説明

車両用表示装置

【課題】 回路基板の設計作業や製品評価作業を簡素化し、コストダウンを達成することが可能な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 トランジスタ12のオン/オフ状態を切り換えることにより回路基板7に設けられた光源13を発光制御し、車両の利用者に報知すべき表示を行う車両用表示装置であって、回路基板7には、バッテリー19と光源13とを接続可能とする第1の接続ランド15と、第1の接続ランド15と並列に接続され、バッテリー19から供給される電源電圧を所定の定電圧として出力する定電圧回路17と光源13とを接続可能とする第2の接続ランド16とが設けられ、第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方の接続ランドに接続部材18を実装可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ等からなるスイッチ手段のオン/オフ状態を切り換えることにより回路基板に設けられた光源を点灯制御し、車両の利用者に報知すべき表示を行う車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種車両には例えば下記特許文献1に記載されているような車両用表示装置が搭載されており、この車両用表示装置には、速度計や燃料計等からなる指針式表示部と、各種報知情報を表示する複数個のインジケータとが設けられている。これら各指針式表示部や各インジケータには、通常、それぞれに対応する光源が備えられ、夜間等、周囲が暗い場合に光源を点灯して各指針式表示部を照明したり、報知を行うべき状況下となったとき光源を点灯してインジケータを照明するようになっている。
【0003】
すなわち、各針式表示部は、計器ムーブメントに設けられた回転軸に装着され、速度センサや燃料センサの出力に応じて回転作動する指針と、この指針の指示対象となる目盛や数字等の指標部が形成された表示板とを各々備えており、これら指針及び表示板の背後には、それぞれに対応する複数の光源が回路基板上に実装されている。
【0004】
一方、インジケータは、各表示板間に配置されたインジケータプレートからなり、このインジケータプレートには、光透過性材料からなる所定の報知マークが列をなすように複数隣接形成され、その背後には各報知マークに対応する複数のインジケータ用の光源が列をなすように回路基板上に隣接して実装され、車速センサや燃料センサ等の各種センサからの信号に応じて報知を行うべき状況が発生したとき点灯して報知マークを発光表示させるようになっている。
【0005】
このことは、車速センサや燃料センサをはじめとする各種センサからの検出信号(所定の入力信号)が制御手段に入力されると、制御手段は、これらセンサ類からの入力信号に基づいて所定の演算処理を行い、その演算処理結果から、インジケータにて報知すべきと判定したとき、インジケータ用の光源を点灯させるための制御信号をトランジスタ等のスイッチ手段に出力し、このスイッチ手段に出力された制御信号に基づき所定のインジケータ用の光源を点灯制御させることで、インジケータプレート上にて車両の利用者に対し報知すべき表示を行うことを意味している。
【特許文献1】特開平11−59227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる車両用表示装置にあっては、例えば仕向地に応じてインジケータにおける各報知マークの意匠のみが異なるという設計仕様の変更(つまり、新機種設計)が存在する場合がある。この場合、例えば設計仕様の変更に伴い、あるインジケータの意匠が高輝度を要する走行速度超過(警報情報)を示す速度超過インジケータから低輝度を要するフロントフォグランプの点灯(警報情報よりも緊急度の低い通常作動情報)を示すフロントフォグインジケータに変更となったとき、輝度調整用の回路部品等を新規で追加する必要があることから、設計仕様毎に専用の回路基板を別途、設計して対応していた。
【0007】
さらに、このように輝度変更に対応すべく輝度調整用の回路部品等を追加する場合にあっては、設計仕様の変更により設計された専用の回路基板から放射される電気ノイズレベルを無害なレベルまで低下させるための回路基板の製品評価作業も、設計仕様毎にその都度行う必要があるため、結果的に回路基板の設計作業や製品評価作業に膨大な工数を要するという問題点があり、コストアップの原因となっていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、回路基板の設計作業や製品評価作業を簡素化し、コストダウンを達成することが可能な車両用表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スイッチ手段のオン/オフ状態を切り換えることにより回路基板に設けられた光源を発光制御し、車両の利用者に報知すべき表示を行う車両用表示装置であって、前記回路基板には、電源と前記光源とを接続可能とする第1の接続ランドと、前記第1の接続ランドと並列に接続され、前記電源から供給される電源電圧を所定の定電圧として出力する定電圧回路と前記光源とを接続可能とする第2の接続ランドとが設けられ、前記第1,第2の接続ランドのうち何れか一方の接続ランドに接続部材を実装可能な構成としたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記接続部材は、ジャンパ線または抵抗素子からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、回路基板の設計作業や製品評価作業を簡素化し、コストダウンを達成することが可能な車両用表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づき、本発明による車両用表示装置の実施形態を説明する。なお、図1は、本実施形態による車両用表示装置の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は本実施形態によるインジケータの制御回路を示すブロック図である。
【0012】
図1において、本実施形態による車両用表示装置は、車両情報として例えば車速を表示するスピードメータからなる指針式表示部D1と、エンジン回転数を表示するタコメータからなる指針式表示部D2と、これら各指針式表示部D1,D2間に配置され、各種の警報情報、報知情報を表示するインジケータD3とを備える。
【0013】
各指針式表示部D1,D2は、図2に示すように、計器ムーブメントMに設けられた回転軸M1に装着され、車両に搭載される速度センサや回転センサの出力に応じて回転作動する指針1と、この指針1の指示対象となる目盛や文字、マーク等の指標部D11(図1参照)が形成された表示板2とで構成され、これら指針1及び表示板2の背後には、それぞれに対応する複数の光源3,4が配置されている。この場合、指針1は光源3の点灯によりその照射光を受けて発光可能な光透過材料により形成され、また表示板2の指標部D11は光源4の点灯によりその照射光を受けて発光するよう光透過性材料により形成されている。
【0014】
インジケータD3は、各表示板2間に配置されたインジケータプレート5からなり、このインジケータプレート5には、光透過性材料からなる所定の警報マークや報知マーク(図示しない)が列をなすように複数隣接形成され、その背後には各警報マークや各報知マークに対応する複数の光源6が列をなすように隣接配置され、前記車速センサや油圧センサ、燃料センサ等の各種センサからの信号(後述する制御信号)に基づいて警報や報知を行うべき状況が発生したとき点灯して警報マークや報知マークを車両の利用者に発光表示させるようになっている。
【0015】
各光源3,4,6は、例えば所定色にて発光する発光ダイオードからなり、各表示板2及びインジケータプレート5の背後に位置する硬質の回路基板7の前面側に装着(実装)され、この回路基板7を通じて点灯用電力の供給が行われるようになっている。なお本実施形態では、光源3,4,6として、発光ダイオードを適用したが、その全部または一部をフィラメントバルブに置き換えてもよい。また、光源3,4,6の設けられた回路基板7の背面側には、計器ムーブメントMが装着され、回路基板7を通じて駆動用電力が供給されるようになっている。
【0016】
さらに回路基板7の前方側には、例えば白色系の遮光性合成樹脂からなる反射体兼フレーム体機能を有するケース体8が設けられており、このケース体8には、各光源3,4,6を収納しそれらの光を表示板2及びインジケータプレート5側に案内する照明室が複数形成されている。
【0017】
また指針式表示部D1,D2及びインジケータD3の前方には、透明合成樹脂からなる保護カバー9が配置されている。
【0018】
次に、図3を用いて、本実施形態の車両用表示装置におけるインジケータD3のうち、中央上部に位置する所定のインジケータ10(図1参照)を発光/非発光制御するための制御回路について説明する。なお、このインジケータ10は、例えば車両の走行速度超過を前記車両の利用者に対し報知するインジケータであるものとする(詳細図示は省略)。
【0019】
前記制御回路は、回路基板7上に設けられ、制御手段11と、トランジスタ(スイッチ手段)12と、光源13と、制限抵抗14と、第1の接続ランド15と、第2の接続ランド16と、定電圧回路17とを備えている。また、制御回路は、第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方側に実装されるジャンパ線等からなる接続部材18を備えている。
【0020】
制御手段11は、例えばマイクロコンピュータを適用でき、CAN(Controller Area Network)通信ケーブルやイグニションスイッチ等の機器と接続され、前記各種センサから出力される入力信号(パルス信号)を入力し、この入力信号に基づいてトランジスタ12のオン/オフ状態を制御するための制御信号を生成し、トランジスタ12へ出力する。また、制御手段11は、前記入力信号に基づいて演算処理するためのCPUと、このCPUにおける演算処理結果等を一時的に格納する読出し及び書換え可能なRAMや、制御プログラム等を格納したROMから構成される記憶部と、前記入力信号や前記制御信号等をやり取りするためにバス接続された入出力インターフェイスと、を備えている。
【0021】
トランジスタ12は、前記制御信号に応じて、オン/オフ状態を切り換えることで、光源13を発光制御するためのスイッチ手段となるものであり、コレクタ側が光源13のカソード側と接続され、エミッタ側がグランドレベルに接地され、ベース側が制御手段11の出力部に接続されている。
【0022】
光源13は、前述した複数の光源6のうちの1つであり、インジケータ10に対応(対向)する回路基板7上に実装され(図1,図2参照)、そのカソード側は、トランジスタ12を介してグランドレベルに接地される。
【0023】
また光源13は、接続部材18が第1の接続ランド15に実装されてなる場合は、アノード側が制限抵抗14、接続部材18を介してバッテリー(電源)19と接続され、接続部材18が第2の接続ランド16に実装されてなる場合は、アノード側が制限抵抗14、接続部材18並びに定電圧回路17を介してバッテリー(電源)19と接続されることになる。
【0024】
制限抵抗14は、光源13に供給する電流値を調整(設定)するためのチップ抵抗等の抵抗素子からなり、光源13のアノード側と接続される。
【0025】
第1の接続ランド15は、ジャンパ線等の接続部材18を実装可能な形状にパターン印刷された対をなすランドからなる。そして、第2の接続ランド16ではなく第1の接続ランド15に接続部材18を実装したとき、制限抵抗14を介して光源13のアノード側とバッテリー19とが電気的に接続可能となるように設定されている。
【0026】
第2の接続ランド16は、ジャンパ線等の接続部材18を実装可能な形状にパターン印刷された対をなすランドからなり、第1の接続ランド15の位置と離れた位置に第1の接続ランド15と並列に接続されてなる。そして、第1の接続ランド15ではなく第2の接続ランド16に接続部材18を実装したとき、制限抵抗14を介して光源13のアノード側と定電圧回路17とが電気的に接続可能となるように設定されている。
【0027】
定電圧回路17は、例えばトランジスタとバイアス抵抗とツェナーダイオードとから構成されるものであり、接続部材18が第1の接続ランド15ではなく第2の接続ランド16に実装されたとき、車両に搭載されたバッテリー19から入力(供給)される電源電圧(例えば12V)をこの電源電圧よりも低い所定の定電圧(例えば10V)として出力するものである。
【0028】
接続部材18は、例えばジャンパ線からなり、この場合、第1の接続ランド15または第2の接続ランド16のうち何れか一方の接続ランドに実装可能な構成となっている。
【0029】
そして、接続部材18が、第1の接続ランド15に実装されたとき、バッテリー19は、制限抵抗14を介して光源13と接続される。このとき、前記車速が所定値以上(例えば120km/h)となったことを示す前記車速センサからの前記入力信号が制御手段11に入力されると、制御手段11はトランジスタ12をオンさせるような制御信号を出力する。トランジスタ12は、この制御信号を受けて、トランジスタ12をオン状態に切り換え、光源13を発光させて前記車両の利用者に対し報知すべき表示(この場合、車速が120km/h以上となっていることを示す警告表示)をインジケータ10にて行う。
【0030】
ところで、本発明の特徴点は、例えば仕向地に応じて、インジケータ10の意匠のみが高輝度を要する走行速度超過(前記警報情報)を示す速度超過インジケータから低輝度を要するフロントフォグランプの点灯(前記警報情報よりも緊急度の低い通常作動情報)を示すフロントフォグインジケータに変更になるといった、設計仕様の変更が存在する場合であっても、接続部材18を第1の接続ランド15ではなく、定電圧回路17側となる第2の接続ランド16に実装するだけで、本実施形態にて採用した回路基板7をそのまま用いて、インジケータ10の発光輝度を高輝度仕様から低輝度仕様に容易に変更することが可能となる、という点である。従って、従来のように設計仕様毎に専用の回路基板を別途、設計して対応することが不要となると同時に、回路基板の製品評価作業も、設計仕様毎にその都度行うことが不要となる(つまり、回路基板7の製品評価作業を行えば複数の設計仕様に対応できる)ため、回路基板の設計作業や製品評価作業を簡素化し、コストダウンを達成することができる。
【0031】
以上のように本実施形態では、トランジスタ12のオン/オフ状態を切り換えることにより回路基板7に設けられた光源13を発光制御し、前記車両の利用者に報知すべき表示を行う車両用表示装置であって、回路基板7には、バッテリー19と光源13とを接続可能とする第1の接続ランド15と、第1の接続ランド15と並列に接続され、バッテリー19から供給される前記電源電圧を前記所定の定電圧として出力する定電圧回路17と光源13とを接続可能とする第2の接続ランド16とが設けられ、第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方の接続ランドにジャンパ線からなる接続部材18を実装可能な構成とした。
【0032】
従って、インジケータ10の意匠のみが変更になるといった設計仕様の変更が存在する場合であっても、ジャンパ線からなる接続部材18を第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方の接続ランドに実装するだけで、インジケータ10の発光輝度を容易に変更することが可能となるから、従来のように設計仕様毎に専用の回路基板を別途、設計して対応することが不要となると同時に、回路基板の製品評価作業も、設計仕様毎にその都度行うことが不要となるため、回路基板の設計作業や製品評価作業が簡素化され、コスト上昇を抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方に実装される接続部材18がジャンパ線からなる場合について説明したが、例えば接続部材18をジャンパ線ではなく、所定の抵抗値(例えば0Ω)を有する抵抗素子、あるいはダイオードとしてもよい。
【0034】
また、本発明の変形例として図4に示すように、本実施形態にて採用した制限抵抗14を光源13のアノード側に直列接続せずに、第1,第2の接続ランド15,16のうち何れか一方に接続部材18として実装する構成とすれば、この制限抵抗14が、第1,第2の接続ランド15,16の通電選択と、光源13の輝度調整用としての機能を同時に有することから、部品点数を削減することができ、(つまり、ジャンパ線等が不要となり)、且つ、実装スペースの省スペース化を実現することができる。従って、回路基板の設計作業がより簡素化され、更なるコストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態による車両用表示装置の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同実施形態によるインジケータの制御回路を示すブロック図である。
【図4】本発明の変形例によるインジケータの制御回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
7 回路基板
10 インジケータ
11 制御手段
12 トランジスタ(スイッチ手段)
13 光源
14 制限抵抗
15 第1の接続ランド
16 第2の接続ランド
17 定電圧回路
18 接続部材
19 バッテリー(電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ手段のオン/オフ状態を切り換えることにより回路基板に設けられた光源を発光制御し、車両の利用者に報知すべき表示を行う車両用表示装置であって、
前記回路基板には、電源と前記光源とを接続可能とする第1の接続ランドと、前記第1の接続ランドと並列に接続され、前記電源から供給される電源電圧を所定の定電圧として出力する定電圧回路と前記光源とを接続可能とする第2の接続ランドとが設けられ、
前記第1,第2の接続ランドのうち何れか一方の接続ランドに接続部材を実装可能な構成としたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記接続部材は、ジャンパ線または抵抗素子からなることを特徴とする請求項1記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265589(P2008−265589A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112613(P2007−112613)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】