説明

車両用空調装置

【課題】ドア開時の車室内温度及び吹出し風量の両者の変動を抑制することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】内気温湿度センサ142及び外気温湿度センサ143の検出信号に基づいて車室内温湿度及び車室外温湿度を検出し(ステップS210)、内気温湿度及び外気温湿度から乗降ドアが開かれているときに車室内を出入りする出入熱量Qaを算出し、この出入熱量Qaに基づいて空調能力の増加量と補正制御時間Taとを算出する(ステップS220)。そして、到着予想時刻T1及び空調補正時間Taに基づいて制御開始時刻T0を算出する(ステップS240)。最後に、算出した制御開始時刻T0に到達したか否かを判断し、制御開始時刻T0に到達したときには、空調空気の吹出し風量を増量させる(ステップS250)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降ドアの開閉による車室内温度変化を抑止することができる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗降ドア開閉時の外気侵入による車室内温度変化を抑えるための車両量空調装置として特許文献1に記載されているものが知られている。これは、ドアの開閉信号からドアが開かれていると判断したときには、空調空気の吹出し風量を増加してドアから侵入する外気による車室内温度変動を抑えるようにしている。通常は、侵入する外気による車室内温度変動が発生したときに空調空気の吹出し風量を増量しているため、車室内温度の変動が避けられなかったが、このように予め吹出し風量を増量しておくことで車室内温度変動を抑制できる。
【特許文献1】特開2006−224827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来装置では、ドア開時に空調空気の吹出し風量を増加する構成であるため、ドア開時とドア閉時とでは吹出し風量が大きく変動し、この吹出し風量の変動が乗員に対して不快感を与え易いという不具合がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ドア開時の車室内温度及び吹出し風量の両者の変動を抑制することができる車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、乗降地点を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、自車両の走行経路を設定する走行経路設定手段と、走行経路上において自車両が停車すべき乗降地点を検出する乗降地点検出手段と、自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、現在位置と乗降地点との位置関係に基づいて自車両が乗降地点に到着する到着予想時刻を算出する時刻算出手段と、自車両の車室内に空調空気を吹き出す空調ユニットと、乗降地点において自車両のドアが開かれているときに自車両内を出入りする熱量(出入熱量)を算出する熱量算出手段と、熱量算出手段で算出された出入熱量を相殺するために到着予想時刻前から空調空気の吹出し風量を増加させるように空調ユニットを制御する空調制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1の発明によれば、到着予想時刻よりも前に、空調空気の吹出し風量を増加させているため、乗降地点に到着してドアが開かれているときに車室内を出入りする出入熱量は、車室内に蓄積されている熱量と相殺される。従って、侵入する外気による室内温度変動を抑制することができるとともに、乗降ドア開時の吹出し風量の過度な増加を防止することができる。また、吹出し風量の過度な増加を防止することで、吹出し騒音も低減することができる。
【0007】
請求項2の発明では、熱量算出手段は、乗降地点におけるドアの開扉時間を算出する開扉時間算出手段と、車室内と車室外との温湿度差を検出する温湿度検出手段とを備えており、開扉時間算出手段で算出されたドアの開扉時間及び温湿度検出手段で検出された温湿度差から出入熱量を算出することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明によれば、実際の車室内外の温湿度差に基づいて出入熱量を算出することで、その算出精度を高精度化することができる。尚、出入熱量算出の手順としては、車室内外の温湿度差から内外気のエンタルピ差を求め、このエンタルピ差及び開扉時間から出入熱量を算出することができる。
【0009】
請求項3の発明では、空調制御手段は、熱量算出手段で算出された出入熱量に基づいて空調空気の吹出し風量の増加量と、増加量を維持した際に出入熱量を相殺し切ることができる補正制御時間とを決定し、補正制御時間内は空調ユニットから吹き出される空調空気の吹出し風量を増加量分だけ増加させることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明によれば、外気侵入によって車室内を出入りする熱量を確実に相殺することができるとともに、車室内に余分な熱量を供給することがなく効率的に空調ユニットを作動させることができる。また、吹出し風量の増加量及びその継続時間の組み合わせについては適宜変更することができる。
【0011】
請求項4の発明では、空調制御手段は、ドアの閉扉後には、空調ユニットの制御を終了することを特徴としている。
【0012】
ドアが閉じられた後では、ドアを介して車室内に大量の熱量が出入りすることがなく急激な室内温度変動のおそれがなくなる。さらには、空調ユニットの制御によってドア閉扉時における室内温度変動は抑制されているので、当該制御を維持し続けることも必要なくなる。従って、ドア閉扉後には、当該制御を終了して車室内温度に応じて空調ユニットを作動させることで車室内を適切な空調状態に保持することができる。
【0013】
請求項5の発明では、空調制御手段は、熱量算出手段で算出された熱量が所定量以下であるときには、空調ユニットの制御を中止することを特徴としている。
【0014】
内外気の温湿度差が小さいとき(エンタルピ差が小さいとき)等の相殺すべき熱量が少ない場合には、室内温度変動が抑えられるため乗員が不快感を覚え難い。また、このような場合には、上記制御を実行することで空調空気の吹出し風量の変動のみが目立つという不都合も考えられる。従って、本構成のように、無用な制御を中止することでも乗員に対する快適感を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施形態>
本発明に係る車両用空調装置の実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。本実施形態は、例えば路線バスに適用されるものであり、乗降地点でのドア開時における車室内温度変動を抑制するために乗降地点到着前から車室内に吹き出す空調空気の吹出し風量を増加させる空調補正制御を行うものである。
【0016】
図1に本実施形態の全体構成を示す。本実施形態の車両用空調装置では、空調ユニット1及びナビゲーションユニット2を有している。空調ユニット10には、クーラユニット、ヒータユニット、これらクーラユニット及びヒータユニット内の構成要素を作動させるためのアクチュエータ12、ブロワファン13、環境条件検出センサ14、エアコンECU15(熱量算出手段、空調制御手段)等を備えている。
【0017】
クーラユニットには、空調ユニット10内部に導入された空気を冷却するためのエバポレータ(蒸発器)が設けられており、このエバポレータには、コンプレッサ、コンデンサ(凝縮器)、膨張弁およびリキッドタンクなどで構成された冷凍サイクルが接続され、コンプレッサで圧縮された冷媒が供給される。ヒータユニットには、エンジンの冷却水が循環するヒータコアが設けられており、導入した空気がこのヒータコアを通過することで加熱される。また、ブロワファン13は空調ユニット10内部に空気を導入すると共に、エバポレータまたはヒータコアを通過した空調空気を車室内に吹き出す。
【0018】
環境条件検出センサ14としては、車室内へ入射される日射量を検知する日射センサ141と、車室内の温度及び湿度(車室内温湿度)を検出する内気温湿度センサ142(温湿度検出手段)と、車室外の温度及び湿度(車室外温湿度)を検出する外気温湿度センサ143(温湿度検出手段)と、を備えており、各センサ141〜143からの検出信号がエアコンECU15に入力されるようになっている。
【0019】
エアコンECU15には、設定された室内温度等に対して、日射センサ141、内気温湿度センサ142および外気温湿度センサ143から入力した検出信号を加味しながら最適な室内環境を実現するための制御ロジックが記憶されており、この制御ロジックによる演算結果に基づいて、上述した各種アクチュエータ12及びブロワファン13を駆動制御する。また、エアコンECU15には、乗降ドアを開閉する開閉装置からの開閉情報Iaを受信するようになっている。この開閉情報Iaによって乗降ドアが開扉あるいは閉扉であるかを判断することができる。
【0020】
ナビゲーションユニット2は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)用人工衛星からの送信電波を受信するためのGPSアンテナ21と、このGPSアンテナ21からの受信信号に基づいて自車両の現在地、進行方向を演算するためのGPSレシーバ22と、車両に設けられ自車両の進行方向の変化を検出するためのジャイロコンパス23と、自車両の走行速度を検出するための車速センサ24と、VICSなどの交通情報の提供通信網から当該交通情報を取得するための交通情報受信器25と、乗員が各種の指令を入力するための操作部26と、道路地図を表示するために道路情報(地図情報)が格納されたCD−ROM等の記録媒体271(地図情報記憶手段)から当該地図情報を読み出すためのプレーヤ27と、道路地図や現在地を表示するための液晶ディスプレイ等からなる表示装置28と、これらGPSレシーバ22、ジャイロコンパス23、車速センサ24、交通情報受信器25、操作部26およびプレーヤ27からの情報を取り込んで、主として自車両の現在位置や進行方向、目標走行先等を表示装置28に表示して、運転者に対して自車両の走行案内を行うためのナビゲーションECU29とを備えている。
【0021】
GPSレシーバ22(現在位置検出手段)は、いわゆるGPS航法のために使用されるもので、自車両の現在位置や進行方向をGPS用人工衛星からの電波に基づき測定する。これに対して、ジャイロコンパス23および車速センサ24は、いわゆる自律航法のために使用されるもので、車両の相対的な移動量を検出して現在地や進行方向を逐次更新しながら現在地や進行方向を測定し、自車両が人工衛星からの電波を受信できない場合などのように、GPSレシーバ22による測定結果が正常でないときにこれを補完する。
【0022】
また、記録媒体271に記憶されている地図情報には、上述したように道路地図を表示するための道路情報のほかに、路線バスのバス停(乗降地点)が含まれている。
【0023】
本実施形態のナビゲーションユニット2の使用方法としては、運行前に、操作部26(走行経路設定手段)の設定操作により自車両が走行すべき運行経路を走行経路として設定しおき、設定した走行経路に従って運行する。
【0024】
このナビゲーションECU29と上述したエアコンECU15とは、交信可能に結線されており、エアコンECU15からの要求に応じて、主として自車両の現在位置の情報がナビゲーションECU29から送信される。
【0025】
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について説明する。
「到着予想時刻算出処理」
当該処理は、主にナビゲーションユニット2側での処理となる。図2に示すように、ステップ100では、GPSレシーバ22およびジャイロコンパス23により自車両の現在位置を取得し、この現在位置を表示装置28上に地図画像とともに表示する。ステップS110では、予め設定されている走行経路上における自車両の現在位置を確認する。ステップS120では、ステップS110での確認の結果、未走行の走行経路中に自車両が停車すべきバス停があるか否かを判断する。
【0026】
ここで、停車すべきバス停がある場合には、ステップS130にて、自車両の現在位置と停車すべきバス停との間の渋滞情報を交通情報受信器25により取得し、ステップS140で車速センサ24から自車両の走行速度を検出する。
【0027】
そして、ステップS150にて、自車両の現在位置、停車すべきバス停の位置、渋滞情報、及び自車両の車速からバス停への到着予想時刻T1を算出し、エアコンECU15に送信する。
【0028】
一方、ステップS120で自車両が停車すべきバス停がないと判断されたときには、当該処理を終了する。
【0029】
「空調補正制御処理」
当該処理は、主に空調ユニット1側での処理となる。図3に示すように、ステップS200で現在の空調制御状態を判断する。この空調制御状態は、各種アクチュエータ12、ブロワファン13の制御状態に関するものである。
【0030】
ステップS210では、内気温湿度センサ142及び外気温湿度センサ143の検出信号に基づいて車室内温湿度及び車室外温湿度を検出する。ステップS220では、取得した車室内温湿度及び車室外温湿度から乗降ドアが開かれているときに車室内を出入りする出入熱量Qaを算出し、算出した出入熱量Qaに基づいて空調能力の増加量と補正制御時間Taとを算出する。
【0031】
出入熱量Qaについては、車室内温湿度と車室外温湿度との温湿度差から算出される内外気のエンタルピ差、及び乗降ドアの開扉時間により求めることができる。また、乗降ドアの開扉時間については、例えば、各バス停での平均停車時間を用いることができる。
【0032】
この空調能力は、単位時間当たりの車室内への供給熱量のことであり、空調能力の増加量とは、供給熱量の増加量(増加熱量Qb)のことをいう。そして、当該増加熱量Qbは、空調空気の吹出し風量を上述した空調制御状態において設定されている吹出し風量よりも増加させることにより得ることができる。また、補正制御時間Taについては、少なくとも乗降ドアの開扉時間よりも長い時間となるように設定する。
【0033】
ステップS230では、空調能力を増加させる必要があるか否かを判定する。この判定は、ステップS220で算出された空調能力の増加量(増加熱量Qb)が所定量以上であるか否かにより行う。当該ステップで空調能力の増加が必要であると判断したときには、ステップS240に進み、不要であると判断したときには、当該処理を終了する。
【0034】
ステップS240では、到着予想時刻T1及び補正制御時間Taに基づいて空調補正制御の開始時刻(制御開始時刻T0)を算出する。この制御開始時刻T0は、到着予想時刻T1よりも早い時刻であって、且つ、空調補正時間Taの終期を乗降ドア閉扉時T2に一致させたときに当該補正制御時間Taを確保することができる時刻とされる。
【0035】
ステップS250では、算出した制御開始時刻T0に到達したか否かを判断し、当該制御開始時刻T0に到達したときには、ステップS260にて、空調ユニット1を制御して空調空気の吹出し風量を増加させる。
【0036】
ステップS270では、乗降ドアの開閉装置から開閉情報Iaを取得する。そして、ステップS280では、取得した開閉情報Iaから乗降ドアが開扉状態から閉扉状態となったか否かを判断する。ここで閉扉状態に移行したときには、当該空調補正制御を終了し、環境条件検出センサ群14からの検出信号に基づいて空調ユニット1を制御する。また、このステップS280では、補正制御時間Taが経過する前に乗降ドアが閉扉状態に移行したときにも、上記と同様に空調補正制御を終了させる。
【0037】
図4は、冷房時における、吹出し騒音変化、空調空気の吹出し風量変化、及び車室内温度変動を示したグラフである。従来装置(各グラフ中(1)の線)では、車室内温度変動に追従して空調空気の吹出し風量を調整している。従って、自車両がバス停に停車して乗降ドアを開いてから車室内温度が上昇し、その温度上昇に伴って吹出し風量が増加している。車室内温度は乗降ドアを閉じるときが最大となっており、吹出し風量も最大となっている。
【0038】
乗降ドアが閉じられた後は乗降ドアからの熱量侵入が遮断されるため、空調空気の吹出し風量が漸次低減し、所定時間経過後には、車室内温度が安定するとともに吹出し風量も低風量に安定する。
【0039】
一方、本実施形態装置(各グラフ中(2)の線)では、バス停への到着予想時刻T1よりも前に空調空気の吹出し風量が増加されることにより、車室内温度が設定温度よりも低下していく。自車両がバス停に到着し、乗降ドアを開いているときには、熱量侵入によって車室内温度が上昇し、乗降ドアを閉じたときに車室内温度が最大となる。ただし、到着予想時刻T1よりも前に空調空気の吹出し風量を増加して冷却熱量を蓄積していたことで、侵入した熱量の一部はこの冷却熱量によって相殺される。このため、ドアを閉じたときの車室内温度は従来装置の場合よりも低くなり、また、吹出し風量を過度に増加させることもなくなる。
【0040】
乗降ドアを閉じた後は、従来装置と同様にして吹出し風量を調整するのであるが、乗降ドアを閉じたときの車室内温度の上昇が抑えられていることから、従来装置よりも短い時間で車室内温度及び吹出し風量が安定する。
【0041】
また、吹出し風量の増加に伴う騒音については、本実施形態装置の方が従来装置よりも吹出し風量の上昇量を低減することができるため、ピーク騒音を低減することができる。
【0042】
図5には、内外気エンタルピ差による空調補正制御の一例を示している。本実施形態では、空調能力の増加量を一定とした状態で補正制御時間Taを出入熱量Qaの大小に応じて適宜変更している。環境条件検出センサ群14による検出信号から内外気のエンタルピ差を求めたときに、そのエンタルピ差が5(kJ/kg)以上となっているときには、空調補正制御が必要と判断して補正制御時間Ta及び吹出し風量の増加量(空調能力の増加量)を設定する。また、内外気のエンタルピ差が5(kJ/kg)未満であるときには、空調補正制御が不要であると判断して、当該空調補正制御を中止する。
【0043】
空調補正制御を行う場合の吹出し風量の増加量については、一律で風量レベルを1レベル上げることとしている。例えば、風量レベルがLo,MED1,MED2,Hiの4段階のうち、Loに設定されていればMED1へと風量を1レベル上げる。
【0044】
そして、補正制御時間Taについては、算出された出入熱量Qa(kJ)から吹出し風量増加による増加熱量Qb(kJ/sec)を除することで求める。従って、ドア開時の出入熱量Qaの増加に伴って補正制御時間Taが長くなり、制御開始時刻T0が前倒しされる。
【0045】
本実施形態によれば、到着予想時刻T0よりも前に、空調空気の吹出し風量を増加させているため、バス停に到着して乗降ドアが開かれているときに車室内を出入りする出入熱量Qaは、車室内に蓄積されている熱量と相殺される。従って、乗降ドア開時の吹出し風量の過度な増加を防止することができるとともに、侵入する外気による室内温度変動を抑制することができる。吹出し風量の過度な増加を防止することで、吹出し騒音も低減することができる。
【0046】
また、実際の内外気のエンタルピ差に基づいて出入熱量Qaを算出することで、その算出精度を高精度化することができる。
【0047】
また、本実施形態では、算出した出入熱量Qaに相当する熱量を車室内に供給できるように吹出し風量の増加量及び補正制御時間Taを決定しているため、車室内温度を適切に維持することができる。
【0048】
また、乗降ドアが閉じられた後では、乗降ドアを介して車室内に大量の熱量が出入りすることがなく急激な室内温度変動のおそれがなくなる。さらには、上記の空調補正制御によって乗降ドア閉扉時における室内温度変動は抑制されているので、当該空調制御を維持し続けることも必要なくなる。従って、本実施形態のように、乗降ドアの閉扉後には、空調補正制御を解除して車室内温度に応じて空調ユニット1を作動させることで車室内温度を早期に安定させることができる。
【0049】
また、算出された出入熱量Qaが所定量以下であるときには、空調補正制御を中止することとしているため、空調補正制御を実行したとしたときに想定される吹出し風量の変動による違和感を防止し、乗員の快適感を維持することができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0051】
上記実施形態では、空調補正制御を行うに当たって、吹出し風量の増加量を一定としたまま補正制御時間Taを適宜変更する構成としていたが、これに限らず、例えば補正制御時間Taを一定としておき吹出し風量の増加量を適宜変更するようにしてもよく、あるいは、両者をぞれぞれ変更する構成としても良い。
【0052】
上記実施形態では、出入熱量Qaを乗降ドア開扉時間と内外気エンタルピ差とに基づいて算出するようにしていたが、例えば、乗降ドア開扉時における出入熱量Qaを実験により求めるようにしても良い。
【0053】
上記実施形態では、補正制御時間Taの終期を乗降ドア閉扉時T2に設定していたが、この終期は乗降ドア閉扉時T2と前後していても良い。また、乗降ドア閉扉時T2以降も補正制御時間Taが継続しているときには、この補正制御時間Taの終了まで空調補正制御を行ない続けるようにすれば良い。
【0054】
上記実施形態では、路線バス用の空調装置について適用した例を示したが、例えば、鉄道車両に適用した例であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る車両用空調システムの全体構成図である。
【図2】到着予想時刻算出処理の内容を示したフローチャートである。
【図3】補正制御処理の内容を示したフローチャートである。
【図4】空調空気の吹出し風量変動及び車室内温度変動を示したグラフである。
【図5】空調補正制御の一例を示した表である。
【符号の説明】
【0056】
1…空調ユニット
2…ナビゲーションユニット
11…クーラユニット
12…ヒータユニット
13…ブロワファン
14…環境条件センサ群
142…内気温湿度センサ142(温湿度検出手段)
143…外気温湿度センサ143(温湿度検出手段)
15…エアコンECU(熱量算出手段、空調制御手段)
21…GPSアンテナ
22…GPSレシーバ22
23…ジャイロコンパス23
24…車速センサ24
25…交通情報受信器25
26…操作部(走行経路設定手段)
27…プレーヤ
271…記録媒体271(地図情報記憶手段)
28…表示装置
29…ナビゲーションECU(乗降地点検出手段、時刻算出手段、)
Qa…出入熱量
Ta…補正制御時間
T0…制御開始時刻
T1…到着予想時刻
T2…乗降ドア閉扉時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降地点を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記自車両の走行経路を設定する走行経路設定手段と、
前記走行経路上において前記自車両が停車すべき乗降地点を検出する乗降地点検出手段と、
前記自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記現在位置と前記乗降地点との位置関係に基づいて前記自車両が前記乗降地点に到着する到着予想時刻を算出する時刻算出手段と、
前記自車両の車室内に空調空気を吹き出す空調ユニットと、
前記乗降地点において前記自車両のドアが開かれているときに前記自車両内を出入りする熱量(出入熱量)を算出する熱量算出手段と、
前記熱量算出手段で算出された出入熱量を相殺するために前記到着予想時刻前から前記空調空気の吹出し風量を増加させるように前記空調ユニットを制御する空調制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱量算出手段は、
前記乗降地点におけるドアの開扉時間を算出する開扉時間算出手段と、
前記車室内空気と車室外空気との温湿度差を検出する温湿度検出手段とを備えており、
前記開扉時間算出手段で算出された前記ドアの開扉時間及び前記温湿度検出手段で検出された前記温湿度差から前記出入熱量を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段は、
前記熱量算出手段で算出された前記出入熱量に基づいて前記空調空気の吹出し風量の増加量と、前記増加量を維持した際に前記出入熱量を相殺し切ることができる補正制御時間とを決定し、
前記補正制御時間内は前記空調ユニットから吹き出される前記空調空気の吹出し風量を前記増加量分だけ増加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段は、
前記ドアの閉扉後には、前記空調ユニットの制御を終了することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調制御手段は、
前記熱量算出手段で算出された熱量が所定量以下であるときには、前記空調ユニットの制御を中止することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−143284(P2008−143284A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331091(P2006−331091)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】