説明

車両用表示装置

【課題】車両ドライバに提供する情報を表示する表示部の視認性を向上させ、運転負担増加を回避することができると共に、車両ドライバに提示した情報の正確且つ容易な理解を促すことが可能な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両状態に関する情報を表示可能な表示範囲を有する表示部20と、表示部20の表示範囲の一部をなす表示領域23に、車両状態に関する情報を表示する表示制御手段(コントローラ20)と、車両の走行状態を検出するセンサ(32,33,37等)と、センサにより検出された車両の走行状態に基づいて、表示部20の表示範囲22内で表示領域23を移動させる位置を決定し、決定した位置に向かって表示領域23を移動させる表示領域移動制御手段(コントローラ20)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に係り、特に車両に関する多くの情報を統合して表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ドライバへ自車両及び交通状況等の各種情報を提示するための車両用表示装置が提案されている。このような車両用表示装置では、車両ドライバの視線変化を抑えるため、機械式のメータ部とドットマトリクス方式の表示装置を並存させている(例えば、特許文献1参照)。また、機械式のメータ部の表示情報を統合して表示可能としたドットマトリクス方式のみの表示装置も提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の車両用表示装置は、アナログ式の回転速度計の上部に配置され、通常時は、車速をデジタル表示している。この車両用表示装置は、所定時に車速表示を通常時よりも小さく表示すると共に、運転支援システムからの情報を追加表示するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−62516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用表示装置では、所定時に追加的に情報が表示されるため、限られた表示スペースに多くの情報が密に表示される。このため、車両ドライバが表示内容を直感的に認識することが難しく視認性が低下するおそれがあるという問題があった。また、車両ドライバが表示の唐突な切り替えに対応できず、このような表示形式に慣れるまでは表示部を監視しながら運転することとなり、運転負担が増加するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両ドライバに提供する情報を表示する表示部の視認性を向上させ、運転負担増加を回避することができると共に、車両ドライバに提示した情報の正確且つ容易な理解を促すことが可能な車両用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両状態に関する情報を表示可能な表示範囲を有する表示手段と、表示手段の表示範囲の一部をなす表示領域に、車両状態に関する情報を表示する表示制御手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態に基づいて、表示範囲内で表示領域を移動させる位置を決定し、この決定した位置に向かって表示領域を移動させる表示領域移動制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、車両の走行状態に基づいて、車両状態に関する情報を表示する表示領域を、表示範囲内で車両の走行状態に基づいて決定した方向に移動表示させることができる。このように表示領域の移動表示が車両の走行状態を反映しているので、車両ドライバは、表示領域が移動表示されていることを視認することにより、車両の走行状態の変化を素早く直感的に察知することができる。このとき、車両状態に関する情報は、視認領域の移動により表示位置がずれるだけであるので、本発明では、視認性を良好に保持したまま、且つ、車両ドライバの運転負荷を増加させることがなく、情報を提示することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、車両状態に関する付加情報を、表示領域の移動に連動させて表示範囲外から表示範囲内へ移動表示させる付加情報表示制御手段をさらに備える。このように構成された本発明によれば、付加情報は、表示領域の移動に連動して表示範囲外から表示範囲内へ移動表示されるので、表示画面の唐突な変化がなく、また、車両ドライバは計器操作を行う必要がない。そして、本発明によれば、計器を追加したり、表示画面を切り替えたりすることなく、付加情報を提示することができる。さらに、表示領域の移動に連動して、付加情報が移動表示されるので、車両ドライバに違和感を与えることなく、正確且つ容易な理解を促すことが可能となる。
【0010】
また、本発明において、具体的には、走行状態検出手段は、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサであり、表示領域移動制御手段は、車両の加速度に応じて、表示領域を表示範囲内で車両前後方向に移動させる。
このように構成された本発明によれば、車両の前後方向の加速度に連動して、表示領域が表示範囲内で車両前後方向に移動するので、車両ドライバが体感する車両前後方向の加速度と合致して、表示領域が移動することになり、車両ドライバは、車両の加速又は減速状態を、表示領域を見ることによる視覚的な認知と体感との両方から正確且つ容易に把握することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、走行状態検出手段は、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサであり、表示領域移動制御手段は、車両の横加速度に応じて、表示領域を表示範囲内で車両横方向に移動させる。
このように構成された本発明によれば、車両の車幅方向の横加速度に連動して、表示領域が表示範囲内で横方向に移動するので、車両ドライバが体感する横加速度と合致して、表示領域が移動することになり、車両ドライバは、車両の横加速状態を、表示領域を見ることによる視覚的な認知と体感との両方から正確且つ容易に把握することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、付加情報は、車両の安定性に関する情報である。このように構成された本発明によれば、車両の走行状態に関連した、車両の安全性に関する情報を、計器の追加や画面の切り替えなしに提示することができる。また、このような情報を提示することにより、車両ドライバに情報を正確且つ容易に理解させることができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、走行状態検出手段は、車両外部にある障害物を検出する障害物センサであり、表示領域移動制御手段は、表示範囲内での表示領域の移動方向を、障害物の検出方向又は障害物との衝突を回避する方向に設定すると共に、表示領域の移動距離を、車両と障害物との距離に応じた距離に設定する。
このように構成された本発明によれば、障害物が接近していることを、表示領域の移動表示によって、車両ドライバに報知することができる。そして、表示領域の移動方向及び移動距離によって、車両ドライバは、直感的に障害物のある方向及び自車と障害物との距離を感覚的に把握することができる。また、表示領域の移動方向により、車両ドライバに衝突回避方向に関する情報を提供することができる。これにより、車両ドライバは、障害物との衝突・接触を回避する操作を余裕をもって行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、付加情報は、障害物の接近に関する情報である。このように構成された本発明によれば、障害物の接近に関連した情報を、計器の追加や画面の切り替えなしに提示することができる。また、このような情報を提示することにより、車両ドライバに障害物の接近情報を正確且つ容易に理解させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用表示装置によれば、車両ドライバに提供する情報を表示の視認性を向上させ、運転負担増加を回避することができると共に、車両ドライバに提示した情報の正確且つ容易な理解を促すことが可能な車両用表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。先ず、図1乃至図9により、本発明の実施形態による車両用表示装置を説明する。
図1は車両搭載時の車両用表示装置の斜視図、図2は図1の電気ブロック図、図3は車両用表示装置の表示例を示す図、図4−図6は車両用表示装置の表示制御の説明図、図7は車両加速時の表示制御の説明図、図8は車両減速時の表示制御の説明図、図9は障害物接近時の表示制御の説明図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両用表示装置1は、表示制御を行うコントローラ10と、表示部20と、車両の走行状態を検出する各種センサを備えている。
コントローラ10は、CPU,内部メモリ,I/Oインターフェース等を備えており、各種センサから取得した情報に基づいて、表示部20の表示制御を行う。
表示部20は、図1に示すように、ステアリングホイール2の上部に配置されており、走行中及び停止中に車両ドライバに各種情報を提示するように構成されている。本実施形態では、表示部20は液晶表示装置からなるが、これ以外にも有機EL表示装置,CRTディスプレイ装置等の表示装置を使用してもよい。表示部20は、本発明の表示手段に相当する。
【0018】
各種センサは、車両状態及び車両周囲状態を含む車両の走行状態を検出し、検出信号をコントローラ10に出力する。これらセンサには、車両の速度を検出する速度センサ31,車両前後方向の加速度を検出する加速度センサ32,車両の横方向(幅方向)の加速度を検出する横加速度センサ33,ABSシステム34,トラクションコントロールシステム(TCS)35,横滑り防止機構36,電波を放射して車両周囲の障害物(車両,歩行者,自転車,地上設置物等)の相対方位及び相対距離を測定する障害物センサ37,ナビゲーションシステム38,燃料センサ39,ECU40等を含んでいる。なお、これらのセンサから信号を直接的にコントローラ10に出力してもよいし、制御ユニット等を介して間接的にコントローラ10に出力してもよい。これらセンサは、本発明の走行状態検出手段に相当する。
【0019】
図3に表示部20の表示画面21を示す。表示部20の表示画面21は、円形の表示範囲22を有しており、この表示範囲22に文字,図形,記号等を含む各種情報を重畳的に表示可能となっている。図3では、表示範囲22には、その中央部に表示範囲22よりも小径な略円形の表示領域23が設けられ、その周囲に環状の外縁部24が設けられている。表示領域23には、通常時に表示する第1情報が集約的に表示されている。
【0020】
図3の例では、第1情報は車両状態に関する情報であり、具体的には、表示領域23の中央部に自車を表す三角形のシンボルと、三角形のシンボルの周囲に表示された障害物表示(車両,歩行者,自転車のシンボル)と、左端部付近に表示された速度表示と、右端部付近に表示された燃費情報表示と、下端部付近に表示された燃料残量表示と、上端部付近に表示されたナビゲーション表示等を含んでいる。このように、略円形の表示領域23は、複数の情報からなる第1情報がそれぞれ所定の位置に配置された構成となっている。
【0021】
図3では、表示領域23は、表示範囲22の中央部、すなわち基準位置に表示されている。本実施形態では、この表示領域23全体が、車両の走行状態に応じて、表示範囲22内で上下方向及び左右方向(車両幅方向)に移動表示されるように構成されている。
次に、この移動表示について概略説明する。本実施形態では、表示領域23は、図4に示す質量−ばね−ダンパ系の制御モデルにしたがって挙動するように構成されている。すなわち、図4では、表示範囲22に相当する円50の中央部に、表示領域23に相当する質量51が配置され、質量51のそれぞれ上下左右で円50と質量51とが径方向に延びるばね52及びダンパ53により連結されている。この演算モデルでは、質量51は、中央の基準位置から上下方向又は左右方向のいずれかに移動可能となっている。なお、このような演算モデルに限らず、質量51が、基準位置から上下方向及び左右方向を組み合わせた斜め方向に移動可能としてもよい。
【0022】
このような演算モデルにしたがい、車両減速時には、質量51に相当する表示領域23は、円50に相当する表示範囲22内で上方へ移動しながら表示される(図5(A))。一方、車両加速時には、表示領域23は、表示範囲22内で下方へ移動表示される(同図(B))。また、車両左旋回時には、表示領域23は、表示範囲22内で右方向へ移動表示される(同図(C))。さらに、車両右旋回時には、表示領域23は、表示範囲22内で左方向へ移動表示される(同図(D))。
【0023】
このような表示領域23の挙動は、車両の加減速・左右旋回の状態を反映しており、車両ドライバが車両運転時に体感する加速度と一致するものである。したがって、車両ドライバは、表示画面21での表示領域23の挙動と実際の車両の挙動に基づく体感とが合致した状態で、表示画面21に表示された車両の加減速・左右旋回の状態及びその度合を、視覚と体感の両面から把握することができる。
また、本実施形態では、表示領域23は、移動表示中も同じ表示形式,表示内容を維持しているので、従来のように表示状態が唐突に切り替わることがなく、車両ドライバが切り替わりに対応できないという不都合が生じないようになっている。
【0024】
さらに、本実施形態では、上記演算モデルにおいて、図6に示すように、円50の外側に存在する障害物54と質量51との間に磁気的な斥力が働くこととしている。この斥力の大きさは、質量51と障害物54との距離に反比例する。したがって、障害物54が質量51に近いほど、質量51には大きな斥力が働いて障害物54と反対側に移動する距離が大きくなる。
【0025】
したがって、このような演算モデルにおいては、自車両に障害物が接近してきた場合、自車に対する障害物の相対方向及び相対距離に応じて、表示領域23は、表示範囲22内で障害物の検出方向と反対方向に移動する。
このように、車両の周囲に障害物がある場合には、表示領域23は、障害物を回避する方向に移動し、しかも障害物との相対距離に応じてその移動距離が設定される。これにより、車両ドライバは、表示領域23の挙動により、障害物が存在することを予め予測することができる。そして、車両ドライバは、表示領域23の移動方向が障害物を回避する方向に一致しているので、障害物との衝突・接触を回避するため、制動,操舵等の回避操作を表示領域23の移動方向にとればよく、回避操作に関する情報も直感的に把握することができる。
【0026】
次に、本実施形態の車両用表示装置1の動作について説明する。
コントローラ10は、各種センサから信号を受取り、表示範囲22内で表示領域23を移動制御する。詳しくは、表示領域移動制御手段としてのコントローラ10が、各種センサからの信号に基づいて表示範囲22内での表示領域23の表示位置を決定する。また、表示制御手段としてのコントローラ10が、決定した表示領域23内に各種情報を表示させる。
【0027】
コントローラ10は、加速度センサ32及び横加速度センサ33から、加速度信号及び横加速度信号を定期的に受取っており、これらの信号の大きさに基づいて、表示範囲22における表示領域23の位置を設定する。すなわち、加速度信号及び横加速度信号の値が大きいほど、表示領域23は、基準位置から上下方向及び左右方向への移動距離が大きく設定される。なお、加速度信号及び横加速度信号の値が共に「0」の場合は、表示領域23は、基準位置に設定される。
【0028】
また、コントローラ10は、速度センサ31から速度信号を受取り、障害物センサ37から障害物検出信号を受取り、ナビゲーションシステム38からナビゲーション信号を受取り、燃料センサ39から燃料信号を受取り、ECU40から燃費信号を受取る。そして、これらの信号に基づいて、コントローラ10は、表示位置が設定された表示領域23内の所定位置に、速度情報,障害物情報,ナビゲーション情報,燃料情報及び燃費情報を含む第1情報を表示する。
【0029】
図7(A)−(D)は、車両減速時の表示を示している。
車両減速時、コントローラ10は、加速度センサ32からの加速度信号の値の大きさに基づいて、車両の減速度合を演算し、減速度合に応じて、表示領域23の上方への移動距離及び移動時間を決定する。そして、減速中、コントローラ10は、決定した移動時間で決定した移動距離だけ表示領域23が上方に移動するように、表示領域23の位置を設定する。したがって、表示領域23は、徐々に上方に向けて移動していく。そして、コントローラ10は、この移動していく表示領域23に第1情報を表示する。
【0030】
図7に示すように、表示領域23が上方移動していき、表示領域23上方の外縁部24が小さくなるにしたがって、表示領域23下方の外縁部24が大きくなっていく。付加情報表示制御手段としてのコントローラ10は、この表示領域23の上方移動に連動させて、表示領域23下方の表示スペースに第2情報(付加情報)25を、表示範囲22外から表示範囲22内へ徐々に出現させるように表示する。すなわち、表示領域23の上方への移動に連動して、第2情報25が、表示範囲22の下側から表示範囲22内に徐々に現れるように表示される。
【0031】
図7では、第2情報25は、「[スリップ注意]」という文字と記号の組み合わせからなる情報である。この第2情報25は、車両の減速操作に関連した車両の安全性に関する情報であり、安全運転を促す内容又は注意喚起する内容を含んでいる。コントローラ10は、ABSシステム34からタイヤの滑り率を表す信号を受取っており、この信号に基づいて、減速時に滑り率が所定の値よりも大きくなった場合に、第2情報25を移動表示する。なお、第2情報25として、滑り率を含めて表示してもよい。
なお、第2情報25は、文字・記号以外に、図形,目盛り,色のグラデーション等の視覚で認知できる方法により、また、これらを併用して表示してもよい。
【0032】
図8(A)−(D)は、車両加速時の表示を示している。図8については、車両減速時と異なる部分のみ説明する。
車両加速時、コントローラ10は、加速度センサ32からの加速度信号の値の大きさに基づいて、車両の加速度合を演算し、加速度合に応じて、表示領域23の下方への移動距離及び移動時間を決定する。そして、加速中、コントローラ10は、決定した移動時間で決定した移動距離だけ表示領域23が下方に移動するように、表示領域23の位置を設定する。したがって、表示領域23は、徐々に下方に向けて移動していく。そして、コントローラ10は、この移動していく表示領域23に第1情報を表示する。
【0033】
図8に示すように、コントローラ10は、表示領域23の下方移動に連動させて、表示領域23上方の表示スペースに第2情報25を、表示範囲22外から表示範囲22内へ徐々に出現させるように表示する。
図8では、第2情報25は、「[車間距離注意]」という文字と記号の組み合わせからなる情報である。この第2情報25は、車両の加速操作に関連した車両の安全性に関する情報であり、安全運転を促す内容又は注意喚起する内容を含んでいる。コントローラ10は、障害物センサ37から車両周囲の障害物の検出信号を受取っており、衝突の可能性のある前方障害物(前方車両)との距離及び相対接近速度が所定値を超えた場合に、上記第2情報25を移動表示する。
【0034】
また、図8の例では、コントローラ10は、第2情報25の下方に第3情報26を表示している。この第3情報26も加速操作に関連した車両の安全性に関する情報である。コントローラ10は、ナビゲーションシステム38を介して道路に設置してある交通情報提供システムから受取った渋滞情報と、ナビゲーションシステム38から受取った自車位置とを比較して、進行方向前方で車両渋滞が発生していると判断した場合に、車両渋滞を報知する情報を表示領域23に重畳的に表示する。
【0035】
なお、本実施形態では、障害物センサ37からの障害物の検出信号を用いて、第2情報25を表示するか否かを決定しているが、これに限らず、道路に設置してある交通情報提供システムから受取った道路・交通情報、ナビゲーションシステム38から取得した自車の位置情報、速度センサ31からの自車の速度情報等に基づいて、他の車両や地上設置物等を検出した場合に、第2情報25を表示するように構成してもよい。
なお、コントローラ10は、TCS35からタイヤの滑り率を表す信号を受取っており、この信号に基づいて、加速時に滑り率が所定の値よりも大きくなった場合に、上記第2情報25を移動表示するように構成してもよい。
【0036】
また、車両左右旋回時、コントローラ10は、横加速度センサ33からの横加速度信号の値の大きさに基づいて、車両の横加速度合を演算し、横加速度合に応じて、表示領域23の左右方向への移動距離及び移動時間を決定する。そして、車両旋回中、コントローラ10は、決定した移動時間で決定した移動距離だけ表示領域23が左右方向に移動するように、表示領域23の位置を設定する。したがって、表示領域23は、徐々に左右方向に向けて移動していく。そして、コントローラ10は、この移動していく表示領域23に第1情報を表示する。
【0037】
コントローラ10は、表示領域23の左右方向の移動に連動させて、表示領域23左側又は右側の表示スペースに第2情報25を、表示範囲22外から表示範囲22内へ徐々に出現させるように表示する。第2情報25は、車両の旋回操作に関連した車両の安全性に関する情報であり、安全運転を促す内容又は注意喚起する内容を含んでいる。
【0038】
コントローラ10は、横滑り防止機構36から車両安定性に関する信号(車両の横滑りに関する信号)を受取っており、この信号に基づいて、上記第2情報25を移動表示するように構成されている。第2情報25は、スリップに関する情報(例えば「スリップ注意」)である。
【0039】
なお、車両加減速しながら旋回操作を行った場合、コントローラ10は、加速度合及び横加速度合に応じて、表示領域23を上下方向の移動表示又は左右方向の移動表示のいずれか一方を優先的に選択するように構成されている。また、これに限らず、上下方向及び左右方向を組み合わせて、表示領域23を斜め方向に移動表示し、これに連動させて外縁部24に1つ又は2つの第2情報25を表示するように構成してもよい。
【0040】
このように、本実施形態では、車両加減速時及び旋回時には、車両ドライバが加減速及び旋回動作を体感するのと合致して、表示領域23が上下方向又は左右方向に移動し、さらに、上下左右方向の移動に伴って空いたスペースに徐々に第2情報25が表示されるように構成されている。車両ドライバは、加減速又は旋回動作を体感し、しかも表示領域23が上下左右方向へ移動しているので、加減速又は旋回動作していることを視覚的にも確認することができる。そして、本実施形態では、このような状態で、加減速又は旋回操作に関連する第2情報25が表示領域23の移動に連動して徐々に表示されるように構成されているので、車両ドライバは、新たに出現する第2情報25の予測が可能であり、これを正確且つ容易に理解することが可能となる。
【0041】
また、図9は、近接位置に障害物(歩行者)が検出された場合の表示を示している。
図9に示すように、本実施形態では、走行中、コントローラ10は、障害物センサ37から障害物に関する検出信号を受取った場合、障害物を表す第4情報27a(歩行者),27b(自転車)を表示領域23に表示する。図9では、自車位置に対して左前方及び右前方に障害物が検出されている。
そして、コントローラ10は、左前方の障害物(第4情報27a)が所定距離よりも接近してきた場合、障害物の接近に伴って、表示領域23を障害物と反対側(すなわち障害物との衝突又は接触を回避する方向である右方向)に徐々に移動させる。
【0042】
そして、コントローラ10は、左側に形成される外縁部24の空きスペースに、外縁部24の外側から第2情報25(「[歩行者注意]」)を徐々に移動表示すると共に、車両の安全性に関する第3情報26(図9では交通標識のシンボル)を表示領域23に重畳的に表示する。
これにより、車両ドライバは、表示領域23が右方向に徐々に移動していくことによって、前方左方向の所定距離範囲内に障害物があることを容易に認識することができる。また、車両ドライバは、障害物に関する第2情報25が表示されてくることを予想し、実際に第2情報25が徐々に移動表示されてきた場合には、正確且つ容易にその内容を理解することができる。そして、車両ドライバは、これらの表示に基づき、余裕をもって障害物を回避する操作を行うことができる。
【0043】
以上のように、本実施形態の車両用表示装置1は、表示範囲22の一部をなす表示領域23を、車両の走行状態に応じて、表示範囲22内で徐々に移動表示させるように構成されている。この表示領域23の移動表示は、その移動方向及び基準位置からの移動距離(オフセット量)が、車両の加速度及び横加速度並びに障害物との関係において決定されるものである。このため、車両ドライバは、表示領域23の移動により、周囲状態を含めた車両走行状態を直感的に認識することができる。また、移動表示中の表示領域23における表示形式・表示内容は、原則的に変化しない。したがって、車両ドライバは、表示領域23の移動表示を違和感なく受け入れて認識することができ、そのときの車両の状態を把握することが可能となる。
【0044】
また、車両用表示装置1では、表示領域23の移動に伴って、その周囲に形成される外縁部24に空きスペースが生じるが、このスペースに表示範囲22の外側から徐々に、表示領域23の移動に関連した車両の安全性に関する付加情報を表示するように構成されている。車両ドライバは、付加情報が表示領域23の移動に関連した情報であるため、付加情報を正確且つ容易に理解することができる。
また、車両用表示装置1では、この付加情報を表示するために、追加の表示装置が不要である。これにより、車両用表示装置1では、視認性を確保しつつ、車両ドライバに運転負担を増加させることなく、付加的な情報を提供することが可能である。また、この際、車両用表示装置1では、限られた表示スペース内で、違和感を与えずに正確且つ容易に理解できるように情報を提供することができる。
【0045】
上記実施形態を以下のように改変してもよい。
上記実施形態では、コントローラ10は、加速度センサ32及び横加速度センサ33からの加速度信号及び横加速度信号に基づいて、表示領域23を上下左右方向に移動表示させていたが、これに限られない。例えば、加速度センサ32からの減速信号の代わりにブレーキセンサからのブレーキ信号を用い、加速度センサ32からの加速信号の代わりにアクセルセンサ又はスロットル開度センサからの信号を用いてもよい。また、横加速度センサ33からの横加速度信号の代わりに、操舵角センサからの舵角信号や、ヨーレートセンサからのヨーレート信号を用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、表示領域23が図4に示した質量−ばね−ダンパ系の演算モデルに基づいて挙動するように構成されていたが、これに限らず、液体−気泡モデルに基づいて、表示領域23を挙動させるように構成してもよい。このモデルでは、表示領域23は、減速時に下方移動し、加速時に上方移動し、右旋回時に右方向移動し、左旋回時に左方向移動するように挙動する。
【0047】
さらに、上記実施形態では、図6に示した演算モデルにおいて、質量51と障害物54との間に斥力が働くことととしていたが、これに限らず、これらの間に引力が働くこととしてもよい。この引力の大きさは、質量51と障害物54との距離に反比例する。したがって、障害物54が質量51に近いほど、質量51には大きな引力が働いて、障害物54がある方向に移動する距離が大きくなる。
このような演算モデルを使用して表示領域23を移動表示させる場合、車両が障害物に接近したときに、表示領域23は、障害物の存在する方向に表示範囲22内で移動していく。このとき、車両ドライバは、引力によって表示領域23が障害物に吸い寄せられないように、障害物と反対側に車両を操作すればよいことを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態による車両搭載時の車両用表示装置の斜視図である。
【図2】図1の電気ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による車両用表示装置の表示例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による車両用表示装置の表示制御の説明図である。
【図5】本発明の実施形態による車両用表示装置の表示制御の説明図である。
【図6】本発明の実施形態による車両用表示装置の表示制御の説明図である。
【図7】本発明の実施形態による車両用表示装置の車両減速時の表示制御の説明図である。
【図8】本発明の実施形態による車両用表示装置の車両加速時の表示制御の説明図である。
【図9】本発明の実施形態による車両用表示装置の障害物接近時の表示制御の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用表示装置
2 ステアリングホイール
10 コントローラ
20 表示部
21 表示画面
22 表示範囲
23 表示領域
24 外縁部
25 第2情報
26 第3情報
27a,27b 第4情報
31 速度センサ
32 加速度センサ
33 横加速度センサ
37 障害物センサ
50 円
51 質量
52 ばね
53 ダンパ
54 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両状態に関する情報を表示可能な表示範囲を有する表示手段と、
前記表示手段の表示範囲の一部をなす表示領域に、前記車両状態に関する情報を表示する表示制御手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態に基づいて、前記表示範囲内で前記表示領域を移動させる位置を決定し、この決定した位置に向かって前記表示領域を移動させる表示領域移動制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
車両状態に関する付加情報を、前記表示領域の移動に連動させて前記表示範囲外から表示範囲内へ移動表示させる付加情報表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記走行状態検出手段は、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサであり、
前記表示領域移動制御手段は、車両の加速度に応じて、前記表示領域を前記表示範囲内で車両前後方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記走行状態検出手段は、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサであり、
前記表示領域移動制御手段は、車両の横加速度に応じて、前記表示領域を前記表示範囲内で車両横方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記付加情報は、車両の安定性に関する情報であることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記走行状態検出手段は、車両外部にある障害物を検出する障害物センサであり、
前記表示領域移動制御手段は、前記表示範囲内での前記表示領域の移動方向を、障害物の検出方向又は障害物との衝突を回避する方向に設定すると共に、前記表示領域の移動距離を、車両と障害物との距離に応じた距離に設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記付加情報は、障害物の接近に関する情報であることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120014(P2009−120014A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295723(P2007−295723)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】