説明

車両用空調装置

【課題】外気の汚れが解消されて内気循環モードが解除されたときに、エバポレータの乾臭による不快感を防止する。
【解決手段】エアコン10には、内気導入口36B及び外気導入口38Bからエバポレータ18を経てヒータコア54に至る第1の空気通路82と、第1の空気通路と区画され、内気導入口36A及び外気導入口38Aからエバポレータを経てヒータコアに至る第2の空気通路84と、が形成され、外気の汚れが検出されると、内気導入口36A、36Bから内気を導入する内気循環モードに移行する。外気の汚れが解消されると、外気温に基づき、内気導入口36Bから内気を導入してデフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46から吹き出すと共に、外気導入口38Aから外気を導入して足元吹出し口48から吹き出す第2の内外気二層モードに移行し、外気によって生じる乾臭が乗員に向けて吹き出されるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられて、車室内を空調する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられる車両用空調装置(以下、エアコンとする)では、車室内の空気を導入する内気循環モードないし、車外の空気を導入する外気導入モードで空調運転を行う。
【0003】
エアコンを用いた車室内の暖房を行う場合、暖房効率を考慮すると内気循環モードでおこなうことが好ましいが、車室内は、内気循環モードで空調運転が行われると、乗員の呼気などによって炭酸ガスの濃度が高くなったり、車室内の湿度上昇によるフロントウインドガラスなどの曇りが生じる。特に、車室内を暖房する場合、外気温が低く、ドアガラスなどが閉じられており、このときに、内気循環モードで空調運転を行うと、ウインドガラスに曇りが生じ易くなる。
【0004】
ここから、内気側の通路と外気側の通路を区画し、内気側の通路を通過した空気を乗員の足元に吹出し、外気側の通路を通過した空気をデフロスタ吹出し口から吹き出すことにより、フロントウインドガラスの防曇を図りながら、暖房効率の低下を抑え、車室内の空気の換気を促進する内外気二層モードでの空調運転の提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、外気導入モードで空調運転を行った場合、前方の走行車両から排出される排気ガスが導入されて乗員へ向けて吹き出されてしまう可能性が高い。ここから、エアコンには、車両前部に設けた排気ガスセンサによって外気中のNox濃度などを外気の汚れとして計測し、外気の汚れが予め設定されたレベルを超えていると判断されたときに、外気導入モードから内気循環モードに切換える提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0006】
特許文献1では、自車の加速度を検出し、加速度が大きくなった場合に、外気導入モードから内気循環モードに切替わり易くするようにし、乗員に視覚的な不快感が生じるのを抑えるように提案している。また、特許文献2では、排気ガスセンサによって外気の汚れが検出された場合に、外気導入口を閉じると共に、ベント吹出し口を閉じて、外気が乗員へ向けて吹き出されるのを抑制するように提案している。
【0007】
しかしながら、内気循環モードで暖房運転を行うときに、コンプレッサを駆動することにより、車室内の湿度抑制は可能となるが、例えば、空気の汚れが低くなって内気導入モードから外気導入モードに切替わると、低温、低湿の外気が導入される。
【0008】
内気循環モードで除湿がおこなわれると、エバポレータ(蒸発器)に空気中の水分が付着する。この状態で、低温、低湿度の外気が導入されると、エバポレータに乾きが生じ、エバポレータに付着している水分中に含まれる汚れから臭い(所謂乾臭)が発せられる。この乾臭を含んだ空調風が、フロントウインドガラスや乗員へ向けて吹き出されると、乗員に不快感を生じさせてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−142084号公報
【特許文献2】特開平8−11521号公報
【特許文献3】特開平11−78485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、エバポレータ(蒸発器)から発せられる乾臭によって乗員に不快感を生じさせてしまうのを防止し、車室内の快適性を確保する車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、内気又は外気が冷凍サイクルを形成する蒸発器及び加熱手段を通過して生成される空調風を、デフロスタ吹出し口、レジスタ吹出し口ないし足元吹出し口から吹出して車室内を空調する車両用空調装置であって、内気又は外気が、前記蒸発器及び前記加熱手段を経て前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口へ案内可能とされる第1の空気通路と、前記第1の空気通路と区画されて形成され、内気又は外気が、前記蒸発器及び前記加熱手段を経て前記足元吹出し口へ案内可能とされる第2の空気通路と、前記第1及び第2の通気通路のそれぞれに内気が導入された状態から、該内気導入が解除されるときに、前記第1の空気通路に内気を導入して前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口から吹出し、前記第2の空気通路に外気を導入して前記足元吹出し口から吹き出す解除制限手段と、を含む。
【0012】
上記構成の本発明では、互いに区画された第1の空気通路と第2の空気通路を形成し、第1及び第2の空気通路のそれぞれに内気を導入する内気導入から、外気を導入した外気導入に切換えるときに、第1の空気通路に内気を導入して、導入した内気がデフロスタ吹出し口ないしレジスタ吹出し口から吹き出されるようにすると共に、第2の空気通路に外気を導入して、導入した内気が足元吹出し口から吹き出されるようにする。
【0013】
これにより、内気導入が行われているときに、蒸発器に水分が付着して濡れた状態となり、この蒸発器を外気が通過して乾きが生じても、所謂乾臭を含んだ空調風が、乗員の上半身や上半身近傍に吹き出されるのを防止する。
【0014】
したがって、空調風に含まれる乾臭によって乗員に不快感が生じるのを防止でき、また、車室内に外気が導入されるので、車室内の換気を促進することができる。
【0015】
請求項2にかかる発明は、車外の空気の汚れを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記第1の空気通路及び前記第2の空気通路に前記内気を導入すると共に、前記検出手段の検出結果に基づいて前記内気の導入を解除する導入制限手段と、を含み、前記解除制限手段が、前記導入制限手段による前記内気導入が解除されるときに、前記第1の空気通路に内気を導入し、前記第2の空気通路に外気を導入する。
【0016】
この発明によれば、検出手段によって外気の汚れが検出されたときに、強制的に内気のみが導入されるようにし、外気の汚れが解消されると、強制的な内気導入を解除する。これにより、車室内に汚れた外気が導入されるのを防止し、外気の汚れが解消されたときには、車室内の換気がなされるようにする。
【0017】
ここで、内気導入を解除するときに、第1の空気通路に内気を導入して、導入した内気がデフロスタ吹出し口ないしレジスタ吹出し口から吹き出されるようにすると共に、第2の空気通路に外気を導入して、導入した外気が足元吹出し口から吹き出されるようにする。
【0018】
これにより、空調風に含まれる乾臭によって乗員に不快感が生じるのを防止し、車室内に外気が導入されることによる車室内の換気促進が図られる。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記解除制限手段が、外気温を検出する外気温検出手段と、前記外気温検出手段によって検出される外気温が、予め設定された温度範囲であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記外気温が前記予め設定された温度範囲であると判定されたときに、前記第1の空気通路に内気が導入されると共に前記第2の空気通路に外気が導入されるように制御する解除制限制御手段と、を含む。
【0020】
この発明によれば、外気温が予め設定した温度範囲であるときに、第1の空気通路に内気を導入し、第2の空気通路に外気を導入する。
【0021】
これにより、外気温を検出する簡単な構成で、不必要に外気の導入が抑制されて、車室内の換気が抑えられるのを防止することができる。
【0022】
請求項4に係る発明は、前記温度範囲が、前記蒸発器を前記外気が通過したときに該蒸発器に乾きが生じると設定された外気温の範囲としている。
【0023】
例えば、外気が低温であると、湿度も低く、蒸発器を通過したときに、蒸発器に乾きを生じさせる。また、一般に、外気温が低すぎると、冷凍サイクルでの冷媒の循環が停止される。
【0024】
ここから、蒸発器に濡れが生じ、かつ、通過する外気によって蒸発器に乾きが生じる外気温の範囲を予め適切に設定することにより、不必要に外気の導入、車室内の換気が抑制されてしまうのを防止することができる。
【0025】
請求項5に係る発明は、前記解除制限手段が、車外ないし前記車室内の環境条件を検出する環境条件検出手段と、前記環境条件検出手段によって検出された環境条件が、前記蒸発器を通過する前記外気によって該蒸発器に乾きが生じると設定された環境条件であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記予め設定された環境条件が満たされていると判定されたときに、前記第1の空気通路に内気が導入されると共に前記第2の空気通路に外気が導入されるように制御する解除制限制御手段と、を含む。
【0026】
この発明によれば、外気導入に切換られたきに蒸発器に乾きが生じる環境条件を予め設定し、設定した環境条件が得られると判断されたときに、第1の空気通路に内気を導入してデフロスタ吹出し口ないしレジスタ吹出し口から吹出し、第2の空気通路に外気を導入して足元吹出し口から吹き出す。
【0027】
請求項6に係る発明は、前記第1の空気通路に前記外気を導入する第1の外気導入口と、前記第1の空気通路に前記内気を導入する第1の内気導入口と、を選択的に開閉する第1の開閉手段と、前記第2の空気通路に前記外気を導入する第2の外気導入口と、前記第2の空気通路に前記内気を導入する第1の内気導入口と、を選択的に開閉する第2の開閉手段と、を含み、前記解除制限制御手段が、前記第1の開閉手段によって前記第1の外気導入口を閉止し、前記第2の開閉手段によって前記第2の内気導入口を閉止する。
【0028】
この発明では、第1の空気通路に対応する第1の内気導入口及び外気導入口と、第2の空気通路に対応する第2の内気導入口及び外気導入口と、を設ける。このような構成は、例えば、内気導入口及び外気導入口をそれぞれ、第1と第2の内気導入口及び第1と第2の内気導入口に分割する簡単な構成を適用することができる。
【0029】
請求項7に係る発明は、前記第1の空気通路及び前記第2の空気通路を通過した外気及び内気のそれぞれを、前記デフロスタ吹出し口、前記レジスタ吹出し口及び前記足元吹出し口に選択的に案内する切換手段を含み、前記解除制限制御手段が、前記第1の空気通路を前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口に連通し、前記第2の空気通路を前記足元吹出し口に連通するように切換える。
【0030】
この発明によれば、例えば、空調風の吹出し口として、デフロスタ吹出し口、レジスタ吹出し及び足元吹出し口の何れかを選択する切換手段を用いて簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、内気導入して空調運転を行っている状態から例えば、外気導入に移行するときに、外気から生成した空調風を足元吹出し口から吹出し、内気から生成した空調風をデフロスタ吹出し口ないしレジスタ吹出し口から吹き出すようにしているので、外気によって蒸発器に乾きが生じても、乾臭を含んだ空調風が、乗員の近傍に吹き出されて不快感を生じさせてしまうのを確実に防止することができる。
【0032】
また、請求項2に係る発明によれば、外気の汚れが解消されて内気導入が解除されたときに、乾臭によって乗員に不快感を生じさせてしまうことがない。
【0033】
さらに、外気温を含む環境条件に基づいて、外気を足元へ向けて吹出し、内気を乗員の上半身近傍へ吹き出すので、車室内の換気が抑制されてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係るエアコンのブロワユニットとエアコンユニットの要部の構成図である。
【図2】エアコンの概略構成図である。
【図3】エアコンが設けられる車両の要部の概略構成図である。
【図4】エアコンの制御系を示す概略構成図である。
【図5】外気の汚れに応じた内気導入モードへの切換の一例を示す流れ図である。
【図6】内気導入モードが解除された処理の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2には、本実施の形態に係る車両用空調装置(以下、エアコン10とする)の概略構成が示されている。
【0036】
本発明が適用される車両用空気調和機は、内燃機関(エンジン)の駆動力によって走行するコンベンショナル車、エンジンと電気モータの駆動力によって走行するハイブリッド車、電気モータの駆動力によって走行する電気自動車など、任意の構成の車両に適用することができる。エアコン10は、一例として走行用の駆動源としてエンジンを備えたハイブリッド車又はコンベンショナル車に設けられている。
【0037】
図2に示されるように、エアコン10には、コンプレッサ(圧縮機)12、コンデンサ(凝縮器)14、エキスパンションバルブ(膨張弁)16及び、エバポレータ(放熱器)18を含んだ冷凍サイクルが形成されている。この冷凍サイクルでは、コンプレッサ12の回転駆動によって冷媒が圧縮され、高温、高圧となった冷媒がコンデンサ14で冷却されることにより液化される。
【0038】
また、コンデンサ14から送り出される冷媒は、エキスパンションバルブ16で急激に減圧されることにより霧状とされてエバポレータ18へ送られ、エバポレータ18で気化される。これにより、エアコン10では、エバポレータ18を通過する空気の冷却及び除湿が行われる。
【0039】
一方、図1及び図2に示されるように、エアコン10は、ブロワユニット20及びエアコンユニット22を備え、このブロワユニット20とエアコンユニット22とが連結されて空調風となる空気の流路が形成されている。
【0040】
図3に示されるように、車両24では、エアコン10によって空調する車室26と車両前部のエンジンコンパートメント28との間がダッシュパネル30によって区画され、ブロワユニット20及びエアコンユニット22がダッシュパネル30とインストルメントパネル32の間の空間に収容されている。なお、図3では、矢印Fで車両前後方向の前方を示し、矢印Uで車両上下方向の上方を示す。
【0041】
図1及び図2に示されるように、エアコン10のブロワユニット20には、ケーシング34に、車室26(図3参照)内へ向けて開口された内気導入口36及び、車外へ向けて開口された外気導入口38が形成されている。また、ケーシング34内には、ブロワファン40が配設されている。エアコン10では、ブロワファン40が回転駆動されることにより、車室26内の空気(内気)ないし車外の空気(外気)が、空調風の生成に用いる空気としてブロワユニット20内に導入されて、エアコンユニット22へ送り込まれる。
【0042】
エアコンユニット22は、ケーシング42を備え、このケーシング42のブロワユニット20側にエバポレータ18が配設され、エアコンユニット22に送り込まれる空気がエバポレータ18を通過することにより冷却及び除湿される。
【0043】
図2及び図3に示されるように、エアコン10には、空調風の吹出し口として、デフロスタ吹出し口44、レジスタ吹出し口46及び、足元吹出し口48が設けられている。図2に示されるように、エアコンユニット22には、デフロスタ吹出し口44、レジスタ吹出し口46及び足元吹出し口48を選択的に開閉するモード切換ドア50(モード切換ドア50A、50B、50C、50D)が設けられている。なお、エアコン10では、レジスタ吹出し口46として、センタレジスタ吹出し口46A及び、サイドレジスタ吹出し口46Bが設けられ、足元吹出し口48として、前席足元吹出し口48A及び、後席吹出し口48Bが設けられた構成などの任意の構成を適用することができ、以下では、デフロスタ吹出し口44、レジスタ吹出し口46及び足元吹出し口48として説明する。
【0044】
図3に示されるように、エアコン10では、デフロスタ吹出し口44からウインドシールドガラス52へ向けて空調風が吹き出され、レジスタ吹出し口46から車室26内の乗員へ向けて空調風が吹き出される。また、エアコン10では、足元吹出し口48から車室26内の乗員の足元へ向けて空調風が吹き出される。
【0045】
また、車両24には、車室26内の空気を車外へ排出する図示しない排気ダクトが設けられており、エアコン10によって外気が車室26内へ導入されることにより、この排気ダクトから車室26内の空気が排出されて、車室26内の換気が行われる。
【0046】
図1及び図2に示されるように、エアコンユニット22には、加熱手段としてヒータコア54が設けられ、また、ヒータコア54を通過する空気の流量を制御するエアミックスドア56(エアミックスドア56A、56B)が設けられている。ヒータコア54は、図示しないエンジンとの間で循環される冷却水などのエンジン冷却液によって、ヒータコア54を通過する空気を加熱する。
【0047】
エアコンユニット22では、このヒータコア54を通過する空気の流量と、ヒータコア54をバイパスされる空気の流量が、エアミックスドア56の開度によって制御される。これにより、エアコンユニット22では、ヒータコア25を通過した空気及び、ヒータコア54をバイパスすることによりエバポレータ18で冷却されたままの空気により、空調風が生成される。すなわち、エアコン10では、エアミックスドア56の開度を制御することにより、車室26内を所望の空調状態とする空調風が生成される。なお、加熱手段としては、ヒータコア54に加えてPCTヒータなどの電気ヒータを備えた構成であっても良く、また、エンジンを備えていない電気自動車などにおいては、ヒータコア54に替えて電気ヒータ等を適用することができる。
【0048】
エアコン10では、空調風の吹出しモードとして、デフロスタ吹出し口44が選択されるDEFモード、レジスタ吹出し口46が選択されるFACEモード、足元吹出し口48が選択されるFOOTモード、デフロスタ吹出し口44と足元吹出し口48が選択されるFOOT/DEFモード及び、レジスタ吹出し口46と足元吹出し口48が選択されるBI−LEVELモードが設定されている。エアコン10では、何れかの吹出しモードが選択されることにより、選択された吹出しモードに応じた吹出し口から空調風が吹き出されるようにモード切換ドア50が操作される。
【0049】
一方、図4に示されるように、エアコン10には、空調運転の作動を制御するエアコンECU60が設けられている。このエアコンECU60は、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続されたマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス、駆動回路等が設けられ(何れも図示省略)、CPUが、ROMなどに記憶されたプログラムに基づいてエアコン10の作動を制御する一般的構成となっている。
【0050】
エアコン10には、コンプレッサ12を駆動するコンプレッサモータ62、ブロワファン40を駆動するブロワモータ64、モード切換ドア50を操作駆動するアクチュエータ66A、エアミックスド56を開閉駆動するアクチュエータ66Bが設けられており、これらがエアコンECU60に接続されている。
【0051】
また、エアコン10には、車室内の温度(室温)を検出する室温センサ68、車外の温度(外気温)を検出する外気温センサ70、日射量を検出する日射センサ72、エンジン冷却水の温度(水温)を検出する水温センサ74、エバポレータ18を通過した空気の温度を検出するエバポレータ後温度センサ76等が設けられており、これらがエアコンECU60に接続されている。さらに、エアコン10には、運転条件の設定、運転状態の表示等が行われる操作パネル78が設けられており、この操作パネル78がエアコンECU60に接続されている。
【0052】
エアコンECU60は、操作パネル78のスイッチ操作によって空調風の吹出しモード、設定温度などの運転条件が設定されて空調運転の開始が指示されると、各種のセンサによって環境条件を検出し、環境条件及び運転条件に基づいて空調運転を行う。
【0053】
このときに、エアコンECU60は、車室26内を設定温度とするための目標吹出し温度を設定し、設定した目標吹出し温度が得られるように、コンプレッサモータ62の回転数等によって冷房能力を制御すると共に、エアミックスドア56の開度等により暖房能力を制御する。
【0054】
また、エアコンECU60では、目標吹出し温度又は運転条件に基づいた空調風の風量(ブロワ風量)が得られるようにブロワモータ64の回転を制御する。さらに、エアコンECU60は、空調風の吹出しモードに応じてアクチュエータ66Aを制御する。なお、このようなエアコン10の基本的制御は、公知の構成を適用することができる。また、コンプレッサ12がエンジンの駆動力によって回転駆動される場合、エアコンECU60は、コンプレッサ12へのエンジン駆動力の断続及び、コンプレッサ12の冷媒吐出圧を制御するものであれば良い。
【0055】
ところで、図1及び図2に示されるように、エアコン10では、ブロワファン40の一例として遠心式ファンが用いられている。このブロワファン40は、軸方向の中間部で、図1の紙面上方側の第1ファン40Aと、紙面下方側の第2ファン40Bに仕切られ、第1ファン40Aと第2ファン40Bとが一体で回転される。
【0056】
また、エアコン10には、ブロワファン40とエバポレータ18との間にセパレータ80が設けられている。エアコン10では、セパレータ80によって、第1ファン40Aから送り出される空気がエバポレータ18の図1紙面上部側へ案内される第1の空気通路82と、第2ファン40Bから送り出される空気がエバポレータ18の図1紙面下部側へ案内される第2の空気通路84と、が形成されている。
【0057】
図1に示されるように、エアコンユニット22は、図1の紙面上方側にデフロスタ吹出し口44及びレジスタ吹出し口46が連通され、図1の紙面下方側に足元吹出し口48が連通されている。また、エアミックスドア56は、エアミックスドア56A、56Bに分割されており、エアミックスドア56Aがエバポレータ18の下部側に対向され、エアミックスドア56Bがエバポレータ18の上部側に対向されている。なお、図1では、一例として紙面上方側を車両上方側としている。
【0058】
ここで、エアコンユニット22では、エアミックスドア56A、56Bが全開となったときに、第2の空気通路84を経てエバポレータ18の下部側を通過した空気が、主にヒータコア54を通過して足元吹出し口48へ案内され、第1の空気通路82を経てエバポレータ18の上部側を通過した空気が、ヒータコア54を通過ないしバイパスされて、主にデフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46へ案内される(図1参照)。
【0059】
一方、ブロワユニット20には、第1ファン40Aを囲うように仕切り板86が設けられている。また、ブロワユニット20には、ケーシング34内にセパレータ88が設けられている。このセパレータ88は、内気導入口36及び外気導入口38のそれぞれを、図1の紙面手前側の内気導入口36A及び外気導入口38Aと、紙面奥側の内気導入口36B及び外気導入口38Bとに2分割するように配置されている。
【0060】
これにより、ブロワユニット20には、内気導入口36A及び外気導入口38Aから第2ファン40Bを経て第2の空気通路84へ至る空気の流路(以下、総称して第2の空気通路84とする)と、内気導入口36B及び外気導入口38Bから第1ファン40Aを経て第1の空気通路82へ至る空気の流路(以下、総称して第1の空気通路82とする)と、が形成されている。
【0061】
また、ブロワユニット20には、内気導入口36と外気導入口38を選択的に開閉する切換ドア90を備えている。切換ドア90は、内気導入口36A及び外気導入口38Aを開閉する切換ドア90Aと、内気導入口36B及び外気導入口38Bを開閉する切換ドア90Bと、によって構成されている。
【0062】
これにより、エアコン10では、空気の導入モードとして、内気導入口36A、36Bから内気を導入する内気導入モード、外気導入口38A、38Bから外気を導入する外気導入モードに加え、内気導入口36A、36Bの一方から内気を導入し、外気導入口38A、38Bの一方から外気を導入する内外気二層モードの選択が可能となっている。
【0063】
また、エアコン10では、内外気二層モードとして、内気導入口36Aと外気導入口38Bを選択する第1の内外気二層モード及び、内気導入口36Bと外気導入口38Aを選択する第2の内外気二層モードの選択が可能となっている。
【0064】
エアコン10では、第1の内外気二層モードが選択されることにより、比較的低湿度の外気から生成した空調風をデフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46から吹き出すことができると共に、内気から生成した空調風を足元吹出し口48から吹き出すことができる。これにより、暖房効率の向上を図りながら、車室26内の湿度上昇の抑制、ウインドシールドガラス52の防曇を図ることができる。
【0065】
ここから、エアコンECU60では、例えば、エアミックスドア56を最大開度として暖房運転を行う(Max Hot)ときに、第1の内外気二層モードを選択するように設定されている。このときには、吹出しモードとして、FOOT/DEFモード又はBI−LEVELモードが選択される。
【0066】
これに対して、第2の内外気二層モードでは、第2の空気通路84に、外気導入口38Aから外気が導入されると共に、第1の空気通路82に、内気導入口36Bから内気が導入される。
【0067】
図4に示されるように、エアコンECU60には、切換ドア90(90A、90B)を操作するアクチュエータ92が接続されており、エアコンECU60は、空気の導入モードに応じてアクチュエータ92を駆動し、切換ドア90(90A、90B)による内気導入口36(36A、36B)及び外気導入口38(38A、38B)の開閉を行う。なお、本実施の形態では、一例として、切換ドア90Aと切換ドア90Bとが図示しないリンク機構によって連結されて、一つのアクチュエータ92によって作動するようにしているが、これに限らず、切換ドア90A、90Bを別々のアクチュエータによって作動するものであっても良い。
【0068】
一方、図3に示されるように、車両24には、車外の空気の汚れを検出する検出手段として、排気ガスセンサ94が設けられている。この排気ガスセンサ94は、エンジンコンパートメント28の前部に設けられ、例えば、車両前方側の外気の汚れ度合いとして、空気中のNox濃度を検出する。すなわち、本実施の形態では、外気の汚れの一例として、周囲を走行する車両排気ガスによる汚れを検出する。
【0069】
なお、本実施の形態では、排気ガスによる外気の汚れを検出するが、これに限らず、臭気センサなどを用いて、外気の臭いを検出しても良く、また、外気の臭いと汚れを合わせて検出するものであっても良い。
【0070】
図4に示されるように、排気ガスセンサ94は、エアコンECU60に接続され、例えば、空気の汚れ(Nox濃度)に応じて変化する電圧を出力する(以下、出力値Sとする)。エアコンECU60は、排気ガスセンサ94の出力値Sを読み込んで、予め基準値として設定されている設定値Sと比較することにより、車室26内に導入される外気が汚れているか否かを判定する。
【0071】
エアコン10には、排気ガスオートモードが設定されており、エアコンECU60は、排気ガスセンサ94の検出結果から、外気が汚れていると判定されると、内気循環モードを選択し、強制的に内気循環モードへ移行する。すなわち、エアコンECU60は、外気導入モード又は第1の内外気二層モードで空調運転を行っているときに、外気の汚れが検出されると、外気導入モード又は第1の内外気二層モードから内気循環モードに切換える。これにより、エアコン10は、車室26内に外気を導入してしまうのを確実に防止する。
【0072】
また、エアコンECU60は、排気ガスセンサ94の検出結果から、外気の汚れが解消されたと判断されると、内気循環モードを解除し、内気循環モードから通常の導入モードへ移行する。すなわち、排気ガスセンサ94の出力値Sが、予め設定されている設定値Sより低くなると、内気導入モードを解除する。これにより、エアコン10は、内気循環モードで空調運転が行っていることにより停止している車室26内の換気が再開されるようにする。なお、設定値S、Sは、同じであっても良く(S=S)、また、設定値Sが、設定値Sよりも低い(S<S)ことが好ましい。
【0073】
一方、エアコンECU60は、エバポレータ18が湿った状態であり、かつ、このエバポレータ18に外気が通過するときに、エバポレータに付着した水分が蒸発して所謂乾臭が発生する可能性のある状態であると判断されると、内気循環モードから第2の内外気二層モードへ移行する。
【0074】
例えば、エアコンECU60は、外気温センサ70によって外気温Taを検出し、この外気温Taが、エバポレータ18を乾かすと設定されている温度範囲(外気温Taが、温度T以上、温度T以下、T≦Ta≦T)であると、内気循環モードから第2の内外気二層モードに移行する。
【0075】
このときの温度Tは、エアコン10がコンプレッサ12を駆動する時の最低温度(例えば、T=0°C)とし、温度Tは、エバポレータ18に乾きを生じさせない最低温度(例えば、T=10°C)としている。また、この温度範囲内では、エアコン10が暖房能力を最大(Max Hot)にして空調運転を行う温度とされている。
【0076】
これにより、エアコン10では、第2の内外気二層モードに設定されると、内気導入口36Bから第1の空気通路82に導入された内気がデフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46から車室26内に吹き出され、外気が外気導入口38Aから第2の空気通路84に導入された外気が足元吹出し口48から吹き出される。
【0077】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0078】
エアコン10では、操作パネル78のスイッチ操作によって運転条件が設定されて、空調運転の開始が指示されると、環境条件及び設定された運転条件での空調運転を開始する。このときに、エアコンECU60は、室温センサ68、外気温センサ70、日射センサ72等によって環境条件を検出して、この環境条件と設定温度などの運転条件に基づいて目標吹出し温度を設定する。この後、エアコンECU60は、設定した目標吹出し温度の空調風が得られるように冷房能力ないし暖房能力を制御する。また、エアコンECU60は、運転条件及び目標吹出し温度に基づいて、空気の導入モード、ブロワ風量、吹出しモードを設定し、これらの設定に基づいて車室26内の空調を行う。
【0079】
これにより、エアコン10は、設定温度が室温より低いとコンプレッサ12を駆動して、車室26内の冷房を行う。このときには、空調風の吹出しモードとして、主にFACEモードが選択される。また、エアコン10は、設定温度が室温より高いと、ヒータコア54を通過する空気量を増加させて、車室26内の暖房を行う。このときには、空調風の吹出しモードとして、FOOTモード、BI−LEVELモード又はFOOT/DEFモードが選択される。
【0080】
また、エアコン10では、外気導入モードが選択されることにより、車室26内の換気を行うことができる。これにより、車室26内の空気の換気が行われ、ドアガラスが閉じられていても、乗員の発する呼気等により、車室26内の炭酸ガス濃度、湿度の上昇が抑えられる。
【0081】
さらに、エアコンECU60は、暖房運転を行うときに、外気温が所定の温度(エバポレータ18を用いた除湿が可能な環境状態であると判断されるように設定された温度)以上であると、コンプレッサ12を駆動して、エバポレータ18を用いた除湿を行う。これにより、内気循環モードが選択されても、乗員が発する呼気等により車室26の湿度上昇の抑制、ウインドシールドガラス52の防曇が図られる。
【0082】
また、エアコンECU60は、例えば、外気温が低い冬季などでの空調運転の開始直後のように暖房負荷が大きく、急速な暖房(室温上昇)が要求されると、エアミックスドア56を全開(最大開度)とした所謂Max Hotでの空調運転(暖房運転)を行う。
【0083】
このときに、エアコンECUでは、導入モードとして第1の内外気二層モードを選択すると共に、吹出しモードとして、FOOT/DEFモード又はBI−LEVELモードが選択される。これにより、迅速な暖房を図りながら、車室26内の空気の換気、ウインドシールドガラス52の防曇が図られる。
【0084】
ところで、車両24には、他車の排気ガスなどによる外気の汚れを検出する排気ガスセンサ94が設けられており、エアコンECU60では、この排気ガスセンサ94の検出結果を用いて、車室26内に汚れた外気が入り込んで乗員に不快感を生じさせるのを防止する排気ガスオートモードが設定されている。
【0085】
ここで、エアコン10で排気ガスオートモードを用いた処理を説明する。
【0086】
図5には、エアコンECU60で実行される排気ガスオートモードでの処理の一例を示している。このフローチャートは、例えば、エアコン10の運転スイッチがオンされたときなどに実行される。なお、この排気ガスオートモードは、操作パネル78のスイッチ操作によってオンされても良く、エアコン10のオン状態で常にオンされているものであっても良い。
【0087】
このフローチャートは、所定の時間間隔で実行され、最初のステップ100で、排気ガスセンサ94が外気の汚れに応じて出力する出力値Sを読み込み、次のステップ102では、読み込んだ出力値Sと、外気の汚れを判断する基準値として設定されている設定値Sとを比較する。
【0088】
ここで、出力値Sが設定値Sに達していなければ(S<S)、外気が汚れていないか外気の汚れが少ないと判断し、ステップ102で肯定判定されてステップ104へ移行する。
【0089】
このステップ104では、通常の導入モードを継続するように設定する。これにより、エアコン10では、操作パネル78の設定又は目標吹出し温度に基づいて設定された導入モードでの空調運転を継続する。
【0090】
これに対して、外気が汚れて、排気ガスセンサ92の出力値Sが設定値Sを超えている(S≧S)と、ステップ102で否定判定してステップ106へ移行する。このステップ106では、空気の導入モードを強制的に内気循環モードに設定する。
【0091】
エアコンECU60は、内気導入モードに設定すると、外気導入口38A、38Bを切換ドア90A、90Bによって閉じ、内気導入口36A、36Bから導入される内気を用いた空調運転を行う。これにより、汚れていると判断される外気が車室26内に導入されてしまい、乗員に不快感を生じさせてしまうのが防止されるようにしている。
【0092】
一方、図6には、排気ガスオートモードで内気循環モードに設定されることにより実行される復帰処理の概略を示している。このフローチャートでは、最初のステップ110で、排気ガスセンサ94の検出結果に基づいて内気循環モードに設定されたか否かを確認し、内気循環モードに設定されると、ステップ110で肯定判定してステップ112へ移行する。
【0093】
このステップ112では、排気ガスセンサ92が外気の汚れに応じて出力する出力値Sを読み込み、次のステップ114では、出力値Sと設定値Sを比較し、外気の汚れが少なくなったか否かを確認する。
【0094】
ここで、外気の汚れが解消されずに、出力値Sが設定値Sよりも大きいと(S≧S)、ステップ114で否定判定されて、ステップ112へ戻り、所定の時間を経た後、再度、外気の汚れを確認する。すなわち、内気導入モードが継続される。
【0095】
一方、外気の汚れが解消されると、排気ガスセンサ94の出力値Sが低下する。これにより、出力値Sが設定値Sよりも低くなる(S<S)と、ステップ114で肯定判定されてステップ116へ移行する。
【0096】
このステップ116では、外気温センサ70によって検出する外気温Taを読み込む。次のステップ118では、この外気温Taが、予め設定された温度範囲であるか否かを確認する。すなわち、内気循環モードで暖房運転しているとときに、コンプレッサ12が回転駆動されているとエバポレータ18に空気中の水分が付着する。また、降雨時などの特別な条件下を除くと、外気は、温度が低いと絶対湿度も低くなり、このような外気がエバポレータ18を通過すると、エバポレータ18に付着している水分が蒸発して乾きが生じる。
【0097】
ここから、ステップ118では、外気温Taが、コンプレッサ12が回転駆動されるように設定された温度T以上であり、かつ、エバポレータ18に付着した水滴が蒸発して、エバポレータ18に乾きが生じると設定された外気温の上限の温度T以下であるか否かを確認する。
【0098】
ここで、外気温Taが、温度Tより低い(Ta<T)か、温度Taが温度Tより高い(Ta>T)場合、ステップ118で否定判定されてステップ120へ移行する。このステップ120では、空気の導入モードを通常の導入モード、すなわち、外気の汚れのために内気循環モードに移行する前の導入モードに戻るように設定する。
【0099】
これにより、内気循環モードから外気導入モードや第1の内外気二層モードに復帰する。このときには、エバポレータ18に水分が付着していないか、外気がエバポレータ18を通過しても、エバポレータ18に付着している水分が蒸発することがないので、エバポレータ18に付着した水分が蒸発することによる乾臭が生じることがない。したがって、乾臭を含んだ空調風が起因して乗員に不快感を生じさせてしまうことがない。
【0100】
これに対して、外気温Taが、温度T以上、温度T以下の範囲である(T≦Ta≦T)と、ステップ118で肯定判定されてステップ122へ移行する。このステップ122では、導入モードを内気循環モードから第2の内外気二層モードに移行するように設定する。
【0101】
この第2の内外気二層モードでは、外気導入口38Bが閉じられて内気導入口36Aが開かれ、第1の空気通路82に内気が導入されると共に、内気導入口36Aが閉じられて外気導入口38Bが開かれ、第2の空気通路84に外気が導入される。
【0102】
また、外気温Taが温度T以上、温度T以下の範囲では、エアミックスドア56が全開(Max Hot)となっていると共に、吹出しモードとして、BI−LEVELモード又はFOOT/DEFモードが選択されている。
【0103】
これにより、第2の内外気二層モードが選択されると、ヒータコア54によって加熱された内気が、デフロスタ吹出し口44又はレジスタ吹出し口46から吹き出される。また、第2の空気通路84からエバポレータ18へ送り込まれる外気は、足元吹出し口48から吹き出される。これにより、車室26内は、足元吹出し口48から吹き出される空調風によって換気が図られる。
【0104】
内気循環モードで空調運転されていることにより、エバポレータ18には、水分(水滴)が付着して濡れた状態となっている。このときに、低温で低湿度(絶対湿度が低い)の外気がエバポレータ18を通過すると、エバポレータ18に乾きが生じ、エバポレータ18に付着している水分中の汚れによって所謂乾臭が発生し、この乾臭を含んだ空調風が車室26内に吹き出される。
【0105】
ここで、エアコン10では、第2の内外気二層モードを選択することにより、デフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46から乗員の上半身近傍(頭部ないし頭部近傍)に吹き出される空調風は、内気を用いたものであるために、乾臭が含まれることはない。
【0106】
また、エアコン10では、外気を導入しているために、エバポレータ18を通過することにより、乾臭を含んでいる可能性の高い空調風が吹き出されるが、この空調風は、足元吹出し口48から吹き出される。
【0107】
これにより、乾臭が発生していても、乗員が直に乾臭を感じてしまうことが無い。特に、第2の内外気二層モードでは、デフロスタ吹出し口44ないしレジスタ吹出し口46から乗員の上半身近傍に足元に比べて高い温度となっている空調風を吹き出されるために、乾臭を含んだ空調風が上昇してしまうのが抑えられる。これにより、乾臭によって乗員に不快感を生じさせることがない。
【0108】
このように、エアコン10では、空調風の導入モードとして、第2の内外気二層モードが設定されていることにより、外気の汚れに基づいて内気循環モードに移行するようにしても、内気循環モードから通常の導入モードに戻ったときに、エバポレータ18から乾臭が発生しても、この乾臭によって乗員に不快感を所持させるのを確実に防止することができる。
【0109】
ここで、車室26内は、エアコン10が、第2の内外気二層モードで空調運転することにより、暖房感を損ねることなく換気が行われ、湿度低下が図られる。これにより、エバポレータ18に付着している水分が減少し、前面に外気が導入されても、乾臭を生じることのない状態に至る。
【0110】
ここから、第2の内外気二層モードに移行してから、例えば、予め設定している時間が経過した後など、乾臭が発生しないか、実質的に乗員が乾臭を感じることがないと判断しうる状態に至ったときに、第2の内外気二層モードを解除して、通常の導入モードに戻るようにすれば良い。すなわち、第2の内外気二層モードから通常の導入モードへの移行は、車室26の内の湿度が低下して、エバポレータ18から乾臭が発生しないと判断しうるように設定された条件が満たされた状態でおこなうものであれば良い。
【0111】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、外気温に基づいて内気循環モードから第2の内外気二層モードに移行するようにしたが、これに限らず、例えば、外気の湿度を検出する湿度センサを設け、湿度センサの検出する湿度又は、外気温と外気の湿度に基づいて、エバポレータ18から乾臭が発生するか否かを判断し、乾臭が発生すると判断されたときに、第2の内外気二層モードへ移行するようにしてもよい。
【0112】
また、エバポレータ18の濡れや湿度を検出する水分センサ又は湿度センサを設け、この検出結果又はこの検出結果と外気温からエバポレータ18から乾臭が発生するか否かを判断し、乾臭が発生すると判断されたときに、内気循環モードから第2の内外気導入モードへ移行するものであっても良い。
【0113】
また、本実施の形態では、第2の内外気導入モードに移行したときの空調風の吹出しモードがFOOT/DEFモード又はBI−LEVELモードであるものとしたが、例えば、FOOTモードであったときには、第2の内外気導入モードに移行したときに、吹出しモードをFOOT/DEFモード又はBI−LEVELモードに切換えるようにしても良い。
【0114】
また、車両に設けられるエアコン(車両用空調装置)には、FOOTモードにおいても、デフロスタ吹出し口44や、サイドレジスタ吹出し口46Bなどのレジスタ吹出し口46から僅かに空調風が吹き出されるようにしたものがある。このようなエアコンにおいては、第2の内外気二層モードを選択したときに、吹出しモードを切り替えないようにしても良い。
【0115】
さらに、本実施の形態では、セパレータ80、仕切り板86及びセパレータ88を用いて内気導入口36及び外気導入口38を分割すると共に第1の空気通路82と第2の空気通路84とを形成したが、本発明は、これに限らず、例えば、第1の空気通路82に対応する内気導入口及び外気導入口と、第2の空気通路84に対応する内気導入口及び外気導入口とを別々に設けるなど、外気を第1の空気通路82に導入可能とすると共に、内気を第2の空気通路84へ導入可能とするものであれば、任意の構成を適用することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、排気ガスセンサ94によって外気の汚れが検出されて内気導入モードに移行した後、内気導入モードが解除されたときに、第2の内外気二層モードが選択されるように説明したが、これに限らず、例えば、操作パネル78のスイッチ操作によって、空気の導入モードが内気循環モードに選択された状態から外気導入モードに切換えられたときに、導入モードを第2の内外気二層モードに移行可能とするものであっても良い。
【0117】
これにより、マニュアル操作によって内気導入モードで暖房運転が行われているときに、車室26内の換気のために外気導入モードに切換えられたときに、エバポレータ18から乾臭が発生しても、この乾臭によって乗員に不快感を生じさせてしまうことがない。
【0118】
また、本発明が適用される車両用空調装置は、エアコン10に限らず、冷凍サイクルを用いて空気の除湿を行いながら車室内を暖房する任意の構成の車両用空調装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
10 エアコン
18 エバポレータ(蒸発器)
20 ブロワユニット
22 エアコンユニット
26 車室
36(36A、36B) 内気導入口(第1及び第2の内気導入口)
38(38A、38B) 外気導入口(第1及び第2の外気導入口)
40 ブロワファン
40A 第1ファン
40B 第2ファン
44 デフロスタ吹出し口
46 レジスタ吹出し口
48 足元吹出し口
50(50A〜50D) モード切換ドア(切換手段)
54 ヒータコア(加熱手段)
56(56A、56B) エアミックスドア(切換手段)
60 エアコンECU(解除制限手段、導入制限手段、解除制限制御手段、判定手段)
70 外気温センサ(外気温検出手段、環境条件検出手段)
80、88 セパレータ
82 第1の空気通路
84 第2の空気通路
86 仕切り板
90(90A、90B) 切換ドア(第1及び第2の開閉手段)
94 排気ガスセンサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気又は外気が冷凍サイクルを形成する蒸発器及び加熱手段を通過して生成される空調風を、デフロスタ吹出し口、レジスタ吹出し口ないし足元吹出し口から吹出して車室内を空調する車両用空調装置であって、
内気又は外気が、前記蒸発器及び前記加熱手段を経て前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口へ案内可能とされる第1の空気通路と、
前記第1の空気通路と区画されて形成され、内気又は外気が、前記蒸発器及び前記加熱手段を経て前記足元吹出し口へ案内可能とされる第2の空気通路と、
前記第1及び第2の通気通路のそれぞれに内気が導入された状態から、該内気導入が解除されるときに、前記第1の空気通路に内気を導入して前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口から吹出し、前記第2の空気通路に外気を導入して前記足元吹出し口から吹き出す解除制限手段と、
を含む車両用空調装置。
【請求項2】
車外の空気の汚れを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記第1の空気通路及び前記第2の空気通路に前記内気を導入すると共に、前記検出手段の検出結果に基づいて前記内気の導入を解除する導入制限手段と、
を含み、前記解除制限手段が、前記導入制限手段による前記内気導入が解除されるときに、前記第1の空気通路に内気を導入し、前記第2の空気通路に外気を導入する、
請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記解除制限手段が、
外気温を検出する外気温検出手段と、
前記外気温検出手段によって検出される外気温が、予め設定された温度範囲であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記外気温が前記予め設定された温度範囲であると判定されたときに、前記第1の空気通路に内気が導入されると共に前記第2の空気通路に外気が導入されるように制御する解除制限制御手段と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記温度範囲が、前記蒸発器を前記外気が通過したときに該蒸発器に乾きが生じると設定された外気温の範囲である、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記解除制限手段が、
車外ないし前記車室内の環境条件を検出する環境条件検出手段と、
前記環境条件検出手段によって検出された環境条件が、前記蒸発器を通過する前記外気によって該蒸発器に乾きが生じると設定された環境条件であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記予め設定された環境条件が満たされていると判定されたときに、前記第1の空気通路に内気が導入されると共に前記第2の空気通路に外気が導入されるように制御する解除制限制御手段と、
を含む請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記第1の空気通路に前記外気を導入する第1の外気導入口と、前記第1の空気通路に前記内気を導入する第1の内気導入口と、を選択的に開閉する第1の開閉手段と、
前記第2の空気通路に前記外気を導入する第2の外気導入口と、前記第2の空気通路に前記内気を導入する第1の内気導入口と、を選択的に開閉する第2の開閉手段と、
を含み、前記解除制限制御手段が、前記第1の開閉手段によって前記第1の外気導入口を閉止し、前記第2の開閉手段によって前記第2の内気導入口を閉止する、
請求項3から請求項5の何れか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記第1の空気通路及び前記第2の空気通路を通過した外気及び内気のそれぞれを、前記デフロスタ吹出し口、前記レジスタ吹出し口及び前記足元吹出し口に選択的に案内する切換手段を含み、
前記解除制限制御手段が、前記第1の空気通路を前記デフロスタ吹出し口ないし前記レジスタ吹出し口に連通し、前記第2の空気通路を前記足元吹出し口に連通するように切換える、
請求項3から請求項6の何れか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264826(P2010−264826A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116593(P2009−116593)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】