説明

車両用障害物検出装置

【課題】チェンジレバーの誤操作をドライバーに気付かせ得る車両用障害物検出装置を提供する。
【解決手段】車両用障害物検出装置1は、車両の異なる周辺部位に配置された複数の超音波センサ10(障害物検出センサ、演算手段)と、障害物までの距離に応じて異なる吹鳴態様の音声を出力するブザー31,32(音声報知手段)と、障害物の位置する方向を音声でアナウンス可能なスピーカ33(案内音声報知手段)と、制御回路28(制御手段)とを備える。制御手段28は、チェンジレバーがパーキング位置からパーキング位置以外のシフト位置に切り替えられたタイミングで、切り替え後のシフト位置に対応した車両の動き出す方向にて障害物までの距離が設定値以下であるとき、ブザー31,32を通じた音声報知を行う前に、スピーカ33を通じて車両の動き出す方向を示す案内音声報知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用障害物検出装置に関し、特にチェンジレバーの誤操作をドライバーに知らせることが可能な車両用障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用障害物検出装置として、車両の異なる周辺部位に配置され、超音波(発射波)を発信し障害物で反射した反射波を受信する複数の超音波センサ(障害物検出センサ)と、各超音波センサの送受信に基づいて障害物までの距離を算出する演算制御部(演算手段)と、演算制御部により算出された距離に基づいて障害物までの距離が設定値以下となったとき障害物の位置する方向を音声メッセージで報知する報知部と、報知部を制御する制御手段とを備えたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この特許文献1に記載された車両用障害物検出装置では、複数の超音波センサのうち、例えば車両の右前センサのみが障害物を検出した場合は、「右前です。」という音声メッセージを報知部により出力させる。そして、障害物を検出した超音波センサの数が増え、例えば車両の右後センサが障害物を検出し、車両の右前後2ヶ所で障害物を検出した状態になると、「右前」よりも広い範囲に障害物が存在することを示す音声メッセージ、例えば「右側です。」を報知部により出力させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3550322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された車両用障害物検出装置によれば、障害物を検出した超音波センサの数が増えた場合に、ドライバーは音声メッセージから車両周辺の広い範囲にわたって障害物が存在することを知ることができる。しかし、従来の車両用障害物検出装置では、例えば障害物が車両の前部近傍に位置している状態でドライバーが車両を後退させるつもりで誤ってチェンジレバーを前進位置に入れてしまったような場合において、ドライバーは車両の前方に障害物がある旨の音声メッセージを障害物検出装置から受け取るものの、車両を後退させようとする意思が強すぎて、その音声メッセージに対しては僅かな注意を払うに過ぎないのが一般的である。このため、障害物検出装置により障害物の存在を示す音声メッセージがなされたとしてもチェンジレバーの誤操作の結果、障害物と衝突してしまうおそれが高かった。
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、チェンジレバーの誤操作をドライバーに気付かせ得る車両用障害物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車両の異なる周辺部位に配置され、発射波を発信し障害物で反射した反射波を受信する複数の障害物検出センサと、各障害物検出センサの送受信に基づいて障害物までの距離を算出する演算手段と、演算手段により算出された距離に基づいて障害物までの距離が設定値以下となったとき該障害物までの距離に応じて異なる吹鳴態様の音声を出力する音声報知手段と、障害物までの距離が設定値以下となったとき障害物の位置する方向を音声でアナウンス可能な案内音声報知手段と、音声報知手段及び案内音声報知手段をそれぞれ制御可能な制御手段とを備え、障害物検出センサは、チェンジレバーのシフト位置がパーキング位置以外にあることを条件として作動するように設定され、制御手段は、チェンジレバーがパーキング位置から該パーキング位置以外のシフト位置に切り替えられたタイミングで、切り替え後のシフト位置に対応した車両の動き出す方向にて障害物までの距離が設定値以下であるとき、音声報知手段を通じた音声報知を行う前に、案内音声報知手段を通じて車両の動き出す方向を示す案内音声報知を行うことを特徴とする。この場合、制御手段は、例えばチェンジレバーがパーキング位置から前進位置に切り替えられたときに車両の前進方向にて障害物までの距離が設定値以下であるときは、案内音声報知として車両が前進する旨の報知を行う一方で、チェンジレバーがパーキング位置から後退位置に切り替えられたときに車両の後退方向にて障害物までの距離が設定値以下であるときは、案内音声報知として車両が後退する旨の報知を行うものであると好適である。
【0007】
本発明の車両用障害物検出装置では、チェンジレバーがパーキング位置から該パーキング位置以外のシフト位置に切り替えられたタイミングで、切り替え後のシフト位置に対応した車両の動き出す方向にて障害物までの距離が設定値以下であるとき、制御手段により、音声報知手段を通じた音声報知が行われる前に、案内音声報知手段を通じて車両の動き出す方向を示す案内音声報知が行われる。
【0008】
車両の前部近傍に障害物がありながらドライバーがチェンジレバーを前進位置に切り替え、あるいは車両の後部近傍に障害物がありながらドライバーがチェンジレバーを後退位置に切り替えることは、車両が動き出せば障害物と衝突することが明らかであるので、通常はあり得ない操作である。したがって、このような場合はドライバーが勘違いでチェンジレバーを誤操作したものと推定し、案内音声を報知してドライバーに注意を促すようにした。これにより、チェンジレバーの誤操作を低減することが可能となる。
【0009】
具体的には、ドライバーが車両を後退させるつもりで誤ってチェンジレバーを前進位置に入れたときであって車両の前部近傍に障害物が存在していた場合は、車両の動き出す方向を示す案内音声報知、例えば「前進します。」を案内音声報知手段にアナウンスさせることにより、操作意思(後退)と実際の操作状況(前進)とが異なることをドライバーに気付かせることができる。あるいは、例えばドライバーが車両を前進させるつもりで誤ってチェンジレバーを後退位置に入れたときであって車両の後部近傍に障害物が存在していた場合は、車両の動き出す方向を示す案内音声報知、例えば「後退します。」を案内音声報知手段にアナウンスさせることにより、操作意思(前進)と実際の操作状況(後退)とが異なることをドライバーに気付かせることができる。
【0010】
また、制御手段は、障害物検出センサによって障害物が検出されない状態から車両の動作に伴って障害物が検出されるに至った場合は、案内音声報知を行わないように構成されているとよい。
【0011】
障害物検出センサによって障害物が検出されない状態から車両の動作に伴って障害物が検出されるに至った場合、すなわち車両が動き出すことで障害物までの距離が設定値以下となったときに障害物の存在をドライバーに知らせることは障害物検出装置による通常の機能の発揮となる。したがって、この場合は案内音声報知手段を通じた案内音声報知を行わない構成とすることで、案内音声の効果を高めることができる。
【0012】
また、制御手段は、チェンジレバーの操作によるシフト位置の変更に伴い、メータに設けられたシフト位置を表示する表示灯を点滅制御するものであるとよい。これによれば、ドライバーに対して視覚的にも注意を促すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用障害物検出装置のブロック図。
【図2】図1で示した超音波センサの車両における配置態様、及び各超音波センサの感知範囲を模式的に示す説明図。
【図3】図1の制御回路によって実行される報知処理(音声報知及び案内音声報知)を示すフローチャート。
【図4】(a)は音声案内の一例を示す説明図。(b)は音声案内する際の報知パターンの一例を示す説明図。
【図5】図4(a)の一部を模式的に示す説明図。
【図6】メータに設けられたシフト位置を表示する表示灯における制御態様の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る車両用障害物検出装置1(以下、単に障害物検出装置1という)のブロック図を示したものである。障害物検出装置1は、障害物検出センサとしての超音波センサユニット(以下、単に超音波センサという)10、及びECU(Electronic Control Unit)20を備えている。
【0016】
超音波センサ10は、例えば圧電効果により圧電セラミック振動子を振動させて超音波を発射し、また圧電セラミック振動子に入射した超音波の振動を電気信号に変換する送受信兼用型の周知のものであり、超音波マイク、制御基板などを含んで構成されている。制御基板は、周知のものであり、送波回路、受波回路、波形整形回路、距離演算回路及び通信回路を備えている。距離演算回路(演算手段)は、波形整形回路で得られた反射波の波形に基づいて発射波が反射して戻って来るまでの時間を計測し、その時間に基づいて物体までの距離を演算する。通信回路は、距離演算回路で演算された距離を表す検出信号(例えばシリアル信号)をECU20に送信する。
【0017】
上記した超音波センサ10は、図2に示すように、車両の前後に設けられたバンパBPの各コーナ位置と、各バンパBPのセンタ位置(左右寄り2箇所)とに配置されている。具体的には、超音波センサ10が、それぞれ左前方位置のFLコーナセンサ10a、右前方位置のFRコーナセンサ10b、左後方位置のRLコーナセンサ10c、右後方位置のRRコーナセンサ10d、前方左寄りセンタ位置のFLCセンタセンサ10e、前方右寄りセンタ位置のFRCセンタセンサ10f、後方左寄りセンタ位置のRLCセンタセンサ10g、後方右寄りセンタ位置のRRCセンタセンサ10hとして設けられている。この場合、各センサ10a〜10dの感知範囲は、図2の破線で示す範囲とされ、各センサ10e〜10hの感知範囲は、それぞれ図2の一転鎖線で示す範囲とされている。
【0018】
図1に戻って、各センサ10a〜10hには、電源用、GND用、通信用の信号線(inとout)を接続するための端子(例えば6個)が設けられている。そして、FLコーナセンサ10aの各端子は、信号線を介してECU20の対応端子に接続されるとともに、信号線を介してFLCセンタセンサ10eの対応端子に接続されている。順次、FLCセンタセンサ10eの各端子はFRCセンタセンサ10fの対応端子に接続され、FRCセンタセンサ10fの各端子はFRコーナセンサ10bの対応端子に接続されている。
【0019】
同様に、RLコーナセンサ10cの各端子は、信号線を介してECU20の対応端子に接続されるとともに、信号線を介してRLCセンタセンサ10gの対応端子に接続されている。順次、RLCセンタセンサ10gの各端子はRRCセンタセンサ10hの対応端子に接続され、RRCセンタセンサ10hの各端子はRRコーナセンサ10dの対応端子に接続されている。
【0020】
ECU20は、通信回路21F,21R、電源回路22、ブザー駆動回路23F,23R、音声駆動回路24A、表示駆動回路24B及び各種インターフェース(I/F)回路25〜27、及びこれらが接続される制御回路28を備えている。
【0021】
通信回路21Fは、FLコーナセンサ10a、FRコーナセンサ10b、FLCセンタセンサ10e及びFRCセンタセンサ10fからの距離を表す検出信号をそれぞれ制御回路28に入力する。通信回路21Rは、RLコーナセンサ10c、RRコーナセンサ10d、RLCセンタセンサ10g及びRRCセンタセンサ10hからの距離を表す検出信号をそれぞれ制御回路28に入力する。
【0022】
電源回路22は、バッテリBの電圧(12V)を定電圧(5V)化する機能を有し、メインスイッチMA及びイグニッションスイッチIGを介してバッテリBに接続されている。ブザー駆動回路23F,23Rは、それぞれ車室の例えば前後に設けられたブザー31,32(音声報知手段)からブザー音(障害物までの距離が近づくに従って、例えば「ピッピッ」という断続音から「ピピピ」という速い断続音を経て、「ピー」という連続音等に移行)を出力させる。
【0023】
音声駆動回路24Aは、車室に設けられたスピーカ33(案内音声報知手段)から案内音声(例えば「後退します。」、「前進します。」等)を出力させる。表示駆動回路24Bは、チェンジレバーのシフト位置に対応する表示灯34a(図6参照)を点滅させる。なお、表示灯34aはメータ34に設けられている。
【0024】
インターフェース(I/F)回路25は、チェンジレバーが「R」(リバース位置)に切り替えられたとき、その切り替えを表す検出信号を制御回路28に入力する。インターフェース(I/F)回路26は、チェンジレバーが「P」(パーキング位置)に切り替えられたとき、その切り替えを表す検出信号を制御回路28に入力する。インターフェース(I/F)回路27は、車速センサ35により検出された車速を表す検出信号を制御回路28に入力する。なお、車両によってはパーキング信号が取れない場合もあるため、パーキングブレーキスイッチPKBのオン信号で代用してもよい。
【0025】
制御回路28(制御手段)は、CPU28a,ROM28b,RAM28c(記憶手段),I/O28dなどを主要構成部としており、メインスイッチMA及びイグニッションスイッチIGのオン後の所定時間毎に、ROM28bに格納された図3の報知処理プログラムを繰り返し実行し、その実行に応じた駆動信号をブザー駆動回路23F,23R、音声駆動回路24A及び表示駆動回路24Bにそれぞれ出力する。
【0026】
次に、上記のように構成された実施例1の作動について説明する。運転者がメインスイッチMA及びイグニッションスイッチIGをオンすると、制御回路28は、図3の報知処理プログラムの実行を開始する。
【0027】
この報知処理プログラムの実行において、制御回路28は、初期化処理を行った後(S1)、超音波センサ10の作動条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、チェンジレバーが「P」(パーキング位置)から「D」、「L」等の前進位置、あるいは「N」の中立位置に切り替えられた場合は、各コーナセンサ10a〜10d及び各センタセンサ10e,10fの検出信号を入力する。
【0028】
一方、チェンジレバーが「P」(パーキング位置)から「R」の後退位置に切り替えられた場合は、各コーナセンサ10a〜10d及び各センタセンサ10e,10fの検出信号に加えて、各センタセンサ10g,10hの検出信号を入力する。なお、各センサ10a〜10fについては、車速が予め定められた低速状態、例えば15km/h未満にあることが作動条件として設定されている。
【0029】
各センサ10a〜10hが正常に作動していると判断した場合、制御回路28は、各センサ10a〜10hからの検出信号に基づいて障害物までの距離が設定値(各コーナセンサ10a〜10dの場合は約60cm、各センタセンサ10e〜10hの場合は約1.5m)以下であるか否かを判定する(S2)。
【0030】
制御回路28は、チェンジレバーが「P」以外のシフト位置に切り替えられたタイミング(切り替え直後)で、障害物までの距離が設定値以下であれば(S3:YES)、後述するS7,S11,S15,又はS17の処理の実行によりシフト位置の切り替えに対応した案内音声が未だ出力されていないことを条件として(S4:NO)、シフト位置が「R」とされた場合はS6〜S8の処理を実行し、シフト位置が「D」、「L」等の前進位置とされた場合はS10,S11,S8の処理を実行し、シフト位置が「N」とされた場合はS12〜S17,S8の処理を実行する。
【0031】
最初に、シフト位置が「R」とされた場合について説明する。この場合、図4(a)、図5(a)に示すように、車両の後方で障害物Oが検出、すなわちシフト位置「R」に対応した車両の動き出す方向(後退方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であれば(S6:YES)、制御回路28は、音声駆動回路24Aを駆動制御して車両の動き出す方向(後退方向)を示す「後退します。」という案内音声をスピーカ33から出力させる(S7)。
【0032】
これによれば、ドライバーが車両を前進させるつもりで誤ってチェンジレバーを「R」に入れた場合であって車両の後部近傍に障害物Oが存在していたような場合は、「後退します。」との案内音声をアナウンスさせることにより、ドライバーに対して操作意思(前進)と実際の操作状況(後退)とが異なることを気付かせることができる。
【0033】
これに対して、図4(a)、図5(b)に示すように、シフト位置「R」に対応した車両の動き出す方向(後退方向)とは反対方向(前進方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であっても、制御回路28は、スピーカ33を通じた案内音声報知を行わない(S6:NO)。これは、ドライバーが車両を前進させるつもりでシフト位置を「R」に入れた場合であっても、車両の動き出す方向(後退方向)に障害物Oがなければ車両が障害物Oとの衝突事故を起こすおそれはなく、このような場合にまで案内音声を報知することは、ドライバーの混乱につながるおそれがあり好ましくないと考えられるからである。
【0034】
また、制御回路28は、図6に示すように、表示駆動回路24Bを駆動制御してメータ34に設けられた表示灯34aの「R」を点滅させる。これによれば、ドライバーに対して視覚的にも注意を促すことができるようになる。
【0035】
S7の処理の実行後、制御回路28は、障害物Oまでの距離の遠近に応じてブザー31,32の吹鳴態様(断続音、速い断続音、連続音)を決定し、ブザー駆動回路23F,23Rを駆動制御して、決定したブザー音をブザー31,32から出力させる(S8)。
【0036】
制御回路28は、障害物Oまでの距離が設定値以下の状態が続く限り(S2:YES)、S3,S4,S8の処理を繰り返し実行する。なお、制御回路28は、チェンジレバーが「P」以外のシフト位置に切り替えられたタイミングで、障害物Oを検出したセンサ10a〜10hと対応付けて、そのセンサにより演算された障害物までの距離をRAM28cに記憶するように設定されている。このため、S7の処理が実行された後の次回以降のS3及びS4の処理では共にYESと判定され、S8の処理が繰り返し実行されることとなる。
【0037】
次に、シフト位置が「D」、「L」等の前進位置とされた場合について説明する。この場合、図4(a)、図5(c)に示すように、車両の前方で障害物Oが検出、すなわちシフト位置「D」等に対応した車両の動き出す方向(前進方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であれば(S10:YES)、制御回路28は、音声駆動回路24Aを駆動制御して車両の動き出す方向(前進方向)を示す「前進します。」という案内音声をスピーカ33から出力させる(S11)。
【0038】
これによれば、ドライバーが車両を後退させるつもりで誤ってチェンジレバーを「D」、「L」等の前進位置に入れた場合であって車両の前部近傍に障害物Oが存在していたような場合は、「前進します。」との案内音声をアナウンスさせることにより、ドライバーに対して操作意思(後退)と実際の操作状況(前進)とが異なることを気付かせることができる。
【0039】
これに対して、図4(a)、図5(d)に示すように、シフト位置「D」等に対応した車両の動き出す方向(前進方向)とは反対方向(後退方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であっても、制御回路28は、スピーカ33を通じた案内音声報知を行わない(S10:NO)。ドライバーが車両を前進させるつもりでシフト位置を「R」に入れた上記の場合と同様、ドライバーが車両を後退させるつもりでシフト位置を「D」等に入れた場合であっても、車両の動き出す方向(前進方向)に障害物Oがなければ車両が障害物Oとの衝突事故を起こすおそれはなく、ドライバーの混乱につながる案内音声の乱用を防止するためである。
【0040】
また、制御回路28は、表示駆動回路24Bを駆動制御してメータ34に設けられた表示灯34aの「D」等を点滅させる(図6参照)。S11の処理の実行後、制御回路28は、上記と同様、障害物までの距離の遠近に応じた吹鳴態様でブザー31,32を通じた音声報知を行う(S8)。そして、制御回路28は、障害物Oまでの距離が設定値以下の状態が続く限り(S2:YES)、S3,S4,S8の処理を繰り返し実行する。
【0041】
次に、シフト位置が「N」とされた場合について説明する。この場合、制御回路28は、車速センサ35により検出された車速Vを表す検出信号に基づいて車両が動き出した状態にあると判定した場合に(S12:YES)、スピーカ33を通じた案内音声報知を行う。
【0042】
具体的には、図4(a)に示すように、車両が後退している場合(S13:YES)、その車両の動き出し方向(後退方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であれば(S14:YES)、制御回路28は、音声駆動回路24Aを駆動制御して車両の動き出し方向(後退方向)を示す「後退します。」という案内音声をスピーカ33から出力させる(S15)。
【0043】
一方、車両が前進している場合(S13:NO)、その車両の動き出し方向(前進方向)にて障害物Oまでの距離が設定値以下であれば(S16:YES)、制御回路28は、音声駆動回路24Aを駆動制御して車両の動き出し方向(前進方向)を示す「前進します。」という案内音声をスピーカ33から出力させる(S17)。
【0044】
また、制御回路28は、S15又はS17の処理を実行する場合、表示駆動回路24Bを駆動制御してメータ34に設けられた表示灯34aの「N」を点滅させる(図6参照)。S15又はS17の処理の実行後、制御回路28は、上記と同様、障害物までの距離の遠近に応じた吹鳴態様でブザー31,32を通じた音声報知を行う(S8)。そして、制御回路28は、障害物Oまでの距離が設定値以下の状態が続く限り(S2:YES)、S3,S4,S8の処理を繰り返し実行する。
【0045】
例えば、坂道(上り坂、下り坂)に駐車した状態から車両を前進又は後退させるつもりでチェンジレバーを誤って「N」に入れ、さらにこの誤操作によって車両が動き出した状態にあることにドライバー本人が気付かない場合もある。本実施例1では、チェンジレバーが「P」(パーキング位置)から中立位置に切り替えられたときに車両が動き出した方向にて障害物までの距離が設定値以下であるときは、その動き出した方向を示す案内音声報知をも行うように設定されている。これによれば、チェンジレバーのより広範囲の誤操作に対してドライバーに注意を促すことができる。
【0046】
なお、チェンジレバーが「P」以外のシフト位置に切り替えられたタイミングでは、障害物Oが検出されない状態、すなわち障害物Oまでの距離が設定値を超えていたが(S2:NO)、車両の動作(前進、後退)に伴って障害物Oが検出されるに至った場合は(S3:NO)、制御回路28は、S7,S11,S15又はS17の処理を実行することなく、S8の処理を実行する。そして、障害物Oまでの距離が設定値以下の状態が続く限り(S2:YES)、S3,S8の処理を繰り返し実行する。
【0047】
つまり、車両が動き出すことで障害物Oまでの距離が設定値以下となったときにその障害物Oの存在をドライバーに知らせる場合のような障害物検出装置1による通常の機能の発揮となる場合は、制御回路28がスピーカ33を通じた案内音声報知を行わない構成とすることで、案内音声報知の効果が高められている。
【0048】
(変形例)
上記実施例1では、ドライバーに注意を促すために、音声駆動回路24Aにより案内音声(例えば「前進します。」、「後退します。」)がスピーカ33を通じて出力されるように構成されていたが、これに加えて、例えば図4(b)に示すように、案内音声が出力される前に注意音(例えば「ポーン」、「チリン」等の電子音)が出力される構成としてもよい。これによれば、ドライバーに対して注意をより効果的に促すことができる。
【0049】
なお、上記実施例1では、音声報知手段としてのブザー31,32と、案内音声報知手段としてのスピーカ32とを別々に構成したが、音声報知手段と案内音声報知手段とは同一の報知手段(例えばスピーカ)で構成することができる。
【0050】
また、障害物検出センサは、超音波を検出波とするものに限らず、例えば電磁波を検出波として利用するものでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 障害物検出装置(車両用障害物検出装置)
10(10a〜10f) 超音波センサ(障害物検出センサ、演算手段)
20 ECU
28 制御回路(制御手段)
31,32 ブザー(音声報知手段)
33 スピーカ(案内音声報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の異なる周辺部位に配置され、発射波を発信し障害物で反射した反射波を受信する複数の障害物検出センサと、前記各障害物検出センサの送受信に基づいて障害物までの距離を算出する演算手段と、前記演算手段により算出された距離に基づいて障害物までの距離が設定値以下となったとき該障害物までの距離に応じて異なる吹鳴態様の音声を出力する音声報知手段と、障害物までの距離が設定値以下となったとき障害物の位置する方向を音声でアナウンス可能な案内音声報知手段と、前記音声報知手段及び前記案内音声報知手段をそれぞれ制御可能な制御手段とを備え、
前記障害物検出センサは、チェンジレバーのシフト位置がパーキング位置以外にあることを条件として作動するように設定され、
前記制御手段は、前記チェンジレバーが前記パーキング位置から該パーキング位置以外のシフト位置に切り替えられたタイミングで、切り替え後のシフト位置に対応した車両の動き出す方向にて障害物までの距離が設定値以下であるとき、前記音声報知手段を通じた音声報知を行う前に、前記案内音声報知手段を通じて車両の動き出す方向を示す案内音声報知を行うことを特徴とする車両用障害物検出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記チェンジレバーが前記パーキング位置から前進位置に切り替えられたときに車両の前進方向にて障害物までの距離が設定値以下であるときは、前記案内音声報知として車両が前進する旨の報知を行う一方で、前記チェンジレバーが前記パーキング位置から後退位置に切り替えられたときに車両の後退方向にて障害物までの距離が設定値以下であるときは、前記案内音声報知として車両が後退する旨の報知を行う請求項1に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記障害物検出センサにより障害物が検出されない状態から車両の動作に伴って障害物が検出されるに至った場合は、前記案内音声報知を行わない請求項1又は2に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記チェンジレバーの操作によるシフト位置の変更に伴い、メータに設けられたシフト位置を表示する表示灯を点滅制御する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149974(P2012−149974A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8449(P2011−8449)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】