説明

車両用表示装置

【課題】車両の状態の変化を運転者や同乗者に的確に判断させることができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両の状態を表示する車両用表示装置10は、開口部(目部)18,20および開口部(口部)24を有する顔を模した形状を形成する顔状部16と、目部18,20または口部24に設けられ、目部18,20または口部24の少なくとも一方における表示状態を、車両の状態に応じて変化させる第二文字盤34および第二回転駆動部50からなる表情表示機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両の走行速度、燃料の残量などの車両の状態を表示する車両用表示装置が搭載されている。通常、このような車両用表示装置では、文字盤に沿って移動する指針に文字盤に設けられた目盛や数字を指し示させることにより、車両の状態を表示している。
【0003】
また、特許文献1に開示されている車両用表示装置では、燃料消費量が所定範囲内で走行する低燃費運転状態で走行していると判断されると、当該装置の照明の色を変化させ、運転者に車両が低燃費運転状態で走行していることを報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文字盤の目盛や数字と、指針とによる車両状態の表示を行う通常の車両用表示装置では、車両の状態を的確に表示することはできるものの、その表示を運転者や同乗者が視認しても、表示された内容が車両にとって良好なものなのか、低燃費運転に繋がるものなのか、または安全走行が行われているのかを判断し難い。
【0006】
また、特許文献1に開示されているように、照明の色で低燃費運転状態で走行していることを表現したとしても、そのことが伝わらない場合もある。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、運転者や同乗者に車両の状態の変化を的確に伝達することができることができる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、目部および口部を有する顔を模した形状を形成する顔状部と、
目部または口部に設けられ、目部または口部の少なくとも一方における表示状態を、車両の状態に応じて変化させる表情表示機構と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項1記載の車両用表示装置は、目部および口部を有する顔を模した形状を形成する顔状部を備えている。これにより、運転者や同乗者は、車両用表示装置に顔が形成されていると認識することができる。加えて、顔状部の目部または口部には、表示状態を変化させる表情表示機構が設けられている。一般に、人は、目や口の形状を変化させることにより、顔の表情を変化させている。このようにして人は、顔の表情を変化させているので、人は、顔を構成する一部である目や口の形状が変化するだけでも、顔の表情が変わったと認識することができる。
【0010】
上述したように請求項1記載の車両用表示装置では、顔状部の目部または口部に設けられた表情表示機構の表示状態を変化させるようになっている。このことにより、運転者や同乗者は、顔状部の顔の表情が変化したと認識することができる。加えて、この表情表示機構の表示状態は、車両の状態に応じて変化するようになっている。これにより、顔状部の表情の変化を視認した運転者や同乗者は、車両の状態の変化を的確に判断することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、車両の状態に応じて車両を運転する運転者の運転技術の優劣を評価する運転評価手段を備えており、表情表示機構は、車両の状態に応じた運転評価手段の運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の車両用表示装置では、運転評価手段が評価した運転者の運転技術の優劣に基づいて、表情表示機構は表示状態を変化させている。このことによれば、顔状部の表情は、運転技術の優劣に基づき変化することとなる。したがって、運転者や同乗者は、その車両を運転する運転者の運転技術の優等か否かを的確に判断することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、運転評価手段は、運転者の運転が優等であると評価すると、表情表示機構は、表示状態を笑顔を模した状態に変化させることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の車両用表示装置は、請求項2の運転評価手段が運転者の運転技術が優等であると評価すると、表情表示機構は表示状態を笑顔を模した状態に変化させている。このため、運転技術の評価が優等であると運転者や同乗者は、顔の表情が笑顔と変化したと認識することとなる。ここで、一般的に、笑顔に接した人は、その笑顔に好印象を抱きやすい。請求項3記載の発明では、運転者や同乗者は、運転技術の評価が優等である場合に、顔の表情が笑顔となったように認識することとなるので、運転技術の評価が優等であるということを直感的に判断することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、運転評価手段は、燃料消費量が所定範囲内となる低燃費運転状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価し、表情表示機構は、運転評価手段での運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の車両用表示装置では、運転評価手段は、燃料消費量が所定範囲内となる低燃費運転状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価しているため、この運転評価手段によって得られる運転技術の評価は、低燃費運転状態で走行されているか否かを反映したものとなる。そして、表情表示機構は、運転評価手段が下した評価に基づいて表示を行う。これによれば、顔状部の顔の表情は、低燃費運転状態に基づいたものとなる。よって、この顔の表情を見た運転者や同乗者は、運転者が車両を低燃費運転状態で走行させているか否かを的確に判断することができる。
【0017】
請求項5記載の発明のように、請求項4記載の発明において、表情表示機構が設けられている目部または口部の外部における目部または口部のいずれかに、車両の走行速度を表示する速度表示機構、または車両の燃費を表示する燃費表示部機構設けられていると、車両の低燃費運転状態に応じた顔の表情の変化とともに、車両の走行速度や燃費が表示されることとなる。このため、運転者や同乗者は、この顔の表情の変化とともに、走行速度または燃費の表示を視認することとなる。このことにより、これらの表示を見た運転者や同乗者は、表情表示機構の表示状態の変化によって変わる顔状部の顔の表情が低燃費運転状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、運転評価手段は、車両の走行速度が制限速度範囲内となる安全走行状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価し、表情表示機構は、運転評価手段での運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴としている。
【0019】
請求項6記載の車両用表示装置は、運転評価手段は、車両の走行速度が制限速度範囲内となる安全走行状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価しているため、この運転評価手段によって得られる運転技術の評価は、当該安全走行状態で走行されているか否かを反映したものとなる。そして、表情表示機構は、運転評価手段が下した評価に基づいて表示を行う。これによれば、顔状部の顔の表情は、当該安全走行状態に基づいたものとなる。よって、この顔の表情を見た運転者や同乗者は、車両の走行速度が制限速度範囲内となる安全走行状態で車両が走行しているか否かを的確に判断することができる。
【0020】
請求項7記載の発明のように、請求項6記載の発明において、表情表示機構が設けられている目部または口部の外部における目部または口部のいずれかに、車両の走行速度を表示する速度表示機構が設けられていると、車両の安全走行状態に応じた顔の表情の変化とともに、車両の走行速度が表示されることとなる。このため、運転者や同乗者は、この顔の表情の変化とともに、走行速度の表示を視認することとなる。このことにより、これらの表示を見た運転者や同乗者は、表情表示機構の表示状態の変化によって変わる顔状部の顔の表情が車両の走行速度が制限速度範囲内となる安全走行状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、運転評価手段は、車両の運動により車両に作用する力が所定範囲内となる安全走行状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価し、表情表示機構は、運転評価手段での運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴としている。
【0022】
請求項8記載の車両用表示装置は、運転評価手段は、車両の運動により前記車両に作用する力が所定範囲内となる安全走行状態となっているか否かで運転者の運転技術の優劣を評価している。ここで、車両に設けられている車両を走行させるための操作系の操作を急激に行うと、車両の運動が急激に変化し、車両に作用する力が所定の範囲を超える場合がある。この請求項8記載の車両用表示装置の運転評価手段によれば、上述したように運転者が操作系を急激に操作し、その操作に伴い車両に作用する力が所定の範囲を超えて大きくなった場合に、車両を走行させるための操作系の急激な操作を伴わない穏やかとなる安全走行状態で車両が走行しているか否かを判断することができる。したがって、運転評価手段によって得られる評価は、操作系の急激な操作を伴わない穏やかとなる安全走行状態で走行されているか否かを反映したものとなる。そして、表情表示機構は、運転評価手段が下した評価に基づいて表示を行う。これによれば、顔状部の顔の表情は、当該安全走行状態に基づいたものとなる。よって、この顔の表情を見た運転者や同乗者は、操作系の急激な操作を伴わない穏やかとなる安全走行状態で車両が走行しているか否かを的確に判断することができる。なお、ここでいう操作系とは、車両を走行させる際に運転者が操作するものであり、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、またはステアリングホイールなどがそれにあたる。
【0023】
請求項9記載の発明のように、請求項8記載の発明において、表情表示機構が設けられる目部または口部の外部における目部または口部のいずれかに、車両の運動により前記車両に作用する力を表示する車両運動状態表示機構が設けられていると、車両の安全走行状態に応じた顔の表情の変化とともに、車両の運動状態が表示されることとなる。このため、運転者や同乗者は、この表情の変化とともに、車両の運動状態の表示を視認することとなる。このことにより、これらの表示を見た運転者や同乗者は、表情表示機構によって変化する顔の表情が操作系の急激な操作を伴わない穏やかとなる安全走行状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、顔を模した形状の顔状部の輪郭を発光させる発光部を備えていることを特徴としている。請求項10記載の車両用表示装置の構成によれば、発光部が発光することにより、運転者や同乗者は、顔状部に注視しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に図示するII−II線における車両用表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1および図2に図示する車両用表示装置の電気回路構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す車両用表示装置において、目部となる開口部に走行速度表示がなされ、もう一方の目部となる開口部に低燃費運転状態評価の優劣表示がなされ、口部となる開口部の液晶装置に燃料残量表示がなされる場合の表示例を示す正面図であり、(a)は、低燃費運転状態であり運転評価が優等である場合を示す図であり、(b)は、低燃費運転状態になく運転評価が劣等である場合を示す図であり、(c)は、燃料残量が減少している状態を示す図である。
【図5】図4に示す車両用表示装置が運転評価表示を変更する際の制御を示す制御フローである。
【図6】第二実施形態による車両用表示装置において、目部となる開口部に燃費表示がなされ、もう一方の目部となる開口部に運転者の低燃費運転状態評価の優劣表示がなされる場合の表示例を示す正面図である。
【図7】第三実施形態による車両用表示装置の電気回路構成を示すブロック図である。
【図8】第三実施形態による車両用表示装置が運転評価表示を変更する際の制御を示す制御フローである。
【図9】第三実施形態による車両用表示装置において、目部となる開口部に走行速度表示がなされ、もう一方の目部となる開口部に安全走行状態評価の優劣表示がなされる場合の表示例を示す正面図である。
【図10】第四実施形態による車両用表示装置の電気回路構成を示すブロック図である。
【図11】第四実施形態による車両用表示装置が運転評価表示を変更する際の制御を示す制御フローである。
【図12】第四実施形態による車両用表示装置において、目部となる開口部に車両運動状態表示がなされ、もう一方の目部となる開口部に安全走行状態評価の優劣表示がなされる場合の表示例を示す正面図である。
【図13】車両用表示装置の顔となるカバーの変形例を示す正面図であり、(a)はウサギを擬人化した図であり、(b)はコーヒーカップを擬人化した図であり、(c)は花を擬人化した図であり、(d)はりんごを擬人化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0027】
(第一実施形態)
図1〜3に示すように、本発明の第一実施形態による車両用表示装置10はコンビネーションメータとして機能するものであり、車両のインストルメントパネルに設置される。図1は、本発明の第一実施形態による車両用表示装置10の概略構成を示す正面図である。図2は、図1に図示するII−II線における車両用表示装置10の概略構成を示す断面図である。図3は、図1および図2に図示する車両用表示装置10の電気回路構成を示すブロック図である。
【0028】
車両用表示装置10は、ケース12、カバー16、第一文字盤26、第一回転駆動部48、第二文字盤34、第二回転駆動部50、エコインジケータ52、第一光源60、第二光源62、第三光源64、発光部66および制御部68などから構成されている。
【0029】
ケース12は、車両用表示装置10の各部品を収容するものであり、一方の部位が開口する有底円筒状に形成されている。また、ケース12の側面は、動物を擬人化させた場合の顔の輪郭となるように形成されている。本実施形態では、熊を擬人化させた場合を示している。
【0030】
カバー16は、樹脂製であり、ケース12の開口部14を覆うものである。このカバー16は、開口部14を覆うことにより、擬人化された熊の顔を形成する。カバー16には、目部となる二つの円形の開口部18,20が間隔をあけて設けられている。これら開口部18,20は、目部18,20となる。これらの目部18,20の直径は実質的に同じ大きさとなっている。また、これらの目部18,20から等距離はなれた位置に、これらの目部18,20よりも直径が小さい円形の開口部22が設けられる。この開口部22は鼻部22となる。この鼻部22には、後述するエコインジケータ52が設置される。この鼻部22の目部18,20とは反対側には、矩形状の開口部24が設けられる。この開口部24は口部24となる。この口部24には、後述する液晶表示装置70が設置されている。以上、説明したように、このカバー16は、目部18,20、鼻部22、および口部24が設けられた顔状部16となる。
【0031】
ケース12に顔状部16を被せたときに形成されるケース12の内部空間には、円盤状に形成された第一、第二文字盤26,34が設置される。
【0032】
第一文字盤26は、例えば光透過性を有するポリカーボネートあるいはアクリルからなる光透過性基板に遮光性を有する遮光印刷層を積層してなっており、車室内前方から後方に向う方向を表示方向としてケース12内に設置されている。第一文字盤26は、当該文字盤26の一部が目部18から露出されるように設置される。また、第一文字盤26は、中央部に回転軸28を有し、ケース12内空間で回転可能となっている。回転軸28は表示方向後側に延びており、第一回転駆動部48に連結されている。
【0033】
第一文字盤26には、車室内の運転者や同乗者に向けて表示する目盛30および文字32がそれぞれ複数ずつ設けられている。これら目盛30および文字32は、回転軸28の回転方向に沿って並んで設けられている。目盛30および文字32は、例えば光透過性基板において遮光印刷層の貫通孔から露出する部分からなっており、第一光源60からの光を表示方向後側から前側へ透過させる。
【0034】
第二文字盤34は、例えば光透過性を有するポリカーボネートあるはアクリルからなる光透過性基板に遮光性を有する遮光印刷層を積層してなっており、車室内前方から後方に向う方向を表示方向としてケース12内に設置されている。第二文字盤34は、当該文字盤34の一部が目部20から露出されるように設置される。また、第二文字盤34は、中央部に回転軸36を有し、ケース12内空間で回転可能となっている。回転軸36は表示方向後側に延びており、第二回転駆動部50に連結されている。
【0035】
第二文字盤34には、車室内の運転者や同乗者に向けて表示する意匠40が複数個も受けられている。意匠40は、顔の表情を変化させるような形態となっている。第一意匠42の形態は、目部20から視認可能な位置に第一意匠42が配置されたとき、顔の表情が笑顔と認識できるような目を模したものとなっている。一方、第二意匠44の形態は、目部20から視認可能な位置に第二意匠44が配置されたとき、顔の表情が泣き顔と認識できるような目を模したものとなっている。これら第一、第二意匠42,44は、回転軸36の回転方向に沿って並んで設けられている。第一、第二意匠42,44は、例えば光透過性基板において遮光印刷層の貫通孔から露出する部分からなっており、第二光源62からの光を表示方向後側から前側へ透過させる。
【0036】
指針46は、アクリルなどの樹脂からなっており、当該指針46の先端が目部18の内側に配置されるように顔状部16に固定されている。本実施形態では、指針46は蜂を模して形成されており、目部18の内側に配置される先端は、蜂の腹部に備わっている針となっている。指針46は、針状の先端が目部18から露出される目盛30および文字32を目部18内で指し示す位置に設置される。
【0037】
第一、第二回転駆動部48,50は、例えばステッピングモータであり、第一、第二文字盤26,34の表示方向後側に設置されている。第一回転駆動部48の出力軸は、第一文字盤26の回転軸28に連結されている。第二回転駆動部50の出力軸は、第二文字盤34の回転軸36に連結されている。通電によって第一、第二回転駆動部48,50は、回転軸28,36とともに両文字盤26,34を回転させる。これら第一、第二回転駆動部48,50は、回路基板78上に実装されており、回路基板78上に実装されている制御部68により駆動制御される。具体的には、制御部68が第一、第二回転駆動部48,50への通電を制御することによって、両文字盤26,34の回転を制御する。
【0038】
鼻部22に設けられるエコインジケータ52は、低燃費運転状態で運転者が車両を走行させたときに発光するものである。エコインジケータ52は、プリズム54、キャップ58、および第三光源64などから構成されている。
【0039】
なお、ここで、低燃費運転状態とは、燃料消費量が所定の範囲内のとなるように運転した状態のことをいう。低燃費運転状態で車両を運転することにより、燃料の消費が抑えられ燃料を節約することができるか、化石燃料の消費を抑えたり、または化石燃料の燃焼などによって生じる有害物質や二酸化炭素の発生、排出を抑えることができる。
【0040】
プリズム54は、第三光源64からの光を表示方向前側に向って導く導光性の樹脂材料からなっている。プリズム54は円筒状に形成されており、当該プリズム54の先端が鼻部22より表示方向前側に突き出るように設置されている。プリズム54の先端には、第三光源64から放射され、プリズム54によって導かれた光を顔状部16の表示方向前側の表面に沿って放射する反射部56を有する。キャップ58は、プリズム54から放射された光を透過可能となる樹脂材料からなっており、鼻部22を表示方向前側から覆うようにして顔状部16に設置されている。キャップ58の底部における表示方向前側の表面には、「ECO」という意匠が設けられている。この意匠は、例えば光透過性を有するキャップ58の底部において遮光印刷層を積層させることにより形成されており、「ECO」の文字部分はキャップ58の底部において遮光印刷層の貫通孔から露出する部分からなっている。第三光源64から放射された光は、プリズム54の反射部56によって反射され、その反射光は、プリズム54の側面から顔状部16の表示方向前側の表面に沿って放射される。プリズム54から放射された反射光の一部は、キャップ58の底部に向って進み、キャップ58を発光させる。
【0041】
顔状部16には、顔状部16の外縁に沿って発光部66が設けられている。発光部66は、顔状部16の下辺の部位を除く全ての部位を囲むようにして顔状部16に設けられている。発光部66は、プリズム54から放射された上記反射光を表示方向前側に向けて反射する部材である。このように発光部66がプリズム54から放射された上記反射項光を反射することにより、運転者や同乗者から見ると、発光部66が発光表示されているように見える。また、発光部66は、顔状部16の外縁に沿って設けられているので、発光部66が発光表示されることにより、運転者や同乗者からは顔状部16の顔の輪郭が発光表示しているように見える。これにより、運転者や同乗者は、顔として認識される顔状部16に注視することとなる。
【0042】
第一〜第三光源60,62,64は、例えば発光ダイオードを主体に構成される。第一光源60は図1に示すように、目部18を表示方向後側に投影したときに回路基板78上に形成される領域内に位置するように回路基板78上に実装されている。第二光源62は図1に示すように、目部20を表示方向後側に投影したときに回路基板78上に形成される領域内に位置するように回路基板78上に実装されている。そして、第三光源64は、図1に示すように鼻部22を表示方向後側に投影したときに回路基板78上に形成される領域内に位置するように回路基板78上に実装されている。これら第一〜第三光源60,62,64は、制御部68により点灯制御される。本実施形態では、第一、第二光源60,62は、通電により白色光を出射し、第三光源64は通電により緑色光を出射する。
【0043】
液晶表示装置70は、口部24に嵌め込まれて設置されている。液晶表示装置70は、例えば複数の液晶画素を二次元配列したTFTなどからなる液晶パネルと、液晶パネルの表示方向後側に設けられ液晶パネルを透過照明するバックライトとから構成されている。液晶パネルの表面には表示方向前側を向く表示画面72が形成されており、液晶表示装置70は、制御部68から送られる映像信号に基づいて表示画面72の構成画素を駆動しつつ、バックライトを点灯して液晶パネルの表示画面72を発光させることにより、燃料残量に関する画像を表示する。
【0044】
図3に示すように、制御部68は、回路基板78上に実装される例えばマイクロコンピュータを主体とするものである。制御部68には、第一、第二回転駆動部48,50、第一〜第三光源60,62,64、および液晶表示装置70が接続されている。また制御部68には、フューエルセンダゲージ80および車両におけるController Area Network(CAN)82が接続されている。フューエルセンダゲージ80は、車両に搭載されている燃料タンク内の燃料残量を検出する検出器であり、燃料残量に応じた燃料残量信号を出力する。CAN82は、車両に搭載された各種装置間での車両情報の伝送を所定のプロトコルに従って実現する車載ネットワークシステムである。CAN82には、二本の通信線からなるバスに種々の装置が接続されている。CAN82には、パワーマネジメント制御装置84、パワートレイン制御装置86、およびABS制御装置88が接続されている。
【0045】
パワーマネジメント制御装置84は、車両内の各種装置への電力を制御するものであって、エンジンスイッチを備えている。エンジンスイッチが運転者によってON操作されることにより、エンジンスイッチON信号がパワーマネジメント制御装置84からCAN82に出力される。このON信号により、バッテリーから各種装置へ電力が供給される。
【0046】
パワートレイン制御装置86は、車両に搭載された内燃機関や変速機などを制御するものであって、内燃機関の運転状態が、車両において行われた運転について、排気ガスの排出を抑えた状態、または、エネルギーの消費を抑えた状態のうちの少なくともいずれか一方の状態となっており、環境にやさしい状態となっていると判断すると車両が低燃費運転状態であるとして、低燃費運転状態信号をCAN82に出力する。
【0047】
ABS制御装置88は、減速時、加速時および旋回時における優れた車両安定性を確保するために、ブレーキアクチュエータを駆動制御して、各車輪のブレーキ油圧を制御するものであって、各車輪に設けられている車輪速センサからの信号を車速信号に変換し、当該車速信号をCAN82に出力する。
【0048】
制御部68は、各種制御装置84,86,88やフューエルセンダゲージ80から出力された各種信号をCAN82などを通じて取得し、取得した各種信号に基づいて、第一、第二回転駆動部48,50、第一〜第三光源60,62,64、および液晶表示装置70を制御する。
【0049】
以上、本実施形態の車両用表示装置10の構成について説明した。次に、車両用表示装置10の作動、作用ならびに効果について説明する。制御部68は、CAN82を通じてパワーマネジメント制御装置84からのエンジンスイッチON信号を取得すると、車両用表示装置10の作動を開始する。以下、本実施形態の車両用表示装置10が備える走行速度表示、運転評価表示、および燃料残量表示について図1〜3に図4および図5を加えて説明する。図4は、図1に示す車両用表示装置10において、目部となる目部18に走行速度表示がなされ、もう一方の目部となる目部20に低燃費運転状態評価の優劣表示がなされ、口部となる口部24の液晶表示装置70に燃料残量表示がなされる場合の表示例を示す正面図であり、(a)は、低燃費運転状態であり運転評価が優等である場合を示し、(b)は、低燃費運転状態になく運転評価が劣等である場合を示し、(c)は、燃料残量が減少している状態を示している。図5は、図4に示す車両用表示装置10が運転評価表示を変更する際の運転評価制御フローである。
【0050】
(走行速度表示)
車両用表示装置10の作動が開始されると、制御部68は、第一光源60への通電を制御して、第一光源60を点灯させる。さらに制御部68は、CAN82を通じて取得する車速信号に基づいて、第一回転駆動部48への通電を制御して、第一回転駆動部48の回転駆動を制御する。具体的には、目部18から露出する目盛30および文字32と、指針46とにより表示される走行速度が、取得した車速信号に対応した走行速度となるような第一文字盤26の回転角を制御部68は算出する。そして、制御部68は、算出した第一文字盤26の回転角が実現されるように第一回転駆動部48を制御する。
【0051】
このようにして第一回転駆動部48が制御され、第一文字盤26が回転すると、目部18には、車速信号に対応する走行速度に応じた目盛30および文字32が露出されることとなる(図4(a)〜(c)を参照)。本実施形態ではこのようにして目部18内に走行速度が表示されるのである。
【0052】
(運転評価表示)
次に、走行速度表示を行う目部18に隣接して設けられる目部20に運転者の運転の評価結果を表示する制御について説明する。本実施形態では、運転者の運転の評価の優劣を、燃料消費が所定の範囲内となる低燃費運転状態となっているか否かで判断する例で説明する。ここでは、図5に図示する制御フローを参照しながら説明する。
【0053】
車両用表示装置10の作動が開始されると、ステップS10では、制御部68は、第二光源62への通電を制御して、第二光源62を点灯させる。続くステップS20では、制御部68は、車両が低燃費運転状態で走行しているか否かを判断する。具体的には、パワートレイン制御装置86から送られCAN82を通じて低燃費運転状態信号を取得したか否かによって、車両が低燃費運転状態で走行しているか否かを判断している。低燃費運転状態信号を取得した場合は、低燃費運転状態と判断し、優等であると評価する。一方、低燃費運転状態信号を取得しない場合は、低燃費運転状態となっていないと判断し、劣等であると評価する。
【0054】
低燃費運転状態であると評価すると、処理はステップS30に移行し、制御部68は、第二回転駆動部50の回転駆動を制御することにより、顔の表情として笑顔として認識できうる目を模した第一意匠42を目部20から露出させる。具体的には、制御部68は、目部20から第一意匠42が露出される第二文字盤34の回転角を算出する。そして、制御部68は、その算出された回転角が実現されるように第二回転駆動部50の回転駆動を制御する。これにより、図4(a)に示すように、第一意匠42が目部20から露出される。第一意匠42が目部20から露出されることにより、運転者や同乗者は、顔の表情が笑顔となった車両用表示装置10を視認することとなる。
【0055】
続いてステップS40では、制御部68は、第三光源64への通電を制御して、第三光源64を点灯させる。これにより、発光部66とキャップ58が発光表示される。このように、ステップS30およびステップS40が実行されることにより、図4(a)に示すように、車両用表示装置10の顔の表情は、笑顔となり、顔の輪郭が強調されることとなる。
【0056】
一方、ステップS20において、制御部68が低燃費運転状態でないと評価すると、処理はステップS50に移行し、制御部68は、第二回転駆動部50の回転駆動を制御することにより、顔の表情として泣き顔として認識させうる目を模した第二意匠44を目部20から露出させる。具体的には、制御部68は、目部20から第二意匠44が露出される第二文字盤34の回転角を算出する。そして、制御部68は、その算出された回転角が実現できるように第二回転駆動部50の回転駆動を制御する。これにより、図4(b)に示すように、第二意匠44が目部20から露出される。この状態の車両用表示装置10を見た運転者や同乗者は、顔の表情が泣き顔となった車両用表示装置10を視認することとなる。なお、図5に示す制御フローは、車両の内燃機関が停止し、車両用表示装置10への電力の供給が停止するまで繰り返し実行される。
【0057】
以上、説明したように本実施形態では、車両が低燃費運転状態にあるか否かを評価し、その評価結果を目部20内に表示するようにしている。しかも、ここでの表示は、評価結果に基づいて顔の表情が変化するような表示形態となっている。このため、運転者や同乗者はこの顔の表情を視認することにより車両が低燃費運転状態か否か、言い換えると運転評価が優等であるのか否かを的確に判断することができるのである。
【0058】
ここで、一般的に、笑顔に接した人は、その笑顔に好印象を抱きやすい。本実施形態では、低燃費運転状態であり運転評価が優等であると評価された場合に、顔状部16の表情が笑顔となる。このことによれば、笑顔を認識した運転者や同乗者は、車両が低燃費運転状態であり運転評価が優等であると直感的に判断することができる。
【0059】
また、本実施形態では、低燃費運転状態と比較的関連する走行速度表示を運転評価表示とともにしている。このことによれば、運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価とともに、目部18内の走行速度表示を視認することとなる。これらの目部18,20内の表示を見た運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価が低燃費運転状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、低燃費運転状態となった場合に、顔状部16に設けられている発光部66が発光表示されるので、低燃費運転状態となっていることを運転者や同乗者に対して強く主張することができる。
【0061】
(燃料残量表示)
車両用表示装置10の作動が開始されると、制御部68は、液晶表示装置70を制御して、表示画面72に図4(a)〜(c)に示すような燃料計を表示する。燃料計は、CAN82を通じて取得する燃料残量信号に基づいて表示画面72に表示される。表示画面72には、目部18,20側に燃料計意匠74が表示され、その燃料計意匠74の下方に燃料残量を示す残量グラフ76が表示される。燃料計意匠74は、中央に燃料計を図案化したシンボル、燃料タンクに燃料が残っていない状態を示す「E」(エンプティ)、および燃料タンクが燃料で満たされている状態を示す「F」(フル)からなっている。残量グラフ76は、下方に突出するような円弧状の線となっており、円弧状の線の両端がそれぞれ「E」と「F」の表示の下方に配置されるようになっている。残量グラフ76は、燃料残量に応じて長さが変化するようになっており、例えば、燃料タンクが燃料で満たされている状態では、図4(a)または(b)に示すように、円弧状の線が「E」から「F」まで延びている状態となっている。車両が運転され燃料が消費されると、図4(c)に示すように残量グラフ76の長さが短くなる。残量グラフ76の長さは、燃料残量信号がCAN82を通じて制御部68に入力される燃料残量信号に基づいている。制御部68は、入力される燃料残量信号に基づき残量グラフ76の長さを調整する。
【0062】
このように表示される燃料計では、液晶表示装置70が口部としての口部24に嵌め込まれている。燃料残量を示す残量グラフ76は、円弧状の線が下方に向って突出するような線となっているため、運転者や同乗者は、この残量グラフ76を口として認識することとなる。例えば、燃料タンクに燃料が満たされている状態(図4(a)、(b))では、顔の表情、特に口元が笑顔となる。燃料が少なくなり、残量グラフ76が短くなると、顔の表情、特に口元が無表情となる。液晶表示装置70の表示画面72に上述したような形態で燃料残量を表示すれば、燃料残量に応じて車両用表示装置10の顔の表情を変化させることができる。
【0063】
この燃料残量表示では、燃料残量に基づいて残量グラフ76の長さが変化すると顔の表情が変化する。このように、燃料残量に基づいて顔の表情が変化するとので、運転者や同乗者は、燃料残量の状態の良し悪しを的確に判断することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、第二文字盤34および第二回転駆動部50、ならびに液晶表示装置70が特許請求の範囲に記載の「表情表示機構」に相当する。また、ステップS20を実行する制御部68が特許請求の範囲に記載の「運転評価手段」に相当する。
【0065】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。第二実施形態による車両用表示装置100は、第一実施形態による車両用表示装置10の変形例である。第二実施形態は、図6に示すように、目部18内に表示させる内容が走行速度ではなく、燃費である点で第一実施形態と異なっている。以下、異なった点だけを図1〜4および図6を参照しながら説明する。
【0066】
本実施形態では、図6に示すように、第一文字盤26に設けられる目盛130および文字132が走行速度を表すものではなく、燃費を表すものに変更される。このように、第一文字盤26の目盛130および文字132が変更されることにより、目部18内には車両走行時の燃費が表示されることとなる。ここで言う燃費とは、単位燃料消費量で走行可能な走行距離を意味している。
【0067】
また、CAN82に接続されるパワートレイン制御装置86は、低燃費運転状態信号だけでなく、燃費に関する燃費信号を出力するようになっている。これにより、制御部68は、燃費信号も取得することが可能となる。制御部68は、取得した燃費信号に基づいて、第一回転駆動部48への通電を制御して、第一回転駆動部48の回転駆動を制御する。具体的には、目部18から露出する目盛130および文字132と、指針46とにより表示される燃費が、取得した燃費信号に対応した燃費となるような第一文字盤26の回転角を制御部68は算出する。そして、制御部68は、算出した第一文字盤26の回転角が実現されるように第一回転駆動部48を制御する。
【0068】
このようにして第一回転駆動部48が制御され、第一文字盤26が回転すると、目部18には、燃費信号に対応する燃費に応じたものとなるような目盛130および文字132が露出されることとなる(図6を参照)。本実施形態ではこのようにして目部18内に燃費が表示されるのである。
【0069】
この実施形態では、目部18内に低燃費運転状態と非常に関連が高い燃費を表示させているので、運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価とともに、目部18内の燃費表示を視認することとなる。これらの目部18,20内の表示を見た運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価が低燃費運転状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0070】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態を図面に基づいて説明する。第三実施形態による車両用表示装置200は、第一実施形態による車両用表示装置10の変形例である。第三実施形態は、運転者の運転の評価する項目が低燃費運転状態であるか否かではなく、制限速度範囲内の走行速度で走行する安全走行状態であるか否かである点で第一実施形態と異なっている。以下、異なった点だけを図1〜4に加え図7〜9を参照しながら説明する。
【0071】
本実施形態では、図7に示すように、図3に示す電気回路に加え、ナビゲーション制御装置90がCAN82に接続されている。このナビゲーション制御装置90は、記憶されている地図を液晶表示装置などの画面に映し出すとともに、GPSアンテナからの自車両の走行位置を画面上に地図と併せて表示させる装置である。ナビゲーション制御装置90は、記憶されている地図の道路情報である制限速度情報も記憶しており、現在自車両が走行している道路の制限速度情報をCAN82に出力する。
【0072】
本実施形態では、図9に示すように、目部18内には、走行速度が表示されており、目部20内には、走行速度が現在走行している道路の制限速度範囲内となるような安全走行状態にあるか否かの評価が表示されている。本実施形態では、制限速度範囲内の速度で走行している場合には、安全走行状態にあるとして、顔の表情が笑顔となり、安全走行状態にない場合には、顔の表情が泣き顔となる。顔の表情の変化させる構造については、第一実施形態と同じであるためここでは説明を省略する。
【0073】
このような制御は、図4のステップS20を図8に示すステップS100に替えるだけで行える。図8はステップS100のみを示している。他のステップについては図4で説明したとおりであるため、ここではステップS100についてだけ説明する。
【0074】
ステップS100では、制御部68は、車両の走行速度が現在走行してる道路の制限速度以内で走行する安全走行状態にあるか否かを判断する。具体的には、制御部68は、ABS制御部68からCAN82を通じて車速信号と、ナビゲーション制御装置90からCAN82を通じて制限速度情報とを取得する。そして、制御部68は、車速信号に対応する走行速度が制限速度情報に対応する制限速度以内であるか否かを判断する。走行速度が制限速度以内であれば、制御部68は、車両は安全走行状態であるとして、処理をステップS30に進める。走行速度が制限速度を上回っていれば、制御部68は、車両は安全走行状態にないとして、処理をステップS50に進める。このようなステップS100をステップS20に替えて制御フローに組み込むことにより、目部20内の運転評価の表示は、制限速度範囲内で走行する安全走行状態にあるか否かが反映されたものとなる。
【0075】
また、本実施形態では、もう一方の目部18内には車両の走行速度を表示するようにしている。このことによれば、運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価の表示とともに、目部18内の走行速度表示を視認することとなる。これら目部18,20内の表示を見た運転者や同乗者は、目部20内に表示される運転評価が制限速度範囲内で走行する安全走行状態によるものであるということを的確に判断することができる。
【0076】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態を図面に基づいて説明する。第四実施形態による車両用表示装置300は、第一実施形態による車両用表示装置10の変形例である。第四実施形態は、運転者の運転の評価する項目が低燃費運転状態であるか否かではなく、車両の運動により車両に作用する力が所定の範囲内となる安全走行状態であるか否かという点で第一実施形態と異なっている。以下、異なった点だけを図1〜4に加え図10〜12を参照しながら説明する。
【0077】
本実施形態では、図10に示すように、図3に示す電気回路に加え、ヨーレートセンサ92がCAN82に接続されている。このヨーレートセンサ92は、車両の前後左右の加速度を検出することが可能なセンサであり、車両の姿勢制御に使用される。ヨーレートセンサ92は、前後左右それぞれの方向の加速度に応じた加速度信号をCAN82に出力する。これらヨーレートセンサ92が出力する前後左右方向の加速度信号が示す加速度は、車両の運動により車両に作用する力を間接的に示している。また、これらの加速度信号に対応した各方向の加速度に基づいて、車両を走行させるために使用する操作系(アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイールなど)の操作を急激に行ったか否かを判断することができる。
【0078】
ここで、操作系を急激に操作すると、車両の運動が急激に変化する場合がある。車両の運動が急激に変化すると、例えば、運転者がブレーキペダルを急激に踏むと、車両前方への加速度が大きくなり、車両に作用する車両前方への力の大きさが大きくなり、所定範囲を超える場合がある。このように、車両に作用する力は、運転者の操作系の操作を急激に行ったか否かと関連している。よって、車両の運動によって車両に作用する力、つまりヨーレートセンサ92が出力する加速度信号に対応する加速度が所定の範囲内にあるか否かを判断することにより、運転者が操作系の操作を急激に行ったか否かを判断することができる。したがって、車両の運動により車両に作用する力が所定の範囲内となっているか否か、つまりヨーレートセンサ92から出力される加速度信号から得られる各方向の加速度が所定範囲内となっているか否かを判断することによれば、上記操作系の操作を急激に行っていない穏やかな運転を運転者が行っている安全走行状態にあるか否かを判断することができる。
【0079】
本実施形態では、図12に示すように、目部18内には、車両の運動状態が表示されており、目部20内には、車両運動により車両に作用する力が所定の範囲内となる安全走行状態にあるか否かの評価が表示されている。本実施形態では、車両運動により車両に作用する力が所定の範囲内、つまりヨーレートセンサ92から出力される加速度信号に対応する各方向の加速度が所定の範囲内で走行している場合には、安全走行状態にあるとして、顔の表情が笑顔となり、安全走行状態にない場合には、顔の表情が泣き顔となる。顔の表情の変化させる構造については、第一実施形態と同じであるためここでは説明を省略する。
【0080】
このような制御は、図4のステップS20を図11に示すステップS200に替えるだけで行える。図11はステップS200のみを示している。他のステップについては図4で説明したとおりであるため、ここではステップS200についてだけ説明する。
【0081】
ステップS200では、制御部68は、車両運動により車両に作用する力が所定の範囲内となる安全走行状態にあるか否かを判断する。この判断により、車両の操作系の操作を急激に行っていない穏やかな運転を運転者が行っている安全走行状態にあるか否かを判断することができる。
【0082】
具体的には、制御部68は、ヨーレートセンサ92からCAN82を通じて各方向の加速度信号を取得する。そして、制御部68は、各方向の加速度信号が所定の範囲内であるか否かを判断する。各方向の加速度信号が所定の範囲内であれば、制御部68は、車両は安全走行状態であるとして、処理をステップS30に進める。各方向の加速度信号が大きく、所定の範囲を超えていれば、制御部68は、車両は安全走行状態にないとして、処理をステップS50に進める。このようなステップS200をステップS20に替えて制御フローに組み込むことにより、目部20内の運転評価の表示は、車両運動により車両に作用する力が所定の範囲内となる安全走行状態、言い換えると上記操作系の操作を急激に行っていない穏やかな運転を運転者が行っている安全走行状態にあるか否かが反映されたものとなる。
【0083】
一方、目部18には、液晶表示装置310が嵌め込まれている。この液晶表示装置310の表示画面320には、車両運動の状態が表示される。具体的には、図12に示すように、表示画面320上を前後左右に移動可能な丸状部330が表示される。制御部68は、液晶表示装置310を制御することにより、表示画面320上に表示される丸状部330を移動させる。この丸状部330は、制御部68が取得するヨーレートセンサ92からの各方向の加速度信号に基づいて移動する。制御部68が当該センサ92から信号を取得していない状態では、丸状部330は表示画面320の中央に位置する。制御部68が当該センサ92から、例えば車両前方への加速度信号(減速する際に出力される信号)を取得すると、制御部68はその信号に応じて丸状部330を上方に移動させる。当該加速度が大きければ大きいほど、制御部68は、表示画面320上の丸状部330を中央部から遠ざかる位置に移動させる(図12を参照)。
【0084】
後方への加速度信号(加速する際に出力される信号)を制御部68が取得すると、制御部68は、その加速度の大きさに応じて表示画面320上の丸状部330を下方に移動させる。左右方向への加速度信号(車両が旋回する際に出力される信号)を制御部68が取得すると、制御部68は、その加速度の方向および大きさに応じて表示画面320上の丸状部330を左右に移動させる。複数の方向の加速度信号を取得した場合、制御部68は、得られた加速度信号の方向を足し合わせた位置に丸状部330を移動させる。
【0085】
また、本実施形態では、上述したように目部18内に車両の運動状態を表示するようにしている。このため、目部18内に表示される運転評価の表示が、車両の操作系の操作を急激に行っていない穏やかな運転を運転者が行う安全走行状態を反映させたものとなっていることを運転者や同乗者に認識させることができる。
【0086】
なお、本実施形態において、ステップS100を実行する制御部68は、特許請求の範囲に記載の「運転評価手段」に相当する。
【0087】
(その他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0088】
例えば、図13(a)〜(d)に示すように、生物や無生物を擬人化したものを利用しても良い。図13(a)はウサギを擬人化したものであり、図13(b)はコーヒーカップを擬人化したものであり、図13(c)は花を擬人化したものであり、図13(d)はりんごを擬人化したものである。
【0089】
これら擬人化したものの顔にはそれぞれ、少なくとも目部18,20が設けられており、第一〜第四実施形態のように、それぞれの目部18,20に車両の状態(走行速度、燃費、または車両運動状態)を表示させる機構を設けるとともに、運転評価(低燃費運転状態、または安全走行状態)の結果を表示する機構を設ければよい。
【0090】
上記第一〜第四実施形態では、二つの目部18,20の一方に車両の状態(走行速度、燃費、または車両運動状態)を表示させ、他方に運転評価(低燃費運転状態、または安全走行状態)の結果を表示させるようにしているが、二つの目部18,20に運転評価の結果を表示させ、口部24に車両の状態を表示させるようにしてもよい。
【0091】
また、上記第一〜第三実施形態では、車両の状態、および運転評価の表示は、第一、第二文字盤26,34を第一、第二回転駆動部48,50によって回転させることにより、行っているが、目部18,20に液晶表示装置をはめ込み、液晶表示装置の表示画面に表示させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 車両用表示装置、12 ケース、16 カバー(顔状部)、18 開口部(目部)、20 開口部(目部)、24 開口部(口部)、26 第一文字盤、30 目盛、32 文字、34 第二文字盤(表情表示機構)、42 第一意匠、44 第二意匠、46 指針、48 第一回転駆動部、50 第二回転駆動部(表情表示機構)、52 エコインジケータ、60 第一光源、62 第二光源、64 第三光源、66 発光部、68 制御部、70 液晶表示装置、72 表示画面、74 燃料計意匠、76 残量グラフ、78 回路基板、80 フューエルセンダゲージ、82 CAN、84 パワーマネジメント制御装置、86 パワートレイン制御装置、88 ABS制御装置、90 ナビゲーション制御装置、92 ヨーレートセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目部および口部を有する顔を模した形状を形成する顔状部と、
前記目部または前記口部に設けられ、前記目部または前記口部の少なくとも一方における表示状態を、前記車両の状態に応じて変化させる表情表示機構と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両の状態に応じて前記車両を運転する運転者の運転技術の優劣を評価する運転評価手段を備えており、
前記表情表示機構は、前記車両の状態に応じた前記運転評価手段の運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記運転評価手段は、前記運転者の運転技術が優等であると評価すると、
前記表情表示機構は、前記表示状態を笑顔を模した状態に変化させることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記運転評価手段は、燃料消費量が所定範囲内となる低燃費運転状態となっているか否かで前記運転者の運転技術の優劣を評価し、
前記表情表示機構は、前記運転評価手段での前記運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表情表示機構が設けられている前記目部または前記口部の外部における前記目部または前記口部のいずれかに、前記車両の走行速度を表示する速度表示機構、または前記車両の燃費を表示する燃費表示機構のいずれかが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記運転評価手段は、前記車両の走行速度が制限速度範囲内となる安全走行状態となっているか否かで前記運転者の運転技術の優劣を評価し、
前記表情表示機構は、前記運転評価手段での前記運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記表情表示機構が設けられている前記目部または前記口部の外部における前記目部または前記口部のいずれかに、前記走行速度を表示する速度表示機構が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記運転評価手段は、車両の運動により前記車両に作用する力が所定範囲内となる安全走行状態となっているか否かで前記運転者の運転技術の優劣を評価し、
前記表情表示機構は、前記運転評価手段での前記運転技術の評価に基づいて、表示状態を変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記表情表示機構が設けられる前記目部または前記口部の外部における前記目部または前記口部のいずれかに、前記車両の運動により前記車両に作用する力を表示する車両運動状態表示機構が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
顔を模した形状の前記顔状部の輪郭を発光させる発光部を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−37376(P2012−37376A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177581(P2010−177581)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】