説明

車両盗難防止装置

【課題】照合コードの不正解読をより困難なものにすることができて、演算負荷や通信負荷をさほど高めることなく、確実にセキュリティを高めることができる車両盗難防止装置を提供する。
【解決手段】イモビライザ機能を備えた第1制御ユニットU1とエンジン制御をおこなう第2制御ユニットU2間の照合を、時系列コードを用いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両盗難防止装置に係り、特に、エンジン始動後も送信機側から受信した固有の時系列コードと受信機側で生成した時系列コードを参照して、その時系列コードが一致し続けた場合にのみエンジンの運転を許容するようにして車両の盗難防止を図るようにした車両盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両盗難を防止するために種々の提案がなされているが、イモビライザと呼ばれる盗難防止の制御ユニットを利用して、エンジンの運転状態を制御するエンジンコントロールユニット(以下、ECUと称す)の作動状態を制御するものがある。この方法として、一般的に次のような構成となっている。
【0003】
キーに識別符合、すなわち第1コード(IDコード)を内蔵させておき、キーシリンダにキーを差し込んで車両を始動しようとしたとき、キー内蔵のIDコードを読み取り、盗難防止制御装置内に記憶しているIDコードと照合し、ECU側にその照合結果を送信する。ECU側では、その照合結果がIDコードの一致を示すものであれば、エンジンの始動が正規の操作によるものであると判断し、エンジンを始動させる制御を行う。
【0004】
ここで、ECU側へ送信する照合結果がオン、オフの2値信号であると機械的な破壊や不正配線によって盗難が遂行されてしまう恐れがあるため、下記特許文献1に開示されているように所定の方法で乱数を生成して第2コードとし、それを暗号化して送信するなどの方法が提案されている。
【0005】
また、乱数を用いて生成した第2コードと照合した後に、エンジン始動を許可させると、エンジン始動が遅れる可能性があることから、始動を早期化する方法として、一旦エンジンを始動させておき、始動後所定時間以内に第2コードとの照合が成立しない場合には、エンジンを停止させるなどの方法が知られている(下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−25574号公報
【特許文献2】特開平8−185577公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の車両盗難防止装置において、イモビライザとECU間の照合は始動時もしくは始動時の数ms以内の短時間で行なわれるため、キーのオン、オフを繰り返して始動時の数ms以内の通信状態を集中的に調査することにより第2コードもしくは第2コード生成手法を解読できてしまう恐れがある。この解読をより困難なものにするためには、この第2コードの長さを長くすればよいが、短期間の照合を前提としているため、長くすればするほど第2コード生成及び照合のための演算負荷や、通信負荷が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記した如くの問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、照合コードの不正解読をより困難なものにすることができて、演算負荷や通信負荷をさほど高めることなく、確実にセキュリティを高めることができる車両盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明に係る車両盗難防止装置は、エンジン始動時だけでなく、始動後も継続して照合を実施することにより、不正な解読をより困難とすることができるようにしたものである。さらに、時系列コードを用いて時間軸方向に対して照合を行なうことにより、演算負荷や通信負荷をあげることなく、セキュリティレベルを容易に変更できるようにして車両の盗難を確実に防止できるようにしたものである。
【0009】
すなわち、本発明に係る車両盗難防止装置の第1態様は、外部から受信したキー固有の第1コードと内部で記憶しているコードとを照合する第1コード照合手段及び基準データを生成する基準データ生成手段を有する第1制御ユニットと、エンジンの運転状態を制御する第2制御ユニットとを備え、前記第1制御ユニットは、前記第1コード照合手段における照合結果が一致した場合には、前記基準データをもとに時系列の第2コードを生成する時系列コード生成手段と、前記時系列の第2コードを継続的に第2制御ユニットに送信するコード出力手段と、を有し、前記第2制御ユニットは、前記基準データをもとに時系列コードを生成する時系列コード生成手段と、前記時系列コードと前記第1制御ユニットから受信する時系列の第2コードとの照合を行なう第2コード照合手段を有することを特徴としている。
【0010】
このようにされることにより、エンジン作動を許可するための第1制御ユニットと第2制御ユニットの照合が始動直後に限定されることなく、始動後も継続して実施することができ、照合コードの不正解読をより困難なものにすることができる。
【0011】
また、通常の1回限りの照合と異なり、所定の時間間隔で照合するため、コード長を長くしても、集中的に演算負荷を高めることが無く、容易にセキュリティを高めることができる。
【0012】
第2態様では、前記基準データ生成手段は、前記基準データを、前記第1制御ユニットの情報をもとに、乱数データを発生させて生成するようにされる。
【0013】
このようにされることにより、時系列コードを生成するためのもととなる基準データはEEPROM内に記憶している固定値ではなく、第1制御ユニットの情報をもとに発生させた乱数を使用しているので、第1制御ユニットと第2制御ユニットでやり取りする通信データを、その通信毎に変更させることができ、セキュリティを一層高めることができる。
【0014】
第3態様では、前記基準データ生成手段は、前記基準データを、前記第1制御ユニットおよび第2制御ユニットに入力される共通の情報をもとに生成するようにされる。
【0015】
前記第2態様では、基準データを第1制御ユニットおよび第2制御ユニットで共通に認識する必要があるため、基準データを相手側に送る必要がある。そのためその基準データが解読されてしまう恐れがあるが、第3態様では、第1制御ユニット、第2制御ユニットに共通で入力されるCAN情報等を使用して基準データを生成するようにされるので、基準データをユニット間で受け渡しする必要が無くなり、よりセキュリティを高めることができる。
【0016】
第4態様では、前記時系列コードの長さは、システムのセキュリティレベルに応じて可変とされ、前記第1制御ユニット及び第2制御ユニットに、その時系列コード長があらかじめ記憶されてなる。
【0017】
ここで、照合コードが長い方がセキュリティが高くなるが、一般に照合コードが長くなると、短時間での照合を行なうことを前提としているため、演算負荷や通信負荷等の検討が必要となる。本発明の場合は、時間軸方向に対して照合を行なうため、第4態様のように時系列コード長を変えることにより、容易にセキュリティレベルを変更することができる。
【0018】
第5態様では、前記各コード照合手段は、照合不一致を検出した場合に、エンジンを停止させるエンジン停止手段を有するものとされる。
【0019】
このようにされることにより、不正アクセスによりエンジンを始動させた場合に、強制的に燃料カット等を行なうことによりエンジン停止モードに入るため、車両の盗難を防ぐことが可能となる。
【0020】
第6態様では、前記エンジン停止手段は、エンジン運転状態に応じてエンジン停止態様を変更するようにされる。
【0021】
すなわち、本発明では、始動後も継続的に照合を行なうことにより、車両走行時にも照合NGになる可能性があり、その状態で燃料カットによるエンジン停止を実施すると安全上の問題が生じる。そこで、第6態様のように、エンジンの運転状態に応じてより柔軟にエンジン停止態様を変更することで、前記問題を解消できる。
【0022】
第7態様では、前記各コード照合手段は、照合不一致の回数を計測するコード照合NGカウンタを有するものとされる。
【0023】
すなわち、本発明は、継続して照合するため、正規な照合を行っているにも関わらず通信エラー等により一時的に時系列コードの連続性が失われる可能性がある。そこで、第7態様のように、照合不一致の回数をカウントし、所定回数以上になった場合には、不正アクセスとみなしてエンジンを停止させるようにすることにより、一時的な通信エラー時にも対応することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の車両盗難防止装置は、照合コードの不正解読をより困難なものにすることができて、演算負荷や通信負荷をさほど高めることなく、確実にセキュリティを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の車両盗難防止装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る車両盗難防止装置の一実施形態の概要を示すシステムブロック図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の車両盗難防止装置は、トランスポンダー1と、トランスポンダー1からの信号を受信するアンテナ2と、アンテナ2より取り込まれた信号を増幅するアンプ3と、アンプからの信号により制御される第1制御ユニット(イモビライザ)U1と、燃料噴射装置7や燃料点火装置8等のエンジン制御を行なう第2制御ユニット(ECU)U2とを備える。
【0027】
トランスポンダー1は、自動車のイグニッションスイッチのオン、オフを運転者側で行なうキースイッチである。また、アンテナ2とは、イグニッションスイッチのオン、オフに連動して作動するイグニッションコイルアンテナである。アンプ3では、このコイルが作動し、電圧が付与される時に、高電圧を得るために電圧を一定に増幅させる。イモビライザU1は、エンジン始動を禁止する装置であり、イグニッションスイッチをオフすることで自動的にセット、すなわちエンジン始動禁止状態となる。
【0028】
イモビライザU1はIGN9にてイグニッションスイッチのオン、オフ情報を与えられると共に、アンプ3で増幅される電圧値に基づいて、トランスポンダー1から第1コード(IDコード)が与えられ、このIDコードに基づいて所定の制御信号を第2制御ユニットU2に送信する。さらに、イモビライザU1は、バッテリー電源(図示せず)に接続されているので、例えば、エンジンを停止して、イグニッションスイッチをオフしても電源は供給され、スタンバイ状態を保持している。また、イモビライザU1は、予めデータを格納しているEEPROM12、ECUU2や他の制御ユニット(図示せず)とのデータの授受において一時的にデータを格納するRAM13、これらメモリに格納されているデータの授受タイミングをとるためのタイマ14、タイマ14からのタイミング情報に基づいて、演算処理を実施したり、ECUU2とのデータの授受を制御するCPU11とから構成される。
【0029】
ECUU2は、エンジン回転数や燃料噴射量や燃料点火時期等を制御するコントローラである。ECUU2もイモビライザU1同様のEEPROM22、RAM23、タイマ24、CPU21から構成される。また、ECUU2は、イモビライザU1から所定の制御信号を受信し、その信号に基づいて、燃料噴射装置7や燃料点火装置8等の制御をおこなう。
【0030】
次に、図2、図3を参照して、トランスポンダー1、イモビライザU1、ECUU2との間でのデータの送受信手順について説明する。図2は、照合の手順を説明する概略図である。
【0031】
トランスポンダー1はある固有のIDコードを有しており、イモビライザU1もトランスポンダーと同じIDコードをEEPROM12に記憶してある。
【0032】
図2において、トランスポンダー1をキー穴に差し込み、イグニッションスイッチを回転させてエンジンを作動させると、ECUU2はイモビライザU1に対して照合要求を出し、それを受けてイモビライザU1は、トランスポンダー1に対してIDコード要求を出し、トランスポンダー1はイモビライザのトリガ信号となるIDコード信号をイモビライザU1に送信する。
【0033】
イモビライザU1では、受信したトランスポンダー1のIDコードをユニット内のRAM13に一時的に格納する。この後、イモビライザ内のEEPROM12に登録されているIDコードとトランスポンダー1から送信されたIDコードとをCPU11において照合する。イモビライザU1は、IDコードの照合結果が一致していれば所定の方法で生成した基準コードと時系列コードをECUU2に送信する。不一致の場合は、エンジン作動停止信号を送信し、ECUU2はその信号を受けてエンジンを停止させる。ECUU2は、イモビライザU1からの基準コードをRAM23内に格納し、この基準コードをもとにイモビライザU1で行なったのと同じ方法で時系列コードを生成する。
【0034】
また、ECUU2はイモビライザU1から受信した時系列コードをRAM23内に格納し、イモビライザU1からの時系列コードとECUU2内で生成した時系列コードを比較していき、一致していればエンジンを継続して運転し、一致していなければエンジンを停止させる。ECUU2は時系列コードの照合結果をイモビライザU1に返信し、イモビライザU1は照合NG信号を受け取った場合には、イモビライザをセットしエンジン始動禁止状態になる。
【0035】
図3は、照合を行なうための制御ブロック図である。
イモビライザU1は、トランスポンダー1と通信を行なうための第1コード送受信手段101と、第1コード送受信手段101を通じて取得したIDコードをイモビライザ内のEEPROMに記憶しているIDコードとの照合を行なう第1コード照合手段102を持っている。第1コード照合手段でIDコードの一致を検出したら基準データ生成手段104で時系列コードのもととなる基準データを生成する。
【0036】
基準データ生成手段104で生成した基準データとEEPROM12内に記憶してある時系列コード長データを用いて、時系列コード生成手段105にて時系列コードを生成し、基準データとともに第2コード送受信手段106にて送信する。
【0037】
基準データとしては、イモビライザU1内で常時カウント動作しているフリーランニングカウンタの値や、別途内蔵された時計の時刻をもとに発生させた乱数を使用することでよりセキュリティを高めることが出来る。
【0038】
イモビライザU1にて送信されたデータは通信線6を介してECUU2の第2コード送受信手段206に入力される。送受信手段206を介して受信した基準データは基準データ受信手段214でRAM23に格納され、この基準データとEEPROM22内に記憶してある時系列コード長データを用いて、イモビライザU1と同じ手法で時系列コードを生成する。EEPROM21およびEEPROM22に記憶してある時系列コード長データは、時系列コードの長さを決めるものであり、同じに設定する。
【0039】
一方、第2コード送受信手段206を介して受信した時系列コードは時系列コード受信手段215でRAM23に格納される。時系列コード生成手段205で生成した時系列コードと時系列コード受信手段215でRAM23に格納した時系列コードを第2コード照合手段207でコードの一致を時間を追って検出する。照合した結果を照合NGカウンタ手段209に送り、不一致が発生している回数をカウントし、その回数が所定値を超えた場合には、エンジン制御手段210に通知し、エンジン制御手段では燃料カット等を行ってエンジンを停止させる。
【0040】
なお基準データは、本実施形態にあるようにイモビライザ内の情報ではなく、イモビライザU1およびECUU2が共に受信しているCANネットワーク上に流れている情報、例えば、水温や大気圧、を使用してもよい。この場合、基準データをECUU2に送信する必要がなくなり、より秘匿性が向上する。
【0041】
図4は、イモビライザ側でIDコードの照合および時系列コードの生成手順を示すフローチャートである。図3においてはイモビライザ内のIDコードは既にEEPROM12に記憶されていることを前提としている。
【0042】
トランスポンダー内蔵のキーによってイグニッションスイッチがオン位置まで回転されると、エンジンを始動するモードになる。ステップS102でエンジンが始動した場合(S102:YES)、ステップS104に進み、始動していないと判断された場合(S102:NO)は、プログラムの開始点にリターンする。ステップS104においては、ECUからの照合要求があるかどうかを判定し、照合要求がある場合(S104:YES)には、ステップS106へ進む。照合要求がない場合(S104:NO)には、照合処理の手順が正常に動作していないと判断し、ステップS124に進みエンジン停止コマンドをECU側に送信する。ステップS106では、ステップS104の要求に従ってトランスポンダーにIDコード要求を出して、ステップS108に進む。ステップS108では、IDコード要求を出したトランスポンダーからのIDコード返答を受信したか否かを判断し、返答を受信した場合(S108:YES)にはステップS110に進む、返答を受信しなかった場合(S108:NO)にはステップS124に進みエンジン停止要求を出す。
【0043】
ステップS110ではトランスポンダーから送信されてきたIDコードとイモビライザに内蔵されたEEPROMに登録されているIDコードとを照合する。そして、ステップS112において、これらのIDコードが一致したか否かを判断し、一致した場合(S112:YES)、ステップS114に進み、一致しなかった場合(S112:NO)にはステップS124に進んでエンジン停止要求を出す。ステップS114では後述する時系列コードを生成するためのもととなる基準コードを生成し、ステップS116でECUに送信する。ステップS118では、ステップS114で生成した基準コードとイモビライザに内蔵されたEEPROMに記憶されている時系列コード長データをもとに、所定の手法を用いて所定長の時系列コードを生成し、ステップS120へ進む。ステップS120では、ステップS118で生成した時系列コードを、所定の通信間隔で、ECUに送信する。この時系列コードはS118で生成した長さ分を送信し終えたら、繰り返し同じ時系列コードを送信しても良いし、よりセキュリティを高めるためには、再びステップS114で新たに生成した基準データを基にした時系列コードとしても良い。
【0044】
ステップS122では、送信時間をカウントしており所定時間経過した場合(S122:YES)には時系列コードの送信を終了し本プログラムを終了し、所定時間経過していない場合(S122:NO)には、ステップS120の開始点にリターンし、時系列コード送信を続ける。
【0045】
図5は、ECUU2側での時系列コードの生成及び照合手順を示すフローチャートである。ステップS202でイグニッションスイッチがオン位置まで回されたことを検出した場合(S202:YES)、ステップS204に進み、オン状態を検出していない場合(S202:NO)は、プログラムの開始点にリターンする。ステップS204では、エンジンを始動させ、ステップS206へ進み、イモビライザへ照合要求を送信しステップS208へ進む。ステップS208ではイモビライザからエンジン停止コマンドを受信したか否かを判断し、受信した場合(S208:YES)には、ステップS224へ進み燃料カット等を実施してエンジンを停止させる。エンジン停止コマンドを受信しなかった場合(S208:NO)には、ステップS210へ進む。
【0046】
ステップS210では、イモビライザから後述する時系列コードを生成するための基準コードを受信したか否かを判断し、受信した場合(S210:YES)にはステップS212に進み、受信しなかった場合(S210:NO)には、ステップS222に進み、さらに受信しなかった状態が所定時間経過した場合(S222:YES)にはステップS224に進んでエンジンを停止させる。受信していない状態がまだ所定時間以内の場合(S222:NO)には、ステップS210の開始点にリターンし、再度基準コードの受信の有無を判定する。
【0047】
ステップ212ではステップS210で取得した基準コードとECUに内蔵されたEEPROMに記憶されている時系列コード長データ(イモビライザのEEPROMに内蔵されている値と同一)をもとに、イモビライザ側で実行した同一の手法で時系列コードを生成し、ステップS214へ進む。ステップ214では、イモビライザから受信した時系列コードとステップS212で生成した時系列コードが一致しているか否かを受信の度に判定し、一致している場合(S214:YES)にはステップS216に進み、一致していない場合(S214:NO)にはステップS220に進む。ステップS216では、時系列コードの比較時間を計測しており、時系列コードを受信してから所定時間経過後は(S216:YES)、照合処理を終了し、以降エンジンを継続的に作動させる。所定時間経過する前の場合(S216:NO)は、S214の開始点にリターンし照合処理を続ける。一方照合不一致を検出した場合にはステップS220で不一致の回数をカウントし、所定値以上の不一致を検出した場合(S220:YES)は、ステップS224に進んでエンジンを停止させる。不一致回数が所定値以下の場合にはS214の開始点にリターンし照合を続ける。
【0048】
図4、5においては、基準コード及び時系列コードはそのまま生値として送受信しているが、暗号化をして実施して送受信するのが望ましい。
【0049】
次に、図6に時系列コードの例を示す。イモビライザでは基準コードをもとに所定長さの時系列コードを生成し、それを所定時間のタイミングごとに送信する。仮にイモビライザとECU間の通信間隔が100msの場合、100msごとに時系列コードの1ビット分を送信する。送信する際には、送信パケットの特定バイトを全て1もしくは0にすることによって実現する。イモビライザから送信された信号は通信線を介するため、あるディレイ時間を持ってECUに入力される。この通信ディレイ時間は通信負荷によって可変となる。ECUでは、通信線を介して入力された時系列コードとECU内で生成した時系列コードを時間軸方向に比較していくことによって照合を行なう。この際通信ディレイが存在するため、CPU内でカウントしている特定時間、例えば100ms、間隔での値の変化で照合を行なうのではなく、受信する度に前回受信した照合データと今回受信したコードのパターンの変化で照合を行なう。
【0050】
次に図7を用いて、一時的な通信エラーによる照合不一致の対応について説明する。
時系列コードは、時間軸方向の値の変化をみて照合を行なっているため、通信線に一時的なノイズや、一時的な演算負荷増加等により、一部のパターンが欠落する可能性がある。そこで図7に記載しているように、不一致が検出した場合に即NG判定を行なうのではなく、不一致が発生した場合には照合NGカウンタをアップさせ、一致したら照合NGカウンタをカウントさせ、照合NGカウンタが所定回数以上に達した場合には、NG確定としエンジンを停止させる。なお乱数に近い特性をもつ2値の時系列コードを使う場合には、不正にイモビライザからの時系列コードを遮断すると、ECUに入力される時系列コードは常時0もしくは1となり、一方ECU内で生成する時系列コードは、1と0の現れる確率がほぼ等しくなるため、照合NGカウンタがNG確定閾値までカウントアップしない可能性がある。そのため、本実施例ではアップとダウンのカウンタ幅を変えることにより(例えば、アップは2、ダウンは1)、確実に照合NGを検出できるようにしている。
【0051】
本発明は、エンジン始動後も継続して照合を実施することを特徴としており、そのため車両が動いている最中にも照合NGとなる可能性がある。車両走行中の照合NGにおいてもエンジンを即停止させてしまうと、乗客や他の車両に影響を与える恐れがあるため、車両の状態に応じてエンジン停止態様を変更するのが良い。
【0052】
エンジン停止態様としては、例えば、照合NGを検出した場合、車両停止時には即燃料カットを行ってエンジンを停止させ、車両走行中には速度制限を設けて徐々に減速させ、車両停止を検出後燃料カットをしてエンジンを停止させる態様等がある。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱することなく、設計において種々の変更ができるものである。
【0054】
例えば、前記実施形態においては、第2制御ユニットとしてECUを用いているが、他の制御ユニットに関しても同様の照合方式を適用できる。例えばトランスミッションECUとの照合に使用し、照合NGの場合にはギアを低速にするといった動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る車両盗難防止装置の一実施形態の概要を示すシステムブロック図。
【図2】図1に示されるトランスポンダーと第1制御ユニットと第2制御ユニットとの間の情報のやりとりの説明に供されるブロック図。
【図3】図1に示される第1制御ユニット及び第2制御ユニットの処理内容を示す機能ブロック図。
【図4】イモビライザ(第1制御ユニット)側の照合手順等を示すフローチャート。
【図5】ECU(第2制御ユニット)側の照合手順等を示すフローチャート。
【図6】時系列コードによる照合の説明に供される図。
【図7】照合不一致時の説明に供される図である。
【符号の説明】
【0056】
U1 第1制御ユニット(イモビライザ)
U2 第2制御ユニット(ECU)
1 トランスポンダー
2 イグニッションコイルアンテナ
3 アンプ
6 通信線
7 燃料噴射装置
8 燃料点火装置
9 イグニッション信号
11 第1制御ユニット側CPU
12 第1制御ユニット側EEPROM
13 第1制御ユニット側RAM
14 第1制御ユニット側タイマ
21 第2制御ユニット側CPU
22 第2制御ユニット側EEPROM
23 第2制御ユニット側RAM
24 第2制御ユニット側タイマ
101 第1制御ユニット側第1コード送受信手段(トランスポンダーとの通信)
102 第1制御ユニット側第1コード照合手段
104 第1制御ユニット側基準データ生成手段
105 第1制御ユニット側時系列コード生成手段
106 第1制御ユニット側第2コード送受信手段
205 第2制御ユニット側時系列コード生成手段
206 第2制御ユニット側第2コード送受信手段
214 第2制御ユニット側基準データ受信手段
215 第2制御ユニット側時系列コード受信手段(第1制御ユニットからの時系列コード)
207 第2制御ユニット側第2コード照合手段
209 第2制御ユニット側照合NGカウンタ手段
210 第2制御ユニット側エンジン制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受信したキー固有の第1コードと内部で記憶しているコードとを照合する第1コード照合手段及び基準データを生成する基準データ生成手段を有する第1制御ユニットと、エンジンの運転状態を制御する第2制御ユニットと、を備え、
前記第1制御ユニットは、前記第1コード照合手段における照合結果が一致した場合には、前記基準データをもとに時系列の第2コードを生成する時系列コード生成手段と、前記時系列の第2コードを継続的に第2制御ユニットに送信するコード出力手段とを有し、
前記第2制御ユニットは、前記基準データをもとに時系列コードを生成する時系列コード生成手段と、前記時系列コードと前記第1制御ユニットから受信する時系列の第2コードとの照合を行なう第2コード照合手段と、を有することを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項2】
前記基準データ生成手段は、前記基準データを、前記第1制御ユニットの情報をもとに、乱数データを発生させて生成することを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止装置。
【請求項3】
前記基準データ生成手段は、前記基準データを、前記第1制御ユニットおよび第2制御ユニットに入力される共通の情報をもとに生成することを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止装置。
【請求項4】
前記時系列コードの長さは、システムのセキュリティレベルに応じて可変とされ、前記第1制御ユニット及び第2制御ユニットに、その時系列コード長があらかじめ記憶されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両盗難防止装置。
【請求項5】
前記各コード照合手段は、照合不一致を検出した場合に、エンジンを停止させるエンジン停止手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両盗難防止装置。
【請求項6】
前記エンジン停止手段は、エンジン運転状態に応じてエンジン停止態様を変更することを特徴とする請求項5に記載の車両盗難防止装置。
【請求項7】
前記各コード照合手段は、照合不一致の回数を計測するコード照合NGカウンタを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137354(P2009−137354A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313697(P2007−313697)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】