説明

車両用遠隔操作デバイス

【課題】手動操作部の操作時に手書き機能付きの操作デバイスへの誤操作が防止され、手動操作部の操作性を悪化させるおそれのない車両用遠隔操作デバイスを提供する。
【解決手段】車両用遠隔操作デバイスは、デバイス本体21の上方を覆うケース体22と、ケース体22に形成された開口部を通して露出する形態で配置された操作ノブ23(手動操作部)とを備える。デバイス本体21には、文字入力を支援するタッチパッド40(文字入力デバイス)が搭載される。ケース体22には、操作者の掌を乗せるためのパームレスト部22aが形成される。パームレスト部22aは、タッチパッド40を覆ってタッチパッド40をケース体22内に収容する閉鎖位置と、タッチパッド40から離れてタッチパッド40を露出させる開放位置との間を移動可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用遠隔操作デバイスに関し、特に手動操作部(例えば操作ノブ)の操作により車室内の前部に配置された表示部の表示内容を遠隔操作可能な車両用遠隔操作デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用遠隔操作デバイスとして、カーナビシステムのディスプレイ(表示部)の表示内容(コマンド情報)をトラックボール、操作ノブなどの手動操作部の操作により入力するものが知られている。また、例えば下記特許文献1に示すように、タッチパネルとタッチパネル用ペンとを用いて、ディスプレイの表示内容を手書きの文字により入力する手書き機能付きの操作デバイスも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−157545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手動操作部の操作により入力するタイプの操作デバイスをベースとして、手書き機能付きの操作デバイスを追加し、状況に応じて各操作デバイスを使い分けるようにできれば、表示部の表示内容に対応する入力の効率を著しく向上させることができる。しかし、手書き機能付きの操作デバイスを、手動操作部としての例えば操作ノブの近傍に搭載すると、操作ノブの操作性を阻害するおそれが高く、また設置スペースが制限されている等の理由から、現実的にはその搭載が困難である。そこで、手書き機能付きの操作デバイスを、ベースとなる操作デバイスのパームレスト部に組み込むことが考えられるが、操作ノブの操作時に触れることで誤操作を招きやすく、また操作者の手首による負荷を受けて耐久性が悪化しやすいという問題がある。一方、操作ノブの操作時に触れないようにすると腕が疲れてしまい、操作ノブの操作性が悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、手動操作部の操作により入力するタイプの操作デバイスに、手書き機能付きの操作デバイスを追加しても、手動操作部の操作時に手書き機能付きの操作デバイスへの誤操作が防止され、しかも手動操作部の操作性を悪化させるおそれのない車両用遠隔操作デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、デバイス本体の上方を覆うケース体と、操作者がケース体の外部から操作できるように該ケース体に形成された開口部を通して露出する形態で配置された手動操作部とを備え、該手動操作部の変位に応じて車室内の前方に配置された表示器の表示内容を遠隔操作可能な車両用遠隔操作デバイスにおいて、デバイス本体には、文字入力を支援する文字入力デバイスが搭載され、ケース体には、操作者の掌を乗せるためのパームレスト部が形成されており、該パームレスト部は、文字入力デバイスを覆って該文字入力デバイスをケース体内に収容する閉鎖位置と、文字入力デバイスから離れて該文字入力デバイスを露出させる開放位置との間を移動可能に構成されていることを特徴とする。この場合、文字入力デバイスとしては、例えばタッチ操作により手書きによる文字入力が可能な操作パネルで構成されるもの、あるいは押動操作により文字入力が可能な操作キー(例えばテンキー)で構成されるものとすることができる。
【0007】
本発明の車両用遠隔操作デバイスでは、ケース体に形成されたパームレスト部が、文字入力デバイスをケース体内に収容する閉鎖位置と、文字入力デバイスを露出させる開放位置との間を移動可能に構成されている。このため、操作者は、パームレスト部が閉鎖位置に位置した状態では、掌をパームレスト部に乗せて手動操作部を操作することができる。このため、手動操作部の操作性が悪化するおそれはなく、しかも文字入力デバイスに触れることなく手動操作部を操作できるため、文字入力デバイスの耐久性を維持しつつ、文字入力デバイスへの誤操作を良好に防止することができる。一方、操作者は、パームレスト部が開放位置に位置した状態では、文字入力デバイスを操作することができる。このように、状況に応じて各操作デバイスを使い分けることができるため、表示部の表示内容に対応する入力の効率を著しく向上させることができる。
【0008】
この場合、パームレスト部は、車両の前後方向へスライド移動可能に構成され、あるいは車両の上下方向に延びる回転軸線周りに回転移動可能に構成されていると好適である。例えば、パームレスト部が車両の後方へスライド移動可能に構成されている場合には、操作者は、パームレスト部が開放位置に位置した状態で、掌をパームレスト部に乗せて文字入力デバイスを操作することが可能となる。これにより、手動操作部の操作性のみならず、文字入力デバイスの操作性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の車両用遠隔操作デバイスを含んで構成される遠隔操作システムを概略的に示す全体図。
【図2】図1の車両用遠隔操作デバイスにおいて、パームレスト部が閉鎖位置にあるときの斜視図。
【図3】図1の車両用遠隔操作デバイスにおいて、パームレスト部が開放位置にあるときの斜視図。
【図4】図2の車両用遠隔操作デバイスの使用状態を示す説明図。
【図5】図3の車両用遠隔操作デバイスの使用状態を示す説明図。
【図6】実施例1の変形例に係り、図5に対応する説明図。
【図7】本発明の実施例2に係り、図5に対応する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の車両用遠隔操作デバイスを含んで構成される遠隔操作システムを概略的に示す全体図である。この遠隔操作システムは、ディスプレイ11(表示部)を備えた周知のナビゲーションシステムNSと、ディスプレイ11に表示される表示内容を遠隔操作するための操作デバイスシステムDSとで構成されている。
【0012】
ナビゲーションシステムNSは、ディスプレイ11の他、周知の位置検出器、地図データ入力器、音声合成回路、スピーカ、メモリ、送受信機、ハードディスク装置、インターフェース、及びこれらに接続されたナビECU(Electronic Control Unit:制御回路)を備えてなる。ディスプレイ11は、運転者Dの視界に近い車室内の前部(運転席の前側遠方位置)に配置されていて、地図上に車両シンボルや、表示内容としての各種コマンドスイッチ、そのコマンドスイッチを指し示すポインタを表示する。
【0013】
操作デバイスシステムDSは、遠隔操作デバイス20、遠隔操作デバイス用ECU30(制御回路)、図示を省略する反力発生機構などで構成されている。遠隔操作デバイス20は、運転者Dが容易に操作できるよう自然に置かれた左手(左ハンドル車の場合は右手)の掌近傍にてコンソールボックスCBに組み付けられていて、図2に示すように、デバイス本体21と、デバイス本体21の上方を覆うケース体22と、ケース体22の開口部から操作者が直接触れて操作することができるように露出する形態で配置された操作ノブ23(手動操作部)と、操作ノブ23による入力内容を確定するための確定スイッチ24とを備えている。
【0014】
デバイス本体21は、遠隔操作デバイス用ECU30に接続されていて、操作ノブ23の前後左右の揺動に対応した操作信号を遠隔操作デバイス用ECU30に送信する。ケース体22は、略流線形状をなし、その中央部から後部に渡る部位には、運転者の左掌を乗せるためのパームレスト部22aが形成されている。パームレスト部22aについては後述する。
【0015】
操作ノブ23は、その裏面部を基端として略鉛直方向に延び出すシャフト部23a(図4参照)を備え、前後左右の揺動時にシャフト部23aを経て反力発生機構により反力を付与されるように構成されている。
【0016】
遠隔操作デバイス用ECU30は、CPU,ROM,RAM,I/O、駆動ICなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としており、車内LANを介してナビゲーションシステムNSと通信可能に接続されていて、操作ノブ23の変位情報(スイッチ情報)及びポインタ情報をナビゲーションシステムNSに送信する。ナビゲーションシステムNSは、これを受けて操作ノブ23の操作に連動するようにディスプレイ11にポインタを表示させる。また、遠隔操作デバイス用ECU30は、ディスプレイ11に表示されるコマンド情報(画面情報)、出力指示情報などに応じて操作ノブ23に付与すべき反力レベル情報をナビゲーションシステムNSから受信する。
【0017】
ところで、この実施例1では、図3に示すように、デバイス本体21上に、タッチパッド40が搭載されている。タッチパッド40は、文字入力を支援する文字入力デバイスとしての機能を有しており、タッチ操作により手書きによる文字入力が可能な周知の操作パネルで構成されている。なお、文字入力デバイスとしては、タッチパッド40に限らず、例えば押動操作により文字入力が可能なテンキー(操作キー)で構成されるものであってもよい。
【0018】
ケース体22に形成されたパームレスト部22aは、タッチパッド40を覆ってそのタッチパッド40をケース22体内に収容する閉鎖位置(図2の状態)と、タッチパッド40から離れてそのタッチパッド40を露出させる開放位置(図3の状態)との間を移動可能に構成されている。
【0019】
具体的には、パームレスト部22aの内側面には、ガイド突起22bが相対向するように突出形成されている。なお、図3ではガイド突起22bの一方のみが記載されている。デバイス本体21の上面には、タッチパッド40を間に挟むようにして車両の前後に向けて延び出す一対のガイド壁21a,21aが立設され、各ガイド壁21aには、対応するガイド突起22bを前後に案内する長孔状のガイド孔21bが略水平方向に貫通形成されている。
【0020】
そして、各ガイド突起22bが、対応するガイド孔21bに沿って前後へ移動することにより、パームレスト部22aがデバイス本体21に対して前後にスライド移動するようになっている。この場合、パームレスト部22aが閉鎖位置に位置した状態では、各ガイド突起22bが各ガイド孔21bの前端又は前端近傍にあり、パームレスト部22aが開放位置に位置した状態では、各ガイド突起22bが各ガイド孔21bの後端又は後端近傍にある。つまり、パームレスト部22aがデバイス本体21に対して後方へ移動することに対応して、パームレスト部22aが閉鎖位置から開放位置へ移動することとなる。
【0021】
なお、上記のスライド構造はあくまでも一例であり、これに限らず、例えばパームレスト部22a側にガイド孔を形成し、デバイス本体21側にガイド突起を形成するようにしてもよい。また、ガイド孔がガイド壁に貫通形成される態様に限らず、例えばガイド壁を貫通しない態様で車両の前後に向けて延設された底付きのガイド溝部に、ガイド突起が摺動可能に嵌合される態様であってもよい。
【0022】
以上のように構成された本実施例1では、パームレスト部22aが、タッチパッド40をケース体22内に収容する閉鎖位置と、タッチパッド40を露出させる開放位置との間を車両の前後方向へスライド移動可能に構成されている。このため、図4に示すように、パームレスト部22aが閉鎖位置に位置した状態では、操作者は掌をパームレスト部22aに乗せて操作ノブ23を操作することができる。
【0023】
このため、タッチパッド40を追加しても、操作ノブ23の操作性が悪化するおそれはなく、しかもタッチパッド40に触れることなく操作ノブ23を操作できるため、タッチパッド40の耐久性を維持しつつ、タッチパッド40への誤操作を良好に防止することができる。また、図5に示すように、パームレスト部22aが開放位置に位置した状態では、操作者は掌をパームレスト部22aに乗せてタッチパッド40を操作することができる。これにより、操作ノブ23の操作性のみならず、タッチパッド40の操作性を向上させることもできる。
【0024】
(変形例)
上記実施例1では、パームレスト部22aがデバイス本体21に対して後方へ移動することに対応して、パームレスト部22aが閉鎖位置から開放位置へ移動するように構成されていたが、例えば図6に示すように、ケース体122を構成するパームレスト部122aがデバイス本体21に対して前方へ移動することに対応して、パームレスト部122aが閉鎖位置から開放位置へ移動する構成としてもよい。この変形例では、パームレスト部122aの後端にてタッチパッド40の露出を許容する開口部122cが形成されている。なお、パームレスト部122aのスライド構造については、上記実施例1のパームレスト部22aの場合と同様のスライド構造を採用することができる。
【0025】
この変形例によっても、上記実施例1と同様、タッチパッド40を追加することに起因して、操作ノブ23の操作性が悪化するおそれはなく、タッチパッド40の耐久性を維持しつつ、タッチパッド40への誤操作を良好に防止することができる。この場合、タッチパッド40の後方位置にて、タッチパッド40の操作時用のパームレスト部を予め設けておけば、タッチパッド40の操作性を向上させることもできる。
【実施例2】
【0026】
上記実施例1及びその変形例では、パームレスト部22a,122aがデバイス本体21に対して車両の前後方向へ移動するように構成されていたが、これに限らず、例えば図7に示すように、ケース体222を構成するパームレスト部222aが、車両の上下方向に延びる回転軸222bの軸線周りに回転可能な構成としてもよい。
【0027】
この実施例2によっても、上記実施例1等と同様、タッチパッド40を追加することに起因して、操作ノブ23の操作性が悪化するおそれはなく、タッチパッド40の耐久性を維持しつつ、タッチパッド40への誤操作を良好に防止することができる。また、この実施例2によれば、開放位置にあるパームレスト部222aに掌を乗せてタッチパッド40を操作できるため、タッチパッド40の操作性を向上させることもできる。
【0028】
なお、上記実施例2では、パームレスト部222aが、車両の上下方向に延びる回転軸222bの軸線周りに回転するように構成されていたが、これに限らず、例えばパームレスト部が、車両の左右方向に延びる回転軸の軸線周りに車両の前方へ向けて回転して、開放位置にて起立状態となるような構成としてもよい。
【0029】
また、上記実施例1等では、パームレスト部22a,122a,222aが操作者の手動操作により閉鎖位置と開放位置との間を移動するように構成されていたが、例えば、閉鎖位置から開放位置へは操作者の手動操作によりパームレスト部が移動し、開放位置から閉鎖位置へは付勢部材(例えばバネ)の付勢力により自動的に復帰するような構成としてもよい。また、例えば電動モータにより回転駆動されるピニオンとラックとのギア結合を利用したスライド機構を採用して、パームレスト部が閉鎖位置から開放位置へ、及び開放位置から閉鎖位置へと自動的に移動するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
NS カーナビゲーションシステム
DS 操作デバイスシステム
11 ディスプレイ(表示部)
20 遠隔操作デバイス
21 デバイス本体
21a ガイド壁
21b ガイド孔
22,122,222 ケース体
22a,122a,222a パームレスト部
22b ガイド突起
23 操作ノブ(手動操作部)
30 遠隔操作デバイス用ECU
40 タッチパッド(文字入力デバイス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス本体の上方を覆うケース体と、操作者が前記ケース体の外部から操作できるように該ケース体に形成された開口部を通して露出する形態で配置された手動操作部とを備え、該手動操作部の変位に応じて車室内の前部に配置された表示部の表示内容を遠隔操作可能な車両用遠隔操作デバイスにおいて、
前記デバイス本体には、文字入力を支援する文字入力デバイスが搭載され、前記ケース体には、操作者の掌を乗せるためのパームレスト部が形成されており、該パームレスト部は、前記文字入力デバイスを覆って該文字入力デバイスを前記ケース体内に収容する閉鎖位置と、前記文字入力デバイスから離れて該文字入力デバイスを露出させる開放位置との間を移動可能に構成されていることを特徴とする車両用遠隔操作デバイス。
【請求項2】
前記パームレスト部は、車両の前後方向へスライド移動可能に構成されている請求項1に記載の車両用遠隔操作デバイス。
【請求項3】
前記パームレスト部は、車両の上下方向に延びる回転軸線周りに回転移動可能に構成されている請求項1に記載の車両用遠隔操作デバイス。
【請求項4】
前記文字入力デバイスは、タッチ操作により手書きによる文字入力が可能な操作パネルで構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用遠隔操作デバイス。
【請求項5】
前記文字入力デバイスは、押動操作により文字入力が可能な操作キーで構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用遠隔操作デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52977(P2012−52977A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197308(P2010−197308)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】