車両用車椅子格納装置
【課題】本発明は、車両の屋根上にある車椅子の格納位置と乗降口とが車両前後方向においてずれている場合でも、車椅子を乗降口の横に下ろし、またこの位置で吊り上げできるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両用車椅子格納装置は、吊り手段50により車椅子Kを上昇させてその車椅子Kを車椅子支持部30で受け、車椅子支持部30を水平位置まで上回動させた後、可動架台を格納位置までスライドさせて車椅子Kを車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、車椅子支持部30は、可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリア32と、吊り手段50により吊られた車椅子Kを受けてその車椅子Kを保持可能なプロテクタ36と、キャリア32に対してプロテクタ36を昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構33,38とを備えている。
【解決手段】本発明に係る車両用車椅子格納装置は、吊り手段50により車椅子Kを上昇させてその車椅子Kを車椅子支持部30で受け、車椅子支持部30を水平位置まで上回動させた後、可動架台を格納位置までスライドさせて車椅子Kを車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、車椅子支持部30は、可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリア32と、吊り手段50により吊られた車椅子Kを受けてその車椅子Kを保持可能なプロテクタ36と、キャリア32に対してプロテクタ36を昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構33,38とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の吊り手段を利用して車椅子を上昇させて垂直位置に配置された車椅子支持部で受け、前記車椅子支持部を水平位置まで回動させながら車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、その車椅子支持部及び車椅子を屋根上の格納位置まで移動させる車両用車椅子格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記車両用車椅子格納装置に関する技術が特許文献1に開示されている。
この車両用車椅子格納装置100は、図14に示すように、車椅子Kを支持する可動架台102が車幅方向(左右方向)に横スライドできるように構成されている。車両用車椅子格納装置100は、可動架台102の横スライド中心が運転席側乗降口Dの後端に位置するセンターピラーCpの上端位置と平面視においてほぼ一致するように、車両Cの屋根上に設置されている。可動架台102上の車椅子Kを下ろす場合には、可動架台102を所定位置まで右スライドさせて、可動架台102を屋根から庇状に突出させた後、その位置で車椅子Kを真っ直ぐ吊り下ろすようにする。
これにより、吊り下ろされた車椅子Kは運転席側乗降口Dの後横(センターピラーCpより若干後方)に配置される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−20554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車椅子Kが運転席側乗降口Dの後横に吊り下ろされると、運転者が車両の運転席から車椅子Kに乗り移るのが大変である。
また、車椅子Kを吊り上げる際には、運転席に着座した運転者が体を後に捻って運転席側乗降口Dの後横にある吊り手段のフックに車椅子Kを掛ける必要があるため、作業に手間が掛かる。
この点を改善するため、車両用車椅子格納装置100の位置を車両前方にずらすことも考えられるが、このようにすると運転中に車両用車椅子格納装置100が運転者の視界に入って好ましくない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の屋根上にある車椅子の格納位置と、その車両の乗降口とが車両前後方向においてずれている場合であっても、車椅子を乗降口の横に下ろし、またこの位置で車椅子を吊り上げできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両の屋根上に水平に設置された固定架台と、前記屋根上の格納位置とその屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上をスライド可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を水平位置と垂直位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上昇させてその車椅子を前記垂直位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を水平位置まで上回動させながら前記車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、前記可動架台を格納位置までスライドさせて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、前記車椅子支持部は、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリアと、前記吊り手段により吊られた前記車椅子を受けてその車椅子を保持可能なプロテクタと、前記キャリアに対して前記プロテクタを昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、車椅子を保持可能なプロテクタはガイド機構によりキャリアに対して昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結されている。このため、吊り手段で車椅子を吊り下ろす際に、車椅子とプロテクタとをキャリアに対して下降させつつ、車両前後方向に移動させることができる。これにより、車両の乗降口が車椅子の格納位置から車両前後方向にずれている場合であっても、前記車椅子を乗降口の横に下ろすことが可能になる。また、乗降口の横から車椅子を吊り上げることが可能になる。
【0008】
請求項2の発明によると、ガイド機構は、レールと、前記レールに沿って摺動可能な摺動子とから構成されていることを特徴とする。
このため、前記レールの傾き、あるいは曲げ形状等によって、キャリアに対するプロテクタの昇降動作、及び車両前後方向の移動動作を調整することができる。
【0009】
請求項3の発明によると、ガイド機構は、四節リンク機構を備えていることを特徴とする。
このため、簡単な構成でキャリアに対するプロテクタの昇降軌跡を一定に保持できる。
請求項4の発明によると、四節リンク機構は、キャリアに対してプロテクタが下降し、かつ車両前後方向に移動する際に、プロテクタに保持された車椅子が乗降口の方向を向くように、前記プロテクタを前記キャリアに対して水平方向に傾けられるように構成されている。
このため、車椅子を乗降口の横に下ろした状態で、車椅子と車両の運転席との間で運転者が移動し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、車両の屋根上にある車椅子の格納位置と、その車両の乗降口とが車両前後方向においてずれている場合であっても、車椅子を乗降口の横に下ろせるため、運転者が車両の運転席から車椅子に乗り移り易くなる。
また、車椅子を乗降口の横で吊り上げられるため、運転者が運転席に乗り移った後、車椅子を吊り手段に掛ける作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、図1から図11に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置について説明する。図1は本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図、図2、図3は図1(A)(B)の平面図である。図4は図2のIVA-IVA縦断面図、IVB-IVB縦断面図、図5は回動機構を表す一部破断側面図、図6から図9は車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の構成及び動作を表す側面図等である。また、図10は装置カバーの持ち上げ機構を表す側面図であり、図11は変更例に係る車椅子支持部を表す側面図である。
なお、図中に示す前後左右及び上下は車両(以下、自動車Cという)の前後左右及び上下に対応している。
【0012】
<車両用車椅子格納装置10の概要について>
車両用車椅子格納装置10は、運転者が車椅子Kから自動車Cの運転席に乗り移った後、その車椅子Kを自動車Cの屋根上に格納するための装置である。
車両用車椅子格納装置10は、図2、図3等に示すように、自動車Cの屋根上に固定された枠状の固定架台12と、固定架台12上を格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平スライド可能に構成された同じく枠状の可動架台15と、その可動架台15をスライドさせるスライド機構20と、上下回動可能な状態で可動架台15に連結されており車椅子Kを支持可能な車椅子支持部30と、その車椅子支持部30を上下回動させる回動機構40と、車椅子支持部30に設置されて車椅子Kの吊り上げ、吊り下げを行う吊り装置50と、上下分割式の装置カバー11とを備えている。
【0013】
<装置カバー11について>
装置カバー11は、図1に示すように、上記した車両用車椅子格納装置10の本体部分12,15,20,30,40,50と車椅子Kとを収納するカバーであり、固定式のロアカバー11dと可動式のアッパカバー11uとから構成されている。ロアカバー11dは、図2、図3に示すように、略角形の浅い上部開放形の容器状に形成されており、固定架台12と共に自動車Cの屋根上に固定されている。また、アッパカバー11uはロアカバー11dを上から覆う下部開放形の容器状に形成されており、持ち上げ機構60(図10参照)を介して可動架台15に取付けられている。持ち上げ機構60は、後記するように、可動架台15が使用位置までスライドする力を利用してアッパカバー11uを持ち上げ、前記可動架台15が格納位置まで戻されるときに、アッパカバー11uをロアカバー11dの位置まで下降させる。
ここで、アッパカバー11uの周縁には、ロアカバー11dとの合わせ部分をシールするゴム製のウエザーストリップ(図示省略)が装着されている。
【0014】
<固定架台12と可動架台15について>
固定架台12は、図2、図3に示すように、自動車Cの屋根の左右両側で前後方向に延びる左梁部123、右梁部124と、それら左梁部123、右梁部124の前後端上に渡されて左右方向(車幅方向)に延びる前梁部121、後梁部122とにより角形に組まれている。そして、固定架台12の四隅がロアカバー11dと共に固定部材12sにより自動車Cのルーフサイドレール(図示省略)に連結されている。固定架台12は、可動架台15のスライド中心CLが、図6、図7に示すように、運転席側乗降口Dの後端に位置するセンターピラーCpの上端位置と平面視においてほぼ一致するように、自動車Cの屋根上に設置されている。
可動架台15は、図2、図3に示すように、固定架台12の前梁部121と後梁部122との間に配置された角枠状部材であり、自動車Cの屋根上の格納位置(左スライド限界位置)と前記屋根から右方向に庇状に張り出す使用位置(右スライド限界位置)との間で左右方向にスライド可能に構成されている。
可動架台15は、前梁部151、後梁部152、左梁部153及び右梁部154により角形に組まれた外枠と、その外枠の略中央部分で前後方向に延びるように前梁部151と後梁部152との間に渡された太梁部155と、その太梁部155の左側で前梁部151と後梁部152との間に渡され縦梁部156とから構成されている。そして、可動架台15の太梁部155の右側が開口部15hとなっている。
【0015】
<スライド機構20について>
スライド機構20は、ラック&ピニオン機構を使用して可動架台15を固定架台12に対して格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動させるための機構である。スライド機構20は、図2等に示すように、二台(前後)一組で使用され、前後のスライド機構20が可動架台15を前後方向から挟むように、固定架台12の前梁部121の右端部、後梁部122の右端部に設置されている。なお、前後のスライド機構20は等しい構成のため、代表して後側のスライド機構20について説明する。
スライド機構20は、図4(A)(B)に示すように、固定架台12の後梁部122上に固定されたハウジング20cを備えている。ハウジング20cには、図4(A)の紙面手前側(右側)と奥側(左側)とに、前後方向に延びる軸部21jが挿通されており、前記ハウジング20cから前方に突出した軸部21jの先端に支持ローラ21が回転自在に装着されている。また、ハウジング20cには、左右の支持ローラ21に挟まれる位置に、図4(B)に示すように、モータ及び減速機25(以下、モータ25という)が収納されている。そして、前記モータ25の出力軸25pがハウジング20cから前方に突出し、その出力軸25pにピニオン24が取付けられている。
【0016】
可動架台15の後梁部152の後側面には、図4(A)に示すように、スライド機構20の左右の支持ローラ21が嵌め込まれる断面略C字形のガイド溝152mがその後梁部152の長手方向に延びるように形成されている。また、可動架台15の後梁部152には、図4(B)、図5に示すように、ガイド溝152mの下側位置に、前記ピニオン24と噛合するラック26がそのガイド溝152mに沿って形成されている。さらに、可動架台15の後梁部152の左端部には、図4(A)、図5に示すように、転動ローラ15rが後方に突出するように回転自在に取付けられており、その転動ローラ15rが固定架台12の後梁部122上を転動できるように構成されている。
上記構成により、スライド機構20のモータ25が駆動することにより、ラック26&ピニオン24の働きで可動架台15が固定架台12に対して格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動できるようになる。
【0017】
<回動機構40について>
可動架台15の太梁部155には、図2等に示すように、回動機構40を介して車椅子支持部30が連結されている。回動機構40は、車椅子支持部30を可動架台15に沿う水平位置と起立状態の垂直位置との間で上下回動させる機構であり、太梁部155に沿って配置された回転中心軸41を備えている。回転中心軸41は、車椅子支持部30のキャリア32(後記する)に固定されており、太梁部155に設けられた複数の軸受(図示省略)により軸心回りに回転自在に支持されている。即ち、回転中心軸41が軸心回りに回転することで、車椅子支持部30のキャリア32が可動架台15に沿う水平位置と起立状態の垂直位置との間で上下回動するようになる。回転中心軸41の前端位置には、図2、図5等に示すように、その回転中心軸41と同軸に扇形ギヤ43が固定されており、その扇形ギヤ43の外周歯部43wに円形歯車45が噛合している。円形歯車45はモータ45mの出力軸に取付けられており、そのモータ45mが取付け架台46により可動架台15の前梁部151に取付けられている。これにより、モータ45mが駆動すると、円形歯車45と扇形ギヤ43の外周歯部43wとの噛合作用により回転中心軸41が軸心回りに回転し、車椅子支持部30が可動架台15に対して上下方向に回動する。
【0018】
<車椅子支持部30について>
車椅子支持部30は、車椅子Kを吊り上げる際、あるいは車椅子Kを吊り下げる際に車椅子Kを保持する部分であり、図2等に示すように、可動架台15のスライド中心CLに対して若干後方にずれた位置に位置決めされている。車椅子支持部30は、キャリア32とプロテクタ36とから構成されている。キャリア32は、図8(B)に示すように、縦長の枠状に形成されており、ほぼ高さ方向中央部に回転中心軸41(一点鎖線参照)がキャリア32を横断するように固定されている。ここで、図8(A)(B)は、垂直位置にある車椅子支持部30のキャリア32とプロテクタ36とを表している。
キャリア32の上部には支持板32bが張られており、支持板32bの上端位置に吊り装置50(後記する)が固定されている。さらに、キャリア32の支持板32bの後部とキャリア32の下端前部との間には直線状のレール33が斜めに渡されている。そして、キャリア32のレール33に、図9(A)(B)に示すように、プロテクタ36の摺動子38がそのレール33に沿って摺動可能に連結されている。ここで、レール33の車両前後方向の傾きは、プロテクタ36がそのレール33の下端位置まで到達したときに、そのプロテクタ36が運転席側乗降口Dの位置まで前進可能な傾きに設定されている。
即ち、レール33と摺動子38とが本発明のガイド機構に相当する。
【0019】
吊り装置50は、図8(B)に示すように、車椅子Kとプロテクタ36を吊るためのベルト56と、ベルト56を巻き取るためのドラム52と、ドラム52を巻き取り、繰り出し方向に回転させるモータ部(図示省略)とを備えている。ベルト56は、プロテクタ36の上端部に形成された吊り支点36cに通されており、そのベルト56の先端に車椅子Kの被吊り具(図示省略)に掛けられるフック58が設けられている。プロテクタ36の吊り支点36cは、図9(C)に示すように、ベルト56が通される隙間状に形成されており、フック58の上端部58uが下方から掛かるように構成されている。このため、フック58に車椅子Kが吊られていない場合でも、吊り装置50が巻き上げ方向に駆動されると、フック58の上端部58uがプロテクタ36の吊り支点36cに掛かり、プロテクタ36が上方に引っ張られる。これにより、プロテクタ36は、キャリア32のレール33に沿って上昇しつつ、後方に移動するようになる。逆に、吊り装置50が巻き下げ方向に駆動されると、プロテクタ36は自重でキャリア32のレール33に沿って下降しつつ前進する。
即ち、吊り装置50が本発明の吊り手段に相当する。
【0020】
プロテクタ36は、車椅子Kを保持する枠状体であり、吊り装置50に吊り上げられた車椅子Kの車輪Krが下方から当接する位置に車椅子拘束板36xが設けられている。車椅子拘束板36xは、車椅子Kの車輪Krが下方から当接することでその車椅子Kをプロテクタ36に対して一定の位置関係に保持できるように構成されている。そして、車椅子Kの車輪Krが車椅子拘束板36xに当接している状態から吊り装置50によりさらに吊り上げられると、プロテクタ36は車椅子Kと共にキャリア32に対して上昇しつつ、後方に移動するようになる。
【0021】
<アッパカバー11uの持ち上げ機構60について>
アッパカバー11uの持ち上げ機構60は、図10に示すように、固定架台12、可動架台15の前後に設けられている。なお、前後の持ち上げ機構60は等しい構成のため、代表して前側の持ち上げ機構60について説明する。
持ち上げ機構60は、固定架台12の前梁部121上に立設されたガイドレール61と、可動架台15の前梁部151上に立設された左右一対の支柱63と、各々の支柱63の上端部に回転自在に装着された回転リンク65とを備えている。
ガイドレール61は、固定架台12の前梁部121上に右傾斜した状態で立設された第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61bと、その第1傾斜レール61aの上端から第2傾斜レール61bの方向に水平に延びる水平レール61fとにより、平行四辺形状に形成されている。そして、第1傾斜レール61aと水平レール61fとが連続するように構成されており、第2傾斜レール61bが独立している。
【0022】
回転リンク65は、長辺部65rと短辺部65sとにより略L字形に形成されたリンクである。回転リンク65は、長辺部65rと短辺部65sとの境界位置に回転中心65cを備えており、その回転リンク65の回転中心65cが支柱63の上端の回転支持部(図示省略)に回転自在に連結されている。回転リンク65は、ガイドレール61に対して平行に上下回動できるよう位置決めされている。左右の回転リンク65における短辺部65sの先端65zは、それぞれアッパカバー11uのリインフォース11zの一端(左端)と他端(右端)とに上下回動可能な状態で連結されている。さらに、左右の回転リンク65における長辺部65rの先端にはそれぞれローラ65eが回転自在に装着されている。そして、左側の回転リンク65のローラ65eが、ガイドレール61の第1傾斜レール61a、水平レール61fに沿って転動できるように構成されている。また、右側の回転リンク65のローラ65eが、ガイドレール61の第2傾斜レール61aに沿って転動できるように構成されている。
【0023】
図10に示すように、可動架台15が格納位置(左スライド限界位置)にある状態では、回転リンク65の回転中心65cが最も高い位置にあり、回転リンク65の短辺部65sの先端65zに連結されたアッパカバー11uは下限位置にあってロアカバー11dに合わせられている。また、左側の回転リンク65における長辺部65rのローラ65eがガイドレール61の第1傾斜レール61aに位置にあり、右側の回転リンク65における長辺部65rのローラ65eがガイドレール61の第2傾斜レール61aに位置にある。
【0024】
この状態で、可動架台15が使用位置の方向に右スライドすると、左右の回転リンク65の長辺部65rがガイドレール61によって左方向に押され、左右の回転リンク65は左回転する。これにより、左右の回転リンク65の短辺部65sが上方に移動し、その短辺部65sの先端65zに連結されたアッパカバー11uが徐々に持ち上げられる。そして、左右の回転リンク65の左回転により長辺部65rがガイドレール61の第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61aと等しい角度になった後は、左右の回転リンク65のローラ65eがガイドレール61の第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61aに沿って転動するようになる。
【0025】
そして、左側の回転リンク65のローラ65eが第1傾斜レール61aから水平レール61fに移り、右側の回転リンク65のローラ65eが第2傾斜レール61bから外れたタイミングで左右の回転リンク65の左回転が停止し、アッパカバー11uは上限位置に保持される。そして、アッパカバー11uが上限位置に保持された状態で、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)まで右スライドする。このとき、左側の回転リンク65のローラ65eは水平レール61fに沿ってその水平レール61fの右端位置まで移動し、右側の回転リンク65のローラ65eは第2傾斜レール61bから外れたままの状態で右端位置まで移動する。
また、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)から左スライドすると、左側の回転リンク65のローラ65eは水平レール61fに沿って移動した後、第1傾斜レール61aに沿って移動する。また、右側の回転リンク65のローラ65eは第2傾斜レール61bに当接した後、その第2傾斜レール61bに沿って移動する。そして、可動架台15が格納位置の近傍から格納位置(左スライド限界位置)まで左スライドする際に、左右の回転リンク65の長辺部65rがガイドレール61によって右方向に引っ張られ、左右の回転リンク65が右回転する。これにより、アッパカバー11uが下降してロアカバー11dに被せられる。
【0026】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10の動作について>
次に、本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の動作について説明する。
格納位置にある車椅子Kを自動車Cの屋根から下ろす場合には、先ず、前後のスライド機構20が動作することで、可動架台15が固定架台12に対して右スライドする。これにより、持ち上げ機構60が動作してアッパカバー11uがロアカバー11dに対して持ち上げられ、アッパカバー11uが可動架台15と共に移動する。そして、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)に到達すると前後のスライド機構20が停止し、アッパカバー11uは上限位置に保持される(図1(B)、図10参照)。
次に、回動機構40が動作して車椅子支持部30が可動架台15に沿う水平位置から垂直位置まで回転中心軸41回りを回動する(図6参照)。このとき、アッパカバー11uが上限位置に保持されているため、垂直位置まで回動した可動架台15の上部(キャリア32の吊り装置50)がアッパカバー11uの内壁面と干渉することがない。
【0027】
次に、吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作することで、図7、図8に示すように、車椅子Kを保持する車椅子支持部30のプロテクタ36が自重でキャリア32のレール33に沿って下降しつつ、前方に移動する。そして、図7に示すように、プロテクタ36がキャリア32に対する下限位置まで下降した後は、車椅子Kが単独で下降し、その車椅子Kがプロテクタ36の車椅子拘束板36xから離れるようになる。そして、車椅子Kが自動車Cの運転席側乗降口Dの横に下ろされる。
このように、車椅子Kが運転席側乗降口Dの横に下ろされるため、運転者は自動車Cの運転席から車椅子Kに乗り移り易くなる。
【0028】
次に、車椅子Kを格納する場合には、運転者が運転席に乗り移った後、運転席側乗降口Dの横にある車椅子Kの被吊り具に吊り装置50のフック58を掛け、吊り装置50を駆動させる。これにより、車椅子Kが吊り上げられ、同時に折り畳まれる。そして、吊り上げ過程で車椅子Kが車椅子支持部30のプロテクタ36の車椅子拘束板36xに下方から当接する。これにより、プロテクタ36が車椅子Kと共に吊り装置50によって引き上げられ、プロテクタ36はキャリア32のレール33に沿って上昇しつつ、後方に移動する。そして、プロテクタ36がキャリア32と等しい高さ(上限位置)まで上昇した段階で、プロテクタ36がキャリア32に対して車両前後方向において同位置に保持され、吊り装置50が停止する(図6参照)。次に、回動機構40が動作して、車椅子支持部30が垂直位置から水平位置方向に回動し、車椅子Kが車椅子支持部30よって掬い上げられる。そして、図1(B)に示すように、車椅子支持部30が可動架台15に沿う水平位置に到達した段階で回動機構40が停止する。
次に、前後のスライド機構20が駆動されることで、可動架台15が固定架台12に対して左スライドする。そして、可動架台15が格納位置の近傍から格納位置(左スライド限界位置)まで左スライドする際に、持ち上げ機構60の働きでアッパカバー11uが下降してロアカバー11dに被せられる。この状態で、車椅子Kの格納が終了する。
なお、車椅子Kを吊らない状態でも、上記した手順で車椅子支持部30等の格納が行われる。
【0029】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10によると、車椅子Kを保持可能なプロテクタ36はレール33と摺動子38の働きでキャリア32に対して昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結されている。このため、吊り装置50で車椅子Kを吊り下ろす際に、車椅子Kとプロテクタ36とをキャリア32に対して下降させつつ、前方に移動させることができる。これにより、自動車Cの乗降口Dが車椅子Kの格納位置から車両前後方向にずれている場合であっても、車椅子Kを乗降口Dの横に下ろすことが可能になる。また、車椅子Kを乗降口Dの横から吊り上げることが可能になる。
また、プロテクタ36は摺動子38の働きでレール33に沿って移動可能な構成のため、レール33の傾き、あるいは曲げ形状等によって、キャリア32に対するプロテクタ36の昇降動作、及び車両前後方向の移動動作を調整することができる。
【0030】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、キャリア32に設けられた斜めレール33とプロテクタ36に設けられた摺動子38とからガイド機構を構成する例を示したが、図11に示すように、キャリア32とプロテクタ36との間に中間体37を介在させる構成でも可能である。即ち、図11に示す構成によると、キャリア32には直線状の縦レール33uが設けられており、その縦レール33uに中間体37の裏面に設けられた摺動子37sが摺動可能に嵌め込まれている。これにより、中間体37はキャリア32に対して昇降が可能になる。さらに、中間体37の表面には、車両前後方向に延びる横レール33yが設けられており、その横レール33yにプロテクタ36の裏面に設けられた摺動子36sが摺動可能に嵌め込まれている。これにより、プロテクタ36は中間体37に対して車両前後方向に移動可能になる。このように、プロテクタ36を昇降動作とは別に車両前後方向に移動できるようになるため、前記プロテクタ36を車両前後方向における任意の位置で停止させることが可能になる。ここで、プロテクタ36を車両前後方向に移動させる手段は手動でも良いし、モータ等の駆動原を利用しても良い。
【0031】
[実施形態2]
以下、図12、図13に基づいて本発明の実施形態2に係る車両用車椅子格納装置について説明する。本実施形態に係る車両用車椅子格納装置は、実施形態1で説明した車両用車椅子格納装置の車椅子支持部30の構造を変更したもので、その他の構成については実施形態1の車両用車椅子格納装置と同様である。このため、実施形態1の車両用車椅子格納装置と同様の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
<本実施形態に係る車椅子支持部70の構成について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の車椅子支持部70は、図12に示すように、長方形の枠状に形成されたキャリア72と、そのキャリア72に上下摺動可能に連結された昇降ブロック75と、昇降ブロック75に対して一定軌跡で上下動可能に構成されたプロテクタ80とから構成されている。
キャリア72は、平行に設けられた前後のレール72a,72bと、上端部で両レール72a,72b間に渡された支持平板72uと、下端部で両レール72a,72b間に渡された下梁部72dとにより枠状に形成されている。そして、支持平板72uの位置に吊り装置50が取付けられている。また、前後のレール72a,72bのほぼ中央位置には、キャリア72を回動機構40の回転中心軸41(図12には記載されていない)に固定するための固定板73が取付けられている。
キャリア72の前後のレール72a,72bには、昇降ブロック75に設けられた前後の摺動子75sがそれぞれ嵌め込まれている。これにより、昇降ブロック75は、キャリア72の前後のレール72a,72bに沿って昇降が可能になる。
【0033】
昇降ブロック75には、図13に示すように、四節リンク機構87によってプロテクタ80が連結されている。
ここで、図13(A)はプロテクタ80が吊り装置50により上方に引き上げられているときの平面図であり、図13(B)はプロテクタ80が昇降ブロック75に対して自重で下降したときの平面図である。また、図13(C)は図13(A)の側面図(C-C矢視図)であり、図13(D)は図13(B)の側面図(D-D矢視図)である。図13(E)は第1連結部(後記する)の模式平面図である。
プロテクタ80は、略台形状に形成されたプロテクタ板83を備えており、そのプロテクタ板83の前端下部、及び後端下部に車椅子Kの車輪Krが下方から当接する車椅子拘束板83xが設けられている。また、プロテクタ板83は上端縁が水平に折り曲げられており、その折り曲げ部位に吊り支点81cを備えるフレーム81の下端部が固定されている。吊り支点81cには、吊り装置50のベルト56が通されて、フック58が掛かるように構成されている。さらに、プロテクタ板83の折り曲げ部位には、フレーム81の間に四節リンク機構87が連結される支持ブロック83uが立設されている。
【0034】
四節リンク機構87は、プロテクタ80を昇降ブロック75の真上位置(図13(A)(C)参照)と右前方位置(図13(B)(D)参照)との間で移動させる機構である。四節リンク機構87は、一対の棒状リンク87rと、前記棒状リンク87rを昇降ブロック75に連結する第1連結部87dと、前記棒状リンク87rをプロテクタ80に連結する第2連結部87uとから構成されている。そして、第1連結部87dは、図13(E)に示すように、棒状リンク87rが昇降ブロック75に対して右前方に回動できるように、回転中心軸が昇降ブロック75に対して傾斜した状態で形成されている。また、第2連結部87uはボールジョイントにより構成されている。
【0035】
<車椅子支持部70の動作について>
上記構成により、吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作すると、図12に示すように、プロテクタ80の昇降ブロック75がキャリア72のレール72a,72bに沿って下降する。そして、昇降ブロック75がキャリア72の下端位置まで到達した後、さらに吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作すると、四節リンク機構87の働きでプロテクタ80が昇降ブロック75に対して下降しつつ右前方に移動する。このとき、四節リンク機構87の働きにより、プロテクタ80は、図13(B)に示すように、車椅子Kを自動車Cの運転席側乗降口Dの方向に向けるように、昇降ブロック75に対して平面視において傾斜する。そして、プロテクタ80が昇降ブロック75に対して下限位置に保持された後は、車椅子Kが単独で下降し、自動車Cの運転席側乗降口Dの横に下ろされる。
また、車椅子Kが吊り上げられ、プロテクタ80が車椅子Kと共に吊り装置50によって引き上げられると、プロテクタ80は四節リンク機構87の働きにより上昇しつつ後退して昇降ブロック75の真上位置まで移動する。そして、この状態からさらにプロテクタ80が吊り装置50によって引き上げられると、昇降ブロック75が四節リンク機構87を介して引き上げられ、キャリア72のレール72a,72bに沿って上昇する。
なお、以後の車椅子Kの格納動作は、実施形態1で説明した手順と同様である。
即ち、四節リンク機構87及び昇降ブロック等が本発明のガイド機構に相当する。
【0036】
<本実施形態に係る車椅子支持部70の長所について>
本実施形態に係る車椅子支持部70によると、ガイド機構は四節リンク機構87を備えているため、簡単な構成でキャリア72に対するプロテクタ80の昇降軌跡を一定に保持できる。
また、四節リンク機構87は、キャリア72に対してプロテクタ80が下降し、かつ車両前方に移動する際に、プロテクタ80に保持された車椅子Kが運転席側乗降口Dを向くように、プロテクタ80をキャリア72に対して水平方向に傾けられるように構成されている。
このため、車椅子Kを運転席側乗降口Dの横に下ろした状態で、車椅子Kと乗用車Cの運転席との間で運転者が移動し易くなる。
【0037】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、四節リンク機構87の棒状リンク87rを昇降ブロック75に対して右前方に回動するように連結する例を示したが、棒状リンク87rを昇降ブロック75に対して前方に回動できるよう連結する構成でも可能である。
また、本実施形態では、キャリア72が立てられた状態で、そのキャリア72の前後のレール72a,72bが上下方向に延びるように形成される例を示したが、前記レール72a,72bを前後に傾斜させて形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図(A図、B図)である。
【図2】車両用車椅子格納装置の格納状態を表す平面図(図1(A)の平面図)である。
【図3】車両用車椅子格納装置の使用状態を表す平面図(図1(B)の平面図)である。
【図4】図2のIVA- IVA 縦断面図(A図)、図2のIVB-IVB縦断面図(B図)である。
【図5】回動機構を表す一部破断側面図である。
【図6】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の動作を表す側面図である。
【図7】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の動作を表す側面図である。
【図8】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の構成を表す側面図(A図、B図)である。
【図9】車椅子支持部のガイド機構を表す側面図(A図)及び平断面図(B図)、車椅子支持部の吊り支点を表す斜視図(C図)である。
【図10】装置カバーの持ち上げ機構を表す側面図である。
【図11】変更例に係る車椅子支持部の構成を表す側面図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る車両用車椅子格納装置の使用状態とを表す側面図である。
【図13】車椅子支持部のプロテクタを表す側面図(A図、B図)、A図のC-C矢視図(C図)、B図のD-D矢視図(D図)、第1連結部の模式平面図(E図)である。
【図14】従来の車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図(A図、B図)である。
【符号の説明】
【0039】
12・・・・固定架台
15・・・・可動架台
20・・・・スライド機構
30・・・・車椅子支持部
32・・・・キャリア
33・・・・レール
36・・・・プロテクタ
36s・・・摺動子
37s・・・摺動子
38・・・・摺動子
40・・・・回動機構
41・・・・回転中心軸
50・・・・吊り装置(吊り手段)
70・・・・車椅子支持部
72・・・・キャリア
75・・・・昇降ブロック
80・・・・プロテクタ
87・・・・四節リンク機構
C・・・・・乗用車
D・・・・・運転席側乗降口
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の吊り手段を利用して車椅子を上昇させて垂直位置に配置された車椅子支持部で受け、前記車椅子支持部を水平位置まで回動させながら車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、その車椅子支持部及び車椅子を屋根上の格納位置まで移動させる車両用車椅子格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記車両用車椅子格納装置に関する技術が特許文献1に開示されている。
この車両用車椅子格納装置100は、図14に示すように、車椅子Kを支持する可動架台102が車幅方向(左右方向)に横スライドできるように構成されている。車両用車椅子格納装置100は、可動架台102の横スライド中心が運転席側乗降口Dの後端に位置するセンターピラーCpの上端位置と平面視においてほぼ一致するように、車両Cの屋根上に設置されている。可動架台102上の車椅子Kを下ろす場合には、可動架台102を所定位置まで右スライドさせて、可動架台102を屋根から庇状に突出させた後、その位置で車椅子Kを真っ直ぐ吊り下ろすようにする。
これにより、吊り下ろされた車椅子Kは運転席側乗降口Dの後横(センターピラーCpより若干後方)に配置される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−20554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車椅子Kが運転席側乗降口Dの後横に吊り下ろされると、運転者が車両の運転席から車椅子Kに乗り移るのが大変である。
また、車椅子Kを吊り上げる際には、運転席に着座した運転者が体を後に捻って運転席側乗降口Dの後横にある吊り手段のフックに車椅子Kを掛ける必要があるため、作業に手間が掛かる。
この点を改善するため、車両用車椅子格納装置100の位置を車両前方にずらすことも考えられるが、このようにすると運転中に車両用車椅子格納装置100が運転者の視界に入って好ましくない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の屋根上にある車椅子の格納位置と、その車両の乗降口とが車両前後方向においてずれている場合であっても、車椅子を乗降口の横に下ろし、またこの位置で車椅子を吊り上げできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両の屋根上に水平に設置された固定架台と、前記屋根上の格納位置とその屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上をスライド可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を水平位置と垂直位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上昇させてその車椅子を前記垂直位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を水平位置まで上回動させながら前記車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、前記可動架台を格納位置までスライドさせて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、前記車椅子支持部は、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリアと、前記吊り手段により吊られた前記車椅子を受けてその車椅子を保持可能なプロテクタと、前記キャリアに対して前記プロテクタを昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、車椅子を保持可能なプロテクタはガイド機構によりキャリアに対して昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結されている。このため、吊り手段で車椅子を吊り下ろす際に、車椅子とプロテクタとをキャリアに対して下降させつつ、車両前後方向に移動させることができる。これにより、車両の乗降口が車椅子の格納位置から車両前後方向にずれている場合であっても、前記車椅子を乗降口の横に下ろすことが可能になる。また、乗降口の横から車椅子を吊り上げることが可能になる。
【0008】
請求項2の発明によると、ガイド機構は、レールと、前記レールに沿って摺動可能な摺動子とから構成されていることを特徴とする。
このため、前記レールの傾き、あるいは曲げ形状等によって、キャリアに対するプロテクタの昇降動作、及び車両前後方向の移動動作を調整することができる。
【0009】
請求項3の発明によると、ガイド機構は、四節リンク機構を備えていることを特徴とする。
このため、簡単な構成でキャリアに対するプロテクタの昇降軌跡を一定に保持できる。
請求項4の発明によると、四節リンク機構は、キャリアに対してプロテクタが下降し、かつ車両前後方向に移動する際に、プロテクタに保持された車椅子が乗降口の方向を向くように、前記プロテクタを前記キャリアに対して水平方向に傾けられるように構成されている。
このため、車椅子を乗降口の横に下ろした状態で、車椅子と車両の運転席との間で運転者が移動し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、車両の屋根上にある車椅子の格納位置と、その車両の乗降口とが車両前後方向においてずれている場合であっても、車椅子を乗降口の横に下ろせるため、運転者が車両の運転席から車椅子に乗り移り易くなる。
また、車椅子を乗降口の横で吊り上げられるため、運転者が運転席に乗り移った後、車椅子を吊り手段に掛ける作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、図1から図11に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置について説明する。図1は本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図、図2、図3は図1(A)(B)の平面図である。図4は図2のIVA-IVA縦断面図、IVB-IVB縦断面図、図5は回動機構を表す一部破断側面図、図6から図9は車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の構成及び動作を表す側面図等である。また、図10は装置カバーの持ち上げ機構を表す側面図であり、図11は変更例に係る車椅子支持部を表す側面図である。
なお、図中に示す前後左右及び上下は車両(以下、自動車Cという)の前後左右及び上下に対応している。
【0012】
<車両用車椅子格納装置10の概要について>
車両用車椅子格納装置10は、運転者が車椅子Kから自動車Cの運転席に乗り移った後、その車椅子Kを自動車Cの屋根上に格納するための装置である。
車両用車椅子格納装置10は、図2、図3等に示すように、自動車Cの屋根上に固定された枠状の固定架台12と、固定架台12上を格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平スライド可能に構成された同じく枠状の可動架台15と、その可動架台15をスライドさせるスライド機構20と、上下回動可能な状態で可動架台15に連結されており車椅子Kを支持可能な車椅子支持部30と、その車椅子支持部30を上下回動させる回動機構40と、車椅子支持部30に設置されて車椅子Kの吊り上げ、吊り下げを行う吊り装置50と、上下分割式の装置カバー11とを備えている。
【0013】
<装置カバー11について>
装置カバー11は、図1に示すように、上記した車両用車椅子格納装置10の本体部分12,15,20,30,40,50と車椅子Kとを収納するカバーであり、固定式のロアカバー11dと可動式のアッパカバー11uとから構成されている。ロアカバー11dは、図2、図3に示すように、略角形の浅い上部開放形の容器状に形成されており、固定架台12と共に自動車Cの屋根上に固定されている。また、アッパカバー11uはロアカバー11dを上から覆う下部開放形の容器状に形成されており、持ち上げ機構60(図10参照)を介して可動架台15に取付けられている。持ち上げ機構60は、後記するように、可動架台15が使用位置までスライドする力を利用してアッパカバー11uを持ち上げ、前記可動架台15が格納位置まで戻されるときに、アッパカバー11uをロアカバー11dの位置まで下降させる。
ここで、アッパカバー11uの周縁には、ロアカバー11dとの合わせ部分をシールするゴム製のウエザーストリップ(図示省略)が装着されている。
【0014】
<固定架台12と可動架台15について>
固定架台12は、図2、図3に示すように、自動車Cの屋根の左右両側で前後方向に延びる左梁部123、右梁部124と、それら左梁部123、右梁部124の前後端上に渡されて左右方向(車幅方向)に延びる前梁部121、後梁部122とにより角形に組まれている。そして、固定架台12の四隅がロアカバー11dと共に固定部材12sにより自動車Cのルーフサイドレール(図示省略)に連結されている。固定架台12は、可動架台15のスライド中心CLが、図6、図7に示すように、運転席側乗降口Dの後端に位置するセンターピラーCpの上端位置と平面視においてほぼ一致するように、自動車Cの屋根上に設置されている。
可動架台15は、図2、図3に示すように、固定架台12の前梁部121と後梁部122との間に配置された角枠状部材であり、自動車Cの屋根上の格納位置(左スライド限界位置)と前記屋根から右方向に庇状に張り出す使用位置(右スライド限界位置)との間で左右方向にスライド可能に構成されている。
可動架台15は、前梁部151、後梁部152、左梁部153及び右梁部154により角形に組まれた外枠と、その外枠の略中央部分で前後方向に延びるように前梁部151と後梁部152との間に渡された太梁部155と、その太梁部155の左側で前梁部151と後梁部152との間に渡され縦梁部156とから構成されている。そして、可動架台15の太梁部155の右側が開口部15hとなっている。
【0015】
<スライド機構20について>
スライド機構20は、ラック&ピニオン機構を使用して可動架台15を固定架台12に対して格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動させるための機構である。スライド機構20は、図2等に示すように、二台(前後)一組で使用され、前後のスライド機構20が可動架台15を前後方向から挟むように、固定架台12の前梁部121の右端部、後梁部122の右端部に設置されている。なお、前後のスライド機構20は等しい構成のため、代表して後側のスライド機構20について説明する。
スライド機構20は、図4(A)(B)に示すように、固定架台12の後梁部122上に固定されたハウジング20cを備えている。ハウジング20cには、図4(A)の紙面手前側(右側)と奥側(左側)とに、前後方向に延びる軸部21jが挿通されており、前記ハウジング20cから前方に突出した軸部21jの先端に支持ローラ21が回転自在に装着されている。また、ハウジング20cには、左右の支持ローラ21に挟まれる位置に、図4(B)に示すように、モータ及び減速機25(以下、モータ25という)が収納されている。そして、前記モータ25の出力軸25pがハウジング20cから前方に突出し、その出力軸25pにピニオン24が取付けられている。
【0016】
可動架台15の後梁部152の後側面には、図4(A)に示すように、スライド機構20の左右の支持ローラ21が嵌め込まれる断面略C字形のガイド溝152mがその後梁部152の長手方向に延びるように形成されている。また、可動架台15の後梁部152には、図4(B)、図5に示すように、ガイド溝152mの下側位置に、前記ピニオン24と噛合するラック26がそのガイド溝152mに沿って形成されている。さらに、可動架台15の後梁部152の左端部には、図4(A)、図5に示すように、転動ローラ15rが後方に突出するように回転自在に取付けられており、その転動ローラ15rが固定架台12の後梁部122上を転動できるように構成されている。
上記構成により、スライド機構20のモータ25が駆動することにより、ラック26&ピニオン24の働きで可動架台15が固定架台12に対して格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動できるようになる。
【0017】
<回動機構40について>
可動架台15の太梁部155には、図2等に示すように、回動機構40を介して車椅子支持部30が連結されている。回動機構40は、車椅子支持部30を可動架台15に沿う水平位置と起立状態の垂直位置との間で上下回動させる機構であり、太梁部155に沿って配置された回転中心軸41を備えている。回転中心軸41は、車椅子支持部30のキャリア32(後記する)に固定されており、太梁部155に設けられた複数の軸受(図示省略)により軸心回りに回転自在に支持されている。即ち、回転中心軸41が軸心回りに回転することで、車椅子支持部30のキャリア32が可動架台15に沿う水平位置と起立状態の垂直位置との間で上下回動するようになる。回転中心軸41の前端位置には、図2、図5等に示すように、その回転中心軸41と同軸に扇形ギヤ43が固定されており、その扇形ギヤ43の外周歯部43wに円形歯車45が噛合している。円形歯車45はモータ45mの出力軸に取付けられており、そのモータ45mが取付け架台46により可動架台15の前梁部151に取付けられている。これにより、モータ45mが駆動すると、円形歯車45と扇形ギヤ43の外周歯部43wとの噛合作用により回転中心軸41が軸心回りに回転し、車椅子支持部30が可動架台15に対して上下方向に回動する。
【0018】
<車椅子支持部30について>
車椅子支持部30は、車椅子Kを吊り上げる際、あるいは車椅子Kを吊り下げる際に車椅子Kを保持する部分であり、図2等に示すように、可動架台15のスライド中心CLに対して若干後方にずれた位置に位置決めされている。車椅子支持部30は、キャリア32とプロテクタ36とから構成されている。キャリア32は、図8(B)に示すように、縦長の枠状に形成されており、ほぼ高さ方向中央部に回転中心軸41(一点鎖線参照)がキャリア32を横断するように固定されている。ここで、図8(A)(B)は、垂直位置にある車椅子支持部30のキャリア32とプロテクタ36とを表している。
キャリア32の上部には支持板32bが張られており、支持板32bの上端位置に吊り装置50(後記する)が固定されている。さらに、キャリア32の支持板32bの後部とキャリア32の下端前部との間には直線状のレール33が斜めに渡されている。そして、キャリア32のレール33に、図9(A)(B)に示すように、プロテクタ36の摺動子38がそのレール33に沿って摺動可能に連結されている。ここで、レール33の車両前後方向の傾きは、プロテクタ36がそのレール33の下端位置まで到達したときに、そのプロテクタ36が運転席側乗降口Dの位置まで前進可能な傾きに設定されている。
即ち、レール33と摺動子38とが本発明のガイド機構に相当する。
【0019】
吊り装置50は、図8(B)に示すように、車椅子Kとプロテクタ36を吊るためのベルト56と、ベルト56を巻き取るためのドラム52と、ドラム52を巻き取り、繰り出し方向に回転させるモータ部(図示省略)とを備えている。ベルト56は、プロテクタ36の上端部に形成された吊り支点36cに通されており、そのベルト56の先端に車椅子Kの被吊り具(図示省略)に掛けられるフック58が設けられている。プロテクタ36の吊り支点36cは、図9(C)に示すように、ベルト56が通される隙間状に形成されており、フック58の上端部58uが下方から掛かるように構成されている。このため、フック58に車椅子Kが吊られていない場合でも、吊り装置50が巻き上げ方向に駆動されると、フック58の上端部58uがプロテクタ36の吊り支点36cに掛かり、プロテクタ36が上方に引っ張られる。これにより、プロテクタ36は、キャリア32のレール33に沿って上昇しつつ、後方に移動するようになる。逆に、吊り装置50が巻き下げ方向に駆動されると、プロテクタ36は自重でキャリア32のレール33に沿って下降しつつ前進する。
即ち、吊り装置50が本発明の吊り手段に相当する。
【0020】
プロテクタ36は、車椅子Kを保持する枠状体であり、吊り装置50に吊り上げられた車椅子Kの車輪Krが下方から当接する位置に車椅子拘束板36xが設けられている。車椅子拘束板36xは、車椅子Kの車輪Krが下方から当接することでその車椅子Kをプロテクタ36に対して一定の位置関係に保持できるように構成されている。そして、車椅子Kの車輪Krが車椅子拘束板36xに当接している状態から吊り装置50によりさらに吊り上げられると、プロテクタ36は車椅子Kと共にキャリア32に対して上昇しつつ、後方に移動するようになる。
【0021】
<アッパカバー11uの持ち上げ機構60について>
アッパカバー11uの持ち上げ機構60は、図10に示すように、固定架台12、可動架台15の前後に設けられている。なお、前後の持ち上げ機構60は等しい構成のため、代表して前側の持ち上げ機構60について説明する。
持ち上げ機構60は、固定架台12の前梁部121上に立設されたガイドレール61と、可動架台15の前梁部151上に立設された左右一対の支柱63と、各々の支柱63の上端部に回転自在に装着された回転リンク65とを備えている。
ガイドレール61は、固定架台12の前梁部121上に右傾斜した状態で立設された第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61bと、その第1傾斜レール61aの上端から第2傾斜レール61bの方向に水平に延びる水平レール61fとにより、平行四辺形状に形成されている。そして、第1傾斜レール61aと水平レール61fとが連続するように構成されており、第2傾斜レール61bが独立している。
【0022】
回転リンク65は、長辺部65rと短辺部65sとにより略L字形に形成されたリンクである。回転リンク65は、長辺部65rと短辺部65sとの境界位置に回転中心65cを備えており、その回転リンク65の回転中心65cが支柱63の上端の回転支持部(図示省略)に回転自在に連結されている。回転リンク65は、ガイドレール61に対して平行に上下回動できるよう位置決めされている。左右の回転リンク65における短辺部65sの先端65zは、それぞれアッパカバー11uのリインフォース11zの一端(左端)と他端(右端)とに上下回動可能な状態で連結されている。さらに、左右の回転リンク65における長辺部65rの先端にはそれぞれローラ65eが回転自在に装着されている。そして、左側の回転リンク65のローラ65eが、ガイドレール61の第1傾斜レール61a、水平レール61fに沿って転動できるように構成されている。また、右側の回転リンク65のローラ65eが、ガイドレール61の第2傾斜レール61aに沿って転動できるように構成されている。
【0023】
図10に示すように、可動架台15が格納位置(左スライド限界位置)にある状態では、回転リンク65の回転中心65cが最も高い位置にあり、回転リンク65の短辺部65sの先端65zに連結されたアッパカバー11uは下限位置にあってロアカバー11dに合わせられている。また、左側の回転リンク65における長辺部65rのローラ65eがガイドレール61の第1傾斜レール61aに位置にあり、右側の回転リンク65における長辺部65rのローラ65eがガイドレール61の第2傾斜レール61aに位置にある。
【0024】
この状態で、可動架台15が使用位置の方向に右スライドすると、左右の回転リンク65の長辺部65rがガイドレール61によって左方向に押され、左右の回転リンク65は左回転する。これにより、左右の回転リンク65の短辺部65sが上方に移動し、その短辺部65sの先端65zに連結されたアッパカバー11uが徐々に持ち上げられる。そして、左右の回転リンク65の左回転により長辺部65rがガイドレール61の第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61aと等しい角度になった後は、左右の回転リンク65のローラ65eがガイドレール61の第1傾斜レール61a、第2傾斜レール61aに沿って転動するようになる。
【0025】
そして、左側の回転リンク65のローラ65eが第1傾斜レール61aから水平レール61fに移り、右側の回転リンク65のローラ65eが第2傾斜レール61bから外れたタイミングで左右の回転リンク65の左回転が停止し、アッパカバー11uは上限位置に保持される。そして、アッパカバー11uが上限位置に保持された状態で、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)まで右スライドする。このとき、左側の回転リンク65のローラ65eは水平レール61fに沿ってその水平レール61fの右端位置まで移動し、右側の回転リンク65のローラ65eは第2傾斜レール61bから外れたままの状態で右端位置まで移動する。
また、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)から左スライドすると、左側の回転リンク65のローラ65eは水平レール61fに沿って移動した後、第1傾斜レール61aに沿って移動する。また、右側の回転リンク65のローラ65eは第2傾斜レール61bに当接した後、その第2傾斜レール61bに沿って移動する。そして、可動架台15が格納位置の近傍から格納位置(左スライド限界位置)まで左スライドする際に、左右の回転リンク65の長辺部65rがガイドレール61によって右方向に引っ張られ、左右の回転リンク65が右回転する。これにより、アッパカバー11uが下降してロアカバー11dに被せられる。
【0026】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10の動作について>
次に、本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の動作について説明する。
格納位置にある車椅子Kを自動車Cの屋根から下ろす場合には、先ず、前後のスライド機構20が動作することで、可動架台15が固定架台12に対して右スライドする。これにより、持ち上げ機構60が動作してアッパカバー11uがロアカバー11dに対して持ち上げられ、アッパカバー11uが可動架台15と共に移動する。そして、可動架台15が使用位置(右スライド限界位置)に到達すると前後のスライド機構20が停止し、アッパカバー11uは上限位置に保持される(図1(B)、図10参照)。
次に、回動機構40が動作して車椅子支持部30が可動架台15に沿う水平位置から垂直位置まで回転中心軸41回りを回動する(図6参照)。このとき、アッパカバー11uが上限位置に保持されているため、垂直位置まで回動した可動架台15の上部(キャリア32の吊り装置50)がアッパカバー11uの内壁面と干渉することがない。
【0027】
次に、吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作することで、図7、図8に示すように、車椅子Kを保持する車椅子支持部30のプロテクタ36が自重でキャリア32のレール33に沿って下降しつつ、前方に移動する。そして、図7に示すように、プロテクタ36がキャリア32に対する下限位置まで下降した後は、車椅子Kが単独で下降し、その車椅子Kがプロテクタ36の車椅子拘束板36xから離れるようになる。そして、車椅子Kが自動車Cの運転席側乗降口Dの横に下ろされる。
このように、車椅子Kが運転席側乗降口Dの横に下ろされるため、運転者は自動車Cの運転席から車椅子Kに乗り移り易くなる。
【0028】
次に、車椅子Kを格納する場合には、運転者が運転席に乗り移った後、運転席側乗降口Dの横にある車椅子Kの被吊り具に吊り装置50のフック58を掛け、吊り装置50を駆動させる。これにより、車椅子Kが吊り上げられ、同時に折り畳まれる。そして、吊り上げ過程で車椅子Kが車椅子支持部30のプロテクタ36の車椅子拘束板36xに下方から当接する。これにより、プロテクタ36が車椅子Kと共に吊り装置50によって引き上げられ、プロテクタ36はキャリア32のレール33に沿って上昇しつつ、後方に移動する。そして、プロテクタ36がキャリア32と等しい高さ(上限位置)まで上昇した段階で、プロテクタ36がキャリア32に対して車両前後方向において同位置に保持され、吊り装置50が停止する(図6参照)。次に、回動機構40が動作して、車椅子支持部30が垂直位置から水平位置方向に回動し、車椅子Kが車椅子支持部30よって掬い上げられる。そして、図1(B)に示すように、車椅子支持部30が可動架台15に沿う水平位置に到達した段階で回動機構40が停止する。
次に、前後のスライド機構20が駆動されることで、可動架台15が固定架台12に対して左スライドする。そして、可動架台15が格納位置の近傍から格納位置(左スライド限界位置)まで左スライドする際に、持ち上げ機構60の働きでアッパカバー11uが下降してロアカバー11dに被せられる。この状態で、車椅子Kの格納が終了する。
なお、車椅子Kを吊らない状態でも、上記した手順で車椅子支持部30等の格納が行われる。
【0029】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10によると、車椅子Kを保持可能なプロテクタ36はレール33と摺動子38の働きでキャリア32に対して昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結されている。このため、吊り装置50で車椅子Kを吊り下ろす際に、車椅子Kとプロテクタ36とをキャリア32に対して下降させつつ、前方に移動させることができる。これにより、自動車Cの乗降口Dが車椅子Kの格納位置から車両前後方向にずれている場合であっても、車椅子Kを乗降口Dの横に下ろすことが可能になる。また、車椅子Kを乗降口Dの横から吊り上げることが可能になる。
また、プロテクタ36は摺動子38の働きでレール33に沿って移動可能な構成のため、レール33の傾き、あるいは曲げ形状等によって、キャリア32に対するプロテクタ36の昇降動作、及び車両前後方向の移動動作を調整することができる。
【0030】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、キャリア32に設けられた斜めレール33とプロテクタ36に設けられた摺動子38とからガイド機構を構成する例を示したが、図11に示すように、キャリア32とプロテクタ36との間に中間体37を介在させる構成でも可能である。即ち、図11に示す構成によると、キャリア32には直線状の縦レール33uが設けられており、その縦レール33uに中間体37の裏面に設けられた摺動子37sが摺動可能に嵌め込まれている。これにより、中間体37はキャリア32に対して昇降が可能になる。さらに、中間体37の表面には、車両前後方向に延びる横レール33yが設けられており、その横レール33yにプロテクタ36の裏面に設けられた摺動子36sが摺動可能に嵌め込まれている。これにより、プロテクタ36は中間体37に対して車両前後方向に移動可能になる。このように、プロテクタ36を昇降動作とは別に車両前後方向に移動できるようになるため、前記プロテクタ36を車両前後方向における任意の位置で停止させることが可能になる。ここで、プロテクタ36を車両前後方向に移動させる手段は手動でも良いし、モータ等の駆動原を利用しても良い。
【0031】
[実施形態2]
以下、図12、図13に基づいて本発明の実施形態2に係る車両用車椅子格納装置について説明する。本実施形態に係る車両用車椅子格納装置は、実施形態1で説明した車両用車椅子格納装置の車椅子支持部30の構造を変更したもので、その他の構成については実施形態1の車両用車椅子格納装置と同様である。このため、実施形態1の車両用車椅子格納装置と同様の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
<本実施形態に係る車椅子支持部70の構成について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の車椅子支持部70は、図12に示すように、長方形の枠状に形成されたキャリア72と、そのキャリア72に上下摺動可能に連結された昇降ブロック75と、昇降ブロック75に対して一定軌跡で上下動可能に構成されたプロテクタ80とから構成されている。
キャリア72は、平行に設けられた前後のレール72a,72bと、上端部で両レール72a,72b間に渡された支持平板72uと、下端部で両レール72a,72b間に渡された下梁部72dとにより枠状に形成されている。そして、支持平板72uの位置に吊り装置50が取付けられている。また、前後のレール72a,72bのほぼ中央位置には、キャリア72を回動機構40の回転中心軸41(図12には記載されていない)に固定するための固定板73が取付けられている。
キャリア72の前後のレール72a,72bには、昇降ブロック75に設けられた前後の摺動子75sがそれぞれ嵌め込まれている。これにより、昇降ブロック75は、キャリア72の前後のレール72a,72bに沿って昇降が可能になる。
【0033】
昇降ブロック75には、図13に示すように、四節リンク機構87によってプロテクタ80が連結されている。
ここで、図13(A)はプロテクタ80が吊り装置50により上方に引き上げられているときの平面図であり、図13(B)はプロテクタ80が昇降ブロック75に対して自重で下降したときの平面図である。また、図13(C)は図13(A)の側面図(C-C矢視図)であり、図13(D)は図13(B)の側面図(D-D矢視図)である。図13(E)は第1連結部(後記する)の模式平面図である。
プロテクタ80は、略台形状に形成されたプロテクタ板83を備えており、そのプロテクタ板83の前端下部、及び後端下部に車椅子Kの車輪Krが下方から当接する車椅子拘束板83xが設けられている。また、プロテクタ板83は上端縁が水平に折り曲げられており、その折り曲げ部位に吊り支点81cを備えるフレーム81の下端部が固定されている。吊り支点81cには、吊り装置50のベルト56が通されて、フック58が掛かるように構成されている。さらに、プロテクタ板83の折り曲げ部位には、フレーム81の間に四節リンク機構87が連結される支持ブロック83uが立設されている。
【0034】
四節リンク機構87は、プロテクタ80を昇降ブロック75の真上位置(図13(A)(C)参照)と右前方位置(図13(B)(D)参照)との間で移動させる機構である。四節リンク機構87は、一対の棒状リンク87rと、前記棒状リンク87rを昇降ブロック75に連結する第1連結部87dと、前記棒状リンク87rをプロテクタ80に連結する第2連結部87uとから構成されている。そして、第1連結部87dは、図13(E)に示すように、棒状リンク87rが昇降ブロック75に対して右前方に回動できるように、回転中心軸が昇降ブロック75に対して傾斜した状態で形成されている。また、第2連結部87uはボールジョイントにより構成されている。
【0035】
<車椅子支持部70の動作について>
上記構成により、吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作すると、図12に示すように、プロテクタ80の昇降ブロック75がキャリア72のレール72a,72bに沿って下降する。そして、昇降ブロック75がキャリア72の下端位置まで到達した後、さらに吊り装置50がベルト56を繰り出す方向に動作すると、四節リンク機構87の働きでプロテクタ80が昇降ブロック75に対して下降しつつ右前方に移動する。このとき、四節リンク機構87の働きにより、プロテクタ80は、図13(B)に示すように、車椅子Kを自動車Cの運転席側乗降口Dの方向に向けるように、昇降ブロック75に対して平面視において傾斜する。そして、プロテクタ80が昇降ブロック75に対して下限位置に保持された後は、車椅子Kが単独で下降し、自動車Cの運転席側乗降口Dの横に下ろされる。
また、車椅子Kが吊り上げられ、プロテクタ80が車椅子Kと共に吊り装置50によって引き上げられると、プロテクタ80は四節リンク機構87の働きにより上昇しつつ後退して昇降ブロック75の真上位置まで移動する。そして、この状態からさらにプロテクタ80が吊り装置50によって引き上げられると、昇降ブロック75が四節リンク機構87を介して引き上げられ、キャリア72のレール72a,72bに沿って上昇する。
なお、以後の車椅子Kの格納動作は、実施形態1で説明した手順と同様である。
即ち、四節リンク機構87及び昇降ブロック等が本発明のガイド機構に相当する。
【0036】
<本実施形態に係る車椅子支持部70の長所について>
本実施形態に係る車椅子支持部70によると、ガイド機構は四節リンク機構87を備えているため、簡単な構成でキャリア72に対するプロテクタ80の昇降軌跡を一定に保持できる。
また、四節リンク機構87は、キャリア72に対してプロテクタ80が下降し、かつ車両前方に移動する際に、プロテクタ80に保持された車椅子Kが運転席側乗降口Dを向くように、プロテクタ80をキャリア72に対して水平方向に傾けられるように構成されている。
このため、車椅子Kを運転席側乗降口Dの横に下ろした状態で、車椅子Kと乗用車Cの運転席との間で運転者が移動し易くなる。
【0037】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、四節リンク機構87の棒状リンク87rを昇降ブロック75に対して右前方に回動するように連結する例を示したが、棒状リンク87rを昇降ブロック75に対して前方に回動できるよう連結する構成でも可能である。
また、本実施形態では、キャリア72が立てられた状態で、そのキャリア72の前後のレール72a,72bが上下方向に延びるように形成される例を示したが、前記レール72a,72bを前後に傾斜させて形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図(A図、B図)である。
【図2】車両用車椅子格納装置の格納状態を表す平面図(図1(A)の平面図)である。
【図3】車両用車椅子格納装置の使用状態を表す平面図(図1(B)の平面図)である。
【図4】図2のIVA- IVA 縦断面図(A図)、図2のIVB-IVB縦断面図(B図)である。
【図5】回動機構を表す一部破断側面図である。
【図6】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の動作を表す側面図である。
【図7】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の動作を表す側面図である。
【図8】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部の構成を表す側面図(A図、B図)である。
【図9】車椅子支持部のガイド機構を表す側面図(A図)及び平断面図(B図)、車椅子支持部の吊り支点を表す斜視図(C図)である。
【図10】装置カバーの持ち上げ機構を表す側面図である。
【図11】変更例に係る車椅子支持部の構成を表す側面図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る車両用車椅子格納装置の使用状態とを表す側面図である。
【図13】車椅子支持部のプロテクタを表す側面図(A図、B図)、A図のC-C矢視図(C図)、B図のD-D矢視図(D図)、第1連結部の模式平面図(E図)である。
【図14】従来の車両用車椅子格納装置の格納状態と使用状態とを表す側面図(A図、B図)である。
【符号の説明】
【0039】
12・・・・固定架台
15・・・・可動架台
20・・・・スライド機構
30・・・・車椅子支持部
32・・・・キャリア
33・・・・レール
36・・・・プロテクタ
36s・・・摺動子
37s・・・摺動子
38・・・・摺動子
40・・・・回動機構
41・・・・回転中心軸
50・・・・吊り装置(吊り手段)
70・・・・車椅子支持部
72・・・・キャリア
75・・・・昇降ブロック
80・・・・プロテクタ
87・・・・四節リンク機構
C・・・・・乗用車
D・・・・・運転席側乗降口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上に水平に設置された固定架台と、前記屋根上の格納位置とその屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上をスライド可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を水平位置と垂直位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上昇させてその車椅子を前記垂直位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を水平位置まで上回動させながら前記車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、前記可動架台を格納位置までスライドさせて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、
前記車椅子支持部は、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリアと、前記吊り手段により吊られた前記車椅子を受けてその車椅子を保持可能なプロテクタと、前記キャリアに対して前記プロテクタを昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構とを備えていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記ガイド機構は、レールと、前記レールに沿って摺動可能な摺動子とから構成されていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項3】
請求項1に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記ガイド機構は、四節リンク機構を備えていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記四節リンク機構は、前記キャリアに対して前記プロテクタが下降し、かつ車両前後方向に移動する際に、前記プロテクタに保持された車椅子が前記乗降口の方向を向くように、前記プロテクタを前記キャリアに対して水平方向に傾けられるように構成されていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項1】
車両の屋根上に水平に設置された固定架台と、前記屋根上の格納位置とその屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上をスライド可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を水平位置と垂直位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上昇させてその車椅子を前記垂直位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を水平位置まで上回動させながら前記車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、前記可動架台を格納位置までスライドさせて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、
前記車椅子支持部は、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されているキャリアと、前記吊り手段により吊られた前記車椅子を受けてその車椅子を保持可能なプロテクタと、前記キャリアに対して前記プロテクタを昇降可能、かつ車両前後方向に移動可能な状態で連結するガイド機構とを備えていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記ガイド機構は、レールと、前記レールに沿って摺動可能な摺動子とから構成されていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項3】
請求項1に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記ガイド機構は、四節リンク機構を備えていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記四節リンク機構は、前記キャリアに対して前記プロテクタが下降し、かつ車両前後方向に移動する際に、前記プロテクタに保持された車椅子が前記乗降口の方向を向くように、前記プロテクタを前記キャリアに対して水平方向に傾けられるように構成されていることを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−52531(P2010−52531A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218265(P2008−218265)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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