説明

車両用電源装置

【課題】車両の蓄電池と車両外部の電源部との電力授受を行う際に、導通式あるいは非接触式のいずれかを使い分けることのできるものにおいて、電力変換装置を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される蓄電池10と、車両外部の電源部212、222との間で電力授受を行う車両用電源装置において、導通電力授受手段50に設けられて、蓄電池10および電源部212間の電力変換を行う導通電力授受用の電力変換部42と、非接触電力授受手段60に設けられて、蓄電池10および電源部222間の電力変換を行う非接触電力授受用の電力変換部42とが、1つの共通電力変換部42として設定されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される蓄電池と、車両外部の電源部との間で電力の授受を行う車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用電源装置として、例えば特許文献1に示されたものが知られている。特許文献1の車両用電源装置(システム)は、車両に搭載された蓄電部と住宅電源とが電気的に接続された状態で電力の授受を行う導通充電手段と、蓄電部と車両外部の誘導充電型充電器とが磁気的に結合された状態で電力の授受を行う誘導充電手段との、2つの充電手段を備えている。
【0003】
導通充電手段においては、コネクタによって住宅電源と車両とが接続されると、住宅電源からの商用交流電力は、インバータによって直流電力に変換されて、蓄電部に充電されるようになっている。また、誘導充電手段においては、誘導充電型充電器のパドルに自己誘導起電力が誘起され、これによって車両側のポートに相互誘導起電力が誘起され、ポートに誘起された電圧が整流回路によって直流電圧に整流されて、蓄電部に充電されるようになっている。このように、特許文献1では、導通式あるいは誘導式による2種類の充電が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−220130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、導通充電手段において電力変換用のインバータを設けており、また、誘導充電手段において電力変換(整流)用の整流回路を設けている。即ち、各充電手段に1つずつの電力変換装置を設けるようにしているので、装置全体としての大型化を招き、車載時のスペースを大きく必要とすると共に、重量増、コスト増を招くという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の蓄電池と車両外部の電源部との電力授受を行う際に、導通式あるいは非接触式のいずれかを使い分けることのできるものにおいて、電力変換装置を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、車両に搭載される蓄電池(10)と、車両外部の電源部(212、222)との間で電力授受を行う車両用電源装置において、
蓄電池(10)と電源部(212)との間を電気的に接続した状態で電力授受を行う導通電力授受手段(50)と、
蓄電池(10)と電源部(222)との間を磁気的に結合した状態で電力授受を行う非接触電力授受手段(60)とを備え、
導通電力授受手段(50)に設けられて、蓄電池(10)および電源部(212)間の電力変換を行う導通電力授受用の電力変換部(42)と、
非接触電力授受手段(60)に設けられて、蓄電池(10)および電源部(222)間の電力変換を行う非接触電力授受用の電力変換部(42)とは、1つの共通電力変換部(42)として設定されたことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、前述した特許文献1のように各充電手段に1つずつの電力変換装置を設けるものに比較して、1つの共通電力変換部(42)での対応を可能とすることができるので、電力変換部(42)を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置100とすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、共通電力変換部(42)は、電源部(212、222)から蓄電池(10)への電力変換、および蓄電池(10)から電源部(212、222)への電力変換の双方を可能とすることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、電源部(212、222)から蓄電池(10)への充電に加えて、電源部(212、222)側で電力が必要とされるときに、車両の蓄電池(10)から電源部(212、222)への放電も可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、車両は、蓄電池(10)の電力の形態を変換する電動機用電力変換部(42)と、
電動機用電力変換部(42)によって変換された電力によって駆動する電動機部(43)とを備え、
共通電力変換部(42)は、電動機用電力変換部(42)と共用されたことを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、車両に搭載される電動機用電力変換部(42)を活用することで、導通電力授受手段(50)、および非接触電力授受手段(60)における電力変換部(42)を新たに設定する必要がないので、更に、電力変換部を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置(100)とすることができる。
【0014】
ここで、前述した特許文献1の車両用電源装置には、インダクティブチャージ選択スイッチが設けられており、充電を実施するに際して、ユーザは導通式および誘導式のうち、誘導式を行う際には、選択スイッチを押して誘導式を実施する要求を入力するようにしている。この場合は、ユーザの手間が増え、使い勝手の面が良くないという問題があった。
【0015】
よって、この使い勝手を向上させるために、請求項4に記載の発明では、導通電力授受手段(50)、および非接触電力授受手段(60)の作動を制御する制御部(70)を備え、
制御部(70)は、非接触電力授受手段(60)を作動させているときに、導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることを検知すると、非接触電力授受手段(60)の作動を停止させると共に、導通電力授受手段(50)による蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続を検知すると、導通電力授受手段(50)を作動させることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、ユーザが選択スイッチ等でいちいち充電方式を選択しなくても、制御部(70)によって、導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることが検知されれば、自動的に非接触電力授受手段(60)による電力授受から導通電力授受手段(50)による電力授受に切替えられるので、使い勝手の良い車両用電源装置(100)とすることができる。
【0017】
更に、請求項4に記載の発明に対して、請求項5に記載の発明では、制御部(70)は、導通電力授受手段(50)を作動させているときに、導通電力授受手段(50)による蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続の解除を検知すると、導通電力授受手段(50)の作動を停止させ、非接触電力授受手段(60)を作動させることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、ユーザが選択スイッチ等でいちいち充電方式を選択しなくても、制御部(70)によって、導通電力授受手段(50)による蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続の解除が検知されれば、自動的に導通電力授受手段(50)による電力授受から非接触電力授受手段(60)による電力授受に切替えられるので、使い勝手の良い車両用電源装置(100)とすることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、車両には、導通電力授受手段(50)、および非接触電力授受手段(60)の作動状態を表示する表示部(90)が設けられており、
制御部(70)は、導通電力授受手段(50)、あるいは非接触電力授受手段(60)の作動を制御しているときに、導通電力授受手段(50)、あるいは非接触電力授受手段(60)のいずれが作動状態にあるかを表示部(90)に表示することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、充電時において、ユーザは表示部(90)によって、いずれの充電方式で充電が成されているかを容易に認識することができる。よって、例えばユーザが導通電力授受手段(50)を用いた充電を実施しており、この充電が完了した後に、車両と電源部(212)とを接続したまま、車両を作動させてしまうような事態を防止することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、車両に搭載される蓄電池(10)と、車両外部の電源部(212、222)との間で電力授受を行う車両用電源装置において、
蓄電池(10)と電源部(212)との間を電気的に接続した状態で電力授受を行う導通電力授受手段(50)と、
蓄電池(10)と電源部(222)との間を磁気的に結合した状態で電力授受を行う非接触電力授受手段(60)と、
導通電力授受手段(50)、および非接触電力授受手段(60)の作動を制御する制御部(70)とを備え、
制御部(70)は、非接触電力授受手段(60)を作動させているときに、導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることを検知すると、非接触電力授受手段(60)の作動を停止させると共に、導通電力授受手段(50)による蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続を検知すると、導通電力授受手段(50)を作動させることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、請求項4に記載の発明と同様に、ユーザが選択スイッチ等でいちいち充電方式を選択しなくても、制御部(70)によって、導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることが検知されれば、自動的に非接触電力授受手段(60)による電力授受から導通電力授受手段(50)による電力授受に切替えられるので、使い勝手の良い車両用電源装置(100)とすることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、制御部(70)は、導通電力授受手段(50)を作動させているときに、導通電力授受手段(50)による記蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続の解除を検知すると、導通電力授受手段(50)の作動を停止させ、非接触電力授受手段(60)を作動させることを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、請求項5に記載の発明と同様に、ユーザが選択スイッチ等でいちいち充電方式を選択しなくても、制御部(70)によって、導通電力授受手段(50)による蓄電池(10)と電源部(212)との間の電気的接続の解除が検知されれば、自動的に導通電力授受手段(50)による電力授受から非接触電力授受手段(60)による電力授受に切替えられるので、使い勝手の良い車両用電源装置(100)とすることができる。
【0025】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態における車両用電源装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態における車両用電源装置を示す詳細構成図である。
【図3】第1実施形態において、充電制御装置が行う導通電力授受装置と非接触電力授受装置との切り替え要領を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における車両用電源装置を示す詳細構成図である。
【図5】第3実施形態における表示部を示す正面図である。
【図6】第4実施形態における車両用電源装置を示す概略構成図である。
【図7】第4実施形態における車両用電源装置を示す詳細構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる車両用電源装置100をハイブリッド車両に適用した場合の第1実施形態について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0029】
図1、図2に示すように、車両には、高電圧バッテリ10、主機ユニット20、電動パワステユニット30、および空調ユニット40が搭載されており、高電圧バッテリ10の電力を基にして各ユニット20、30、40が駆動されるようになっている。各ユニット20、30、40の作動は、車両制御装置80によって制御されるようになっている。そして、車両用電源装置100は、高電圧バッテリ10と、車両外部に設けられた外部電源212、222(各充電器210、220)との間で電力の授受を行う装置であり、導通電力授受装置50、非接触電力授受装置60、および充電制御装置70を備えている。
【0030】
まず、高電圧バッテリ10、各ユニット20、30、40、および車両制御装置80について説明する。
【0031】
高電圧バッテリ10は、車載高電圧システムを構成する直流用の蓄電池であり、その端子電圧が高圧(例えば百V以上)となるように設定されている。高電圧バッテリ10は、充放電可能に構成された二次電池であり、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等が使用されている。高電圧バッテリ10には、負荷として、主機ユニット20、電動パワステユニット30、および空調ユニット40が接続されている。
【0032】
高電圧バッテリ10の一方の端子(ここでは、正極を例示)には、リレー11を介して負荷が接続されており、また、他方の端子(ここでは、負極を例示)には、高抵抗リレー12および抵抗体13と、低抵抗リレー14との並列接続体を介して負荷が接続されている。
【0033】
主機ユニット20は、車両における走行用の駆動源、および発電部となるユニットであり、コンデンサ21、主機用インバータ22、主機用モータジェネレータ23、および車両制御装置80を備えている。
【0034】
コンデンサ21は、高電圧バッテリ10から出力される電力、あるいは主機用モータジェネレータ23から出力される回生電力に含まれる変動成分を低減する蓄電部である。
【0035】
主機用インバータ22は、高電圧バッテリ10と主機用モータジェネレータ23との間において電力形態の変換および電力量を調整する電力変換部である。つまり、主機用インバータ22は、高電圧バッテリ10の直流電力を交流電力に変換(DC/AC変換)すると共に、主機用モータジェネレータ23に必要とされる電力量を調整するようになっている。あるいは、主機用インバータ22は、減速時において車両の駆動輪からの駆動力によって、主機用モータジェネレータ23が回転駆動されることで交流の回生電力が得られたときには、交流の回生電力を直流電力に変換(AC/DC変換)して高電圧バッテリ10に供給(充電)するようになっている。このように、主機用インバータ22は、双方向の電力変換が可能となっている。
【0036】
主機用インバータ22は、詳細には、高電位側のスイッチング素子22aと、低電位側のスイッチング素子22cとの直列接続体を3対備えている。また、高電位側のスイッチング素子22aには逆並列にフリーホイールダイオード22bが接続されており、低電位側のスイッチング素子22cには、逆並列にフリーホイールダイオード22dが接続されている。尚、図2では、スイッチング素子22a、22cとして、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を例示している。各スイッチング素子22a、22cの開閉切替えは、車両用制御装置80によって制御されるようになっており、上記のような高電圧バッテリ10と主機用モータジェネレータ23との間における電力変換および電力量調整が可能となっている。
【0037】
尚、車両用制御装置80は、車載高電圧システムから絶縁された車載低電圧システムを構成しており、端子電圧が低い(例えば数V〜十数V)低電圧バッテリを直接の電源とする。この低電圧バッテリは、高電圧バッテリ10を電力供給源としており、高電圧バッテリ10の電圧がDC/DCコンバータによって降下されて、降下された出力電圧が引加されるようになっている。
【0038】
主機用モータジェネレータ23は、電動機および発電機の両機能を有する3相交流の回転電機である。主機用モータジェネレータ23の回転軸の一方の端部は、内燃機関の出力軸(クランク軸)に直結されており、他方の端部は、変速装置を介して駆動輪に機械的に連結されている。主機用モータジェネレータ23は、上記の主機用インバータ22に接続されて、主機用インバータ22によって作動制御されるようになっている。つまり、主機用モータジェネレータ23は、主機用インバータ22によって電力変換および電力調整された電量が供給されると、回転数および駆動トルクが制御されて、駆動輪に必要とされる駆動力を与える電動機(走行用駆動源)として機能する。あるいは、主機用モータジェネレータ23は、減速時において駆動輪からの駆動力によって回転駆動されると、交流の回生電力を発生する発電機として機能する。
【0039】
電動パワステユニット30は、パワステ用モータ33の駆動力によって、車両におけるステアリングの操作力を軽減するユニットであり、コンデンサ31、パワステ用インバータ32、パワステ用モータ33、および車両制御装置80を備えている。
【0040】
コンデンサ31は、高電圧バッテリ10から出力される電力に含まれる変動成分を低減する蓄電部である。
【0041】
パワステ用インバータ32は、高電圧バッテリ10とパワステ用モータ33との間において電力形態の変換および電力量を調整する電力変換部である。つまり、パワステ用インバータ32は、高電圧バッテリ10の直流電力を交流電力に変換(DC/AC変換)すると共に、パワステ用モータ33に必要とされる電力量を調整するようになっている。
【0042】
パワステ用インバータ32は、主機用インバータ22と同様に、高電位側のスイッチング素子32aと、低電位側のスイッチング素子32cとの直列接続体を3対備えている。また、高電位側のスイッチング素子32aには逆並列にフリーホイールダイオード32bが接続されており、低電位側のスイッチング素子32cには、逆並列にフリーホイールダイオード32dが接続されている。尚、図2では、スイッチング素子32a、32cとして、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を例示している。各スイッチング素子32a、32cの開閉切替えは、車両用制御装置80によって制御されるようになっており、上記のような高電圧バッテリ10とパワステ用モータ33との間における電力変換および電力量調整が可能となっている。
【0043】
パワステ用モータ33は、3相交流の電動機である。パワステ用モータ33の回転軸は、ステアリングの主軸にギア機構等を介して連結されている。パワステ用モータ33は、上記のパワステ用インバータ32に接続されて、パワステ用インバータ32によって作動制御されるようになっている。つまり、パワステ用モータ33は、パワステ用インバータ32によって電力変換および電力調整された電量が供給されると、回転数および駆動トルクが制御されて、ステアリングの主軸に必要とされる駆動力を付加(アシスト)するようになっている。
【0044】
空調ユニット40は、空調用モータ43の駆動力によって、冷凍サイクル内の圧縮機を駆動すると共に、冷凍サイクル内の蒸発器、およびエンジン冷却水を加熱源とするヒータコアを用いた空調空気の温度調整を行うユニットであり、コンデンサ41、空調用インバータ42、空調用モータ43、および車両制御装置80を備えている。
【0045】
コンデンサ41は、高電圧バッテリ10から出力される電力に含まれる変動成分を低減する蓄電部である。
【0046】
空調用インバータ42は、高電圧バッテリ10と空調用モータ43との間において電力形態の変換および電力量を調整する電動機用電力変換部である。つまり、空調用インバータ42は、高電圧バッテリ10の直流電力を交流電力に変換(DC/AC変換)すると共に、空調用モータ43に必要とされる電力量を調整するようになっている。あるいは、後述するように、外部電源210、220からの商用交流電力を直流電力に変換(AC/DC変換)して高電圧バッテリ10に供給(充電)するようになっている。このように、空調用インバータ42は、双方向の電力変換が可能となっている。
【0047】
空調用インバータ42は、主機用インバータ22と同様に、高電位側のスイッチング素子42aと、低電位側のスイッチング素子42cとの直列接続体を3対備えている。また、高電位側のスイッチング素子42aには逆並列にフリーホイールダイオード42bが接続されており、低電位側のスイッチング素子42cには、逆並列にフリーホイールダイオード42dが接続されている。尚、図2では、スイッチング素子42a、42cとして、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を例示している。各スイッチング素子42a、42cの開閉切替えは、車両用制御装置80によって制御されるようになっており、上記のような高電圧バッテリ10と空調用モータ43との間における電力変換および電力量調整が可能となっている。
【0048】
空調用モータ43は、3相交流の電動機である。空調用モータ43の回転軸は、圧縮機の主軸に連結されている。空調用モータ43は、上記の空調用インバータ42に接続されて、空調用インバータ42によって作動制御されるようになっている。つまり、空調用モータ43は、空調用インバータ42によって電力変換および電力調整された電量が供給されると、回転数および駆動トルクが制御されて、圧縮機の主軸に必要とされる駆動力を付加するようになっている。
【0049】
そして、空調用モータ43のU相、V相、W相のコイルに対応する各端子と、空調用インバータ42の各出力端子とを結ぶ各電気線には、リレー44がそれぞれ設けられている。リレー44は、各電気線を開閉する開閉手段であり、空調用インバータ42を介して外部電源212、222と高電圧バッテリ10との間で電力の授受がなされる際に、この電力が空調用モータ43に流れ込むことを阻止するためのものである。リレー44の開閉作動は、充電制御装置70によって制御されるようになっている。
【0050】
次に、車両用電源装置100における導通電力授受装置50、非接触電力授受装置60、および充電制御装置70について説明する。
【0051】
導通電力授受装置50は、高電圧バッテリ10と導通充電型充電器210(外部電源212)との間で電気的に接続された状態で電力の授受を行う導通電力授受手段である。ここで言う電力の授受とは、高電圧バッテリ10に対する外部電源212からの充電、あるいは外部電源212に対する高電圧バッテリ10からの放電を意味する。導通電力授受装置50は、上記各インバータ22、32、42のうち、例えば空調用インバータ42を共通電力変換部として共用しており、空調用インバータ42、車両側コネクタ51、電力授受用電気経路52、リアクトル53、コンデンサ54、およびリレー55等より構成されている。
【0052】
コネクタ51は、導通充電型充電器210(充電器側コネクタ211)との直接の電気的接続を行う車両側接続部であり、外部電源212の型式に応じて、商用単相交流電源(100V)、あるいは商用3相交流電源(200V)に対応可能なように形成されている。車両の前方(例えばボンネットの前方中央位置)、あるいは後ろ側方(例えば給油口の反対側となる側方位置)のボディ表面には開口部が形成されており、この開口部から内側となる所定空間内にコネクタ51は収容されている。そして、開口部には、この開口部を開閉する充電リッド(充電用蓋)が設けられている。充電リッドを開くと、ユーザは外部からコネクタ51と対峙することができるようになっている。
【0053】
コネクタ51には、2本あるいは3本の電力授受用電気経路52の一端側が接続されており、電力授受用電気経路52の他端側は、空調用インバータ42の各出力端子と、空調用モータ43の各コイルの端子との間に結線されている。そして、各電力授受用電気経路52には、コネクタ51側から空調用インバータ42側に向けて、リアクトル53、コンデンサ54、およびリレー55が設けられている。
【0054】
リアクトル53は、エネルギを蓄える充電用の巻線であり、コンデンサ53は、充電時の電力に含まれる変動成分を低減する蓄電部である。リレー55は、各電力授受用電気経路52を開閉する開閉手段であり、空調用インバータ42が空調用モータ43の作動制御を行っている際に、空調用インバータ42と、外部電源212とが電気的に接続される事態を回避するためのものである。リレー55の開閉作動は、充電制御装置70によって制御されるようになっている。
【0055】
尚、導通充電型充電器210は、例えば住宅、あるいは充電ステーションにおける電源、つまり車両にとって外部となる外部電源212から充電器側コネクタ211を延設した充電器である。外部電源212としては、例えば住宅、あるいは充電ステーションの商用単相交流電源(100V)、あるいは商用3相交流電源(200V)が使用される。充電器側コネクタ211は、車両側コネクタ51に対して接続および分離が可能となっている。外部電源212は、本発明の電源部に対応する。
【0056】
非接触電力授受装置60は、高電圧バッテリ10と非接触充電型充電器220(外部電源222)との間で磁気的に結合された状態、つまり電磁誘導あるいは磁気共鳴によって電力の授受を行う非接触電力授受手段である。ここで言う電力の授受とは、高電圧バッテリ10に対する外部電源222からの充電、あるいは外部電源222に対する高電圧バッテリ10からの放電を意味する。非接触電力授受装置60は、導通電力授受装置50と同様に、上記各インバータ22、32、42のうち、例えば空調用インバータ42を共通電力変換部として共用しており、空調用インバータ42、ポート61、電力授受用電気経路62、コンデンサ63、およびリレー64等より構成されている。
【0057】
ポート61は、非接触充電型充電器220のパドル221と共にトランス(2次側トランス)を形成し、非接触充電型充電器220(パドル221)との磁気的な結合を行うものである。ポート61には、2本の電力授受用電気経路62の一端側が接続されており、電力授受用電気経路62の他端側は、空調用インバータ42の3つ出力端子のうちの2つと、これに対応する空調用モータ43のコイルの端子との間に結線されている。そして、各電力授受用電気経路62には、ポート61側から空調用インバータ42側に向けて、コンデンサ63、およびリレー64が設けられている。
【0058】
コンデンサ63は、充電時の電力に含まれる変動成分を低減する蓄電部である。リレー64は、各電力授受用電気経路62を開閉する開閉手段であり、空調用インバータ42が空調用モータ43の作動制御を行っている際に、空調用インバータ42と、外部電源222とが電気的に接続される事態を回避するためのものである。リレー64の開閉作動は、充電制御装置70によって制御されるようになっている。
【0059】
尚、非接触充電型充電器220は、例えば充電ステーションにおける電源、つまり車両にとって外部となる外部電源222から整流回路223、高周波インバータ224、コンデンサ225を介してパドル221が接続された充電器である。外部電源222は、本発明の電源部に対応する。パドル221は、非接触電力授受装置60のポート61と共にトランス(1次側トランス)を形成する。外部電源222から整流回路223、高周波インバータ224、コンデンサ225を介してパドル221に電流が流れると、パドル221には起電力(自己誘導起電力)が誘起され、さらに、トランスの2次側を形成するポート61には起電力(相互誘導起電力)が誘起されるようになっている。
【0060】
充電制御装置70は、導通電力授受装置50と導通充電型充電器210とによって、あるいは非接触電力授受装置60と非接触充電型充電器220とによって高電圧バッテリ10に充電する際に(あるいは、高電圧バッテリ10から放電させる際に)、導通電力授受装置50、あるいは非接触電力授受装置60の作動を制御する制御部である。
【0061】
充電制御装置70は、高電圧バッテリ10の充電(放電)の際に、リレー44、55、64の開閉、および空調用インバータ42の各スイッチング素子42a、42cの開閉(切替え)を行う。また、充電制御装置70は、充電リッドの開閉状態の検知機能、車両ドアの開閉状態の検知機能、車両側コネクタ51と充電器側コネクタ211との接続状態の検知機能、車両が非接触充電型充電器220に近接したときの非接触充電型充電器220有無の検知機能を備えている。
【0062】
次に、本実施形態における作動について、説明する。
【0063】
車両作動時においては、車両制御装置80によって、各インバータ22、32、42が制御され、これに伴い、主機用モータジェネレータ23、パワステ用モータ33、空調用モータ43が、必要とされる回転数、駆動トルクとなるように作動制御される。そして、各ユニット20、30、40の作動が制御されることになる。
【0064】
そして、主機用モータジェネレータ23、パワステ用モータ33、空調用モータ43の使用により、高電圧バッテリ10の蓄電量が低下すると、充電が必要になり、ユーザによって充電が行われることになる。本実施形態の車両用電源装置100では、導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60を備えており、以下の各種状況に応じて、充電制御装置70によって、いずれかの電力授受装置50、60が自動的に選択され、充電の制御がなされるようになっている。以下、図3のフローチャートを用いて、その詳細について説明する。
【0065】
まず、図3のステップS100で、充電制御装置70は、車両側コネクタ51への充電器側コネクタ211の接続の有無を判定する。充電制御装置70は、両コネクタ51、211の接続を検知すれば、例えば、ユーザが自宅、あるいは充電ステーションで導通充電型充電器210を用いた充電要求を持ったことを認識する。以下、導通充電型充電器210を用いた充電を接触充電と呼ぶ。
【0066】
ステップS100で否定判定、つまり車両側コネクタ51へ充電器側コネクタ211は接続されていない判定すると、ステップS110で、充電制御装置70は、例えば無線通信によって非接触充電型充電器220を認識したか否かを判定する。これは、例えば、ユーザが充電のために充電ステーションに車両を乗り入れ、所定の充電位置に停車させると、充電制御装置70は、充電ステーションに設けられた非接触充電型充電器220が車両の近傍にあることを認識する、あるいは、ユーザが車両を充電ステーションに停車させなければ、車両の近傍には非接触充電型充電器220は無いと認識する、とうことである。充電制御装置70は、非接触充電型充電器220の存在を認識すれば、ユーザが非接触充電型充電器220を用いた充電要求を持ったことを認識する。以下、非接触充電型充電器220を用いた充電を非接触充電と呼ぶ。尚、充電制御装置70は、ステップS110で否定判定すると、ステップS100に戻る。
【0067】
ステップS110で肯定判定すると、ステップS120で、充電制御装置70は、充電リッド、および車両ドアが閉じられているか否かを判定する。充電制御装置70は、充電リッドが閉じられていることを検知すれば、ユーザは導通充電型充電器210を用いた充電を行わないことを認識する。また、充電制御装置70は、車両ドアが閉じられていることを検知すれば、ユーザは車外での何らかの作業を行わないことを認識する。充電制御装置70は、ステップS120で否定判定すると、ステップS100に戻る。
【0068】
ステップS120で肯定判定すると、接触充電の可能性がないことから、充電制御装置70は、ステップS130で、非接触充電型充電器220を用いた非接触充電を実施する。このとき、充電制御装置70は、非接触電力授受装置60を作動させる。つまり、リレー44、55を開き、また、リレー64を閉じる。そして、パドル221、およびポート61において起電力を誘起させ、更に、空調用インバータ42の各スイッチング素子42a、42cの切替えを行うことで、外部電源222からの交流電力を直流電力に変換して、高電圧バッテリ10への充電を行う。
【0069】
そして、ステップS140で、非接触充電による充電が完了したか否かを判定する。ここでは、充電制御装置70は、高電圧バッテリ10が満充電となった場合、あるいは、充電システム、ユーザによって設定された充電量に到達した場合に充電が完了したと判定する。充電制御装置70は、ステップS140で充電が完了したと判定すると充電制御を終了させる。また、充電制御装置70は、充電が完了していないと判定するとステップS150に進む。
【0070】
ステップS150では、上記ステップS130を実行する中で、充電制御装置70は、充電リッド、あるいは車両ドアが開かれたか否かを判定する。充電制御装置70は、充電リッドが開かれたことを検知すれば、ユーザは導通充電型充電器210を用いた充電要求を持ったことを認識する。あるいは、充電制御装置70は、車両ドアが開かれたことを検知すれば、ユーザは車外に出て、何らかの作業を行うことを認識する。これら充電リッドが開かれたこと、あるいは車両ドアが開かれたことは、本発明において「導通電力授受手装置50による電力授受の準備段階であること」に対応する。よって、ステップS150で肯定判定すると、充電制御装置70は、次のステップ160において、ステップS130で実施し始めた非接触充電型充電器220を用いた非接触充電を停止させる。非接触充電の停止にあたっては、充電制御装置70は、非接触電力授受装置60の作動を停止させる。つまり、リレー64を開き、空調用インバータ42の各スイッチング素子42a、42cの切替えを停止させる。そして、充電制御装置70は、ステップS100に戻る。尚、ステップS150で否定判定すれば、充電制御装置70は、ステップS130における非接触充電を継続する。
【0071】
一方、ステップS110で、肯定判定、即ち、車両側コネクタ51への充電器側コネクタ211の接続が有ると判定すると、充電制御装置70は、ステップS170で、導通充電型充電器210を用いた接触充電を実施する。このとき、充電制御装置70は、導通電力授受装置50を作動させる。つまり、リレー44、60を開き、また、リレー55を閉じる。そして、空調用インバータ42の各スイッチング素子42a、42cの切替えを行うことで、外部電源212からの交流電力を直流電力に変換して、高電圧バッテリ10への充電を行う。
【0072】
そして、ステップS180で、接触充電による充電が完了したか否かを判定する。充電完了の判定要領は、ステップS140の場合と同様である。充電制御装置70は、ステップS180で充電が完了したと判定すると充電制御を終了させる。また、充電が完了していないと判定するとステップS190に進む。
【0073】
ステップS190では、上記ステップS170を実行する中で、充電制御装置70は、車両側コネクタ51から充電器側コネクタ211が外されたか否かを判定する。充電制御装置70は、車両側コネクタ51から充電器側コネクタ211が外されたことを検知すれば、ユーザは導通充電型充電器210を用いた接触充電を終了したことを認識する。車両側コネクタ51から充電器側コネクタ211が外されたことは、本発明において「導通電力授受装置50による高圧バッテリ10との外部電源212との間の電気的接続が解除されたこと」に対応する。よって、充電制御装置70は、ステップS190で肯定判定すると、ステップS200で、接触充電を停止させる。接触充電の停止にあたっては、充電制御装置70は、導通電力授受装置50の作動を停止させる。つまり、リレー55を開き、空調用インバータ42の各スイッチング素子42a、42cの切替えを停止させる。尚、ステップS190で否定判定すれば、充電制御装置70は、ステップS170の接触充電を継続する。
【0074】
そして、ステップS200で、充電制御装置70は、接触充電を停止させると、再びステップS100に戻り、コネクタ51、211の接続有無(ステップS100)、非接触充電型充電器220の有無(ステップS110)、および非接触充電型充電器220の有無、充電リッド、車両ドアの閉状態を確認して、非接触充電の要求に合致すればステップS130で非接触充電を実施していく。
【0075】
以上のように、本実施形態では、まず、導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60の2つを有する車両用電源装置100において、導通電力授受装置50の電力変換部、および非接触電力授受装置60の電力変換部を、1つの共通電力変換部42として設定しているので、電力変換部を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置100とすることができる。
【0076】
また、共通電力変換部42は、スイッチング素子42a、42c、およびフリーホイールダイオード42b、42dを用いた双方向の電力変換を可能としているので、上記実施形態で説明した高電圧バッテリ10への充電に加えて、住宅や充電ステーション側で電力が必要とされるときに、車両の高電圧バッテリ10から住宅や充電ステーションの外部電源212、222への放電も可能となる。
【0077】
また、共通電力変換部42は、車両に搭載される各種ユニット20、30、40に設けられているインバータ(電力変換部)22、32、42のうち、いずれかと共用されるようにしているので、更に、電力変換部を簡素化して、車載への搭載性、重量面、コスト面に優れる車両用電源装置100とすることができる。
【0078】
また、導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60の2つを有する車両用電源装置100において、図3で説明したように、各種状況に応じて充電制御装置70が、導通電力授受装置50、あるいは非接触電力授受装置60を選択して作動させるようにしているので、ユーザが都度、選択スイッチ等で充電方式の要求設定をする必要がなく、また、誤りがなく、使い勝手の良い車両用電源装置100とすることができる。
【0079】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両用充電装置100Aを図4に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態の導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60における共通電力変換部(空調用インバータ)42を共通電力変換部42Aに変更したものである。
【0080】
共通電力変換部42Aは、整流回路42eと力率改善回路42fを備えている。整流回路42eは、整流用のダイオードを備えた回路であり、外部電源212、222からの交流電力を直流電力に変換(AC/DC変換)するようになっている。整流回路42eでは、第1実施形態の空調用インバータ42におけるスイッチング素子42a、42cは備えておらず、よって、整流回路42eは、外部電源212、222から高電圧バッテリ10へ充電する際の一方向の電力変換を可能としている。共通電力変換部42Aは、充電制御装置70によって制御されるようになっている。尚、力率改善回路42fは、皮相電力に対する実行電力の割合を示す力率を向上させる、つまり力率をできるだけ1に近づけるための回路である。
【0081】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様の充電制御(図3のフローチャート)が可能であり、同様の効果を奏することができる。ただし、共通電力変換部42Aは、一方向(充電時)の電力変換のみが可能であるため、上記第1実施形態のように、高電圧バッテリ10から外部電源212、222側への放電はできない。
【0082】
(第3実施形態)
第3実施形態を図5に示す。第3実施形態は、上記第1、第2実施形態に対して、充電時において、接触充電と非接触充電のいずれが実施されているかをユーザに示すための表示部90を設けたものである。
【0083】
表示部90は、導通電力授受装置50の作動による接触充電を実施中であることを示す有線充電表示部91と、非接触電力授受装置60の作動による非接触充電を実施中であることを示す無線充電表示部92とを備えている。各表示部91、92は、例えば、車両の速度やエンジン回転数を示す車両計器部95や、車両の作動状況を示すモニター画面の中の所定領域に配置されている。有線充電表示部91は、例えば、「有線充電」と表示されたランプとして形成されている。有線充電表示部91は、接触充電が実施されているときに、充電制御装置70によって点灯され、それ以外は消灯される。また、無線充電表示部92は、例えば、「有線充電」と表示されたランプとして形成されている。有線充電表示部91は、非接触充電が実施されているときに、充電制御装置70によって点灯され、それ以外は消灯される。
【0084】
このように、充電時において、ユーザは表示部90によって、いずれの充電方式(接触充電か非接触充電)で充電が成されているかを容易に認識することができる。よって、例えばユーザが接触充電を実施しており、この充電が完了した後に、車両側コネクタ51から充電器側コネクタ211を外すのを忘れたまま(接続したまま)、車両を作動させてしまうような事態を防止することができる。
【0085】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両用充電装置100Bを図6、図7に示す。第4実施形態は、上記第1〜第3実施形態の空調用インバータ42、あるいは共通電力変換部42Aに対して、導通電力授受装置50用の電力変換部421と、非接触電力授受装置60用の電力変換部422とをそれぞれ設けたものである。
【0086】
各電力変換部421、422は、各ユニット20、30、40の各インバータ22、32、42とは独立して設けられている。各電力変換部421、422は、空調用インバータ42のようにスイッチング素子およびフリーホイールダイオードによって、双方向の電力変換可能なもの、あるいは、共通電力変換部42Aのようにダイオードによって一方向のみの電力変換可能なもの等、いずれとしても良い。
【0087】
電力変換部421は、導通電力授受装置50の電力授受用電気経路52に配設されており、外部電源212からの交流電力を直流電力に変換(AC/DC変換)するようになっている。また、電力変換部422は、非接触電力授受装置60の電力授受用電気経路62に配設されており、外部電源222からの交流電力を直流電力に変換(AC/DC変換)するようになっている。各電力変換部421、422は、充電制御装置70によって制御されるようになっている。尚、本実施形態では、空調ユニット40におけるリレー44は、廃止している。
【0088】
車両用電源装置100Bの充電時の作動(充電制御)は、基本的には、第1実施形態の場合(図3のフローチャート)と同じであり、充電制御時における同一の効果を奏することができる。つまり、導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60の2つを有する車両用電源装置100において、図3で説明したように、各種状況に応じて充電制御装置70が、導通電力授受装置50、あるいは非接触電力授受装置60を選択して作動させるようにしているので、ユーザが都度、選択スイッチ等で充電方式の要求設定をする必要がなく、また、誤りがなく、使い勝手の良い車両用電源装置100Bとすることができる。
【0089】
(その他の実施形態)
上記第1実施形態では、空調用インバータ42を導通電力授受装置50、および非接触電力授受装置60の共通電力変換部として使用したが、各ユニット20、30、40の各インバータ22、32、42とは別に共通電力変換部を設定して、使用するようにしても良い。
【0090】
また、上記第4実施形態では、導通電力授受装置50の電力変換部421、および非接触電力授受装置60の電力変換部422を、各ユニット20、30、40の各インバータ22、32、42とは別に設定したが、各ユニット20、30、40の各インバータ22、32、42と共用して、それぞれ、導通電力授受装置50の電力変換部421、および非接触電力授受装置60の電力変換部422としても良い。
【0091】
なお、上記各実施形態では、ポート61、パドル221を用いて特許文献1に記載の誘導方式を例に示したが、この部分を非接触電力として公知技術である、直列あるいは並列共振を伴う複数の誘導コイル、あるいは複数のアンテナを用いた共鳴方式に置き換える構成も可能である。
【符号の説明】
【0092】
100、100A、100B 車両用電源装置
10 高電圧バッテリ(蓄電池)
42 空調用インバータ(電力変換部、共通電力変換部)
43 空調用モータ(電動機部)
50 導通電力授受装置(導通電力授受手段)
60 非接触電力授受装置(非接触電力授受手段)
70 充電制御装置(制御部)
90 表示部
212 外部電源(電源部)
222 外部電源(電源部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電池(10)と、車両外部の電源部(212、222)との間で電力授受を行う車両用電源装置において、
前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間を電気的に接続した状態で電力授受を行う導通電力授受手段(50)と、
前記蓄電池(10)と前記電源部(222)との間を磁気的に結合した状態で電力授受を行う非接触電力授受手段(60)とを備え、
前記導通電力授受手段(50)に設けられて、前記蓄電池(10)および前記電源部(212)間の電力変換を行う導通電力授受用の電力変換部(42)と、
前記非接触電力授受手段(60)に設けられて、前記蓄電池(10)および前記電源部(222)間の電力変換を行う非接触電力授受用の電力変換部(42)とは、1つの共通電力変換部(42)として設定されたことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記共通電力変換部(42)は、前記電源部(212、222)から前記蓄電池(10)への電力変換、および前記蓄電池(10)から前記電源部(212、222)への電力変換の双方を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記車両は、前記蓄電池(10)の電力の形態を変換する電動機用電力変換部(42)と、
前記電動機用電力変換部(42)によって変換された電力によって駆動する電動機部(43)とを備え、
前記共通電力変換部(42)は、前記電動機用電力変換部(42)と共用されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記導通電力授受手段(50)、および前記非接触電力授受手段(60)の作動を制御する制御部(70)を備え、
前記制御部(70)は、前記非接触電力授受手段(60)を作動させているときに、前記導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることを検知すると、前記非接触電力授受手段(60)の作動を停止させると共に、前記導通電力授受手段(50)による前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間の電気的接続を検知すると、前記導通電力授受手段(50)を作動させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記制御部(70)は、前記導通電力授受手段(50)を作動させているときに、前記導通電力授受手段(50)による前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間の電気的接続の解除を検知すると、前記導通電力授受手段(50)の作動を停止させ、前記非接触電力授受手段(60)を作動させることを特徴とする請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記車両には、前記導通電力授受手段(50)、および前記非接触電力授受手段(60)の作動状態を表示する表示部(90)が設けられており、
前記制御部(70)は、前記導通電力授受手段(50)、あるいは前記非接触電力授受手段(60)の作動を制御しているときに、前記導通電力授受手段(50)、あるいは前記非接触電力授受手段(60)のいずれが作動状態にあるかを前記表示部(90)に表示することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
車両に搭載される蓄電池(10)と、車両外部の電源部(212、222)との間で電力授受を行う車両用電源装置において、
前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間を電気的に接続した状態で電力授受を行う導通電力授受手段(50)と、
前記蓄電池(10)と前記電源部(222)との間を磁気的に結合した状態で電力授受を行う非接触電力授受手段(60)と、
前記導通電力授受手段(50)、および前記非接触電力授受手段(60)の作動を制御する制御部(70)とを備え、
前記制御部(70)は、前記非接触電力授受手段(60)を作動させているときに、前記導通電力授受手段(50)による電力授受の準備段階であることを検知すると、前記非接触電力授受手段(60)の作動を停止させると共に、前記導通電力授受手段(50)による前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間の電気的接続を検知すると、前記導通電力授受手段(50)を作動させることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項8】
前記制御部(70)は、前記導通電力授受手段(50)を作動させているときに、前記導通電力授受手段(50)による前記蓄電池(10)と前記電源部(212)との間の電気的接続の解除を検知すると、前記導通電力授受手段(50)の作動を停止させ、前記非接触電力授受手段(60)を作動させることを特徴とする請求項7に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130193(P2012−130193A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280813(P2010−280813)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】