説明

車両用空調装置

【課題】異なる温度帯の熱媒体を加熱源として送風空気を加熱する複数の加熱用熱交換器を備える車両用空調装置において、送風機の送風能力を適切に制御する。
【解決手段】第1ヒータコア31へ流入する比較的低温のエンジン10の冷却水の上昇に伴って、送風機34へ出力される第1制御電圧Bv1を増加させるように決定し、第2ヒータコア31へ流入する比較的高温のエンジン10の冷却水の上昇に伴って、送風機34へ出力される第2制御電圧Bv1を増加させるように決定する。さらに、第1、第2制御電圧Bv1、Bv2を、第1、2ヒータコア31、32へ流入する冷却水の第1、第2流量V1、V2に基づいて重み付け平均し、実際に送風機34へ出力される制御電圧Bvの上限値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器の発生する熱によって加熱された熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱用熱交換器を備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)の冷却水(熱媒体)を熱源として、送風機から車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱用熱交換器(ヒータコア)を備える車両用空調装置が知られている。
【0003】
この種の車両用空調装置では、一般的に、送風空気を加熱して車室内の暖房を行う際に、車室内へ吹き出される送風空気の目標吹出温度の上昇に伴って、送風機の送風能力(送風量)を増加させるようにして、車室内温度を乗員の所望の温度まで速やかに上昇させるようにしている。
【0004】
ところが、エンジンの起動直後のように、エンジンの冷却水が充分に昇温していないときに送風機の送風能力を増加させても、送風空気を充分に加熱することができず、車室内の適切な暖房を実現することができない。さらに、充分に加熱されていない低温の送風空気が車室内へ吹き出されることで、却って乗員の暖房フィーリングを悪化させてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1の車両用空調装置では、ヒータコアに流入する冷却水の温度低下に伴って送風機の送風能力の上限値を低下させる、いわゆるウォームアップ制御を行っている。これにより、ヒータコアに流入する冷却水の温度が低い時には、送風機の送風能力を低下させて、乗員の暖房フィーリングの悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230321号公報
【発明の概要】
【0007】
ところで、近年、地球環境保護を目的として、高効率のエンジンを搭載する車両や、車両走行時にエンジンを停止させて走行用電動モータから出力される駆動力によって走行する、いわゆるハイブリッド車両の普及が進んでいる。この種の車両では、走行状態によって、エンジンの廃熱が減少することがあり、冷却水の温度を充分に昇温させることができなくなってしまうことがある。
【0008】
その結果、ヒータコアにて送風空気を充分に加熱することができなくなり、車室内の適切な暖房を実現することができなくなってしまう。これに対して、例えば、ハイブリッド車両では、走行用の駆動力を出力させる必要がない走行状態であっても、車室内の暖房時にはエンジンを作動させて冷却水を昇温させる手段が考えられる。しかしながら、このようなエンジンの作動は車両燃費を悪化させる原因となる。
【0009】
そこで、本発明者らは、先に特願2009−268351号(以下、先願例と言う。)にて、エンジンの廃熱が少なくなっても、これを有効に活用して、車両燃費を悪化させることなく、車室内の適切な暖房を実現可能とした車両用空調装置を提案している。
【0010】
この先願例の車両用空調装置では、エンジンのうちシリンダブロック側から流出する冷却水の温度が、シリンダヘッド側から流出する冷却水の温度よりも高くなること等に着眼し、異なる温度帯の冷却水を、異なる2つのヒータコアへ流入させている。より詳細には、シリンダヘッド側から流出した冷却水を第1ヒータコアへ流入させ、シリンダブロック側から流出した冷却水を第2ヒータコアへ流入させ、さらに、第1ヒータコアを第2ヒータコアよりも送風空気流れ上流側に配置している。
【0011】
これにより、先願例の車両用空調装置では、第1、第2ヒータコア内を流通する冷却水と送風空気との温度差を確保して、効率的に送風空気を加熱している。その結果、エンジンの廃熱が少なくなっても、異なる温度帯の冷却水のそれぞれが有する熱を有効に利用して送風空気を充分に加熱し、車室内の適切な暖房を実現可能としている。
【0012】
しかしながら、この先願例の車両用空調装置に対して、特許文献1に開示されたウォームアップ制御を適用しても、送風機の送風能力を適切に制御することは難しい。その理由は、先願例の車両用空調装置では、流量および温度帯の異なる冷却水を、異なる2つのヒータコアへ流入させているからである。
【0013】
つまり、第1ヒータコアへ流入する比較的温度の低い冷却水に基づいて送風機の送風能力を制御すれば、2つのヒータコアで送風空気を充分に昇温させることができる場合であっても、送風量を増加させることができない。一方、第2ヒータコアへ流入する比較的温度の高い冷却水に基づいて送風機の送風能力を制御すれば、2つのヒータコアで送風空気を充分に昇温させることができない場合にも、送風量を増加させてしまう。
【0014】
本発明は上記点に鑑みて、それぞれ異なる温度帯の熱媒体を加熱源として送風空気を加熱する複数の加熱用熱交換器を備える車両用空調装置において、送風機の送風能力を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ空気を送風する送風機(34)と、車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第1熱媒体を熱源として送風機(34)から送風された送風空気を加熱する第1加熱用熱交換器(31)と、車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第2熱媒体を熱源として第1加熱用熱交換器(31)通過後の送風空気を加熱する第2加熱用熱交換器(32)とを備え、
第1加熱用熱交換器(31)へ流入する第1熱媒体の第1熱媒体温度(Tw1)は、第2加熱用熱交換器(32)へ流入する第2熱媒体の第2熱媒体温度(Tw2)以下であり、第1加熱用熱交換器(31)へ流入する第1熱媒体の第1流量(V1)、および、第2加熱用熱交換器(32)へ流入する第2熱媒体の第2流量(V2)は異なっており、
さらに、第1加熱用熱交換器(31)における送風空気の第1加熱能力および第2加熱用熱交換器(32)における送風空気の第2加熱能力の双方に基づいて、送風機(34)の作動を制御する送風機制御手段(40a)を備える車両用空調装置を特徴とする。
【0016】
これによれば、第1加熱用熱交換器(31)における送風空気の第1加熱能力および第2加熱用熱交換器(32)における送風空気の第2加熱能力の双方に基づいて、送風機(34)の作動を制御するので、いずれか一方の加熱能力に基づいて制御する場合に対して、送風機(34)の送風能力を適切に制御することができる。
【0017】
さらに、第1加熱用熱交換器(31)および第2加熱用熱交換器(32)の双方で加熱された送風空気の温度の低下に伴って、送風機(34)の送風能力を低下させることで、上述したウォーミングアップ制御を実現することができ、乗員の暖房フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0018】
なお、請求項に記載された第1熱媒体を加熱する車載機器および第2熱媒体を加熱する車載機器は、同一のものであってもよいし、別のものであってもよい。また、熱交換器の加熱能力は、所定の風量の送風空気が熱交換器を通過することによって温度上昇する温度上昇量等によって定義できる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、送風機制御手段(40a)は、第1熱媒体温度(Tw1)の上昇に伴って送風機(34)の送風能力を増加させるように決定する第1送風能力決定手段(S42)、および、第2熱媒体温度(Tw2)の上昇に伴って送風機(34)の送風能力を増加させるように決定する第2送風能力決定手段(S43)を有し、第1送風能力決定手段(S42)によって決定される第1送風能力をBv1とし、第2送風能力決定手段(S43)によって決定される第2送風能力をBv2とし、実際の送風機(34)の送風能力をBva2としたときに、
送風機制御手段(40a)は、
Bva2=a×Bv1+b×Bv2(但し、a+b=1)
となるように、送風機(34)の送風能力を制御することを特徴とする。
【0020】
これによれば、具体的に、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2熱媒体温度(Tw1、Tw2)に基づいて第1、第2送風能力(Bv1、Bv2)を決定することができる。
【0021】
さらに、実際の送風機(34)の送風能力(Bv)を第1、第2送風能力(Bv1、Bv2)の平均(a=bの場合)あるいは重み付け平均(a≠b)によって求めるので、第1、第2加熱能力の影響を適切に反映させて、ウォーミングアップ制御時の送風機(34)の送風能力を適切に制御することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、第1熱媒体温度をTw1とし、第2熱媒体温度をTw2とし、平均熱媒体温度をTwaとしたときに、送風機制御手段(40a)は、
Twa=a×Tw1+b×Tw2(但し、a+b=1)
となるように求められた平均熱媒体温度(Twa)の上昇に伴って、送風機(34)の送風能力を増加させることを特徴とする。
【0023】
これによれば、具体的に、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2熱媒体温度(Tw1、Tw2)に基づいて平均熱媒体温度(Twa)を決定することができる。
【0024】
さらに、平均熱媒体温度(Twa)を第1、第2熱媒体温度(Tw1、Tw2)の平均(a=bの場合)あるいは重み付け平均(a≠b)によって求めるので、第1、第2加熱能力の影響を適切に反映させて、ウォーミングアップ制御時の送風機(34)の送風能力を適切に制御することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明のように、請求項2または3に記載の車両用空調装置において、第1流量をV1とし、第2流量をV2としたときに、
a=V1/(V1+V2)
b=V2/(V1+V2)
であってもよい。
【0026】
これによれば、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2流量(V1、V2)の影響も反映させて、より一層、適切に送風機(34)の送風能力を制御することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明のように、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、第1加熱用熱交換器(31)へ流入する第1熱媒体の第1流量(V1)は、第2加熱用熱交換器(32)へ流入する第2熱媒体の第2流量(V2)よりも多くなっており、
a>b
となっていてもよい。
【0028】
これによれば、第1熱媒体温度(Tw1)が第2熱媒体温度(Tw2)以下であっても、第1流量(V1)が第2流量(V2)よりも多くなり、第1加熱能力が第2加熱能力よりも高くなっている場合に、第2熱媒体温度(Tw2)よりも第1熱媒体温度(Tw1)の重み付けを重くすることができ、より一層、適切に送風機(34)の送風能力を制御することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、送風機制御手段(40a)は、少なくとも第1熱媒体温度(Tw1)の上昇に伴って、第1加熱用熱交換器(31)にて加熱された送風空気の第1加熱後温度(Ta1_out)を上昇させるように推定し、さらに、第2熱媒体温度(Tw2)から第1加熱後温度(Ta1_out)を減算した値から求められる第2加熱能力(Qw2)の上昇に伴って、送風機(34)の送風能力を増加させることを特徴とする。
【0030】
これによれば、具体的に、第1加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1熱媒体温度(Tw1)から第1加熱後温度(Ta1_out)を推定し、第1加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第2熱媒体温度(Tw2)と第1加熱後温度(Ta1_out)との温度差から第2加熱能力(Qw2)をより正確に求めることができる。従って、ウォーミングアップ制御時の送風機(34)の送風能力を適切に制御することができる。
【0031】
また、請求項7に記載の発明では、車室内へ空気を送風する送風機(34)と、車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第1熱媒体を熱源として送風機(34)から送風された送風空気を加熱する第1加熱用熱交換器(31)と、車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第2熱媒体を熱源として第1加熱用熱交換器(31)通過後の送風空気を加熱する第2加熱用熱交換器(32)と、送風機(34)の作動を制御する送風機制御手段(40a)と、第2加熱用熱交換器(32)通過後の送風空気の目標温度(TAO)を決定する目標温度決定手段(S3)を備え、
第1加熱用熱交換器(31)へ流入する第1熱媒体の第1熱媒体温度(Tw1)は、第2加熱用熱交換器(32)へ流入する第2熱媒体の第2熱媒体温度(Tw2)以下であり、第1加熱用熱交換器(31)へ流入する第1熱媒体の第1流量(V1)は、第2加熱用熱交換器(32)へ流入する第2熱媒体の第2流量(V2)よりも多くなっており、
送風機制御手段(40a)は、第2加熱用熱交換器(32)通過後の送風空気が目標温度(TAO)に近づくように、送風機(34)の作動を制御する車両用空調装置を特徴とする。
【0032】
これによれば、第2加熱用熱交換器(32)通過後の送風空気が目標温度(TAO)に近づくように、送風機制御手段(40a)が送風機(34)の作動を制御するので、充分に加熱されていない低温の送風空気が車室内へ吹き出されないように、送風機(34)の送風能力を適切に制御することができる。
【0033】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態に車両用空調装置の制御フローを示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に車両用空調装置の制御フローの要部を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に車両用空調装置の制御フローの要部を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態に車両用空調装置の制御フローの要部を示すフローチャートである。
【図6】第4実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
図1〜3により、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。本実施形態では、車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)10および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。
【0036】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させて、エンジン10および走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態(HV走行)や、エンジン10を停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態(EV走行)等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動源としてエンジンのみを有する車両に対して燃費を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、エンジン10として、後述するエンジン制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御されるガソリンエンジンを採用している。エンジン10は作動時に発熱を伴う車載機器なので、本実施形態の車両用空調装置1では、エンジン10の廃熱を利用して、車室内へ送風される送風空気を加熱している。
【0038】
具体的には、エンジン10の冷却水を循環させる冷却水循環回路20に、送風空気を加熱する加熱用熱交換器(後述する、第1、第2ヒータコア31、32)を配置して、熱媒体としての冷却水を熱源として送風空気を加熱している。ここで、冷却水循環回路20について説明する。
【0039】
まず、エンジン10は、シリンダヘッド11およびシリンダブロック12を有している。そして、シリンダヘッド11およびシリンダブロック12を一体に組み付けることによって、エンジン10の内部に、シリンダヘッド11を冷却するための冷却水を流通させるシリンダヘッド側流路11aおよびシリンダブロック12を冷却するための冷却水を流通させるシリンダブロック側流路12aが形成される。
【0040】
シリンダブロック12は、ピストンが往復運動するシリンダボアを形成するとともに、車両搭載状態におけるシリンダボアの下方側に、クランクシャフトおよびピストンとクランクシャフトを連結するコンロッド等を収容するクランクケースが設けられた金属ブロック体である。シリンダヘッド11は、シリンダボアの上死点側の開口部を閉塞して、シリンダボアおよびピストンとともに燃焼室を形成する金属ブロック体である。
【0041】
シリンダヘッド側流路11aの入口側およびシリンダブロック側流路12aの入口側は、エンジン10の内部に配置された分流部10dにて接続されており、分流部10dは、エンジン10の外部から冷却水を流入させる流入ポート10aに連通している。さらに、流入ポート10aには、冷却水を圧送する冷却水ポンプ21の冷却水吐出口が接続されている。
【0042】
冷却水ポンプ21は、ポンプ室を形成するケーシング内に配置された羽根車を電動モータで駆動する電動式の水ポンプである。なお、この電動モータは、エンジン制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水圧送能力)が制御される。また、本実施形態では、冷却水として、エチレングリコール水溶液を採用している。
【0043】
一方、シリンダヘッド側流路11aの出口側およびシリンダブロック側流路12aの出口側は、それぞれエンジン10から冷却水を流出させる第1、第2流出ポート10b、10cに連通している。
【0044】
第1流出ポート10bには、第1流出ポート10bから流出した冷却水の流れを分岐する第1分岐部22aが接続されている。第1分岐部22aは、3つの冷却水出入口を有する三方継手構造のものである。このような第1分岐部22aは、配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷却水通路を設けて構成してもよい。
【0045】
第1分岐部22aの一方の冷却水出口には、第1ヒータコア31が接続されている。第1ヒータコア31は、その内部を流通する冷却水と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する第1加熱用熱交換器である。この第1ヒータコア31は、後述する室内空調ユニット30のケーシング33内に配置されている。
【0046】
第2流出ポート10cには、第2流出ポート10cから流出した冷却水の流れを分岐する第2分岐部22bが接続されている。第2分岐部22bの基本的構成は、第1分岐部22aと同様である。さらに、第2分岐部22bの一方の冷却水出口には、第2ヒータコア32が接続されている。
【0047】
第2ヒータコア32は、内部を流通する冷却水と第1ヒータコア31通過後の送風空気とを熱交換させて、送風空気をさらに加熱する第2加熱用熱交換器である。第2ヒータコア32の基本的構成は、第1ヒータコア31と同様であり、第2ヒータコア32も室内空調ユニット30のケーシング33内に配置されている。さらに、第1、第2ヒータコア31、32の冷却水出口側は、冷却水ポンプ21の吸入側に接続されている。
【0048】
ここで、本実施形態のエンジン10では、エンジンオイルの粘度増加によるフリクションロスの発生や、エンジン10の排気経路に配置されて排ガスを浄化する図示しない排ガス浄化用触媒の作動不良を抑制するために、エンジン10自体の温度を予め定めた温度範囲内に維持するようにしている。さらに、耐ノッキング性を向上させるために、シリンダヘッド11側の温度を、シリンダブロック12側の温度よりも低く保つようにしている。
【0049】
具体的には、シリンダヘッド側流路11aから流出し、第1流出ポート10bおよび第1分岐部22aを介して、第1ヒータコア31へ流入する冷却水の温度Tw1を、40℃〜45℃程度とし、シリンダブロック側流路12aから流出し、第2流出ポート10cおよび第2分岐部22bを介して、第2ヒータコア32へ流入する冷却水の温度Tw2を、80℃〜90℃程度としている。
【0050】
さらに、本実施形態では、第1ヒータコア31へ流入する冷却水の温度Tw1および第2ヒータコア32へ流入する冷却水の温度Tw2を上述した温度帯とするために、シリンダヘッド側流路11aを流通する冷却水流量が、シリンダブロック側流路12aを流通する冷却水流量よりも多くなるようにしている。
【0051】
このような流量調整は、分流部10d、シリンダヘッド側流路11a、シリンダブロック側流路12a、および、第1、第2分岐部22a、22bに形成される冷却水流路の流路断面積(圧力損失特性)等を調整することによって行うことができる。もちろん、分流部10dから第1分岐部22aへ至る冷却水流路や、分流部10dから第2分岐部22bへ至る冷却水流路等に流量調整弁を配置して、流量調整を行ってもよい。
【0052】
なお、以下の説明では、それぞれの第1、第2ヒータコア31、32へ流入する冷却水の相違を明確化するために、第1ヒータコア31へ流入する冷却水を第1熱媒体と記載し、第1熱媒体の温度を第1熱媒体温度Tw1と記載し、さらに、第1熱媒体の流量を第1流量V1と記載する。
【0053】
一方、第2ヒータコア32へ流入する冷却水を第2熱媒体と記載し、第2熱媒体の温度を第2熱媒体温度Tw2と記載し、さらに、第2熱媒体の流量を第2流量V2と記載する。なお、本実施形態では、シリンダヘッド側流路11aの冷却水流量がシリンダブロック側流路12aの冷却水流量よりも多くなるだけでなく、第1流量V1についても第2流量V2よりも多くなるようにしている。
【0054】
第1分岐部22aの他方の冷却水出口から流出した冷却水および第2文意部22bの他方の冷却水出口から流出した冷却水は、合流部23にて合流し、ラジエータ24およびバイパス通路25側へ流出する。合流部23の基本的構成は、第1、第2分岐部22a、22bと同様であり、3つの冷却水出入口のうち2つを冷却水入口とし、別の1つを冷却水出口としたものである。
【0055】
ラジエータ24は、合流部23にて合流した冷却水と外気とを熱交換させて、冷却水の有する熱量を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。ラジエータ24の冷却水出口側は、冷却水ポンプ21の吸入側に接続されている。バイパス通路25は、合流部23にて合流した冷却水を、ラジエータ24を迂回させて冷却水ポンプ21の吸入側へ導く冷却水通路である。
【0056】
バイパス通路25の出口側には、バイパス通路25を流通する冷却水の流量を調整するサーモスタット26が配置されている。サーモスタット26は、温度によって体積変化するサーモワックス(感温部材)によって弁体を変位させて冷却水通路を開閉する機械的機構で構成される冷却水温度応動弁である。
【0057】
より具体的には、このサーモスタット26は、冷却水ポンプ21吸入側の冷却水温度が予め定めた基準吸入側温度(本実施形態では、65℃)以下になると、ラジエータ24出口側と冷却水ポンプ21吸入側とを接続する冷却水通路を閉塞し、バイパス通路25出口側と冷却水ポンプ21吸入側とを接続する冷却水通路を全開状態とする。
【0058】
さらに、冷却水ポンプ21吸入側の冷却水温度が基準吸入側温度より高くなるに伴って、ラジエータ24出口側と冷却水ポンプ21吸入側とを接続する冷却水通路の開度を増加させ、バイパス通路25出口側と冷却水ポンプ21吸入側とを接続する冷却水通路の開度を縮小させる。
【0059】
これにより、冷却水ポンプ21吸入側の冷却水温度が基準吸入側温度に近づくようにバイパス流量が調整される。従って、冷却水がラジエータ24にて過度に冷却されて、冷却水温度が送風空気を加熱するために必要な温度以下に冷却されてしまうことや、エンジン10自体の温度が低下して、エンジンオイルの粘度増加によるフリクションロスが発生してしまうこと等を抑制できる。
【0060】
本実施形態の冷却水循環回路20は、上記の如く構成されているので、エンジン10の通常作動時には、図1の実線矢印に示すように冷却水が流れる。なお、図1では、ラジエータ24へ冷却水が流入する矢印を図示しているが、前述の如く、ラジエータ24には、冷却水が流入しないこともある。
【0061】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング33内に、送風機34、蒸発器35および前述の第1、第2ヒータコア31、32等を収容して構成されたものである。
【0062】
ケーシング33は、その内部に車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0063】
ケーシング33の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置36が配置されている。この内外気切替装置36は、ケーシング33内へ導入される車室内空気(内気)と車室外空気(外気)との導入比率を変更するもので、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0064】
内外気切替装置36の空気流れ下流側には、内外気切替装置36を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機34が配置されている。この送風機34は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御電圧(ブロワモータ電圧)Bvによって回転数(送風能力)が制御される。
【0065】
送風機34の空気流れ下流側には、蒸発器35が配置されている。蒸発器35は、周知の蒸気圧縮式の冷凍サイクル(図示せず)を構成する構成機器の1つであり、冷凍サイクル内の低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって、送風機34から送風された送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0066】
蒸発器35の空気流れ下流側には、第1、第2ヒータコア31、32が送風空気の流れ方向に対してこの順で配置されている。換言すると、第1ヒータコア31は、第2ヒータコア32に対して送風空気流れの上流側に配置されている。また、蒸発器35の空気流れ下流側には、蒸発器35にて冷却された送風空気(冷風)を、第1、第2ヒータコア31、32を迂回させて流す冷風パイパス通路37が形成されている。
【0067】
さらに、蒸発器35の空気流れ下流側であって、かつ、第1ヒータコア31の空気流れ上流側には、蒸発器35通過後の送風空気のうち、第1、第2ヒータコア31、32を通過させる送風空気の風量と冷風パイパス通路37を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整するエアミックスドア38が配置されている。
【0068】
また、第2ヒータコア32および冷風バイパス通路37の空気流れ下流側には、第1、第2ヒータコア31、32にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気(温風)と第1、第2ヒータコア31、32を迂回して加熱されていない送風空気(冷風)とを混合させる図示しない混合空間が設けられている。
【0069】
ケーシング33の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0070】
従って、エアミックスドア38が風量割合を調整することによって、混合空間にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア38は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア38は、空調制御装置40から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0071】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、および、デフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0072】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、空調制御装置40から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0073】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード等がある。
【0074】
次に、空調制御装置40およびエンジン制御装置50について説明する。空調制御装置40およびエンジン制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。そして、このROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、それぞれ出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
【0075】
具体的には、空調制御装置40の出力側には、前述の内外気切替装置36、送風機34、エアミックスドア38用のサーボモータ、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する各種構成機器(例えば、圧縮機)等が接続されている。一方、空調制御装置40の入力側には、車室内温度Trを検出する内気温センサ、外気温Tamを検出する外気温センサ43、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ、蒸発器35からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度)Teを検出する蒸発器温度センサ等の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0076】
さらに、空調制御装置40の入力側には、車室内に配置された操作パネルが接続されている。この操作パネルには、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、送風機34の風量をマニュアル設定する風量スイッチ、吹出口モードをマニュアル設定する吹出口モードスイッチ等が設けられている。
【0077】
また、空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。本実施形態では、特に空調制御装置40のうち、送風機34の送風能力を制御するために送風機34の電動モータの作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が送風機制御手段40aを構成する。
【0078】
エンジン制御装置50の出力側には、上述した冷却水ポンプ21の他に、エンジン10を構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジン10に燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路等が接続されている。
【0079】
一方、エンジン制御装置50の入力側には、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ、バッテリの電圧VBを検出する電圧計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、第1熱媒体温度Tw1を検出するヘッド側冷却水温度検出手段としてのヘッド側サーミスタ41、第2熱媒体温度Tw2を検出するブロック側冷却水温度検出手段としてのブロック側サーミスタ42等のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0080】
なお、図1では、ヘッド側サーミスタ41を室内空調ユニット30のケーシング31の外部に配置した例を図示しているが、ヘッド側サーミスタ41は、第1分岐部22aから第1ヒータコア31へ至る冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出できれば、例えば、第1分岐部22aあるいは第1ヒータコア31に取り付けられていてもよい。
【0081】
もちろん、ブロック側サーミスタ42についても同様に、第2分岐部22bから第2ヒータコア32へ至る冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出できれば、第2分岐部22bあるいは第2ヒータコア32に取り付けられていてもよい。
【0082】
また、エンジン制御装置50は、その出力側に接続された各種エンジン構成機器を制御する制御手段が一体に構成されたものである。例えば、エンジン制御装置50のうち、冷却水ポンプ21の冷却水圧送能力を制御するために電動モータの作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が冷却水圧送能力制御手段を構成する。
【0083】
さらに、本実施形態の空調制御装置40およびエンジン制御装置50は、互いに電気的に接続されて、通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御することもできる。従って、空調制御装置40およびエンジン制御装置50を1つの制御装置として一体的に構成してもよい。
【0084】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。まず、エンジン10の作動について説明する。車両スタートスイッチが投入されて車両が起動すると、エンジン制御装置50が、予め定めた所定の冷却水圧送能力となるように冷却水ポンプ21を作動させるとともに、所定の制御周期毎に入力側に接続された各種エンジン制御用のセンサ群の検出信号を読み込み、読み込まれた検出値に基づいて車両の走行負荷を検出する。
【0085】
さらに、検出された走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させる。これにより、ハイブリッド車両では、上述したHV走行やEV走行が切り替えられる。その結果、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動源としてエンジンのみを有する通常の車両に対して燃費を向上させることができる。
【0086】
また、エンジン制御装置50が、冷却水ポンプ21を作動させることによって、冷却水がエンジン10内を流通し、エンジン10の廃熱を吸熱してエンジン10を冷却するとともに、吸熱した廃熱をラジエータ24にて大気に放熱する。この際、サーモスタット26の機能により、冷却水の温度が上昇すると冷却水は主にラジエータ24側へ流れ、冷却水の温度が低下すると冷却水は主にバイパス通路25側へ流れる。
【0087】
冷却水がバイパス通路25側を流通する際には、ラジエータ24における冷却水の放熱は殆ど行われない。その結果、エンジン10が作動している際には、エンジン10自体の温度が予め定めた温度範囲内に維持され、上述したフリクションロスの発生あるいは排ガス浄化用触媒の作動不良等が抑制される。
【0088】
ところで、本実施形態のハイブリッド車両では、EV走行時にエンジン10が停止してしまうと、冷却水の温度を上昇させることができない。そこで、エンジン制御装置50では、エンジン10自体の温度が予め定めた基準暖機温度T1(本実施形態では、30℃)以下になると、走行状態とは無関係にエンジン10を作動させて冷却水の温度を上昇させる暖機制御を行う。
【0089】
なお、この場合のエンジン10自体の温度としては、シリンダヘッド側流路11aから流出する冷却水温度に対して高温となるシリンダブロック側流路12aの冷却水温度、あるいは、上述した第2熱媒体温度Tw2を採用すればよい。もちろん、エンジン10自体の温度を検出する温度検出手段を設け、この温度検出手段の検出値を採用してもよい。
【0090】
次に、図2、図3を用いて、車両用空調装置1の作動について説明する。図2、図3は、空調制御装置40が実行する制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両スタートスイッチが導入された状態で、操作パネルの車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されると開始される。なお、図2、図3の示すフローチャートの各制御ステップは、それぞれ空調制御装置40が有する機能実現手段を構成している。
【0091】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ、制御変数等のイニシャライズ(初期化)が行われる。そして、次のステップS2にて、空調制御用のセンサ群43の検出信号、エンジン制御装置50からの制御信号、および、操作パネルの操作信号を読み込んで、ステップS3へ進む。
【0092】
ステップS3では、ステップS2にて読み込まれた検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す送風空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。従って、この制御ステップS3は、特許請求の範囲に記載された目標温度決定手段を構成している。
【0093】
具体的には、この目標吹出温度TAOは、以下数式1によって算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温センサによって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサによって検出された外気温、Tsは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0094】
続くステップS4では、ステップS3にて算出された目標吹出温度TAOおよびステップS2にて読み込んだ検出信号、制御信号および操作信号に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各種制御対象機器の制御状態を決定する。
【0095】
例えば、エアミックスドア38用のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAO、蒸発器35からの吹出空気温度Teの検出値および第2熱媒体温度Tw2の検出値を用いて、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
【0096】
より具体的には、目標吹出温度TAOと吹出空気温度Teとの差の拡大および第2熱媒体温度Tw2と吹出空気温度Teとの差の縮小に伴って、エアミックスドア38の開度を冷風バイパス通路37側の通風面積を縮小させるとともに、第1、第2ヒータコア31、32側の通風面積を拡大するように決定する。
【0097】
そのため、エアミックスドア38は、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)では、冷風バイパス通路37側を全開とし、第1、第2ヒータコア31、32側を全閉とする最大冷房位置に変位し、目標吹出温度TAOの極高温域(最大暖房域)では、冷風バイパス通路37側を全閉とし、第1、第2ヒータコア31、32側を全開とする最大暖房位置に変位する。
【0098】
また、吹出口モード切替手段用のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、吹出口モードがフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替えられるように決定される。従って、目標吹出温度TAOが低温となる夏場にはフェイスモードが選択されやすく、目標吹出温度TAOが高温となる冬場にはフットモードが選択されやすい。
【0099】
また、送風機34の電動モータに出力する制御電圧Bv、すなわち送風機35の送風能力については、図3のフローチャートに示すように決定される。なお、図3は、制御ステップS4のサブルーチンとして実行される制御処理である。
【0100】
まず、ステップS41では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、送風機34の電動モータに出力する第1仮制御電圧Bva1を決定して、ステップS42へ進む。
【0101】
具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で第1仮制御電圧Bva1を高電圧にして、送風機34の送風量が最大風量に近づくように制御する。さらに、目標吹出温度TAOが極低温域あるいは極高温域から中間温度域に向かうに伴って、第1仮制御電圧Bva1を減少させて送風量を減少させるように制御する。
【0102】
ここで、エンジン10の起動直後のように、エンジン10の冷却水が充分に昇温していないときに送風機34の送風能力を増加させても、送風空気を充分に加熱することができない。さらに、車室内へ外気温よりも高い温度に加熱された送風空気を吹き出す暖房時に、充分に加熱されていない低温の送風空気が車室内へ吹き出されてしまうと、却って乗員の暖房フィーリングを悪化させてしまう。
【0103】
そこで、本実施形態の制御ステップS42〜S44では、第1ヒータコア31における送風空気の加熱能力(第1加熱能力)および第2ヒータコア32における送風空気の加熱能力(第2加熱能力)の双方に基づいて、送風機34の送風能力の上限値となる第2仮制御電圧Bva2を決定している。
【0104】
まず、ステップS42では、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、第1熱媒体温度Tw1の上昇に伴って送風機34の第1制御電圧Bv1を決定する。すなわち、第1熱媒体温度Tw1の上昇に伴って送風機34の送風能力を増加させるように決定する。
【0105】
続く、ステップS43では、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、第2熱媒体温度Tw2の上昇に伴って送風機34の第2制御電圧Bv2を決定する。すなわち、第2熱媒体温度Tw2の上昇に伴って送風機34の送風能力を増加させるように決定する。
【0106】
つまり、ステップS42およびS42にでは、それぞれ第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2に基づいて第1、第2制御電圧Bv1、Bv2を決定している。従って、本実施形態の制御ステップS42およびS43は、それぞれ特許請求の範囲に記載された第1、第2送風能力決定手段を構成している。
【0107】
なお、図3では、ステップS42およびS43にて、同様の制御マップの説明図を記載しているが、これらの制御マップは、それぞれ第1、第2ヒータコア31、32のみの送風空気の加熱能力を実験的に検証し、その検証結果に基づいて決定されている。従って、ステップS42およびS43に記載された制御マップの説明図(グラフ)における縦軸および横軸の値は、互いに異なる値となる。
【0108】
また、ステップS42およびS43で決定される第1、第2制御電圧Bv1、Bv2は、第1熱媒体温度Tw1が40℃〜45℃程度となり、第2熱媒体温度Tw2が80℃〜90℃程度となっている通常作動時には、いずれもステップS41で決定される第1仮制御電圧Bva1よりも高い値となる。
【0109】
次に、制御ステップS44では、以下数式F2〜F4により、第2仮制御電圧Bva2を算出してステップS45へ進む。
Bva2=a×Bv1+b×Bv2…(F2)
a=V1/(V1+V2)…(F3)
b=V2/(V1+V2)…(F4)
なお、前述の如く、V1は第1ヒータコア31へ流入する冷却水である第1熱媒体の流量であり、V2は第2ヒータコア32へ流入する冷却水である第2熱媒体の流量である。また、上記数式F2〜F4から明らかなように、第2仮制御電圧Bva2は、第1、第2制御電圧Bv1、Bv2の平均(a=bの場合)あるいは重み付け平均(a≠b)によって求められることになる。
【0110】
ステップS45では、ステップS41にて決定された第1仮制御電圧Bva1と第2仮制御電圧Bva2のうち小さい方の値を、実際に送風機34へ出力される制御電圧Bvに決定して、メインルーチンへ戻る
次に、図2のステップS5では、ステップ4にて決定された制御状態が得られるように、空調制御装置40から出力側に接続された各種制御対象機器に対して、制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0111】
従って、本実施形態の車両用空調装置1では、送風機34から送風された送風空気が蒸発器35にて冷却される。そして、蒸発器35にて冷却された冷風は、エアミックスドア38の開度に応じて、第1ヒータコア31および冷風バイパス通路37へ流入する。
【0112】
第1ヒータコア31へ流入した送風空気は、第1ヒータコア31→第2ヒータコア32の順に通過する際に加熱されて、混合空間にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間にて温度調整された冷風が、各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の空調が実現される。
【0113】
この際、第1熱媒体温度Tw1が40℃〜45℃程度となり、第2熱媒体温度Tw2が80℃〜90℃程度となっている通常作動時には、第1仮制御電圧Bva1が、第1、第2制御電圧Bv1、Bv2の平均あるいは重み付け平均によって求められる第2仮制御電圧Bvaよりも小さい値になる。
【0114】
従って、制御ステップS45では、実際に送風機34へ出力される制御電圧Bvを第1仮制御電圧Bva1に決定し、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で、送風機34の送風量を増加させることができる。その結果、目標吹出温度TAOの極低温域では即効冷房を実現でき、目標吹出温度TAOの極高温域では即効暖房を実現できる。
【0115】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、第1、第2ヒータコア31、32の2つの加熱用熱交換器を有し、空気流れ上流側に配置される第1ヒータコア31へ流入する冷却水温度(第1熱媒体温度)Tw1を、空気流れ下流側に配置される第2ヒータコア32へ流入する冷却水温度(第2熱媒体温度)Tw2よりも低くしている。
【0116】
これにより、双方のヒータコア31、32における冷却水と送風空気との温度差を確保して送風空気を効率的に加熱することができる。このことは、本実施形態のハイブリッド車両のように、走行中にエンジン10が停止して冷却水の温度を昇温させることのできない車両において、暖房時に車室内へ送風される送風空気を充分に加熱できる点で、極めて有効である。
【0117】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS42〜S45にて説明したように、暖房時に充分に加熱されていない低温の送風空気が車室内へ吹き出されてしまうことを抑制するために、送風機34の送風能力の上限値となる第2仮制御電圧Bva2を決定する制御(従来技術のウォームアップ制御に対応する制御)を行うことができる。
【0118】
この際、上記数式F2〜F4に示すように、第1、第2ヒータコア31、32の第1、第2加熱能力の双方に基づいて、第2仮制御電圧Bva2を決定しているので、第1熱媒体温度Tw1あるいは第2熱媒体温度Tw2のいずれか一方のみを用いる場合に対して、送風機34の送風能力を適切に制御することができ、適切なウォーミングアップ制御を実現することができる。
【0119】
つまり、上記数式F2〜F4によれば、具体的に、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2を用いて第1、第2制御電圧Bv1、Bv2を決定し、さらに、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2流量V1、V2を用いて第1制御電圧Bv1および第2制御電圧Bv2を重み付け平均した値を第2仮制御電圧Bva2としている。
【0120】
従って、第2仮制御電圧Bva2に、第1、第2加熱能力の影響を適切に反映させて、第1、第2ヒータコア31、32の双方で加熱された送風空気の温度の低下に伴って、送風機34の送風能力を低下させることができ、適切なウォーミングアップ制御を実現することができる。
【0121】
ここで、熱交換器の加熱能力は、所定の風量の送風空気が熱交換器を通過することによって温度上昇する温度上昇量によって定義できる。従って、第1熱媒体温度Tw1が第2熱媒体温度Tw2よりも低くなっていても、第1流量V1が第2流量V2よりも多くなっていると、第1加熱能力が第2加熱能力を上回ることがある。
【0122】
さらに、本発明者らの検討によれば、本実施形態の車両用空調装置1では、第1流量V1が第2流量V2を大きく上回っていることから、第1加熱能力が第2加熱能力よりも高くなることが判っている。このような場合、本実施形態の数式F3、F4から明らかなように、a>bという関係とすることで、数式F2にて、第2熱媒体温度Tw2よりも第1熱媒体温度Tw1の重み付けを重くすることができ、適切に送風機34の送風能力を制御することができる。
【0123】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、制御ステップS4にて、送風機34の電動モータに出力する制御電圧Bvを決定するサブルーチンを図4に示すように変更した例を説明する。なお、図4では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0124】
具体的には、図4に示すように、第1実施形態のステップS41と同様に、第1仮制御電圧Bva1を決定して、ステップS46へ進む。
【0125】
ステップS46では、以下数式F5と第1実施形態で説明した数式F3、F4に基づいて、平均熱媒体温度Twaを決定して、ステップS47へ進む。
Twa=a×Tw1+b×Tw2…(F5)
a=V1/(V1+V2)…(F3)
b=V2/(V1+V2)…(F4)
なお、数式F5におけるTw1は第1熱媒体温度であり、Tw2は第2熱媒体温度である。
【0126】
ステップS47では、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、平均熱媒体温度Twaの上昇に伴って送風機34の第2仮制御電圧Bva2を決定する。すなわち、平均熱媒体温度Twaの上昇に伴って送風機34の送風能力を増加させるように決定して、ステップS45へ進む。
【0127】
つまり、ステップS47では、それぞれ第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータである第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2を、第1、第2流量V1、V2に基づいて平均熱媒体温度Twaを決定している。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。
【0128】
本実施形態では、具体的に、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1、第2流量V1、V2を用いて、第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2を重み付け平均した値を平均熱媒体温度Twaとしている。従って、第1実施形態と同様に、送風機34の送風能力の上限値となる第2仮制御電圧Bva2を適切に決定することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
また、本実施形態においても、a>bという関係とすることで、数式F2にて、第2熱媒体温度Tw2よりも第1熱媒体温度Tw1の重み付けを重くすることができ、適切に送風機34の送風能力を制御することができる。
【0130】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、制御ステップS4にて、送風機34の電動モータに出力する制御電圧Bvを決定するサブルーチンを図5に示すように変更した例を説明する。
【0131】
具体的には、図5に示すように、第1実施形態のステップS41と同様に、第1仮制御電圧Bva1を決定して、ステップS48へ進む。ステップS48では、第1熱媒体温度Tw1に基づいて、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、第1ヒータコア31にて加熱された送風空気の温度(第1加熱後温度)Ta1_outを推定する。
【0132】
本実施形態のステップS48では、具体的に、第1熱媒体温度Tw1の上昇に伴って、第1加熱後温度Ta1_outを上昇させるように決定して、ステップS49へ進む。ステップS49では、第2熱媒体温度Tw2から第1加熱後温度Ta1_outを減算した値を第2加熱能力Qw2として、ステップS50へ進む。
【0133】
ステップS50では、予め空調制御装置40の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、第2加熱能力Qw2の上昇に伴って送風機34の第2仮制御電圧Bva2を決定する。すなわち、第2加熱能力Qw2の上昇に伴って送風機34の送風能力を増加させるように決定して、ステップS45へ進む。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。
【0134】
本実施形態では、具体的に、第1加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第1熱媒体温度Tw1から第1加熱後温度Ta1_outを推定し、第2加熱能力を決定づけるパラメータの一つである第2熱媒体温度Tw2と第1加熱後温度(Ta1_out)との温度差から第2加熱能力Qw2をより正確に求めることができる。その結果、第1実施形態と同様に、適切なウォーミングアップ制御を実現することができる。
【0135】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図6の全体構成図に示すように、第2室内空調ユニット30のケーシング31内に形成される混合空間内の送風空気の温度Ta2_outを検出する送風空気温度検出手段である送風空気温度センサ44を追加した例を説明する。さらに、本実施形態の制御ステップS4にて、送風機34の電動モータに出力する制御電圧Bvを決定するサブルーチンを変更している。
【0136】
具体的には、本実施形態の制御ステップS4にて実行されるサブルーチンでは、制御ステップS3にて決定された目標吹出温度TAOと混合空間内の送風空気の温度Ta2_outとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて、混合空間内の送風空気の温度Ta2_outが目標吹出温度TAOに近づくように制御電圧Bvを決定する。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。
【0137】
ここで、ウォーミングアップ制御時のようにエアミックスドア38が最大暖房位置に変位している際の混合空間内の送風空気の温度Ta2_outは、実質的に、第2加熱用熱交換器32通過後の送風空気の温度となる。従って、Ta2_outが目標吹出温度TAOに近づくように制御電圧Bvを決定することで、ウォーミングアップ制御時の送風機34の送風能力を適切に制御することができる。
【0138】
さらに、本実施形態では、ウォーミングアップ制御時に限定されることなく、車室内へ送風される温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
【0139】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0140】
(1)上述の実施形態では、シリンダヘッド側流路11aから流出して第1ヒータコア31へ流入する冷却水を第1熱媒体とし、シリンダブロック側流路12aから流出して第2ヒータコア32へ流入する冷却水を第2熱媒体としているが、第1、第2熱媒体はこれに限定されない。
【0141】
換言すると、上述の実施形態では、第1、第2熱媒体として、同一の車載機器(エンジン10)の発生する熱によって加熱される熱媒体を採用した例を説明したが、第1、第2熱媒体が異なる車載機器の発生する熱によって加熱される熱媒体であってもよい。つまり、作動時に発熱を伴う車載機器は、エンジン10に限定されない。
【0142】
例えば、車載機器として、走行用電動モータ、インバータ等の電気機器、電気ヒータ(PTCヒータ)、さらに、燃料電池を搭載する車両では、燃料電池を採用することができる。さらに、具体的には、第1熱媒体温度Tw1が第2熱媒体温度Tw2以下となれば、第1熱媒体として、走行用電動モータを冷却するモータ用冷却水を採用し、第2熱媒体として、エンジン10の冷却水を採用することができる。
【0143】
(2)上述の実施形態では、数式F2〜F5に示すように、第1、第2加熱能力を決定づけるパラメータとして、第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2を用い、さらに、重み付け平均を行うための係数a、bを第1、第2流量V1、V2に基づいて算出した例を説明したが、第1、第2加熱能力を他の算出方法で求めてもよい。
【0144】
例えば、上述の第4実施形態の第1加熱用熱交換器31通過後の送風空気の温度(第1通過後温度)Ta1_outを検出する温度センサと、第5実施形態の第2加熱用熱交換器32通過後の送風空気の温度(第2通過後温度)Ta2_outを検出する温度センサの双方を設けて、これらの温度センサの検出値を用いてもよい。
【0145】
具体的には、
a=(Ta1_out−Tam)×V1/{(Ta1_out−Tam)×V1+(Ta2_out−Ta1_out)×V2}
b=(Ta2_out−Ta1_out)×V2/{(Ta1_out−Tam)×V1+(Ta2_out−Ta1_out)×V2}
とすればよい。
【0146】
これによれば、第1、第2加熱能力を決定づける第1ヒータコア31出口側送風空気と入口側送風空気との温度差、および、第2ヒータコア31出口側送風空気と入口側送風空気との温度差に基づいて、ウォーミングアップ制御時の送風機34の送風能力を適切に制御することができる。
【0147】
また、第1熱媒体温度Tw1と第1流量V1との積算値である第1最大放熱量をQ1とし、第2熱媒体温度Tw1と前記第2流量V1との積算値である第2最大放熱量をQ2としたときに、
a=Q1/(Q1+Q2)
b=Q2/(Q1+Q2)
としてもよい。
【0148】
また、a、bの値を予め定めた定数として決定しておいてもよい。
【0149】
(3)上述の実施形態では、分流部10d、シリンダヘッド側流路11a、シリンダブロック側流路12a、および、第1、第2分岐部22a、22bに形成される冷却水流路の流路断面積(圧力損失特性)によって、第1、第2流量V1、V2の調整を行った例を説明したが、流量調整弁して第1、第2流量V1、V2の調整を行う場合には、上記数式F2、F3の算出を行う際に、流量調整弁に出力される制御信号に基づいて決定される第1、第2流量V1、V2を用いてもよい。
【0150】
(4)上述の実施形態では、第1、第2熱媒体温度Tw1、Tw2を検出するために、それぞれヘッド側冷却水温度検出手段としてのヘッド側サーミスタ41、ブロック側冷却水温度検出手段としてのブロック側サーミスタ42を採用した例を説明したが、これらのセンサはいずれか一方とすることができる。
【0151】
例えば、ヘッド側サーミスタ41を用いて、ブロック側サーミスタ42を廃止する場合は、第1熱媒体温度Tw1、エンジン回転数、エンジン負荷等に基づいて第2熱媒体温度Tw2を算出してもよい。また、第1熱媒体温度Tw1に対して予め定めた係数を積算した値を第2熱媒体温度Tw2としてもよい。
【0152】
(5)上述の実施形態では、制御ステップS4におけるエアミックスドア38の開度制御に第2熱媒体温度Tw2を用いた例を説明したが、エアミックスドア38の開度制御に用いられる冷却水温度はこれに限定されない。例えば、第2実施形態の制御ステップS46で算出した平均熱媒体温度Twaを用いてもよい。
【符号の説明】
【0153】
10 エンジン
31 第1ヒータコア
32 第2ヒータコア
34 送風機
40 空調制御装置
40a 送風機制御手段
42 第1送風能力決定手段
43 第2送風能力決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ空気を送風する送風機(34)と、
車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第1熱媒体を熱源として前記送風機(34)から送風された送風空気を加熱する第1加熱用熱交換器(31)と、
車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第2熱媒体を熱源として前記第1加熱用熱交換器(31)通過後の送風空気を加熱する第2加熱用熱交換器(32)とを備え、
前記第1加熱用熱交換器(31)へ流入する前記第1熱媒体の第1熱媒体温度(Tw1)は、前記第2加熱用熱交換器(32)へ流入する前記第2熱媒体の第2熱媒体温度(Tw2)以下であり、
前記第1加熱用熱交換器(31)へ流入する前記第1熱媒体の第1流量(V1)、および、前記第2加熱用熱交換器(32)へ流入する前記第2熱媒体の第2流量(V2)は異なっており、
さらに、前記第1加熱用熱交換器(31)における前記送風空気の第1加熱能力および前記第2加熱用熱交換器(32)における前記送風空気の第2加熱能力の双方に基づいて、前記送風機(34)の作動を制御する送風機制御手段(40a)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記送風機制御手段(40a)は、前記第1熱媒体温度(Tw1)の上昇に伴って前記送風機(34)の送風能力を増加させるように決定する第1送風能力決定手段(S42)、および、前記第2熱媒体温度(Tw2)の上昇に伴って前記送風機(34)の送風能力を増加させるように決定する第2送風能力決定手段(S43)を有し、
前記第1送風能力決定手段(S42)によって決定される第1送風能力をBv1とし、第2送風能力決定手段(S43)によって決定される第2送風能力をBv2とし、実際の前記送風機(34)の送風能力をBva2としたときに、
前記送風機制御手段(40a)は、
Bva2=a×Bv1+b×Bv2(但し、a+b=1)
となるように、前記送風機(34)の送風能力を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1熱媒体温度をTw1とし、前記第2熱媒体温度をTw2とし、平均熱媒体温度をTwaとしたときに、
前記送風機制御手段(40a)は、
Twa=a×Tw1+b×Tw2(但し、a+b=1)
となるように求められた前記平均熱媒体温度(Twa)の上昇に伴って、前記送風機(34)の送風能力を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1流量をV1とし、前記第2流量をV2としたときに、
a=V1/(V1+V2)
b=V2/(V1+V2)
であることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第1加熱用熱交換器(31)へ流入する前記第1熱媒体の第1流量(V1)は、前記第2加熱用熱交換器(32)へ流入する前記第2熱媒体の第2流量(V2)よりも多くなっており、
a>b
となっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記送風機制御手段(40a)は、少なくとも前記第1熱媒体温度(Tw1)の上昇に伴って、前記第1加熱用熱交換器(31)にて加熱された送風空気の第1加熱後温度(Ta1_out)を上昇させるように推定し、さらに、前記第2熱媒体温度(Tw2)から前記第1加熱後温度(Ta1_out)を減算した値から求められる前記第2加熱能力(Qw2)の上昇に伴って、前記送風機(34)の送風能力を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
車室内へ空気を送風する送風機(34)と、
車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第1熱媒体を熱源として前記送風機(34)から送風された送風空気を加熱する第1加熱用熱交換器(31)と、
車載機器(10)の発生する熱によって加熱された第2熱媒体を熱源として前記第1加熱用熱交換器(31)通過後の送風空気を加熱する第2加熱用熱交換器(32)と、
前記送風機(34)の作動を制御する送風機制御手段(40a)と、
前記第2加熱用熱交換器(32)通過後の送風空気の目標温度(目標吹出温度TAO)を決定する目標温度決定手段(S3)を備え、
前記第1加熱用熱交換器(31)へ流入する前記第1熱媒体の第1熱媒体温度(Tw1)は、前記第2加熱用熱交換器(32)へ流入する前記第2熱媒体の第2熱媒体温度(Tw2)以下であり、
前記第1加熱用熱交換器(31)へ流入する前記第1熱媒体の第1流量(V1)は、前記第2加熱用熱交換器(32)へ流入する前記第2熱媒体の第2流量(V2)よりも多くなっており、
前記送風機制御手段(40a)は、前記第2加熱用熱交換器(32)通過後の送風空気が前記目標温度(目標吹出温度TAO)に近づくように、前記送風機(34)の作動を制御することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23060(P2013−23060A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159214(P2011−159214)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】