説明

車両用障害物検知装置

【課題】地面による反射波の影響を受けにくい車両用障害物検知装置を提供する。
【解決手段】車両用障害物検知装置は、超音波を送受波するセンサ1と、センサ1に超音波を送波させるとともに、センサ1が受波した反射波の振幅と閾値とを比較することにより障害物の有無を判断するコントローラ2とを備える。コントローラ2は、センサ1による送波からの時間を計時するタイマ26と、タイマ26が計時する時間に応じて閾値を設定する閾値設定部27とを備える。閾値設定部27は、地面9からの反射波を考慮しない場合の閾値に、検知期間を開始する時刻における地面9からの反射波の影響を除去するための補正値を加えた閾値を設定し、障害物の有無を判断する検知期間内においてタイマ26の計時する時間が経過するにつれて段階的に閾値を小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波または超音波を用いて車両の周囲の障害物を検知する車両用障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、音波または超音波を用いて車両の周囲における障害物を検知する車両用障害物検知装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、超音波を送受波するセンサを用いて、車両の周囲の障害物を検知することにより車両の駐車を支援する車両用障害物検知装置が記載されている。特許文献1に記載された車両用障害物検知装置は、センサから送信波を送波するとともに、障害物で反射された反射波を受波し、センサにおける送信波の送波から受波までの時間に基づいて、車両周囲の障害物を検知している。一般に、このような車両用障害物検知装置のセンサにはピエゾ素子が用いられている。
【0003】
上記の車両用障害物検知装置のセンサが送波する送信波は、センサから遠ざかるにつれて広がりながら伝播する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/119577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用障害物検知装置において、車両の周囲において地面から車両の高さの範囲に存在する障害物を検知するような位置や角度に取り付けた場合、送信波は地面によっても反射され、センサが地面による反射波も受波してしまう。これにより、車両用障害物検知装置は、センサが受波する地面からの反射波の影響によって、障害物が存在しない場合であっても障害物が存在すると検知してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は上記の事由に鑑みて為されたものであり、地面による反射波の影響を受けにくい車両用障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用障害物検知装置は、送信波を間欠的に送波するとともに送信波の反射波を受波するセンサと、センサに送信波を送波させる送波信号を出力する機能、およびセンサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに送波信号の発生からセンサによる反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する機能を有したコントローラとを備え、コントローラは、閾値を障害物の検知開始からの経過時間に応じて小さくする閾値設定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、地面による反射波の影響を受けにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上を設けた車両と検知範囲との関係を示す図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の電源電圧値と閾値との関係を示す図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の車両用障害物検知装置は、図1に示すように、ピエゾ素子を有し超音波を送受波するセンサ1と、センサ1に送信波を送波させるとともに、反射波の受波によりセンサ1が出力するセンサ信号を用いて障害物の有無を判断するコントローラ2とを備える。車両用障害物検知装置は、図2に示すように、車両10の前後端の少なくとも一方にセンサ1が設けられ、車両10の周囲に存在する障害物を検知する。以下では、センサ1が車両10の前側に設けられ、車両10の前方に検知範囲A1が設定されている場合を例として説明する。
【0011】
本実施形態のコントローラ2は、図1に示すように、マイコン24を備え車両10の各部の電子制御を行うECU(Electric Control Unit)の一部として構成される。コントローラ2は、車載のバッテリ3から電源が供給される。コントローラ2は、マイコン24に加えてセンサ1を駆動して送信波を送波させる送波回路21を備える。さらに、コントローラ2は、センサ信号から送信波の周波数を含む所定周波数帯域の信号を受波信号として抽出する受波回路22と、受波信号の包絡線成分に相当する検波信号を出力する検波回路23とを備える。マイコン24には、安定化電源回路からなる電源回路25を通して電源が供給される。
【0012】
次に、車両用障害物検知装置の基本的動作について説明する。車両用障害物検知装置が動作を開始すると、マイコン24は、図3(a)に示すように、一定周期の矩形波であるパルス信号を送波回路21に対して間欠的に出力する。1つのパルス信号はセンサ1から出力する超音波の周期を有する矩形波を数周期だけ含んでいる。このパルス信号が送波回路21に入力されると、図3(b)のように、送波回路21はバッテリ3から供給された電源電圧に応じた振幅の送波信号を出力する。センサ1は、この送波信号で駆動され送波信号の振幅に応じた音圧の超音波を間欠的に出力する。
【0013】
一方、受波回路22には、送波回路21から回り込んだ送波信号、センサ1の残響で生じる信号が入力される。また、センサ1が反射波を受波したときには、反射波による信号も入力される。したがって、受波回路22は、図3(c)に示すような受波信号を出力する。さらに、検波回路23は、図3(d)のように、受波信号の包絡線成分に相当する電圧値を有する検波信号を出力する。マイコン24は、検波信号の信号レベルが所定の閾値Th以上であるとき、パルス信号の発生から検波信号の検出までの時間を評価して障害物の有無を検出する。
【0014】
いま、図3に示す時刻t1においてマイコン24からパルス信号が入力され、時刻t2において検波信号が得られたと仮定する。図示例では、検波信号として残響を含む成分232と反射波による成分231とが得られている。マイコン24は、パルス信号を時刻t1に出力した後の規定時刻tsから開始される期間を、障害物の有無を判断する検知期間とし、検知期間内の検波信号を用いて障害物の有無を判断する。この検知期間により上述した検知範囲A1が定められる。
【0015】
車両用障害物検知装置のセンサ1は、図2に示すように、検知範囲A1が地面9から車両10の高さの範囲になるように車両10に取り付けられている。センサ1が送波する送信波は、センサ1から遠ざかるにつれて広がりながら伝播する。そのため、センサ1は、送信波が地面9によって反射された反射波も受波する。地面9からの反射波の影響は、障害物との距離が近いほど大きくなる。
【0016】
そこで、本実施形態では、検波信号に対する閾値を障害物までの距離に応じて変化させている。具体的には、3つの閾値Th1,Th2,Th3が用いられる。閾値Th1は、検知期間内における最初の閾値として設定される。閾値Th1は、地面9からの反射波を考慮しない場合の基準の閾値Th0に、検知期間を開始する時刻tsにおける地面9からの反射波の影響を除去するための補正値を加えた閾値が設定される。本実施形態の閾値は、検知期間内における時間の経過に伴って閾値Th1から閾値Th2、Th3と段階的に変更される。つまり、補正値は、閾値Th1に比べ閾値Th2のほうが小さく、閾値Th2に比べ閾値Th3のほうが小さい。ここに、閾値Th1は、閾値Th2に比べて大きく設定され、閾値Th2は、閾値Th3に比べて大きく設定される(Th1>Th2>Th3、図5参照)。なお、図5は、信号レベルの大きさを下向きに表してあり、検波信号の電圧値(絶対値)が大きいほど下側になるように表現している。図3(d)も同様である。
【0017】
マイコン24は、時間を計時するタイマ26を備える。また、マイコン24は、タイマ26が計時する時間に応じて閾値を設定する閾値設定部27としての機能を有する。閾値設定部27は、マイコン24が所定のプログラムを実行することにより実現される。本実施形態のタイマ26は、マイコン24がパルス信号の出力した時刻t1からの時間を計時する。閾値設定部27は、タイマ26が計時する時間に応じて閾値Th1,Th2,Th3のいずれかを閾値として選択する。つまり、閾値設定部27は、タイマ26が計時する時間に基づいて、閾値を段階的に変化させる。
【0018】
閾値設定部27は、図4に示すように、タイマ26が計時する時間が予め設定された時間tc1に達するまで、閾値を設定しない。本実施形態においてtc1は、マイコン24がパルス信号の出力した時刻t1から検知期間の開始時刻である時刻tsまでの時間が設定される。閾値設定部27は、タイマ26が計時する時間が時間tc1以上で時間tc2(>tc1)未満の間、閾値をTh1に設定する。また、閾値設定部27は、タイマ26が計時する時間が時間tc2以上で時間tc3(>tc2)未満の間、閾値をTh2に設定する。さらにまた、閾値設定部27は、タイマ26が計時する時間が時間tc3以上で時間tc4(>tc3)未満の間、閾値をTh3に設定する。
【0019】
上述したように、近距離の障害物を検知する場合のほうが、遠距離の障害物を検知する場合に比べ、地面9の反射波の影響が大きい。そのため、マイコン24は、検知期間の開始時刻tsからタイマ26が計時する時間が経過するにつれて閾値を段階的に小さくすることにより、近距離の障害物に対しては大きな閾値を用い、遠距離の障害物に対しては小さい閾値を用いて、障害物の有無の判断を行う。
【0020】
このように、検知期間においてタイマ26が計時する時間の経過に応じて、地面9からの反射波による検波信号の信号レベルを加えた閾値を設定して障害物の検知を行うことにより、車両用障害物検知装置は地面9による反射波の影響を受けにくくなる。つまり、車両用障害物検知装置は、障害物が存在しない場合に障害物が存在すると誤検知する可能性を低下させることができる。
【0021】
上記したマイコン21の動作を図6にまとめて示す。
【0022】
車両用障害物検知装置の動作が開始されると、マイコン24は、タイマ26を初期化する(S10)。次に、マイコン24は、パルス信号を出力し、センサ1から送信波を送波させる(S11)とともに、タイマ26を始動させ(S12)、タイマ26に時間tの計時を開始させる。
【0023】
マイコン24は、時間tが時間t1になるまで、閾値を設定しない(S13のYes)。マイコン24は、時間tが時間tc1以上で時間tc2未満の間(S14のYes)、閾値をTh1に設定する(S17)。また、マイコン24は、時間tが時間tc2以上で時間tc3未満の間(S15のYes)、閾値をTh2に設定する(S18)。さらにまた、マイコン24は、時間tが時間tc3以上で時間tc4未満の間(S16のYes)、閾値をTh3に設定する(S19)。閾値を設定した後、マイコン24は、反射波に対応する検波信号の信号レベルが閾値以上であると(S20のYes)、障害物が存在すると判断し、報知動作を行う(S21)。報知動作は、例えばブザーなどを用いて聴覚的に行ったり、報知灯により視覚的に行う。マイコン24は、時間tが時間tc4になるまで、上述した動作を繰り返す。
【0024】
その後、マイコン24は、時間tが時間tc4になると(S16のNo)、次の送波タイミングまで待って(S22)、タイマ26を初期化する(S10)。
【0025】
なお、本実施形態においては、超音波を送受波するセンサ1を用いたが、センサとしては可聴域の音波を送受波するセンサを用いてもよい。また、本実施形態において、閾値Th1,Th2,Th3を3段階に変更しているが、閾値の段数は適宜に選択される。さらに、閾値は、連続的に変更してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 センサ
2 コントローラ
27 閾値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を間欠的に送波するとともに前記送信波の反射波を受波するセンサと、前記センサに前記送信波を送波させる送波信号を出力する機能、および前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する機能を有したコントローラとを備え、前記コントローラは、前記閾値を障害物の検知開始からの経過時間に応じて小さくする閾値設定部を備えることを特徴とする車両用障害物検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108857(P2013−108857A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254463(P2011−254463)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】