車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体
【課題】デメリットシーンにおいてより正確な道路形状を頻度良く算出することができる車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体を提供する。
【解決手段】物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、その判定結果に基づいて自車線確率を補正するための補正値を算出する。そして、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、自車線確率を補正値にて補正し、その補正後の自車線確率に基づいて先行車を選択する一方、乖離がある場合、自車線確率を補正値にて補正せずに自車線確率に基づいて先行車を選択する。
【解決手段】物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、その判定結果に基づいて自車線確率を補正するための補正値を算出する。そして、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、自車線確率を補正値にて補正し、その補正後の自車線確率に基づいて先行車を選択する一方、乖離がある場合、自車線確率を補正値にて補正せずに自車線確率に基づいて先行車を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制御対象物を判断するため、センサが検出した前方物標の位置(距離、横位置)と操舵角やヨーレートに基づいて得た自車の旋回状態と自車速とに基づいて、自車走行路のカーブ半径からその走行路上に認識物標が存在する確率である自車線確率瞬時値を算出する方法が知られている。そして、補正された自車線確率瞬時値を用いて所定のフィルタ処理などを施して自車線確率を算出し、その自車線確率に基づいて先行車を選択する。
【0003】
しかしながら、実際の制御対象物が走行している道路形状と自車の旋回状態とはずれがある。そこで、例えば特許文献1では、道路形状を認識することにより、自車の旋回状態のカーブ半径Rを補正し、その道路形状に基づいて自車線確率瞬時値を補正し、補正された自車線確率瞬時値を用いて、所定のフィルタ処理などを施して自車線確率を算出しその自車線確率に基づいて先行車を選択することを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3417375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、道路形状に応じた路側端を推定しているので、IC、ランプウエイ、登坂車線、高速バス停留所等、自車が道路の形状に沿って走っていない場合には正しい推定が行われない可能性がある。
【0006】
例えば、図11に示されるように、自車が走行している左カーブの道路に右カーブの道路が連結されている場合、自車側で算出したカーブ半径(曲率半径)Rに対して、道路形状認識から算出したRを補正すると、補正後のRは自車が走行する道路の形状とは異なる結果となってしまう。したがって、自車側において正確に道路形状を認識できたとしても、その補正がデメリットとなり、図11に示されるようなデメリットシーンでは正確な道路形状認識が行われない可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、デメリットシーンにおいてより正確な道路形状を頻度良く算出することができる車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、その判定結果に基づいて自車線確率を補正するための補正値を算出する。そして、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、自車線確率を補正値にて補正する一方、乖離がある場合、自車線確率を補正値にて補正しないことを特徴とする。これにより、推定Rと道路形状Rとに大きな乖離がある局面に応じた自車線確率を得ることができる。すなわち、自車線確率の補正がデメリットとなることを回避することができ、より正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に示した車両用道路形状認識方法を実現するための装置としての一例であり、この車両用道路形状認識装置においても、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がないと判定した場合、自車線確率算出手段にて算出された自車線確率を補正値算出手段にて算出された補正値にて補正する一方、乖離があると判定した場合、自車線確率算出手段にて算出された自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正しないことを特徴としている。これにより、請求項1と同様に、道路形状をより正確に認識することが可能となる。
【0010】
そして、請求項3に記載の発明のように、車両用道路形状認識装置のカーブ曲率演算手段、物体認識手段、自車線確率算出手段、道路形状認識手段、車線同一判定手段、補正値算出手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0011】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用された車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】先行車選択処理の概要を示す説明図である。
【図3】各物標位置を直線路走行時の位置に変換する際の説明図である。
【図4】自車線確率マップの説明図である。
【図5】(a)は予測X軸交点の説明図であり、(b)は道路端認識の説明図である。
【図6】(a)は物標以遠まで道路端が認識できている場合の判定手法の説明図であり、(b)は物標より近距離までしか道路端が認識できていない場合の判定手法の説明図である。
【図7】(a)は道路端認識に用いた各物標の位置と自車−物標カーブとの距離を用いる場合の判定手法の説明図であり、(b)は道路端近傍の領域の説明図である。
【図8】(a)は高速道路のIC出口等の分岐地点を示した図であり、(b)はレーンチェンジ時を示した図である。
【図9】セグメントの情報とその条件との関係をテーブルとして示した図である。
【図10】自車線確率を求めるためのパラメータαのマップの説明図である。
【図11】課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された車両制御装置1について、図面と共に説明する。この車両制御装置1は、自動車に搭載され、警報すべき領域に障害物が所定の状況で存在する場合に警報を出力したり、前車(先行車両)に合わせて車速を制御したりする装置である。
【0014】
図1は、そのシステムブロック図である。車両制御装置1はコンピュータ3を中心に構成されている。コンピュータ3はマイクロコンピュータを主な構成として入出力インターフェース(I/O)及び各種の駆動回路や検出回路を備えている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
【0015】
コンピュータ3は、車両用障害物検出装置としての距離・角度測定器5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々所定の検出データを入力している。またコンピュータ3は、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21及び自動変速機制御器23に所定の駆動信号を出力している。
【0016】
更にコンピュータ3は、警報音量を設定する警報音量設定器24、後述の警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27及びヨーレートセンサ28を備えている。またコンピュータ3は、電源スイッチ29を備え、その「オン」により、所定の処理を開始する。
【0017】
ここで、距離・角度測定器5は、送受信部5a及び距離・角度演算部5bを備え、送受信部5aからは所定の光軸(中心軸)を中心にして車両前方へレーザ光を車幅方向の所定角度の範囲で不連続に掃引照射(スキャン)して出力し、かつ反射光を検出すると共に、距離・角度演算部5bにて反射光を捉えるまでの時間に基づき、前方の物体までの距離rを検出する装置である。なお、レーザ光を用いるものの他に、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであっても良いし、走査方法についても、送信部をスキャンさせるものに限られるものではなく、例えば受信部をスキャンするものであってもよい。
【0018】
コンピュータ3は、このように構成されていることにより、障害物が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理を実施している。障害物としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車あるいは路側にある物体(ガードレールや支柱物体等)等が該当する。また、コンピュータ3は、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21及び自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより、前車の状況に合わせて車速を制御する、いわゆる車間制御も同時に実施している。
【0019】
続いてコンピュータ3の内部構成について制御ブロックとして説明する。距離・角度測定器5の距離・角度演算部5bから出力された距離rとスキャン角度θとのデータは、極座標−直交座標間の座標変換ブロック41に送られ、レーザレーダ中心を原点(0,0)とし、車幅方向をX軸、車両前方方向をZ軸とするXZ直交座標に変換された後、物体認識ブロック43及び道路形状認識ブロック45へ出力される。
【0020】
物体認識ブロック43では、直交座標に変換された計測データに基づいて、物体の中心位置(X,Z)、大きさ(W,D)を求めると共に、中心位置(X,Z)の時間的変化に基づいて、自車位置を基準とする前車等の障害物の相対速度(Vx,Vz)を求める。さらに物体認識ブロック43では、車速センサ7の検出値に基づいて車速演算ブロック47から出力される車速(自車速)Vと上記求められた相対速度(Vx,Vz)とから物体が停止物体であるか移動物体であるかの認識種別が求められ、この認識種別と物体の中心位置とに基づいて自車両の走行に影響する物体が選択され、その距離が距離表示器15により表示される。なお、物体の大きさを示す(W,D)は、それぞれ(横幅,奥行き)である。このようなデータを持つ物体のモデルを「物標モデル」と呼ぶこととする。
【0021】
この物体認識ブロック43にて求めたデータが異常な範囲の値がどうかがセンサ異常検出ブロック44にて検出され、異常な範囲の値である場合には、センサ異常表示器17にその旨の表示がなされる。一方、道路形状認識ブロック45では、直交座標に変換された計測データと、物体認識ブロック43にて求めたデータとに基づいて道路形状の認識を行う。この道路形状の認識処理の詳細は後述する。なお、道路形状認識ブロック45にて得られたデータは先行車判定ブロック53へ出力される。
【0022】
また、ステアリングセンサ27からの信号に基づいて操舵角演算ブロック49にて操舵角が求められ、ヨーレートセンサ28からの信号に基づいてヨーレート演算ブロック51にてヨーレートが演算される。カーブ半径(曲率半径)算出ブロック63では、車速演算ブロック47からの車速と操舵角演算ブロック49からの操舵角とヨーレート演算ブロック51からのヨーレートとに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。先行車判定ブロック53では、このカーブ半径R及び物体認識ブロック43にて求められた認識種別、中心位置座標(X,Z)、物体の大きさ(W,D)、相対速度(Vx,Vz)及び道路形状認識ブロック45にて得られた道路形状データに基づいて先行車を選択し、その先行車に対する距離Z及び相対速度Vzを求める。
【0023】
そして、車間制御部及び警報判定部ブロック55が、この先行車との距離Z、相対速度Vz、自車速Vn、先行車加速度、物体中心位置、物体幅、認識種別、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態及びブレーキスイッチ9の踏み込み状態、スロットル開度センサ11からの開度及び警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果を、警報が必要ならば、警報発生信号を警報音発生器13に出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19及びスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。そして、これらの制御実行時には、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知している。
【0024】
次に、以上のように構成される車両制御装置1において実行される道路形状の認識にかかる動作について、図2のフローチャートに従って説明する。図2の最初のステップであるS1000では、距離・角度計測データの読み込みを行う。この処理は距離・角度測定器5にて実行されるのであるが、1スキャン分の距離・角度計測データを取り込む。このスキャン周期は100msecとし、100msec毎にデータを取り込むこととする。
【0025】
続くS2000では、極→直交座標変換ブロック41において距離・角度計測データを極座標系からXZ直交座標系に変換し、その変換後のデータに基づいて物体認識ブロック43にて物体認識を行う。この物体認識の内容は上述した通りである。ここで認識された物体は、物標あるいは物標モデルと呼ぶこととする。
【0026】
S3000では、ヨーレートセンサ28から得られたヨーレートあるいはステアリングセンサ27から得られたステアリング操舵角に基づいて、推定R(自車進行曲線のカーブ半径)を算出する。ここでは、ステアリング操舵角から推定Rを算出することにする。すなわち、推定Rを推定R=定数÷操舵角から求める。
【0027】
ここで、「定数」は車速と車種に依存する定数で、予め車種ごとに、各車速ごとの定数値をマップ関数としてコンピュ−タ3内のカーブ半径(曲率半径)算出ブロック63に記憶されている。この関数Cは操舵角θからカ−ブ半径を求める関数として一般的に知られているため、詳細な説明は省略する。なお、ヨ−レ−トΩから推定Rを求める方法は、車速Vをヨ−レ−トΩで除することにより算出できる。
【0028】
S4000では、S2000で認識した物標の自車線確率瞬時値を算出する。自車線確率とは、物標が自車と同一レーンを走行している車両である確からしさを表すパラメータである。自車線確率瞬時値とは、その瞬間の検出データに基づいて算出された値である。
【0029】
まず、物体認識処理(S2000)にて得られたすべての物標の位置を、直線路走行時の位置に換算する。もともとの物標の中心位置を(Xo,Zo)、X軸方向の幅をWoとしたとき、次の変換式により、直線路変換位置(X,Z,W)が得られる(図3参照)。
【0030】
X ← Xo−Zo^2/2R …[式1]
Z ← Zo …[式2]
W ← Wo …[式3]
R:推定Rのこと
右カーブ:符号正
左カーブ:符号負
なお、式1中の「^」は「^」の前の数値を「^」の後の数値の回数、累乗することを意味する。本明細書の他の部分でも同じである。ここでは、円の方程式は、|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、近似した。また、距離・角度測定器5が車両中心から離れたところに取り付けられている場合には、車両中心が原点になるようにX座標を補正するものとする。すなわち、ここでは実質的にはX座標のみ変換している。
【0031】
このように直進路に変換して得られた中心位置(X,Z)を、図4に示す自車線確率マップ上に配置して、各物体の瞬時自車線確率、すなわち、その時点で自車線に存在する確率を求める。確率として存在するのは、操舵角から求めたカーブ曲率半径Rと実際のカーブ曲率半径との間に誤差が存在するからであり、その誤差を考慮した制御をするために、ここで各物体の瞬時自車線確率を求める。
【0032】
図4において、横軸はX軸、すなわち自車の左右方向であり、縦軸はZ軸、すなわち自車の前方を示している。本実施形態では、左右5m、前方100mまでの領域を示している。ここで領域は、領域a(自車線確率80%)、領域b(自車線確率60%)、領域c(自車線確率30%)、領域d(自車線確率100%)、それ以外の領域(自車線確率0%)に別れている。この領域の設定は、実測により定めたものである。特に、領域dは自車直前への割込も考慮することにより設定された領域である。
【0033】
領域a,b,c,dを区切る境界線La,Lb,Lc,Ldは、例えば次の式4〜7で与えられるものである。なお、境界線La′,Lb′,Lc′,Ld′は、それぞれ境界線La,Lb,Lc,LdとはY軸で対称の関係にある。
【0034】
La: X=0.7+(1.75−0.7)・(Z/100)^2…[式4]
Lb: X=0.7+(3.5−0.7)・(Z/100)^2 …[式5]
Lc: X=1.0+(5.0−1.0)・(Z/100)^2 …[式6]
Ld: X=1.5・(1−Z/60) …[式7]
これを一般式で表すと次式8〜11のようになる。
【0035】
La: X=A1+B1・(Z/C1)^2 …[式8]
Lb: X=A2+B2・(Z/C2)^2 …[式9]
Lc: X=A3+B3・(Z/C3)^2 …[式10]
Ld: X=A4・(B4−Z/C4) …[式11]
この式8〜11から一般的には、次の式12〜14を満足させるように領域を設定する。実際の数値の決定は、実験にて決定する。
【0036】
A1≦A2≦A3<A4 …[式12]
B1≦B2≦B3 及び B4=1 …[式13]
C1=C2=C3 (C4に制約無し) …[式14]
なお、図4の境界線La、Lb,Lc,La′、Lb′,Lc′は、計算処理速度の点から、放物線としているが、処理速度が許すならば、円弧にて表す方が良い。境界線Ld,Ld′についても処理速度が許すならば外側に膨らんだ放物線または円弧にて表す方が良い。
【0037】
次に、各物標の直線路換算位置を図4の自車線確率マップと照合する。下記要領で、マップと照合することで、自車線確率瞬時値P0が得られる。
【0038】
領域dを少しでも有する物体 → P0=100%
領域a内に中心が存在する物体 → P0= 80%
領域b内に中心が存在する物体 → P0= 60%
領域c内に中心が存在する物体 → P0= 30%
上記〜を全て満たさない物体 → P0= 0%
S5000では、路側に設けられているデリニエータらしい物標データに基づいて、道路形状を認識する。
【0039】
まず最初に、横幅Wが1m未満の認識種別が停止物体である物標を抽出する。これにより、車両、案内標識、看板などを、ほとんど除去できる。抽出された停止物標ごとに、X軸と交わる点を予測する。この予測X軸交点を算出する上で、物標の中心を通り、相対速度ベクトルを接線ベクトルとする円を求める。円の中心がX軸上にあると仮定すると、その円はX軸と直交することとなるため、半径Rは一意に決まる。実際には、次のような近似計算をしている。
【0040】
|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、円を放物線近似すると、物標の中心を通り、X軸に直交する円の方程式は、
X=Xo+(Z−Zo)^2/2R …[式15]
となる。また、物標の相対速度ベクトルが円の接線ベクトルであることより、式15は、
dX/dZ=Vx/Vz …[式16]
と表すことができる。これら2式より、半径Rは、
R=(Z−Zo)・Vz/Vx
と表すことができる(図5(a)参照)。そして、Z=0のとき、
X=Xo−Zo・Vx/2Vz
となるため、予測X軸交点は、以下のように求められる。
予測X軸交点=Xo−Zo・Vx/2Vz
このようにして全ての停止物標の予測X軸交点が算出できたら、符号が負と正に分けて、おのおの次の統計処理をする。まず、全停止物標の予測X軸交点を単純平均し、それを仮平均値とする。次に、仮平均から2m以上離れているデータは全て排除し、残ったデータで再度平均する。ここで排除されたデータは、道路形状認識には、使用しないものとする。
【0041】
このような処理を施す理由は次の通りである。デリニエータ以外に、例えば上方の看板などが除去できずに混入しているときには、誤った道路形状を認識することとなる。そこで、このような平均化処理をすることで、デリニエータの存在すべき位置から大きく外れたものを排除することができるので、精度よく道路形状を認識することができる。
【0042】
そして、図5(b)に示すように、道路の左右それぞれについて、残った停止物標を補間して結ぶことで、道路端を認識する。ここで、道路端とX軸との交点については、道路左端、右端それぞれ、構成物標の中から最も近い距離(Z小)のものを選び、その物標の予測X軸交点を道路端とX軸との交点として使用する。認識した道路端は、道路端座標テーブルにセットされる。道路端座標テーブルは、道路左端用と右端用とがあり、距離5mごとに道路端のX座標値が格納される。距離範囲は0m〜150mである。道路端を構成する物標の距離を、端数を落とすことで5m単位に丸めて、該当するテーブルにデータをセットしていく。該当データがないテーブルは、空きのままとする。
【0043】
上記の道路形状認識により、S3000で得られた推定Rとは別の道路形状Rが得られる。
【0044】
S6000では、S5000で認識した道路形状に基づいて、各物標が自車と同一レーン上の車両かどうかを判定し、その結果に応じて「自車線確率瞬時値の補正値」を算出する。最初に、各物標ごとに、自車と同一レーン上の車両かどうかの基本判定を行う。基本判定は、次の3つから成る。
【0045】
[基本判定1]この判定は、物標よりも遠くまで道路端が認識できているときの判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
図6(a)にて、
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|<1.2
mのとき
◆基本判定1(L)結果 ← 1
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|≧2.0
mのとき
◆基本判定1(L)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定1(L)結果 ← 0
(b)道路右側
道路左側と同様で、
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|<1.2
mのとき
◆基本判定1(R)結果 ← 1
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|≧2.0
mのとき
◆基本判定1(R)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定1(R)結果 ← 0
このような基本判定1の結果が「1」のときは、ほぼ確実に自車線上の先行車と判断でき、「−1」のときは、ほぼ確実に他車線の車両あるいは路側物と判断できる。また、「0」は、いずれかに判定するのが困難あるいは道路端が認識できない場合である。
【0046】
[基本判定2]この判定は、物標の位置までは道路端が認識できていないときの判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
図6(b)にて、
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|<1.2m・(Z#MAX/Zo)^2
または
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|<0.3mのとき
◆基本判定2(L)結果 ← 1
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|≧2.0m・(Z#MAX/Zo)^2
且つ
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|≧0.3mのとき
◆基本判定2(L)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定2(L)結果 ← 0
ここで、Z_MAX>Zo/2のとき
◇基本判定2(L)信頼度 ← 1(高)
Z_MAX≦Zo/2のとき
◇基本判定2(L)信頼度 ← −1(低)
(b)道路右側
道路左側と同様の方法で、基本判定2(R)結果及び基本判定2(R)信頼度を算出する。
【0047】
なお、図6(b)中の自車−物標カーブは、物標と原点の間をX軸に直交する円弧で結んだ曲線である。円の方程式は、|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、下記の式で放物線近似するものとする。
X=Z^2/R (R:半径)
なお、図6(b)からも判るように、認識最遠点(距離Z_MAX)からX軸に平行な方向における自車−物標カーブまでの距離(ΔXZ=Z#MAX)を判定に用いている。放物線近似したため、上述した基本判定1の場合の判定値1.2m,2.0mに対して(Z#MAX/Zo)^2を掛けてある。
【0048】
このような基本判定2の結果が「1」のときは、自車線上の先行車の可能性が高いと判断でき、「−1」のときは、他車線の車両あるいは路側物の可能性が高いと判断できる。また、基本判定2信頼度によって、その判定の信頼度を2段階で表す。判定結果又は判定信頼度が「0」の場合は、いずれかに判定するのが困難あるいは道路端が認識できない場合である。
【0049】
[基本判定3]この判定は、Z=Zo、Z_MAX以外での距離での判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
次に示す2種類の判定を行う。
【0050】
[判定3a]図7(a)にて、i・dZ≦Zo(dZ=5m)を満たす全ての正数iについて、Z_MAX→i・dZとして、基本判定2(L)結果=1と同じ判定を実施する。
【0051】
全てのiに対して、基本判定2(L)=1の条件を満たすとき、
◆基本判定3a(L)結果 ← 1
条件を満たさないiが1つ以上あるときは、
◆基本判定3a(L)結果 ← −1
判定すべきiが1つも存在しないとき
◆基本判定3a(L)結果 ← 0
[判定3b]図7(a)にて、i・dZ≦Zo(dZ=5m)を満たす全ての正数iについて、Z_MAX→i・dZとして、基本判定2(L)結果=−1と同じ判定を実施する。
【0052】
全てのiに対して、基本判定2(L)=−1の条件を満たすとき、
◆基本判定3b(L)結果 ← 1
条件を満たさないiが1つ以上あるときは、
◆基本判定3b(L)結果 ← −1
判定すべきiが1つも存在しないとき
◆基本判定3b(L)結果 ← 0
(b)道路右側
道路左側と同様の方法で、基本判定3a(R)結果及び基本判定3b(R)結果を算出する。
【0053】
このような基本判定3aの結果が「1」のときは、どの距離の道路端データを使っても自車線上の先行車と判断でき、「−1」のときは、距離によっては自車線上の先行車とは決めつけられない場合である。また基本判定3aの結果が「0」のときは、物標よりも近距離に道路端座標データがない場合である。
【0054】
一方、基本判定3bの結果が「1」のときは、どの距離の道路端データを使っても他車線の車両あるいは路側物と判断でき。「−1」のときは、距離によっては他車線の車両あるいは路側物と決めつけられない場合である。また基本判定3bの結果が「0」のときは、物標よりも近距離に道路端座標データがない場合である。
【0055】
以上の3つの基本判定の結果に基づき、下記の6種類の分類に従って、自車線確率瞬時値の補正値を算出する。複数の条件を満たす場合は、優先度が高い瞬時値を採用するものとする。
[第1分類]物標よりも遠くまで道路端が認識できていて、自車線上の先行車と判断できるとき道路左側については、
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:5
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:3
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:2
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0056】
[第2分類]物標よりも遠くまで道路端が認識できていて、他車線の車両あるいは路側物と判断できるとき道路左側については、
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:5
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:3
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=0ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:2
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0057】
[第3分類]物標の位置までは道路端が認識できていなくて、自車線上の先行車と判断できるとき道路左側については、
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 20% 優先度:1
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0058】
[第4分類]物標の位置までは道路端が認識できていなくて、他車線の車両あるいは路側物と判断できるとき道路左側については、
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −20% 優先度:1
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0059】
[第5分類]道路左端、道路右端とも認識されていないなどで、上記第1〜4分類までの条件を一つも満たさないとき
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:0
[第6分類]道路端上の路側物と判定された物標
図7(b)で示す領域、すなわち認識した道路端(左端及び右端)から左右それぞれに0.5mの領域に中心がある物標は、路側物と判定し、以下のような補正値及び優先度を設定する。
自車線確率瞬時値補正値 ← −70% 優先度:6
以上のように、認識した道路形状に応じた自車線確率瞬時値の補正値(Ph)を算出したが、概略的には次のように算出結果となっている。
【0060】
道路形状が近い距離しか認識できていない場合には、(遠くまで認識できている場合に比べて)補正値を小さめにする(基本判定2の結果が加味されている内容を参照)。近距離までしか認識できていない場合には、物体と自車位置とを結ぶ円(弧)を想定して判定している。したがって、そのような推定要素が存在することを鑑みれば、補正値を相対的に小さくすることが好ましい。
【0061】
道路端上の路側物と判定されれば、補正値を大きめにする(第6分類参照)。なお、道路端上の路側物と判定したのであるから、自車線上以外に存在する可能性が高いため、−70%という負方向の大きな補正値にした。そのため、自車線確率瞬時値が高かったとしても、補正することで確率を下げることができ、誤選択を防止できる。例えば、「自車が直線を走行していて、前方が既にカーブに入っている」ような場合には、このような対処が特に有効となる。
【0062】
また、優先度は次のように用いる。本実施形態では、左右の道路端のいずれを基準としても判定できる。但し、左右端に対する認識度合いが異なっており、それぞれ基準とした場合の同一車線上にいる可能性に違いが生じる場合も想定される。したがって、その場合には、優先度が高い方の判定結果に基づいて補正値を算出する。上述例であれば、物体以遠まで道路形状を認識できている場合の第1分類及び第2分類においては、優先度が5,3,2であるが、物体よりも近距離までしか道路形状を認識できていない場合の第3分類及び第4分類においては、優先度が1であるため、第1,2分類による判定結果の方が優先されることとなる。
【0063】
なお、基本判定3の結果を基本判定1あるいは2と組み合わせて上記分類をしている。このようにすれば、道路形状と認識する際に用いた各物体の位置も総合的に加味して優先度を判定することとなるため、道路形状全体を加味した優先度の判定が行える。
【0064】
続いて、S6100では、S3000で算出された推定RとS5000で認識された道路形状Rとに大きな乖離があるか否かを判定する。これは、推定Rと道路形状Rとの差が大きい場合に自車線確率瞬時値を補正してしまうと、自車線確率瞬時値の精度を低下させてしまう可能性があるからである。
【0065】
例えば、図8(a)に示される高速道路のIC出口等の分岐地点や、図8(b)のレーンチェンジ時等のように、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離することが予想される局面が考えられる。このような局面では自車線確率瞬時値に対して自車線確率瞬時値補正値Phの補正を行うと瞬時自車線確率が低下する可能性があり、図8の補正後推定Rのように道路形状が認識されてしまうため、ガード処理を追加する。ガード処理とは、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離している場合は補正を行わないという処理である。すなわち、本ステップにおいて「大きな乖離がある」と判定した場合の処理である。
【0066】
そして、「大きな乖離があるか」の具体的な判定は以下のように行う。まず、図9に示された、今回のセグメントの情報とその条件とがテーブルとして予め用意されている。セグメント情報は、自車速、推定R、道路形状R等である。なお、図9に示される各数値は一例であり、もちろん他の数値が設定されていても良い。
1)条件a and 条件o 成立時にi)→iv)の優先順位で判定を実施
i)条件h and 条件d2 and (条件(1) or 条件(2) or 条件(3)) 成立時に道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
条件(1);(条件b and 条件g) or (条件c and 条件f)
条件(2);(条件d and 条件j and 条件k) or (条件e and 条件i and 条件l)
条件(3);条件m or 条件n
ii)条件t and 条件d2 and 条件b2 成立時は下記A→Bを実施
A;条件v and {条件x or 条件u or 条件q}成立時は道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
B;不成立の場合は道路形状認識で演算された補正値Phを使用
iii)条件s and 条件w and 条件a2 and {条件p or 条件r or 条件v or 条件c2}成立時は道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
iv)S6000で演算された自車線確率瞬時値補正値Phを使用
2) 上記の1)が不成立の場合、S6000で演算された自車線確率瞬時値補正値Phを使用
上記の1)i)〜iii)までが「大きな乖離がある」場合であり、この場合はステップS7000に進む。この場合は自車線確率瞬時値補正値Ph=0%であり、以下のステップS6200で自車線確率瞬時値を補正しない。
【0067】
一方、1)iv)及び2)は「大きな乖離がない」場合であり、この場合はS6200に進む。
【0068】
なお、図8に示されるような局面では、例えば図9に示される条件a、b、cは、
a)7000≦|推定R| and |道路形状R|<700
b)|推定R|<1000 and 7000≦|道路形状R|
c)|(1/推定R×1000)−(1/道路形状R×1000)|>1.5
のように設定され、これら各条件a)、b)、c)のいずれかの成立時に「大きな乖離がある」場合となる。
【0069】
図2の説明に戻り、S6200では、S6100で「大きな乖離がない」と判定されたため、各物標ごとに、S4000で算出した自車線確率瞬時値にS6000で算出した自車線確率瞬時値補正値Phを加算する。このとき、上限100%、下限0%でリミット処理する。
【0070】
S7000では、自車線確率を算出する。この自車線確率を算出するため、S6100で「大きな乖離がない」と判定した場合はS6200で補正した自車線確率瞬時値を用いる。一方、S6100で「大きな乖離がある」と判定した場合はS4000で算出した(補正していない)自車線確率瞬時値を用いる。これは、言い換えると、S4000で算出した自車線確率瞬時値に自車線確率瞬時値補正値Phとして0%を加算することに相当する。
【0071】
具体的に、下式を用いて、フィルタ処理をする。ここで、αは距離Zに依存するパラメータであり、図10のマップを用いて求める。自車線確率の初期値は、0%とする。
自車線確率←自車線確率前回値×α+自車線確率瞬時値×(1−α)
続くS8000では、先行車を判定する。S7000で算出した自車線確率が50%以上の物標の中で、距離Zが最小のものを先行車と判断する。先行車と判断した物標の距離や相対速度に従って、先行車との車間を一定に保つように制御したり、先行車に衝突の危険があるときに警報を鳴らしたりする。
【0072】
この後、再びS5000において道路形状認識を行う場合は、上記のS7000で算出した自車線確率に基づき、道路形状Rにローパスフィルタをかけ、車両の推定Rをフィルタ後の道路形状で補正する。これにより、より正確な道路形状を認識できる。
【0073】
以上説明したように、自車線確率(S7000)を算出するために用いる自車線確率瞬時値(S4000)について、自車で算出した推定R(S3000)と道路形状認識から算出した道路形状R(S5000)とに大きな乖離がある場合には、走行路上に認識物標が存在する確率である自車線確率瞬時値(S4000)の補正を行わないことが特徴となっている。
【0074】
これにより、上述の図8(a)や図8(b)等のように、推定Rと道路形状Rとに大きな乖離があるようなデメリットシーンに対応した自車線確率を得ることができる。すなわち、自車線確率瞬時値の補正がデメリットとなることを回避することができ、より正確な道路形状認識が可能となる。また、先行車選択の精度を向上させることができる。したがって、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離することが予想される局面においてより正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0075】
もちろん、自車で算出した推定R(S3000)と道路形状認識から算出した道路形状R(S5000)とに大きな乖離がない場合には、自車線確率瞬時値(S4000)を補正する(S6200)。これによっても正確な道路形状認識が可能となり、先行車選択の精度が向上する。この場合、道路形状の認識程度に補正値の大小や優先度を変えているので、より適切なRの補正ができ、結果として、より精度の高い先行車選択ができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、ステアリングセンサ27及び操舵角演算ブロック49、ヨーレートセンサ28及びヨーレート演算ブロック51の少なくとも1組が旋回検出手段に相当し、カーブ半径算出ブロック63がカーブ曲率演算手段に相当する。また、距離・角度測定器5がレーダ手段に相当し、極・直交座標変換ブロック41、物体認識ブロック43が物体認識手段に相当する。また、先行車判定ブロック53が自車線確率算出手段、先行車選択手段、車線同一判定手段及び補正値算出手段に相当し、道路形状認識ブロック45が道路形状認識手段に相当する。
【0077】
(他の実施形態)
上記に示された実施の形態は一例であり、上記で示した実施形式に限定されることなく、本発明の内容を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記の実施形態では先行車選択を目的とした構成になっているが、純粋に道路形状認識のみを目的とした構成でも良い。また、以下の(1)〜(3)のように変更することもできる。
【0078】
(1)上記実施形態では、道路の左右端を基準とする判定を行い、その判定結果が異なった場合には優先度が高い方を採用したが、左右の道路端のいずれか一方のみを基準とする判定でも実現は可能である。しかしながら、常に安定して道路端を認識できるとは限らないので、上記実施形態のように左右両方の道路端の形状をダイレクトに認識するようにした方が好ましい。
【0079】
(2)上記実施形態において、補正値や優先度に具体的な数値を挙げたが、これはあくまで一例であり、数値は適宜変更可能である。
【0080】
(3)上記実施例形態では「レーダ手段」としてレーザ光を用いた距離・角度測定器5を採用したが、ミリ波等を用いてもよいことは既に述べた。そして、例えばミリ波でFMCWレーダ又はドップラーレーダなどを用いた場合には、反射波(受信波)から先行車までの距離情報と先行車の相対速度情報が一度に得られるため、レーザ光を用いた場合のように、距離情報に基づいて相対速度を算出するという過程は不要となる。
【符号の説明】
【0081】
5 距離・角度測定器
27 ステアリングセンサ
28 ヨーレートセンサ
43 物体認識ブロック
45 道路形状認識ブロック
49 操舵角演算ブロック
51 ヨーレート演算ブロック
53 先行車判定ブロック
63 カーブ半径算出ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制御対象物を判断するため、センサが検出した前方物標の位置(距離、横位置)と操舵角やヨーレートに基づいて得た自車の旋回状態と自車速とに基づいて、自車走行路のカーブ半径からその走行路上に認識物標が存在する確率である自車線確率瞬時値を算出する方法が知られている。そして、補正された自車線確率瞬時値を用いて所定のフィルタ処理などを施して自車線確率を算出し、その自車線確率に基づいて先行車を選択する。
【0003】
しかしながら、実際の制御対象物が走行している道路形状と自車の旋回状態とはずれがある。そこで、例えば特許文献1では、道路形状を認識することにより、自車の旋回状態のカーブ半径Rを補正し、その道路形状に基づいて自車線確率瞬時値を補正し、補正された自車線確率瞬時値を用いて、所定のフィルタ処理などを施して自車線確率を算出しその自車線確率に基づいて先行車を選択することを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3417375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、道路形状に応じた路側端を推定しているので、IC、ランプウエイ、登坂車線、高速バス停留所等、自車が道路の形状に沿って走っていない場合には正しい推定が行われない可能性がある。
【0006】
例えば、図11に示されるように、自車が走行している左カーブの道路に右カーブの道路が連結されている場合、自車側で算出したカーブ半径(曲率半径)Rに対して、道路形状認識から算出したRを補正すると、補正後のRは自車が走行する道路の形状とは異なる結果となってしまう。したがって、自車側において正確に道路形状を認識できたとしても、その補正がデメリットとなり、図11に示されるようなデメリットシーンでは正確な道路形状認識が行われない可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、デメリットシーンにおいてより正確な道路形状を頻度良く算出することができる車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、その判定結果に基づいて自車線確率を補正するための補正値を算出する。そして、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、自車線確率を補正値にて補正する一方、乖離がある場合、自車線確率を補正値にて補正しないことを特徴とする。これにより、推定Rと道路形状Rとに大きな乖離がある局面に応じた自車線確率を得ることができる。すなわち、自車線確率の補正がデメリットとなることを回避することができ、より正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に示した車両用道路形状認識方法を実現するための装置としての一例であり、この車両用道路形状認識装置においても、自車走行路の曲率と認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がないと判定した場合、自車線確率算出手段にて算出された自車線確率を補正値算出手段にて算出された補正値にて補正する一方、乖離があると判定した場合、自車線確率算出手段にて算出された自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正しないことを特徴としている。これにより、請求項1と同様に、道路形状をより正確に認識することが可能となる。
【0010】
そして、請求項3に記載の発明のように、車両用道路形状認識装置のカーブ曲率演算手段、物体認識手段、自車線確率算出手段、道路形状認識手段、車線同一判定手段、補正値算出手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0011】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用された車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】先行車選択処理の概要を示す説明図である。
【図3】各物標位置を直線路走行時の位置に変換する際の説明図である。
【図4】自車線確率マップの説明図である。
【図5】(a)は予測X軸交点の説明図であり、(b)は道路端認識の説明図である。
【図6】(a)は物標以遠まで道路端が認識できている場合の判定手法の説明図であり、(b)は物標より近距離までしか道路端が認識できていない場合の判定手法の説明図である。
【図7】(a)は道路端認識に用いた各物標の位置と自車−物標カーブとの距離を用いる場合の判定手法の説明図であり、(b)は道路端近傍の領域の説明図である。
【図8】(a)は高速道路のIC出口等の分岐地点を示した図であり、(b)はレーンチェンジ時を示した図である。
【図9】セグメントの情報とその条件との関係をテーブルとして示した図である。
【図10】自車線確率を求めるためのパラメータαのマップの説明図である。
【図11】課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された車両制御装置1について、図面と共に説明する。この車両制御装置1は、自動車に搭載され、警報すべき領域に障害物が所定の状況で存在する場合に警報を出力したり、前車(先行車両)に合わせて車速を制御したりする装置である。
【0014】
図1は、そのシステムブロック図である。車両制御装置1はコンピュータ3を中心に構成されている。コンピュータ3はマイクロコンピュータを主な構成として入出力インターフェース(I/O)及び各種の駆動回路や検出回路を備えている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
【0015】
コンピュータ3は、車両用障害物検出装置としての距離・角度測定器5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々所定の検出データを入力している。またコンピュータ3は、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21及び自動変速機制御器23に所定の駆動信号を出力している。
【0016】
更にコンピュータ3は、警報音量を設定する警報音量設定器24、後述の警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27及びヨーレートセンサ28を備えている。またコンピュータ3は、電源スイッチ29を備え、その「オン」により、所定の処理を開始する。
【0017】
ここで、距離・角度測定器5は、送受信部5a及び距離・角度演算部5bを備え、送受信部5aからは所定の光軸(中心軸)を中心にして車両前方へレーザ光を車幅方向の所定角度の範囲で不連続に掃引照射(スキャン)して出力し、かつ反射光を検出すると共に、距離・角度演算部5bにて反射光を捉えるまでの時間に基づき、前方の物体までの距離rを検出する装置である。なお、レーザ光を用いるものの他に、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであっても良いし、走査方法についても、送信部をスキャンさせるものに限られるものではなく、例えば受信部をスキャンするものであってもよい。
【0018】
コンピュータ3は、このように構成されていることにより、障害物が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理を実施している。障害物としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車あるいは路側にある物体(ガードレールや支柱物体等)等が該当する。また、コンピュータ3は、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21及び自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより、前車の状況に合わせて車速を制御する、いわゆる車間制御も同時に実施している。
【0019】
続いてコンピュータ3の内部構成について制御ブロックとして説明する。距離・角度測定器5の距離・角度演算部5bから出力された距離rとスキャン角度θとのデータは、極座標−直交座標間の座標変換ブロック41に送られ、レーザレーダ中心を原点(0,0)とし、車幅方向をX軸、車両前方方向をZ軸とするXZ直交座標に変換された後、物体認識ブロック43及び道路形状認識ブロック45へ出力される。
【0020】
物体認識ブロック43では、直交座標に変換された計測データに基づいて、物体の中心位置(X,Z)、大きさ(W,D)を求めると共に、中心位置(X,Z)の時間的変化に基づいて、自車位置を基準とする前車等の障害物の相対速度(Vx,Vz)を求める。さらに物体認識ブロック43では、車速センサ7の検出値に基づいて車速演算ブロック47から出力される車速(自車速)Vと上記求められた相対速度(Vx,Vz)とから物体が停止物体であるか移動物体であるかの認識種別が求められ、この認識種別と物体の中心位置とに基づいて自車両の走行に影響する物体が選択され、その距離が距離表示器15により表示される。なお、物体の大きさを示す(W,D)は、それぞれ(横幅,奥行き)である。このようなデータを持つ物体のモデルを「物標モデル」と呼ぶこととする。
【0021】
この物体認識ブロック43にて求めたデータが異常な範囲の値がどうかがセンサ異常検出ブロック44にて検出され、異常な範囲の値である場合には、センサ異常表示器17にその旨の表示がなされる。一方、道路形状認識ブロック45では、直交座標に変換された計測データと、物体認識ブロック43にて求めたデータとに基づいて道路形状の認識を行う。この道路形状の認識処理の詳細は後述する。なお、道路形状認識ブロック45にて得られたデータは先行車判定ブロック53へ出力される。
【0022】
また、ステアリングセンサ27からの信号に基づいて操舵角演算ブロック49にて操舵角が求められ、ヨーレートセンサ28からの信号に基づいてヨーレート演算ブロック51にてヨーレートが演算される。カーブ半径(曲率半径)算出ブロック63では、車速演算ブロック47からの車速と操舵角演算ブロック49からの操舵角とヨーレート演算ブロック51からのヨーレートとに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。先行車判定ブロック53では、このカーブ半径R及び物体認識ブロック43にて求められた認識種別、中心位置座標(X,Z)、物体の大きさ(W,D)、相対速度(Vx,Vz)及び道路形状認識ブロック45にて得られた道路形状データに基づいて先行車を選択し、その先行車に対する距離Z及び相対速度Vzを求める。
【0023】
そして、車間制御部及び警報判定部ブロック55が、この先行車との距離Z、相対速度Vz、自車速Vn、先行車加速度、物体中心位置、物体幅、認識種別、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態及びブレーキスイッチ9の踏み込み状態、スロットル開度センサ11からの開度及び警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果を、警報が必要ならば、警報発生信号を警報音発生器13に出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19及びスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。そして、これらの制御実行時には、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知している。
【0024】
次に、以上のように構成される車両制御装置1において実行される道路形状の認識にかかる動作について、図2のフローチャートに従って説明する。図2の最初のステップであるS1000では、距離・角度計測データの読み込みを行う。この処理は距離・角度測定器5にて実行されるのであるが、1スキャン分の距離・角度計測データを取り込む。このスキャン周期は100msecとし、100msec毎にデータを取り込むこととする。
【0025】
続くS2000では、極→直交座標変換ブロック41において距離・角度計測データを極座標系からXZ直交座標系に変換し、その変換後のデータに基づいて物体認識ブロック43にて物体認識を行う。この物体認識の内容は上述した通りである。ここで認識された物体は、物標あるいは物標モデルと呼ぶこととする。
【0026】
S3000では、ヨーレートセンサ28から得られたヨーレートあるいはステアリングセンサ27から得られたステアリング操舵角に基づいて、推定R(自車進行曲線のカーブ半径)を算出する。ここでは、ステアリング操舵角から推定Rを算出することにする。すなわち、推定Rを推定R=定数÷操舵角から求める。
【0027】
ここで、「定数」は車速と車種に依存する定数で、予め車種ごとに、各車速ごとの定数値をマップ関数としてコンピュ−タ3内のカーブ半径(曲率半径)算出ブロック63に記憶されている。この関数Cは操舵角θからカ−ブ半径を求める関数として一般的に知られているため、詳細な説明は省略する。なお、ヨ−レ−トΩから推定Rを求める方法は、車速Vをヨ−レ−トΩで除することにより算出できる。
【0028】
S4000では、S2000で認識した物標の自車線確率瞬時値を算出する。自車線確率とは、物標が自車と同一レーンを走行している車両である確からしさを表すパラメータである。自車線確率瞬時値とは、その瞬間の検出データに基づいて算出された値である。
【0029】
まず、物体認識処理(S2000)にて得られたすべての物標の位置を、直線路走行時の位置に換算する。もともとの物標の中心位置を(Xo,Zo)、X軸方向の幅をWoとしたとき、次の変換式により、直線路変換位置(X,Z,W)が得られる(図3参照)。
【0030】
X ← Xo−Zo^2/2R …[式1]
Z ← Zo …[式2]
W ← Wo …[式3]
R:推定Rのこと
右カーブ:符号正
左カーブ:符号負
なお、式1中の「^」は「^」の前の数値を「^」の後の数値の回数、累乗することを意味する。本明細書の他の部分でも同じである。ここでは、円の方程式は、|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、近似した。また、距離・角度測定器5が車両中心から離れたところに取り付けられている場合には、車両中心が原点になるようにX座標を補正するものとする。すなわち、ここでは実質的にはX座標のみ変換している。
【0031】
このように直進路に変換して得られた中心位置(X,Z)を、図4に示す自車線確率マップ上に配置して、各物体の瞬時自車線確率、すなわち、その時点で自車線に存在する確率を求める。確率として存在するのは、操舵角から求めたカーブ曲率半径Rと実際のカーブ曲率半径との間に誤差が存在するからであり、その誤差を考慮した制御をするために、ここで各物体の瞬時自車線確率を求める。
【0032】
図4において、横軸はX軸、すなわち自車の左右方向であり、縦軸はZ軸、すなわち自車の前方を示している。本実施形態では、左右5m、前方100mまでの領域を示している。ここで領域は、領域a(自車線確率80%)、領域b(自車線確率60%)、領域c(自車線確率30%)、領域d(自車線確率100%)、それ以外の領域(自車線確率0%)に別れている。この領域の設定は、実測により定めたものである。特に、領域dは自車直前への割込も考慮することにより設定された領域である。
【0033】
領域a,b,c,dを区切る境界線La,Lb,Lc,Ldは、例えば次の式4〜7で与えられるものである。なお、境界線La′,Lb′,Lc′,Ld′は、それぞれ境界線La,Lb,Lc,LdとはY軸で対称の関係にある。
【0034】
La: X=0.7+(1.75−0.7)・(Z/100)^2…[式4]
Lb: X=0.7+(3.5−0.7)・(Z/100)^2 …[式5]
Lc: X=1.0+(5.0−1.0)・(Z/100)^2 …[式6]
Ld: X=1.5・(1−Z/60) …[式7]
これを一般式で表すと次式8〜11のようになる。
【0035】
La: X=A1+B1・(Z/C1)^2 …[式8]
Lb: X=A2+B2・(Z/C2)^2 …[式9]
Lc: X=A3+B3・(Z/C3)^2 …[式10]
Ld: X=A4・(B4−Z/C4) …[式11]
この式8〜11から一般的には、次の式12〜14を満足させるように領域を設定する。実際の数値の決定は、実験にて決定する。
【0036】
A1≦A2≦A3<A4 …[式12]
B1≦B2≦B3 及び B4=1 …[式13]
C1=C2=C3 (C4に制約無し) …[式14]
なお、図4の境界線La、Lb,Lc,La′、Lb′,Lc′は、計算処理速度の点から、放物線としているが、処理速度が許すならば、円弧にて表す方が良い。境界線Ld,Ld′についても処理速度が許すならば外側に膨らんだ放物線または円弧にて表す方が良い。
【0037】
次に、各物標の直線路換算位置を図4の自車線確率マップと照合する。下記要領で、マップと照合することで、自車線確率瞬時値P0が得られる。
【0038】
領域dを少しでも有する物体 → P0=100%
領域a内に中心が存在する物体 → P0= 80%
領域b内に中心が存在する物体 → P0= 60%
領域c内に中心が存在する物体 → P0= 30%
上記〜を全て満たさない物体 → P0= 0%
S5000では、路側に設けられているデリニエータらしい物標データに基づいて、道路形状を認識する。
【0039】
まず最初に、横幅Wが1m未満の認識種別が停止物体である物標を抽出する。これにより、車両、案内標識、看板などを、ほとんど除去できる。抽出された停止物標ごとに、X軸と交わる点を予測する。この予測X軸交点を算出する上で、物標の中心を通り、相対速度ベクトルを接線ベクトルとする円を求める。円の中心がX軸上にあると仮定すると、その円はX軸と直交することとなるため、半径Rは一意に決まる。実際には、次のような近似計算をしている。
【0040】
|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、円を放物線近似すると、物標の中心を通り、X軸に直交する円の方程式は、
X=Xo+(Z−Zo)^2/2R …[式15]
となる。また、物標の相対速度ベクトルが円の接線ベクトルであることより、式15は、
dX/dZ=Vx/Vz …[式16]
と表すことができる。これら2式より、半径Rは、
R=(Z−Zo)・Vz/Vx
と表すことができる(図5(a)参照)。そして、Z=0のとき、
X=Xo−Zo・Vx/2Vz
となるため、予測X軸交点は、以下のように求められる。
予測X軸交点=Xo−Zo・Vx/2Vz
このようにして全ての停止物標の予測X軸交点が算出できたら、符号が負と正に分けて、おのおの次の統計処理をする。まず、全停止物標の予測X軸交点を単純平均し、それを仮平均値とする。次に、仮平均から2m以上離れているデータは全て排除し、残ったデータで再度平均する。ここで排除されたデータは、道路形状認識には、使用しないものとする。
【0041】
このような処理を施す理由は次の通りである。デリニエータ以外に、例えば上方の看板などが除去できずに混入しているときには、誤った道路形状を認識することとなる。そこで、このような平均化処理をすることで、デリニエータの存在すべき位置から大きく外れたものを排除することができるので、精度よく道路形状を認識することができる。
【0042】
そして、図5(b)に示すように、道路の左右それぞれについて、残った停止物標を補間して結ぶことで、道路端を認識する。ここで、道路端とX軸との交点については、道路左端、右端それぞれ、構成物標の中から最も近い距離(Z小)のものを選び、その物標の予測X軸交点を道路端とX軸との交点として使用する。認識した道路端は、道路端座標テーブルにセットされる。道路端座標テーブルは、道路左端用と右端用とがあり、距離5mごとに道路端のX座標値が格納される。距離範囲は0m〜150mである。道路端を構成する物標の距離を、端数を落とすことで5m単位に丸めて、該当するテーブルにデータをセットしていく。該当データがないテーブルは、空きのままとする。
【0043】
上記の道路形状認識により、S3000で得られた推定Rとは別の道路形状Rが得られる。
【0044】
S6000では、S5000で認識した道路形状に基づいて、各物標が自車と同一レーン上の車両かどうかを判定し、その結果に応じて「自車線確率瞬時値の補正値」を算出する。最初に、各物標ごとに、自車と同一レーン上の車両かどうかの基本判定を行う。基本判定は、次の3つから成る。
【0045】
[基本判定1]この判定は、物標よりも遠くまで道路端が認識できているときの判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
図6(a)にて、
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|<1.2
mのとき
◆基本判定1(L)結果 ← 1
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|≧2.0
mのとき
◆基本判定1(L)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定1(L)結果 ← 0
(b)道路右側
道路左側と同様で、
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|<1.2
mのとき
◆基本判定1(R)結果 ← 1
Z_MAX≧Zo 且つ |ΔXZ=Zo−ΔXZ=0|≧2.0
mのとき
◆基本判定1(R)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定1(R)結果 ← 0
このような基本判定1の結果が「1」のときは、ほぼ確実に自車線上の先行車と判断でき、「−1」のときは、ほぼ確実に他車線の車両あるいは路側物と判断できる。また、「0」は、いずれかに判定するのが困難あるいは道路端が認識できない場合である。
【0046】
[基本判定2]この判定は、物標の位置までは道路端が認識できていないときの判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
図6(b)にて、
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|<1.2m・(Z#MAX/Zo)^2
または
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|<0.3mのとき
◆基本判定2(L)結果 ← 1
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|≧2.0m・(Z#MAX/Zo)^2
且つ
|ΔXZ=Z#MAX−ΔXZ=0|≧0.3mのとき
◆基本判定2(L)結果 ← −1
それ以外のとき
◆基本判定2(L)結果 ← 0
ここで、Z_MAX>Zo/2のとき
◇基本判定2(L)信頼度 ← 1(高)
Z_MAX≦Zo/2のとき
◇基本判定2(L)信頼度 ← −1(低)
(b)道路右側
道路左側と同様の方法で、基本判定2(R)結果及び基本判定2(R)信頼度を算出する。
【0047】
なお、図6(b)中の自車−物標カーブは、物標と原点の間をX軸に直交する円弧で結んだ曲線である。円の方程式は、|X|≪|R|,Zという仮定のもとで、下記の式で放物線近似するものとする。
X=Z^2/R (R:半径)
なお、図6(b)からも判るように、認識最遠点(距離Z_MAX)からX軸に平行な方向における自車−物標カーブまでの距離(ΔXZ=Z#MAX)を判定に用いている。放物線近似したため、上述した基本判定1の場合の判定値1.2m,2.0mに対して(Z#MAX/Zo)^2を掛けてある。
【0048】
このような基本判定2の結果が「1」のときは、自車線上の先行車の可能性が高いと判断でき、「−1」のときは、他車線の車両あるいは路側物の可能性が高いと判断できる。また、基本判定2信頼度によって、その判定の信頼度を2段階で表す。判定結果又は判定信頼度が「0」の場合は、いずれかに判定するのが困難あるいは道路端が認識できない場合である。
【0049】
[基本判定3]この判定は、Z=Zo、Z_MAX以外での距離での判定であり、道路左側、右側、それぞれ判定する。
(a)道路左側
次に示す2種類の判定を行う。
【0050】
[判定3a]図7(a)にて、i・dZ≦Zo(dZ=5m)を満たす全ての正数iについて、Z_MAX→i・dZとして、基本判定2(L)結果=1と同じ判定を実施する。
【0051】
全てのiに対して、基本判定2(L)=1の条件を満たすとき、
◆基本判定3a(L)結果 ← 1
条件を満たさないiが1つ以上あるときは、
◆基本判定3a(L)結果 ← −1
判定すべきiが1つも存在しないとき
◆基本判定3a(L)結果 ← 0
[判定3b]図7(a)にて、i・dZ≦Zo(dZ=5m)を満たす全ての正数iについて、Z_MAX→i・dZとして、基本判定2(L)結果=−1と同じ判定を実施する。
【0052】
全てのiに対して、基本判定2(L)=−1の条件を満たすとき、
◆基本判定3b(L)結果 ← 1
条件を満たさないiが1つ以上あるときは、
◆基本判定3b(L)結果 ← −1
判定すべきiが1つも存在しないとき
◆基本判定3b(L)結果 ← 0
(b)道路右側
道路左側と同様の方法で、基本判定3a(R)結果及び基本判定3b(R)結果を算出する。
【0053】
このような基本判定3aの結果が「1」のときは、どの距離の道路端データを使っても自車線上の先行車と判断でき、「−1」のときは、距離によっては自車線上の先行車とは決めつけられない場合である。また基本判定3aの結果が「0」のときは、物標よりも近距離に道路端座標データがない場合である。
【0054】
一方、基本判定3bの結果が「1」のときは、どの距離の道路端データを使っても他車線の車両あるいは路側物と判断でき。「−1」のときは、距離によっては他車線の車両あるいは路側物と決めつけられない場合である。また基本判定3bの結果が「0」のときは、物標よりも近距離に道路端座標データがない場合である。
【0055】
以上の3つの基本判定の結果に基づき、下記の6種類の分類に従って、自車線確率瞬時値の補正値を算出する。複数の条件を満たす場合は、優先度が高い瞬時値を採用するものとする。
[第1分類]物標よりも遠くまで道路端が認識できていて、自車線上の先行車と判断できるとき道路左側については、
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:5
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:3
基本判定1(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:2
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0056】
[第2分類]物標よりも遠くまで道路端が認識できていて、他車線の車両あるいは路側物と判断できるとき道路左側については、
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:5
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:3
基本判定1(L)結果=−1のとき、基本判定3a(L)=0ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:2
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0057】
[第3分類]物標の位置までは道路端が認識できていなくて、自車線上の先行車と判断できるとき道路左側については、
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 20% 優先度:1
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0058】
[第4分類]物標の位置までは道路端が認識できていなくて、他車線の車両あるいは路側物と判断できるとき道路左側については、
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −40% 優先度:1
基本判定2(L)結果=−1、且つ基本判定3a(L)=0、且つ基本判定2(L)信頼度=−1ならば
自車線確率瞬時値補正値 ← −20% 優先度:1
道路右側については、道路左側と同様の方法で、補正値を算出する。
【0059】
[第5分類]道路左端、道路右端とも認識されていないなどで、上記第1〜4分類までの条件を一つも満たさないとき
自車線確率瞬時値補正値 ← 0% 優先度:0
[第6分類]道路端上の路側物と判定された物標
図7(b)で示す領域、すなわち認識した道路端(左端及び右端)から左右それぞれに0.5mの領域に中心がある物標は、路側物と判定し、以下のような補正値及び優先度を設定する。
自車線確率瞬時値補正値 ← −70% 優先度:6
以上のように、認識した道路形状に応じた自車線確率瞬時値の補正値(Ph)を算出したが、概略的には次のように算出結果となっている。
【0060】
道路形状が近い距離しか認識できていない場合には、(遠くまで認識できている場合に比べて)補正値を小さめにする(基本判定2の結果が加味されている内容を参照)。近距離までしか認識できていない場合には、物体と自車位置とを結ぶ円(弧)を想定して判定している。したがって、そのような推定要素が存在することを鑑みれば、補正値を相対的に小さくすることが好ましい。
【0061】
道路端上の路側物と判定されれば、補正値を大きめにする(第6分類参照)。なお、道路端上の路側物と判定したのであるから、自車線上以外に存在する可能性が高いため、−70%という負方向の大きな補正値にした。そのため、自車線確率瞬時値が高かったとしても、補正することで確率を下げることができ、誤選択を防止できる。例えば、「自車が直線を走行していて、前方が既にカーブに入っている」ような場合には、このような対処が特に有効となる。
【0062】
また、優先度は次のように用いる。本実施形態では、左右の道路端のいずれを基準としても判定できる。但し、左右端に対する認識度合いが異なっており、それぞれ基準とした場合の同一車線上にいる可能性に違いが生じる場合も想定される。したがって、その場合には、優先度が高い方の判定結果に基づいて補正値を算出する。上述例であれば、物体以遠まで道路形状を認識できている場合の第1分類及び第2分類においては、優先度が5,3,2であるが、物体よりも近距離までしか道路形状を認識できていない場合の第3分類及び第4分類においては、優先度が1であるため、第1,2分類による判定結果の方が優先されることとなる。
【0063】
なお、基本判定3の結果を基本判定1あるいは2と組み合わせて上記分類をしている。このようにすれば、道路形状と認識する際に用いた各物体の位置も総合的に加味して優先度を判定することとなるため、道路形状全体を加味した優先度の判定が行える。
【0064】
続いて、S6100では、S3000で算出された推定RとS5000で認識された道路形状Rとに大きな乖離があるか否かを判定する。これは、推定Rと道路形状Rとの差が大きい場合に自車線確率瞬時値を補正してしまうと、自車線確率瞬時値の精度を低下させてしまう可能性があるからである。
【0065】
例えば、図8(a)に示される高速道路のIC出口等の分岐地点や、図8(b)のレーンチェンジ時等のように、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離することが予想される局面が考えられる。このような局面では自車線確率瞬時値に対して自車線確率瞬時値補正値Phの補正を行うと瞬時自車線確率が低下する可能性があり、図8の補正後推定Rのように道路形状が認識されてしまうため、ガード処理を追加する。ガード処理とは、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離している場合は補正を行わないという処理である。すなわち、本ステップにおいて「大きな乖離がある」と判定した場合の処理である。
【0066】
そして、「大きな乖離があるか」の具体的な判定は以下のように行う。まず、図9に示された、今回のセグメントの情報とその条件とがテーブルとして予め用意されている。セグメント情報は、自車速、推定R、道路形状R等である。なお、図9に示される各数値は一例であり、もちろん他の数値が設定されていても良い。
1)条件a and 条件o 成立時にi)→iv)の優先順位で判定を実施
i)条件h and 条件d2 and (条件(1) or 条件(2) or 条件(3)) 成立時に道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
条件(1);(条件b and 条件g) or (条件c and 条件f)
条件(2);(条件d and 条件j and 条件k) or (条件e and 条件i and 条件l)
条件(3);条件m or 条件n
ii)条件t and 条件d2 and 条件b2 成立時は下記A→Bを実施
A;条件v and {条件x or 条件u or 条件q}成立時は道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
B;不成立の場合は道路形状認識で演算された補正値Phを使用
iii)条件s and 条件w and 条件a2 and {条件p or 条件r or 条件v or 条件c2}成立時は道路形状認識による自車線確率瞬時値補正値Ph=0%とする
iv)S6000で演算された自車線確率瞬時値補正値Phを使用
2) 上記の1)が不成立の場合、S6000で演算された自車線確率瞬時値補正値Phを使用
上記の1)i)〜iii)までが「大きな乖離がある」場合であり、この場合はステップS7000に進む。この場合は自車線確率瞬時値補正値Ph=0%であり、以下のステップS6200で自車線確率瞬時値を補正しない。
【0067】
一方、1)iv)及び2)は「大きな乖離がない」場合であり、この場合はS6200に進む。
【0068】
なお、図8に示されるような局面では、例えば図9に示される条件a、b、cは、
a)7000≦|推定R| and |道路形状R|<700
b)|推定R|<1000 and 7000≦|道路形状R|
c)|(1/推定R×1000)−(1/道路形状R×1000)|>1.5
のように設定され、これら各条件a)、b)、c)のいずれかの成立時に「大きな乖離がある」場合となる。
【0069】
図2の説明に戻り、S6200では、S6100で「大きな乖離がない」と判定されたため、各物標ごとに、S4000で算出した自車線確率瞬時値にS6000で算出した自車線確率瞬時値補正値Phを加算する。このとき、上限100%、下限0%でリミット処理する。
【0070】
S7000では、自車線確率を算出する。この自車線確率を算出するため、S6100で「大きな乖離がない」と判定した場合はS6200で補正した自車線確率瞬時値を用いる。一方、S6100で「大きな乖離がある」と判定した場合はS4000で算出した(補正していない)自車線確率瞬時値を用いる。これは、言い換えると、S4000で算出した自車線確率瞬時値に自車線確率瞬時値補正値Phとして0%を加算することに相当する。
【0071】
具体的に、下式を用いて、フィルタ処理をする。ここで、αは距離Zに依存するパラメータであり、図10のマップを用いて求める。自車線確率の初期値は、0%とする。
自車線確率←自車線確率前回値×α+自車線確率瞬時値×(1−α)
続くS8000では、先行車を判定する。S7000で算出した自車線確率が50%以上の物標の中で、距離Zが最小のものを先行車と判断する。先行車と判断した物標の距離や相対速度に従って、先行車との車間を一定に保つように制御したり、先行車に衝突の危険があるときに警報を鳴らしたりする。
【0072】
この後、再びS5000において道路形状認識を行う場合は、上記のS7000で算出した自車線確率に基づき、道路形状Rにローパスフィルタをかけ、車両の推定Rをフィルタ後の道路形状で補正する。これにより、より正確な道路形状を認識できる。
【0073】
以上説明したように、自車線確率(S7000)を算出するために用いる自車線確率瞬時値(S4000)について、自車で算出した推定R(S3000)と道路形状認識から算出した道路形状R(S5000)とに大きな乖離がある場合には、走行路上に認識物標が存在する確率である自車線確率瞬時値(S4000)の補正を行わないことが特徴となっている。
【0074】
これにより、上述の図8(a)や図8(b)等のように、推定Rと道路形状Rとに大きな乖離があるようなデメリットシーンに対応した自車線確率を得ることができる。すなわち、自車線確率瞬時値の補正がデメリットとなることを回避することができ、より正確な道路形状認識が可能となる。また、先行車選択の精度を向上させることができる。したがって、推定Rと道路形状Rとが大きく乖離することが予想される局面においてより正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0075】
もちろん、自車で算出した推定R(S3000)と道路形状認識から算出した道路形状R(S5000)とに大きな乖離がない場合には、自車線確率瞬時値(S4000)を補正する(S6200)。これによっても正確な道路形状認識が可能となり、先行車選択の精度が向上する。この場合、道路形状の認識程度に補正値の大小や優先度を変えているので、より適切なRの補正ができ、結果として、より精度の高い先行車選択ができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、ステアリングセンサ27及び操舵角演算ブロック49、ヨーレートセンサ28及びヨーレート演算ブロック51の少なくとも1組が旋回検出手段に相当し、カーブ半径算出ブロック63がカーブ曲率演算手段に相当する。また、距離・角度測定器5がレーダ手段に相当し、極・直交座標変換ブロック41、物体認識ブロック43が物体認識手段に相当する。また、先行車判定ブロック53が自車線確率算出手段、先行車選択手段、車線同一判定手段及び補正値算出手段に相当し、道路形状認識ブロック45が道路形状認識手段に相当する。
【0077】
(他の実施形態)
上記に示された実施の形態は一例であり、上記で示した実施形式に限定されることなく、本発明の内容を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記の実施形態では先行車選択を目的とした構成になっているが、純粋に道路形状認識のみを目的とした構成でも良い。また、以下の(1)〜(3)のように変更することもできる。
【0078】
(1)上記実施形態では、道路の左右端を基準とする判定を行い、その判定結果が異なった場合には優先度が高い方を採用したが、左右の道路端のいずれか一方のみを基準とする判定でも実現は可能である。しかしながら、常に安定して道路端を認識できるとは限らないので、上記実施形態のように左右両方の道路端の形状をダイレクトに認識するようにした方が好ましい。
【0079】
(2)上記実施形態において、補正値や優先度に具体的な数値を挙げたが、これはあくまで一例であり、数値は適宜変更可能である。
【0080】
(3)上記実施例形態では「レーダ手段」としてレーザ光を用いた距離・角度測定器5を採用したが、ミリ波等を用いてもよいことは既に述べた。そして、例えばミリ波でFMCWレーダ又はドップラーレーダなどを用いた場合には、反射波(受信波)から先行車までの距離情報と先行車の相対速度情報が一度に得られるため、レーザ光を用いた場合のように、距離情報に基づいて相対速度を算出するという過程は不要となる。
【符号の説明】
【0081】
5 距離・角度測定器
27 ステアリングセンサ
28 ヨーレートセンサ
43 物体認識ブロック
45 道路形状認識ブロック
49 操舵角演算ブロック
51 ヨーレート演算ブロック
53 先行車判定ブロック
63 カーブ半径算出ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識対象の物体の自車に対する相対位置を求め、自車の旋回状態と自車速とに基づいて演算した自車走行路の曲率と前記物体の相対位置とに基づいて、前記物体が自車と同一車線上にいる確率である自車線確率を算出する車両用道路形状認識方法において、
物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、
その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、前記物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、
その判定結果に基づいて前記自車線確率を補正するための補正値を算出し、
前記自車走行路の曲率と前記認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、前記自車線確率を前記補正値にて補正する一方、乖離がある場合、前記自車線確率を前記補正値にて補正しないことを特徴とする車両用道路形状認識方法。
【請求項2】
自車の旋回状態を検出する旋回検出手段(27、28、49、51)と、
該旋回検出手段にて検出された自車の旋回状態と自車速とに基づいて、自車走行路の曲率を演算するカーブ曲率演算手段(63)と、
車幅方向の所定角度範囲内に渡り送信波を照射し、その反射波に基づいて反射物体までの距離と前記車幅方向の角度とを検出するレーダ手段(5)と、
該レーダ手段による検出結果である距離及び前記車幅方向の角度に基づき、前記物体の相対位置を求める物体認識手段(43)と、
前記カーブ曲率演算手段によって求められた前記自車走行路の曲率と前記物体認識手段によって算出された前記物体の相対位置とに基づいて、前記物体が自車と同一車線上にいる自車線確率を求める自車線確率算出手段(53)と、を備えた車両用道路形状認識装置において、
前記物体認識手段は、前記物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体かという認識種別を判定可能であり、
さらに、
前記物体認識手段によって得られた物体の相対位置及び認識種別を用いて道路形状を認識するために有効な停止物体データを抽出し、その抽出したデータに基づいて道路形状を認識する道路形状認識手段(45)と、
該道路形状認識手段によって認識された道路形状及びその認識程度に基づき、前記物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定する車線同一判定手段(53)と、
該車線同一判定手段による判定結果に基づいて前記自車線確率を補正するための補正値を算出する補正値算出手段(53)と、を備え、
前記自車線確率算出手段は、前記自車走行路の曲率と前記認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がないと判定した場合、前記自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正する一方、乖離があると判定した場合、前記自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正しないことを特徴とする車両用道路形状認識装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用道路形状認識装置のカーブ曲率演算手段、物体認識手段、自車線確率算出手段、先行車選択手段、道路形状認識手段、車線同一判定手段、補正値算出手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
認識対象の物体の自車に対する相対位置を求め、自車の旋回状態と自車速とに基づいて演算した自車走行路の曲率と前記物体の相対位置とに基づいて、前記物体が自車と同一車線上にいる確率である自車線確率を算出する車両用道路形状認識方法において、
物体までの距離及び車幅方向の角度に基づき、車両前方の道路形状を認識し、
その認識された道路形状及びその認識程度に基づき、前記物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定し、
その判定結果に基づいて前記自車線確率を補正するための補正値を算出し、
前記自車走行路の曲率と前記認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がない場合、前記自車線確率を前記補正値にて補正する一方、乖離がある場合、前記自車線確率を前記補正値にて補正しないことを特徴とする車両用道路形状認識方法。
【請求項2】
自車の旋回状態を検出する旋回検出手段(27、28、49、51)と、
該旋回検出手段にて検出された自車の旋回状態と自車速とに基づいて、自車走行路の曲率を演算するカーブ曲率演算手段(63)と、
車幅方向の所定角度範囲内に渡り送信波を照射し、その反射波に基づいて反射物体までの距離と前記車幅方向の角度とを検出するレーダ手段(5)と、
該レーダ手段による検出結果である距離及び前記車幅方向の角度に基づき、前記物体の相対位置を求める物体認識手段(43)と、
前記カーブ曲率演算手段によって求められた前記自車走行路の曲率と前記物体認識手段によって算出された前記物体の相対位置とに基づいて、前記物体が自車と同一車線上にいる自車線確率を求める自車線確率算出手段(53)と、を備えた車両用道路形状認識装置において、
前記物体認識手段は、前記物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体かという認識種別を判定可能であり、
さらに、
前記物体認識手段によって得られた物体の相対位置及び認識種別を用いて道路形状を認識するために有効な停止物体データを抽出し、その抽出したデータに基づいて道路形状を認識する道路形状認識手段(45)と、
該道路形状認識手段によって認識された道路形状及びその認識程度に基づき、前記物体が自車と同一車線上にいる可能性を判定する車線同一判定手段(53)と、
該車線同一判定手段による判定結果に基づいて前記自車線確率を補正するための補正値を算出する補正値算出手段(53)と、を備え、
前記自車線確率算出手段は、前記自車走行路の曲率と前記認識された道路形状の曲率とに乖離があるか否かを判定し、乖離がないと判定した場合、前記自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正する一方、乖離があると判定した場合、前記自車線確率を前記補正値算出手段にて算出された補正値にて補正しないことを特徴とする車両用道路形状認識装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用道路形状認識装置のカーブ曲率演算手段、物体認識手段、自車線確率算出手段、先行車選択手段、道路形状認識手段、車線同一判定手段、補正値算出手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−198730(P2012−198730A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61860(P2011−61860)
【出願日】平成23年3月21日(2011.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月21日(2011.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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