説明

車両用表示装置

【課題】関連する複数の警報情報が表示される場合に、ユーザにとって分かり易い表示とすることができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】コンビネーションメータ1のマルチ表示部3において、表示されるウォーニングについて互いに関連するものは優先順位をEEPROM14に設定しておき、ユーザの操作によって表示をキャンセルする際には、その優先順位の低いウォーニングから順にキャンセルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のメータ装置などの、複数の警報情報を表示することができる車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両用のメータ装置には、液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、走行距離などとともに各種ウォーニング(警報情報)を表示することができるマルチ表示部が設けられていることが多い(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図6に、従来の車両用表示装置としてのコンビネーションメータ100を示す。コンビネーションメータ100は、車両速度、エンジン回転等の計測値を表示する複数の計器102と、マルチ表示部103と、マルチ表示部103の表示を切り替える操作スイッチ104と、オドメータとトリップメータとの切り替えやトリップメータのリセットなどを行うオド/トリップスイッチ105と、方向指示器の点灯を示すターンフラッシュ108と、を備えている。そして、コンビネーションメータ100は、周知であるように、複数の計器102とマルチ表示部103との間は見返し106が配置されており、それらを表ガラス107で覆った状態で車両の運転席の前方に配置されている。
【0004】
複数の計器102の各々は、周知であるように、表面に目盛及び数字、文字または記号等の指標が設けられた文字板と、該文字板の前面に配置される指針と、計測量に応じて指針を駆動する内機と、を有して構成している。図6に示した複数の計器102は、速度計(SPEED)102aと回転計(REV)102bとを有している。
【0005】
マルチ表示部103は、液晶ディスプレイで構成され、上部に燃料計表示部103a、中央部に各種ウォーニング表示部103b、下部にオドおよびトリップメータ表示部103cがそれぞれ設けられている。
【0006】
ターンフラッシュ108は、左折の方向指示器の点灯を示す左折ターンフラッシュ108Lと、右折の方向指示器の点灯を示す右折ターンフラッシュ108Rと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−217030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したマルチ表示部3の表示形態は複雑化の一途を辿っており、表示するウォーニングの種類が増えるだけでなく、複数の関連するウォーニング表示が行われるようになっている。例えば、図6の各種ウォーニング表示部103bには、オートクルーズ機能がセットされ先行車を追尾して車間距離を計測する機能が動作中であることを示すウォーニング103b1と、オートクルーズの動作速度範囲外などでオートクルーズ機能はセットされているものの動作自体は停止した状態であることを示すウォーニング103b2と、現在の車間とその車間に対する適正速度とを示すウォーニング103b3と、いったようにオートクルーズ(クルーズコントロール)に関連するウォーニングが表示されている。
【0009】
ここで、マルチ表示部103に複数の関連するウォーニング表示が行われている際に、運転者等のユーザがその情報を確認後、表示をキャンセル(消去)したい場合がある。図6の場合、操作スイッチ104を押すことで順次1つずつウォーニングがキャンセルされるが、単に画面の端から消去するなどの方法ではユーザにとって必要な情報が消去されてしまうこともあり、その場合残りの表示だけでは分かりにくく見づらい表示となる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、関連する複数の警報情報が表示される場合に、ユーザにとって分かり易い表示とすることができる車両用表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、車両で発生する複数の警報情報を同時に表示可能な表示手段と、前記表示手段に表示された前記警報情報の表示を消去する消去手段と、を備えた車両用表示装置において、前記複数の警報情報のうち、互いに関連する警報情報間における優先順位が設定されている優先順位設定手段と、前記消去手段が操作された際に、前記表示手段に前記互いに関連する警報情報が少なくとも2つ以上表示されていた場合は、前記優先順位設定手段に設定された前記優先順位に基づいて前記警報情報を消去させる制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用表示装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記優先順位設定手段には、前記優先順位が前記警報情報の重要度に応じて設定され、前記制御手段が、前記重要度の低い前記警報情報から順に消去させるとともに、前記重要度の最も高い前記警報情報は消去しないようにすることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記優先順位設定手段に、前記警報情報の前記表示手段内における表示位置が、対応する前記警報情報ごとに予め設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、消去手段が操作された際に、表示手段に互いに関連する複数の警報情報が少なくとも2つ以上が表示されていた場合は、制御手段が、優先順位設定手段に設定された優先順位に基づいて警報情報を消去させるので、ユーザにとって必要な情報を残すようにすることができ、分かり易い表示とすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、優先順位設定手段には、優先順位が警報情報の重要度に応じて設定され、制御手段が、重要度の低い警報情報から順に消去させるとともに、制御手段が、最も重要度の高い警報情報は消去しないようにするので、優先順位の高い重要な警報情報を消去することなく最後まで残すことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、優先順位設定手段に、警報情報の表示手段内における表示位置が、対応する警報情報ごとに設定されているので、表示位置が固定され、警報情報の表示数によって表示位置が異なることなく、ユーザにとって分かり易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用表示装置としてのコンビネーションメータの外観を示す正面図である。
【図2】図1に示されたコンビネーションメータのブロック図である。
【図3】図1に示されたマルチ表示部の表示切替動作を示した説明図である。
【図4】図1に示されたマルチ表示部の表示切替に用いる設定を示した表である。
【図5】図1に示されたマルチ表示部の表示切替動作を示したフローチャートである。
【図6】従来の車両用表示装置としてのコンビネーションメータの外観を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態を図1ないし図5を参照して説明する。本発明の一実施形態にかかる車両用表示装置としてのコンビネーションメータ1は、車両速度、エンジン回転等の計測値を表示する複数の計器2と、マルチ表示部3と、マルチ表示部3の表示を切り替える操作スイッチ4と、オドメータとトリップメータとの切り替えやトリップメータのリセットなどを行うオド/トリップスイッチ5と、方向指示器の点灯を示すターンフラッシュ8と、を備えている。そして、コンビネーションメータ1は、周知であるように、複数の計器2とマルチ表示部3との間は見返し6が配置されており、それらを表ガラス7で覆った状態で車両の運転席の前方に配置されている。
【0019】
複数の計器2の各々は、周知であるように、表面に目盛及び数字、文字または記号等の指標が設けられた文字板と、該文字板の前面に配置される指針と、計測量に応じて指針を駆動する内機と、を有して構成している。本実施形態の複数の計器2は、速度計(SPEED)2aと回転計(REV)2bとを有している。
【0020】
表示手段としてのマルチ表示部3は、液晶ディスプレイで構成され、上部に燃料計表示部3a、中央部に各種ウォーニング表示部3b、下部にオドおよびトリップメータ表示部3cがそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では表示手段を液晶ディスプレイで実現する場合について説明するが、これに限らず、例えばプラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、等を用いることができる。
【0021】
ターンフラッシュ8は、左折の方向指示器の点灯を示す左折ターンフラッシュ8Lと、右折の方向指示器の点灯を示す右折ターンフラッシュ8Rと、を有している。
【0022】
コンビネーションメータ1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)14と、モータドライバ16と、LCDドライバ17と、電源回路18と、インタフェース19と、を備えている。
【0023】
制御手段としてのCPU11は、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、CAN(Controller Area Network)通信部15と、を内蔵し、コンビネーションメータ1全体の制御を司り、ROM12に記憶されているプログラムに従った制御を行う。CPU11は、電源回路18を介して車両のバッテリーから供給される電力によって動作する。CPU11は、インタフェース(I/F)19aを介して車両のイグニッションスイッチ(IGN+)のOFF状態からON状態への変化に応じて起動し、IGN+のON状態からOFF状態への変化に応じて動作を終了する。
【0024】
ROM12は、コンビネーションメータ1の表示を制御するためのプログラム等を記憶している。また、記憶手段としてのRAM13は、各種のデータを格納するとともにCPU11の処理作業に必要なエリアを有している。
【0025】
CAN通信部15は、車両に構築されているCAN規格に則したネットワークに通信可能に接続され、CAN規格の通信プロトコルでネットワークに接続された他の電子機器(空調機器やパワーウインドウ及び各種ウォーニングを検出するセンサ等)と通信を行う。CAN通信部15は、CPU11内部で演算等により得られた情報をI/F19bを介して送信先に送信すると共に、他の電子機器からI/F19bを介して受信した情報をCPU11内部に出力する。
【0026】
優先順位設定手段としてのEEPROM14は、電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリであり、CPU11に電気的に接続されている。EEPROM14は、CPU11の設定データなどの各種データを記憶する。
【0027】
モータドライバ16には、速度計2a、回転計2bの2つの計器2が電気的に接続されている。モータドライバ16は、CPU11の制御により各計器2の内機(モータ)を駆動させる。これにより、各計器2は指針を計測量に応じた指示位置まで回動させ、文字板の指標と協働して計測量を表示する。
【0028】
LCDドライバ17には、マルチ表示部3が電気的に接続されており、CPU11の制御によりマルチ表示部3に対して表示データなどを出力して駆動する。
【0029】
また、CPU11には、上述した操作スイッチ4およびオド/トリップスイッチ5が電気的に接続されている。
【0030】
次に、上述した構成のコンビネーションメータ1のマルチ表示部3に関連するウォーニングが表示されている場合に、操作スイッチ4操作による表示の切り替えについて図3を参照して説明する。
【0031】
まず、図3(a)は、マルチ表示部3の各種ウォーニング表示部3bに、オートクルーズ機能がセットされ先行車を追尾して車間距離を計測する機能が動作中であることを示すウォーニング3b1(以下、車間動作中3b1とする)と、オートマチックトランスミッションのシフインジケータ3b4(以下、ATシフトインジケータ3b4とする)のみが表示されている状態である。次に、オートクルーズの動作速度範囲外などでオートクルーズ機能はセットされているものの動作自体は停止した状態となると、図3(b)に示したように、ATシフトインジケータ3b4に代えて、オートクルーズ機能が停止していることを示すウォーニング3b2(以下、クルーズ停止3b2とする)が表示される。そして、必要に応じて、図3(c)に示したように、現在の車間とその車間に対する適正速度とを示すウォーニング3b3(以下、車間表示3b3とする)が表示される。
【0032】
これらの車間動作中3b1とクルーズ停止3b2と車間表示3b3の表示には図4に示したように、ウォーニングの種類ごとにコード、表示位置、順位(優先順位)および表示形態(表示画像)がEEPROM14に予め設定されており、この表示位置と表示形態に基づいて表示が行われている。図4において、コードはウォーニングの種類を識別するための任意の値が設定される項目であり、表示位置は、各種ウォーニング表示部3bの中のどの位置に表示するかを示す座標等が設定される項目であり、順位は、当該ウォーニングの優先順位を設定する項目であって図4では数値が小さいほど優先順位が高くなるようになっている。表示形態は、当該ウォーニングを表示する際に表示する画像等のデータ(或いはその格納位置)を設定する項目である。
【0033】
また、車間動作中3b1とクルーズ停止3b2と車間表示3b3はともにオートクルーズ機能に関連するウォーニング、即ち、互い開連する警報情報であり、ユーザはその情報を確認後、消去手段としての操作スイッチ4を押すことによって表示をキャンセルすることができるようになっている。これは、図4の優先順位に基づいて、優先順位の低いものから順にキャンセルされる。図4の場合は、車間動作中3b1が優先順位が最も高く、次いでクルーズ停止3b2、車間表示3b3が最も低くなっている。この優先順位は各ウォーニングの重要度によって決定されている。つまり、車間動作中3b1はオートクルーズ機能の設定状態を示すウォーニングであることから最も重要とし、次に、オートクルーズ機能が実際に動作していないことを示すウォーニングであるクルーズ停止3b2が2番目の重要度としている。
【0034】
このように優先順位を設定することによって、この3つのウォーニングが表示されている場合は、車間表示3b3、クルーズ停止3b2、車間動作中3b1の順にキャンセルされる。また、この3つのウォーニングのうちいずれか2つが表示されている場合は、2つの優先順位に基づいてキャンセルされるウォーニングが決定される。
【0035】
上述した動作を含むマルチ表示部3の表示切替動作(表示およびキャンセル動作)を図5のフローチャートを参照して説明する。図5に示したフローチャートはCPU11で実行される。
【0036】
まず、ステップS1において、CAN通信部15に接続されたセンサ等の電子機器からウォーニング要求が有るか否かを判断し、有る場合(Yの場合)はステップS2に進み、ない場合(Nの場合)はステップS4に進む。
【0037】
次に、ステップS2において、ウォーニング表示位置を取得してステップS3に進む。本ステップでは、ステップS1で要求のあったウォーニングについて図4に示した表を参照して表示位置を取得する。
【0038】
次に、ステップS3において、ステップS2で取得した表示位置に当該ウォーニングを表示させてステップS4に進む。このとき、表示したウォーニングについては当該ウォーニングが表示されていることをRAM13等に格納しておく。
【0039】
次に、ステップS4において、操作スイッチ4が押されて表示キャンセルが有るか否かを判断し、有る場合(Yの場合)はステップS5に進み、ない場合(Nの場合)はステップS1に戻る。
【0040】
次に、ステップS5において、どのウォーニングが表示されているか表示状態を取得してステップS6に進む。この表示状態はステップS3でRAM13等に格納した情報を取得する。
【0041】
次に、ステップS6において、ウォーニングキャンセル状態を取得してステップS7に進む。ウォーニングキャンセル状態とは図4の優先順位から表示されているウォーニングのうちキャンセルすべきウォーニングを選択することである。
【0042】
次に、ステップS7において、ステップS6で選択されたウォーニングを表示キャンセル対象として当該ウォーニングの出力(表示)を停止させてステップS1に戻る。
【0043】
本実施形態によれば、コンビネーションメータ1のマルチ表示部3において、表示されるウォーニングについて互いに関連するものは優先順位をEEPROM14に設定しておき、ユーザの操作によって表示をキャンセルする際には、その優先順位の低いウォーニングから順にキャンセルするので、ユーザにとって必要な情報を残すようにすることができ、分かり易い表示とすることができる。
【0044】
また、EEPROM14には、優先順位とともに当該ウォーニングの表示位置も設定されているので、表示位置が固定され、ウォーニングの表示数によって表示位置が異なることなく、ユーザが混乱せずに分かり易くすることができる。
【0045】
なお、図3では、ウォーニングの表示順が、車間動作中3b1、クルーズ停止3b2、車間表示3b3となっているように記載されているが、それに限らず、各ウォーニングの表示が必要となった際に表示してもよい。その場合でも、キャンセルは優先順位によって行われるので、よりユーザにとって重要な情報のみを残すことができる。
【0046】
また、優先順位が最も高いウォーニングはキャンセル動作が無効になるようにしてもよい。このようにすることで、互いに関連する機能のウォーニングのうち最も重要なウォーニングを最後まで消去することなく残すことができる。
【0047】
また、上述した実施形態では互いに関連する警報情報としてオートクルーズ機能を例示したが、他に平均燃費や瞬間燃費などの燃料消費に関する警報情報など、複数の警報情報のうち、互いに関連する警報情報間の表示キャンセル動作に適用することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 コンビネーションメータ(車両用表示装置)
3 マルチ表示部(表示手段)
4 操作スイッチ(消去手段)
11 CPU(制御手段)
14 EEPROM(優先順位設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で発生する複数の警報情報を同時に表示可能な表示手段と、前記表示手段に表示された前記警報情報の表示を消去する消去手段と、を備えた車両用表示装置において、
前記複数の警報情報のうち、互いに関連する警報情報間における優先順位が設定されている優先順位設定手段と、
前記消去手段が操作された際に、前記表示手段に前記互いに関連する警報情報が少なくとも2つ以上表示されていた場合は、前記優先順位設定手段に設定された前記優先順位に基づいて前記警報情報を消去させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記優先順位設定手段には、前記優先順位が前記警報情報の重要度に応じて設定され、前記制御手段が、前記重要度の低い前記警報情報から順に消去させるとともに、前記重要度の最も高い前記警報情報は消去しないようにすることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記優先順位設定手段に、前記警報情報の前記表示手段内における表示位置が、対応する前記警報情報ごとに予め設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111355(P2012−111355A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261994(P2010−261994)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】