説明

車両用距離画像データ生成装置

【課題】 自車両前方の状況を連続的に把握できる車両用距離画像データ生成装置を提供すること。
【解決手段】 投光器5と、イメージインテンシファイア7b及び高速度カメラ8と、タイミングコントローラ9と、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成する画像処理部10を備え、投光器5は、点灯個数を変更自在な複数の近赤外線LED5aを備え、タイミングコントローラ9は、ターゲット距離に基づいて、投光器5の近赤外線LED5aの点灯個数を変更させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用距離画像データ生成装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両前方を投光し、ターゲット距離から戻ってくる反射光のタイミングに合わせて撮像した画像に基づいて、当該ターゲット距離に障害物等の物体が存在するか否かを検出する技術が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6700123号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、ターゲット距離以外の物体を検出できない。つまり、状況の把握が間欠的であり、自車両前方の状況を連続的に把握できないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、自車両前方の状況を連続的に把握できる車両用距離画像データ生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両用距離画像データ生成装置では、自車両前方に所定周期でパルス光を投光する投光手段と、ターゲット距離に応じて設定される撮像タイミングで前記ターゲット距離から帰ってくる反射光を撮像する撮像手段と、前記ターゲット距離が連続的に変化するように前記撮像タイミングを制御するタイミング制御手段と、前記撮像手段により得られたターゲット距離の異なる複数の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成する距離画像データ生成手段と、を備え、前記投光手段は、点灯個数を変更自在な複数の発光体を備え、前記タイミング制御手段は、前記ターゲット距離に基づいて、前記投光手段の点灯個数を変更させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、自車両前方の状況を連続的に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両用距離画像データ生成装置を実現するための最良の形態を、図面に基づく実施例により説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は、本発明の車両用距離画像データ生成装置を適用した実施例1の障害物検出装置1の構成を示すブロック図であり、実施例1の障害物検出装置1は、距離画像データ生成装置2と、物体認識処理部3と、判断部4とを備えている。
【0009】
距離画像データ生成装置2は、投光器(投光手段)5と、対物レンズ6と、光倍増部7と、高速度カメラ(撮像手段)8と、タイミングコントローラ(タイミング制御手段)9と、画像処理部(距離画像データ生成手段)10とを備えている。
投光器5は、車両の前端部に配置した近赤外線LED5a(レンズと発光部を構成する)であり、タイミングコントローラ9から出力されるパルス信号に応じて、所定の投光時間tL(例えば、5ns)の間、パルス光を出力する。パルス信号の周期は、投光器5の投光周期tPであり、投光周期tPは、例えば、1/100s以下の間隔とする。投光器5の詳細については後述する。
対物レンズ6は、物体からの反射光を受光するためのもので、投光器5と隣接配置している。例えば、自車両前方の所定範囲を撮像できる画角とするように設定された光学系である。
【0010】
光倍増部7は、ゲート7aとイメージインテンシファイア7bとを備えている。
ゲート7aは、タイミングコントローラ9からの開閉指令信号に応じて開閉する。ここで、実施例1では、ゲート7aの開時間(ゲート時間)tGを、投光時間tLと同じ5nsとしている。ここで、ゲート時間tGは、撮像エリア(ターゲット距離)の撮像対象幅に相当し、ゲート時間tGを長くするほど撮像エリアの撮像対象幅は長くなる。実施例1では、ゲート時間tG=5nsとしているため、撮像対象幅は、光速度(約3×108m/s)×ゲート時間(5ns)から、1.5mとなる。
【0011】
イメージインテンシファイア7bは、極微弱な光(物体からの反射光等)を一旦電子に変換して電気的に増幅し、再度蛍光像に戻すことで光量を倍増してコントラストのついた像を見るデバイスである。イメージインテンシファイア7bの光電面より光電現象によって打ち出された光電子はkVオーダーの高電圧で加速され、陽極側の蛍光面に打ち込まれることにより、100倍以上の光子数の蛍光を発する。蛍光面で発生した蛍光は、ファイバオプティックプレートにより、そのままの位置関係を保ったまま散乱されることなく高速度カメラ8のイメージセンサに導かれる。
高速度カメラ8は、タイミングコントローラ9からの指令信号に応じて、光倍増部7から発せられた像を撮像し、撮像画像(カラー画像)を画像処理部10へ出力する。実施例1では、解像度640×480(横:縦)、輝度値1〜255(256段階)、100fps以上のカメラを用いている。
【0012】
タイミングコントローラ9は、高速度カメラ8により撮像される撮像画像が、狙った撮像エリアから帰ってくる反射光のタイミングとなるように、投光器5の投光開始時点からゲート7aを開くまでの時間であるディレイ時間tDを設定し、ディレイ時間に応じた開閉指令信号を出力することで、撮像タイミングを制御する。つまり、ディレイ時間tDは、自車両から撮像エリアまでの距離(撮像対象距離)を決める値であり、ディレイ時間tDと撮像対象距離との関係は、以下の式となる。
撮像対象距離=光速度(約3×108m/s)×ディレイ時間tD/2
図2に、1つの撮像エリアを撮像する際の、投光器5の動作(投光動作)とゲート7aの動作(カメラゲート動作)との時間的な関係を示す。
【0013】
タイミングコントローラ9は、撮像エリアが車両手前側から先方へと連続的に移動するように、ディレイ時間tDを所定間隔(例えば、10ns)ずつ長くすることで、高速度カメラ8の撮像範囲を車両前方側へ変化させる。なお、タイミングコントローラ9は、ゲート7aが開く直前に高速度カメラ8の撮像動作を開始させ、ゲート7aが完全に閉じた後に撮像動作を終了させる。但し、実施例1では、タイミングコントローラ9は、撮像対象距離(ターゲット距離)に応じて、予め多重露光回数を設定しておき、このデータを読み出して、ある一つの撮像対象距離における撮像が所定回数の投光動作とゲート7aの開閉動作で構成されるようにする。そのため、設定された所定回数が複数回の場合は、複数回の投光動作とゲート7aの開閉動作後に撮像動作を終了させることになる。
【0014】
また、実施例1では、図3に示すように、撮像対象距離をB1→B2→B3→…と連続的に変化させながら撮像する際、撮像エリアの撮像対象幅Aよりも撮像対象距離の増加量(B2-B1)を短くすることで、撮像エリアの一部がオーバーラップしながら変化するように撮像対象距離の増加量を設定している。
【0015】
図4は、撮像対象距離の増加量を極限まで小さくした場合、言い換えると、撮像エリアを無限に増やして撮像を行った場合の時間的な輝度変化を示す模式図であり、撮像エリアの一部をオーバーラップさせることで、連続する複数の撮像画像における同一の画素の輝度値は、徐々に増加し、ピーク後は徐々に小さくなる特性となる。なお、実際には撮像エリアは有限個(1〜n)であるが、連続する撮像エリアの一部をオーバーラップさせることで、時間的な輝度変化は図4の特性に近くなる。
【0016】
タイミングコントローラ9は、1フレーム分、すなわち、設定された所定範囲(エリア1、エリア2、…、エリアn)の撮像画像が全て撮像された場合、画像処理部10に対し画像処理指令信号を出力する。
【0017】
画像処理部10は、高速度カメラ8により撮像された1フレーム分の撮像画像(撮像画素)から、距離情報を色や輝度等で表す距離画像データを生成し、生成した距離画像データを物体認識処理部3へ出力する。
【0018】
物体認識処理部3は、距離画像データに含まれる物体に対して、画像処理、例えば、ラベリング、パターンマッチング等により距離画像データに含まれる物体を特定する。
判断部4は、物体認識処理部3により特定された物体(人、自動車、標識等)と自車両との関係(距離、相対速度等)に基づいて、警報等による運転者への情報提示、自動ブレーキ等の車両制御の要否を判断する。
【0019】
図5は実施例1の距離画像データ生成装置の投光器の説明図である。
投光器5に設けられる近赤外線LED5aは、所定配光角度のレンズ51が取り付けられ、図5に示すように複数配置される。実施例1では、点灯個数を24個とし、全体を千鳥配置としている。
【0020】
[距離画像データ生成制御処理]
図6は、実施例1の画像処理部10で実行される距離画像データ生成制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0021】
ステップS1では、画像処理部10が、投光器5による投光を行わずに自車両前方を撮像した撮像画像の最も輝度の低い輝度値データを後の輝度判断のために記憶し、ステップS2へ移行する。このデータは、距離画像データ生成の際に用いるものとする。
【0022】
ステップS2では、画像処理部10が、撮像画像を入力し、ステップS3へと移行する。なお、実施例1においては、入力される撮像画像は、撮像する距離範囲に応じて予め設定された多重露光回数により複数回撮像された画像で、且つ撮像する距離範囲と多重露光に基づいて予め設定された点灯個数の投光で撮像された画像となる。詳細は後述する。
【0023】
ステップS3では、画像処理部10が、1フレーム分(エリア1、エリア2、…、エリアn)の画像入力が終了したか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS2へ移行する。
【0024】
ステップS4では、色や輝度により距離情報を伴う画像として、距離画像データを生成し、リターンへ移行する。
【0025】
[投光距離制御処理]
図7は、実施例1のタイミングコントローラ9で実行される投光器5の投光距離制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
【0026】
ステップS11では、タイミングコントローラ9が、今回投光する撮像対象距離を取得、あるいは決定する。
【0027】
ステップS12では、タイミングコントローラ9が多重露光回数の決定処理として、今回投光する撮像対象距離に基づいて多重露光回数を決定する。
【0028】
ステップS13では、タイミングコントローラ9が点灯個数の決定処理として、今回投光する撮像対象距離に基づいて点灯個数を決定する。
【0029】
ステップS14では、タイミングコントローラ9が投光制御処理として、ステップS12,S13で決定した多重露光回数を用いて投光器5を制御し、投光を行わせる。
【0030】
ステップS15では、1フレーム分の撮像が終了したかどうかを判断し、終了したならば処理を終了し、終了していないならばステップS11へ戻る。
なお、説明上、フローチャートを示して説明したが、実際に制御されるタイミングは非常に短い時間間隔で行われるため、図7で説明した撮像対象距離に対する多重露光回数と、撮像対象距離と多重露光回数に基づく点灯個数は、予めデータ化するなどにし、タイミングコントローラ9が充分な速度の制御出力ができることが望ましい。
【0031】
次に、作用を説明する。
[距離画像データ生成作用]
タイミングコントローラ9は、高速度カメラ8により撮像される撮像画像が、狙った撮像エリアから帰ってくる反射光のタイミングとなるように、ディレイ時間tDを設定し、高速度カメラ8の撮像タイミングを制御する。狙った撮像エリアに物体が存在している場合、投光器5から出射された光が撮像エリアから戻ってくる時間は、自車両と撮像エリアまでの距離(撮像対象距離)を光が往復する時間となるため、ディレイ時間tDは、撮像対象距離と光速度から求めることができる。
【0032】
上記方法で得られた高速度カメラ8の撮像画像において、撮像エリアに物体が存在する場合、当該物体の位置に対応する画素の輝度値データは、反射光の影響を受け、他の画素の輝度値データよりも高い値を示す。これにより、各画素の輝度値データに基づいて、狙った撮像エリアに存在する物体との距離を求めることができる。
【0033】
さらに、実施例1では、ディレイ時間tDを変化させながら撮像エリア1〜nの撮像画像を取得する。続いて、同じ画素位置の前後の距離の輝度値データを比較し、最も高い輝度値データを当該画素で検出する物体の距離とし、撮像範囲(640×480)の距離の情報を持つデータ(距離画像データ)を生成する。
【0034】
従来のレーザレーダやステレオカメラを用いた距離検出方法では、雨、霧や雪などの影響を受けやすく、信号レベルに対するノイズレベルが大きくなる(SN比が小さい)ため、悪天候時の信頼性が低い。なお、悪天候の影響を受けにくいミリ波レーダを用いた場合、距離検出の信頼性は高くなるが、ミリ波レーダの信号から物体認識(物体の特定)を行うのは困難であり、別途カメラ画像が必要となる。そして、悪天候時にはカメラ画像が不明瞭となるため、正確な物体認識を行うことは困難である。
【0035】
これに対し、実施例1では、狙った撮像エリアから帰ってくる反射波のみを撮像画像に反映させるため、雨、霧や雪などの影響により屈曲した光、すなわち、ノイズの混入レベルを低く抑え、高いSN比を得ることができる。つまり、悪天候や夜間にかかわらず、高い距離検出精度を得ることができる。
そして、生成された距離画像データにより、画像から検出される物体の距離が分かるため、その後パターンマッチング等の手法を用いて物体認識を行う場合、物体との距離を瞬時に把握できる。
【0036】
さらに、実施例1では、撮像エリアを連続的に変化させて複数の撮像画像を取得し、各撮像画像を比較して各画素の距離を検出しているため、自車両前方の状況を連続的に、かつ、広範囲に亘って把握できる。例えば、自車両と先行車両との間に歩行者が飛び出してきた状況であっても、先行車と歩行者の距離をそれぞれ同時に把握でき、警報による運転者への情報提示や自動ブレーキ等の車両制御を行うことが可能である。
【0037】
図8は、自車両前方の異なる位置に4人の歩行者A〜Dが存在している状況を示し、自車両と各歩行者との距離の関係は、A<B<C<Dとする。
このとき、実施例1では、1つの物体からの反射光が連続する複数の撮像エリアにおける撮像画像のオブジェクトを構成する画素に反映されるように、撮像エリアの一部をオーバーラップさせている。このため、各歩行者に対応するオブジェクトを構成する画素の時間的な輝度変化は、図9に示すように、歩行者の位置でピークを取る三角形の特性を示す。
【0038】
なお、距離画像データは、警報や車両制御に用いるデータであるため、ある程度の演算速度が要求される以上、撮像エリアを無限に細かく設定することは時間的に不可能であるが、1つの物体からの反射光が複数の撮像画像の含まれるようにすることで、図10に示すように、画素の時間的な輝度変化を上記特性に近似させ、三角形部分のピークと対応する撮像エリアを、当該画素における物体の距離とすることで、検出精度を高めることができる。
【0039】
[多重露光による輝度補正]
実施例1の距離画像データ生成装置2では、撮像対象距離を徐々に遠くしながら複数の撮像画像を取得しているため、遠くの撮像エリアに存在する物体からの反射光は、近くの撮像エリアに存在する物体の反射光よりも弱くなる。このため、各撮像エリアで撮像時間(ゲート時間tG)を一定とした場合、遠い撮像エリアほど撮像画像が暗くなってしまう。
【0040】
一方、画像処理部10では、複数の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成しているため、撮像画像間で上述した撮像対象距離の違いによる輝度差が生じると、同一画素の輝度を比較する際、正確な比較を行うことができない。
【0041】
これに対し、実施例1では、物体が存在する撮像エリアにおける撮像画像の輝度ピーク値(輝度の最大値)が目標輝度となるよう、撮像対象距離に対して多重露光回数を設定し、記憶させる。そして、タイミングコントローラ9が、設定された多重露光回数に従って1画像に対して投光動作とゲート7aの開閉動作の複数組を行う。つまり、本実施例1の多重露光回数とは、高速度カメラ8で撮像する1画像に対して、タイミングコントローラ9の制御により行われる、投光器5の投光動作と、上記説明のように投光動作と対になる(ディレイ時間tDによる)ゲート7aの開閉動作の繰り返し回数を意味する。
【0042】
このため、撮像対象距離の異なる各撮像画像の輝度レンジ幅(輝度最小値と輝度最大値との差)を撮像エリアにかかわらず均一化し、予め良好な処理ができるように設定された目標輝度に近づけることができる(図11参照)。
【0043】
[点灯個数の制御作用]
図12は実施例1の距離画像データ生成装置における撮像対象距離と輝度の関係を示すグラフ図である。図13は実施例1の距離画像データ生成装置における多重露光回数の切換え時の撮像対象距離と輝度の説明図である。図14は実施例1の距離画像データ生成装置における撮像対象距離方向の撮像画像と輝度の説明図である。
実施例1では、上記説明のように多重露光制御により、撮像対象距離が遠い場合でも充分な輝度が得られるようにしている。この制御は図11に示すように結果的に撮像で得られる画像の輝度が目標輝度に近づけるように行われる。
【0044】
これにより、撮像対象距離の異なる各撮像画像の輝度レンジ幅(輝度最小値と輝度最大値との差)を撮像エリアにかかわらず均一化する。この多重露光制御で制御される多重露光回数に対して、撮像対象距離を変更しながら撮像されるエリアスキャンの段数(単位)は図3、図10に示すように撮像対象(障害物)の検知から決められる。そのため多重露光回数とエリアスキャンの段数(単位)は一致せず、エリアスキャンの段数(単位)の方が多い。そのため、撮像対象距離の複数回の撮像に対して同じ多重露光回数で撮像されることになる。
【0045】
図13は、撮像距離がA〜Fのように撮像されていくのに対して、画像中の同一画素の輝度値が対象物の反射により変化する様子を示す。この図13において、多重露光回数の切り換わり点(撮像距離C)では、例えば多重露光回数が1回増える前(例えば露光回数1回とし、符号201で示す)の場合の輝度値203と1回増えた後(例えば露光回数2回とし、符号202で示す)の輝度値204では、得られる輝度値が異なる。この輝度値の差は誤差となる。
また、図12に示すように、比較的距離が近い範囲では、輝度値が充分に得られることから、多重露光の切り換わりが少なくなる。そのために、この誤差は大きくなる。また、多重露光制御の作用が少なく働く区間である。
【0046】
このように多重露光回数の切り換わりによる誤差が、図3、図10で示したようなピーク値を決定する撮像対象距離で影響すると、図14に示すように、理想的には、撮像距離Cにおける輝度値C1でピークとなるものが、撮像距離Dにおける輝度値D1でピークとなることを生じてしまう。
【0047】
実施例1では、投光器5が24個の近赤外線LED5aを備え、1〜24個がその点灯個数を可変にする。この制御はタイミングコントローラ9のステップS13の処理に基づいて行われる。
この点灯個数制御では、撮像対象距離と、多重露光回数に基づいて、点灯個数を変更する制御が行われる。
【0048】
例えば、図13に示すような多重露光回数の切り換わり時点において、撮像対象距離の変更に対して、多重露光回数が変わらないよう設定されている場合に、点灯個数が変更するように制御する。
図12に示すように、撮像対象距離に対して得たい画素(画像)の輝度が図12の目標値101となるのに対して、多重露光回数の制御のみでは、図12の線102に示すように回数切り換わりの誤差を持つものとなる。これに対して、さらに多重露光回数の変更と点灯個数の変更を組合せることによって、図12に線103で示すように、多重露光回数の制御のみの線102の切り換わり誤差を抑制し精度を向上させ、より目標値の線101に近づける。
よって、撮像された画像を処理して生成される距離画像がさらに正確なものとなる。
【0049】
次に、効果を説明する。
実施例1の距離画像データ生成装置2にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
【0050】
(1)自車両前方に所定周期でパルス光を投光する投光器5と、ターゲット距離に応じて設定される撮像タイミングでターゲット距離から帰ってくる反射光を撮像するイメージインテンシファイア7b及び高速度カメラ8と、ターゲット距離が連続的に変化するように撮像タイミングを制御するタイミングコントローラ9と、イメージインテンシファイア7b及び高速度カメラ8により得られたターゲット距離の異なる複数の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成する画像処理部10を備え、投光器5は、点灯個数を変更自在な複数の近赤外線LED5aを備え、タイミングコントローラ9は、ターゲット距離に基づいて、投光器5の近赤外線LED5aの点灯個数を変更させるため、自車両前方の状況を連続的に把握でき、さらに、距離画像の精度を向上させることができる。
【0051】
(2)上記(1)において、タイミングコントローラ9は、一つのターゲット距離の撮像画像が、投光器5による複数回の投光と、イメージインテンシファイア7b及び高速度カメラ8による撮像タイミングでの複数回の撮像で生成され、且つターゲット距離が遠くなるに従って、投光及び撮像の回数を増やす多重露光制御を行うため、撮像対象距離の異なる各撮像画像の輝度レンジ幅を撮像エリアにかかわらず均一化し、予め良好な処理ができるように設定された目標輝度に近づけることができる。
【0052】
(3)上記(2)において、タイミングコントローラ9は、多重露光制御により、ターゲット距離が遠くなるに従って、投光及び撮像の回数を増加する切換段数に対して、切換段数を増加させるターゲット距離で、投光手段の点灯個数を増加させる点灯個数制御を行うため、多重露光の切換段数を増加させるようにでき、多重露光の切換時の誤差を抑制でき、より距離画像の精度を向上することができる。
【0053】
(4)上記(2)又は(3)において、タイミングコントローラ9は、多重露光制御が、ターゲット距離が近いことにより、投光及び撮像の回数に変更がないターゲット距離で、投光器5の点灯個数を変更させる点灯個数制御を行うため、近距離部分を含め、距離画像のターゲット距離範囲全体で、各撮像画像の輝度レンジ幅を撮像エリアにかかわらず均一化し、予め良好な処理ができるように設定された目標輝度に近づけることができる。
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づき説明したが、本発明の具体的な構成については、実施例の構成に限らず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更や追加等は許容される。
【0054】
例えば、投光周期、投光時間、ゲート時間、撮像対象幅、撮像対象距離の変化量、1フレーム中の撮像エリア数は、撮像手段の性能や距離画像データ生成手段の性能に応じて適宜設定することができる。
投光器5の近赤外線LED5aの数は、実施例1と異なる個数であってもよい。
実施例1では、多重露光の切換数より、投光器5の点灯個数の切換数を多くしているが、投光器5の点灯個数の切換数が多重露光の切換数より少なくしてもよい。その場合には、実施例1より均一化の効果は小さくなるが、多重露光のみのものより、距離画像の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の障害物検出装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】1つの撮像エリアを撮像する際の、投光器5の動作(投光動作)とゲート7aの動作(カメラゲート動作)との時間的な関係を示す図である。
【図3】撮像エリアの一部がオーバーラップする状態を示す図である。
【図4】撮像エリアを無限に増やして撮像を行った場合の時間的な輝度変化を示す模式図である。
【図5】実施例1の距離画像データ生成装置の投光器の説明図である。
【図6】実施例1の画像処理部10で実行される距離画像データ生成制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1のタイミングコントローラ9で実行される投光器5の投光距離制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】自車両前方の異なる位置に4人の歩行者A〜Dが存在している状況を示す図である。
【図9】各歩行者A〜Bに対応する画素の時間的な輝度変化を示す模式図である。
【図10】実施例1の距離画像データ生成作用を示す図である。
【図11】実施例1の多重露光による距離画像データ生成作用を示す図である。
【図12】実施例1の距離画像データ生成装置における撮像対象距離と輝度の関係を示すグラフ図である。
【図13】実施例1の距離画像データ生成装置における多重露光回数の切換え時の撮像対象距離と輝度の説明図である。
【図14】実施例1の距離画像データ生成装置における撮像対象距離方向の撮像画像と輝度の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 障害物検出装置
2 距離画像データ生成装置
3 物体認識処理部
4 判断部
5 投光器(投光手段)
5a 近赤外線LED
51 レンズ
6 対物レンズ
7 光増倍部
7a ゲート
7b イメージインテンシファイア
8 高速度カメラ(撮像手段)
9 タイミングコントローラ(タイミング制御手段)
10 画像処理部(距離画像データ生成手段)
101 (ターゲット距離に対する明るさの目標値を示す)線
102 (多重露光制御を行った場合のターゲット距離に対する明るさを示す)線
103 (多重露光制御に加えて点灯個数制御を行った場合のターゲット距離に対する明るさを示す)線
201 (露光回数1回の状態を示す)説明部分
202 (露光回数2回の状態を示す)説明部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方に所定周期でパルス光を投光する投光手段と、
ターゲット距離に応じて設定される撮像タイミングで前記ターゲット距離から帰ってくる反射光を撮像する撮像手段と、
前記ターゲット距離が連続的に変化するように前記撮像タイミングを制御するタイミング制御手段と、
前記撮像手段により得られたターゲット距離の異なる複数の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成する距離画像データ生成手段と、
を備え、
前記投光手段は、点灯個数を変更自在な複数の発光体を備え、
前記タイミング制御手段は、前記ターゲット距離に基づいて、前記投光手段の点灯個数を変更させる、
ことを特徴とする車両用距離画像データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用距離画像データ生成装置において、
前記タイミング制御手段は、
一つのターゲット距離の撮像画像が、前記投光手段による複数回の投光と、前記撮像手段による前記撮像タイミングでの複数回の撮像で生成され、且つターゲット距離が遠くなるに従って、投光及び撮像の回数を増やす多重露光制御を行う、
ことを特徴とする車両用距離画像データ生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用距離画像データ生成装置において、
前記タイミング制御手段は、
前記多重露光制御により、ターゲット距離が遠くなるに従って、投光及び撮像の回数を増加する切換段数に対して、前記切換段数を増加させるターゲット距離で、前記投光手段の点灯個数を増加させる点灯個数制御を行う、
ことを特徴とする車両用距離画像データ生成装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両用距離画像データ生成装置において、
前記タイミング制御手段は、
前記多重露光制御が、ターゲット距離が近いことにより、投光及び撮像の回数に変更がないターゲット距離で、前記投光手段の点灯個数を変更させる点灯個数制御を行う、
ことを特徴とする車両用距離画像データ生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−66221(P2010−66221A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235130(P2008−235130)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】