説明

車両盗難防止装置

【課題】 車両の盗難を防止しつつ、乗員の搭乗に適さないほどの高温や低温では車外へ脱出できる車両盗難防止装置を提供すること。
【解決手段】 車室内及び車室外からドアを開けることができないデッドロック状態にするドアロック装置4と、車室内の乗員の有無を検出するIGNスイッチ信号、ブレーキ信号、ドア・トランク開閉信号、照明スイッチ信号、侵入センサ信号、シートスイッチ信号と、乗員の有無の検出結果によりデッドロック状態への移行を許可する車載機2とを備え、温度を検出する外気温度センサ11を設け、車載機2は、乗員が車室内に搭乗するのに適さない高温又は低温の場合には、デッドロック状態への移行を許可しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の内外からドアを開けることができないデッドロック状態にすることで、車両の盗難を防止する車両盗難防止装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、侵入センサ及びシートセンサからの検知信号により乗員がいないと判断する場合にデッドロック状態に移行し、車両の盗難を防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−98809号公報(第2−4頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来において、デッドロック状態とは、車室内からも車室外からもドアを開けることができない非常に強固なロック状態であり、環境温度が乗員の搭乗に適さないほどの高温や低温において、デッドロック状態へ移行することには問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、車両の盗難を防止しつつ、乗員の搭乗に適さないほどの高温や低温では車外へ脱出できる車両盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、車室内及び車室外からドアを開けることができないデッドロック状態にするデッドロック手段と、車室内の乗員の有無を検出する乗員検出手段と、乗員の有無の検出結果によりデッドロック状態への移行を許可するデッドロック許可手段と、を備えることを特徴とする車両盗難防止装置において、温度を検出する温度検出手段と、乗員が車室内に搭乗するのに適さない高温又は低温の場合には、デッドロック状態への移行を許可しないデッドロック制限手段と、を設けたことを特徴とする。
なお、本明細書及び請求項において、「ドアロック」とは、ドアが施錠された状態であるが、車室内からのドア開を可能にする状態であり、「アンロック」とは、ドアが開錠され、車室内及び車室外からのドア開を可能にする状態、「デッドロック」とは、車室内及び車室外からのドア開ができない施錠状態をいうものとする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、車両の盗難を防止しつつ、乗員の搭乗に適さないほどの高温や低温では車外へ脱出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両盗難防止装置を実現する実施の形態を、実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両盗難防止装置のブロック図である。
実施例1の車両盗難防止装置1は、車載機2、携帯機3、ドアロック装置4を主要な構成としている。
車載機2は、車両に設けられ、携帯機3と通信を行って、ID認証を行い、新たにIDが認証された場合には、ドアのアンロックを行う信号を出力し、新たにIDが認証されなくなると、ドアのロックを行う信号を出力する。これにより、いわゆるキーレスシステムの動作を行うものである。
さらに、車両から得る複数の情報に対して、後述する処理を行い、ドアのデッドロックを行う信号を出力する。
【0009】
携帯機3は、車両の使用者が持ち歩く大きさ重さのものであり、車載機2と通信を行い、通信が可能な場合には、IDデータを送信し、IDの認証を行う。
ドアロック装置4は、図示しないドアロックアクチュエータを駆動制御して、ドアのロック、アンロック、デッドロックを行うものである。
【0010】
さらに、実施例1の車両盗難防止装置1では、図1に示すように車両に設けたセンサや既存の車両装置から情報を得る。以下に説明する。
IGNスイッチ5からは、IGNスイッチのON/OFF信号を得て、IGNスイッチ5の状態を把握する。
ブレーキ装置6からは、パーキングブレーキ(サイドブレーキ)のON/OFF信号を得て、パーキングブレーキの状態を把握する。
ドア・トランク開閉スイッチ7からは、ドア・トランクの開閉信号を得て、ドア・トランクの開閉が行われたかどうかの状態を把握する。
【0011】
照明スイッチ8からは、照明スイッチのON/OFF信号を得て、照明操作の有無状態を把握する。
侵入センサ9からは、車室内を移動する物があるかどうかの検出信号を得て、乗員有無の状態を把握する。
シートスイッチ10からは、シートへの荷重負荷の検出信号を得て、シートへの負荷の有無状態を把握する。
外気温度センサ11からは、外気温度情報を得て、車両環境温度を把握する。
なお、外気温度センサ11は、車両空調装置として既存のものを使用する。そのため、車両空調装置が車室内温度センサを設けている場合には、車室内温度センサを用いる。
【0012】
[デッドロック処理]
図2に示すのは、実施例1の車両盗難防止装置1で実行されるデッドロック処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0013】
ステップS2では、ステップS1で処理が開始されると、外気温度センサ11から外気温度を読み込む。
【0014】
ステップS3では、車室内に人が残っているかどうかを判断し、人が残っているならば、ステップS7へ進み、人が残っていないならばステップS4へ進む。
なお、車室内に人が残っているかどうかの判断は、IGNがOFFであること、パーキングブレーキがONであること、ドア・トランクが開の状態でないこと、照明がOFFであること、侵入センサが検出しない状態であること、シートへ荷重負荷がないことから、判断される。
【0015】
ステップS4では、外気温度tが、0℃<t<30℃であるかどうかを判断し、0℃を超え、30℃に達しない範囲であるならばステップS5へ進み、0℃以下又は30℃以上の場合には、ステップS7へ進む。
【0016】
ステップS5では、車載機2からドアロック装置4へデッドロック出力を行う。 ステップS6では、ドアロック装置4が作動し、デッドロック状態へ移行する。
【0017】
ステップS7では、デッドロックを行わない状態である。
【0018】
[さらに確実な条件下でデッドロックを行う作用]
実施例1の車両盗難防止装置1では、多くの情報から、乗員の有無を判断する。これにより、より確実な判断によりデッドロック状態にし、盗難を防止する。
また、多数の情報は、既存の情報を多く用いているので、コストを抑制する。
さらに、車両盗難防止装置1は、車室内に乗員がいるのに適さない温度、例として、外気温度が氷点下となる0℃以下、または外気温度が炎天下となる30℃以上では、デッドロックにしない。これにより、何らかの異常等により乗員がいる状態でデッドロックになる場合、温度が、乗員がいるのに適さない温度の場合には、ドアロックは通常のドアロックであるので、乗員はドアを開けて車外へ脱出可能となる。
【0019】
ここで、本実施例1の車両盗難防止装置1の作用効果について、さらに説明する。デッドロックは、車室内及び車室外からのドア開ができないように施錠する非常に強いロック状態である。そのため、乗員の有無の確認は精度よく行う必要がある。よって、乗員が車室内にいてデッドロックが行われることはなくしているが、その場合が生じても問題が生じないようにすることは重要である。本実施例1では、乗員が車室内にいることが適さない温度の場合には、デッドロックの条件が揃ってもデッドロックを行わないようにするのである。なお、この場合でも通常のドアロックは行われるので、盗難防止は充分に行われる。
【0020】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両盗難防止装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
(1)車室内及び車室外からドアを開けることができないデッドロック状態にするドアロック装置4と、車室内の乗員の有無を検出するIGNスイッチ信号、ブレーキ信号、ドア・トランク開閉信号、照明スイッチ信号、侵入センサ信号、シートスイッチ信号と、乗員の有無の検出結果によりデッドロック状態への移行を許可する車載機2とを備えることを特徴とする車両盗難防止装置1において、温度を検出する外気温度センサ11を設け、車載機2は、乗員が車室内に搭乗するのに適さない高温又は低温の場合には、デッドロック状態への移行を許可しないため、車両の盗難を防止しつつ、乗員の搭乗に適さないほどの高温や低温では車外へ脱出できる。
【0021】
以上、本発明の車両盗難防止装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、車室内に人が残っているかの判断後に外気温度による判断を行ったが、一端、車室内に人が残っているかどうかの判断によりデッドロックにし、その後に、外気温度を判断して、デッドロックの維持・解除を行うようにしてもよい。また、その際の外気温度の判断は、一定時間後や一定時間毎に行うようにしてもよい。
また、乗員有無の判断には、傾斜センサなど、さらに他のセンサや車両装置から情報を得るようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願の車両盗難防止装置は、他の車両装置を膠着状態にすることに利用することは容易である。また、他の車両装置の作動に利用することも容易である。
また、車両以外の盗難防止に利用することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の車両盗難防止装置のブロック図である。
【図2】実施例1の車両盗難防止装置で実行されるデッドロック処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
1 車両盗難防止装置
2 車載機
3 携帯機
4 ドアロック装置
5 IGNスイッチ
6 ブレーキ装置
7 ドア・トランク開閉スイッチ
8 照明スイッチ
9 侵入センサ
10 シートスイッチ
11 外気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内及び車室外からドアを開けることができないデッドロック状態にするデッドロック手段と、
車室内の乗員の有無を検出する乗員検出手段と、
乗員の有無の検出結果によりデッドロック状態への移行を許可するデッドロック許可手段と、
を備えることを特徴とする車両盗難防止装置において、
温度を検出する温度検出手段と、
乗員が車室内に搭乗するのに適さない高温又は低温の場合には、デッドロック状態への移行を許可しないデッドロック制限手段と、
を設けたことを特徴とする車両盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−32131(P2007−32131A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218190(P2005−218190)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】