車両用空調装置
【課題】冷媒流量が多い運転条件時に、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによって生じる冷媒の圧力損失の増加を抑制する。
【解決手段】圧縮機110、放熱器としての凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、この冷凍サイクルに付加された蓄冷器160とを備える車両用空調装置に、蓄冷器160を迂回させて冷媒を流すためのバイパス経路170と、このバイパス経路170を開閉するバイパス開閉弁180と、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出する検出手段191、192とを設ける。そして、圧縮機110の駆動時に、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御をエアコンECU200に実行させる。
【解決手段】圧縮機110、放熱器としての凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、この冷凍サイクルに付加された蓄冷器160とを備える車両用空調装置に、蓄冷器160を迂回させて冷媒を流すためのバイパス経路170と、このバイパス経路170を開閉するバイパス開閉弁180と、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出する検出手段191、192とを設ける。そして、圧縮機110の駆動時に、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御をエアコンECU200に実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停車時等に圧縮機を作動させずに空調する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用空調装置として、蓄冷式の車両用空調装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
これは、圧縮機、放熱器、減圧器および蒸発器が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルのうち、圧縮機の冷媒吸入側と蒸発器の冷媒流出側との間、すなわち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷熱交換器を接続した構成のものである。この蓄冷熱交換器は、蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材との間で熱交換するものである。
【0004】
そして、この車両用空調装置は、圧縮機の運転時では、冷房・蓄冷運転モードとして、蒸発器で、空調ケース内に供給される空調空気を冷却すると同時に、蓄冷熱交換器で、蒸発器通過後の冷媒によって蓄冷材に蓄冷させる。一方、圧縮機の停止時では、放冷運転モードとして、蓄冷熱交換器で、蓄冷された蓄冷材から冷媒に対して放冷させて、冷媒の圧力を低圧に維持させることで、放熱器と蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、蒸発器での空調空気の冷却を継続可能としている。
【0005】
また、特許文献2に、特許文献1と同様に、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷熱交換器を接続した車両用空調装置が開示されているが、この空調装置では、圧縮機の停止時には、電動ポンプを利用して、冷媒を蒸発器と蓄冷器との間で循環させること構成となっている。
【0006】
なお、特許文献1の車両用空調装置は、上記の通り、圧縮機の停止時に、放熱器と蒸発器との間の冷媒の残圧を利用して、放熱器から蒸発器への冷媒流れを形成しており、特許文献2のように電動ポンプ等の冷媒循環手段を用いて冷媒を放熱器と蒸発器の間で循環させなくても、蒸発器での空調空気の冷却を継続可能とするものである。
【0007】
また、特許文献3に、特許文献1とは構成および運転方式が異なる蓄冷式の車両用空調装置が開示されている。これは、蓄冷運転モード時には冷媒の余剰冷力を蓄冷器に蓄冷し、放冷運転モード時に蓄冷器の冷力を用いて補助的に冷媒の凝縮を行うことで、冷凍サイクルの余剰冷力を、高熱負荷時の冷媒凝縮に有効利用することを目的としたものである。
【0008】
具体的には、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器で構成される冷凍サイクルのうち、凝縮器と蒸発器との間に蓄冷器を配置し、さらに、蓄冷器を迂回させて冷媒を流すための標準バイパス流路や、蒸発器を迂回させて冷媒を流すための蓄冷用バイパス流路や、これらを開閉する弁等を設けたものである。
【0009】
そして、特許文献3に記載の車両用空調装置では、運転モードを、冷房運転モードと、蓄冷運転モードと、放冷運転モードと、圧縮機停止モードとに分けており、バイパス流路を開閉する弁の開閉制御によって、各運転モードに応じた冷媒流れを形成している。すなわち、冷房運転モードでは、標準バイパス流路に冷媒を流すことで、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器の順に冷媒が流れる通常の冷凍サイクル運転を行い、蓄冷運転モードでは、蓄冷用バイパス流路に冷媒を流すことで、凝縮器を通過した冷媒を、蓄冷器に通過させた後、圧縮機に流入させる。放冷運転モードでは、凝縮器を通過した冷媒を、蓄冷器、蒸発器の順に通過させている。なお、この車両用空調装置は、放冷運転モードに、圧縮機を稼動させて、冷媒を強制循環させており、停車時等に圧縮機を作動させずに空調するものではない。
【0010】
また、特許文献4に、他の技術分野であるが、蓄冷器を備える蓄冷型冷蔵庫が開示されている。この蓄冷型冷蔵庫は、特許文献1と同様に、冷凍サイクルのうち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷器を接続しており、蒸発器から流出した冷媒を、蓄冷器を迂回させて、圧縮機の吸入側に冷媒を流すバイパス通路を備えている。
【0011】
ただし、特許文献4の蓄冷型冷蔵庫は、特許文献3と同様に、運転モードを、冷房運転モードと、蓄冷運転モードと、放冷運転モードとに分けており、バイパス流路を開閉する弁の開閉制御によって、各運転モードに応じた冷媒流れを形成している。すなわち、通常運転モードでは、バイパス通路に冷媒を流すことで、通常の冷凍サイクル運転と同様に、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器に冷媒を流し、蓄冷運転モードでは、バイパス通路を閉じることで、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器、蓄冷器、圧縮機の順に冷媒を流すようにしている。放冷運転モードでは、バイパス通路を閉じ、圧縮機の代わりに、冷媒循環駆動装置を利用して、蒸発器と蓄冷器との間で冷媒を循環させる冷媒サイクルを形成している。
【特許文献1】特開2007−1485号公報(第6−9頁、第1−3図)
【特許文献2】特開2003−285634号公報(第9−11頁、第7−10図)
【特許文献3】実開63−150813号公報(第12−15頁、第1、2図)
【特許文献4】特開平7−248172号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した特許文献1に記載の車両用空調装置は、冷凍サイクルのうち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に蓄冷器が接続されており、蓄冷運転と同時に冷房運転する構成であるため、以下の説明の通り、蓄冷器での冷媒の圧力損失が大きい場合、車両用空調装置の冷房性能に悪影響を与えてしまう。
【0013】
蒸発器の冷媒流れ下流側と圧縮機の冷媒吸入側との間に蓄冷器を配設した構成では、蓄冷器の蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによって、冷媒の圧力損失が生じることとなる。この圧力損失の大きさは、通常運転時では冷房性能に影響が無い程度の大きさであるが、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での圧力損失が増加するため、蒸発器の蒸発温度が上昇し、蒸発器の吹出空気温度が上昇してしまい、冷却スピードが低下してしまう問題が発生する。
【0014】
なお、この問題は、蓄冷器が蒸発器の冷媒流れ下流側に直列接続されており、蓄冷運転と同時に冷房運転する構成である車両用空調装置に特有の問題であって、上記した特許文献3、4のように、蓄冷運転と冷房運転とを同時に行っていない車両用空調装置では生じない問題である。
【0015】
本発明は、上記点に鑑み、冷凍サイクルを構成する蒸発器の冷媒流れ下流側と圧縮機の冷媒吸入側との間に蓄冷熱交換器を直列に接続配置し、蓄冷運転と同時に冷房運転を行う蓄冷式の車両用空調装置において、冷媒流量が多い運転条件時に、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによって冷媒の圧力損失が増加して、車両用空調装置の冷房性能が低下するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を流れる冷媒の流量を調整する流量調整手段(180)と、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、前記圧縮機の駆動時に、検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、バイパス経路を流れる冷媒の流量を増大させる制御を流量調整手段に対して行う制御手段(200)とを備えることを第1の特徴としている。
【0017】
ここで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量は、物理量の他にその変化量も含む意味である。
【0018】
例えば、制御手段は、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでは、少なくとも蓄冷熱交換器に冷媒が流れるように、流量調整手段を制御するとともに、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きいときでは、バイパス経路を流れる冷媒の流量を、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでのバイパス経路の冷媒流量よりも増大させるように、流量調整手段を制御する。
【0019】
このように、検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも小さい場合、少なくとも蓄冷熱交換器に冷媒を流すことで、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0020】
そして、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合では、バイパス経路を流れる冷媒の流量を、所定しきい値よりも小さいときでのバイパス経路の冷媒流量よりも増大させることで、冷媒流量が多い運転条件時に蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を低減することができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0021】
また、本発明は、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、圧縮機の駆動時に、検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、バイパス経路を閉塞したり、バイパス経路を開放したりする制御をバイパス開閉弁に対して行う制御手段(200)とを備えることを第2の特徴としている。
【0022】
例えば、制御手段(200)は、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス経路を閉塞し、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス経路を開放するように、バイパス開閉弁を制御する。
【0023】
このように、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合では、バイパス経路を閉塞し、冷媒を蓄冷熱交換器に流すようにすることで、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0024】
そして、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合では、バイパス経路を開放し、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すようにすることで、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0025】
蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量の検出手段としては、例えば、以下のものが採用可能である。
【0026】
検出手段としては、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出する冷媒圧力差検出手段(191、192、193、194、195、196、197、198)を採用できる。
【0027】
冷凍サイクルでは、放熱器、蒸発器、冷媒配管等を冷媒が流れることで、冷媒の圧力損失が生じている。冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、冷凍サイクル内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。そこで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量として、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出し、この検出値が所定しきい値よりも大きい場合に、蓄冷熱交換器を迂回させて冷媒を流すようにすることができる。
【0028】
また、検出手段としては、蓄冷熱交換器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(191、192)、蒸発器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(193、194)、または、凝縮器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(195、196)を採用できる。
【0029】
また、冷媒圧力差検出手段としては、例えば、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の低圧側冷媒の圧力差を検出するセンサ(197、198)を採用できる。
【0030】
これは、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差が大きくなる傾向がある。そこで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量として、例えば、圧縮機吐出後の高圧側冷媒と、圧縮機が吸入する低圧側冷媒の冷媒圧力差を検出し、この検出値が所定しきい値よりも大きい場合に、蓄冷熱交換器を迂回させて冷媒を流すようにすることができる。
【0031】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段(197、198)を採用でき、さらに、冷媒圧力検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出するセンサ(197)や減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の冷媒圧力を検出するセンサ(198)を採用しても良い。
【0032】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の温度差を検出する冷媒温度差検出手段を採用できる。さらに、冷媒温度差検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の低圧側冷媒の温度差を検出するセンサ(211、212)を採用しても良い。
【0033】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段(211、212)を採用できる。さらに、冷媒温度検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出するセンサ(211)や、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の冷媒温度を検出するセンサ(212)を採用しても良い。
【0034】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の流量を検出する冷媒流量検出手段(221)、空調ケース内で蒸発器(150)に吸い込まれる空気の温度を検出するセンサ(241)、空調ケース内で蒸発器(150)を通過した直後の空気の温度を検出するセンサ(242)、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するセンサ(243)、車室内の空気温度を検出するセンサ(244)車室外の空気温度を検出するセンサ(245)、車室内に注がれる日射量を検出するセンサ(246)、または、圧縮機の吐出能力を検出する検出手段(231)を採用できる。
【0035】
また、例えば、圧縮機(110)が、エンジン(10)の回転動力が伝達されることによって駆動し、エンジン回転数によって、吐出能力が調整される固定容量式である場合では、検出手段として、エンジン回転数検出手段(231)を採用できる。
【0036】
また、例えば、圧縮機が、1回転あたりの吐出容積が一定構造の固定容量式である場合、検出手段として、圧縮機の回転数検出手段(232)を採用できる。
【0037】
また、例えば、圧縮機が、1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造である可変容量式の圧縮機であって、圧縮機の回転数および1回転あたりの吐出容積を調整することによって、吐出能力が調整されるものである場合では、検出手段として、圧縮機の回転数を検出する回転数検出手段(232)と、圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させる吐出容積可変用信号を検出する吐出容積可変用信号検出手段とを採用できる。この場合、制御手段(200)が、圧縮機の駆動時では、回転数検出手段(232)が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせを、マップに照らし合わせ、その結果に基づいて前記バイパス開閉弁を制御して、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりするに変更する。例えば、マップに照らし合わせた結果、マップの所定範囲外の場合に、バイパス経路を閉塞し、マップの所定範囲内の場合に、バイパス経路を開放するように、制御手段がバイパス開閉弁を制御する構成とする。
【0038】
可変容量式コンプレッサの場合、コンプレッサ回転数の増加および1回転あたりの吐出容積の増加により冷媒流量が増加し、それによって、蓄冷熱交換器の圧力損失が増加する。
【0039】
そこで、このように、回転数検出手段が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせが、例えば、組み合わせマップの所定範囲外の場合では、バイパス経路を閉塞し、冷媒を蓄冷熱交換器に流すようにすることで、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0040】
そして、回転数検出手段が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせが、例えば、組み合わせマップの所定範囲内の場合では、バイパス経路を開放し、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すようにすることで、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0041】
また、本発明では、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)とを備え、バイパス開閉弁は、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、所定値よりも大きいときでは圧力差によって機械的に開く構造となっていることを第3の特徴としている。
【0042】
バイパス開閉弁として、このような構造のものを採用することで、圧縮機の駆動時において、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは、バイパス開閉弁は閉じているので、冷媒は蓄冷熱交換器に流れ、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0043】
そして、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも大きいときでは、バイパス開閉弁が圧力差によって機械的に開くので、バイパス経路は開放され、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すことができ、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、例えば、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0044】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1実施形態)
第1実施形態は、本発明に係る車両用空調装置を、例えば、信号待ち等のように走行状態からアイドリングでの停車状態に移行した際にエンジンが停止されるいわゆるアイドルストップ車両に適用したものである。図1に、第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
【0046】
図1に示すように、車両用空調装置は、圧縮機110、放熱器としての凝縮器120、受液タンク130、減圧器としての膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、この冷凍サイクルに付加された蓄冷器160とを備えている。そして、本実施形態の車両用空調装置は、特許文献1に記載の車両用空調装置と異なり、蓄冷器160を迂回させて冷媒を流すためのバイパス経路170と、このバイパス経路170を開閉するバイパス開閉弁180と、このバイパス開閉弁180の開閉を制御する制御手段としてのエアコンECU200とを備えている。
【0047】
圧縮機110は、図示しない車両のエンジンを駆動源として作動し、冷凍サイクル内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する流体機械である。凝縮器120は、圧縮機110の冷媒吐出側に設けられ、高温高圧に圧縮された冷媒を放熱させて、凝縮液化させる熱交換器である。受液タンク130は、凝縮器120で凝縮された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を流出させるレシーバである。なお、凝縮器120においては、冷媒の過冷却域まで冷却する方式(いわゆるサブクールコンデンサ)にあっては、凝縮器120内にモジュレータタンクとして一体的に構成される場合もあり、この場合には受液タンク130は省略しても良い。また、冷媒として、放熱させても、凝縮しない冷媒を採用した場合では、凝縮器120は、冷媒を放熱させる放熱器として用いられる。
【0048】
膨張弁140は、受液タンク130で分離された液相冷媒を等エンタルピ的に減圧膨脹させるもので、本実施形態では、弁部141と、蒸発器150の冷媒流出側と蓄冷器160の冷媒入口側との間に設けられた感温部142とを有する温度式膨張弁である。膨張弁140は、感温部142で検出される冷媒温度に応じて弁部141の絞り開度が制御されて、蒸発器150から流出される冷媒の過熱度を所定値、例えば5〜10℃とするようになっている。
【0049】
蒸発器150は、膨張弁140にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する熱交換器であり、空調ケース151内に配設されて、この空調ケース151内に供給される空調空気から吸熱することで、空調空気を冷却する。なお、空調ケース151内には、蒸発器150の他に、図示しない空調空気送風用の送風機、空調空気加熱用の熱交換器等が配設されており、これらによって室内空調ユニットが構成される。この室内空調ユニットは車室内のインストルメントパネル内に配設される。
【0050】
蓄冷器160は、圧縮機110の冷媒吸入側と蒸発器150の冷媒流出側との間に、冷媒管171、172を介して、蒸発器150に対して直列の関係となるように、接続されている。
【0051】
本実施形態の蓄冷器160は、蓄冷熱交換器161と、蓄冷タンク162とを備えている。蓄冷熱交換器161は、蒸発器150から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材との間で熱交換するものである。蓄冷タンク162は、蓄冷熱交換器161を内部に収容するとともに、蓄冷熱交換器160で蓄冷材が放冷する際に凝縮液化される冷媒を溜めるものである。
【0052】
ここで、図2に、蓄冷器160の断面図を示す。本実施形態の蓄冷器160は、図2に示すように、蓄冷熱交換器161と蓄冷タンク162とが一体的に形成された構成である。
【0053】
そして、蓄冷熱交換器160は、例えば、図2に示すように、シェルアンドチューブタイプの熱交換器であり、複数積層された円形状のプレートフィン163の積層方向に複数の冷媒チューブ164が貫通され、この冷媒チューブ164およびプレートフィン163が熱的に接合されてシェル165内に配設されている。各冷媒チューブ164の両長手方向端部は、シェル165の外部に開口している。シェル165内に蓄冷材166が封入されており、蓄冷材166が冷媒チューブ164およびプレートフィン163の表面に接触するようにしている。蓄冷材としてはパラフィンや氷等が用いられる。
【0054】
蓄冷タンク162は、例えば、図2に示すように、その軸線が天地方向を向き、両端部側が閉塞されて、下側が絞られた円筒状のタンクである。蓄冷タンク162の内部には、冷媒チューブ164の長手方向が天地方向となるようにして蓄冷熱交換器161が配設されており、その上側に小空間162aが、その下側に大空間162bが形成されており、蓄冷熱交換器161の冷媒チューブ164の上側端部は小空間162aに連通し、冷媒チューブ164の下側端部は大空間162bに連通している。この大空間162bを構成する部分が、後述するように蓄冷熱交換器160で蓄冷材が放冷する際に凝縮液化される冷媒を溜めるためのタンク貯留部となる。
【0055】
そして、蒸発器150の冷媒流出側と蓄冷器160の冷媒流入側とを接続する蓄冷器流入側冷媒管171は、蓄冷タンク162内の小空間162aと連通した状態で、蓄冷タンク162の上端部に接続されている。
【0056】
一方、圧縮機110の冷媒吸入側と蓄冷器160の冷媒流出側とを接続する蓄冷器流出側冷媒管172は、蓄冷タンク162の上端部から蓄冷熱交換器161を貫通して、蓄冷タンク162の大空間162bの下端側に、開口端部172aが位置するように、蓄冷タンク162に接続されている。また、蓄冷器流出側冷媒管172は、蓄冷タンク162の小空間162aに対応する部位に、小空間162aに連通する開口部172bが設けられている。蓄冷器流出側冷媒管172の開口端部172aは細く形成され、その開口面積は開口部172bの開口面積よりも小さく形成されている。
【0057】
なお、蓄冷器160は、車両エンジンルーム内に配設されるが、車室内に許容搭載スペースがあれば、車室内に配設されるのが好ましい。
【0058】
また、バイパス経路170は、蒸発器150から流出した冷媒を、蓄冷器160を迂回させて、圧縮機110の吸入側に流すためのものである。具体的には、バイパス経路170は、冷媒管によって構成されており、図1に示すように、蓄冷器流入側冷媒管171の冷媒流れ途中に設けられた分岐部173と、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられた分岐部174とに接続されている。
【0059】
バイパス開閉弁180は、例えば、バイパス経路170の冷媒流れ途中に設けられた二方弁であり、バイパス開閉弁180としては、例えば、電磁弁が用いられる。バイパス開閉弁180は、エアコンECU200から開閉制御信号が入力されることで、開閉作動が制御される。
【0060】
また、本実施形態では、車両用空調装置は、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1を測定する蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器160の出口側冷媒の圧力Ps2を測定する蓄冷器出口圧力センサ192とを備えており、これらによって、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1と出口側冷媒の圧力Ps2との差ΔPs=(Ps1−Ps2)が検出できるようになっている。この冷媒圧力差ΔPsが、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に相当する。
【0061】
蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192は、それぞれ、蓄冷器流入側冷媒管171、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられており、検出結果を電気信号としてエアコンECU200に向けて出力する。なお、圧力センサ191、192としては、例えば、冷媒圧力の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0062】
エアコンECU200は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成され、予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行って、空調機器の作動を制御するものである。なお、図示しないが、エアコンECU200の入力側には、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192の他に、車室内温度Trを検出する室内温度センサ等のセンサ群や空調操作パネルが接続されており、エアコンECU200の出力側には、バイパス開閉弁180の他に、圧縮機110の電磁クラッチ、冷空調空気送風用の送風機等の空調機器が接続されている。
【0063】
次に、上記した構成の車両用空調装置の基本作動について説明する。
【0064】
(1)冷房運転および蓄冷運転モード
車両走行時に、エンジンにより圧縮機110が駆動され、冷凍サイクルが作動する。冷凍サイクルの作動開始時では、バイパス開閉弁180は閉じられており、また、圧縮機の駆動時では、基本的に、バイパス開閉弁180は閉じられ、バイパス経路170は閉塞される。
【0065】
圧縮機110で圧縮吐出された冷媒は、凝縮器120で凝縮液化され、受液タンク130を経て膨張弁140で減圧され、蒸発器150で、空調ケース151内に供給される空調空気から吸熱して蒸発し、空調空気を冷却する。
【0066】
そして、蒸発器150から流出された冷媒は、蓄冷器流入側冷媒管171を通って、蓄冷器160に流入し、蓄冷熱交換器161で、蓄冷材166を冷却する。蓄冷材166は冷媒からの吸熱により蓄冷される。蒸発器150、蓄冷熱交換器161でそれぞれ吸熱した冷媒は、過熱ガス冷媒となって、蓄冷器流出側冷媒管172の開口部172bあるいは開口端部172aから吸引されて圧縮機110に戻る(図2参照)。
【0067】
なお、冷凍サイクルとしては、車室内熱負荷に加えて、この蓄冷材166の冷却熱負荷がトータルの冷房負荷となり、蓄冷材166への蓄冷が完了すると、蓄冷熱交換器161での冷媒と蓄冷材166との間の熱移動は停止される。
【0068】
(2)放冷運転モード
車両が停車してエンジンが停止されると、圧縮機110も停止される。このとき、冷凍サイクル内では高圧側となる凝縮器120、受液タンク130から、低圧側となる蒸発器150および蓄冷器160に、その残圧により膨張弁140を通じて冷媒が流入する。
【0069】
蒸発器150に流入した冷媒は、空調空気との熱交換により、空調空気を冷却して過熱ガス冷媒となるが、蓄冷器160に流入し、蓄冷熱交換器161で、蓄冷材166の蓄冷熱により冷却されて凝縮液化し、重力により蓄冷タンク162内の下部の大空間162bに液冷媒として溜められる(図2参照)。
【0070】
つまり、蒸発器150からの過熱ガス冷媒は、蓄冷熱交換器161で凝縮されて体積を縮小させて、圧力を低圧に維持するので、圧縮機110が停止されても蓄冷材166の蓄冷熱が保持されている間は、凝縮器120と蒸発器150との間の残圧により、冷媒は継続して蒸発器150に流入可能となり、蒸発器150による空調空気の冷却が継続可能となる。
【0071】
次に、本実施形態の主な特徴部分について説明する。
【0072】
本実施形態では、上記した冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、エアコンECU200が、以下のように、車両用空調装置の運転条件に応じて、バイパス開閉弁180の開閉を制御する。図3に、エアコンECU200が実行するバイパス開閉弁180の開閉制御のタイムチャートを示す。
【0073】
エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPs=(Ps1−Ps2)を算出する。
【0074】
そして、図3に示すように、冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合、バイパス経路170を開放するように、バイパス開閉弁18に対して、エアコンECU200が制御信号を出力する。これにより、バイパス開閉弁18が開いた状態となる。一方、冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合、バイパス経路170を閉塞するように、バイパス開閉弁18に対して、エアコンECU200が制御することで、バイパス開閉弁18は閉じた状態となる。
【0075】
ここで、所定しきい値ΔPs_setは、冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、バイパス開閉弁180を閉じた状態のときに、蓄冷器160での冷媒の圧力損失によって、車両用空調装置の冷房性能に影響する値を、予め、調査しておき、その調査結果に基づいて、所定しきい値ΔPs_setを設定し、エアコンECU200に記憶しておく。
【0076】
したがって、本実施形態では、冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、車両用空調装置の冷房負荷が特に大きくなく、冷媒流量も特に多くないような通常運転時では、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPsは、所定しきい値ΔPs_setよりも小さいので、エアコンECU200によって、バイパス開閉弁180は閉じた状態とされる。これにより、蒸発器150から流出した冷媒は、蓄冷器160に流れることとなるので、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材166への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0077】
その一方、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多くなるような運転条件時では、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きくなるので、エアコンECU200によって、バイパス開閉弁180は開いた状態とされる。これにより、バイパス経路170が開放されるので、蒸発器150から流出した冷媒は、蓄冷器160を迂回して、圧縮機110の冷媒吸入側に流れるので、蓄冷器160内、特に、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失の増大を避けることができる。この結果、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
【0078】
なお、図3に示されるように、本実施形態では、冷媒圧力差ΔPsを算出して、直接的に、冷媒圧力差ΔPsを所定しきい値ΔPs_setと比較していたが、圧力センサの検出結果は、電気信号によってエアコンECU200に入力されることから、冷媒圧力差ΔPsを算出する代わりに、その圧力差と相関関係がある電流、電圧等の物理量を算出し、算出した物理量を、ΔPs_setと相関関係がある所定しきい値と比較することで、間接的に、冷媒圧力差ΔPsと所定しきい値ΔPs_setとを比較するようにしても良い。
【0079】
また、本実施形態では、圧力センサ191、192を、それぞれ、蓄冷器流入側冷媒管171、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けていたが、これらの設置箇所は、蓄冷熱交換器161の冷媒入口側と冷媒出口側の圧力を測定できる範囲で、任意に、変更可能である。例えば、圧力センサ191、192を、それぞれ、蓄冷熱交換器161の冷媒入口と冷媒出口に設けても良い。
【0080】
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図4では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0081】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを、蒸発器150の冷媒入口側の圧力Pe1を検出する蒸発器入口圧力センサ193と、蒸発器150の冷媒出口側の圧力Pe2を検出する蒸発器出口圧力センサ194とに変更したものであり、これらによって、蒸発器150の入口側冷媒の圧力Pe1と出口側冷媒の圧力Pe2との差ΔPe=(Pe1−Pe2)を検出できるようになっている。
【0082】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPe=(Pe1−Pe2)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPe_setに変更する。
【0083】
ここで、冷媒圧力差ΔPeは、蓄冷器160内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量である。すなわち、冷凍サイクルでは、蒸発器150を冷媒が流れることでも、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、蒸発器150内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。したがって、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒との冷媒圧力差ΔPeの大きさから、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失の変化を推測することができる。
【0084】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蒸発器入口圧力センサ193と、蒸発器出口圧力センサ194からの入力結果に基づいて、蒸発器150の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPe=(Pe1−Pe2)を算出する。 そして、エアコンECU200は、冷媒圧力差ΔPeが所定しきい値ΔPe_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPeが所定しきい値ΔPe_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
(第3実施形態)
図5に、第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図5では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0086】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを、凝縮器120の冷媒入口側の圧力Pc1を検出する凝縮器入口圧力センサ195と、凝縮器120の冷媒出口側の圧力Pc2を検出する凝縮器出口圧力センサ196とに変更したものであり、これらによって、凝縮器120の入口側冷媒の圧力Pc1と出口側冷媒の圧力Pc2との差ΔPc=(Pc1−Pc2)を検出できるようになっている。
【0087】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、凝縮器120の入口側冷媒の圧力Pc1と出口側冷媒の圧力Pc2との圧力差ΔPc=(Pc1−Pc2)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPc_setに変更する。
【0088】
ここで、冷媒圧力差ΔPcは、蓄冷器160内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量である。すなわち、冷凍サイクルでは、凝縮器120内を冷媒が流れることでも、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、凝縮器120内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。したがって、凝縮器120の入口側冷媒と出口側冷媒との冷媒圧力差ΔPcの大きさから、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失の変化を推測することができる。
【0089】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、凝縮器入口圧力センサ195と、凝縮器出口圧力センサ196からの入力結果に基づいて、凝縮器120の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPc=(Pc1−Pc2)を算出する。 そして、エアコンECU200は、冷媒圧力差ΔPcが所定しきい値ΔPc_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPcが所定しきい値ΔPc_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
(第4実施形態)
図6に、第4実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図6では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0091】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192を、圧縮機110から吐出される高圧側冷媒の圧力PHを検出する吐出圧センサ197、圧縮機110に吸入される低圧側冷媒の圧力PLを検出する吸入圧センサ198に変更したものであり、これらによって、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)を検出できるようになっている。
【0092】
吐出圧センサ197は、圧縮機110の吐出後であって膨張弁140よりも冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出する箇所に設置され、吸入圧センサ198は、膨張弁140よりも冷媒流れ下流側であって圧縮機110の吸入前の冷媒圧力を検出する箇所に設置される。
【0093】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPt_setに変更する。
【0094】
ここで、図7(a)、(b)に、冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図を示す。図7(a)、(b)は、ともに、圧縮機110、凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルにおいて、通常運転時の冷媒の状態を破線で示しており、通常運転時よりも冷媒流量が多い場合での冷媒の状態を実線で示している。図7(a)は、車室内温度が外気温度に近く、高い場合であり、図7(b)は、図7(a)のときよりも車室内温度が低い場合の冷媒状態を示している。
【0095】
クールダウンなどのように、車室内の温度が外気温度に近く、高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器吸込み温度および蒸発圧力が高いため、圧縮機吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。そして、冷媒流量が多くなった場合では、凝縮器120で冷媒を凝縮させる凝縮能力が多く必要となるため、凝縮器120での凝縮温度と凝縮器120での吸込空気温度との差は大きくなるので、図7(a)に示すように、通常運転時と比較して、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなるとともに、低圧側冷媒の圧力が高くなる方向に、冷凍サイクルの冷媒状態がバランスする。なお、このときの高圧側冷媒の圧力変化量は、低圧側冷媒の圧力変化量よりも大きい。したがって、冷媒流量が多く、蓄冷器160、すなわち、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる場合では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。
【0096】
また、例えば、図7(a)に示す運転状態から時間が経過して、車室内温度が外気温度に対し低下した場合において、外気温度、日射等の条件が変化したり、運転者の要求等によって冷房能力を大きくする必要性が発生し、コンプレッサ回転数を増加するなどの手段によって冷媒流量を増加させた場合、図7(b)に示すように、冷媒流量を増加させる前の運転時と比較して、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなり、サイクルの低圧側冷媒の圧力が低くなる方向に、冷凍サイクルの冷媒状態がバランスする。したがって、この場合においても、冷媒流量が多く、蓄冷器160、すなわち、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる場合では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吐出圧センサ197、吸入圧センサ198からの入力結果に基づいて、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)を算出し、冷媒圧力差ΔPtが所定しきい値ΔPt_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPtが所定しきい値ΔPt_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(第5実施形態)
図8に、第5実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図8では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0099】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6の車両用空調装置において、吸入圧センサ198を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒の圧力PHに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからPH_setに変更する。
【0100】
第4実施形態で説明したように、冷媒流量が多くなった場合、図7(a)、(b)に示すように、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があることから、サイクル高低圧力差ΔPtを検出する代わりに、本実施形態のように、高圧側冷媒の圧力PHを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
(第6実施形態)
図9に、第6実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図9では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0102】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6の車両用空調装置において、吐出圧センサ197を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、低圧側冷媒の圧力PLに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからPL_setに変更する。
【0103】
クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器吸込み温度および蒸発圧力が高いため、圧縮機吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。したがって、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期に、蓄冷熱交換器の圧力損失が大きくなる場合では、第4実施形態で説明した図7(a)に示すように、サイクル低圧が高くなる傾向がある。
【0104】
そこで、本実施形態のように、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吸入圧センサ198によって検出された低圧側冷媒の圧力値PLが所定しきい値PL_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、所定しきい値PL_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行うようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
(第7実施形態)
図10に、第7実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図10では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0106】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6に示す車両用空調装置において、吐出圧センサ197を、圧縮機110から吐出される高圧側冷媒の温度THを検出する吐出温度センサ211に変更するとともに、吸入圧センサ198を、圧縮機110に吸入される低圧側冷媒の温度TLを検出する吸入温度センサ212に変更したものである。
【0107】
なお、吐出温度センサ211は、圧縮機110の吐出後であって膨張弁140よりも冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出する箇所に設置され、吸入温度センサ212は、膨張弁140よりも冷媒流れ下流側であって圧縮機110の吸入前の冷媒温度を検出する箇所に設置される。
【0108】
そして、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒と低圧側冷媒の温度差ΔTt=(TH−TL)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔTt_setに変更する。
【0109】
第4実施形態で説明したように、冷媒流量が多く、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる運転条件では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。また、図7に記載の等温線は、図中右上側に進むに連れて、すなわち、圧力およびエンタルピが高いほど、温度が高いことを示している。 したがって、このような冷媒圧力と温度との関係から、冷媒流量が多くなる運転条件では、サイクル高低温度差ΔTtが大きくなる傾向がある。
【0110】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吐出温度センサ211、吸入温度センサ212からの入力結果に基づいて、高圧側冷媒と低圧側冷媒の温度差ΔTt=(TH−TL)を算出し、冷媒温度差ΔTtが所定しきい値ΔTt_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒温度差ΔTtが所定しきい値ΔTt_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
なお、温度センサの検出結果は、電気信号によってエアコンECU200に入力されることから、冷媒温度差ΔTtを算出する代わりに、その温度差と相関関係がある電流、電圧等の物理量を算出し、算出した物理量を、所定しきい値と比較することで、間接的に、冷媒温度差ΔTtと所定しきい値ΔTt_setとを比較するようにしても良い。
【0112】
(第8実施形態)
図11に、第8実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図11では、図10と同様の構成部に、図10と同一の符号を付している。
【0113】
本実施形態は、第7実施形態で説明した図10の車両用空調装置において、吸入温度センサ212を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒の温度THに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTH_setに変更する。
【0114】
冷媒流量が多くなった場合、第4実施形態で説明したように、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があり、第7実施形態で説明した冷媒圧力と温度との関係より、高圧側冷媒の温度THが高くなる傾向がある。
【0115】
したがって、冷媒温度差ΔTtを検出する代わりに、本実施形態のように、高圧側冷媒の温度THを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
(第9実施形態)
図12に、第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図12では、図10と同様の構成部に、図10と同一の符号を付している。
【0117】
本実施形態は、第7実施形態で説明した図10の車両用空調装置において、吐出温度センサ211を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、低圧側冷媒の温度TLに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTL_setに変更する。
【0118】
冷媒流量が多くなった場合、サイクルの低圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があり、第7実施形態で説明した冷媒圧力と温度との関係より、低圧側冷媒の温度TLが高くなる傾向がある。
【0119】
したがって、冷媒温度差ΔTtを検出する代わりに、本実施形態のように、低圧側冷媒の温度TLを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0120】
(第10実施形態)
図13に、第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図13では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0121】
本実施形態では、車両用空調装置は、圧力センサ、温度センサの代わりに、冷凍サイクル内を流れる冷媒流量Grを検出する流量センサ221を備えている。
【0122】
流量センサ221としては、例えば、冷凍サイクルにおける任意の二点間での冷媒の差圧が、冷凍サイクル内における冷媒の流量と正の相関関係があることを利用して、二点間での冷媒の差圧を差圧検出器により検出し、その検出結果から冷媒流量を検出する方式のものや、冷媒通路内に設置した発熱線の冷却度合いが冷媒流量に応じて変化し、それにより、発熱線の電気抵抗値が変化するという関係を利用して、冷媒流量を検出する方式のものを採用できる。
【0123】
また、本実施形態では、流量センサ221を、冷凍サイクルのうち、凝縮器120と膨張弁140との間に設けている。なお、流量センサ221の設置箇所は、冷凍サイクル内であれば、任意に、変更可能である。
【0124】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、冷媒流量Grに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからGr_setに変更する。
【0125】
本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、流量センサ221からの入力結果に基づいて、冷媒流量Grを算出し、冷媒流量Grが所定しきい値Gr_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒流量Grが所定しきい値Gr_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0126】
なお、本実施形態では、冷媒流量Grを所定しきい値と比較していたが、冷媒流量Grの代わりに、冷媒流量Grに相関関係がある物理量、例えば、差圧、電気抵抗値、電圧値、電流値等を、所定しきい値と比較するようにしても良い。
【0127】
(第11実施形態)
図14に、第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図14では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0128】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積が一定構造であって、常に一定の吐出容量で作動する固定容量式であり、ベルト機構111を介して、車両エンジン10の回転動力が伝達されることにより回転駆動され、電磁クラッチによって、車両エンジン10からの回転動力の伝達が断続されるようになっている。このため、圧縮機110の駆動時では、車両エンジン10の回転数によって、圧縮機110の吐出能力が調整される。
【0129】
そして、本実施形態では、エンジン回転数Neを検出する回転数センサ231から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。なお、図示しないエンジンECUを介して、回転数センサ231の検出結果がエアコンECU200に入力される構成としても良い。
【0130】
本実施形態では、圧縮機110の駆動時において、エンジン回転数の増加により、圧縮機110の回転数が増加し、圧縮機110の吐出能力が増大し、冷媒流量が多くなる。したがって、冷媒流量が多い運転条件時というのは、エンジン回転数が大きいときを意味する。
【0131】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、エンジン回転数Neに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからNe_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、回転数センサ231が検出したエンジン回転数Neが、所定しきい値Ne_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、エンジン回転数Neが所定しきい値Ne_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0132】
(第12実施形態)
図15に、第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図15では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0133】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積が一定構造であって、常に一定の吐出容量で作動する固定容量式であり、圧縮機110の回転数の増減によって、圧縮機の吐出能力が調整されるものである。圧縮機110の駆動方式は、第11実施形態と同様に、ベルト駆動方式である。なお、圧縮機110の駆動方式として、電動式を採用しても良い。
【0134】
そして、車両用空調装置は、圧縮機回転数Rcを検出する回転数センサ232を有しており、この回転数センサ232から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。回転数センサ232は、例えば、圧縮機110のハウジング内部に内蔵されており、圧縮機110内部の磁性体回転部分が回転することにより圧縮機回転数に応じた周波数のパルス状出力電圧を電磁コイルに発生するものである。
【0135】
本実施形態では、冷媒流量が多い運転条件時というのは、圧縮機110の吐出能力が大きいとき、すなわち、圧縮機110の回転数が大きいときである。
【0136】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、圧縮機回転数Rcに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからRc_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、回転数センサ232が検出した圧縮機回転数Rcが、所定しきい値Rc_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、圧縮機回転数Rcが所定しきい値Rc_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0137】
(第13実施形態)
図16に、第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図16では、図15と同様の構成部に、図15と同一の符号を付している。
【0138】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造であって、エアコンECU200から入力される制御信号によって、1回転あたりの吐出容量が変更される可変容量式である。圧縮機110の回転数および1回転あたりの吐出容積を調整することによって、この圧縮機110の吐出能力が調整される。圧縮機110の駆動方式は、第11実施形態と同様に、ベルト駆動方式である。なお、圧縮機110の駆動方式として、電動式を採用しても良い。
【0139】
そして、車両用空調装置は、第12実施形態と同様に、圧縮機回転数Rcを検出する回転数センサ232を有しており、この回転数センサ232から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。また、エアコンECU200は、空調機器の作動制御の1つとして、圧縮機110の1回転あたりの吐出容積を調整するために、圧縮機110に対して、吐出容積可変用信号を出力するようになっている。吐出容積可変用信号は、吐出容積に応じた大きさの電流、電圧値とされた電気信号であり、本実施形態では、圧縮機の回転数が同じ場合、電流値もしくは電圧値が大きいほど吐出容積が大きい関係となっている。また、エアコンECU200は、後述するバイパス開閉弁180の開閉作動制御のために、圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を記憶部に記憶するようになっている。
【0140】
エアコンECU200は、空調機器の作動制御の他に、以下に説明するバイパス開閉弁180の開閉作動制御を実行する。図17に、圧縮機110の回転数と圧縮機110の吐出容積可変用信号値との組み合わせマップを示し、図18に、バイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャートを示す。図17は、圧縮機110の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせとの関係を表すマップであり、エアコンECU200に予め記憶されている。なお、図17中の吐出容積可変用信号値は、吐出容積に応じた大きさの電流値もしくは電圧値である。
【0141】
本実施形態では、冷媒流量が多い運転条件時というのは、圧縮機110の吐出能力が大きいとき、すなわち、圧縮機110の回転数が所定値よりも大きく、かつ、圧縮機110の1回転あたりの吐出容積が所定値よりも大きいときである。
【0142】
そこで、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値Scを読み込み、読み込んだ吐出容積可変用信号値Scと回転数センサ232が検出した圧縮機回転数Rcとの組み合わせを、図17に示すマップに照らし合わせて、その組み合わせが図17に示すマップの所定範囲内に該当するか否かを判定する。
【0143】
その結果、エアコンECU200は、図18に示すように、圧縮機回転数Rcと吐出容積可変用信号値Scとの組み合わせが、マップの所定範囲内に該当する場合、バイパス開閉弁18を開き、マップの所定範囲外に該当する場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0144】
なお、本実施形態では、バイパス開閉弁180の開閉制御のために、エアコンECU200が圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を読み込みことで、吐出容積可変用信号値を検出していたが、エアコンECU200とは別に、エアコンECU200が圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を検出する信号検出器を、圧縮機110等に設けても良い。
【0145】
また、本実施形態では、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせに基づいて、エアコンECU200がバイパス開閉弁18の開閉を制御していたが、吐出容積可変用信号値に基づいて、エアコンECU200がバイパス開閉弁18の開閉を制御するようにしても良い。
【0146】
(第14実施形態)
図19に、第14実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図19では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0147】
本実施形態では、空調ケース151内に、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度Tair_inを検出する吸気温センサ241が設けられており、吸気温センサ241の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0148】
ここで、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度Tair_inは高く、蒸発器150での蒸発圧力も高いため、圧縮機110の冷媒吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。
【0149】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、吸気温度Tair_inに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTair_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吸気温センサ241が検出した吸気温度Tair_inが、所定しきい値Tair_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、吸気温度Tair_inが所定しきい値Tair_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0150】
(第15実施形態)
図20に、第15実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図20では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0151】
本実施形態では、蒸発器150を通過した直後の空気の温度Tair_outを検出する蒸発器吹出温度センサ242が空調ケース151内に設けられており、蒸発器吹出温度センサ242の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0152】
クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度は高く、蒸発器150での蒸発圧力も高いため、圧縮機110の冷媒吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。このとき、蒸発器150を通過した直後の空気の温度Tair_outも通常運転時よりも高くなる。
【0153】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、吹出温度Tair_outに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTair_out_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蒸発器吹出温度センサ242が検出した吸気温度Tair_outが、所定しきい値Tair_out_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、吸気温度Tair_outが所定しきい値Tair_out_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0154】
(第16実施形態)
図21に、第16実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図21では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0155】
本実施形態では、車両用空調装置は、車室外の空気温度Toutを検出する外気温センサ245を有しており、外気温センサ245の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0156】
そして、エアコンECU200が実行するパイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、外気温度Toutに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTout_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、外気温センサ245が検出した外気温度Toutが、所定しきい値Tout_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、外気温度Toutが所定しきい値Tout_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。
【0157】
これにより、外気温度が高く、冷房負荷が大きいことから冷媒流量が多くなる運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、2つの圧力センサ191、192を用いて、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1と出口側冷媒の圧力Ps2との圧力差ΔPs=(Ps1−Ps2)を検出していたが、差圧計を用いて、直接、蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0158】
同様に、第2実施形態においても、2つの圧力センサ193、194を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0159】
同様に、第3実施形態においても、2つの圧力センサ195、196を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、凝縮器120の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0160】
同様に、第4実施形態においても、2つの圧力センサ197、198を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、圧縮機110の吐出圧と吸入圧との差圧を検出しても良い。
【0161】
また、第1〜第4実施形態では、蓄冷器160、蒸発器150、凝縮器120等のそれぞれにおける入口側冷媒と出口側冷媒の圧力差を検出していたが、冷媒の圧力差を検出する箇所は、これらに限られず、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所であれば、他の箇所に変更しても良い。
【0162】
これは、冷凍サイクル内では、凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140、蒸発器150、冷媒配管等を冷媒が流れることで、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器161内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、冷凍サイクル内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなるからである。
【0163】
(2)第15実施形態では、蒸発器吹出温度センサ242を用いていたが、この代わりに、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するエアコングリル吹出温度センサ243もしくは車室内の空気温度を検出する内気温センサ244を用いて、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行うようにしても良い。
【0164】
これは、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気、蒸発器150を通過した直後の空気の他にも、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気や、車室内の空気の温度も、通常運転時よりも高くなるからである。
【0165】
(3)第16実施形態では、外気温センサ245を用いていたが、この代わりに、図21に示すように、車室内に注がれる日射量を検出する日射センサ246を用いて、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行うようにしても良い。
【0166】
これにより、日射量が多いために、車室内温度が高くなって、冷房負荷が大きい状態となる運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
【0167】
(4)上記した各実施形態では、バイパス開閉弁180として、二方弁を用いていたが、三方弁を用いても良い。
【0168】
この場合、蓄冷器流入側冷媒管171の冷媒流れ途中に設けられた分岐部173と、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられた分岐部174とに、三方弁を配置する。そして、エアコンECU200によって、バイパス経路170を閉塞したり、バイパス経路170を開放したりするように、三方弁が制御される。なお、この場合、蓄冷熱交換器161を通る冷媒通路は閉塞されない状態とする。
【0169】
(5)上記した各実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御を行って、バイパス経路170の状態を、閉塞と開放との間での切り替え制御を行っていたが、この代わりに、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する制御を行っても良い。
【0170】
すなわち、例えば、第1実施形態で説明した図1に示す車両用空調装置において、パイパス開閉弁180を、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する流量調整弁に変更する。そして、例えば、冷房運転および蓄冷運転モードでは、流量調整弁の開度を、バイパス経路170と蓄冷器160の両方に冷媒が流れる開度とし、放冷運転モードでは、流量調整弁を閉じる制御をエアコンECUに実行させる。
【0171】
さらに、冷房運転および蓄冷運転モード、すなわち、圧縮機の駆動時において、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192が検出した冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きいときに、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さいときでのバイパス経路170の冷媒流量よりも、増大させるように、流量調整弁をエアコンECU200が制御する。
【0172】
本実施形態においても、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合では、少なくとも蓄冷熱交換器161に冷媒を流すことで、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0173】
そして、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合では、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さいときでのバイパス経路170の冷媒流量よりも増大させることで、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を低減することができる。
【0174】
(6)上記した各実施形態では、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行っていたが、バイパス開閉弁として、外部からの電気信号無しで圧力によって自己制御される構造のものを採用することも可能である。
【0175】
具体的には、図1に示す車両用空調装置において、冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを省略し、バイパス開閉弁180として、ばね、受圧部などにより構成され、バイパス開閉弁180よりも冷媒流れ上流側の冷媒とバイパス開閉弁180よりも冷媒流れ下流側の冷媒との圧力差によって、弁が機械的に開閉するものを採用する。そして、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、その所定値よりも大きいときでは、その圧力差によって、バイパス開閉弁が開くように設定しておく。
【0176】
バイパス開閉弁180として、このような構造のものを採用することで、圧縮機110の駆動時において、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは、バイパス開閉弁180は閉じているので、冷媒は蓄冷器160に流れ、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機110の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材166への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0177】
そして、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、その所定値よりも大きいときでは、バイパス開閉弁180が圧力差によって機械的に開くので、バイパス経路170は開放され、冷媒を蓄冷器160に対してバイパスさせて流すことができ、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。
【0178】
(7)上記した各実施形態では、蓄冷器160として、蓄冷熱交換器161と蓄冷タンク162とが一体的に形成された構成のものを採用し、蓄冷熱交換器161として、シェルアンドチューブタイプの熱交換器を採用していたが、他の構成の蓄冷熱交換器および蓄冷器を採用しても良い。
【0179】
(8)上記した各実施形態では、エアコンECU200のバイパス開閉弁18の開閉制御において、各センサの検出結果が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス開閉弁18を開き、各センサの検出結果が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス開閉弁18を閉じるようにしていた。例えば、第1実施形態では、エアコンECU200は、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて算出した冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合に、バイパス経路170を開放し、所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合に、バイパス経路170を閉塞するように、バイパス開閉弁18を制御していた。
【0180】
これとは反対に、センサの検出結果が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス開閉弁18を開き、センサの検出結果が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス開閉弁18を閉じるように、エアコンECU200がバイパス開閉弁18を制御するようにしてもよい。
【0181】
例えば、第1実施形態において、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて冷媒圧力差ΔPsの逆数を算出した場合や、予め、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果が大小逆転した物理量である場合では、所定しきい値と、それと比較する物理量との大小関係は逆転する。したがって、このような場合では、センサの検出結果が所定しきい値よりも小さいときに、バイパス開閉弁18を開く制御となる。
【0182】
また、例えば、第13実施形態では、吐出容積可変用信号と電流値、電圧値等の電気信号との関係において、図17に示すように、電流値もしくは電圧値が大きいほど吐出容積が大きい関係となっていたが、これとは逆に、電流値もしくは電圧値が小さいほど吐出容積が大きい関係としてもよい。この場合、図17に示すマップの縦軸の大小関係が逆転するので、例えば、吐出容積可変用信号値が小さい場合に、バイパス開閉弁18を開く制御となる。
【0183】
なお、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する制御においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1中の蓄冷器の断面図である。
【図3】エアコンECU200によるバイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャート
【図4】本発明の第2実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図7(a)】車室内温度が外気温度に近く、高い場合における冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図である。
【図7(b)】図7(a)のときよりも車室内温度が低い場合における冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図である。
【図8】本発明の第5実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第7実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第8実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図12】本発明の第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図13】本発明の第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図15】本発明の第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図16】本発明の第13実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図17】本発明の第13実施形態における圧縮機110の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせとの関係を表すマップである。
【図18】本発明の第13実施形態におけるバイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャートである。
【図19】本発明の第14実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図20】本発明の第15実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図21】本発明の第16実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0185】
110…圧縮機、120…凝縮器、130…受液タンク、140…膨張弁、
150…蒸発器、160…蓄冷器、161…蓄冷熱交換器、162…蓄冷タンク、
166…蓄冷材、170…バイパス経路、180…バイパス開閉弁、
200…エアコンECU、191…蓄冷器入口圧力センサ、
192…蓄冷器出口圧力センサ、193…蒸発器入口圧力センサ、
194…蒸発器出口圧力センサ、195…凝縮器入口圧力センサ、
196…凝縮器出口圧力センサ、197…吐出圧センサ、198…吸入圧センサ、
211…吐出温度センサ、212…吸入温度センサ、221…流量センサ、
231…エンジン回転数センサ、232…圧縮機回転数センサ、
241…吸気温センサ、242…蒸発器吹出温度センサ、
243…エアコングリル吹出温度センサ、244…内気温センサ、
245…外気温センサ、246…日射センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、停車時等に圧縮機を作動させずに空調する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用空調装置として、蓄冷式の車両用空調装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
これは、圧縮機、放熱器、減圧器および蒸発器が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルのうち、圧縮機の冷媒吸入側と蒸発器の冷媒流出側との間、すなわち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷熱交換器を接続した構成のものである。この蓄冷熱交換器は、蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材との間で熱交換するものである。
【0004】
そして、この車両用空調装置は、圧縮機の運転時では、冷房・蓄冷運転モードとして、蒸発器で、空調ケース内に供給される空調空気を冷却すると同時に、蓄冷熱交換器で、蒸発器通過後の冷媒によって蓄冷材に蓄冷させる。一方、圧縮機の停止時では、放冷運転モードとして、蓄冷熱交換器で、蓄冷された蓄冷材から冷媒に対して放冷させて、冷媒の圧力を低圧に維持させることで、放熱器と蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、蒸発器での空調空気の冷却を継続可能としている。
【0005】
また、特許文献2に、特許文献1と同様に、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷熱交換器を接続した車両用空調装置が開示されているが、この空調装置では、圧縮機の停止時には、電動ポンプを利用して、冷媒を蒸発器と蓄冷器との間で循環させること構成となっている。
【0006】
なお、特許文献1の車両用空調装置は、上記の通り、圧縮機の停止時に、放熱器と蒸発器との間の冷媒の残圧を利用して、放熱器から蒸発器への冷媒流れを形成しており、特許文献2のように電動ポンプ等の冷媒循環手段を用いて冷媒を放熱器と蒸発器の間で循環させなくても、蒸発器での空調空気の冷却を継続可能とするものである。
【0007】
また、特許文献3に、特許文献1とは構成および運転方式が異なる蓄冷式の車両用空調装置が開示されている。これは、蓄冷運転モード時には冷媒の余剰冷力を蓄冷器に蓄冷し、放冷運転モード時に蓄冷器の冷力を用いて補助的に冷媒の凝縮を行うことで、冷凍サイクルの余剰冷力を、高熱負荷時の冷媒凝縮に有効利用することを目的としたものである。
【0008】
具体的には、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器で構成される冷凍サイクルのうち、凝縮器と蒸発器との間に蓄冷器を配置し、さらに、蓄冷器を迂回させて冷媒を流すための標準バイパス流路や、蒸発器を迂回させて冷媒を流すための蓄冷用バイパス流路や、これらを開閉する弁等を設けたものである。
【0009】
そして、特許文献3に記載の車両用空調装置では、運転モードを、冷房運転モードと、蓄冷運転モードと、放冷運転モードと、圧縮機停止モードとに分けており、バイパス流路を開閉する弁の開閉制御によって、各運転モードに応じた冷媒流れを形成している。すなわち、冷房運転モードでは、標準バイパス流路に冷媒を流すことで、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器の順に冷媒が流れる通常の冷凍サイクル運転を行い、蓄冷運転モードでは、蓄冷用バイパス流路に冷媒を流すことで、凝縮器を通過した冷媒を、蓄冷器に通過させた後、圧縮機に流入させる。放冷運転モードでは、凝縮器を通過した冷媒を、蓄冷器、蒸発器の順に通過させている。なお、この車両用空調装置は、放冷運転モードに、圧縮機を稼動させて、冷媒を強制循環させており、停車時等に圧縮機を作動させずに空調するものではない。
【0010】
また、特許文献4に、他の技術分野であるが、蓄冷器を備える蓄冷型冷蔵庫が開示されている。この蓄冷型冷蔵庫は、特許文献1と同様に、冷凍サイクルのうち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に、蓄冷器を接続しており、蒸発器から流出した冷媒を、蓄冷器を迂回させて、圧縮機の吸入側に冷媒を流すバイパス通路を備えている。
【0011】
ただし、特許文献4の蓄冷型冷蔵庫は、特許文献3と同様に、運転モードを、冷房運転モードと、蓄冷運転モードと、放冷運転モードとに分けており、バイパス流路を開閉する弁の開閉制御によって、各運転モードに応じた冷媒流れを形成している。すなわち、通常運転モードでは、バイパス通路に冷媒を流すことで、通常の冷凍サイクル運転と同様に、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器に冷媒を流し、蓄冷運転モードでは、バイパス通路を閉じることで、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器、蓄冷器、圧縮機の順に冷媒を流すようにしている。放冷運転モードでは、バイパス通路を閉じ、圧縮機の代わりに、冷媒循環駆動装置を利用して、蒸発器と蓄冷器との間で冷媒を循環させる冷媒サイクルを形成している。
【特許文献1】特開2007−1485号公報(第6−9頁、第1−3図)
【特許文献2】特開2003−285634号公報(第9−11頁、第7−10図)
【特許文献3】実開63−150813号公報(第12−15頁、第1、2図)
【特許文献4】特開平7−248172号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した特許文献1に記載の車両用空調装置は、冷凍サイクルのうち、蒸発器の冷媒流れ下流側に直列に蓄冷器が接続されており、蓄冷運転と同時に冷房運転する構成であるため、以下の説明の通り、蓄冷器での冷媒の圧力損失が大きい場合、車両用空調装置の冷房性能に悪影響を与えてしまう。
【0013】
蒸発器の冷媒流れ下流側と圧縮機の冷媒吸入側との間に蓄冷器を配設した構成では、蓄冷器の蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによって、冷媒の圧力損失が生じることとなる。この圧力損失の大きさは、通常運転時では冷房性能に影響が無い程度の大きさであるが、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での圧力損失が増加するため、蒸発器の蒸発温度が上昇し、蒸発器の吹出空気温度が上昇してしまい、冷却スピードが低下してしまう問題が発生する。
【0014】
なお、この問題は、蓄冷器が蒸発器の冷媒流れ下流側に直列接続されており、蓄冷運転と同時に冷房運転する構成である車両用空調装置に特有の問題であって、上記した特許文献3、4のように、蓄冷運転と冷房運転とを同時に行っていない車両用空調装置では生じない問題である。
【0015】
本発明は、上記点に鑑み、冷凍サイクルを構成する蒸発器の冷媒流れ下流側と圧縮機の冷媒吸入側との間に蓄冷熱交換器を直列に接続配置し、蓄冷運転と同時に冷房運転を行う蓄冷式の車両用空調装置において、冷媒流量が多い運転条件時に、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによって冷媒の圧力損失が増加して、車両用空調装置の冷房性能が低下するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を流れる冷媒の流量を調整する流量調整手段(180)と、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、前記圧縮機の駆動時に、検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、バイパス経路を流れる冷媒の流量を増大させる制御を流量調整手段に対して行う制御手段(200)とを備えることを第1の特徴としている。
【0017】
ここで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量は、物理量の他にその変化量も含む意味である。
【0018】
例えば、制御手段は、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでは、少なくとも蓄冷熱交換器に冷媒が流れるように、流量調整手段を制御するとともに、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きいときでは、バイパス経路を流れる冷媒の流量を、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでのバイパス経路の冷媒流量よりも増大させるように、流量調整手段を制御する。
【0019】
このように、検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも小さい場合、少なくとも蓄冷熱交換器に冷媒を流すことで、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0020】
そして、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合では、バイパス経路を流れる冷媒の流量を、所定しきい値よりも小さいときでのバイパス経路の冷媒流量よりも増大させることで、冷媒流量が多い運転条件時に蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を低減することができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0021】
また、本発明は、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、圧縮機の駆動時に、検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、バイパス経路を閉塞したり、バイパス経路を開放したりする制御をバイパス開閉弁に対して行う制御手段(200)とを備えることを第2の特徴としている。
【0022】
例えば、制御手段(200)は、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス経路を閉塞し、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス経路を開放するように、バイパス開閉弁を制御する。
【0023】
このように、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合では、バイパス経路を閉塞し、冷媒を蓄冷熱交換器に流すようにすることで、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0024】
そして、検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも大きい場合では、バイパス経路を開放し、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すようにすることで、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0025】
蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量の検出手段としては、例えば、以下のものが採用可能である。
【0026】
検出手段としては、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出する冷媒圧力差検出手段(191、192、193、194、195、196、197、198)を採用できる。
【0027】
冷凍サイクルでは、放熱器、蒸発器、冷媒配管等を冷媒が流れることで、冷媒の圧力損失が生じている。冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、冷凍サイクル内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。そこで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量として、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出し、この検出値が所定しきい値よりも大きい場合に、蓄冷熱交換器を迂回させて冷媒を流すようにすることができる。
【0028】
また、検出手段としては、蓄冷熱交換器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(191、192)、蒸発器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(193、194)、または、凝縮器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(195、196)を採用できる。
【0029】
また、冷媒圧力差検出手段としては、例えば、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の低圧側冷媒の圧力差を検出するセンサ(197、198)を採用できる。
【0030】
これは、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差が大きくなる傾向がある。そこで、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量として、例えば、圧縮機吐出後の高圧側冷媒と、圧縮機が吸入する低圧側冷媒の冷媒圧力差を検出し、この検出値が所定しきい値よりも大きい場合に、蓄冷熱交換器を迂回させて冷媒を流すようにすることができる。
【0031】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段(197、198)を採用でき、さらに、冷媒圧力検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出するセンサ(197)や減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の冷媒圧力を検出するセンサ(198)を採用しても良い。
【0032】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の温度差を検出する冷媒温度差検出手段を採用できる。さらに、冷媒温度差検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の低圧側冷媒の温度差を検出するセンサ(211、212)を採用しても良い。
【0033】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段(211、212)を採用できる。さらに、冷媒温度検出手段として、圧縮機吐出後であって減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出するセンサ(211)や、減圧器の冷媒流れ下流側であって圧縮機吸入前の冷媒温度を検出するセンサ(212)を採用しても良い。
【0034】
また、検出手段としては、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の流量を検出する冷媒流量検出手段(221)、空調ケース内で蒸発器(150)に吸い込まれる空気の温度を検出するセンサ(241)、空調ケース内で蒸発器(150)を通過した直後の空気の温度を検出するセンサ(242)、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するセンサ(243)、車室内の空気温度を検出するセンサ(244)車室外の空気温度を検出するセンサ(245)、車室内に注がれる日射量を検出するセンサ(246)、または、圧縮機の吐出能力を検出する検出手段(231)を採用できる。
【0035】
また、例えば、圧縮機(110)が、エンジン(10)の回転動力が伝達されることによって駆動し、エンジン回転数によって、吐出能力が調整される固定容量式である場合では、検出手段として、エンジン回転数検出手段(231)を採用できる。
【0036】
また、例えば、圧縮機が、1回転あたりの吐出容積が一定構造の固定容量式である場合、検出手段として、圧縮機の回転数検出手段(232)を採用できる。
【0037】
また、例えば、圧縮機が、1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造である可変容量式の圧縮機であって、圧縮機の回転数および1回転あたりの吐出容積を調整することによって、吐出能力が調整されるものである場合では、検出手段として、圧縮機の回転数を検出する回転数検出手段(232)と、圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させる吐出容積可変用信号を検出する吐出容積可変用信号検出手段とを採用できる。この場合、制御手段(200)が、圧縮機の駆動時では、回転数検出手段(232)が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせを、マップに照らし合わせ、その結果に基づいて前記バイパス開閉弁を制御して、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりするに変更する。例えば、マップに照らし合わせた結果、マップの所定範囲外の場合に、バイパス経路を閉塞し、マップの所定範囲内の場合に、バイパス経路を開放するように、制御手段がバイパス開閉弁を制御する構成とする。
【0038】
可変容量式コンプレッサの場合、コンプレッサ回転数の増加および1回転あたりの吐出容積の増加により冷媒流量が増加し、それによって、蓄冷熱交換器の圧力損失が増加する。
【0039】
そこで、このように、回転数検出手段が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせが、例えば、組み合わせマップの所定範囲外の場合では、バイパス経路を閉塞し、冷媒を蓄冷熱交換器に流すようにすることで、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0040】
そして、回転数検出手段が検出した回転数と、吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせが、例えば、組み合わせマップの所定範囲内の場合では、バイパス経路を開放し、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すようにすることで、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0041】
また、本発明では、蒸発器から流出された冷媒を、蓄冷熱交換器を迂回させて、圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)とを備え、バイパス開閉弁は、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、所定値よりも大きいときでは圧力差によって機械的に開く構造となっていることを第3の特徴としている。
【0042】
バイパス開閉弁として、このような構造のものを採用することで、圧縮機の駆動時において、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは、バイパス開閉弁は閉じているので、冷媒は蓄冷熱交換器に流れ、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0043】
そして、バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも大きいときでは、バイパス開閉弁が圧力差によって機械的に開くので、バイパス経路は開放され、冷媒を蓄冷熱交換器に対してバイパスさせて流すことができ、蓄冷熱交換器内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。これにより、例えば、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、蒸発器の蒸発温度および蒸発器の吹出空気温度の上昇を抑制できる。
【0044】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1実施形態)
第1実施形態は、本発明に係る車両用空調装置を、例えば、信号待ち等のように走行状態からアイドリングでの停車状態に移行した際にエンジンが停止されるいわゆるアイドルストップ車両に適用したものである。図1に、第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。
【0046】
図1に示すように、車両用空調装置は、圧縮機110、放熱器としての凝縮器120、受液タンク130、減圧器としての膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、この冷凍サイクルに付加された蓄冷器160とを備えている。そして、本実施形態の車両用空調装置は、特許文献1に記載の車両用空調装置と異なり、蓄冷器160を迂回させて冷媒を流すためのバイパス経路170と、このバイパス経路170を開閉するバイパス開閉弁180と、このバイパス開閉弁180の開閉を制御する制御手段としてのエアコンECU200とを備えている。
【0047】
圧縮機110は、図示しない車両のエンジンを駆動源として作動し、冷凍サイクル内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する流体機械である。凝縮器120は、圧縮機110の冷媒吐出側に設けられ、高温高圧に圧縮された冷媒を放熱させて、凝縮液化させる熱交換器である。受液タンク130は、凝縮器120で凝縮された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を流出させるレシーバである。なお、凝縮器120においては、冷媒の過冷却域まで冷却する方式(いわゆるサブクールコンデンサ)にあっては、凝縮器120内にモジュレータタンクとして一体的に構成される場合もあり、この場合には受液タンク130は省略しても良い。また、冷媒として、放熱させても、凝縮しない冷媒を採用した場合では、凝縮器120は、冷媒を放熱させる放熱器として用いられる。
【0048】
膨張弁140は、受液タンク130で分離された液相冷媒を等エンタルピ的に減圧膨脹させるもので、本実施形態では、弁部141と、蒸発器150の冷媒流出側と蓄冷器160の冷媒入口側との間に設けられた感温部142とを有する温度式膨張弁である。膨張弁140は、感温部142で検出される冷媒温度に応じて弁部141の絞り開度が制御されて、蒸発器150から流出される冷媒の過熱度を所定値、例えば5〜10℃とするようになっている。
【0049】
蒸発器150は、膨張弁140にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する熱交換器であり、空調ケース151内に配設されて、この空調ケース151内に供給される空調空気から吸熱することで、空調空気を冷却する。なお、空調ケース151内には、蒸発器150の他に、図示しない空調空気送風用の送風機、空調空気加熱用の熱交換器等が配設されており、これらによって室内空調ユニットが構成される。この室内空調ユニットは車室内のインストルメントパネル内に配設される。
【0050】
蓄冷器160は、圧縮機110の冷媒吸入側と蒸発器150の冷媒流出側との間に、冷媒管171、172を介して、蒸発器150に対して直列の関係となるように、接続されている。
【0051】
本実施形態の蓄冷器160は、蓄冷熱交換器161と、蓄冷タンク162とを備えている。蓄冷熱交換器161は、蒸発器150から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材との間で熱交換するものである。蓄冷タンク162は、蓄冷熱交換器161を内部に収容するとともに、蓄冷熱交換器160で蓄冷材が放冷する際に凝縮液化される冷媒を溜めるものである。
【0052】
ここで、図2に、蓄冷器160の断面図を示す。本実施形態の蓄冷器160は、図2に示すように、蓄冷熱交換器161と蓄冷タンク162とが一体的に形成された構成である。
【0053】
そして、蓄冷熱交換器160は、例えば、図2に示すように、シェルアンドチューブタイプの熱交換器であり、複数積層された円形状のプレートフィン163の積層方向に複数の冷媒チューブ164が貫通され、この冷媒チューブ164およびプレートフィン163が熱的に接合されてシェル165内に配設されている。各冷媒チューブ164の両長手方向端部は、シェル165の外部に開口している。シェル165内に蓄冷材166が封入されており、蓄冷材166が冷媒チューブ164およびプレートフィン163の表面に接触するようにしている。蓄冷材としてはパラフィンや氷等が用いられる。
【0054】
蓄冷タンク162は、例えば、図2に示すように、その軸線が天地方向を向き、両端部側が閉塞されて、下側が絞られた円筒状のタンクである。蓄冷タンク162の内部には、冷媒チューブ164の長手方向が天地方向となるようにして蓄冷熱交換器161が配設されており、その上側に小空間162aが、その下側に大空間162bが形成されており、蓄冷熱交換器161の冷媒チューブ164の上側端部は小空間162aに連通し、冷媒チューブ164の下側端部は大空間162bに連通している。この大空間162bを構成する部分が、後述するように蓄冷熱交換器160で蓄冷材が放冷する際に凝縮液化される冷媒を溜めるためのタンク貯留部となる。
【0055】
そして、蒸発器150の冷媒流出側と蓄冷器160の冷媒流入側とを接続する蓄冷器流入側冷媒管171は、蓄冷タンク162内の小空間162aと連通した状態で、蓄冷タンク162の上端部に接続されている。
【0056】
一方、圧縮機110の冷媒吸入側と蓄冷器160の冷媒流出側とを接続する蓄冷器流出側冷媒管172は、蓄冷タンク162の上端部から蓄冷熱交換器161を貫通して、蓄冷タンク162の大空間162bの下端側に、開口端部172aが位置するように、蓄冷タンク162に接続されている。また、蓄冷器流出側冷媒管172は、蓄冷タンク162の小空間162aに対応する部位に、小空間162aに連通する開口部172bが設けられている。蓄冷器流出側冷媒管172の開口端部172aは細く形成され、その開口面積は開口部172bの開口面積よりも小さく形成されている。
【0057】
なお、蓄冷器160は、車両エンジンルーム内に配設されるが、車室内に許容搭載スペースがあれば、車室内に配設されるのが好ましい。
【0058】
また、バイパス経路170は、蒸発器150から流出した冷媒を、蓄冷器160を迂回させて、圧縮機110の吸入側に流すためのものである。具体的には、バイパス経路170は、冷媒管によって構成されており、図1に示すように、蓄冷器流入側冷媒管171の冷媒流れ途中に設けられた分岐部173と、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられた分岐部174とに接続されている。
【0059】
バイパス開閉弁180は、例えば、バイパス経路170の冷媒流れ途中に設けられた二方弁であり、バイパス開閉弁180としては、例えば、電磁弁が用いられる。バイパス開閉弁180は、エアコンECU200から開閉制御信号が入力されることで、開閉作動が制御される。
【0060】
また、本実施形態では、車両用空調装置は、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1を測定する蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器160の出口側冷媒の圧力Ps2を測定する蓄冷器出口圧力センサ192とを備えており、これらによって、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1と出口側冷媒の圧力Ps2との差ΔPs=(Ps1−Ps2)が検出できるようになっている。この冷媒圧力差ΔPsが、蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に相当する。
【0061】
蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192は、それぞれ、蓄冷器流入側冷媒管171、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられており、検出結果を電気信号としてエアコンECU200に向けて出力する。なお、圧力センサ191、192としては、例えば、冷媒圧力の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0062】
エアコンECU200は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成され、予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行って、空調機器の作動を制御するものである。なお、図示しないが、エアコンECU200の入力側には、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192の他に、車室内温度Trを検出する室内温度センサ等のセンサ群や空調操作パネルが接続されており、エアコンECU200の出力側には、バイパス開閉弁180の他に、圧縮機110の電磁クラッチ、冷空調空気送風用の送風機等の空調機器が接続されている。
【0063】
次に、上記した構成の車両用空調装置の基本作動について説明する。
【0064】
(1)冷房運転および蓄冷運転モード
車両走行時に、エンジンにより圧縮機110が駆動され、冷凍サイクルが作動する。冷凍サイクルの作動開始時では、バイパス開閉弁180は閉じられており、また、圧縮機の駆動時では、基本的に、バイパス開閉弁180は閉じられ、バイパス経路170は閉塞される。
【0065】
圧縮機110で圧縮吐出された冷媒は、凝縮器120で凝縮液化され、受液タンク130を経て膨張弁140で減圧され、蒸発器150で、空調ケース151内に供給される空調空気から吸熱して蒸発し、空調空気を冷却する。
【0066】
そして、蒸発器150から流出された冷媒は、蓄冷器流入側冷媒管171を通って、蓄冷器160に流入し、蓄冷熱交換器161で、蓄冷材166を冷却する。蓄冷材166は冷媒からの吸熱により蓄冷される。蒸発器150、蓄冷熱交換器161でそれぞれ吸熱した冷媒は、過熱ガス冷媒となって、蓄冷器流出側冷媒管172の開口部172bあるいは開口端部172aから吸引されて圧縮機110に戻る(図2参照)。
【0067】
なお、冷凍サイクルとしては、車室内熱負荷に加えて、この蓄冷材166の冷却熱負荷がトータルの冷房負荷となり、蓄冷材166への蓄冷が完了すると、蓄冷熱交換器161での冷媒と蓄冷材166との間の熱移動は停止される。
【0068】
(2)放冷運転モード
車両が停車してエンジンが停止されると、圧縮機110も停止される。このとき、冷凍サイクル内では高圧側となる凝縮器120、受液タンク130から、低圧側となる蒸発器150および蓄冷器160に、その残圧により膨張弁140を通じて冷媒が流入する。
【0069】
蒸発器150に流入した冷媒は、空調空気との熱交換により、空調空気を冷却して過熱ガス冷媒となるが、蓄冷器160に流入し、蓄冷熱交換器161で、蓄冷材166の蓄冷熱により冷却されて凝縮液化し、重力により蓄冷タンク162内の下部の大空間162bに液冷媒として溜められる(図2参照)。
【0070】
つまり、蒸発器150からの過熱ガス冷媒は、蓄冷熱交換器161で凝縮されて体積を縮小させて、圧力を低圧に維持するので、圧縮機110が停止されても蓄冷材166の蓄冷熱が保持されている間は、凝縮器120と蒸発器150との間の残圧により、冷媒は継続して蒸発器150に流入可能となり、蒸発器150による空調空気の冷却が継続可能となる。
【0071】
次に、本実施形態の主な特徴部分について説明する。
【0072】
本実施形態では、上記した冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、エアコンECU200が、以下のように、車両用空調装置の運転条件に応じて、バイパス開閉弁180の開閉を制御する。図3に、エアコンECU200が実行するバイパス開閉弁180の開閉制御のタイムチャートを示す。
【0073】
エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPs=(Ps1−Ps2)を算出する。
【0074】
そして、図3に示すように、冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合、バイパス経路170を開放するように、バイパス開閉弁18に対して、エアコンECU200が制御信号を出力する。これにより、バイパス開閉弁18が開いた状態となる。一方、冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合、バイパス経路170を閉塞するように、バイパス開閉弁18に対して、エアコンECU200が制御することで、バイパス開閉弁18は閉じた状態となる。
【0075】
ここで、所定しきい値ΔPs_setは、冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、バイパス開閉弁180を閉じた状態のときに、蓄冷器160での冷媒の圧力損失によって、車両用空調装置の冷房性能に影響する値を、予め、調査しておき、その調査結果に基づいて、所定しきい値ΔPs_setを設定し、エアコンECU200に記憶しておく。
【0076】
したがって、本実施形態では、冷房運転および蓄冷運転モードにおいて、車両用空調装置の冷房負荷が特に大きくなく、冷媒流量も特に多くないような通常運転時では、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPsは、所定しきい値ΔPs_setよりも小さいので、エアコンECU200によって、バイパス開閉弁180は閉じた状態とされる。これにより、蒸発器150から流出した冷媒は、蓄冷器160に流れることとなるので、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材166への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0077】
その一方、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多くなるような運転条件時では、蓄冷器160の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きくなるので、エアコンECU200によって、バイパス開閉弁180は開いた状態とされる。これにより、バイパス経路170が開放されるので、蒸発器150から流出した冷媒は、蓄冷器160を迂回して、圧縮機110の冷媒吸入側に流れるので、蓄冷器160内、特に、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失の増大を避けることができる。この結果、クールダウン時などのように冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
【0078】
なお、図3に示されるように、本実施形態では、冷媒圧力差ΔPsを算出して、直接的に、冷媒圧力差ΔPsを所定しきい値ΔPs_setと比較していたが、圧力センサの検出結果は、電気信号によってエアコンECU200に入力されることから、冷媒圧力差ΔPsを算出する代わりに、その圧力差と相関関係がある電流、電圧等の物理量を算出し、算出した物理量を、ΔPs_setと相関関係がある所定しきい値と比較することで、間接的に、冷媒圧力差ΔPsと所定しきい値ΔPs_setとを比較するようにしても良い。
【0079】
また、本実施形態では、圧力センサ191、192を、それぞれ、蓄冷器流入側冷媒管171、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けていたが、これらの設置箇所は、蓄冷熱交換器161の冷媒入口側と冷媒出口側の圧力を測定できる範囲で、任意に、変更可能である。例えば、圧力センサ191、192を、それぞれ、蓄冷熱交換器161の冷媒入口と冷媒出口に設けても良い。
【0080】
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図4では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0081】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを、蒸発器150の冷媒入口側の圧力Pe1を検出する蒸発器入口圧力センサ193と、蒸発器150の冷媒出口側の圧力Pe2を検出する蒸発器出口圧力センサ194とに変更したものであり、これらによって、蒸発器150の入口側冷媒の圧力Pe1と出口側冷媒の圧力Pe2との差ΔPe=(Pe1−Pe2)を検出できるようになっている。
【0082】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPe=(Pe1−Pe2)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPe_setに変更する。
【0083】
ここで、冷媒圧力差ΔPeは、蓄冷器160内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量である。すなわち、冷凍サイクルでは、蒸発器150を冷媒が流れることでも、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、蒸発器150内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。したがって、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒との冷媒圧力差ΔPeの大きさから、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失の変化を推測することができる。
【0084】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蒸発器入口圧力センサ193と、蒸発器出口圧力センサ194からの入力結果に基づいて、蒸発器150の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPe=(Pe1−Pe2)を算出する。 そして、エアコンECU200は、冷媒圧力差ΔPeが所定しきい値ΔPe_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPeが所定しきい値ΔPe_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
(第3実施形態)
図5に、第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図5では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0086】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを、凝縮器120の冷媒入口側の圧力Pc1を検出する凝縮器入口圧力センサ195と、凝縮器120の冷媒出口側の圧力Pc2を検出する凝縮器出口圧力センサ196とに変更したものであり、これらによって、凝縮器120の入口側冷媒の圧力Pc1と出口側冷媒の圧力Pc2との差ΔPc=(Pc1−Pc2)を検出できるようになっている。
【0087】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、凝縮器120の入口側冷媒の圧力Pc1と出口側冷媒の圧力Pc2との圧力差ΔPc=(Pc1−Pc2)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPc_setに変更する。
【0088】
ここで、冷媒圧力差ΔPcは、蓄冷器160内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量である。すなわち、冷凍サイクルでは、凝縮器120内を冷媒が流れることでも、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、凝縮器120内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなる。したがって、凝縮器120の入口側冷媒と出口側冷媒との冷媒圧力差ΔPcの大きさから、蓄冷器160内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失の変化を推測することができる。
【0089】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、凝縮器入口圧力センサ195と、凝縮器出口圧力センサ196からの入力結果に基づいて、凝縮器120の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差ΔPc=(Pc1−Pc2)を算出する。 そして、エアコンECU200は、冷媒圧力差ΔPcが所定しきい値ΔPc_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPcが所定しきい値ΔPc_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
(第4実施形態)
図6に、第4実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図6では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0091】
本実施形態は、図1に示す車両用空調装置に対して、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192を、圧縮機110から吐出される高圧側冷媒の圧力PHを検出する吐出圧センサ197、圧縮機110に吸入される低圧側冷媒の圧力PLを検出する吸入圧センサ198に変更したものであり、これらによって、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)を検出できるようになっている。
【0092】
吐出圧センサ197は、圧縮機110の吐出後であって膨張弁140よりも冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出する箇所に設置され、吸入圧センサ198は、膨張弁140よりも冷媒流れ下流側であって圧縮機110の吸入前の冷媒圧力を検出する箇所に設置される。
【0093】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔPt_setに変更する。
【0094】
ここで、図7(a)、(b)に、冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図を示す。図7(a)、(b)は、ともに、圧縮機110、凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140および蒸発器150が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルにおいて、通常運転時の冷媒の状態を破線で示しており、通常運転時よりも冷媒流量が多い場合での冷媒の状態を実線で示している。図7(a)は、車室内温度が外気温度に近く、高い場合であり、図7(b)は、図7(a)のときよりも車室内温度が低い場合の冷媒状態を示している。
【0095】
クールダウンなどのように、車室内の温度が外気温度に近く、高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器吸込み温度および蒸発圧力が高いため、圧縮機吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。そして、冷媒流量が多くなった場合では、凝縮器120で冷媒を凝縮させる凝縮能力が多く必要となるため、凝縮器120での凝縮温度と凝縮器120での吸込空気温度との差は大きくなるので、図7(a)に示すように、通常運転時と比較して、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなるとともに、低圧側冷媒の圧力が高くなる方向に、冷凍サイクルの冷媒状態がバランスする。なお、このときの高圧側冷媒の圧力変化量は、低圧側冷媒の圧力変化量よりも大きい。したがって、冷媒流量が多く、蓄冷器160、すなわち、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる場合では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。
【0096】
また、例えば、図7(a)に示す運転状態から時間が経過して、車室内温度が外気温度に対し低下した場合において、外気温度、日射等の条件が変化したり、運転者の要求等によって冷房能力を大きくする必要性が発生し、コンプレッサ回転数を増加するなどの手段によって冷媒流量を増加させた場合、図7(b)に示すように、冷媒流量を増加させる前の運転時と比較して、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなり、サイクルの低圧側冷媒の圧力が低くなる方向に、冷凍サイクルの冷媒状態がバランスする。したがって、この場合においても、冷媒流量が多く、蓄冷器160、すなわち、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる場合では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吐出圧センサ197、吸入圧センサ198からの入力結果に基づいて、高圧側冷媒と低圧側冷媒の圧力差ΔPt=(PH−PL)を算出し、冷媒圧力差ΔPtが所定しきい値ΔPt_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒圧力差ΔPtが所定しきい値ΔPt_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(第5実施形態)
図8に、第5実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図8では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0099】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6の車両用空調装置において、吸入圧センサ198を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒の圧力PHに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからPH_setに変更する。
【0100】
第4実施形態で説明したように、冷媒流量が多くなった場合、図7(a)、(b)に示すように、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があることから、サイクル高低圧力差ΔPtを検出する代わりに、本実施形態のように、高圧側冷媒の圧力PHを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
(第6実施形態)
図9に、第6実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図9では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0102】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6の車両用空調装置において、吐出圧センサ197を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、低圧側冷媒の圧力PLに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからPL_setに変更する。
【0103】
クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器吸込み温度および蒸発圧力が高いため、圧縮機吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。したがって、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期に、蓄冷熱交換器の圧力損失が大きくなる場合では、第4実施形態で説明した図7(a)に示すように、サイクル低圧が高くなる傾向がある。
【0104】
そこで、本実施形態のように、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吸入圧センサ198によって検出された低圧側冷媒の圧力値PLが所定しきい値PL_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、所定しきい値PL_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行うようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
(第7実施形態)
図10に、第7実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図10では、図6と同様の構成部に、図6と同一の符号を付している。
【0106】
本実施形態は、第4実施形態で説明した図6に示す車両用空調装置において、吐出圧センサ197を、圧縮機110から吐出される高圧側冷媒の温度THを検出する吐出温度センサ211に変更するとともに、吸入圧センサ198を、圧縮機110に吸入される低圧側冷媒の温度TLを検出する吸入温度センサ212に変更したものである。
【0107】
なお、吐出温度センサ211は、圧縮機110の吐出後であって膨張弁140よりも冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出する箇所に設置され、吸入温度センサ212は、膨張弁140よりも冷媒流れ下流側であって圧縮機110の吸入前の冷媒温度を検出する箇所に設置される。
【0108】
そして、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒と低圧側冷媒の温度差ΔTt=(TH−TL)に変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからΔTt_setに変更する。
【0109】
第4実施形態で説明したように、冷媒流量が多く、蓄冷熱交換器161の圧力損失が大きくなる運転条件では、サイクル高低圧力差ΔPtが大きくなる傾向がある。また、図7に記載の等温線は、図中右上側に進むに連れて、すなわち、圧力およびエンタルピが高いほど、温度が高いことを示している。 したがって、このような冷媒圧力と温度との関係から、冷媒流量が多くなる運転条件では、サイクル高低温度差ΔTtが大きくなる傾向がある。
【0110】
そこで、本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吐出温度センサ211、吸入温度センサ212からの入力結果に基づいて、高圧側冷媒と低圧側冷媒の温度差ΔTt=(TH−TL)を算出し、冷媒温度差ΔTtが所定しきい値ΔTt_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒温度差ΔTtが所定しきい値ΔTt_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
なお、温度センサの検出結果は、電気信号によってエアコンECU200に入力されることから、冷媒温度差ΔTtを算出する代わりに、その温度差と相関関係がある電流、電圧等の物理量を算出し、算出した物理量を、所定しきい値と比較することで、間接的に、冷媒温度差ΔTtと所定しきい値ΔTt_setとを比較するようにしても良い。
【0112】
(第8実施形態)
図11に、第8実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図11では、図10と同様の構成部に、図10と同一の符号を付している。
【0113】
本実施形態は、第7実施形態で説明した図10の車両用空調装置において、吸入温度センサ212を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、高圧側冷媒の温度THに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTH_setに変更する。
【0114】
冷媒流量が多くなった場合、第4実施形態で説明したように、サイクルの高圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があり、第7実施形態で説明した冷媒圧力と温度との関係より、高圧側冷媒の温度THが高くなる傾向がある。
【0115】
したがって、冷媒温度差ΔTtを検出する代わりに、本実施形態のように、高圧側冷媒の温度THを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0116】
(第9実施形態)
図12に、第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図12では、図10と同様の構成部に、図10と同一の符号を付している。
【0117】
本実施形態は、第7実施形態で説明した図10の車両用空調装置において、吐出温度センサ211を省略したものである。本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、低圧側冷媒の温度TLに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTL_setに変更する。
【0118】
冷媒流量が多くなった場合、サイクルの低圧側冷媒の圧力が高くなる傾向があり、第7実施形態で説明した冷媒圧力と温度との関係より、低圧側冷媒の温度TLが高くなる傾向がある。
【0119】
したがって、冷媒温度差ΔTtを検出する代わりに、本実施形態のように、低圧側冷媒の温度TLを検出するようにしても良い。このようにしても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0120】
(第10実施形態)
図13に、第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図13では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0121】
本実施形態では、車両用空調装置は、圧力センサ、温度センサの代わりに、冷凍サイクル内を流れる冷媒流量Grを検出する流量センサ221を備えている。
【0122】
流量センサ221としては、例えば、冷凍サイクルにおける任意の二点間での冷媒の差圧が、冷凍サイクル内における冷媒の流量と正の相関関係があることを利用して、二点間での冷媒の差圧を差圧検出器により検出し、その検出結果から冷媒流量を検出する方式のものや、冷媒通路内に設置した発熱線の冷却度合いが冷媒流量に応じて変化し、それにより、発熱線の電気抵抗値が変化するという関係を利用して、冷媒流量を検出する方式のものを採用できる。
【0123】
また、本実施形態では、流量センサ221を、冷凍サイクルのうち、凝縮器120と膨張弁140との間に設けている。なお、流量センサ221の設置箇所は、冷凍サイクル内であれば、任意に、変更可能である。
【0124】
また、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、冷媒流量Grに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからGr_setに変更する。
【0125】
本実施形態では、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、流量センサ221からの入力結果に基づいて、冷媒流量Grを算出し、冷媒流量Grが所定しきい値Gr_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、冷媒流量Grが所定しきい値Gr_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0126】
なお、本実施形態では、冷媒流量Grを所定しきい値と比較していたが、冷媒流量Grの代わりに、冷媒流量Grに相関関係がある物理量、例えば、差圧、電気抵抗値、電圧値、電流値等を、所定しきい値と比較するようにしても良い。
【0127】
(第11実施形態)
図14に、第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図14では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0128】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積が一定構造であって、常に一定の吐出容量で作動する固定容量式であり、ベルト機構111を介して、車両エンジン10の回転動力が伝達されることにより回転駆動され、電磁クラッチによって、車両エンジン10からの回転動力の伝達が断続されるようになっている。このため、圧縮機110の駆動時では、車両エンジン10の回転数によって、圧縮機110の吐出能力が調整される。
【0129】
そして、本実施形態では、エンジン回転数Neを検出する回転数センサ231から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。なお、図示しないエンジンECUを介して、回転数センサ231の検出結果がエアコンECU200に入力される構成としても良い。
【0130】
本実施形態では、圧縮機110の駆動時において、エンジン回転数の増加により、圧縮機110の回転数が増加し、圧縮機110の吐出能力が増大し、冷媒流量が多くなる。したがって、冷媒流量が多い運転条件時というのは、エンジン回転数が大きいときを意味する。
【0131】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、エンジン回転数Neに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからNe_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、回転数センサ231が検出したエンジン回転数Neが、所定しきい値Ne_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、エンジン回転数Neが所定しきい値Ne_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0132】
(第12実施形態)
図15に、第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図15では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0133】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積が一定構造であって、常に一定の吐出容量で作動する固定容量式であり、圧縮機110の回転数の増減によって、圧縮機の吐出能力が調整されるものである。圧縮機110の駆動方式は、第11実施形態と同様に、ベルト駆動方式である。なお、圧縮機110の駆動方式として、電動式を採用しても良い。
【0134】
そして、車両用空調装置は、圧縮機回転数Rcを検出する回転数センサ232を有しており、この回転数センサ232から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。回転数センサ232は、例えば、圧縮機110のハウジング内部に内蔵されており、圧縮機110内部の磁性体回転部分が回転することにより圧縮機回転数に応じた周波数のパルス状出力電圧を電磁コイルに発生するものである。
【0135】
本実施形態では、冷媒流量が多い運転条件時というのは、圧縮機110の吐出能力が大きいとき、すなわち、圧縮機110の回転数が大きいときである。
【0136】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、圧縮機回転数Rcに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからRc_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、回転数センサ232が検出した圧縮機回転数Rcが、所定しきい値Rc_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、圧縮機回転数Rcが所定しきい値Rc_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0137】
(第13実施形態)
図16に、第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図16では、図15と同様の構成部に、図15と同一の符号を付している。
【0138】
本実施形態では、圧縮機110は、圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造であって、エアコンECU200から入力される制御信号によって、1回転あたりの吐出容量が変更される可変容量式である。圧縮機110の回転数および1回転あたりの吐出容積を調整することによって、この圧縮機110の吐出能力が調整される。圧縮機110の駆動方式は、第11実施形態と同様に、ベルト駆動方式である。なお、圧縮機110の駆動方式として、電動式を採用しても良い。
【0139】
そして、車両用空調装置は、第12実施形態と同様に、圧縮機回転数Rcを検出する回転数センサ232を有しており、この回転数センサ232から、検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。また、エアコンECU200は、空調機器の作動制御の1つとして、圧縮機110の1回転あたりの吐出容積を調整するために、圧縮機110に対して、吐出容積可変用信号を出力するようになっている。吐出容積可変用信号は、吐出容積に応じた大きさの電流、電圧値とされた電気信号であり、本実施形態では、圧縮機の回転数が同じ場合、電流値もしくは電圧値が大きいほど吐出容積が大きい関係となっている。また、エアコンECU200は、後述するバイパス開閉弁180の開閉作動制御のために、圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を記憶部に記憶するようになっている。
【0140】
エアコンECU200は、空調機器の作動制御の他に、以下に説明するバイパス開閉弁180の開閉作動制御を実行する。図17に、圧縮機110の回転数と圧縮機110の吐出容積可変用信号値との組み合わせマップを示し、図18に、バイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャートを示す。図17は、圧縮機110の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせとの関係を表すマップであり、エアコンECU200に予め記憶されている。なお、図17中の吐出容積可変用信号値は、吐出容積に応じた大きさの電流値もしくは電圧値である。
【0141】
本実施形態では、冷媒流量が多い運転条件時というのは、圧縮機110の吐出能力が大きいとき、すなわち、圧縮機110の回転数が所定値よりも大きく、かつ、圧縮機110の1回転あたりの吐出容積が所定値よりも大きいときである。
【0142】
そこで、エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値Scを読み込み、読み込んだ吐出容積可変用信号値Scと回転数センサ232が検出した圧縮機回転数Rcとの組み合わせを、図17に示すマップに照らし合わせて、その組み合わせが図17に示すマップの所定範囲内に該当するか否かを判定する。
【0143】
その結果、エアコンECU200は、図18に示すように、圧縮機回転数Rcと吐出容積可変用信号値Scとの組み合わせが、マップの所定範囲内に該当する場合、バイパス開閉弁18を開き、マップの所定範囲外に該当する場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0144】
なお、本実施形態では、バイパス開閉弁180の開閉制御のために、エアコンECU200が圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を読み込みことで、吐出容積可変用信号値を検出していたが、エアコンECU200とは別に、エアコンECU200が圧縮機110の作動制御の際に出力した吐出容積可変用信号値を検出する信号検出器を、圧縮機110等に設けても良い。
【0145】
また、本実施形態では、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせに基づいて、エアコンECU200がバイパス開閉弁18の開閉を制御していたが、吐出容積可変用信号値に基づいて、エアコンECU200がバイパス開閉弁18の開閉を制御するようにしても良い。
【0146】
(第14実施形態)
図19に、第14実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図19では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0147】
本実施形態では、空調ケース151内に、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度Tair_inを検出する吸気温センサ241が設けられており、吸気温センサ241の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0148】
ここで、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度Tair_inは高く、蒸発器150での蒸発圧力も高いため、圧縮機110の冷媒吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。
【0149】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、吸気温度Tair_inに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTair_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、吸気温センサ241が検出した吸気温度Tair_inが、所定しきい値Tair_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、吸気温度Tair_inが所定しきい値Tair_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0150】
(第15実施形態)
図20に、第15実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図20では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0151】
本実施形態では、蒸発器150を通過した直後の空気の温度Tair_outを検出する蒸発器吹出温度センサ242が空調ケース151内に設けられており、蒸発器吹出温度センサ242の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0152】
クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気の温度は高く、蒸発器150での蒸発圧力も高いため、圧縮機110の冷媒吸込み密度が大きくなり、冷媒流量が多くなる。このとき、蒸発器150を通過した直後の空気の温度Tair_outも通常運転時よりも高くなる。
【0153】
そこで、本実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、吹出温度Tair_outに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTair_out_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、蒸発器吹出温度センサ242が検出した吸気温度Tair_outが、所定しきい値Tair_out_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、吸気温度Tair_outが所定しきい値Tair_out_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。これにより、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0154】
(第16実施形態)
図21に、第16実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。図21では、図1と同様の構成部に、図1と同一の符号を付している。
【0155】
本実施形態では、車両用空調装置は、車室外の空気温度Toutを検出する外気温センサ245を有しており、外気温センサ245の検出結果がエアコンECU200に入力されるようになっている。センサとしては、例えば、空気温度の変化により電気抵抗値が連続的に変化し、それに基づいて電圧を連続的に変化させた電圧信号を出力するものが採用可能である。
【0156】
そして、エアコンECU200が実行するパイパス開閉弁180の開閉制御において、図3中の蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒との圧力差ΔPsを、外気温度Toutに変更し、所定しきい値を、ΔPs_setからTout_setに変更する。エアコンECU200は、圧縮機110の駆動時に、外気温センサ245が検出した外気温度Toutが、所定しきい値Tout_setよりも大きい場合、バイパス開閉弁18を開き、外気温度Toutが所定しきい値Tout_setよりも小さい場合、バイパス開閉弁18を閉じる制御を行う。
【0157】
これにより、外気温度が高く、冷房負荷が大きいことから冷媒流量が多くなる運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、2つの圧力センサ191、192を用いて、蓄冷器160の入口側冷媒の圧力Ps1と出口側冷媒の圧力Ps2との圧力差ΔPs=(Ps1−Ps2)を検出していたが、差圧計を用いて、直接、蓄冷器160の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0158】
同様に、第2実施形態においても、2つの圧力センサ193、194を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、蒸発器150の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0159】
同様に、第3実施形態においても、2つの圧力センサ195、196を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、凝縮器120の入口側冷媒と出口側冷媒の差圧を検出しても良い。
【0160】
同様に、第4実施形態においても、2つの圧力センサ197、198を用いる代わりに、差圧計を用いて、直接、圧縮機110の吐出圧と吸入圧との差圧を検出しても良い。
【0161】
また、第1〜第4実施形態では、蓄冷器160、蒸発器150、凝縮器120等のそれぞれにおける入口側冷媒と出口側冷媒の圧力差を検出していたが、冷媒の圧力差を検出する箇所は、これらに限られず、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所であれば、他の箇所に変更しても良い。
【0162】
これは、冷凍サイクル内では、凝縮器120、受液タンク130、膨張弁140、蒸発器150、冷媒配管等を冷媒が流れることで、冷媒の圧力損失が生じており、冷房負荷が大きく、冷媒流量が多い運転条件では、蓄冷熱交換器161内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失だけでなく、冷凍サイクル内での冷媒流れによる冷媒の圧力損失も大きくなるからである。
【0163】
(2)第15実施形態では、蒸発器吹出温度センサ242を用いていたが、この代わりに、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するエアコングリル吹出温度センサ243もしくは車室内の空気温度を検出する内気温センサ244を用いて、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行うようにしても良い。
【0164】
これは、クールダウンなどのように、車室内の温度が高い状態から冷却を行う過渡期においては、蒸発器150に吸い込まれる空気、蒸発器150を通過した直後の空気の他にも、吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気や、車室内の空気の温度も、通常運転時よりも高くなるからである。
【0165】
(3)第16実施形態では、外気温センサ245を用いていたが、この代わりに、図21に示すように、車室内に注がれる日射量を検出する日射センサ246を用いて、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行うようにしても良い。
【0166】
これにより、日射量が多いために、車室内温度が高くなって、冷房負荷が大きい状態となる運転条件であっても、冷媒の圧力損失増大による蒸発器150の蒸発温度および吹出空気温度の上昇を抑制でき、空調空気の冷却スピード低下を防ぐことができる。
【0167】
(4)上記した各実施形態では、バイパス開閉弁180として、二方弁を用いていたが、三方弁を用いても良い。
【0168】
この場合、蓄冷器流入側冷媒管171の冷媒流れ途中に設けられた分岐部173と、蓄冷器流出側冷媒管172の冷媒流れ途中に設けられた分岐部174とに、三方弁を配置する。そして、エアコンECU200によって、バイパス経路170を閉塞したり、バイパス経路170を開放したりするように、三方弁が制御される。なお、この場合、蓄冷熱交換器161を通る冷媒通路は閉塞されない状態とする。
【0169】
(5)上記した各実施形態では、パイパス開閉弁180の開閉制御を行って、バイパス経路170の状態を、閉塞と開放との間での切り替え制御を行っていたが、この代わりに、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する制御を行っても良い。
【0170】
すなわち、例えば、第1実施形態で説明した図1に示す車両用空調装置において、パイパス開閉弁180を、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する流量調整弁に変更する。そして、例えば、冷房運転および蓄冷運転モードでは、流量調整弁の開度を、バイパス経路170と蓄冷器160の両方に冷媒が流れる開度とし、放冷運転モードでは、流量調整弁を閉じる制御をエアコンECUに実行させる。
【0171】
さらに、冷房運転および蓄冷運転モード、すなわち、圧縮機の駆動時において、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192が検出した冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きいときに、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さいときでのバイパス経路170の冷媒流量よりも、増大させるように、流量調整弁をエアコンECU200が制御する。
【0172】
本実施形態においても、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合では、少なくとも蓄冷熱交換器161に冷媒を流すことで、特許文献1に記載の構成と同様に、空調空気の冷却と、蓄冷材への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0173】
そして、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合では、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を、冷媒圧力差ΔPsが所定しきい値ΔPs_setよりも小さいときでのバイパス経路170の冷媒流量よりも増大させることで、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を低減することができる。
【0174】
(6)上記した各実施形態では、エアコンECU200がパイパス開閉弁180の開閉制御を行っていたが、バイパス開閉弁として、外部からの電気信号無しで圧力によって自己制御される構造のものを採用することも可能である。
【0175】
具体的には、図1に示す車両用空調装置において、冷器入口圧力センサ191と、蓄冷器出口圧力センサ192とを省略し、バイパス開閉弁180として、ばね、受圧部などにより構成され、バイパス開閉弁180よりも冷媒流れ上流側の冷媒とバイパス開閉弁180よりも冷媒流れ下流側の冷媒との圧力差によって、弁が機械的に開閉するものを採用する。そして、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、その所定値よりも大きいときでは、その圧力差によって、バイパス開閉弁が開くように設定しておく。
【0176】
バイパス開閉弁180として、このような構造のものを採用することで、圧縮機110の駆動時において、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは、バイパス開閉弁180は閉じているので、冷媒は蓄冷器160に流れ、特許文献1に記載の構成と同様に、圧縮機110の駆動時に、空調空気の冷却と、蓄冷材166への蓄冷とを同時に行うこととなる。
【0177】
そして、バイパス経路170の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、その所定値よりも大きいときでは、バイパス開閉弁180が圧力差によって機械的に開くので、バイパス経路170は開放され、冷媒を蓄冷器160に対してバイパスさせて流すことができ、蓄冷熱交換器161内を冷媒が流れることによる冷媒の圧力損失を避けることができる。
【0178】
(7)上記した各実施形態では、蓄冷器160として、蓄冷熱交換器161と蓄冷タンク162とが一体的に形成された構成のものを採用し、蓄冷熱交換器161として、シェルアンドチューブタイプの熱交換器を採用していたが、他の構成の蓄冷熱交換器および蓄冷器を採用しても良い。
【0179】
(8)上記した各実施形態では、エアコンECU200のバイパス開閉弁18の開閉制御において、各センサの検出結果が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス開閉弁18を開き、各センサの検出結果が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス開閉弁18を閉じるようにしていた。例えば、第1実施形態では、エアコンECU200は、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて算出した冷媒圧力差ΔPsが、所定しきい値ΔPs_setよりも大きい場合に、バイパス経路170を開放し、所定しきい値ΔPs_setよりも小さい場合に、バイパス経路170を閉塞するように、バイパス開閉弁18を制御していた。
【0180】
これとは反対に、センサの検出結果が所定しきい値よりも小さい場合に、バイパス開閉弁18を開き、センサの検出結果が所定しきい値よりも大きい場合に、バイパス開閉弁18を閉じるように、エアコンECU200がバイパス開閉弁18を制御するようにしてもよい。
【0181】
例えば、第1実施形態において、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果に基づいて冷媒圧力差ΔPsの逆数を算出した場合や、予め、蓄冷器入口圧力センサ191、蓄冷器出口圧力センサ192からの入力結果が大小逆転した物理量である場合では、所定しきい値と、それと比較する物理量との大小関係は逆転する。したがって、このような場合では、センサの検出結果が所定しきい値よりも小さいときに、バイパス開閉弁18を開く制御となる。
【0182】
また、例えば、第13実施形態では、吐出容積可変用信号と電流値、電圧値等の電気信号との関係において、図17に示すように、電流値もしくは電圧値が大きいほど吐出容積が大きい関係となっていたが、これとは逆に、電流値もしくは電圧値が小さいほど吐出容積が大きい関係としてもよい。この場合、図17に示すマップの縦軸の大小関係が逆転するので、例えば、吐出容積可変用信号値が小さい場合に、バイパス開閉弁18を開く制御となる。
【0183】
なお、バイパス経路170を流れる冷媒の流量を調整する制御においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1中の蓄冷器の断面図である。
【図3】エアコンECU200によるバイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャート
【図4】本発明の第2実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図7(a)】車室内温度が外気温度に近く、高い場合における冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図である。
【図7(b)】図7(a)のときよりも車室内温度が低い場合における冷凍サイクルの冷媒の状態を表すモリエル線図である。
【図8】本発明の第5実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第6実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第7実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第8実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図12】本発明の第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図13】本発明の第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図15】本発明の第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図16】本発明の第13実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図17】本発明の第13実施形態における圧縮機110の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号値の組み合わせとの関係を表すマップである。
【図18】本発明の第13実施形態におけるバイパス開閉弁180の開閉作動のタイムチャートである。
【図19】本発明の第14実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図20】本発明の第15実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図21】本発明の第16実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0185】
110…圧縮機、120…凝縮器、130…受液タンク、140…膨張弁、
150…蒸発器、160…蓄冷器、161…蓄冷熱交換器、162…蓄冷タンク、
166…蓄冷材、170…バイパス経路、180…バイパス開閉弁、
200…エアコンECU、191…蓄冷器入口圧力センサ、
192…蓄冷器出口圧力センサ、193…蒸発器入口圧力センサ、
194…蒸発器出口圧力センサ、195…凝縮器入口圧力センサ、
196…凝縮器出口圧力センサ、197…吐出圧センサ、198…吸入圧センサ、
211…吐出温度センサ、212…吸入温度センサ、221…流量センサ、
231…エンジン回転数センサ、232…圧縮機回転数センサ、
241…吸気温センサ、242…蒸発器吹出温度センサ、
243…エアコングリル吹出温度センサ、244…内気温センサ、
245…外気温センサ、246…日射センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を流れる冷媒の流量を調整する流量調整手段(180)と、
前記蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、
前記圧縮機の駆動時に、前記検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、前記バイパス経路を流れる冷媒の流量を増大させる制御を前記流量調整手段に対して行う制御手段(200)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(200)は、前記圧縮機の駆動時であって、前記検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでは、少なくとも前記蓄冷熱交換器に冷媒が流れるように、前記流量調整手段を制御するとともに、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも大きいときでは、前記バイパス経路を流れる冷媒の流量を、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも小さいときでの前記バイパス経路の冷媒流量よりも増大させるように、前記流量調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、
前記蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、
前記圧縮機の駆動時に、前記検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりする制御を前記バイパス開閉弁に対して行う制御手段(200)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
制御手段(200)は、前記圧縮機の駆動時では、前記検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合に、前記バイパス経路を閉塞し、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも大きい場合に、前記バイパス経路を開放するように、前記バイパス開閉弁を制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出する冷媒圧力差検出手段(191、192、193、194、195、196、197、198)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記蓄冷熱交換器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(191、192)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記蒸発器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(193、194)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記凝縮器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(195、196)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の低圧側冷媒の圧力差を検出するセンサ(197、198)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段(197、198)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記冷媒圧力検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出するセンサ(197)であることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記冷媒圧力検出手段は、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の冷媒圧力を検出するセンサ(198)であることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の温度差を検出する冷媒温度差検出手段であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記冷媒温度差検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の低圧側冷媒の温度差を検出するセンサ(211、212)であることを特徴とする請求項13に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段(211、212)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記冷媒温度検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出するセンサ(211)であることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記冷媒温度検出手段は、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の冷媒温度を検出するセンサ(212)であることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の流量を検出する冷媒流量検出手段(221)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記検出手段は、前記空調ケース内で前記蒸発器(150)に吸い込まれる空気の温度を検出するセンサ(241)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項20】
前記検出手段は、前記空調ケース内で前記蒸発器(150)を通過した直後の空気の温度を検出するセンサ(242)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項21】
前記検出手段は、前記吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するセンサ(243)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項22】
前記検出手段は、車室内の空気温度を検出するセンサ(244)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項23】
前記検出手段は、車室外の空気温度を検出するセンサ(245)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項24】
前記検出手段は、車室内に注がれる日射量を検出するセンサ(246)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項25】
前記検出手段は、前記圧縮機の吐出能力を検出する検出手段(231)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項26】
前記圧縮機(110)は、エンジン(10)の回転動力が伝達されることによって駆動し、エンジン回転数によって、吐出能力が調整される固定容量式であり、
前記検出手段は、エンジン回転数検出手段(231)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項27】
前記圧縮機は、1回転あたりの吐出容積が一定構造の固定容量式であり、
前記検出手段は、前記圧縮機の回転数検出手段(232)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項28】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記圧縮機は、1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造である可変容量式の圧縮機であって、前記圧縮機の回転数および前記1回転あたりの吐出容積を調整することによって、吐出能力が調整されるものであり、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、
前記バイパス開閉弁(180)の開閉を制御する制御手段(200)と、
前記圧縮機の回転数を検出する回転数検出手段(232)と、
前記圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させる吐出容積可変用信号を検出する吐出容積可変用信号検出手段とを備え、
前記制御手段(200)は、前記圧縮機の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号の組み合わせとの関係を表すマップが記憶されており、
前記圧縮機の駆動時では、前記回転数検出手段(232)が検出した回転数と、前記吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせを、前記マップに照らし合わせ、その結果に基づいて前記バイパス開閉弁を制御して、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりするようになっていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項29】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)とを備え、
前記バイパス開閉弁は、前記バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、前記所定値よりも大きいときでは前記圧力差によって機械的に開く構造となっていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を流れる冷媒の流量を調整する流量調整手段(180)と、
前記蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、
前記圧縮機の駆動時に、前記検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、前記バイパス経路を流れる冷媒の流量を増大させる制御を前記流量調整手段に対して行う制御手段(200)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(200)は、前記圧縮機の駆動時であって、前記検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さいときでは、少なくとも前記蓄冷熱交換器に冷媒が流れるように、前記流量調整手段を制御するとともに、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも大きいときでは、前記バイパス経路を流れる冷媒の流量を、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも小さいときでの前記バイパス経路の冷媒流量よりも増大させるように、前記流量調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、
前記蓄冷熱交換器内の冷媒流れによる冷媒の圧力損失量に関する物理量を検出する検出手段(191、192)と、
前記圧縮機の駆動時に、前記検出手段が検出した物理量と所定しきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりする制御を前記バイパス開閉弁に対して行う制御手段(200)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
制御手段(200)は、前記圧縮機の駆動時では、前記検出手段が検出した物理量が所定しきい値よりも小さい場合に、前記バイパス経路を閉塞し、前記検出手段が検出した物理量が前記所定しきい値よりも大きい場合に、前記バイパス経路を開放するように、前記バイパス開閉弁を制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の圧力差を検出する冷媒圧力差検出手段(191、192、193、194、195、196、197、198)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記蓄冷熱交換器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(191、192)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記蒸発器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(193、194)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記凝縮器の冷媒入口側と冷媒出口側の冷媒圧力差を検出するセンサ(195、196)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記冷媒圧力差検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の低圧側冷媒の圧力差を検出するセンサ(197、198)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段(197、198)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記冷媒圧力検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒圧力を検出するセンサ(197)であることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記冷媒圧力検出手段は、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の冷媒圧力を検出するセンサ(198)であることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の少なくとも2カ所での冷媒の温度差を検出する冷媒温度差検出手段であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記冷媒温度差検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の高圧側冷媒と、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の低圧側冷媒の温度差を検出するセンサ(211、212)であることを特徴とする請求項13に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段(211、212)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記冷媒温度検出手段は、前記圧縮機吐出後であって前記減圧器の冷媒流れ上流側の冷媒温度を検出するセンサ(211)であることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記冷媒温度検出手段は、前記減圧器の冷媒流れ下流側であって前記圧縮機吸入前の冷媒温度を検出するセンサ(212)であることを特徴とする請求項15に記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記検出手段は、冷凍サイクル内の所定箇所における冷媒の流量を検出する冷媒流量検出手段(221)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記検出手段は、前記空調ケース内で前記蒸発器(150)に吸い込まれる空気の温度を検出するセンサ(241)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項20】
前記検出手段は、前記空調ケース内で前記蒸発器(150)を通過した直後の空気の温度を検出するセンサ(242)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項21】
前記検出手段は、前記吹出口から車室内に向けて吹き出される空調空気の温度を検出するセンサ(243)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項22】
前記検出手段は、車室内の空気温度を検出するセンサ(244)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項23】
前記検出手段は、車室外の空気温度を検出するセンサ(245)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項24】
前記検出手段は、車室内に注がれる日射量を検出するセンサ(246)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項25】
前記検出手段は、前記圧縮機の吐出能力を検出する検出手段(231)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項26】
前記圧縮機(110)は、エンジン(10)の回転動力が伝達されることによって駆動し、エンジン回転数によって、吐出能力が調整される固定容量式であり、
前記検出手段は、エンジン回転数検出手段(231)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項27】
前記圧縮機は、1回転あたりの吐出容積が一定構造の固定容量式であり、
前記検出手段は、前記圧縮機の回転数検出手段(232)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項28】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記圧縮機は、1回転あたりの吐出容積を変化させることが可能な構造である可変容量式の圧縮機であって、前記圧縮機の回転数および前記1回転あたりの吐出容積を調整することによって、吐出能力が調整されるものであり、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)と、
前記バイパス開閉弁(180)の開閉を制御する制御手段(200)と、
前記圧縮機の回転数を検出する回転数検出手段(232)と、
前記圧縮機の1回転あたりの吐出容積を変化させる吐出容積可変用信号を検出する吐出容積可変用信号検出手段とを備え、
前記制御手段(200)は、前記圧縮機の吐出能力の大きさと、圧縮機回転数および吐出容積可変用信号の組み合わせとの関係を表すマップが記憶されており、
前記圧縮機の駆動時では、前記回転数検出手段(232)が検出した回転数と、前記吐出容積可変用信号検出手段が検出した信号値との組み合わせを、前記マップに照らし合わせ、その結果に基づいて前記バイパス開閉弁を制御して、前記バイパス経路を閉塞したり、前記バイパス経路を開放したりするようになっていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項29】
圧縮機(110)、放熱器(120)、減圧器(140)および蒸発器(150)が順次環状に接続されて構成される冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルのうち、前記圧縮機(110)の冷媒吸入側と前記蒸発器(150)の冷媒流出側との間に接続されており、前記蒸発器から流出された冷媒と内部に設けられた蓄冷材(166)との間で熱交換する蓄冷熱交換器(161)とを備え、
前記圧縮機(110)の駆動時では、前記蒸発器で、空調ケース(151)内に供給される空調空気を冷却すると同時に、前記蓄冷熱交換器で、前記蒸発器通過後の冷媒によって前記蓄冷材に蓄冷させ、
前記圧縮機の停止時では、前記蓄冷熱交換器で、蓄冷された前記蓄冷材から冷媒に対して放冷させることで、前記放熱器と前記蒸発器との間の冷媒の残圧によって、冷媒が蒸発器に流入し、前記蒸発器での空調空気の冷却を継続させる車両用空調装置において、
前記蒸発器から流出された冷媒を、前記蓄冷熱交換器を迂回させて、前記圧縮機の冷媒吸入側に流すバイパス経路(170)と、
前記バイパス経路(170)を開閉するバイパス開閉弁(180)とを備え、
前記バイパス開閉弁は、前記バイパス経路の冷媒入口側の冷媒と、冷媒出口側の冷媒との圧力差が、所定値よりも小さいときでは閉じており、前記所定値よりも大きいときでは前記圧力差によって機械的に開く構造となっていることを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−6920(P2009−6920A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171521(P2007−171521)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]