説明

車両部品の装飾構造

【課題】装飾体を安定的に固定することができる車両部品の装飾構造を提供する。
【解決手段】保持体21は、挿入部31、円錐部32、開孔部33、及び、接着剤保持部34を備える。装飾体22を保持体21に保持した状態で、インテリアフレーム1の裏面側に形成された接着剤保持部に液状の接着剤40を塗布する。接着剤40が乾燥すると、下傾斜面27に到達した接着剤40は、装飾体22の下傾斜面27及び底部28に形成した被膜と良好な接着力をもつ接着部41となる。同時に液溜り35に滞留した接着剤40は、固化し、ストッパー部42となる。ストッパー部42は、開孔部33からインテリアフレーム1の表面側への装飾体22の脱落を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部品の装飾構造に関し、特にクリスタルガラスなどの装飾体を樹脂製の車両部品に取り付ける場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾体としてクリスタルガラスやその他の宝石などを部品に取り付ける構造として、眼鏡の装飾構造が開示されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1には、眼鏡を構成する眼鏡部品の所望の部位に形成される有底穴と、前記有底穴に挿入される固着手段により固着される装飾体とを含み、有底穴が前記眼鏡部品の表面からほぼ一定の直径で形成される空洞部と、前記空洞部に続いて前記装飾体の底面形状に合わせて傾斜するように形成される底面部とで構成された眼鏡の装飾構造が開示されている。この構成により、良好な輝きを有する状態で装飾体を眼鏡部品に取り付けることができ、かつ装飾体を安定して固定することができる、という効果を得ることができる。
【0003】
また、透明板の周縁部にクリスタルガラスの装飾体を固着した装飾額縁が開示されている(例えば、特許文献2)。この特許文献2には、ガラス板で形成された縁部裏面に無色透明な接着剤層が塗布され、クリスタル粒石が当該接着剤層を介して多数接合固着された装飾額縁が開示されている。この構成により、クリスタル粒石が模様を形成すると共に、クリスタル粒石に入射した光線が多角錐を形成するカッティング面で多角度に反射され、装飾効果を増大させる、という効果を得ることができる。
【特許文献1】実用新案登録第3103063号公報
【特許文献2】実用新案登録第3044081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1及び2では、いずれも接着剤の接着力によって装飾体を被接着体としての部品に固定しているものであるから、接着剤が部品に対し接着力を発揮し得ない場合、装飾体が簡単に脱落してしまう、という問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両部品に固着した装飾体の脱落を防止することができる車両部品の装飾構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、車両部品の表面に形成される保持体と、前記保持体に挿入され固着される装飾体とを備える装飾構造であって、前記保持体の底部に前記装飾体に対して小さい開孔部を形成し、前記装飾体は前記開孔部を介して前記車両部品の裏面から前記開孔部に対して大きく形成された固着手段により固着したものであるこことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、前記車両部品の前記保持体内面は前記装飾体の形状に合わせて形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、前記装飾体の底部は前記開孔部に挿入されたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明は、前記車両部品の裏面における前記開孔部の周囲に前記固着手段を保持する突条が形成されたものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る発明は、前記固着手段は、前記装飾体に接着する接着部と、前記開孔部の前記車両部品の裏面側に形成された前記開孔部よりも大きいストッパー部とを有し、前記接着部と前記ストッパー部とは一体的に形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る車両部品の装飾構造によれば、車両部品に固着した装飾体の脱落を防止することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る車両部品の装飾構造によれば、車両部品との接触面積を拡大できるので、固着強度を向上することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る車両部品の装飾構造によれば、装飾体を固着手段に近づけることができるので、より確実に装飾体を車両部品に保持することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る車両部品の装飾構造によれば、固着手段をコンパクトに形成することができる。また、効率的に装飾体を保持できるとともに、接着剤のはみ出しも防止できるので美観の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る車両部品の装飾構造によれば、開孔部よりも大きい面積を有するストッパー部を接着部と一体的に形成したことにより、車両部品に対し良好な接着力を発揮し得ない接着剤を用いても、装飾体に対し良好な接着力を発揮し得る接着剤を用いて、装飾体の脱落を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示す車両部品としてのインテリアフレーム1は、ダッシュボード2の助手席側正面に配置され、エアコン吹き出し口3,3に挟まれた壁面4に図示しない両面テープで固定される。このインテリアフレーム1は、図示しない写真を保持し、車両の車室5内に設置可能な写真立てとして使用し得るように構成されている。本実施形態では、インテリアフレーム1はポリプロピレンで構成されている。
【0018】
このインテリアフレーム1は、図2に示すように、横長矩形状に形成された板状のベース部7と、当該ベース部7の四辺を囲むように設けられた縁部8とを備え、縁部8の下辺8a中央には切り欠き9が形成されており、当該切り欠き9に下部ストッパー10が回動自在に設けられている。
【0019】
ベース部7は、左右一対の付勢片11と、半円形の貫通穴12とを有する。付勢片11は、ベース部7に設置された写真をインテリアフレーム1の表面側へ押し付け得るように形成されている。また、貫通穴12は、ベース部7の下端中央に設けられており、インテリアフレーム1の裏面側からユーザが指で当該写真の裏面を押出し得るように構成されている。これにより、ユーザは、ベース部7に設置された写真を交換する際、当該写真を容易に取り外すことができる。
【0020】
下部ストッパー10は、図3に示すように、インテリアフレーム1の長手方向を回転軸とするヒンジ15により上下方向に回動自在に設けられている。当該下部ストッパー10には、上面10aに設けられた上方に突出した下保持部16と、側面10bに形成された切り欠き9の内面9aと係合する係合突起17とを有している。ヒンジ15は、インテリアフレーム1と一体成形されてなり、下部ストッパー10と縁部8との接合部分を薄肉としたことで回動可能に形成されている。
【0021】
また、当該下部ストッパー10に対向する縁部8の上辺8bの下面には、下方に突出した上保持部18が形成されている。
【0022】
このように構成されたインテリアフレーム1は、下部ストッパー10を下方に回動させた状態で、縁部8に囲まれたベース部7の表面に図示しない写真を配置し、当該写真の上辺を上保持部18とベース部7の表面との間に係止させる。
【0023】
次いで、ベース部7の表面に写真を重ねた状態で下部ストッパー10を上方へ回動させ、切り欠き9の内面9aに係合突起17を係合させ、下部ストッパー10を切り欠き9に固定する。そうすると、下部ストッパー10に形成された下保持部16が写真の下辺8aをベース部7の表面との間に保持することにより、写真をインテリアフレーム1に保持することができる。
【0024】
ここで、写真には、当該写真と同じ表面積を有する図示しない透明の樹脂板からなるクリアプレートを表面に重ねた状態で、インテリアフレーム1に保持することとしてもよい。当該クリアプレートを写真の表面に重ねることで、写真に汚れや傷が付くことを防止することができる。
【0025】
上記のように構成されたインテリアフレーム1の縁部8には、種々の装飾20が施されている。この装飾20は、左右側辺8c,8dに形成された模様の外形からなる図柄21aや、縁部8の四隅に形成された保持体21に固定された装飾体22などからなる。
【0026】
以下に、本発明の特徴である装飾体を用いた装飾構造について、詳細に説明する。
【0027】
装飾体22は、図4に示すように、ブリリアントカットを施したクリスタルガラスで形成されており、テーブルと呼ばれる上面25、前記上面25に接しておりクラウンと呼ばれる上傾斜面26、前記上傾斜面26と反対の傾斜面を構成しパビリオンと呼ばれる下傾斜面27、キューレットと呼ばれる底部28により構成されている。ブリリアントカットには種々のものがあるが、例えば、上記クラウンに33面、パビリオンに25面のカットされた面を有し、全体として58面体からなるものが一般的に用いられている。本実施形態では、装飾体22は、直径Dが6.3mm、全体高さH1が4.4mm、下傾斜面27の部分の高さH2が2.7mmである。
【0028】
また、この装飾体22の下傾斜面27及び底部28には、図示しない被膜が形成されている。このように構成された装飾体22は、上傾斜面26から入射した光を下傾斜面27で反射し、再び上傾斜面26に戻すことによって、より輝きを引き出し得るように構成されている。
【0029】
保持体21は、図5に示すように、装飾体22を安定的に保持し得るように構成されている。本実施形態では、保持体21は、挿入部31、保持体内面としての円錐部32、開孔部33、及び、接着剤保持部34を備える。
【0030】
挿入部31は、装飾体22を保持体21に取り付ける際、容易に装飾体22を挿入しうるように構成されている。本実施形態では、挿入部31は、上方に向かってやや拡径してなる円筒状の内腔で構成される。この挿入部31の下方に連続して円錐部32が設けられている。
【0031】
円錐部32は、挿入された装飾体22を安定的に載置し得るように形成されている。本実施形態では、円錐部32は、装飾体22の下傾斜面27の形状に合わせて形成されている。この円錐部32の頂点の部分に開孔部33が穿設されている。
【0032】
開孔部33は、装飾体22を所定高さに保持し、かつ、液状の接着剤40が円錐部32へ浸透し得るように形成されている。本実施形態では、開孔部33は、装飾体22の直径よりも小さい内径で形成されている。この開孔部33の円錐部32と反対側の面には、接着剤保持部34が形成されている。
【0033】
接着剤保持部34は、開孔部33を挟んで装飾体22を縁部8に保持し得るように構成されている。本実施形態では、接着剤保持部34は、開孔部33よりも大きい面積を有する液溜り35と、当該液溜り35の外周を囲むように立設された環状の突条36とを有する。開孔部33と液溜り35との接合部分となる角部37は、斜方に面取り形成されている。
【0034】
接着剤40は、接着剤保持部34に塗布された後、開孔部33から円錐部32へ浸透し、装飾体22の下傾斜面27に到達し、装飾体22の下傾斜面27及び底部28に形成した被膜と良好な接着力を発揮するもので、装飾体22の光沢を損なわないためにも無溶剤系のものが好適に選択される。本実施形態では、接着剤40は液状であって、一液湿気硬化型接着剤を用いた。尚、この接着剤40は、接着剤保持部34を構成する材料、本実施形態ではポリプロピレンとは良好な接着力を発揮しない。
【0035】
上記のように構成された車両部品の装飾構造において、装飾体22を取付けるには、まず、インテリアフレーム1の表面に形成された保持体21に装飾体22を下傾斜面27側から挿入し、底部28を開孔部33に挿入する。そうすると、下傾斜面27が円錐部32に当接した状態で、装飾体22が保持体21に収容される。
【0036】
次いで、装飾体22を保持体21に保持した状態で、インテリアフレーム1の裏面側に形成された接着剤保持部34に液状の接着剤を塗布する。この接着剤保持部34に塗布された液状の接着剤40は、開孔部33から円錐部32へ浸透し、装飾体22の下傾斜面27に到達すると同時に、液溜り35に滞留する。
【0037】
時間経過により、接着剤40が乾燥すると、下傾斜面27に到達した接着剤40は、装飾体22の下傾斜面27及び底部28に形成した被膜と良好な接着力をもつ接着部41となる。同時に液溜り35に滞留した接着剤40は、固化し、ストッパー部42となる。このようにして、接着剤40は、固着手段としての接着部41とストッパー部42となる。
【0038】
ここで、液溜り35は、突条36に囲まれ、開孔部33よりも大きい面積を有するので、当該開孔部33よりも大きい面積を有するストッパー部42を接着部41と一体的に形成することができる。従って、ストッパー部42は、接着部41と一体的に形成することにより、装飾体22が開孔部33からインテリアフレーム1の表面側へ脱落することを防止する。
【0039】
また、液状の接着剤40を用いたことにより、ストッパー部42と接着部41とを一体的に形成することができるので、当該接着部41に接着されている装飾体22を保持することができる。
【0040】
このように、本実施形態では、開孔部33を通じて固化する前の接着剤40を装飾体22と接着させると共に、液溜り35に滞留させ、その後、固化することにより、接着部41とストッパー部42とを一体的に形成することとした。
【0041】
これにより、本実施形態に係る車両部品の装飾構造では、インテリアフレーム1に対し良好な接着力を発揮し得ない接着剤40を用いても、装飾体22に形成した皮膜に対し良好な接着力を発揮し得る接着剤40を用いることにより、装飾体22を安定的に保持することができる。従って、装飾構造では、装飾体22の脱落を効果的に防止することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る装飾構造では、液溜り35の周囲に突条36を設けたことにより、液状の接着剤40を液溜り35に滞留させることができる。これにより、接着剤40が固化した後、開孔部33に対し十分に大きなストッパー部42をより確実に形成することができるので、装飾体22をより安定的に保持することができる。
【0043】
さらに、装飾構造では、液溜り35の周囲に環状の突条36を設けたことにより、ストッパー部42をコンパクトに形成することができるので、少ない量の接着剤40で効率的に装飾体22を保持できる。また、接着剤40のはみ出しも防止できるので、美観の向上を図ることができる。
【0044】
また、装飾体22は、底部28を開孔部33に挿入する構成とした。これにより、車両部品の装飾構造では、装飾体22を液溜り35に近づけることができるので、少ない量の接着剤40でより確実に装飾体22をいてインテリアフレーム1に保持することができる。
【0045】
また、保持体21は、装飾体22の下傾斜面27に合わせて形成した円錐部32を有することにより、インテリアフレーム1との接触面積を拡大できるので、インテリアフレーム1に対する装飾体22の外れにくさとしての固着強度を向上することができる。
【0046】
また、開孔部33と液溜り35との接合部分となる角部37を、斜方に面取り形成したことにより、装飾構造では、液溜り35に塗布された液状の接着剤40が円滑に開孔部33から円錐部32へ浸透するので、より確実に接着部41を形成することができる。従って、装飾構造では、より安定的に装飾体22をインテリアフレーム1に保持することができる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することができる。例えば、本実施形態では、装飾体22は、平面視において、円形のものについて説明したが、本発明はこれに限らず、平面視において、ハート形、楕円形や、四角形などであってもよい。
【0048】
また、装飾体22は、ブリリアントカットされたものについて説明したが、本発明はこれに限らず、シングルカット、ローズカットや、エメラルドカットなどでもよい。
【0049】
また、装飾体22は、インテリアフレーム1の縁部8の四隅に設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、下辺8a、上辺8b、左右側辺8c,8dにそれぞれ設けてもよいことはいうまでもない。
【0050】
また、装飾体22は、下傾斜面を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、下部が平坦であってもよい。この場合、保持対21は、挿入部31に連続して平坦な底部を有することが好ましいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係るインテリアフレームの使用状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るインテリアフレームの全体構成を示す斜視図であり、下部ストッパーが閉じた状態を示す図である。
【図3】本実施形態に係るインテリアフレームの全体構成を示す斜視図であり、下部ストッパーが開いた状態を示す図である。
【図4】本実施形態に係る装飾体の構成を示す正面図である。
【図5】本実施形態に係る車両部品の装飾構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 インテリアフレーム(車両部品)
21 保持体
22 装飾体
28 装飾体の底部
32 円錐部(保持体内面)
33 開孔部
36 突条
41 接着部(固着手段)
42 ストッパー部(固着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部品の表面に形成される保持体と、前記保持体に挿入され固着される装飾体とを備える装飾構造であって、前記保持体の底部に前記装飾体に対して小さい開孔部を形成し、前記装飾体は前記開孔部を介して前記車両部品の裏面から前記開孔部に対して大きく形成された固着手段により固着したものであることを特徴とする車両部品の装飾構造。
【請求項2】
前記車両部品の前記保持体内面は前記装飾体の形状に合わせて形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の車両部品の装飾構造。
【請求項3】
前記装飾体の底部は前記開孔部に挿入されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の車両部品の装飾構造。
【請求項4】
前記車両部品の裏面における前記開孔部の周囲に前記固着手段を保持する突条が形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の車両部品の装飾構造。
【請求項5】
前記固着手段は、前記装飾体に接着する接着部と、前記開孔部の前記車両部品の裏面側に形成された前記開孔部よりも大きいストッパー部とを有し、前記接着部と前記ストッパー部とは一体的に形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の車両部品の装飾構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−110930(P2010−110930A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283634(P2008−283634)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)
【Fターム(参考)】