説明

車両用表示装置

【課題】運転者の視線を検出し、運転者に的確な情報を表示できる車両用表示装置を提供すること。
【解決手段】運転者の視線の方向を検出する視線方向検出手段と、視線方向検出手段が検出した視線の方向から、視線が移動した経路を検出する視線移動経路検出手段と、視線移動経路検出手段が検出した視線の経路に基づき、運転者が予定している行動を検出する予定行動検出手段と、予定行動検出手段が検出した運転者の予定行動に対応した情報を選択する情報選択表示手段と、情報選択表示手段が選択した情報内容を表示する表示装置と、から車両用表示装置を構成した。視線の移動経路から運転者の予定行動を検出するので、的確に運転者の予定行動を検出でき、正確な情報を運転者に表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転に関する情報を、運転者に的確に表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年車両の周囲に撮像機を設置し、車両の前後左右の画像、更には車両周囲の画像を合成して、車両を俯瞰した状態の画像などを、車両の運転室に設けた表示装置に表示させることが行われている。これら各種画像は、例えば、後退動作を行うときには後方画像を表示させたり、車庫入れ時などにおいて、俯瞰画像を表示させるなど、運転者の運転動作に対応させて順次切り替えて表示することも行われている。
【0003】
また特許文献1には、運転中に運転者の視線の方向を検出し、ヘッドアップディスプレィの表示位置を、運転者の視線の方向に合わせて表示する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら運転者は、運転中に各種の動作を行っており、表示装置のスイッチ類を操作して画像を逐一切り換えることは煩雑であり、また運転中の注意力を散漫にさせるおそれもあった。
【0006】
また、運転者の視線方向を検出して、運転者の操作に代えて表示装置の画像を切り換えることも考えられる。しかしながら、運転者は運転中に視線を、道路上の他の車両、交通信号機、各種標識、歩行者、車両の左右に設けられている後方鏡、車両に備えられた各種計器類など、多くの箇所に移動させる。そのため、検出された視線の方向が、運転者の何の行動を希望している視線であるのか、的確に判定することは困難であった。また、運転者の希望する行動を判定するために、一箇所に所定時間注視することを必要とするのでは、その間運転者が前方を注視することなく車両を運転させてしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、運転者の視線の方向から運転者が希望する行動を的確に検出し、必要な情報を表示装置に表示できる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両用表示装置を次のように構成した。
【0009】
運転者の視線の方向を検出する視線方向検出手段と、視線方向検出手段が検出した視線の方向から、視線が移動した経路を検出する視線移動経路検出手段と、視線移動経路検出手段が検出した視線の経路に基づき、運転者が予定している行動を検出する予定行動検出手段と、予定行動検出手段が検出した運転者の予定行動に対応した情報を選択する情報選択表示手段と、情報選択表示手段が選択した情報内容を表示する表示手段と、から車両用表示装置を構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる車両用表示装置によれば、運転者の視線の方向が移動した経路から、運転者が予定している行動を検出するので、運転者の予定行動を的確に検出できる。これは、運転者が右後方鏡を見たことを検出したり、左後方鏡を見たことを検出しただけでは、運転者がどのような動作を予定しているかは判断しにくい。しかしながら、例えば運転者が右後方鏡を見て、左後方鏡を見て、その後後方を表示している表示装置を見るという運転者の一連の行為を判断材料とすると、車両の周囲を確認した後、車両の後方を確認したことから運転者はおそらく後退動作を予定していると判定しても、かかる判定はかなり確実性が高い判定であると判断できるためである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる車両用表示装置を備えた車両の運転室の一実施形態を示す正面図である。
【図2】同車両を示す平面図である。
【図3】同車両用表示装置を示すブロック図である。
【図4】同運転室内を示す正面図である。
【図5】同運転室内を示す正面図である。
【図6】同運転室内を示す正面図である。
【図7】同車両用表示装置の表示内容の一例を示す正面図である。
【図8】同車両用表示装置の表示内容の一例を示す正面図である。
【図9】同車両用表示装置の表示内容の一例を示す正面図である。
【図10】同車両用表示装置の表示内容の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる車両用表示装置の一実施形態について説明する。
図1に、本発明にかかる車両用表示装置を備えた運転室12を示す。図1は、図2に示す車両14の運転室12を、車両後方から前方に向けて見た場合を示している。車両14は図2に示すように、前方にキャブ16を有し、キャブ16の後方に荷箱18が取り付けられた貨物用車両である。運転室12は、キャブ16内に設けられている。
【0013】
運転室12について説明する。運転室12は、図1に示すように前方にフロントウィンドガラス20を備え、フロントウィンドガラス20の上方に天井板22が、右方に右Aピラー24が、左方に左Aピラー26がそれぞれ配置されている。
【0014】
運転室12には、フロントウィンドガラス20の下端から室内側に延びるダッシュボード28が設けてあり、ダッシュボード28には各種メータ類やスイッチ類が取り付けられている。また運転室12には、右方に運転席30が、左方に助手席32が設置されている。運転席30の前方には、ハンドル34が設けてあり、運転席30の左側方には、ギヤポジションレバー36が設けられている。またハンドル34には、ウィンカーレバー38が取り付けられている。
【0015】
更に運転室12には、車両用表示装置10を構成する、表示手段としての表示装置40が上部前方中央に、また運転者撮影機(室内カメラ)42が運転席30の前方に設けられている。表示装置40は、液晶表示装置であり、通常室内ミラーが設置されている位置に、表示画面を運転席30に向けて取り付けられている。表示装置40は、GPS(全地球位置把握システム)に接続し、地図情報や車両14の現在位置、進行方向等を表示するとともに、車両用表示装置10からの各種情報を表示する。室内カメラ42は、運転席30に着座している運転者(図示せず。)の少なくとも顔を撮影する。尚、表示装置40は、天井板22でなく、ダッシュボード28の内部、あるいはダッシュボード28の上部に設けてもよく、更に運転室12の中央でなく、運転席30の前方に設けてもよい。
【0016】
運転室12の外方には、右Aピラー24の近傍に右後方確認用の右後方鏡44が設けてあり、左Aピラー26の近傍に左後方確認用の左後方鏡46および車両前面下部確認用の凸面鏡48が設けてある。
【0017】
更に車両14は、図2に示すように外部に、前方カメラ52と、左右一対の右側方カメラ54および左側方カメラ56と、後方カメラ58が、車外撮影機(車外カメラ)として取り付けられている。
【0018】
前方カメラ52は、車両14のフロントウィンドガラス20の下部中央に、撮影範囲を車両前方に向けて取り付けられている。右側方カメラ54は、キャブ16の右側方に、撮影範囲を後方に向けて取り付けられている。左側方カメラ56は、キャブ16の左側方に、撮影範囲を後方に向けて取り付けられている。後方カメラ58は、荷箱18の後部上端に、撮影範囲を後方に向けて取り付けられている。これら各車外カメラは、少なくとも左右の後方鏡44、および46の死角になる部分を撮影範囲としている。尚、各カメラの設置位置はこれに限るものではない。
【0019】
次に、車両用表示装置10について説明する。
車両用表示装置10は、図3に示すように表示装置40と、室内カメラ42と、制御装置50と、前方カメラ52と、右側方カメラ54と、左側方カメラ56と、後方カメラ58などを備えて構成されている。制御装置50は、前方カメラ52等が撮影した画像を処理するとともに処理した画像を表示装置40に表示させる。
【0020】
更に車両用表示装置10には、ハンドル34の操作検出センサ35や、ギヤポジションレバー36の操作検出センサ37や、ウィンカーレバー38の操作検出センサ39などが接続されている。操作検出センサ35は、ハンドル34が操作されたときの操作量など、操作検出センサ37は、ギヤポジションレバー36の操作により設定されたギヤ段の値、操作検出センサ39は、ウィンカーレバー38が操作されたときの操作状態などをそれぞれ制御装置50に送り出す。
【0021】
更に制御装置50は、主に画像表示を行うため、次に述べるような(1)から(4)の手段を備えている。
【0022】
(1)室内カメラ42が撮影した運転者の顔の画像から、運転者の視線方向を検出する視線方向検出手段。視線方向検出手段は、撮影した運転者の顔の向き、眼球の映像などから、運転者の視線の方向を検出する。
【0023】
(2)視線方向検出手段が検出した運転者の視線の方向を記憶し、視線が移動した経路を検出する視線移動経路検出手段。視線が移動した経路とは、例えば右のバックミラーを見た後、視線を左に移動させ、左のバックミラーを見て、前方を見たことなど、運転者の視線の流れを逐一追跡して連続させたものである。
【0024】
(3)視線移動経路検出手段が検出した運転者の視線の移動経路に基づき、運転者が予定している行動を検出する予定行動検出手段。予定行動検出手段は、視線移動経路検出手段が検出した視線の移動経路から、ある行動に直結した意味を有する視線移動を抽出し、抽出した視線移動経路から運転者が予定している行動を検出する。
【0025】
(4)予定行動検出手段が検出した運転者の予定行動に基づき、予定行動に対応した情報を選択し、選択した情報内容を表示装置40に表示させる情報選択表示手段。情報選択表示手段は、運転者が行っている行動に対して時間を追って表示装置40に画像を送り、所定の画像を表示させることが好ましい。
【0026】
更に制御装置50は、画像処理手段を備えている。画像処理手段は、車両14の周囲を撮影した画像を合成し、例えば、車両14を俯瞰した状態の画像や、車両14の後方を俯瞰した状態の画像などを作成する。
【0027】
次に、車両用表示装置10の作動について説明する。
車両14を運転している間、室内カメラ42で撮影した画像は、視線方向検出手段により、運転者の視線の方向が検出される。視線方向検出手段が検出した視線方向は、視線移動経路検出手段により記憶され、連続した視線の移動経路として検出される。
そして予定行動検出手段が、検出された視線の移動経路と、記憶されている視線の経路パターンとを比較し、一致するものを抽出する。検出された視線移動経路のある組み合わせの中から、記憶されている視線の経路パターンと一致したものが含まれていた場合、その視線の経路パターンに対応した行動を、運転者が予定していると判定する。運転者が予定している行動が判定されたなら、予定行動に合致した画像を、情報選択表示手段が選択して、表示装置40に表示させる。
【0028】
次に、具体的な例を挙げて画像表示について説明する。車両14が走行している間は、表示装置40には図7に示すようなGPS機能を用いたナビゲーション画面が表示されている。あるいは運転者が望む場合は、図8に示すように、後方カメラ58が撮影した車両14の後方の画像が表示される。図8の表示装置40には、車両14の後方を走行している車両80の画像が表示されている。
【0029】
そして図4に示すように、視線を運転者が前方から左後方鏡46に、矢印aに示すように移動させ、そして矢印bに示すように表示装置40に視線を移動させたとする。これは、単に左側方を見ただけではなく、後方を確認した動作が連続して行われていることから左折を予定している場合に行われる視線移動経路である判断される。すると、表示装置40には、左側方カメラ56の画像が、運転者の視線が表示装置40に戻ってから、例えば1秒経過後に表示される。
【0030】
これにより、運転者は、左後方鏡46による確認と、表示装置40による後方確認と、左側方カメラ56の撮影画像による確認が、一連の視線の移動により行うことができる。更に、ウィンカーレバー38の操作行動と、視線の移動とを組み合わせて行ってもよい。
【0031】
また図5に示すように、視線を運転者が前方から右後方鏡44に矢印cに示すように移動させ、そして矢印dに示すように右後方鏡44から左後方鏡46に移動させ、更に矢印eに示すように左後方鏡46から表示装置40に視線を移動させるとする。この視線の移動経路は、後退を予定している場合の移動経路と同一と判断される。すると、表示装置40には、後方カメラ58の撮影による図9に示すような駐車スペースを示す白線82が表示される。そしてその一秒後に、図10に示すような後方画像と、車両14を俯瞰した画像を組み合わせた画像が表示装置40に表示される。これにより、後退時に運転者が必要とする画像が、適宜時間を追って表示装置40に表示される。この場合、ギヤポジションレバー36の操作を組み合わせて表示を行うようにしてもよい。
【0032】
また、図6に示すように、視線を運転者が前方から右後方鏡44に、矢印fに示すように移動させ、そして矢印gに示すように表示装置40に視線を移動させたとする。これは、右折を予定している場合に行われる視線移動経路である判断される。すると、表示装置40には、右側方カメラ54の画像が、運転者の視線が表示装置40に戻ってから、例えば1秒経過後に表示される。
【0033】
以上述べたように、車両用表示装置10によれば、視線の移動経路を用いて運転者の予定行動を判断することから、一点を注視した場合のような視線の方向のみからの判断に比較して、的確な判定が可能となり、正確な表示が実行できる。尚、本発明は、視線移動経路を用いたものであれば、運転者の予定行動でなく、例えば希望するスイッチ類の操作や各種情報の伝達など、その他の用途に用いてもよい。
【0034】
また予定行動検出手段が記憶している比較対象としての視線の経路パターンを、任意に変更したり、新たに設定できるようにしてもよい。このようにすると、運転者等が視線の経路パターンを適宜変更、設定し、より正確な判定ができることなる。更に、予定行動検出手段などに学習機能を設け、運転者の癖などを把握して、視線の経路パターンを修正するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、表示内容の切り替え機能を備えた車両の車両用表示装置に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
10…車両用表示装置 12…運転室 14…車両 20…フロントウィンドガラス 24…右Aピラー 26…左Aピラー 28…ダッシュボード 30…運転席 32…助手席 34…ハンドル 36…ギヤポジションレバー 38…ウィンカーレバー 40…表示装置 42…室内カメラ 44…右後方鏡 46…左後方鏡 48…凸面鏡 50…制御装置 52…前方カメラ 54…右側方カメラ 56…左側方カメラ 58…後方カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の視線の方向を検出する視線方向検出手段と、
前記視線方向検出手段が検出した視線の方向から、視線が移動した経路を検出する視線移動経路検出手段と、
前記視線移動経路検出手段が検出した視線の移動経路に基づき、前記運転者が予定している行動を検出する予定行動検出手段と、
前記予定行動検出手段が検出した前記運転者の予定行動に対応した情報を選択し、表示させる情報選択表示手段と、
前記情報選択表示手段が選択した情報内容を表示する表示手段と、から構成したことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
運転者の視線方向を検出する視線方向検出手段と、
前記視線方向検出手段が検出した視線の方向から、視線が移動した経路を検出する視線移動経路検出手段と、
運転に関する操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、
前記視線移動経路検出手段が検出した視線の経路に基づき、前記運転者が予定している行動を検出する予定行動検出手段と、
前記操作検出手段が検出した運転に関する操作手段の操作内容と前記予定行動検出手段が検出した前記運転者の予定行動に基づき、対応した情報を選択し表示させる情報選択表示手段と、
前記情報選択表示手段が選択した情報内容を表示する表示手段と、から構成したことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記情報選択表示手段は、運転者の視線移動の平均パターンを得て、かかる平均パターンに従って表示装置に表示させる表示内容を切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131329(P2012−131329A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284459(P2010−284459)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】