説明

車両用顔画像撮像装置

【課題】運転者が眼鏡を着用している場合にも、運転者の眼球上の輝点を撮像手段で正確に撮像することのできる車両用顔画像撮像装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール13よりも前方側に、運転者mの顔を撮像するCCDカメラ20と、視線方向の検知のために運転者mの眼球27に光を照射する近赤外線LED21を設置する。CCDカメラ20と近赤外線LED21は、鉛直方向と車幅方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置する。この場合の所定距離は、近赤外線LED21の光が眼鏡25上で反射する眼鏡上輝点と、近赤外線LED21の光が眼球27上で反射する眼球上輝点がCCDカメラ20上で重なって映り込まない距離とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されて運転者の視線方向等を検知するために運転者の顔画像を撮像する車両用顔画像撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転中の運転者の挙動を認識するための装置として、顔画像撮像装置を搭載した車両が知られている。この顔画像撮像装置は、運転席に着座した運転者の顔をCCDカメラ等の撮像手段によって撮像し、その撮像画像を解析して運転者の顔の向きや視線方向等を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
引用文献1に記載の顔画像撮像装置は、撮像手段であるカメラと赤外線投光器がカメラアッシーとして一体化され、そのカメラアッシーが、チルト機構を有するステアリングコラムに取付けられている。この顔画像撮像装置においては、カメラアッシーがステアリングコラムと一体に移動するため、チルト機構の操作によってステアリングホイールの鉛直方向の傾斜角度が調整されても、ステアリングホイールのスポーク間の開口を通して、投光器による運転者への投光とカメラによる顔画像の撮像を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の顔画像撮像装置においては、撮像手段であるカメラと赤外線投光器がカメラアッシーとして近接して配置されているため、運転者が眼鏡を着用している場合に、投光器から投光された光が眼鏡上と運転者の眼球上の両方で反射したときに、これらの反射によりできる2つの輝点がカメラから見たときに重なってしまうことがある。そして、このように眼鏡上の輝点が眼球上の輝点と重なった場合には、眼球上の輝点を適切に撮像することができなくなり、運転者の視線方向の検出等を正確に行えなくなることが懸念される。
【0006】
そこでこの発明は、運転者が眼鏡を着用している場合にも、運転者の眼球上の輝点を撮像手段で正確に撮像することのできる車両用顔画像撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用顔画像撮像装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両室内の運転席の前方に配置されたステアリングホイール(例えば、実施形態のステアリングホイール13)と、車室内の前記ステアリングホイールよりも車両前方側に配置され、運転席に着座した運転者の顔画像を撮像する撮像手段(例えば、実施形態のCCDカメラ20)と、可視光または非可視光を前記運転者の眼球に向けて投光する投光手段(例えば、実施形態の近赤外線LED21)と、を備えた車両用顔画像撮像装置において、前記撮像手段と前記投光手段は、鉛直方向と車幅方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置され、前記所定距離は、前記投光手段により投光された光が前記運転者の着用した眼鏡上で反射する眼鏡上輝点(例えば、実施形態の眼鏡上輝点26)と、前記投光手段により投光された光が前記運転者の眼球上で反射する眼球上輝点(例えば、実施形態の眼球上輝点28)とが、前記撮像手段から見たときに重ならない距離に設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両用顔画像撮像装置において、前記投光手段は、前記撮像手段が前記運転席に着座した運転者の眼球位置よりも鉛直方向上側に配置される場合には当該撮像手段よりも鉛直方向上側に配置され、前記撮像手段が前記運転席に着座した運転者の眼球位置よりも鉛直方向下側に配置される場合には当該撮像手段よりも鉛直方向下側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、運転者が眼鏡を着用している場合にも、眼鏡上輝点と眼球上輝点とが撮像手段から見たときに重ならないように、撮像手段と投光手段が鉛直方向と車幅方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置されているため、眼鏡上輝点による悪影響を受けることなく運転者の眼球上輝点をより確実に検出することができる。
また、この発明においては、撮像手段と投光手段が鉛直方向と車幅方向の両方向に所定距離以上離間していることから、運転者の顔が車両正面に対して鉛直方向と水平方向のいずれかに傾斜した場合にも、撮像手段から見た眼鏡上輝点と眼球上輝点の重なりを確実に防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、撮像手段が運転者の眼球位置よりも鉛直方向上側に配置される場合には、投光手段が撮像手段よりも鉛直方向上側に配置され、撮像手段が運転者の眼球位置よりも鉛直方向下側に配置される場合には、投光手段が撮像手段よりも鉛直方向下側に配置されるため、眼鏡上輝点と眼球上輝点を鉛直方向で適切に離間させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施形態の顔画像撮像装置の概略構成を示す車室内の模式的な側面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の顔画像撮像装置を設置した車両の車室内を示す正面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の顔画像撮像装置で撮像した顔画像を示す図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の投光器の配置不可範囲を示す模式的な側面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態の顔画像撮像装置の概略構成を示す車室内の模式的な側面図である。
【図6】この発明の第2の実施形態の顔画像撮像装置を採用した車両の車室内を示す正面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態の顔画像撮像装置で撮像した顔画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態に係る顔画像撮像装置1の構成を示す図であり、図2は、顔画像撮像装置1を設置した車両の車室内を示す図である。
これらの図において、11は、運転者mの着座する運転席のシートであり、12は、運転席の前面に設置されたインストルメントパネル、13は、ステアリングホイール、14は、図示しないステアリングシャフトを支持するステアリングコラムである。
ステアリングホイール13は、ステアリングコラム14に設けられたチルト機構15によって鉛直方向の傾斜角度が調整可能にされるとともに、ステアリングシャフトに設けられたテレスコピック機構16によって前後方向の位置が調整可能とされている。
【0013】
顔画像撮像装置1は、運転者mの顔を撮像する撮像手段であるCCDカメラ20と、運転者mの眼球27に光を照射する投光手段である近赤外線LED21と、CCDカメラ20と近赤外線LED21を制御するとともに、CCDカメラ20の検出信号を基にして画像処理と解析を行う制御装置22と、を備えている。制御装置22で画像処理と解析を行った結果は、例えば、脇見警報装置で用いられ、運転者mが脇見をしているものと判定されたときに警報手段23を作動させる。なお、投光手段は、近赤外線LED21に限るものではなく、可視光または非可視光を乗員の眼球27に向けて照射する点光源であれば他のものであっても良い。
【0014】
顔画像撮像装置1での画像処理と解析では、例えば、運転者mの顔画像を基にして運転者mの顔の向きを検知するとともに、近赤外線LED21から運転者mの眼球27に光を照射したときの虹彩上の輝点(眼球上輝点28)の位置と、瞳孔の位置を検知し、虹彩上の輝点と瞳孔の離間距離を基にして運転者mの視線方向を判定する。
【0015】
ところで、この顔画像撮像装置1の場合、CCDカメラ20は、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13の中心軸線Aの鉛直上方で、かつ、ステアリングホイール13がチルト機構15やテレスコピック機構16で最大上昇位置(上限位置)に位置調整されたときにステアリングホイール13の上端部13aよりも上方となるように、インストルメントパネル12の上面に設置されている。
なお、CCDカメラ20の設置高さは、ステアリングホイール13が最大上昇位置に位置調整された状態で、ステアリングホイール13を回転操作する運転者mの手hがステアリングホイール13の上端部13aに達しても、その手hよりも上方となる高さであることが望ましい。
【0016】
この顔画像撮像装置1の近赤外線LED21は、運転席の前方のフロントピラー17の付根部に近接したインストルメントパネル12上に設置されている。この近赤外線LED21の設置位置は、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13を回転操作する運転者mの腕先と重ならない位置であり、ステアリングホイール13の中心軸線Aの車幅方向側方で、かつ、ステアリングホイール13の外側となる位置とされている。なお、この実施形態の顔画像撮像装置1においては、ステアリングホイール13が標準位置に位置調整されているときに、CCDカメラ20と近赤外線LED21が、ステアリングホイール13の中心軸線Aを中心とする同心円上となる位置、すなわち、中心軸線Aから等距離となる位置に配置されている。
【0017】
図3は、顔画像撮像装置1で撮像した画像を示す図である。
CCDカメラ20と近赤外線LED21は、図1,図2に示すように、鉛直方向と車幅方向について、それぞれ相互に所定距離以上離間して配置されている。ここで、鉛直方向と車幅方向の各所定距離は、運転者mが眼鏡25を装着している状況を想定して決められた距離であり、図3に示すように、近赤外線LED21により投光された光が眼鏡25上で反射する眼鏡上輝点26と、近赤外線LED21により投光された光が眼球27の虹彩上で反射する眼球上輝点28とが、CCDカメラ20から見たときに(CCDカメラ20で映したときに)相互に重ならない距離とされている。なお、前記の各所定距離は、眼鏡上輝点26が眼球上輝点28に加えて眼球27上の瞳孔に対しても重ならない距離であることが望ましい。
【0018】
この実施形態の場合、図1に示すように、撮像手段であるCCDカメラ20はシート11に着座した運転者mの眼球27の位置よりも鉛直方向下側に配置されており、投光手段である近赤外線LED21は、CCDカメラ20よりもさらに鉛直方向下側になるように配置されている。
図4は、CCDカメラ20が運転者mの眼球27よりも鉛直方向下側に配置されているときに、近赤外線LED21がさらに鉛直方向下側に配置されると有利となる理由を説明するための図である。同図において、aは、CCDカメラ20で運転者mの眼球27の虹彩領域を撮影するときの撮像範囲であり、bは、このときの撮像範囲と交差する眼鏡25上の領域で、反射像としてCCDカメラ20に映り込む映り込み範囲である。
したがって、この映り込み範囲bの内側に近赤外線LED21が設置されているときには、眼球27上の近赤外線LED21の像(眼球上輝点28)と、眼鏡25上の近赤外線LED21の像(眼鏡上輝点26)が重なってCCDカメラ20に移り込む可能性が高くなる。しかし、この実施形態においては、近赤外線LED21がCCDカメラ20よりもさらに鉛直方向下側に配置されているため、眼鏡25上の近赤外線LED21の像(眼鏡上輝点26)が眼球27(眼球上輝点28)よりも下方に外れた位置となる。
【0019】
以上のように、この顔画像撮像装置1は、運転者mが眼鏡25を着用している場合にも、眼鏡上輝点26が眼球上輝点28と重なってCCDカメラ20に映り込まないように、CCDカメラ20と近赤外線LED21が鉛直方向と車幅方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置されているため、眼鏡上輝点26による悪影響を受けることなく運転者mの眼球上輝点28をより確実に検出することができる。
【0020】
そして、この顔画像撮像装置1の場合、CCDカメラ20と近赤外線LED21が鉛直方向と車幅方向の両方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置されているため、運転者mの顔が車両正面に対して鉛直方向と水平方向のいずれかに傾斜しているときにも、眼鏡上輝点26が眼球上輝点28と重なってCCDカメラ20に映り込むのをより確実に防止することができる。
【0021】
また、この顔画像撮像装置1では、CCDカメラ20が運転者mの眼球27の位置よりも鉛直方向下側に配置される状況下において、近赤外線LED21がCCDカメラ20よりもさらに鉛直方向下側となる位置に配置されているため、CCDカメラ20に映り込む眼鏡上輝点26と眼球上輝点28とを鉛直方向で適切に離間させることができる。
【0022】
つづいて、図5〜図7に示すこの発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、撮像手段であるCCDカメラ20と、投光手段である近赤外線LED21の車両上における配置が異なるだけで、車体を含む他の構成は第1の実施形態のものと同様となっている。したがって、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
この顔画像撮像装置101の場合、CCDカメラ20は、車室内のリヤビューミラー18の運転席寄りの下側コーナー部に設置され、近赤外線LED21は、天井部の前端側の車幅方向中央よりも助手席寄りの部位に設置されている。この実施形態の場合、CCDカメラ20と近赤外線LED21はいずれも運転者mの眼球27の位置よりも上方となる位置に設置されているが、近赤外線LED21は、CCDカメラ20に対して鉛直方向と車幅方向のそれぞれについて所定距離以上離間して配置されている。
【0023】
この場合の各方向の所定距離は、図7に示すように、近赤外線LED21により投光された光が眼鏡25上で反射する眼鏡上輝点26と、近赤外線LED21により投光された光が眼球27の虹彩上で反射する眼球上輝点28とが、CCDカメラ20から見たときに(CCDカメラ20で映したときに)相互に重ならない距離とされている。
【0024】
この実施形態の場合、撮像手段であるCCDカメラ20はシート11に着座した運転者mの眼球27の位置よりも鉛直方向上側に配置されており、投光手段である近赤外線LED21は、CCDカメラ20よりもさらに鉛直方向上側になるように配置されている。したがって、CCDカメラ20で運転者mの眼球27の虹彩領域を斜め上方側から撮影すると、その撮像範囲と交差する眼鏡25上の領域には、近赤外線LED21が反射像として映り込まなくなる。これにより、図7に示すように、CCDカメラ20によって撮像される眼鏡25上の近赤外線LED21の像(眼鏡上輝点26)は、眼球27(眼球上輝点28)よりも上方に外れた位置となる。
【0025】
この実施形態の場合も、眼鏡上輝点26が眼球上輝点28と重なってCCDカメラ20に映り込むのを防止することができ、運転者mの顔が車両正面に対して鉛直方向と水平方向のいずれかに傾斜しているときにも、眼鏡上輝点26と眼球上輝点28がCCDカメラ20上で重なるのをより確実に防止することができる。
【0026】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、近赤外線LED21(投光手段)が運転席正面に向かってステアリングホイール13の左右の一方に一つだけ設置されているが、投光手段は、ステアリングホイール13の右側と左側に同様に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1,101…顔画像撮像装置
13…ステアリングホイール
20…CCDカメラ(撮像手段)
21…近赤外線LED(投光手段)
26…眼鏡上輝点
28…眼球上輝点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内の運転席の前方に配置されたステアリングホイールと、
車室内の前記ステアリングホイールよりも車両前方側に配置され、運転席に着座した運転者の顔画像を撮像する撮像手段と、
可視光または非可視光を前記運転者の眼球に向けて投光する投光手段と、
を備えた車両用顔画像撮像装置において、
前記撮像手段と前記投光手段は、鉛直方向と車幅方向にそれぞれ所定距離以上離間して配置され、
前記所定距離は、前記投光手段により投光された光が前記運転者の着用した眼鏡上で反射する眼鏡上輝点と、前記投光手段により投光された光が前記運転者の眼球上で反射する眼球上輝点とが、前記撮像手段から見たときに重ならない距離に設定されていることを特徴とする車両用顔画像撮像装置。
【請求項2】
前記投光手段は、前記撮像手段が前記運転席に着座した運転者の眼球位置よりも鉛直方向上側に配置される場合には当該撮像手段よりも鉛直方向上側に配置され、前記撮像手段が前記運転席に着座した運転者の眼球位置よりも鉛直方向下側に配置される場合には当該撮像手段よりも鉛直方向下側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用顔画像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11976(P2012−11976A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153022(P2010−153022)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】