説明

車両用防眩ミラーの制御方法及び制御装置

【課題】車両後方の視認性が低下する恐れを解消することができるとともに、コストの低廉化を図ることができる車両用防眩ミラーの制御方法を提供する。
【解決手段】車両の後方を撮影して画像を取得する第1のステップと、画像を複数の領域に分割して各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第2のステップと、画像に特定領域があることを検出したとき、画像の特定領域に対応する後方の特定領域を検出する第3のステップと、後方の特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す第4のステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用防眩ミラーの制御方法及び制御装置に関し、特にEC(エレクトロクロミック)素子を用いた車両用防眩ミラーの制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における車両用防眩ミラーの制御方法として、例えば、後方光センサ及び周囲光センサを用いて3つの防眩ミラー(インナミラー及び第1,第2アウタミラー)のEC素子の印加電圧を制御するものがある(特許文献1)。
【0003】
この車両用防眩ミラーの制御方法は、後方光センサ及び周囲光センサからの検出信号を受けて後方からの照射光の強度を判定する第1ステップと、この第1ステップの判定結果に基づいてインナミラー及び第1,第2アウタミラーのミラー反射率(EC素子の印加電圧)を制御する第2ステップとを備えている。
【0004】
第1ステップは、後方光センサと周囲光センサとの受光レベルを比較し、後続車から照射された光の強度が周囲の光の強度より高いか否かを判定する。第2ステップは、第1ステップにおいて後続車の光の強度が高いと判定されると、インナミラーのEC素子に電圧を印加してそのミラー反射率を低下させるとともに、第1,第2のアウタミラーのEC素子にインナミラーの印加電圧に応じた電圧を印加してそのミラー反射率を低下させる。
【0005】
以上の構成において、車両の運転中にその後続車が接近すると、その後続車のヘッドライトから光がインナミラーに照射される。この場合、インナミラーのEC素子には、ヘッドライトからの光の強度に応じて電圧が印加され、インナミラーのミラー反射率が低下する。同時に、インナミラーへの印加電圧に応じた電圧が各アウタミラーのEC素子に印加され、各アウタミラーのミラー反射率が低下する。
【特許文献1】特開平6−281967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用防眩ミラーの制御方法によると、3つの防眩ミラーを同時に制御するものであるため、車両後方の視認性が低下する恐れがある。
【0007】
また、防眩駆動用センサとして2つのセンサ(後方光センサ及び周囲光センサ)を用いるものであるため、部品点数が嵩み、コスト高になるという問題もあった。
【0008】
従って、本発明の目的は、車両後方の視認性が低下する恐れを解消することができるとともに、コストの低廉化を図ることができる車両用防眩ミラーの制御方法及び制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、車両の後方を撮影して画像を取得する第1のステップと、前記画像を複数の領域に分割して各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第2のステップと、前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する第3のステップと、前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す第4のステップとを含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御方法を提供する。
【0010】
(2)本発明は、上記目的を達成するために、車両の後方を撮影して画像を取得し、複数の領域に分割する第1のステップと、前記画像における各画素の輝度値及びその平均輝度値を算出する第2のステップと、前記平均輝度値に基づいて周囲の明るさを判定する第3のステップと、前記第3のステップの判定結果に基づいて前記平均輝度値と前記各画素の輝度値とを比較し、前記第1のステップで分割された各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第4のステップと、前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する第5のステップと、前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す第6のステップとを含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御方法を提供する。
【0011】
(3)本発明は、上記目的を達成するために、車両の後方を撮影して画像を取得し、複数の領域に分割する画像処理部と、前記画像における各画素の輝度値及びその平均輝度値を算出する演算部と、前記平均輝度値に基づいて周囲の明るさを判定する第1判定部と、前記第1判定部の判定結果に基づいて前記平均輝度値と前記各画素の輝度値とを比較し、前記第1のステップで分割された各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第2判定部と、前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する照合部と、前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す防眩処理部とを含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、車両後方の視認性が低下する恐れを解消することができるとともに、コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を説明するために示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が搭載された車両における防眩ミラーの配置状態を示す正面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が搭載された車両における防眩ミラーとしてのインナミラーの取付位置と後続車領域の位置との関係を示す平面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が処理した画像を示す正面図である。
【0014】
〔車両用防眩ミラーの制御装置の全体構成〕
図1において、符号1で示す車両用防眩ミラーの制御装置は、車両A(図2に示す)の後方が撮影された画像B1(図3に示す)を処理する画像処理部2と、画像処理部2で処理された画像B2(図4に示す)における各画素の輝度値b及びその平均輝度値a等を算出する演算部3と、演算部3の演算結果に基づいて画像B2における各画素の明るさ及び車両Aの周囲の明るさを判定する判定部4と、各種の情報を格納する記憶部5と、判定部4の判定結果に基づいて防眩ミラーM1〜M3が写す後方の特定領域(特定の明るさをもつ領域)の位置と画像B2における特定領域(特定の明るさをもつ領域)の位置とを照合する照合部6と、照合部6の照合結果に基づいて3つの防眩ミラーM1〜M3のうち後方の特定領域を写す防眩ミラーに防眩処理を施す駆動信号を出力する防眩処理部7とから大略構成されている。
【0015】
図2に示すように、車両A内の天井部には防眩ミラーM1(インナミラー)が、また車両A(ドアパネルD1,D2)外の運転席側及び助手席側には防眩ミラーM2,M3(アウタミラー)が後写鏡としてそれぞれ角度調整可能に取り付けられている。車両Aの後端部には、後続車との間の距離を測定する例えばソナー等の測距装置(図示せず)が配設されている。防眩ミラーM1は、車両Aの後方を撮影する乗員監視用カメラCを内蔵し、図3に示すように角度センサSによってそのミラー角度θ(車両Aのセンタ軸Tと乗員監視用カメラCの光軸Z(画像B1の中心Oを通過する仮想線)とのなす角度)が検出される。防眩ミラーM1〜M3としては、印加電圧によって光反射率(着色量)が可変するEC素子が用いられる。
【0016】
乗員監視用カメラCは、図3に示すように、防眩ミラーM1〜M3(図2に示す)がそれぞれ写す後続車領域の境界によって区分される第1〜第7後続車領域1A〜7Aを角度Φの画像範囲内で撮影する。
【0017】
(画像処理部2の構成)
画像処理部2は、図1に示すように、防眩ミラーM1内の乗員監視用カメラCから入力した画像信号を処理して演算部3に出力する。乗員監視用カメラCから取得した画像B1は、図4に示すように、水平方向に並列する第1〜第7後続車領域1A〜7Aに区分してなる画像B2に処理される。
【0018】
(演算部3の構成)
演算部3は、図1に示すように、画像処理部2からの処理信号及び記憶部5からの情報信号を入力して演算し、判定部4に演算信号を出力する。そして、前述した各画素の輝度値b及びその平均輝度値aの他に、画像B2(図4に示す)上において特定の明るさをもつ領域(後続車のヘッドライト)の位置及び第1〜第7後続車領域1A〜7A(図4に示す)の境界の位置を算出するように構成されている。画像B2において特定の明るさをもつ領域の位置及び第1〜第7後続車領域1A〜7Aの境界の位置は、図3に示すように車両後方の特定領域(特定の明るさをもつ領域)の位置と防眩ミラーM1とを結ぶ仮想線Vと車両Aのセンタ軸Tとのなす角度αに基づいて算出される。角度αは、車両後方の特定領域の位置と車両Aとの間の距離に基づいて補正される。
【0019】
(判定部4の構成)
判定部4は、図1に示すように、第1判定部4A及び第2判定部4Bを有し、演算部3からの演算信号を入力して判定し、照合部6に判定信号を出力する。第1判定部4Aは、平均輝度値aと第1閾値bとを比較して周囲の明るさを判定する。第1閾値bとしては、「周辺が暗い」と判断する輝度の閾値が用いられる。第2判定部4Bは、a<bである場合に画像B2における各画素の輝度値cと平均輝度値aとの輝度値差c−aを算出し、輝度値差c−aと第2閾値dとを比較して各画素の明るさを判定する(第1〜第7後続車領域1A〜7Aに特定の明るさをもつ領域があるか否かを判定する)。第2輝度値dとしては、「防眩ミラーM1〜M3を防眩する必要がある」と判断する輝度の閾値が用いられる。
【0020】
(記憶部5の構成)
記憶部5は、角度センサSからの情報(防眩ミラーM1のミラー角度θ)を含む各種の情報が格納され、演算部3に情報信号を出力する。
【0021】
(照合部6の構成)
照合部6は、図1に示すように、c−a>dである場合に第1〜第7後続車領域1A〜7Aの位置と特定の明るさをもつ領域(画素)の位置とを照合する。この場合、第1〜第7後続車領域1A〜7Aのいずれかの後続車領域に特定の明るさをもつ領域が配置されていると、第1〜第7後続車領域1A〜7Aのいずれかの後続車領域(特定の明るさをもつ領域)に対応する車両後方の特定領域(特定の明るさをもつ領域)が検出される。そして、防眩処理部7に照合信号を出力する。
【0022】
(防眩処理部7の構成)
防眩処理部7は、図1に示すように、3つの防眩ミラーM1〜M3に対応する駆動回路7A〜7Cを有し、照合部6の照合結果に基づいて3つの防眩ミラーM1〜M3のうち車両後方の特定領域(例えば後続車のヘッドライト)を写す防眩ミラーに防眩処理を施す駆動信号を出力する。各防眩ミラーM1〜M3に対する防眩処理は、EC素子の光反射率(着色量)を制御することにより行われる。
【0023】
次に、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法につき、図5〜図9を用いて説明する。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法の全体を説明するために示すフローチャートである。図6は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における演算ステップでの画像上の位置算出を説明するために示す平面図である。図7は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における演算ステップを説明するために示す平面図である。図8は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における防眩処理ステップを説明するために示す図である。図8(a)は平面図を、図8(b)は図表をそれぞれ示す。図9は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法の防眩処理ステップを説明するために示すフローチャートである。
【0025】
本実施の形態に示す車両用防眩ミラーの制御方法は、「画像処理(第1ステップ)」及び「演算(第2ステップ)」・「第1判定(第3ステップ)」・「第2判定(第4ステップ)」・「照合(第5ステップ)」・「防眩処理(第6ステップ)」の各ステップが順次実施されるため、これら各ステップを順次説明する。本実施の形態に示す車両用防眩ミラーの制御方法を実施するにあたり、第1閾値b及び第2閾値dの他、車両Aの車幅W及び防眩ミラーM1と防眩ミラーM2,M3との間の寸法Lac・防眩ミラーM1と車両後端部との間の寸法Lat・ミラー角度θ・防眩ミラーM1のミラー視界を示す角度2θA・防眩ミラーM2,M3のミラー視界を示す角度θc・乗員監視用カメラCの撮影角度Φは記憶部5に情報として格納されているものとする。また、車両Aと後続車との距離Lは、測距装置によって随時測定され、記憶部5に情報として格納されるものとする。なお、ミラー視界とは、防眩ミラーM1〜M3に写る像の範囲をいう。
【0026】
「画像処理」
3つの防眩ミラーM1〜M3を有する車両Aの後方が撮影された画像B1(図3に示す)を乗員監視用カメラCを用いて処理する(図5のステップS1)。この場合、乗員監視用カメラCから取得した画像B1(図3に示す)は、第1〜第7後続車領域1A〜7Aが水平方向に並列する画像B2(図4に示す)に処理される。
【0027】
「演算」
画像処理ステップにおいて処理された画像B2における各画素の輝度値b及びその平均輝度値aを算出する(図5のステップS2)。また、図6に示すように、画像B2上において第1〜第7後続車領域1A〜7A(図4に示す)の境界の位置(中心Oからの位置)及び特定の明るさをもつ領域の位置(中心Oからの位置)を、車両後方の特定領域(特定の明るさをもつ領域)の位置と防眩ミラーM1(乗員監視用カメラC)の位置とを結ぶ仮想線Vと車両Aのセンタ軸Tとのなす角度α(α=θ+θ1,θ+θ2)に基づいて算出する。第1〜第7後続車領域1A〜7Aの境界の位置又は特定の明るさをもつ領域の位置の算出は、数1に示すように行われる。
【0028】
【数1】

【0029】
角度α(α=θ45,θ56,θ67)は、図7に示すように、車両後方において特定の明るさをもつ領域の位置(M1,M2,P1,P2)と車両Aとの間の距離(L,L1,L2)に基づいて補正される。例えば、角度αの補正は、数2〜数4に示すよう行われる。
【0030】
【数2】

【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
「第1判定」
演算ステップにおいて算出された平均輝度値aと予め設定された第1閾値bとを比較して周囲の明るさを判定する(図5のステップS3)。この場合、平均輝度値aが第1閾値bより小さい(a<b)場合には次ステップに進み(図5のステップS3のYES)、平均輝度値aが第1閾値bより大きい(a≧b)場合には画像処理ステップに戻る(図5のステップS3のNO)。
【0034】
「第2判定」
第1判定ステップにおいて判定された周囲の明るさがa<bとなる場合に、平均輝度値aと各画素の輝度値cとの輝度値差c−aと予め設定された第2閾値dとを比較し、各画素の明るさ(第1〜第7後続車領域1A〜7Aに特定の明るさをもつ領域があるか否か)を判定する(図5のステップS4)。この場合、輝度値差c−aが第2閾値dより大きい(c−a≧d)場合には次ステップに進み(図5のステップS4のYES)、輝度値差c−aが第2閾値dより小さい(c−a<d)場合には画像処理ステップに戻る(図5のステップS4のNO)。
【0035】
「照合」
第2判定ステップにおいて判定された各画素の明るさがc−a>dである場合に、第1〜第7後続車領域1A〜7Aの位置と特定の明るさをもつ領域(画素)の位置とを照合する(図5のステップS5)。この場合、画像B2において、第1後続車領域1A〜7Aのうちいずれかの後続車領域に特定の明るさをもつ領域が配置されていると、第1〜第7後続車領域1A〜7Aのいずれかの後続車領域(特定の明るさをもつ領域)に対応する車両後方の特定領域(特定の明るさをもつ領域)が検出される。
【0036】
「防眩処理」
3つの防眩ミラーM1〜M3のうち車両後方の特定領域を写す防眩ミラーに防眩処理を施す駆動信号を出力する(図5のステップS6〜S8)。この場合、図8(a)及び(b)に示すように、例えば特定の明るさをもつ領域が第2後続車領域2Aに有る場合には防眩ミラーM2に、特定の明るさをもつ領域が第3後続車領域3Aに有る場合には防眩ミラーM1,M2に、特定の明るさをもつ領域が第5後続車領域5Aに有る場合には防眩ミラーM1,M3にそれぞれ防眩処理を施す駆動信号を出力する。なお、特定の明るさをもつ領域が第1後続車領域1A及び第7後続車領域7Aに有る場合には防眩ミラーM1〜M3に防眩処理を施す駆動信号は出力されない。図8(b)において、「○」は防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理を施す駆動信号が出力される場合を、また「×」は防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理を施す駆動信号が出力されない場合をそれぞれ示す。
【0037】
防眩ミラーM1〜M3に対する防眩処理は、図9に示すようにステップSA1〜ステップSA5を経て行われる。
【0038】
先ず、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩処理の要否を判定する(図9のステップSA1)。ここで、防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理の必要がある(図9のステップSA1のYES)場合にはステップSA2に進む。次に、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩OFF状態であるか否かを判定する(図9のステップSA2)。ここで、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩OFF状態である(図9のステップSA2のYES)場合には、防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理を施す(EC素子を着色する)駆動信号が出力される(図9のステップSA3)。また、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩OFF状態でない(図9のステップSA2のNO)場合には、そのままの状態が維持される。
【0039】
一方、ステップSA1において、防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理の必要が無い(図9のステップSA1のNO)場合には、ステップSA4に進む。次に、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩ON状態であるか否かを判定する(図9のステップSA4)。ここで、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩ON状態である(図9のステップSA4のYES)場合には、防眩ミラーM1〜M3に対して防眩処理を施す(EC素子を着色する)駆動信号の出力が停止される(図9のステップSA5)。また、防眩ミラーM1〜M3に対する防眩ON状態でない(図9のステップSA4のNO)場合には、そのままの状態が維持される。
【0040】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0041】
(1)3つの防眩ミラーM1〜M3のうち特定の明るさをもつ領域を写す防眩ミラーを制御するものであるため、全ての防眩ミラーM1〜M3の同時制御を回避することができ、車両後方の視認性が低下する恐れを解消することができる。
【0042】
(2)防眩ミラーM1〜M3の制御が単一のセンサ(乗員監視用カメラC)を用いて行われるものであるため、部品点数を削減することができ、コストの低廉化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の車両用防眩ミラーの制御方法及び制御装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0044】
(1)本実施の形態では、特定の明るさをもつ領域の位置と第1〜第7後続車領域1A〜7A(7つの後続車領域)の位置とを照合する場合について説明したが、後続車領域の個数については特に限定されず、例えば2〜6つの後続車領域あるいは8つ以上の後続車領域でもよい。
【0045】
(2)本実施の形態では、乗員監視用カメラCを用いて車両Aの後方を撮影する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、乗員監視用カメラCとは別に他の撮影用カメラを用いて車両Aの後方を撮影しても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を説明するために示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が搭載された車両における防眩ミラーの配置状態を示す正面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が搭載された車両における防眩ミラーとしてのインナミラーの取付位置と後続車領域の位置との関係を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置が処理した画像を示す正面図。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法の全体を説明するために示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における演算ステップでの画像上の位置算出を説明するために示す平面図。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における演算ステップを説明するために示す平面図。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法における防眩処理ステップを説明するために示す平面図と図表である。
【図9】本発明の実施の形態に係る車両用防眩ミラーの制御装置を用いた制御方法の防眩処理ステップを説明するために示すフローチャート。
【符号の説明】
【0047】
1…車両用防眩ミラーの制御装置、2…画像処理部、3…演算部、4…判定部、4A…第1判定部、4B…第2判定部、5…記憶部、6…照合部、7…防眩処理部、7A〜7C…駆動回路、1A…第1後続車領域、2A…第2後続車領域、3A…第3後続車領域、4A…第4後続車領域、5A…第5後続車領域、6A…第6後続車領域、7A…後続車領域、A…車両、B1,B2…画像、C…乗員監視用カメラ、D1,D2…ドアパネル、O…画像B1の中心、T…センタ軸、V…仮想線、θ…ミラー角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を撮影して画像を取得する第1のステップと、
前記画像を複数の領域に分割して各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第2のステップと、
前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する第3のステップと、
前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す第4のステップと
を含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項2】
車両の後方を撮影して画像を取得し、複数の領域に分割する第1のステップと、
前記画像における各画素の輝度値及びその平均輝度値を算出する第2のステップと、
前記平均輝度値に基づいて周囲の明るさを判定する第3のステップと、
前記第3のステップの判定結果に基づいて前記平均輝度値と前記各画素の輝度値とを比較し、前記第1のステップで分割された各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第4のステップと、
前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する第5のステップと、
前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す第6のステップと
を含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項3】
前記第1のステップは、前記インナミラーに内蔵する乗員監視用カメラで撮影することにより前記画像を取得する請求項1又は2に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項4】
前記第2のステップは、前記画像の前記特定領域の位置及び前記複数の領域の境界の位置を、その位置と前記インナミラーの位置とを結ぶ仮想線と前記車両のセンタ軸とのなす角度に基づいて算出するステップを含む請求項2に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項5】
前記第2のステップは、前記後方の特定領域の位置と前記車両との間の距離に基づいて前記仮想線と前記車両のセンタ軸とのなす角度を補正するステップを含む請求項4に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項6】
前記第3のステップは、前記平均輝度値と第1閾値とを比較して前記周囲の明るさを判定する請求項2に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項7】
前記第3のステップは、前記平均輝度値が前記第1閾値より小さい場合には前記第4のステップに進み、前記平均輝度値が前記第1閾値以上である場合には前記第1のステップに戻る請求項6に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項8】
前記第4のステップは、前記各画素の輝度値と前記平均輝度値との輝度値差と第2閾値とを比較して前記各画素の明るさを判定する請求項2に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項9】
前記第4のステップは、前記輝度値差が前記第2閾値以上である場合には第5のステップに進み、前記輝度値差が前記第2閾値より小さい場合には第1のステップに戻る請求項8に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項10】
前記第6のステップは、前記防眩ミラーに用いるエレクトロクロミック素子の光反射率を制御することにより行う請求項2に記載の車両用防眩ミラーの制御方法。
【請求項11】
車両の後方を撮影して画像を取得し、複数の領域に分割する画像処理部と、
前記画像における各画素の輝度値及びその平均輝度値を算出する演算部と、
前記平均輝度値に基づいて周囲の明るさを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果に基づいて前記平均輝度値と前記各画素の輝度値とを比較し、前記第1のステップで分割された各領域に特定の明るさをもつ特定領域があるか否かを判定する第2判定部と、
前記画像に前記特定領域があることを検出したとき、前記画像の前記特定領域に対応する前記後方の特定領域を検出する照合部と、
前記後方の前記特定領域を写すミラーをインナミラー及び左右のアウタミラーから選択して防眩処理を施す防眩処理部と
を含むことを特徴とする車両用防眩ミラーの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−18870(P2008−18870A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193291(P2006−193291)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】