説明

車両用走行支援装置

【課題】
運転者の認知・判断・操作を補助する車両用走行支援装置において、障害物の色や濃淡等の色情報を参照することにより、光センサや画像センサ等で障害物を確実に精度よく短時間で検出できるようにすることを課題とする。
【解決手段】
自車両の周囲の障害物を検出する車両用走行支援装置1は、障害物を検出するための光センサ11や画像センサ12と、障害物から送信される信号を受信する車車間通信用アンテナ13やICタグ信号受信用アンテナ14と、該アンテナ13,14で受信された信号に含まれる障害物の色情報に基いて、前記センサ11,12の検出動作を変更するコントロールユニット10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用走行支援装置、より詳しくは、自車両の周囲の障害物を検出する車両用走行支援装置に関し、運転者の認知・判断・操作を補助してトラブルの低減を図る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周囲に存在する車両や歩行者等の障害物を検出するための光センサや画像センサ等の障害物検出手段を備え、運転者の認知・判断・操作を補助して前記障害物との接触を回避するように運転者の車両操作を支援する車両用走行支援装置が知られている。例えば、特許文献1には、車両前方を撮像した画像データから該画像データ中に含まれる障害物との接触の可能性を判断する技術が開示されている。また、特許文献2には、レーダと画像センサとから前方車両との車間距離を検出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−151499号公報
【特許文献2】特開2002−207077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の障害物検出手段は、障害物の色や濃淡等の色情報を参照することがなかったため、次のような問題があった。例えば、レーザレーダや赤外線センサ等の光センサでは、その受光部の感度が予め中間感度に固定設定されているから、障害物から反射してくる光量が過多なときは、感度が飽和して障害物の検出に失敗するし、逆に、障害物から反射してくる光量が過少なときには、感度が不足して障害物の検出が不能となる。また、例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等の画像センサでは、障害物の色や濃淡等が不明であると、撮像データの中から認知・追跡すべき対象物を抽出・特定するのに長い時間がかかってしまう。
【0004】
本発明は、車両用走行支援装置における前記不具合に対処するもので、障害物の色や濃淡等の色情報を参照することにより、障害物検出手段による障害物の検出を、確実に、精度よく、短時間で、行うようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、自車両の周囲の障害物を検出する車両用走行支援装置であって、前記障害物を検出するための障害物検出手段と、前記障害物から送信される信号を受信する信号受信手段と、前記障害物検出手段の検出動作を前記信号受信手段で受信された信号に含まれる障害物の色情報に基いて変更する障害物検出動作変更手段とを有することを特徴とする。
【0006】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、前記信号受信手段は、車車間通信により自車両の周囲の車両から送信される信号を受信するものであり、前記障害物の色情報は、自車両の周囲の車両のボディの色情報であることを特徴とする。
【0007】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、前記信号受信手段は、自車両の周囲の歩行者が携帯しているICタグから送信される信号を受信するものであり、前記障害物の色情報は、自車両の周囲の歩行者の着衣の色情報であることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、前記障害物検出手段は、障害物に向けて光を発する発光部と、該発光部で発せられて障害物に当って反射してきた光を受ける受光部とを有し、前記発光部で光を発してから前記受光部で光を受けるまでの時間に基いて自車両と障害物との間の距離を検出する光センサであることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の車両用走行支援装置において、前記障害物検出動作変更手段は、障害物の色が明るいほど前記障害物検出手段の受光部の感度を低くし、障害物の色が暗いほど前記障害物検出手段の受光部の感度を高くすることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項6に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、前記障害物検出手段は、自車両の周囲を撮像し、その撮像データの中から障害物を特定する画像センサであることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の車両用走行支援装置において、前記障害物検出動作変更手段は、障害物の色に応じて前記障害物検出手段が撮像した撮像データを色補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1に記載の発明によれば、自車両の周囲に存在する車両や歩行者等の障害物から送信されてくる信号に含まれる障害物の色や濃淡等の色情報に基いて、障害物検出手段の検出動作を変更するようにしたから、例えば、光センサにおいて、障害物の色や濃淡によって光の反射量が変化し、その結果、障害物の検出に失敗したり、あるいは障害物の検出が不能となる、という問題や、例えば、画像センサにおいて、障害物の色や濃淡に関する情報が欠如し、その結果、対象物を特定するのに長い時間がかかる、という問題が解消される。
【0013】
次に、請求項2に記載の発明によれば、自車両の周囲に存在する他の車両の側から、該車両のボディの色情報が送信されてくるので、その色情報の信憑性は極めて高いものとなる。しかも、前記色情報が車車間通信により必要なときにその場で取得できるので、自車両の側で予め大量のデータをメモリに登録したり更新したりする必要がない。
【0014】
同様に、請求項3に記載の発明によれば、自車両の周囲に存在する歩行者の側から、該歩行者の着衣の色情報が送信されてくるので、その色情報の信憑性は極めて高いものとなる。しかも、前記色情報が歩行者が携帯しているICタグから必要なときにその場で取得できるので、自車両の側で予め大量のデータをメモリに登録したり更新したりする必要がない。
【0015】
次に、請求項4に記載の発明によれば、自車両と障害物との間の距離を検出するレーザレーダや赤外線センサ等の光センサの距離検出精度が向上し、自車両に近い近距離の障害物も、自車両から遠い遠距離の障害物も、共に良好に検出することが可能となる。
【0016】
その場合に、請求項5に記載の発明によれば、障害物の色が明るいほど、つまり障害物から反射してくる光量が多いほど、光センサの感度を低くするから、光センサの感度が飽和して障害物の検出に失敗する、という問題が解消される。一方、障害物の色が暗いほど、つまり障害物から反射してくる光量が少ないほど、光センサの感度を高くするから、光センサの感度が不足して障害物の検出が不能となる、という問題が解消される。これにより、請求項4でいう、光センサの距離検出精度の向上が図られることとなる。
【0017】
次に、請求項6に記載の発明によれば、自車両の周囲を撮像した撮像データの中から障害物を特定するCCDカメラやCMOSカメラ等の画像センサの対象物特定時間が短縮化する。また、対象物抽出の信頼性が向上する。
【0018】
その場合に、請求項7に記載の発明によれば、障害物の色に応じて画像センサが撮像した撮像データを色補正するから、撮像データ中に実際の色画像が得られて、その後引き続き、撮像データの中から認知・追跡すべき対象物を抽出する速度(特定速度)及び抽出する精度(特定精度)が向上する。これにより、請求項6でいう、画像センサの対象物特定時間の短縮化と、対象物抽出の信頼性の向上とが図られることとなる。以下、発明の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る車両用走行支援装置1の各構成要素のレイアウト図である。この走行支援装置1は、障害物検出手段として、例えばレーザレーダや赤外線センサ等の光センサ11と、例えばCCDカメラやCMOSカメラ等の画像センサ12とを含んでいる。光センサ11は車両前端部、例えばフロントグリルに備えられ、画像センサ12は車室前部、例えばルームミラー近傍に備えられている。光センサ11は、図3に示すように、障害物に向けて光を発する発光部11bと、該発光部11bで発せられて障害物に当って反射してきた光を受ける受光部11cとを有し、前記発光部11bで光を発してから前記受光部11cで光を受けるまでの時間に基いて自車両と障害物との間の距離を検出するものである。画像センサ12は、自車両の周囲を撮像し、その撮像データの中から障害物を特定するものである。
【0020】
また、この走行支援装置1は、信号受信手段として、車車間通信用アンテナ13及びICタグ信号受信用アンテナ14を含んでいる。両アンテナ13,14は車両上部、例えばルーフ部に備えられている。車車間通信用アンテナ13は、車車間通信により、自車両の周囲に存在する他の車両から送信されてくる信号を受信したり、逆に、自車両の周囲に存在する他の車両へ信号を発信するものである。ICタグ信号受信用アンテナ14は、自車両の周囲に存在する歩行者が携帯しているICタグから送信されてくる信号を受信するものである。この場合、車車間通信により自車両の周囲の他の車両から送信されてくる信号には、該他の車両のボディの色情報が含まれている。また、ICタグにより自車両の周囲の歩行者から送信されてくる信号には、該歩行者の着衣の色情報が含まれている。
【0021】
また、この走行支援装置1は、表示及び警報装置15を含んでいる。表示及び警報装置15は運転席前方、例えばインスツルメントパネルに備えられている。表示及び警報装置15は、光センサ11及び画像センサ12で検出された自車両の周囲の車両や歩行者等の障害物を表示すると共に、該障害物との接触を回避するように運転者に視覚や聴覚による警報を発するものである。
【0022】
また、この走行支援装置1は、乗員保護装置として、運転席エアバッグ16、助手席エアバッグ17、運転席シートベルトプリテンショナ18及び助手席シートベルトプリテンショナ19を含んでいる。運転席エアバッグ16はステアリングホイールに内蔵され、助手席エアバッグ17はグローブボックス上部に内蔵されている。シートベルトプリテンショナ18,19は、障害物との接触の可能性が高くなったときに、シートベルトを巻き取って、乗員をシートに確保するものである。
【0023】
また、この走行支援装置1は、歩行者保護装置として、バンパーエアバッグ20及びウインドウエアバッグ21を含んでいる。バンパーエアバッグ20はフロントバンパーに内蔵され、ウインドウエアバッグ21はフロントウインドウの下部外面に内蔵されている。両エアバッグ20,21は、特に障害物として歩行者との接触が不可避となったとき及び接触したときに作動するものである。
【0024】
そして、この走行支援装置1は、衝突回避用車両制御装置として、ブレーキ制御用アクチュエータ22、スロットル制御用アクチュエータ23及びステアリング制御用アクチュエータ24を含んでいる。これらのアクチュエータ22〜24は、障害物との接触の可能性が高くなったときに、該障害物との接触を回避したり、あるいは該障害物との接触の衝撃を緩和するように作動して、運転者の車両操作を支援するものである。
【0025】
図2は、この走行支援装置1のコントロールユニット10を中心とした制御システム図である。コントロールユニット10は、CPUで構成される中央処理ユニット10aと、光センサ処理回路10bとを有している。コントロールユニット10は、光センサ11からの信号と、画像センサ12からの信号と、車車間通信用アンテナ13からの信号と、ICタグ信号受信用アンテナ14からの信号とを入力し、これらの信号に基いて、光センサ11と、表示及び警報装置15と、乗員保護装置16〜19と、歩行者保護装置20,21と、衝突回避用車両制御装置22〜24とに制御信号を出力する。また、コントロールユニット10は、車車間通信用アンテナ13を介して自車両に関する情報を周囲の車両に送信する。
【0026】
図3は、前記光センサ11及び光センサ処理回路10bの機能ブロック図である。図外の中央処理ユニット10aから処理回路10bの増幅器11aに発光制御信号Aが入力され、増幅器11aから光センサ11の発光部11bに発光量信号P0が入力されて、発光部11bは、発光量P0の光を所定時刻を起点として車両前方に向けて発する。図4には、発光量P0の光を時刻t0を起点として発した様子が示されている。一方、光センサ11の受光部11cは、障害物に当って反射してきた受光量P1の光を所定時刻を起点として受ける。図4には、受光量P1の光を時刻t1を起点として受けた様子が示されている。
【0027】
受光部11cは、受光量信号P1を処理回路10bの増幅器11dに伝達し、増幅器11dは、増幅後の受光量信号Bを検知部11fに伝達する。一方、図外の中央処理ユニット10aから閾値設定部11eに閾値制御信号Cが入力され、閾値設定部11eから検知部11fに閾値信号Dが入力されて、検知部11fは、これらの受光量信号Bと閾値信号Cとから、受光時刻tx(前記起点時刻t1とは異なる)が検知可能か否かを判定して、その結果Eを中央処理ユニット10aに報告する。
【0028】
中央処理ユニット10aは、発光部11bでの発光時刻から受光部11cでの受光時刻までの時間に基いて自車両と障害物との間の距離を検出する。また、中央処理ユニット10aは、障害物の色や濃淡等の色情報に基いて、前記増幅器11dにゲイン調整信号αを入力し、また前記閾値設定部11eに閾値調整信号βを入力する。
【0029】
図5は、光センサ11の感度調整をしない場合の問題点を説明する図である。検知部11fは、光の反射強度、すなわち受光量が閾値を超えた時刻を検知する。しかし、真の受光時刻txは、受光量がピークに達した時刻である。したがって、光の検知時刻がなるべく光のピーク時刻に接近していることが検出精度の点で望ましい。
【0030】
図5(a)に示すように、車両のボディの色又は歩行者の着衣の色が白や黄のような明るい色のときは受光量が多くなり、図5(b)に示すように、赤や緑のような明るさが中間の色のときは受光量が少なくなり、図5(c)に示すように、黒や紺のような暗い色のときは受光量がさらに少なくなる。その場合に、光センサ11の受光部11cの感度を中間感度に設定していると、図5(b)に示すように、障害物の色が中間の色のときは、受光量と閾値との大小関係が最適となって、光の検知時刻が光のピーク時刻に接近し、受光時刻txが検知可能となる。しかし、図5(a)に示すように、障害物の色が明るい色のときは、受光量が過多となって、光の検知時刻が光のピーク時刻から大きく乖離し、受光時刻txが検知不良(精度不良)、すなわち障害物の検出に失敗する。逆に、図5(c)に示すように、障害物の色が暗い色のときは、受光量が過少となって、受光量が閾値を超えた時刻を検知することができず、受光時刻txが検知不可、すなわち障害物の検出が不能となる。
【0031】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、増幅器11dに対してゲイン調整αをする。具体的には、図6(b)に示すように、障害物の色が中間の色のときは中ゲイン、図6(a)に示すように、障害物の色が明るい色のときは低ゲイン、図6(c)に示すように、障害物の色が暗い色のときは高ゲインとすることにより、いずれの場合も、受光量と閾値との大小関係が最適となって、光の検知時刻が光のピーク時刻に接近し、受光時刻txが良好に検知可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、図7に示すように、閾値設定部11eに対して閾値調整βをする。具体的には、図7(b)に示すように、障害物の色が中間の色のときは中閾値、図7(a)に示すように、障害物の色が明るい色のときは高閾値(感度ダウン)、図7(c)に示すように、障害物の色が暗い色のときは低閾値(感度アップ)とすることにより、いずれの場合も、受光量と閾値との大小関係が最適となって、光の検知時刻が光のピーク時刻に接近し、受光時刻txが良好に検知可能となる。
【0033】
次に、図8のフローチャートに従って、前記コントロールユニット10が行う具体的動作の1例を説明する。ステップS1で、各センサ信号を入力したうえで、ステップS2で、自車両の走行状態(自車両の位置や進行方向等)を算出する。次いで、ステップS3で、歩行者ICタグからの信号受信が有るか否かを判定する。つまり、まず歩行者を車両よりも優先して検出するのである。そして、歩行者ICタグからの信号受信が有る場合は、ステップS4で、前記受信信号に含まれる歩行者の着衣の色情報に基いて、光センサ受信回路のゲイン調整α及び/又は閾値調整βをする一方、無い場合は、ステップS5で、車車間通信を実行し(相手車両の位置、進行方向、ボディの色情報を受信する)、ステップS6で、対象車両を抽出したうえで(自車両と相手車両との相対位置、相対速度、進行方向のズレ量から衝突対象車両を特定する)、ステップS7で、前記車車間通信による受信信号に含まれる車両のボディの色情報に基いて、光センサ受信回路のゲイン調整α及び/又は閾値調整βをする。
【0034】
次いで、いずれの場合も、ステップS8で、対象物までの距離を測定する。すなわち、前述したように、発光部11bでの発光時刻から受光部11cでの受光時刻txまでの時間に基いて自車両と障害物との間の距離を検出する。そして、ステップS9で、対象物の種類(歩行者か車両か)及び対象物までの距離に応じて、各種の処理を実行する。つまり、前記表示及び警報装置15を用いて対象物の表示及び警報処理を行い、前記乗員保護装置16〜19を用いて乗員保護処理を行い、前記歩行者保護装置20,21を用いて歩行者保護処理を行い、前記衝突回避用車両制御装置22〜24を用いて衝突回避処理を行うのである。
【0035】
以上のように、本実施形態においては、自車両の周囲に存在する車両や歩行者等の障害物から送信されてくる信号(図8のステップS3,S5参照)に含まれる障害物の色や濃淡等の色情報に基いて、光センサ11の検出動作を変更するようにしたから(ステップS4,S7参照)、例えば、障害物の色や濃淡によって光の反射量が変化し、その結果、障害物の検出に失敗したり(図5(a)参照)、あるいは障害物の検出が不能となる(図5(c)参照)、という問題が解消される。これにより、自車両と障害物との間の距離を検出するレーザレーダや赤外線センサ等の光センサ11の距離検出精度が向上し、ステップS8において、自車両に近い近距離の障害物も、自車両から遠い遠距離の障害物も、共に良好に検出することが可能となる。
【0036】
その場合に、自車両の周囲に存在する他の車両の側から、該車両のボディの色情報が送信されてくるので(ステップS5)、その色情報の信憑性は極めて高いものとなる。しかも、前記色情報が車車間通信により必要なときにその場で取得できるので(ステップS5)、自車両の側で予め大量のデータをメモリに登録したり更新したりする必要がない。
【0037】
同様に、自車両の周囲に存在する歩行者の側から、該歩行者の着衣の色情報が送信されてくるので(ステップS3)、その色情報の信憑性は極めて高いものとなる。しかも、前記色情報が歩行者が携帯しているICタグから必要なときにその場で取得できるので(ステップS3)、自車両の側で予め大量のデータをメモリに登録したり更新したりする必要がない。
【0038】
また、障害物の色が明るいほど、つまり障害物から反射してくる光量が多いほど、光センサ11の感度を低くするから(図6(a)、図7(a)参照)、光センサ11の感度が飽和して障害物の検出に失敗する、という問題が解消される。一方、障害物の色が暗いほど、つまり障害物から反射してくる光量が少ないほど、光センサ11の感度を高くするから(図6(c)、図7(c)参照)、光センサ11の感度が不足して障害物の検出が不能となる、という問題が解消される。
【0039】
次に、画像センサ12の色補正について説明する。図9に示すように、障害物の色・濃淡の情報が無く、画像センサ12の色・濃淡の補正もしていない場合は、得られた画像全体の濃淡のみを処理するため、対象物検知のためのパターン認識が困難となり、時間がかかる。すなわち、対象物候補の初期検出が困難で、対象物の認識も困難な状態である。
【0040】
一方、図10に示すように、障害物の色・濃淡の情報は有るが、画像センサ12の色・濃淡の補正をしていない場合は、画像全体の中から指定された色・濃淡の画像のみを抽出処理するため、対象物候補の初期検出が容易となる。しかし、対象物の認識はまだ困難な状態である。
【0041】
そして、図11に示すように、障害物の色・濃淡の情報が有り、画像センサ12の色・濃淡の補正もしている場合は、画像の色・濃淡補正により、正確な色画像・濃淡画像が得られて、対象物候補の初期検出のみならず、対象物の特定及び検知さらには追跡もまた早く正確に行えるようになる。
【0042】
次に、図12のフローチャートに従って、前記コントロールユニット10が行う具体的動作の1例を説明する。ステップS11で、各センサ信号を入力したうえで、ステップS12で、自車両の走行状態(自車両の位置や進行方向等)を算出する。次いで、ステップS13で、歩行者ICタグからの信号受信が有るか否かを判定する。つまり、まず歩行者を車両よりも優先して検出するのである。そして、歩行者ICタグからの信号受信が有る場合は、ステップS14で、前記受信信号に含まれる歩行者の着衣の色情報に基いて、画像センサ出力の色補正及び/又は濃淡補正をする一方、無い場合は、ステップS15で、車車間通信を実行し(相手車両の位置、進行方向、ボディの色情報を受信する)、ステップS16で、対象車両を抽出したうえで(自車両と相手車両との相対位置、相対速度、進行方向のズレ量から衝突対象車両を特定する)、ステップS17で、前記車車間通信による受信信号に含まれる車両のボディの色情報に基いて、画像センサ出力の色補正及び/又は濃淡補正をする。
【0043】
次いで、いずれの場合も、ステップS18で、対象物の特定・検知を実行したうえで、ステップS19で、対象物の種類(歩行者か車両か)及び対象物までの距離に応じて、各種の処理を実行する。つまり、前記表示及び警報装置15を用いて対象物の表示及び警報処理を行い、前記乗員保護装置16〜19を用いて乗員保護処理を行い、前記歩行者保護装置20,21を用いて歩行者保護処理を行い、前記衝突回避用車両制御装置22〜24を用いて衝突回避処理を行うのである。
【0044】
以上のように、本実施形態においては、自車両の周囲に存在する車両や歩行者等の障害物から送信されてくる信号(図12のステップS13,S15参照)に含まれる障害物の色や濃淡等の色情報に基いて、画像センサ12の検出動作を変更するようにしたから(ステップS14,S17参照)、例えば、障害物の色や濃淡に関する情報が欠如し、その結果、対象物を特定するのに長い時間がかかる(図9、図10参照)、という問題が解消される。これにより、ステップS18において、自車両の周囲を撮像した撮像データの中から障害物を特定するCCDカメラやCMOSカメラ等の画像センサ12の対象物特定時間が短縮化する。また、対象物抽出の信頼性が向上する。
【0045】
その場合に、障害物の色に応じて画像センサ12が撮像した撮像データを色補正するから(図11参照)、撮像データ中に実際の色画像が得られて、その後引き続き、撮像データの中から認知・追跡すべき対象物を抽出する速度(特定速度)及び抽出する精度(特定精度)が向上する。
【0046】
なお、本実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正、変更が可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、運転者の認知・判断・操作を補助する車両用走行支援装置において、障害物の色や濃淡等の色情報を参照することにより、光センサや画像センサ等の障害物検出手段で障害物を確実に精度よく短時間で検出することができるもので、車両用走行支援装置の技術分野において幅広い産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る車両用走行支援装置の各構成要素のレイアウト図である。
【図2】前記車両用走行支援装置のコントロールユニットを中心とした制御システム図である。
【図3】前記車両用走行支援装置の光センサ及び光センサ処理回路の機能ブロック図である。
【図4】前記光センサの障害物検出動作の原理説明図である。
【図5】前記光センサの感度調整をしない場合の問題点の説明図であって、(a)は障害物の色が明るい色のとき、(b)は中間の色のとき、(c)は暗い色のときを示す。
【図6】前記光センサの感度調整(ゲイン調整)をした場合の改良点の説明図であって、(a)は障害物の色が明るい色のとき、(b)は中間の色のとき、(c)は暗い色のときを示す。
【図7】前記光センサの感度調整(閾値調整)をした場合の改良点の説明図であって、(a)は障害物の色が明るい色のとき、(b)は中間の色のとき、(c)は暗い色のときを示す。
【図8】前記光センサの感度調整をする場合における前記車両用走行支援装置の制御動作の1例を示すフローチャートである。
【図9】前記車両用走行支援装置の画像センサの撮像データの色補正をしない(色情報も無い)場合の問題点の説明図である。
【図10】前記画像センサの撮像データの色補正をしない(色情報は有る)場合の問題点の説明図である。
【図11】前記画像センサの撮像データの色補正をした場合の改良点の説明図である。
【図12】前記画像センサの撮像データの色補正をする場合における前記車両用走行支援装置の制御動作の1例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用走行支援装置
10 コントロールユニット(障害物検出動作変更手段)
10a 中央処理ユニット
10b 光センサ処理回路
11 光センサ(障害物検出手段)
11a,11d 増幅器
11b 発光部
11c 受光部
11e 閾値設定部
11f 検知部
12 画像センサ(障害物検出手段)
13 車車間通信用アンテナ(信号受信手段)
14 ICタグ信号受信用アンテナ(信号受信手段)
15 表示及び警報装置
16 運転席エアバッグ(乗員保護装置)
17 助手席エアバッグ(乗員保護装置)
18 運転席シートベルトプリテンショナ(乗員保護装置)
19 助手席シートベルトプリテンショナ(乗員保護装置)
20 バンパーエアバッグ(歩行者保護装置)
21 ウインドウエアバッグ(歩行者保護装置)
22 ブレーキ制御用アクチュエータ(衝突回避用車両制御装置)
23 スロットル制御用アクチュエータ(衝突回避用車両制御装置)
24 ステアリング制御用アクチュエータ(衝突回避用車両制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の障害物を検出する車両用走行支援装置であって、
前記障害物を検出するための障害物検出手段と、
前記障害物から送信される信号を受信する信号受信手段と、
前記障害物検出手段の検出動作を前記信号受信手段で受信された信号に含まれる障害物の色情報に基いて変更する障害物検出動作変更手段とを有することを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、
前記信号受信手段は、車車間通信により自車両の周囲の車両から送信される信号を受信するものであり、
前記障害物の色情報は、自車両の周囲の車両のボディの色情報であることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、
前記信号受信手段は、自車両の周囲の歩行者が携帯しているICタグから送信される信号を受信するものであり、
前記障害物の色情報は、自車両の周囲の歩行者の着衣の色情報であることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項4】
前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、
前記障害物検出手段は、障害物に向けて光を発する発光部と、該発光部で発せられて障害物に当って反射してきた光を受ける受光部とを有し、前記発光部で光を発してから前記受光部で光を受けるまでの時間に基いて自車両と障害物との間の距離を検出する光センサであることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の車両用走行支援装置において、
前記障害物検出動作変更手段は、障害物の色が明るいほど前記障害物検出手段の受光部の感度を低くし、障害物の色が暗いほど前記障害物検出手段の受光部の感度を高くすることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項6】
前記請求項1に記載の車両用走行支援装置において、
前記障害物検出手段は、自車両の周囲を撮像し、その撮像データの中から障害物を特定する画像センサであることを特徴とする車両用走行支援装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の車両用走行支援装置において、
前記障害物検出動作変更手段は、障害物の色に応じて前記障害物検出手段が撮像した撮像データを色補正することを特徴とする車両用走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−24504(P2007−24504A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202513(P2005−202513)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】