説明

車両用空調装置および空調方法

【課題】簡易な構成で乗客数を推定し、推定した乗客数に基づいて、適切な流量の外気を導入することができ、不必要に外気を導入してしまうことによって生じる問題を回避する。
【解決手段】車両用空調装置100は、車両内に送出する空の流量を調整する流量調整部202と、流量調整部202に導入される空気の流量のうち、外気導入量と内気導入量との割合を調整する割合調整部204と、乗客数を推定する人数推定部212と、推定された乗客数に基づいて外気導入量を導出する導入量導出部214と、内気温および外気温を測定する温度測定部208と、推定された乗客数と、測定された内気温および外気温とに基づいて、車両内の熱負荷を導出する熱負荷導出部216と、導出された外気導入量と、導出された車両内の熱負荷とに基づいて、送出流量Qtおよび導入量割合Rを導出する割合導出部218とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の車両に設けられる車両用空調装置およびこれを用いた空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の車両は、気密性が高いため、乗客の人数に応じて、車両外の空気(以下、単に外気と称する)を車両内に常時導入する必要がある。例えば、鉄道車両に設置される従来の空調装置は、乗客の人数を、車両の定員(または定員の1.5倍)と仮定して、定員の数に対応した流量の外気を一律に車両内に導入していた。
【0003】
しかし、従来の空調装置は、実際の乗客の人数が、定員に達していない場合であっても、上述した定員の数に対応した流量で外気を車両内に導入していたため、実際の乗客の人数が定員より少なくなっている分だけ、無駄に外気を導入する結果を招いていた。
【0004】
そこで、赤外線センサまたは各座席に配置された感圧センサを用いて、自動車の各座席に人が座っているか否かを検知し、その検知結果から乗車している人数(乗車数)を導出し、導出した乗車数に応じた必要な換気量を満たすように、空調装置に車両内の空気(以下、単に内気と称する)を導入する内気導入口の開閉と、空調装置に外気を導入する外気導入口の開閉とをそれぞれ制御する空調装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−175161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、鉄道車両において、乗客は、鉄道車両に設けられた座席に座るだけでなく、座席以外の床に立っていることが多い場合もある。すなわち、鉄道車両においては、乗客の位置が固定ではないため、仮に、上述した特許文献1の技術を鉄道車両に応用することを検討したとしても、鉄道車両内の乗客の人数を把握することはできない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、簡易な構成で乗客の人数を推定し、推定した乗客の人数に基づいて、適切な流量の外気を導入することが可能な、車両用空調装置および空調方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用空調装置は、車両内に送出する空気の流量を調整する流量調整部と、流量調整部に導入される空気の流量のうち、車両外の空気の流量である外気導入量と車両内の空気の流量である内気導入量との割合を調整する割合調整部と、車両に乗車している乗客の人数を推定する人数推定部と、推定された乗客の人数に基づいて外気導入量を導出する導入量導出部と、車両内の温度である内気温および車両外の温度である外気温を測定する温度測定部と、推定された乗客の人数と測定された内気温および外気温とに基づいて、車両内の熱負荷を導出する熱負荷導出部と、導出された外気導入量と導出された車両内の熱負荷とに基づいて、流量調整部が調整する空気の流量である送出流量、および割合調整部が調整する外気導入量と内気導入量との割合である導入量割合とを導出する割合導出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記車両用空調装置は、車両の台車と、台車の上に設置される車体との間に設けられ、台車から車体へ伝達される振動を抑制する空気バネの内圧を測定する内圧測定部をさらに備え、人数推定部は、測定された空気バネの内圧に基づいて、車両に乗車している乗客の重量を導出して、乗客の人数を推定してもよい。
【0010】
上記車両用空調装置は、乗客が乗降するドアの開閉を検知する開閉検知部をさらに備え、開閉検知部が、ドアが開から閉になったことを検知したことを契機に、導入量導出部は外気導入量を導出し、熱負荷導出部は車両内の熱負荷を導出してもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、車両用空調装置を用いた、本発明の空調方法は、車両に乗車している乗客の人数を推定し、推定した乗客の人数に基づいて、車両用空調装置に導入される車両外の空気の流量である外気導入量を導出し、車両内の温度である内気温および車両外の温度である外気温を測定し、推定した乗客の人数と、測定された内気温および外気温とに基づいて、車両内の熱負荷を導出し、導出した外気導入量および導出した車両内の熱負荷に基づいて、車両用空調装置が送出する空気の流量である送出流量、および外気導入量と車両内から導入される空気の流量である内気導入量との割合である導入量割合を導出し、導出した導入量割合で、車両用空調装置に導入される空気の流量のうち、外気導入量と内気導入量との割合を調整し、導出した送出流量で車両内に空気を送出することを特徴とする。
【0012】
上述した車両用空調装置の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該空調方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で乗客の人数を推定し、推定した乗客の人数に基づいて、適切な流量の外気を導入することができ、不必要に外気を導入してしまうことによって生じる問題、例えば、消費電力の増加や、不必要に流入した外気による車両用空調装置の劣化等を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両用空調装置の使用形態を説明するための概略的な説明図である。
【図2】車両用空調装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】割合調整部の構成の例を説明するための説明図である。
【図4】内圧測定部の構成を説明するための説明図である。
【図5】空調方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる車両用空調装置100の使用形態を説明するための概略的な説明図である。図1に示すように、本実施形態において車両用空調装置100は、鉄道車両110に設けられる。
【0017】
鉄道車両110は、台車112と、台車112の上に設置される車体114と、空気バネ120と、空気源122とを含んで構成される。車体114には、乗客102が乗降するためのドア130が設けられている。
【0018】
空気バネ120は、台車112と車体114との間に設けられ、車体114を支持している。空気バネ120は、空気源122から空気が導入されたり、空気源122に空気を排出したりして、内包する空気の体積を変化させることで任意にばね定数を調整することができ、台車112から車体114へ伝達される振動を抑制することが可能となる。また鉄道車両110は、空気バネ120を用いることで、その空気バネ120の内気圧を調整し、車体114の荷重に拘わらず、車体114の鉛直位置を制御することもできる。
【0019】
ここで、例えば、車両用空調装置100が搭載される鉄道車両110は、新交通システムに利用する車両であり、長さが9000〜12500mm程度、幅が2300〜2850mm程度である。本実施形態において鉄道車両110は、予め定められた軌道上を走行する。また、軌道には曲線(カーブ)も含まれるので、曲線の走行に対応すべく、鉄道車両110は複数連結して構成される。本実施形態においては、鉄道車両110として、新交通システムに利用する車両を例に挙げて説明するが、電車や汽車、バス等の車両であってもよい。
【0020】
新交通システムの車両は、比較的小型に形成されるため、車両用空調装置100は、設置の制限が比較的少ない、車体114の外側(屋根の上や、車体114の床下等)に設置されることが多い。
【0021】
車両用空調装置100は、鉄道車両内(以下、単に車内と称する)114aに乗車している乗客102が快適に過ごせるように、車内114aの温度(以下、単に内気温と称する)を予め定められた目標となる温度(以下、単に設定温度)に制御するべく、冷房機能として動作する場合は空気を冷却して、暖房機能として動作する場合は空気を加熱して、車内114aに送出する。
【0022】
空気の流れに注目すると、車両用空調装置100は、内気(車内114aの空気)を100%循環させて、すなわち、内気を100%取り込んで、取り込んだ内気を冷却または加熱して、再度、車内114aに送出すると、最も効率よく内気温を設定温度にすることができる。しかし、鉄道車両110においては、乗客102の人数(以下、単に、乗客数と称する)に応じて、常時、所定量の外気(鉄道車両110外の空気)を車内114aに導入(換気)しなければならないといった規制がある。
【0023】
従来は、この規制を遵守するために、鉄道車両110の定員(または定員の1.5倍)の人数の乗客102が鉄道車両110に乗車しているとみなして、定員に応じた、外気の導入の流量(例えば、1人あたり15m/h)を一律に決めていたため、鉄道車両110の乗客数が定員に満たない場合、不必要な外気が車両用空調装置100に導入されてしまっていた。
【0024】
例えば、夏季において、乗客102が車内114aの温度が快適であると感じるような比較的低い温度にしようとすると、車両用空調装置100は、比較的高温の外気を冷却して車内114aに送出しなければならないため、不必要な外気も冷却しなくてはならなくなり、無駄な電力を消費してしまうことになる。また、空気の循環量が全体的に多くなると、車両用空調装置100の劣化やメンテナンスにも影響することになる。
【0025】
そこで、本実施形態の車両用空調装置100は、簡易な構成で乗客数を推定し、推定した乗客数に基づいて必要最低限の外気を導入することができ、不必要に外気を取り込んでしまうことによって生じる、上述した消費電力の増加や車両用空調装置100の劣化等の問題を回避することを目的とする。以下、車両用空調装置100の具体的な構成について詳述し、次に車両用空調装置100を用いた空調方法について説明する。
【0026】
(車両用空調装置100)
図2は、本実施形態にかかる車両用空調装置100の概略的な機能を示した機能ブロック図である。なお、図2中、データまたは制御信号の流れを実線で示し、空気の流れを破線で示す。また、図2において、車両用空調装置100に導入される外気の流量である外気導入量をQo、流量調整部202が車内114aに送出する空気の流量である送出流量をQt、車両用空調装置100に再び導入(還流)される内気の流量である内気導入量をQi、車両用空調装置100に還流されることなく排出される内気の流量である排出流量をQeとする。なお、鉄道車両110が密閉空間であると仮定すると、外気導入量Qoと、排出流量Qeは等しくなる。
【0027】
図2に示すように、車両用空調装置100は、温度調整部200と、流量調整部202と、割合調整部204と、内圧測定部206と、温度測定部208と、中央制御部210とを含んで構成される。
【0028】
温度調整部200は、後述する割合導出部218が導出した冷却負荷qcに基づいて、導入された外気および内気を冷却したり、後述する割合導出部218が導出した加熱負荷qhに基づいて加熱したりする。冷却負荷qcは、内気温を設定温度にするべく、温度調整部200が、導入された外気および内気を冷却するための負荷であり、加熱負荷qhは、内気温を設定温度にするべく、温度調整部200が、導入された外気および内気を加熱するための負荷である。
【0029】
流量調整部202は、割合導出部218が導出した送出流量Qtに基づいて、114aに送出する空気の流量を調整する。
【0030】
割合調整部204は、割合導出部218が導出した導入量割合Rに基づいて、流量調整部202に導入される空気の流量のうち、外気の流量である外気導入量Qoと、内気の流量である内気導入量Qiの割合を調整する。
【0031】
図3は、割合調整部204の構成の例を説明するための説明図である。図3(a)、(c)は、割合調整部204における空気の概略的な流れを示し、図3(b)は、図3(a)を、温度調整部200側から見たときの割合調整部204の構造を示し、図3(d)は、図3(c)を、温度調整部200側から見たときの割合調整部204の構造を示す。
【0032】
図3に示すように、本実施形態において割合調整部204は、温度調整部200および流量調整部202に外気を導入する外気導入経路208aと、温度調整部200および流量調整部202に内気を導入する内気導入経路208bとの合流地点に設置される。
【0033】
例えば、割合調整部204は、図3(a)、(b)に示すように、外気導入経路208aと内気導入経路208bとの中心線204bを回転軸として回転自在な遮蔽板204aを含んで構成される。図3(a)、(b)に示す割合調整部204は、割合導出部218が導出した導入量割合Rに基づいて、外気導入経路208aと内気導入経路208bの開口面積の比が導入量割合Rとなるように、遮蔽板204aを回転させることで、流量調整部202に導入される外気導入量Qoと内気導入量Qiの割合を調整する。
【0034】
また、割合調整部204を、図3(c)、(d)に示すように、例えば、外気導入経路208aと内気導入経路208bとを摺動自在な遮蔽板204cを含んで構成させ、割合導出部218が導出した導入量割合Rに基づいて、遮蔽板204cを摺動させることで、流量調整部202に導入される外気導入量Qoと内気導入量Qiの割合を調整してもよい。
【0035】
このように、割合調整部204は、遮蔽板(204a、204c)を調整するだけで、外気導入量Qoと内気導入量Qiを一度に調整することができる。
【0036】
また、割合調整部204は、外気導入経路208aと、内気導入経路208bにそれぞれ設けられたバルブであってもよい。この場合、割合調整部204は、各バルブの開度を調整することで、流量調整部202に導入される外気導入量Qoと内気導入量Qiの割合を調整する。
【0037】
内圧測定部206は、空気バネ120の内圧を測定し、後述する人数推定部212に出力する。空気バネ120の内圧と、空気バネ120にかかる荷重との関係は、以下の数式(1)に示す関係にある。
W=A×P
…数式(1)
ここで、Wは空気バネ120にかかる荷重(kgf)を、Aは空気バネ120の有効受圧面積(cm)を、Pは空気バネ120の内圧(kg/cm(ゲージ圧))をそれぞれ示す。
【0038】
上述した数式(1)に示すように、空気バネ120の内圧と、空気バネ120にかかる荷重は比例の関係にある。したがって、内圧測定部206が、空気バネ120の内圧を測定することにより、人数推定部212は、車体114および乗客102の荷重、すなわち乗客数を推定することが可能となる。
【0039】
図4は、内圧測定部206の構成を説明するための説明図である。図4に示すように、内圧測定部206は、空気バネ120と空気源122とを継ぐ空気路124に連通して設けられる。
【0040】
温度測定部208は、車内114aの温度である内気温および、鉄道車両110外の温度である外気温を測定する。
【0041】
中央制御部210は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、プログラム等が格納されたROMやメモリ、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路を用いることができ、中央制御部210は、車両用空調装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部210は、人数推定部212、導入量導出部214、熱負荷導出部216、割合導出部218、開閉検知部220としても機能する。
【0042】
人数推定部212は、乗客数(鉄道車両110に乗車している乗客102の人数)を推定する。本実施形態において人数推定部212は、内圧測定部206が測定した空気バネ120の内圧に基づいて、鉄道車両110に乗車している乗客102の重量を導出し、乗客数を推定する。
【0043】
例えば、車両用空調装置100は、空気バネ120の内圧と、空気バネ120にかかる荷重との関係を示す関係式(検量線)を予め保持しておく。人数推定部212は、このような検量線に基づいて、内圧測定部206が測定した空気バネ120の内圧から空気バネ120にかかる荷重、すなわち鉄道車両110の重量および鉄道車両110に乗車している乗客102の重量を導出する。そして、人数推定部212は、導出した重量から鉄道車両110の重量を減算した値を、人の平均体重(例えば、60kg)で除算することで、乗客数を推定する。
【0044】
このように、鉄道車両110に元々設けられている空気バネ120を利用して乗客数を推定するといった構成により、乗客数を推定するための専用の装置を別途設ける必要がなくなり、専用の装置を設置するための占有面積が不要となり、専用の装置を設けるためのコストを削減することが可能となる。
【0045】
導入量導出部214は、人数推定部212が推定した乗客数に基づいて、流量調整部202に導入される外気(鉄道車両110外の空気)の流量である外気導入量Qoを導出する。導入量導出部214が導出する外気導入量Qoは、規制に基づく1人あたりの外気導入量(例えば、15m/h)に人数推定部212が推定した乗客数を乗算した値となる。また、導入量導出部214や上述した人数推定部212の計算は、必ずしも関係式を用いる必要はなく、例えば、空気バネ120の内圧から外気導入量Qoを一意に抽出可能なテーブルを用いて、外気導入量Qoを導出してもよい。かかる構成により、導入量導出部214の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0046】
熱負荷導出部216は、温度測定部208が測定した内気温および外気温と、人数推定部212が推定した乗客数と、車両用空調装置100から送出されている現在の空気の流量と、車両用空調装置100の現在の出力(冷房負荷qcまたは暖房負荷qh)とに基づいて、車内114aの熱負荷を導出する。ここで、熱負荷導出部216は、例えば、山田治夫著「冷凍および空気調和」株式会社養賢堂発行、1981年、P.234−P.237等に記載された公知の方法を利用して、冷却負荷qcや加熱負荷qhを導出する。なお、熱負荷導出部216は、冷却負荷qcまたは加熱負荷qhのいずれかに関し、常に計算を行わずともよく、地域、季節、月日、時間等に応じて決まった値を用いることもできる。
【0047】
割合導出部218は、導入量導出部214が導出した外気導入量Qoと、熱負荷導出部216が導出した熱負荷とに基づいて、流量調整部202が調整する空気の流量である送出流量Qtと、割合調整部204が調整する外気導入量Qoと内気導入量Qiの割合である導入量割合Rとを導出する。なお導入量割合Rは、外気導入量Qoを1としたときの内気導入量Qiの割合を示すものとする。
【0048】
割合導出部218は、例えば、山田治夫著「冷凍および空気調和」株式会社養賢堂発行、1981年、P.234−P.237等に記載された公知の方法を利用して、送出流量Qtを導出する。また、割合導出部218は、導出した送出流量Qtを以下の数式(2)に代入して、導入量割合Rを導出する。
R=(Qt−Qo)/Qo=Qi/Qo
…数式(2)
【0049】
以上説明したように、鉄道車両110の定員ではなく、実際に鉄道車両110に乗車している乗客102の具体的な人数に基づいて、外気導入量Qoを必要最低限の導入量とすることで、不必要に外気を導入してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。例えば、不必要に導入した外気までも無駄に冷却したり加熱したりすることによって生じる消費電力を削減したり、不必要な外気を無駄に通過させることによって生じる車両用空調装置100の劣化を抑制したりすることが可能となる。
【0050】
開閉検知部220は、乗客102が乗降するドア130の開閉を検知する。本実施形態において、上述した導入量導出部214は、開閉検知部220が、ドア130が開から閉になったことを検知したことを契機に、外気導入量Qoを導出する。また、上述した熱負荷導出部216は、開閉検知部220が、ドア130が開から閉になったことを検知したことを契機に、車内114aの熱負荷を導出する。
【0051】
空気バネ120にかかる荷重は、鉄道車両110が停車し、乗客102が乗降したときに変化する。したがって、ドア130が開から閉になったとき、すなわち、駅等で乗客102の乗降が完了し、当面の荷重が確定したときに、外気導入量Qoを導出し、当面の乗客数が確定したときに車内114aの熱負荷を導出する構成により、乗客数が安定している状態で外気導入量Qoおよび、車内114aの熱負荷を導出することができる。
【0052】
また、人は、車両用空調装置100から送出される風量が変化すると、不快に感じる傾向にある。そこで、ドア130が開から閉になったことを契機に、外気導入量Qoを導出することで、鉄道車両110の走行中においては、安定した風量で車両用空調装置100から空気を送出することができ、乗客102に不快感を与えてしまう事態を回避することが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用空調装置100によれば、鉄道車両110の定員ではなく、実際に鉄道車両110に乗車している乗客102の具体的な人数に基づいて、必要最低限の外気を導入することで、不必要に外気を導入してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。このような構成の車両用空調装置100は、特に新交通システムの車両等、電力容量に制限がある車両には有効である。
【0054】
(空調方法)
また、上述した車両用空調装置100を用いた空調方法も提供される。以下、このような空調方法を詳細に説明する。なお、ここでは、車両用空調装置100が冷房として機能する場合について説明する。
【0055】
図5は、空調方法の全体的な流れを示したフローチャートである。図5に示すように、開閉検知部220が、ドア130が開から閉になったことを検知すると(S300におけるYES)、人数推定部212は、内圧測定部206が測定した空気バネ120の内圧に基づいて、鉄道車両110に乗車している乗客102の重量を導出して、乗客数を推定する(S302)。そして、導入量導出部214は、人数推定ステップS302で推定された乗客数に基づいて、外気導入量Qoを導出する(S304)。
【0056】
温度測定部208は、内気温および外気温を測定する(S306)。熱負荷導出部216は、この内気温および外気温と、人数推定ステップS302で推定された乗客数と、車両用空調装置100から送出されている現在の空気の流量と、車両用空調装置100の現在の出力(冷房負荷qcまたは暖房負荷qh)とに基づいて、車内114aの熱負荷を導出する(S308)。そして、割合導出部218は、外気導入量導出ステップS304で導出された外気導入量Qoおよび熱量導出ステップS308で導出した車内114aの熱負荷に基づいて、流量調整部202が調整する、車内114aに送出する空気の流量である送出流量Qtを導出し、割合調整部204が調整する、外気導入量Qoと内気導入量Qiとの割合である導入量割合Rを導出する(S310)。
【0057】
そして、割合調整部204は、導出ステップS310で導出した導入量割合Rで、車両用空調装置100に導入される空気の流量のうち、外気導入量Qoと内気導入量Qiとの割合を調整し(S312)、温度調整部200は、熱負荷導出ステップS308で導出した冷却負荷qcや加熱負荷qhに基づいて、導入された外気および内気を冷却または加熱する(S314)。こうして、内気温(鉄道車両110内の温度)が設定温度に近づく。流量調整部202は、導出ステップS310で導出した送出流量Qtで、車内114aに空気を送出する(S316)。
【0058】
上述した、車両用空調装置100の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、空調方法にも適用可能である。
【0059】
上述した如く、本実施形態にかかる空調方法においても、簡易な構成で乗客数を推定し、推定した乗客数に基づいて、適切な流量の外気を導入することができ、不必要に外気を導入してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
なお、本明細書の空調方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、鉄道車両等の車両に設けられる車両用空調装置およびこれを用いた空調方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 …車両用空調装置
110 …鉄道車両(車両)
112 …台車
114 …車体
120 …空気バネ
130 …ドア
202 …流量調整部
204 …割合調整部
206 …内圧測定部
208 …温度測定部
212 …人数推定部
214 …導入量導出部
216 …熱負荷導出部
218 …割合導出部
220 …開閉検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に送出する空気の流量を調整する流量調整部と、
前記流量調整部に導入される空気の流量のうち、前記車両外の空気の流量である外気導入量と前記車両内の空気の流量である内気導入量との割合を調整する割合調整部と、
前記車両に乗車している乗客の人数を推定する人数推定部と、
推定された前記乗客の人数に基づいて前記外気導入量を導出する導入量導出部と、
前記車両内の温度である内気温および前記車両外の温度である外気温を測定する温度測定部と、
前記推定された乗客の人数と測定された前記内気温および前記外気温とに基づいて、前記車両内の熱負荷を導出する熱負荷導出部と、
導出された前記外気導入量と導出された前記車両内の熱負荷とに基づいて、前記流量調整部が調整する空気の流量である送出流量、および前記割合調整部が調整する外気導入量と内気導入量との割合である導入量割合とを導出する割合導出部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記車両の台車と、該台車の上に設置される車体との間に設けられ、該台車から該車体へ伝達される振動を抑制する空気バネの内圧を測定する内圧測定部をさらに備え、
前記人数推定部は、測定された前記空気バネの内圧に基づいて、前記車両に乗車している乗客の重量を導出して、乗客の人数を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
乗客が乗降するドアの開閉を検知する開閉検知部をさらに備え、
前記開閉検知部が、前記ドアが開から閉になったことを検知したことを契機に、前記導入量導出部は前記外気導入量を導出し、前記熱負荷導出部は前記車両内の熱負荷を導出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車両用空調装置を用いた空調方法であって、
車両に乗車している乗客の人数を推定し、
推定した前記乗客の人数に基づいて、前記車両用空調装置に導入される前記車両外の空気の流量である外気導入量を導出し、
前記車両内の温度である内気温および前記車両外の温度である外気温を測定し、
前記推定した乗客の人数と、測定された前記内気温および前記外気温とに基づいて、前記車両内の熱負荷を導出し、
導出した前記外気導入量および導出した前記車両内の熱負荷に基づいて、前記車両用空調装置が送出する空気の流量である送出流量、および前記外気導入量と前記車両内から導入される空気の流量である内気導入量との割合である導入量割合を導出し、
導出した前記導入量割合で、前記車両用空調装置に導入される空気の流量のうち、前記外気導入量と前記内気導入量との割合を調整し、
導出した前記送出流量で前記車両内に空気を送出することを特徴とする空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101626(P2012−101626A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250534(P2010−250534)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】