説明

車両部品及びその製造方法

【課題】ヘルムホルツ型共鳴器によって騒音を吸収可能でありかつ従来より安価に製造可能な車両部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両部品としてのエンジンカバー10は、エンジンカバー本体11と発泡成形品20との境界部分に中空部屋24を備えている。その中空部屋24は、エンジンカバー本体11に形成した凹部15の開口15Aを、共鳴孔23を有した発泡成形品20で閉塞して構成されている。そして、発泡成形品20に貫通形成した共鳴孔23が中空部屋24に連通してヘルムホルツ型共鳴器25Vが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡材の成形品である発泡成形品を車両部品本体に固定してなり、騒音吸収用のヘルムホルツ型共鳴器を備えた車両部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の車両部品の一例として、図11には発泡成形品2が固定されたエンジンカバー1が示されている。このエンジンカバー1では、発泡成形品2のうちエンジンカバー本体1Hとの接合面に凹部3が形成され、凹部3の底壁には共鳴孔4が貫通成形されている。そして、凹部3の開口がエンジンカバー本体1Hにて閉塞されて中空部屋5が形成され、その中空部屋5に共鳴孔4が連通して騒音吸収用のヘルムホルツ型共鳴器6が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3730395号公報(第1図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のエンジンカバー1の構造では、エンジンカバー本体1Hと、凹部3及び共鳴孔4を有する発泡成形品2とのそれぞれの成形工程に加え、それらエンジンカバー本体1Hと発泡成形品2とを固定する接着工程が必要であるため製造に手間がかかり、製造コストが高くなっていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ヘルムホルツ型共鳴器によって騒音を吸収可能でありかつ従来より安価に製造可能な車両部品及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る車両部品(10,10V)は、発泡材の成形品である発泡成形品(20,20V)を車両部品本体(11)に固定してなり、それら車両部品本体(11)と発泡成形品(20,20V)との境界部分に中空部屋(24,24V)を備え、発泡成形品(20,20V)に貫通形成した共鳴孔(23,23V)を中空部屋(24,24V)に連通させて車両(90)の騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)とした車両部品(10,10V)において、車両部品本体(11)に凹部(15)を設け、凹部(15)の開口(15A)を共鳴孔(23,23V)を有した発泡成形品(20,20V)で閉塞して中空部屋(24,24V)を構成したところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両部品(10,10V)において、車両部品本体(11)に格子形リブ(14)を形成し、凹部(15)は格子形リブ(14)に囲まれて複数設けられ、それら複数の凹部(15)に連通する複数の共鳴孔(23,23V)を設けたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両部品(10,10V)において、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を複数備え、それらヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)同士の間で、凹部(15)の奥面と発泡成形品(20,20V)との間隔又は、共鳴孔(23,23V)の長さ又は、共鳴孔(23,23V)の断面積を異ならせて共鳴周波数を相違させたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の車両部品(10)において、格子形リブ(14)のうち隣り合った凹部(15)を区画する部分に、格子形リブ(14)の先端から奥行き方向の途中まで延びたスリット(14S)が形成され、スリット(14S)が発泡成形品(20)にて塞がれているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れかに記載の車両部品(10,10V)において、車両部品本体(11)のうち格子形リブ(14)が立ち上がった平坦面に、その格子形リブ(14)を囲むリブ包囲領域(S2)を設け、発泡成形品(20,20V)に、格子形リブ(14)全体を囲んだ環状をなしてリブ包囲領域(S2)に固着されると共に、車両部品本体(11)の平坦面から離れる側に突出して、複数の共鳴孔(23,23V)の開口群を囲む環状遮音壁(22)を設けたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の車両部品(10,10V)において、エンジンカバー(10,10V)であるところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明に係る車両部品(10,10V)の製造方法は、発泡材の成形品である発泡成形品(20,20V)を車両部品本体(11)に固定してなる車両部品(10,10V)の製造方法であって、それら車両部品本体(11)と発泡成形品(20,20V)との境界部分に中空部屋(24,24V)を形成すると共に、発泡成形品(20,20V)に貫通形成した共鳴孔(23,23V)を中空部屋(24,24V)に連通させて車両の騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)とした車両部品(10,10V)の製造方法において、車両部品本体(11)に凹部(15)を形成しておくと共に、発泡成形品(20,20V)を成形するための成形金型(40,40V)の底面に、共鳴孔(23,23V)を成形するための成形支柱(56,56V)を起立させておき、成形金型(40,40V)内の上部に車両部品本体(11)をセットして凹部(15)に成形支柱(56,56V)を突き合わせ、成形金型(40,40V)内で発泡材から発泡成形品(20,20V)を成形すると共に、発泡成形品(20,20V)で凹部(15)の開口(15A)を閉塞して中空部屋(24,24V)を形成するところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載の車両部品(10,10V)の製造方法において、底面形状が異なる複数種類の成形金型(40,40V)を用意し、それら各成形金型(40,40V)で同一の車両部品本体(11)を用いて発泡成形品(20,20V)を成形して、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造するところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の車両部品(10,10V)の製造方法において、成形支柱(56,56V)の太さが異なる複数種類の成形金型(40,40V)を用意し、それら各成形金型(40,40V)で同一の車両部品本体(11)を用いて発泡成形品(20,20V)を成形して、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造するところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかに記載の車両部品(10)の製造方法において、同一の車両部品本体(11)及び同一の成形金型(40)を用い、成形金型(40)に対する発泡材の原液(H)の注入量を異ならせて、ヘルムホルツ型共鳴器(25)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10)を製造するところに特徴を有する。
【0015】
請求項11の発明は、請求項7乃至10の何れかに記載の車両部品(10,10V)の製造方法において、車両部品本体(11)に格子形リブ(14)を形成し、格子形リブ(14)に囲まれた凹部(15)を複数設け、それら複数の凹部(15)に突き合わされる成形支柱(56,56V)を複数設けるところに特徴を有する。
【0016】
請求項12の発明は、請求項11に記載の車両部品(10)の製造方法において、格子形リブ(14)のうち隣り合った凹部(15)を区画する部分に、格子形リブ(14)の先端から奥行き方向の途中まで延びたスリット(14S)を形成しておき、スリット(14S)を発泡成形品(20)にて塞ぐところに特徴を有する。
【0017】
請求項13の発明は、請求項11又は12に記載の車両部品(10,10V)の製造方法において、成形金型(40,40V)を上下方向に型開き可能とすると共に、成形金型(40,40V)のうち下側金型(51,51V)における底面の外縁部に環状溝(55)を形成し、車両部品本体(11)のうち格子形リブ(14)が立ち上がった平坦面に、その格子形リブ(14)を囲むリブ包囲領域(S2)を設けておき、成形金型(40,40V)の型開き面で車両部品本体(11)を狭持すると共に、下側金型(51,51V)の上端開口縁を車両部品本体(11)のリブ包囲領域(S2)に突き当て、発泡成形品(20,20V)の成形時に、下側金型(51,51V)と車両部品本体(11)との突き当て部分の隙間からガスを排出してリブ包囲領域(S2)に発泡成形品(20,20V)を固着させるところに特徴を有する。
【0018】
請求項14の発明は、請求項7乃至13の何れかに記載の車両部品(10,10V)の製造方法において、車両部品(10,10V)はエンジンカバー(10,10V)であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
[請求項1の発明]
請求項1の車両部品(10,10V)の構造によれば、凹部(15)を備えた車両部品本体(11)を発泡成形品(20,20V)の成形金型(40,40V)内にセットし、その成形金型(40,40V)に設けた成形支柱(56,56V)を車両部品本体(11)の凹部(15)に突き合わせた状態にして、成形金型(40,40V)内で発泡成形品(20,20V)を成形することができる。このとき、車両部品本体(11)の凹部(15)の開口(15A)が発泡成形品(20,20V)により閉塞されて中空部屋(24,24V)が形成され、その中空部屋(24,24V)に共鳴孔(23,23V)が連通してヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)が形成される。そして、成形金型(40,40V)内で発泡材が固化して発泡成形品(20,20V)が車両部品本体(11)に固着される。このように本発明の車両部品(10,10V)の構造によれば、発泡成形品(20,20V)の成形と、その発泡成形品(20,20V)と車両部品本体(11)との固着とを1つの工程で同時に行うことができ、騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を備えた車両部品(10,10V)を従来より安価に製造することが可能になる。
【0020】
[請求項2及び11の発明]
請求項2及び11の発明によれば、格子形リブ(14)により凹部(15)が複数纏めて形成されているので、それら凹部(15)に対応したヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)をコンパクトに集めることができ、吸音効率を高めることができる。これに加え、格子形リブ(14)により車両部品本体(11)を補強することもできる。
【0021】
[請求項3の発明]
請求項3の車両部品(10,10V)は、共鳴周波数が異なる複数のヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)により、複数の周波数の音を含んだ騒音を吸収することができる。
【0022】
[請求項4及び12の発明]
請求項4及び12の発明によれば、発泡材が複数の凹部(15)の開口(15A)を閉塞した後も、隣り合った凹部(15)の間でスリット(14S)を介してガスが出入りし、複数の凹部(15)の内圧が均一になる。そして、更に凹部(15)内に進入した発泡材によってスリット(14S)が塞がれる。これにより、複数の凹部(15)の間で、発泡成形品(20)の進入位置の均一化を図ることができ、共鳴周波数が同じヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を複数形成することができる。
【0023】
[請求項5の発明]
請求項5の車両部品(10,10V)では、環状遮音壁(22)が騒音の漏れを規制した状態で、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)により効率良く騒音を吸収することができる。このとき、環状遮音壁(22)の先端部が騒音源(91)に押し付けられても、環状遮音壁(22)の基端部が密着した車両部品本体(11)におけるリブ包囲領域(S2)によって押し付け反力が受け止められるので、発泡成形品(20,20V)全体の変形を防ぐことができる。
【0024】
[請求項6の発明]
請求項6の車両部品(10,10V)はエンジンカバー(10,10V)であるので、エンジン音を吸収して車両の静粛性を高めることができる。
【0025】
[請求項7の発明]
請求項7の車両部品(10,10V)の製造方法では、成形金型(40,40V)内の上部に車両部品本体(11)をセットして、その車両部品本体(11)の凹部(15)に成形金型(40,40V)の成形支柱(56,56V)を突き合わせ、成形金型(40,40V)内で発泡材を発泡させる。これにより、成形金型(40,40V)内で発泡成形品(20,20V)が成形され、その発泡成形品(20,20V)により凹部(15)の開口(15A)が閉塞されて中空部屋(24,24V)が形成される。このとき、成形支柱(56,56V)によって発泡成形品(20,20V)に共鳴孔(23,23V)が成形され、その共鳴孔(23,23V)が中空部屋(24,24V)に連通してヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)が形成される。そして、成形金型(40,40V)内で発泡材が固化して、発泡成形品(20,20V)が車両部品本体(11)に固着される。このように本発明の車両部品(10,10V)の製造方法によれば、発泡成形品(20,20V)の成形とその発泡成形品(20,20V)と車両部品本体(11)との固着とを1つの工程で同時に行うことができ、騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を備えた車両部品(10,10V)を従来より安価に製造することが可能になる。
【0026】
[請求項8の発明]
請求項8の車両部品(10,10V)の製造方法によれば、成形金型(40,40V)の底面形状によって発泡成形品(20,20V)の形状を変えて、共鳴孔(23,23V)の長さ又は中空部屋(24,24V)の容積を変更することができる。これにより、同一の車両部品本体(11)を用いて、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造することが可能になる。
【0027】
[請求項9の発明]
請求項9の車両部品(10,10V)の製造方法によれば、成形支柱(56,56V)によって共鳴孔(23,23V)の断面積を変えることができる。これにより、同一の車両部品本体(11)を用いて、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造することが可能になる。
【0028】
[請求項10の発明]
請求項10の車両部品(10)の製造方法によれば、同一の車両部品本体(11)及び同一の成形金型(40)を用い、成形金型(40)に対する発泡材の原液(H)の注入量を変えて、共鳴孔(23)の長さ又は中空部屋(24)の容積を変更することができる。即ち、ヘルムホルツ型共鳴器(25)の共鳴周波数が異なる複数種類の車両部品(10)を、同一の成形金型(40)及び同一の車両部品本体(11)を用いて、安価に製造することが可能になる。
【0029】
[請求項13の発明]
請求項13の車両部品(10,10V)の製造方法によれば、成形金型(40,40V)の型開き面で車両部品本体(11)を狭持すると共に、下側金型(51,51V)の上端開口縁を車両部品本体(11)のリブ包囲領域(S2)に突き当てた状態にして、成形金型(40,40V)内で発泡成形品(20,20V)が成形される。このとき、下側金型(51,51V)の底面における環状溝(55)に流れ込んだ発泡材によって環状遮音壁(22)が成形される。また、成形時に、下側金型(51,51V)と車両部品本体(11)との突き当て部分の隙間からガスが排出されて、環状遮音壁(22)の基端部がリブ包囲領域(S2)に固着する。このようにして製造された車両部品(10,10V)では、環状遮音壁(22)が騒音の漏れを規制した状態で、ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)により効率良く騒音を吸収することができる。このとき、環状遮音壁(22)の先端部が騒音源(91)に押し付けられても、環状遮音壁(22)の基端部が密着した車両部品本体(11)におけるリブ包囲領域(S2)によって押し付け反力が受け止められるので、発泡成形品(20,20V)全体の変形を防ぐことができる。
【0030】
[請求項14の発明]
請求項14の車両部品(10,10V)の製造方法によれば、騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を備えたエンジンカバー(10,10V)を従来より安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明をエンジンカバー及びその製造方法に適用した実施形態について説明する。図1に示した本実施形態のエンジンカバー10は、エンジンカバー本体11に発泡成形品20を固定してなる。エンジンカバー本体11は、合成樹脂の射出成形品であって、矩形の平板体12における外縁から側壁13を垂下した構造になっている。また、平板体12の四隅には、エンジンカバー10を車両90のエンジン91に螺子止めするためのボルト挿通孔16が形成されている。
【0032】
図2に示すように、平板体12の下面のうち側壁13から内側に離れたリブ形成領域S1には、格子形リブ14が突出形成されている。そして、格子形リブ14にて四方を囲まれた凹部15が複数設けられている。具体的には、図1に示すように、凹部15は、例えば、2列3行(2×3)のマトリックス状に配置されて計6つ設けられている。また、それら全ての凹部15は、奥行き及び平面形状が同じになっている。即ち、凹部15の内側容積は、全て同一になっている。なお、図2に示すように、平板体12からの格子形リブ14の突出量は、側壁13の突出量より若干小さくなっている。
【0033】
発泡成形品20は、発泡材の成形品である。その発泡材は、例えば、ウレタン発泡体であって、連続発泡構造(スポンジ構造)になっている。そして、発泡成形品20は、エンジンカバー本体11に対する全ての接触面でエンジンカバー本体11に固着されている。
【0034】
図2に示すように、発泡成形品20は、格子形リブ14の下面全体を覆うリブカバー部21を環状遮音壁22で囲んだ構造になっている。リブカバー部21の上面には、格子形リブ14に平面形状に対応した格子状の上面溝27が形成されると共に、それら上面溝27に四方を囲まれた複数に角突部28が形成されている。それら角突部28の上面は、平坦になっている。そして、上面溝27内に格子形リブ14の先端部が受容されると共に、各角突部28が各凹部15の下端部に突入して、凹部15の開口15Aが閉塞されている。これにより、発泡成形品20とエンジンカバー本体11との境界部分に複数の中空部屋24が形成されている。
【0035】
リブカバー部21には、エンジンカバー本体11の複数の凹部15に対応して複数の共鳴孔23が上下方向に貫通形成されている。詳細には、共鳴孔23は、各凹部15の平面形状の四角形の図心と対向する位置に配置されて、各凹部15に1つずつ設けられている。また、各共鳴孔23の軸方向は、凹部15の奥面と直交する方向を向いている。そして、各共鳴孔23が各中空部屋24に連通して複数のヘルムホルツ型共鳴器25が構成されている。
【0036】
リブカバー部21の下面には、共鳴孔23の開口を避けた領域に、吸音突部26が形成されている。吸音突部26は、例えば、エンジンカバー本体11の短辺方向(図2の紙面と直交する方向)に延びた複数の三角突条26Aで構成されている。具体的には、各三角突条26Aは、断面正三角形になっていて、リブカバー部21の下面のうち、エンジンカバー本体11の長辺方向(図2の左右方向)において、共鳴孔23の開口と環状遮音壁22とに挟まれた部分に1つ設けられると共に、共鳴孔23の開口に挟まれた部分に、例えば、3つずつ横並びして設けられている。
【0037】
環状遮音壁22は、リブカバー部21全体を包囲した矩形の枠状をなし、リブカバー部21の上方と下方とに突出している。そして、環状遮音壁22の上端部(基端部)が、平板体12の平坦な下面のうちリブ形成領域S1を囲むリブ包囲領域S2に固着されている。また、環状遮音壁22の内側面は、リブカバー部21より上方側で格子形リブ14の外側面に固着されている。一方、環状遮音壁22の外側面と、エンジンカバー本体11における側壁13の内側面との間には空間が設けられている。さらに、環状遮音壁22の下端部は、リブカバー部21の下面に対して吸音突部26の各三角突条26Aより下方に突出している。
【0038】
図3には、上記したエンジンカバー10と異なる別のエンジンカバー10Vが示されている。以下、第1のエンジンカバー10、第2のエンジンカバー10Vと称して、これらエンジンカバー10,10Vを区別する。
【0039】
第2のエンジンカバー10Vは、第1のエンジンカバー10と共通のエンジンカバー本体11に対し、異なる発泡成形品20Vを固着して構成されている。その発泡成形品20Vは、第1のエンジンカバー10の発泡成形品20に対し、エンジンカバー本体11の長辺方向(図3の左右方向)における中央部の構造のみが異なる。
【0040】
具体的には、第2のエンジンカバー10Vの発泡成形品20Vにおける下面には、エンジンカバー本体11の長辺方向の中央に中央陥没部30が形成されている。中央陥没部30は、発泡成形品20Vの下面を段付き状に上方に陥没させてなり、発泡成形品20Vのうちエンジンカバー本体11の短辺方向(図3の紙面と直交する方向)の全体に亘って形成されている。即ち、エンジンカバー本体11において、前述の如く2×3のマトリックス状に配置されて計6つの凹部15(図1参照)のうち長手方向の中央で横並びになった2つの凹部15,15に対応する部分で、発泡成形品20Vが上方に陥没して中央陥没部30が形成されている。
【0041】
中央陥没部30の奥面には、環状の奥面溝31が形成されている。奥面溝31は、凹部15の内側に丁度収まる程度の正方形になって、前記した中央の2つの凹部15,15に対応させて2つ設けられている(図3には一方の奥面溝31のみが示されている)。そして、中央陥没部30の奥面のうち各奥面溝31に囲まれた部分が奥面角突部32(図3には一方の奥面角突部32のみが示されている)になっている。
【0042】
発泡成形品20Vのうち中央の各凹部15に突入した各角突部28と各凹部15との奥面の間の距離は、両端の凹部15,15に突入した各角突部28と各凹部15との奥面の間の距離より小さくなっている。これにより、中央の各凹部15の開口15Aを閉塞してなる中空部屋24Vは、両端の各凹部15の開口15Aを閉塞してなる中空部屋24に対して容積が小さくなっている。中央の各中空部屋24Vに連通した共鳴孔23Vが奥面角突部32の平面形状の図心に配置して設けられている。その共鳴孔23Vの内径は、両端の各中空部屋24に連通した共鳴孔23の内径より小さくなっている。これにより、中央の中空部屋24Vに共鳴孔23Vを連通してなるヘルムホルツ型共鳴器25Vは、両端のヘルムホルツ型共鳴器25と異なる周波数で共鳴する。
【0043】
ここで、一般に、ヘルムホルツ型共鳴器における共鳴周波数fは、中空部屋の容積V、音速c、共鳴孔の軸長L、共鳴孔のうち軸方向と直交する断面の断面積S、円周率πとから、次式で算出して求められることが知られている。
【0044】
【数1】

【0045】
そして、本実施形態では、両端のヘルムホルツ型共鳴器25と中央のヘルムホルツ型共鳴器25Vとの間で、上記容積V、軸長L及び断面積Sが相違し、共鳴周波数も互いに相違している。
【0046】
本実施形態の第1及び第2のエンジンカバー10,10Vの構造に関する説明は以上である。これら第1及び第2のエンジンカバー10,10Vは、発泡成形品20,20Vの環状遮音壁22の先端部をエンジン91の上面に押し付けた状態にしてエンジン91に固定される。ここで、環状遮音壁22の基端部はエンジンカバー本体11の平板体12に固着されているので、その平板体12で押し付け反力を受け止めることができ、発泡成形品20,20V全体の変形を防ぐことができる。そして、環状遮音壁22が騒音の漏れを規制した状態で、ヘルムホルツ型共鳴器25,25Vにより効率良く騒音を吸収することができる。
【0047】
また、第1及び第2のエンジンカバー10,10Vの発泡成形品20,20Vのうち騒音源であるエンジン91との対向面には、吸音突部26が形成されているので、吸音突部26とヘルムホルツ型共鳴器25,25Vとによって複数種類の周波数の音を含んだ騒音を吸収することができる。しかも、第2のエンジンカバー10Vでは、共鳴周波数が異なる複数種類のヘルムホルツ型共鳴器25,25Vを備えているので、騒音レベルが高い特定複数種類の周波数の音が含まれている場合にも、それら特定複数種類の音の吸収効率を高めることができる。
【0048】
また、エンジンカバー本体11では、格子形リブ14により凹部15が複数纏めて形成されているので、それら凹部15に対応したヘルムホルツ型共鳴器25,25Vをコンパクトに集めることができ、吸音効率を高めることができる。これに加え、格子形リブ14でエンジンカバー本体11を補強することもできる。
【0049】
次に、上記した第1及び第2の第1のエンジンカバー10,10Vを製造するための成形金型40,40Vの構造を説明する。第1のエンジンカバー10を製造するための成形金型40は、図4に示すように、上下方向に型開き可能な上側金型41と下側金型51とからなる。上側金型41は、長方形の天井壁44の外縁部から側壁43を垂下した構造になっている。その側壁43の下端面には、複数のガス抜き溝42が、側壁43の内側面と外側面との間を連絡するように形成されている。また、側壁43における上下方向の中間部には、例えば、螺子孔43Aが貫通形成され、その螺子孔43Aにワーク固定螺子45が螺合している。さらに、天井壁44の中央には、上側金型41にワーク押し出し孔44Aが貫通形成されている。
【0050】
この上側金型41には、エンジンカバー本体11が平板体12側から挿入され、側壁13が側壁43の内側に嵌合される。そして、図5に示すように、天井壁44の内面にエンジンカバー本体11の平板体12を押し付けた状態でワーク固定螺子45を締め付けて、エンジンカバー本体11が上側金型41内に保持される。また、この状態で側壁13の下端面は側壁43の下端面より奥側に位置した状態になる。
【0051】
下側金型51は、上側金型41に保持されたエンジンカバー本体11における側壁13の内側に挿入可能な包囲壁54を有し、包囲壁54の下端部が底壁53で閉塞されている。その包囲壁54は、エンジンカバー本体11における平板体12(詳細には、平板体12のリブ包囲領域S2(図2参照))に突き当てられると共に、側壁13の内側面との間に隙間が介在した状態で挿入される大きさ(即ち、側壁13の内側に遊嵌される大きさ)になっている。また、包囲壁54の先端面には、複数のガス抜き溝52が、包囲壁54の内側面と外側面との間を連絡するように形成されている。
【0052】
下側金型51のうち包囲壁54の内側は、発泡材を注入して成形するための成形部60になっている。その成形部60の底面には、外縁部全体に環状溝55が陥没形成されている。また、成形部60の底面における環状溝55の内側部分は、発泡成形品20のうちリブカバー部21の下面を成形するための主要成形面61になっている。そして、その主要成形面61に、リブカバー部21の三角突条26Aを成形するための複数の三角溝57が設けられると共に、共鳴孔23を成形するための円柱状の複数の成形支柱56が主要成形面61から起立している。これら成形支柱56は、図7に示すように、各凹部15の奥面の図心と対向する位置に1つずつ設けられている。
【0053】
なお、成形支柱56の上端面は、包囲壁54の上端面より僅かに低くなっている。また、下側金型51の外側面には、上下方向の中間位置に段差面62が形成され、その段差面62より下側部分が側方に張り出した台座部63をなす一方、段差面62より上側部分が前記した包囲壁54になっている。
【0054】
図8には、第2のエンジンカバー10Vを製造するための成形金型40Vが示されている。この成形金型40Vは、上記した第1のエンジンカバー10を製造するための成形金型40に対し、下側金型51Vの主要成形面61Vにおける中央の形状のみが異なる。なお、主要成形面61,61V全体は、格子形リブ14全体の平面形状に対応して長方形になっている。
【0055】
下側金型51Vの主要成形面61Vにおける長辺方向(図8の左右方向)の中央部には、主要成形面61V全体から上方シフト突部70が突出している。また、その上方シフト突部70は、主要成形面61Vの短辺方向(図8の紙面と直交する方向)の全体に亘って延びている。そして、上方シフト突部70の上面には、正方形の枠状をなした1対の方形環状突部71が、主要成形面61Vの短辺方向に並べて設けられている(図8には、一方の方形環状突部71のみが示されている)。また、上方シフト突部70の上面のうち各方形環状突部71に囲まれた、正方形領域の図心からは成形支柱56Vが起立している。成形支柱56Vは、前記した成形支柱56より細い円柱状になっている。また、成形支柱56,56Vの上端面は、全て同一高さで、包囲壁54の上端面より僅かに低く位置に配置されている。
【0056】
本実施形態を製造するための成形金型40,40Vの構造に関する説明は以上である。次に、成形金型40を用いて第1のエンジンカバー10を製造する製造方法について説明する。
【0057】
第1のエンジンカバー10の製造するには、図5に示すように、成形金型40を開き、予め製造しておいたエンジンカバー本体11を上側金型41内にセットする。
【0058】
次いで、ウレタン発泡体などの発泡材原液Hを下側金型51の成形部60に注入する。具体的には、発泡材原液Hを吐出可能な吐出ガンをロボットの先端に取り付け、そのロボットにより吐出ガンを移動しながら発泡材原液Hを成形部60の底部に注入する。そして、例えば、図5に示すように、発泡材原液Hの上面が略水平になって成形支柱56の上下方向における中間に位置した状態にする。
【0059】
次いで、成形金型40を閉じ、下側金型51の包囲壁54を、エンジンカバー本体11における平板体12のリブ包囲領域S2に突き当てると共に、上側金型41の側壁43における下端面と、下側金型51の段差面62とを隣接或いは接合させた状態にする。
【0060】
次いで、成形金型40を加熱して所定の温度(例えば、上側金型41を65度、下側金型51を35度)で所定時間(例えば、100〜135秒)保持する。すると、発泡材原液Hが常温発泡してウレタンの発泡材になり、成形金型40内で増加していく。そして、図6に示すように、発泡材の上面が徐々に上昇してエンジンカバー本体11における各凹部15の開口15Aを閉塞して中空部屋24が形成される。このとき、成形部60内の既存のガス及び発泡材から発生したガスが、中空部屋24内に密封された状態になる。そして、その密封されたガスによって発泡材が凹部15の内側上面まで進入することを規制し、中空部屋24内に所定の容量の空間が確保される。
【0061】
また、発泡材の上面が上昇すると、下側金型51の包囲壁54と格子形リブ14との間の環状領域における下面開口も閉塞される。しかしながら、その環状領域に閉じこめられたガスは、包囲壁54の先端のガス抜き溝52と、包囲壁54の外側面とエンジンカバー本体11の側壁13における内側面との間の隙間と、上側金型41の側壁43における先端のガス抜き溝42とを通過して外部に排出される。これにより、発泡材が、包囲壁54と格子形リブ14との間の環状領域の内側上面まで進入することが許容され、その発泡材がエンジンカバー本体11の平板体12におけるリブ包囲領域S2に密着する。また、発泡材は、発泡の進行と共に、ウレタン結合も進行して固化する。そして、発泡材の固化により発泡成形品20が成形が完了すると共に、発泡成形品20がエンジンカバー本体11に対する全ての接触面でエンジンカバー本体11の固着される。
【0062】
次いで、成形金型40を開き、エンジンカバー本体11と共にそのエンジンカバー本体11と一体になった発泡成形品20を成形金型40から取り出して、第1のエンジンカバー10が完成する。なお、このとき上側金型41の押し出し孔44Aにツールを挿入してエンジンカバー本体11を上側金型41から押し出してもよい。
【0063】
第2のエンジンカバー10Vの製造するには、図8に示した成形金型40Vを用いる。そして、上記した第1のエンジンカバー10の場合と同様に、成形金型40Vを開き、エンジンカバー本体11を上側金型41内にセットしてから、ロボットにて射出ガンを移動して成形部60内に発泡材原液Hを注入する。このとき、下側金型51Vにおける各方形環状突部71内に発泡材原液Hが満たされるように注入し、方形環状突部71以外の部分では、第1のエンジンカバー10の場合と同様に、発泡材原液Hの上面が略水平になって成形支柱56の上下方向における中間に位置するように注入する。
【0064】
次いで、図9に示すように、成形金型40を閉じ、発泡材原液Hを発泡させて発泡成形品20Vを成形し、第2のエンジンカバー10Vを成形金型40から取り出して第2のエンジンカバー10Vが完成する。
【0065】
このように、本実施形態の第1及び第2のエンジンカバー10,10Vの構成及びそれらの製造方法によれば、発泡成形品20,20Vの成形とその発泡成形品20,20Vとエンジンカバー本体11との固着とを1つの工程で同時に行うことができ、騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器25,25Vを備えたエンジンカバー10,10Vを従来より安価に製造することが可能になる。また、成形金型40の底面形状及び成形支柱56及び発泡材原液Hの注入量を変更することで、同一のエンジンカバー本体11を用いて、ヘルムホルツ型共鳴器25の共鳴周波数が異なる複数種類のエンジンカバーを製造することが可能になる。
【0066】
なお、本実施形態の製造方法によれば、同一のエンジンカバー本体11及び同一の成形金型40を用い、成形金型40に対する発泡材原液Hの注入量を変えて、共鳴孔23の長さ又は中空部屋24の容積を変更することもできる。即ち、ヘルムホルツ型共鳴器25の共鳴周波数が異なる複数種類のエンジンカバーを、同一の成形金型40及び同一のエンジンカバー本体11を用いて安価に製造することも可能になる。
【0067】
[第2実施形態]
本実施形態は、図10に示すように、エンジンカバー本体11の格子形リブ14にスリット14Sを形成した点のみが第1実施形態と異なる。具体的には、スリット14Sは、格子形リブ14のうち隣り合った凹部15,15の間に位置した部分に設けられている。そして、これらスリット14Sは、格子形リブ14の先端から奥行き方向の途中まで延び、発泡成形品20(図2参照)にスリット14S全体が丁度覆われるサイズになっている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0068】
本実施形態によれば、成形金型40内で発泡材が各凹部15の開口15Aを閉塞した後も、隣り合った凹部15,15の間でスリット14Sを介してガスが出入りし、複数の凹部15の内圧が均一になる。そして、更に発泡材が凹部15内に進入してスリット14Sが塞がれる。これにより、複数の凹部15の間で、発泡成形品20の進入位置の均一化を図ることができ、共鳴周波数が同じヘルムホルツ型共鳴器25を複数形成することができる。
【0069】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0070】
(1)前記実施形態では、車両部品としてエンジンカバー10,10Vを例示したが、本発明に係る車両部品はエンジンカバーに限定されるものではなく、例えば、車両に搭載したモータやソレノイド等の電動機の駆動音や、それら電動機を駆動する駆動回路のスイッチ音、又は、トランク内の荷物の衝突音等を吸収対象の騒音として、電動機や駆動回路に隣接した車両の壁部やケースを構成する車両部品や、トランクルームの内壁を構成する車両部品に本発明を適用してもよい。
【0071】
(2)前記実施形態では、凹部15が格子形リブ14に囲まれた構造になっていたが、例えば、車両部品本体の平坦面の一部を陥没させて凹部を形成し、平坦面に固着される発泡成形品で凹部の開口を閉塞して中空部屋を形成してもよい。
【0072】
(3)前記実施形態における発泡成形品20,20Vを構成する発泡材は、ウレタンを主原料としていたが、ウレタン以外の他の樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)を主原料としたものであってもよい。
【0073】
(4)前記実施形態の発泡成形品20,20Vを構成する発泡材は、連続発泡構造(スポンジ構造)であったが独立発泡構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態のエンジンカバー及びエンジンの斜視図
【図2】第1のエンジンカバーの側断面図
【図3】第2のエンジンカバーの側断面図
【図4】第1のエンジンカバー及びその成形金型の側断面図
【図5】成形金型を開いた状態の側断面図
【図6】成形金型を閉じた状態の側断面図
【図7】成形金型の平面図
【図8】第2のエンジンカバー及びその成形金型の側断面図
【図9】成形金型を閉じた状態の側断面図
【図10】第2実施形態のエンジンカバー本体の斜視図
【図11】従来のエンジンカバーの側断面図
【符号の説明】
【0075】
10,10V エンジンカバー(車両部品)
11 エンジンカバー本体(車両部品本体)
14 格子形リブ
14S スリット
15 凹部
15A 開口
20,20V 発泡成形品
22 環状遮音壁
23,23V 共鳴孔
24,24V 中空部屋
25,25V ヘルムホルツ型共鳴器
40,40V 成形金型
41 上側金型
51,51V 下側金型
55 環状溝
56,56V 成形支柱
90 車両
91 エンジン
H 発泡材原液
S2 リブ包囲領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡材の成形品である発泡成形品(20,20V)を車両部品本体(11)に固定してなり、それら車両部品本体(11)と発泡成形品(20,20V)との境界部分に中空部屋(24,24V)を備え、前記発泡成形品(20,20V)に貫通形成した共鳴孔(23,23V)を前記中空部屋(24,24V)に連通させて車両(90)の騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)とした車両部品(10,10V)において、
前記車両部品本体(11)に凹部(15)を設け、前記凹部(15)の開口(15A)を前記共鳴孔(23,23V)を有した前記発泡成形品(20,20V)で閉塞して前記中空部屋(24,24V)を構成したことを特徴とする車両部品(10,10V)。
【請求項2】
前記車両部品本体(11)に格子形リブ(14)を形成し、前記凹部(15)は前記格子形リブ(14)に囲まれて複数設けられ、それら複数の凹部(15)に連通する複数の前記共鳴孔(23,23V)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両部品(10,10V)。
【請求項3】
前記ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)を複数備え、それらヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)同士の間で、前記凹部(15)の奥面と前記発泡成形品(20,20V)との間隔又は、前記共鳴孔(23,23V)の長さ又は、前記共鳴孔(23,23V)の断面積を異ならせて共鳴周波数を相違させたことを特徴とする請求項2に記載の車両部品(10,10V)。
【請求項4】
前記格子形リブ(14)のうち隣り合った前記凹部(15)を区画する部分に、前記格子形リブ(14)の先端から奥行き方向の途中まで延びたスリット(14S)が形成され、前記スリット(14S)が前記発泡成形品(20)にて塞がれていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両部品(10)。
【請求項5】
前記車両部品本体(11)のうち前記格子形リブ(14)が立ち上がった平坦面に、その格子形リブ(14)を囲むリブ包囲領域(S2)を設け、
前記発泡成形品(20,20V)に、前記格子形リブ(14)全体を囲んだ環状をなして前記リブ包囲領域(S2)に固着されると共に、前記車両部品本体(11)の前記平坦面から離れる側に突出して、前記複数の共鳴孔(23,23V)の開口群を囲む環状遮音壁(22)を設けたことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車両部品(10,10V)。
【請求項6】
エンジンカバー(10,10V)であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車両部品(10,10V)。
【請求項7】
発泡材の成形品である発泡成形品(20,20V)を車両部品本体(11)に固定してなる車両部品(10,10V)の製造方法であって、それら車両部品本体(11)と発泡成形品(20,20V)との境界部分に中空部屋(24,24V)を形成すると共に、前記発泡成形品(20,20V)に貫通形成した共鳴孔(23,23V)を前記中空部屋(24,24V)に連通させて車両の騒音を吸収可能なヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)とした車両部品(10,10V)の製造方法において、
前記車両部品本体(11)に凹部(15)を形成しておくと共に、前記発泡成形品(20,20V)を成形するための成形金型(40,40V)の底面に、前記共鳴孔(23,23V)を成形するための成形支柱(56,56V)を起立させておき、
前記成形金型(40,40V)内の上部に前記車両部品本体(11)をセットして前記凹部(15)に前記成形支柱(56,56V)を突き合わせ、前記成形金型(40,40V)内で前記発泡材から前記発泡成形品(20,20V)を成形すると共に、前記発泡成形品(20,20V)で前記凹部(15)の開口(15A)を閉塞して前記中空部屋(24,24V)を形成することを特徴とする車両部品(10,10V)の製造方法。
【請求項8】
底面形状が異なる複数種類の成形金型(40,40V)を用意し、それら各成形金型(40,40V)で同一の前記車両部品本体(11)を用いて前記発泡成形品(20,20V)を成形して、前記ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造することを特徴とする請求項7に記載の車両部品(10,10V)の製造方法。
【請求項9】
前記成形支柱(56,56V)の太さが異なる複数種類の成形金型(40,40V)を用意し、それら各成形金型(40,40V)で同一の前記車両部品本体(11)を用いて前記発泡成形品(20,20V)を成形して、前記ヘルムホルツ型共鳴器(25,25V)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10,10V)を製造することを特徴とする請求項7又は8に記載の車両部品(10,10V)の製造方法。
【請求項10】
同一の前記車両部品本体(11)及び同一の前記成形金型(40)を用い、前記成形金型(40)に対する前記発泡材の原液(H)の注入量を異ならせて、前記ヘルムホルツ型共鳴器(25)の共鳴周波数が互いに異なる複数種類の車両部品(10)を製造することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の車両部品(10)の製造方法。
【請求項11】
前記車両部品本体(11)に格子形リブ(14)を形成し、前記格子形リブ(14)に囲まれた前記凹部(15)を複数設け、それら複数の凹部(15)に突き合わされる前記成形支柱(56,56V)を複数設けることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の車両部品(10,10V)の製造方法。
【請求項12】
前記格子形リブ(14)のうち隣り合った前記凹部(15)を区画する部分に、前記格子形リブ(14)の先端から奥行き方向の途中まで延びたスリット(14S)を形成しておき、前記スリット(14S)を前記発泡成形品(20)にて塞ぐことを特徴とする請求項11に記載の車両部品(10)の製造方法。
【請求項13】
前記成形金型(40,40V)を上下方向に型開き可能とすると共に、前記成形金型(40,40V)のうち下側金型(51,51V)における底面の外縁部に環状溝(55)を形成し、
前記車両部品本体(11)のうち前記格子形リブ(14)が立ち上がった平坦面に、その格子形リブ(14)を囲むリブ包囲領域(S2)を設けておき、
前記成形金型(40,40V)の型開き面で前記車両部品本体(11)を狭持すると共に、前記下側金型(51,51V)の上端開口縁を前記車両部品本体(11)の前記リブ包囲領域(S2)に突き当て、
前記発泡成形品(20,20V)の成形時に、前記下側金型(51,51V)と前記車両部品本体(11)との突き当て部分の隙間からガスを排出して前記リブ包囲領域(S2)に前記発泡成形品(20,20V)を固着させることを特徴とする請求項11又は12に記載の車両部品(10,10V)の製造方法。
【請求項14】
前記車両部品(10,10V)はエンジンカバー(10,10V)であることを特徴とする請求項7乃至13の何れかに記載の車両部品(10,10V)の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−127196(P2010−127196A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303543(P2008−303543)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】