説明

車両用表示装置

【課題】 実体メータを構成する指針などを別々に分離して移動させることで斬新な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 表示器である液表表示器1と、液晶表示器1の前方に配設される実体メータ2とを備えた車両用表示装置Dにおいて、実体メータ2は変位可能な指針3とリング4とを備え、指針3を通常位置と収納位置とに変位させる第1の駆動手段である第1のモータ8と、リング4を通常位置と収納位置とに変位させる第2の駆動手段である第2のモータ9とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示器などのフラットパネルディスプレイと呼ばれる表示器と、前記表示器の前方に配設される指針を有する実体メータとを備えた車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用表示装置は、表示器と、この表示器の前方に配設される実体メータとを備え、所定の情報に基づいて実体メータを移動させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】独国特許得出願公開第10331131号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような車両用表示装置にあっては、実体メータの移動は、指針を有する実体メータが一塊となって移動するのでおもしろみにかけるといった問題点を有していた。
【0004】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、実体メータを構成する指針などを別々に分離して移動させることで斬新な車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表示器と、前記表示器の前方に配設される実体メータとを備えた車両用表示装置において、前記実体メータは変位可能な指針とリングとを備え、前記指針を通常位置と収納位置とに変位させる第1の駆動手段と、前記リングを通常位置と収納位置とに変位させる第2の駆動手段と、を備えたものである。
【0006】
また、本発明は、前記指針は、前記指針を前記車両用表示装置に支持する支持部を備え、前記支持部を前記支持部の基部を軸に前記表示器とは反対側に回転変位するものである。
【0007】
また、本発明は、前記リングの上端または下端にて前記車両用表示装置に変形可能に支持され、前記リングの上端または下端を軸に、前記表示器とは反対側に回転変位するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、実体メータを構成する指針などを別々に分離して移動させることで斬新な車両用表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0010】
車両用表示装置Dは、図1の左から燃料計FU、エンジン回転計TA、速度計SP及びエンジン冷却水温計TEの4つの指針式計器を備えている。そして、エンジン回転計TAと速度計SPとの後方に表示器1を備えている。
【0011】
4つの指針式計器の中で、燃料計FUとエンジン冷却水温計TEとは従来周知の構造であるので説明は省略する。エンジン回転計TAと速度計SPとが本願発明の実体メータであり、このエンジン回転計TAと速度計SPのうち、速度計SPを用いて本願発明を説明する。
【0012】
車両用表示装置Dは、表示器1と、実体メータ2とから主に構成されている。実体メータ2は、指針3とリング4とを備えている。なお、5はバイザーであり、6は前面パネルである。
【0013】
表示器1はフラットパネルディスプレイと呼ばれるものであり、本実施形態においては、液晶表示器である。液晶表示器を構成する液晶表示素子は自ら発光しないので、この液晶表示器には、図示しない光源が内蔵されている。この表示器1の液晶表示素子はドットマトリックス状に形成されており、実体メータ2の指針3が指示する目盛や文字などの意匠1aや車両に関する車両情報1bなどを表示するものである。車両情報1bとしては、車両速度、エンジン回転数、車両に関する警報、車両の外気温度、ナビゲーション用の地図や案内表示および車両の外界の映像などである。例えば、図4に示すものは、前方の車両との車間距離に関する情報と車両速度である。
【0014】
実体メータ2は表示器1の前方に配設されており、本実施形態では、指針3とリング4の他に、指針3を駆動する計器本体7とを備えている。
【0015】
指針3は指示部3aと指針キャップ3bとで構成されている。
【0016】
計器本体7はステッピングモータや交差コイル式の電動機であり、指針3を回転駆動するものである。計器本体7はケース7aによって覆われている。このケース7aは合成樹脂から構成されている。なお、ケース7a内には、計器本体7の他に、指針3を照明する光源7b、回路基板7cが収納されている。なお、光源7bは、計器本体7に実装されている。光源2dは発光ダイオードなどが小型で好適である。
【0017】
ケース7aは、指針3を車両用表示装置Dに支持する支持部であり、ケース7aは、バイザー5に設けられている。具体的には、ケース7aの基部7d(ケース7aの付け根部分)は、図示しない回転軸を備えており、回転変位可能である。そして、バイザー5には、ケース7aとともに指針3を、図2で示すように、表示器1の前方に配置した通常位置と、図3で示すように、表示器1とは反対側に倒した収納位置とに変位可能である。ケース7aとともに指針3を通常位置と収納位置とに変位させる第1のモータからなる第1の駆動手段8を備えている。
【0018】
リング4は実体メータ2の指針3の先端が描く回転軌跡より大きく形成されている。リング4は、ケース7aと同様に、バイザー5に設けられている。具体的には、ケース7aの基部7dと同一の軸線の図示しない回転軸を備えており、回転変位可能である。そして、バイザー5には、図2で示すように、表示器1の前方に配置した通常位置と、図3で示すように、表示器1とは反対側に倒した収納位置とに変位可能である。リング4を通常位置と収納位置とに変位させる第2のモータからなる第2の駆動手段9を備えている。
【0019】
指針3とリング4とは、図4のエンジン回転計TAで示すように、一緒に収納位置に変位してもよいし、あるいは、それぞれ独立して変位可能である。その例として、図4の速度計SPのように、指針3のみを変位させることと、図5の速度計のように、リング4のみを変位させることが可能である。
【0020】
バイザー5は合成樹脂からなり、燃料計FU、エンジン回転計TA、速度計SP、エンジン冷却水温計TE及び表示器1を囲むように設けられたものであり、バイザー5は車両用表示装置Dの表示範囲を定めるものである(図1、4を参照)。
【0021】
バイザー5は、表示器1の前方下側に収納部5aを備えている。この収納部5aは凹部からなり、実体メータ2の一部、本実施形態では、指針3を収納するものである。
なお、本実施形態では、実体メータ2は、表示器1の板面方向に対して垂直方向から見た場合に、収納部5aに一部が収納され、車両用表示装置の表示範囲内には実体メータ2のケース7aが露出している。なお、実体メータ2を全く視認できなくなるようにしてもよい。
【0022】
前面パネル6は光透過性の合成樹脂からなり、本実施形態では黒色である。なお、前面パネル6は黒色に限定されるものではなく、暗色系統の色であれば濃紺などの色であってもよい。
【0023】
次に、車両用表示装置Dのシステム構成を説明する。
【0024】
車両用表示装置Dは、表示器1、実体メータ2、光源2d、移動機構4および制御手段11を備えている。制御手段11はマイクロコンピュータからなり、表示器1、実体メータ2、光源2dおよび移動機構4を制御するものである。
【0025】
車両用表示装置Dは、車両に設けたエンジンなどの制御を行う車両用制御手段12と接続されている。この車両用制御手段12には、電源オンとオフおよびアクセサリー電源を検出するイグニッションスイッチ13と、車速検出センサ14および車間距離センサ15と接続している。
【0026】
イグニションスイッチ13は、電源オフ(いわゆるイグニッションオフ)、アクセサリー電源および電源オン(いわゆるイグニッションオン)の各状態を検出し、それぞれの信号を車両用制御手段12に送るものである。
【0027】
車速検出センサ14は、車両の速度を検出するものである。
【0028】
車間距離センサ15は、車両の前方に他の車両が存在する時の車間距離をミリ波などを用いて計測するものである。
【0029】
本実施形態では、イグニッションスイッチ13、車速検出センサ14および車間距離センサ15の検出信号は、全て車両用制御手段12を介して、制御手段11に送られているが、制御手段11に、イグニッションスイッチ13、車速検出センサ14および車間距離センサ15を接続する構成であってもよい。
【0030】
次に本実施形態の車両用表示装置Dの動作について説明する。
【0031】
車両用表示装置Dは、通常使用時は、図1、2で示すように、指針3とリング4とを通常位置とし、表示器1で表示すべき情報が存在する時は、図4で示すように、指針3とリング4とを一緒に収納位置に変位させる。あるいは、指針3のみを収納位置に変位させる。図4で示すものは、エンジン回転計TAを表示していた部分には、車間距離センサ15からの計測値が所定の値となったときに、指針3とリング4とを通常位置から収納位置へと変位させ、表示器1に前方車両との車間距離が短いことを知らせることができる。また、この場合、速度計SPを表示していた部分には、指針1を収納位置に変位させて、速度に関する車両情報1bを表示器1で表示する。
【0032】
あるいは、図5で示すように、リング4のみを収納位置に変位させて、指針3で表示器1に表示した意匠1aを指示し、速度を表示してもよい。
【0033】
このように構成したことによって、実体メータを構成する指針などを別々に分離して移動させることで斬新な車両用表示装置を提供することができる。なお、第1実施形態の変形例として、指針3とリング4とがバイザー5の上側に変位可能に支持され、バイザー5の上側に収納されるものであってもよい。
【0034】
次に本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では、指針3を支持するケース7aとリング4とは、バイザー5の下側の部分で、変位可能に支持されていたが、第1実施形態に限定されるものではなく、例えば、指針3を支持するケース7aは、第1実施形態と同様に、バイザー5の下側であるが、リング4は、バイザー5の上側に変位可能に支持したものである。本実施例では、ケース7aとリング4との位置関係は、表示器1の前方に、リング4が位置し、ついで、ケース7aが位置する。リング4のケース7aと重なる部分は、凹部7a1が設けられており、ケース7aとリング4とが通常位置に位置したときに、ケース7aとリング4とが一体感を得るものである。本実施形態では、ケース7aは、第1実施例と同様に、バイザー5の下側部分に収納され、リング4は、バイザー5の上側部分に収納される。本実施形態においても前記実施形態と同様に、実体メータを構成する指針などを別々に分離して移動させることで斬新な車両用表示装置を提供することができる。
【0035】
また、第1実施形態の変形例として、指針3がバイザー5の上側に変位可能に支持され、バイザー5の上側に収納され、リング4がバイザー5の下側に変位可能に支持され、バイザー5の下側に収納されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用表示装置の正面図。
【図2】図1中X−X線の断面図。
【図3】同実施形態の収納時の断面図。
【図4】同実施形態の車両用表示装置の収納時の正面図。
【図5】同実施形態の車両用表示装置の収納時の正面図。
【図6】同実施形態の車両用表示装置のシステム構成を示す図。
【図7】同発明の第2実施形態の車両用表示装置の正面図。
【符号の説明】
【0037】
1 表示器(フラットパネルディスプレイ)
2 実体メータ
3 指針
4 リング
7a ケース(支持部)
8 第1の駆動手段(第1のモータ)
9 第2の駆動手段(第2のモータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器と、前記表示器の前方に配設される実体メータとを備えた車両用表示装置において、前記実体メータは変位可能な指針とリングとを備え、前記指針を通常位置と収納位置とに変位させる第1の駆動手段と、前記リングを通常位置と収納位置とに変位させる第2の駆動手段と、を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記指針は、前記指針を前記車両用表示装置に支持する支持部を備え、
前記支持部を前記支持部の基部を軸に前記表示器とは反対側に回転変位することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記リングの上端または下端にて前記車両用表示装置に変形可能に支持され、前記リングの上端または下端を軸に、前記表示器とは反対側に回転変位することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−107482(P2009−107482A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281987(P2007−281987)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】