基準把握部35が取得した外気温度に応じた消費エネルギ量の基準値で除算し予め設定されている評価レベルと比較することにより、稼働中の空調等で消費されるエネルギ量の設計標準に対する判定結果を導出するようになっており、空調システム10の乗員による操作に対する判定レベルとして表示パネル24に表示出力して乗員に報知する。瞬時報知処理37では、その判定レベルの導出(取得)と表示出力を繰り返す。平均報知処理36では、予め設定されている期間中における消費エネルギ量を積算してその積算期間で除算することにより、空調システム10を利用する一定期間中の平均的な判定値を取得すればよく、その判定値を基準値で除算して評価レベルと比較することにより表示パネル24に表示出力する判定レベル(判定結果)を取得する。すなわち、サポート機能31(エアコンECU27)が算出部、比較部および報知部を構成しており、詳細な演算処理を必要とすることなく、比較するだけであるので小さな負荷で処理することができる。なお、瞬時報知処理37でも、瞬時的な短期間の期間中における消費エネルギ量を積算して平均を取る処理を採用してもよいことは言うまでもない。
【0042】
このときの評価レベルとしては、例えば、設計時の標準と同等である場合には評価レベルは3、空調の稼働率が標準よりも低い、言い換えると、空調使用が抑えられている場合には評価レベルは1〜2、空調の稼働率が標準よりも高い、言い換えると、空調を過度に使用し過ぎの場合には評価レベルは4〜5としている。この評価レベルは、外気温度領域に応じて車室R内を快適環境にするために消費されるエネルギ量を各種搭載部品に応じて算出設定などしておけばよく、外気温度の快適温度との差異が大きくなるほどその消費エネルギ量は大きくなることから高めの基準値が設定されることになる。
【0043】
詳細には、サポートする機能31の報知処理36、37では、図8のフローチャートに示すように、まずは、空調システム10の空調ONが空調操作パネル23から入力されたか否か確認する(ステップS101)。なお、イグニッションスイッチIgをONからOFFに操作する等の操作に基づいて、報知処理36、37の実行のためにメモリ内に設定した各種パラメータやメモリ内に保持する後述の消費エネルギ量積算値などをリセットする。
【0044】
次いで、冷房把握部32が取得したコンプレッサ19の消費エネルギ量(1)、暖房把握部33が取得した補助ヒータ14bの消費エネルギ量(2)、および、暖気等把握部34が取得した暖気等に起因するエンジン駆動による消費エネルギ量(3)を加算してメモリ内に瞬時消費エネルギ量として保持する(ステップS102)。次いで、その瞬時消費エネルギ量を基準把握部35が取得した外気温度に応じた消費エネルギ量の基準値で除算して瞬時における判定値を算出し(ステップS103)、その判定値(瞬時)に対応して予め設定されている図9に示す評価レベルマップ(テーブル)を参照して、評価レベルとして、1〜5段階を取得する(ステップS104)。このとき、評価レベルは1〜5段階に分ける簡易なものであることから、消費エネルギ量を高精度の電流センサなどで測定して把握するまでもなく、安価に構築することができる。
【0045】
次いで、空調操作パネル23から空調レベルをリアルタイムで表示する瞬時表示(瞬時報知処理37)が選択されているか否かを確認して(ステップS105)、選択されていない場合には次の表示処理をスキップする一方、選択されている場合には表示パネル24内の文字情報などの判定表示切替処理を行った後に、その瞬時における評価レベルを表示パネル24内に、例えば、点灯長さで消費エネルギ量を表示するモニタ形式などで把握容易な形態にして表示出力する(ステップS106)。これにより、乗員は、評価レベルを視覚だけで直感的に認識して把握することができる。なお、評価レベルの表示は、上記モニタ形式に限らず、数字を表示出力したり、評価レベル1は青、評価レベル5は赤などとイメージし易くしてもよい。
【0046】
この後には、メモリ内の瞬時消費エネルギ量を消費エネルギ量積算値に積算して更新した後に(ステップS107)、タイマカウンタをアップして(ステップS108)、予め設定されている、例えば、消費エネルギ量を把握する平均期間として適している規定期間が経過したか否かを確認して(ステップS109)、経過していない場合にはステップS102に戻って同様の処理を繰り返す一方、経過した場合にはメモリ内の消費エネルギ量積算値をその規定期間で除算することにより、メモリ内に平均消費エネルギ量として保持する(ステップS110)。次いで、その平均消費エネルギ量を基準把握部35が取得した外気温度に応じた消費エネルギ量の基準値で除算して平均的な判定値を算出し(ステップS111)、その判定値(平均)に対応して予め設定されている図9に示す評価レベルマップ(テーブル)を参照して、評価レベルとして、1〜5段階を取得する(ステップS112)。
【0047】
次いで、空調操作パネル23から空調レベルを平均で表示する平均表示(平均報知処理36)が選択されているか否かを確認して(ステップS113)、選択されていない場合には次の表示処理をスキップする一方、選択されている場合には表示パネル24内の文字情報などの判定表示切替処理を行った後に、その平均的な評価レベルを表示パネル24内に上記モニタ形式などで把握容易な形態にして表示出力する(ステップS114)。
【0048】
この後には、メモリ内の消費エネルギ量積算値を「0kW」に書換更新(リセット)するとともに(ステップS115)、タイマカウンタもリセットした後に(ステップS116)、空調システム10の空調OFFが空調操作パネル23から入力されたか否か確認して(ステップS117)、空調OFFの入力操作が確認されない場合にはステップS102に戻って同様の処理を繰り返す一方、空調OFFの入力操作が確認された場合にはこの処理を終了する。
【0049】
したがって、空調システム10等で消費されるエネルギ量のデータ表示では、その操作方法の適否を直感的には理解・把握できなかったが、乗員は、空調システム10の操作(駆動効率)の良し悪しに対する評価レベルを、表示パネル24内に表示される点灯長さのモニタ形式で一目で把握することができ、燃費の向上に沿う操作が促されて、その操作方法を理解・把握することができる。また、新たに電流センサ等を設置するなどして詳細な電力量や燃費等を取得する必要もないので、コスト高になることなく搭載することができ、また、簡易に制御処理を組み込むことができる。また、空調システム10のみでの消費エネルギ量だけでなく、トルクコンバータのロックアップクラッチのロックアップ解除など、燃費に影響のある制御も含めて表示することができる。
【0050】
このように本実施形態においては、空調システム10の細かな構成部品を含めた消費エネルギ量の詳細データを収集して演算処理をするのではなく、また、特別な検出センサなどを必要とすることもなく、消費エネルギ量の大きなコンプレッサ19や補助ヒータ14bや空調に関連して稼働するエンジンの駆動トルクを考慮して消費エネルギ量を収集して基準と比較するだけで、空調システム10の操作を評価することができ、その比較結果も複数段階の簡易レベルで直感的にイメージし易く表示パネル24に表示出力して報知することができる。
【0051】
この結果、乗員は、表示パネル24の表示を見るだけで直ちに空調システム10の操作の良し悪しを把握して適正な操作に修正することができ、空調の省エネ化に繋がるとともに、燃費も向上させることができる。また、この空調システム10の操作の評価は、比較するだけの簡易なものであることから、演算処理による負荷は小さく、汎用性を高くすることができる。
【0052】
ここで、本実施形態の一例として説明するハイブリッド車は、エンジンという熱源と共に補助ヒータを備えるために好適に適用することができ、有効な作用効果を得ることができるが、これに限るものではなく、空調システムを搭載する車両に有効に適用することができることは言うまでもなく、特に、アイドルストップ機能を備える車両などにも好適に適用することができる。
【0053】
また、本実施形態では、特に説明はしていないが、算出する平均的な消費エネルギ量は、履歴として保持するようにして、判定基準として用いるようにすることもでき、この場合には、予め設定される基準値に代えて、乗員の好みが反映されている判定基準値として比較評価に利用することができる。
【0054】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10 空調システム
12 送風ファン
13 エバポレータ
14a ヒータコア
14b 補助ヒータ
19 コンプレッサ
21 内気温度検出センサ
22 外気温度検出センサ
23 空調操作パネル
24 表示パネル
27 エアコンECU
29 HEV・ECU
32 冷房把握部
33 暖房把握部
34 暖気等把握部
35 基準把握部
36 平均報知処理
37 瞬時報知処理
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となる内燃機関を搭載した車両に搭載される車両用空調システムであって、
空調空気を冷却するために冷媒を圧縮するコンプレッサと、空調空気を加熱する電気ヒータと、空調性能に影響を与える熱量調整を行う熱量調整機能と、を備えており、
前記コンプレッサ、前記電気ヒータおよび前記熱量調整機能の稼働により消費するエネルギ量を算出する算出部と、該算出部が算出する消費エネルギ量と予め設定されている基準エネルギ量とを比較する比較部と、該比較部が比較した結果を報知する報知部と、を有することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記報知部は、前記比較結果を複数段階の簡易レベルにして表示出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記比較部は、外気温度に応じた前記基準エネルギ量が予め設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記コンプレッサの消費エネルギ量を当該コンプレッサの駆動トルクを電力変換して算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記算出部は、
前記内燃機関の冷却水の温度を上昇させることを目的とした回転速度の上昇条件と、前記内燃機関の駆動力を伝達する機構の前段に設けられているロックアップクラッチ付きトルクコンバータのロックアップ解除要求条件と、前記コンプレッサの駆動を高めることを目的とした前記内燃機関の回転速度の上昇条件と、のそれぞれに応じた消費エネルギ量の加算値を前記熱量調整機能の消費エネルギ量として算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71531(P2013−71531A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210867(P2011−210867)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】