説明

車両駆動制御装置

【課題】可撓性連動動力伝達装置のメイン組立ラインにおけるステップ数および棚卸部品を低減する。
【解決手段】カムシャフトスプロケット50を離接可能に駆動装置フレームに取り付ける。クランクシャフト駆動ホイールを離接可能に駆動装置フレームに取り付ける。エンジン補機を駆動装置フレームに取り付ける。補機駆動ホイールをエンジン補機のシャフトに取り付ける。カムシャフトスプロケット50とクランクシャフトスプロケット、クランクシャフト駆動ホイールと補機駆動ホイールのそれぞれに可撓性連動媒体を掛けまわす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは内燃機関のカムシャフト及び補機と協働する可撓性連動動力伝達駆動装置(flexible link power transmission drives)、及びそれらの取り付けに関する。特に本発明は、スペースの有効利用とエンジン組立の向上を促進するこれら可撓性連動駆動装置(flexible link drives)の一体化に関する。具体的には、本発明は、可撓性連動動力伝達駆動装置及び自動車の内燃機関と連動する補機を、連携するエンジンから分離可能なユニットとして一体化すること、及びそれの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、一般に機械的な動力部を必要とし、動力はそれらのクランクシャフトで得られ、エンジンの主たる用途とは関連のない装置に伝達される。このような主たる用途には、乗物に動力を与えることや、電力あるいは水力に変換される動力の供給が定まった利用法として含まれる。これらの装置のあるものは、一般にエンジン補機(engine accessories)あるいは補助機(auxiliaries)と呼ばれる。これらの補機の中には、エンジンの運転を維持するのに必要な役割を果たす装置が含まれる。これらは、エンジンオイルの圧力を与えるための油圧ポンプ、キャブレターすなわち燃料噴射装置に供給される燃料に圧力を掛ける燃料ポンプ、マニホ−ルドの圧力を上げるための過給機(superchargers)、高圧磁石発電機(magnetos)、発電機(generators)すなわち点火スパーク(ignition spark)を与えるためのオルタネータ(alternators)、エンジン冷却装置を通る冷却剤(coolant)を循環させるウオータポンプ(water pumps)を含む。
【0003】
また、エンジンの主たる用途やエンジンの運転の維持とは関連のない役割を果たす補機も存在する。これらの例には、パワーアシステッドステアリングユニット(power assisted steering units)を加圧するためのパワーステアリングポンプ(power steering pumps)、点火装置を含まない乗物の電気システムに電力を供給するための発電機(generators)、すなわちオルタネータ(alternators)、乗物の特定の装置に動力を分配するための真空ポンプやエアコンのコンプレッサを含む。
【0004】
クランクシャフトの機械的な動力は、エンジンガスの流れを制御するバルブを作動させるためにも頻繁に用いられなければならない。一般に、これはクランクシャフトから1つ以上のカムシャフトへの同期的な動力の伝達を含み、バルブの同期的な動作をもたらす。
【0005】
エンジンの最も簡略なものとしては、ギア駆動あるいは可撓性連動駆動動力伝達装置(flexible link driven power transmission systems)がエンジン補機やバルブ列に動力を供給するために用いられている。可撓性連動動力伝達装置(flexible link power transmission system)には、非同期伝動ベルト装置、同期伝動ベルト装置や、チェーンを組み入れたものが含まれる。
【0006】
ギア駆動装置、すなわちギア列は、駆動装置のレイアウトや、カムシャフトとクランクシャフトなどの補機の相互の幾何学上の関係において限られた自由度しか許さない。ギアは相互に、軸のアライメントと距離において、厳密な関係に維持されなければならず、設計に従った配置(planar alignment)を維持されなければならない。また、クランクシャフトとの関係において、動力取出装置の位置(power takeoff points)の配置を変えるのに許される総体的な幾何学的制限が存在する。ギア列はまた、過剰な騒音を発生する嫌いがある。更に、このようなギア列は、一般にエンジンの潤滑油にアクセスすることを必要とする。しかしながら、ギア列は広い範囲の回転速度に渡って確実に動力を伝達するのに有効である。したがって、ギア列は、大型の重い負荷を担うエンジンに適用するには最適であり、特に圧縮点火型、例えば大型トラックなどに最適である。
【0007】
このようなギア列は一般に、エンジンに同様に搭載されなければならない多数のアイドルギアを必要とし、これにより、バルブ列やエンジン補機に対して適切な支持、及び駆動を提供するための問題は更に複雑なものとなる。エンジンバルブ列及び補機が駆動されるべき回転速度や、これらのバルブ列と補機が要求する比較的高いトルクにより、駆動列を構成する個々のギアは高い精度でなければならない。このような高品質の伝動装置の性能は、駆動列を構成する各ギアが、ギアの歯の噛合わせにおいて適正なギアラッシュを与えるように極めて慎重に配置されなければ十分に実現されない。最適なギアラッシュの達成に失敗することは、ギアの歯に対して、割高で時間のかかるギア列のオーバーホールを必要とする重大な損傷をもたらす可能性がある。
【0008】
上述の制限及び要求に答えようとする試みは、取り付けのための多様な取り組みを数多くもたらした。例えば、いくつかエンジンにおいては、補機駆動ギアは、エンジンのシリンダブロックに直接取り付けられている。しかしながら、シリンダブロックにギアを直接取り付けることは、補機やアイドラーのギアのシャフトを支えるためのボアをブロックに機械加工することを必要とする。更に、これらのボアは、クランクシャフトやカムシャフトとそれぞれに対して正確に一定の距離をおいて配置されなければならない。たった1つのボアの機械加工における誤差が、使用できないシリンダブロックをもたらし、これは相当な額の費用によって処分されなければない。ボアが正しく配置されている場合であっても、離れて配置された装置は、適正なギアラッシュとなることを要求される。
【0009】
別のアプローチは、クランクシャフトギア、補機ギア、カムシャフトギアを含むギア列の全てのギアを取り付けるフレームワークを作成することであり、これらの全てを1つのユニットとして組み立てることである。このユニットは後でシリンダブロックに取り付けられる。これは、要求される厳格な関係にギアを組み立て維持することを可能にし、シリンダブロック内に直接ボアを精密に機械加工する必要性を除去する。ギアシャフト支持ボアは、なおフレームワーク上に精密に配置されなければならない。しかしながら、機械加工に誤差が生じた場合、フレームワークのみが使用できないものとなる。生産者にとって、不正確に穴が開けられたフレームワークを処理するコストの方が、不正確に穴が開けられたエンジンシリンダブロックを処理するコストよりも著しく安い。
【0010】
更に、上述したギア列における要求から、補機や連携するそれらのギアを少しずつ取り外し交換することは極めて非実用的である。これは、フレームワークにいくつかの補機を搭載することをもたらした。コールトン(Chorlton)の米国特許第1,647,434号(特許文献1)は、このような配置に関し記述する。
【0011】
可撓性連動動力伝達装置により駆動される補機とバルブ列とは、これらの制限及び要求に直面しない。アイドラギア、駆動ギア、あるいは補機を正確に配置する必要性は著しく低減される。補機やクランクシャフトは、実質的により広い範囲において配置することができる。ギア列の高精度な要求がないことは、補機を漸次取り外し交換することを実行可能なものとする。また、可撓性連動伝動装置、特に伝動ベルトと用いる装置は静音に貢献する。
【0012】
これらの特徴は、可撓性連動動力伝達装置へと促し、自動車エンジンの応用において、可撓性連動動力伝達装置を補機及びバルブ列の駆動において支配的なものとした。現在最も一般的な装置は、各補機がエンジンブロックやシリンダヘッド上の離れた取付位置やブラケットに取り付けられるものである。そして、1つ以上の非同期伝動ベルトが、クランクシャフト駆動ホイールから各補機と連動する各駆動ホイールへと掛けられる。非同期伝動ベルトと連動する駆動ホイールはプーリ、すなわちシーブである。ベルトに張力を与え動力伝達駆動装置の適正な運転を促進するために、シリンダブロックにテンショナが別に取り付けられることも一般的である。
【0013】
一般に、カムシャフトはエンジンのシリンダヘッドに配置される。駆動ホイールは、カムシャフトに取り付けられる。そして、追加的な可撓性連動装置は、クランクシャフトの駆動ホイールからカムシャフトの駆動ホイールに掛けられる。カムシャフトのクランクシャフトとの同期的な動作の必要性から、可撓性連動装置は同期伝動ベルトやチェーンの何れかである。いずれにしても、クランクシャフト及びカムシャフト双方に用いられる駆動ホイールは、スプロケットである。補機駆動装置とともに、カムシャフトはまた、可撓性連動装置に張力を与え駆動装置の適正な運転を促進するためにシリンダブロック、すなわちヘッドに直接取り付けられた従動テンショナを駆動する。一般に、可撓性連動カムシャフト駆動装置は、エンジンの前面とフロントエンジンカバーとにより覆われている。これは、駆動装置を何らかの環境の影響、例えば泥や瓦礫、水などから守る。
【0014】
各補機を個々のブラケットに据え付ける替わりの方法は、補機を取付ける位置をフロントカバーの一部として含ませるものである。ホウスマン(Hausmann)等の米国特許第5,692,466号(特許文献2)は、このようなアプローチについて説明する。このアプローチは以下の長所を有すると言われている。1)通常使用される補機の支持ブラケットを省くことができるためコスト及び重量が低減される;2)補機に反力をうまく伝達する取り付け剛性(mounting stiffness)を与える;3)カムシャフト駆動装置のカバーの共振周波数が高められ、補機の振動を著しく低減するとともにエンジン運転時におけるエンジンの騒音を低減する;そして、4)エンジンシリンダブロックの前面に対する鋳造構造が簡略化される。ホウスマン(Hausmann)は、最初に補機がカバーに取り付けられ、続いてカバーと補機とが組み合わされたものがシリンダブロックに取り付けられ得ることに関して言及あるいは示唆していない。
【0015】
また、別のアプローチは、エンジン補機のための単一の取り付けブラケットを提供するものである。エンジンと連動される全ての補機のある部分は、集められてブラケットに取り付けられる。ブラケットとそれらの補機は、1つのユニットとしてエンジンのシリンダブロックに取り付けられる。クランクシャフトのプーリは、別の作業によりクランクシャフトに取り付けられる。一旦これらが完了すると、次に伝動ベルトがプーリの周りに取り付けられる。このアプローチは明らかに、メイン組立ラインの作業において必要なステップの数が低減される組立方法の改善、及び棚卸リストを削減しようとしたものである。
【0016】
しかしながら、これらのアプローチの如何なる個別的、あるいは組み合わせたものも、本発明の高度に一体化された可撓性連動動力伝動装置において得られる全ての利益を実現したものはない。それらの利益は、メイン組立ラインにおけるステップの数の更なる低減と、棚卸部品の更なる削減を含む。重大なことに、本発明は駆動ホイールのアライメントに対する制御を改善する機会を提供し、可撓性連動装置に対して改善された騒音と磨耗特性をもたらす。この改善された制御は更に、強化された寸法許容性を提供し、結果、より小型な駆動装置を提供する。同期駆動装置は満足な結果を得るために、クリーンでかつチェーン駆動装置では十分に潤滑された環境を必要とする。本発明は、カムシャフトと連動する駆動装置における同期部分のカプセル化の改良を可能にする更なる利益を提供し、これにより異物の侵入と潤滑油の漏れを低減する。
【0017】
これら全ての利益は自動車製造業者にとって大変価値がある。それらは組立コストを削減する。それらは動力装置をより小型にすることを可能にするとともに、より小さいエンジン区画を可能にし、与えられた寸法の乗物において、より広い室内空間をとることができる。騒音と磨耗の低減の成果は、品質に対する顧客認識、及び顧客受容を向上させ、品質保証による返却を削減する。
【0018】
以上により、連動する駆動ホイールを含めた全てあるいは実質的に全ての補機が予め組み立てられ;他の全ての駆動ホイールがエンジンへの最終取り付けの準備において取り付けられ;1つ又は複数の補機駆動装置が、駆動ホイールに対する可撓性連動装置の配置を含むように形成され;カムシャフト駆動装置が、補機駆動装置とは別体であろうが一部であろうが、スプロケットに掛けられる可撓性連動装置の取付けを含むように形成され;そして、カムシャフト駆動装置に対する使用環境の保護改善がもたらされるエンジンの駆動装置フレームを組み入れた高度に一体化された可撓性連動動力伝達装置に対する要求が残される。
【特許文献1】米国特許第1,647,434号明細書
【特許文献2】米国特許第5,692,466号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、メイン組立ラインにおけるステップの数が低減され、棚卸部品が低減される可撓性連動動力伝達装置の提供を目的とする。
【0020】
本発明は更に、駆動ホイールのアライメントに対する制御を改善する機会を提供し、可撓性連動装置に対して騒音と磨耗特性の改善をもたらし、かつ駆動装置を小型化することを目的とする。
【0021】
本発明は、更にカムシャフトと連動する駆動装置における同期部分のカプセル化の改良を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以上の事項及び本発明の目的に関わる他の目的を達成するために、ここにおいて具体化され概括的に説明されるように、一体化された動力伝達駆動装置と方法がここにおいて開示される。本発明は、内燃機関のための改良された動力伝達駆動装置に関するものである。この駆動装置は、内燃機関のクランクシャフトと内燃機関の主な目的とは関連しない駆動部品との間で動力を伝達する可撓性連動媒体を備える形式のものである。駆動装置は、駆動装置フレーム、駆動装置フレームに取り外し可能な状態で取り付けられるカムシャフトスプロケット、駆動装置フレームに取り外し可能な状態で取り付けられるクランクシャフト駆動ホイール、駆動装置フレームに取り付けられるエンジン補機、及びエンジン補機のシャフトに取り付けられる補機駆動ホイールを備え、クランクシャフト駆動ホイールと補機駆動ホイールは各々可撓性連動媒体により掛け回されることにより改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
今日一般に見られる補機駆動装置の外形が図1に示される。直列4気筒内燃機関10は補機が取り付けられた状態で正面から示される。補機として、オルタネータ12、エアコン用コンプレッサ14、及びパワーステアリングポンプ16を備える。オルタネータ12の替わりにオルタネータスタータ、すなわちジェネレータスタータを使用することも可能である。各々の補機と連動するのは、それぞれオルタネータプーリ18、エアコンプーリ20、及びパワーステアリングポンププーリ22である。クランクシャフト24(図2)は、第1のプーリ部28と第2のプーリ部30を備え、クランクシャフトに取り付けられるプーリ26を有する。第1のテンショナ34は、第1のテンショナプーリ42を第1の伝動ベルト32に対して偏倚させる。第1の伝動ベルト32は、パワーステアリングポンププーリ22、第1のプーリ部28と、第1のテンショナプーリ42に掛け回され、周に沿って接する。第1のベルト32は、第1のテンショナプーリ42により偏らせられ、それによってプーリ22と26に対して張力を与える。第2のテンショナ38は第2のテンショナプーリ40を偏倚させ、第2の伝動ベルト36を偏らせる。前記第2のベルト36はプーリ18、20、40と第2のプーリ部30に掛け回される。第1及び第2のベルト32と36は非同期のものであり、一般にはVリブド型である。また、エンジンのフロントカバー44が描かれている。
【0024】
図2に通常のデュアルオーバヘッドカム駆動装置が示される。内燃機関10が2つのカムシャフト46を有するかたちで示されている。カムシャフトに取り付けられているのはスプロケット50である。クランクシャフト24は、そこに取り付けられるクランクシャフトスプロケット54を有する。カムシャフトを駆動するのに加えて、図示された駆動装置は連動するウオータポンプスプロケット58を介してウオータポンプ56も駆動する。この駆動装置は、同期テンショナプーリ62を同期伝動ベルト48に向けて偏倚させる同期テンショナ60によって張力が与えられた状態とされる。
【0025】
今日の一般的な組立の実際の作業は、エンジン10に、クランクシャフト50、同期テンショナ60(プーリ62を含む)、ウオータポンプ56(スプロケット58を含む)、及びクランクシャフトスプロケット54を、それがメイン組立ラインにおける所定の一箇所又は数箇所の位置に到達したときに取り付けるものである。メイン組立ラインの後の方で、同期伝動ベルト48がスプロケット50、54、58及びプーリ62に掛け回される。フロントエンジンカバー44は、密閉するようにエンジン10に据え付けられる。更にメイン組立ラインでは、クランクシャフトプーリ26、オルタネータ12、エアコン用コンプレッサ14、パワーステアリングポンプ16、第1のテンショナ34、及び第2のテンショナ38がエンジン10に取り付けられる。オルタネータ12、エアコン用コンプレッサ14、パワーステアリングポンプ16、第1のテンショナ34、第2のテンショナ38には通常、それぞれ連動するプーリ18、20、22、42、40が予め装備されている。上述の全てが終了した後に、伝動ベルト32、36は、プーリ18、20、22、26、40、42に掛け回される。すなわちプーリ18、20、22、26、40、42に対して周に沿って接するように据えられる。
【0026】
この発明では、これらの組立ステップの殆どあるいは全てをメイン組立ラインから取り除き、自動車の製造において最も重要な組立経路(assembly path)の信頼性を向上させるとともに、これらのステップをより重要でない1つあるいはそれ以上の組立経路(assembly path)に配置することにより組立コスト全体を削減する。したがって、エンジン駆動装置フレームの提供を通して、すなわち改良されたフロントエンジンカバーを通して、これまで夥しい数の他の部分(parts)や部品(pieces)に分散していた多くの機能を、駆動装置モジュールの一部を構成する単一の製品により実現するように構成される。更に、以前は無理であった、離接可能(releasable)かつ/又は回転可能な駆動プーリ、例えばプーリ、シーブ、同期ベルト又はチェーンスプロケット、あるいは更に、これらの特性を組み合わせた駆動ホイールなどのフレームへの取り付けを含む組立工程のコスト効率を高める役割を果たす。
【0027】
図3及び図4に、フレーム64の好ましい実施形態が模式的に示される。一般的に、スティッフナ68によって補強されたベースプレート66を備える。スティッフナ68の実際の形状は、具体的な適用に当たって変化する。境界壁74はベースプレート66の周囲の実際の部分から張り出し、エンジン10のフロントの形状と実質的に一致し、特に、シリンダヘッド70とシリンダブロック72とを組み合わせたフロントの形状に一致する。ベースプレート66は、ベースプレート66とエンジン10のフロントとの間で対となる関係を形成するためにエンジン10のフロントの形状に合わせられる。フレーム64は補機、テンショナ、駆動ホイール、エンジンシャフトを搭載あるいは支持するための取り付け領域を有する。そこにはカムシャフトとスプロケットの取り付け領域76が含まれる。クランクシャフト46の取付端部84は、フレーム64がエンジン10に取り付けられたとき、これらの領域を通って突出する。カムシャフトの外側の境界とスプロケット取付領域76は、スプロケット保持器78を構成する。図4、図6においてより明らかに示されるが、保持器78は、外周80がカムシャフトスプロケット50の内周面82にピッタリと一致する中空の円錐台である。この一致は、カムシャフトスプロケット50が保持器78に軽く押圧され、エンジン10への完成されたモジュールの組立を待ち受ける場所に保持される離接可能な(releasable)嵌め合わせを形成する。スプロケット50が離接可能な状態で保持器78に取り付けられた後、エンジン10へのフレーム64の取り付け作業は、スプロケット50と嵌合するように取付端部84を押圧し、保持器78からスプロケット50を離接(released)させる。ファスナ86を締めることによりカムシャフト46へのカムシャフトスプロケット50の取り付けは完了する。
【0028】
上述したように、この好ましい実施形態における保持器78は、中空の円錐台形状をなす。図示はされないが、他の形状及び方法もまた考えられる。それらは、分割された中空台形や、ポスト(posts)、あるいは全体的に又は部分的に内周面82と嵌合するように構成された楔(pins)を含む。上述した保持器の各々の外周面80はノッチ(notches)やリッジ(ridges)、あるいは保持器78からスプロケット50を離すのに必要な力を加減するために、内周面82と協働するように構成された他の表面的な性質(textures)を備えていてもよい。同様に、内周面82も同じ目的で表面を加工することが可能である。接着剤を面80と82の間に付加することも可能である。更に、接着剤は、保持器78を形成するために、スプロケット50とベースプレート66との間の接点に配置することも可能である。
【0029】
図5と図6には、カムシャフトスプロケット50の上にアライメントホール88が描かれている。図示されるように、この好ましい実施形態は、操作部92とアライメントピン94を持つアライメントクリップ90を備える。スプロケット保持器50と一体的に形成されているのはピン受容部96である。カムスプロケット50が離接可能な状態でスプロケット保持器78に取り付けられ、アライメントピン94がアライメントホール88を介してピン受容部96に挿入されることにより、アライメントクリップ90が据え付けられると、カムシャフトスプロケット50は回転方向に固定される。クランクシャフト24とカムシャフト46の回転方向の関係は、エンジン10の適正な運転にとって重要である。フレーム65へのカムシャフトスプロケット50の固定は、カムシャフトスプロケット50のカムシャフト46に対する調整関係において、位置合わせのための位置を確立し、これにより、クランクシャフト24とクランクシャフトスプロケット54は、カムシャフト46とクランクシャフト24との間の厳密な関係を確立するように回転可能に心合わせされる。
【0030】
カムシャフトスプロケット50を離接可能に支持するとともにそれらの回転方向の位置を固定する図示されない付加的なアプローチは、付加的なピン受容部96をアライメントホール88に心合わせして結合するものであり、この説明された好ましい実施形態においては用いられない。そして、4つ全てのピン受容部96には、ネジ山が切られる。最後のステップは、アライメントホール88を通してファスナをピン受容部96の中にねじ込むものであり、ファスナはカムシャフトスプロケット50が、それらのカムシャフト46への取り付けにおいて、適正な軸位置に移動できるように十分緩い状態に留められる。フレーム64がエンジン10に取り付けられた後、ファスナはカムシャフトスプロケット50を解放するために取り除くことができる。
【0031】
2つのカムスプロケット50の間の間隙に単純に滑り込み、カムスプロケット50の歯に係合するように成形された簡単な装置を用いることによりアライメントホール88を省くことも考えられている。このアプローチはシングルカムのエンジンには用いられない。
【0032】
また、ジャーナル支持部98とカムシャフトスプロケットハブ100との接点にカムシャフトスプロケット50を枢着することにより、カムシャフトスプロケット50が回転自在支持される方法も考えられている。この形成方法(configuration)では、やはりカムシャフトスプロケット50を回転方向に固定するためのアライメントクリップ90を用いる。このような実施形態では、スプロケット保持器78は設けられておらず、カムスプロケット50がカムシャフト46に取り外し可能に取り付けられた際に、カムスプロケット50の横方向の移動をいくらか融通するために枢着は緩くなければならない。
【0033】
図3を参照すると、フレーム64は更に、同期テンショナ取付位置102、ウオータポンプ取付位置104、パワーステアリングポンプ取付位置106、オルタネータ取付位置108、アイドラ−取付位置110、多軸掛けベルトテンショナ取付位置112、エアコン用コンプレッサ取付位置114、及びクランクシャフト取付領域116を備える。図7、8に示されるように、複数の取付穴118が、カム駆動装置カバー130をフレーム764に留め付けるために境界壁74に沿って配置される。この好ましい実施形態は、前方からエンジン10を支えるためのエンジン(motor)取付ブラケット120を備える。したがって、挿通孔124とともに補強ポスト122は、エンジン10とエンジン取付ブラケット120との間の結合を補強するために設けられる。しかしながら、多くの装置(applications)では、取付ブラケット120は含まれない。
【0034】
図13を参照すると、クランクシャフトプーリ126の離接可能な取り付け形状が示されている。プーリハブ132は、プーリハブ132と、ハブ132を取り囲みハブ132とクランクシャフトスプロケット54との間の接点に近いところに支持溝134を備える。溝134はカム駆動装置カバー130の下部に形成される第1の突出部136と、溝134に最も近い境界壁74の一部に形成された第2の突出部138と協働し、プーリ126を適正な位置に固定されない状態で保持する。ある装置(application)では、第1の突出部136がクランクシャフトプーリ126を十分適切に支持し、第2の突出部138の必要性を取り除く。本図に図示された好ましい実施形態では、プーリ126は捩り振動ダンパである。したがって、プーリ126は慣性リング140とゴム介装物142を備える。
【0035】
図示された実施形態では、エンジンオイルポンプ144はベースプレート66に添えられる。ポンプ144は、ポンプ本体146とポンプ回転子148とを有する。回転子148は、クランクシャフト24により直接駆動され、同期伝動ベルト48、カムシャフトスプロケット50、クランクシャフトスプロケット54、同期テンショナ60、同期テンショナプーリ62、ウオータポンプ56、及びウオータポンプスプロケット58を備える同期カムシャフト駆動装置と機械的に連結されている。ウオータポンプスプロケット58は、ベルト48のもう一方の面で駆動されるプーリであってもよい。更に、ウオータポンプ56は、替わりに非同期伝動ベルト98によって駆動されてもよく、あるいは図示されたオイルポンプ144と同様の方法で直接駆動されてもよい。同様に、オイルポンプ144は、同期伝動ベルト49や非同期伝動ベルト98によって駆動されてもよい。クランクシャフトの先端のオイルシール150は、ポンプ本体146とスプロケット54の接触面を密閉する。
【0036】
実際には、フレーム64が提供される。前述したように、カムシャフトスプロケット50は、離接可能あるいは回転可能な状態でカムシャフトスプロケット取付領域76に取り付けられる。ウオータポンプ56とこれに連動するスプロケット58はウオータポンプ取付位置104に取り付けられる。同期テンショナ60とこれに連動するプーリ62は同期テンショナ取付位置102に取り付けられる。オイルポンプ144はクランクシャフト取付領域116に取り付けられる。圧縮点火エンジン等の装置のように、同期された燃料ポンプの運転を必要とする装置(applications)では、燃料ポンプは、ベースプレート66の同期伝動ベルト48により駆動されるのに適切な位置に取り付けられてもよい。クランクシャフトプーリ126とクランクシャフトスプロケット54の組み合わせが提供される。これらは個別に供給される部品(items)であっても、一体的なユニットであってもよい。
【0037】
更に、適用される装置(applications)に応じて、非同期駆動装置は、1つよりも多い数の非同期伝動ベルトを含むことが可能である。この好ましい実施形態では、同期伝動ベルト48及び非同期伝動ベルト98の双方が、可撓性連動動力伝達媒体の一部を構成した。1つよりも多い数の同期ベルト、あるいは1つよりも多い数の非同期ベルトを必要とするそれらの装置(applications)には、そのような全てのベルトが可撓性連動動力伝達媒体を構成する。上記何れかのベルトがチェーンによって置き換えられる場合には、チェーンあるいはチェーンとベルトの組み合わせが可撓性連動動力伝達媒体を構成する。
【0038】
同期伝動ベルト48が提供され、スプロケット50、54、58、及びプーリ62の周りに掛け回される。アライメントクリップ90は、アライメントホール88とピン受容部96とを通して挿入される。上述したように、カムシャフトスプロケット50が、クリップ90の挿入により回転方向に固定されると、同期伝動ベルト48を掛け回すことにより、クランクシャフトスプロケット54は回転方向に固定される。支持溝134は、第2の突出部138と噛合わされる。その後、カム駆動装置カバー130が境界壁74においてフレーム64に嵌め合わせられる。最初、第1の突出部136は支持溝134に噛合わされている。このとき、カム駆動装置カバー130は支持溝134に対して傾いた状態とされる。これによりプーリ126及びスプロケット54は、それぞれ第1及び第2の突出部136と138との間に配置される。カム駆動装置カバー130はその後、境界壁74と嵌合され、フレーム取付穴118に挿入され締められたファスナ(図示せず)により、そこにしっかりと取り付けられる。この組立の段階は図7に示される。
【0039】
オルタネータ12、エアコン用コンプレッサ14、パワーステアリングポンプ16は、それぞれそこに取り付けられ、連動するプーリ18、20、22とともに提供される。多軸掛けベルトテンショナ152、プーリ154、及びアイドラプーリ156もまた提供される。各々は取付位置108、114、106、112、及び110にそれぞれ取り付けられる。その後、非同期伝動ベルト48はプーリ18、20、126、22、154の周りに、ベルト48の設置を可能とするために反り返った多軸掛けベルトテンショナ152とともに掛け回される。
【0040】
組み立てられた駆動装置モジュールは図8に図示される。この段階において、ユニットとして、エンジン10に取り付けられる状態が整う。それは取付ボルト158を、穴122を介して挿入し、シリンダブロック72に設けられた対応するネジ穴(図示せず)に締め付けることによりエンジン10に取り付けられる。カムスプロケットファスナ86及びクランクシャフト取付ボルト128が挿入され締め付けられる。カムシャフトファスナアクセスプラグ160は、ファスナ86を覆って、カム駆動装置カバー130に配置される。アライメントクリップ90は取り外される。
【0041】
駆動装置モジュール52のエンジン10への取り付けを除く全ては、メインの自動車組立ライン以外の組立ラインに通常存在する。単なる駆動装置モジュール52のエンジン10への取り付けは、エンジン組立ライン、又はメイン自動車組立ラインの何れかにおいて通常完了する。
【0042】
好ましい実施形態では、ファスナ86の締め付けとクリップ90の取り外しは、カムシャフトスプロケット50をスプロケット保持器78から引き離し、カムシャフトスプロケット50がカムシャフト46に連動して回転することを可能にする。クランクシャフト取付ボルト128の締め付けは、支持溝134を第1及び第2の突出部136、138から引き離し、クランクシャフトプーリ126とクランクシャフトスプロケット54がクランクシャフト24と連動して回転することを可能にする。その後、テンショナ152は、その作動位置に解放(released)される。テンショナ152は、駆動装置モジュール52が取り外し可能な状態でエンジン10に取り付けられた後で初めて解放され得る。さもなければ、クランクシャフトプーリ126は、動かない位置に偏って装填され、組立を妨げる。
【0043】
駆動装置モジュール52は、ここで取り外し可能な状態でエンジン10に取り付けられる。すなわち、ファスナ86及びボルト128、158を取り除くことにより、駆動装置モジュール52と、その全ての構成部品はエンジン10から取り外すことができる。これはスプロケット50又は54あるいはプーリ126が各々離接可能あるいは回転可能に取り付けられるか否かによらない。
【0044】
特定の装置(applications)に対しては、補機の付加的な支えが必要であるかもしれにないことが考慮される。図9から図12は、補足的なブラケット162を図示する。ブラケット162は、補機12、14とエンジン10との間に配置され、それぞれにボルトで留められる。
【0045】
この点に関して、駆動装置モジュール52のエンジン10の前面への取り付けが論じられている。エンジン10への様々な取り付け位置が、エンジン10の形状と、連動する動力取出装置の位置(associated power take−off point)と、補機とに従って調節され得ることが考慮される。駆動装置モジュール52はまた、自動車の範囲を越えて、様々な内燃機関の応用分野に適用することができる。これらは、トラックのそれや、オフロード機器、航空機、そして固定された動力源への応用を含む。
【0046】
同期伝動ベルト48の替わりにチェーンを用いることも可能である。このような場合、スプロケット50、54は、チェーン用に適切に成形され、同期テンショナ60は、一般にプーリ62の替わりにスライド(slide)を備える。また、同期伝動ベルト98をチェーンに置き換えることもできる。このような場合、プーリ18、20、22、126、154、156は、スプロケットに置き換えられる。
【0047】
図14は、同期ベルト480によって駆動されるオルタネータスタータ201を有する代替的な実施形態を示す。この実施形態では、オルタネータスタータ201はフレーム640の取付位置200にファスナ210を用いて取り付けられる。フレーム640は、ここにおいて、追加されたオルタネータスタータ取付位置を除いて、実質的に別のところで説明されたフレーム64と同一である。オルタネータスタータ201に加えて、この実施形態は、本明細書において既に述べられた他の補機とオルタネータスタータ201との如何なる組み合わせを含んでもよい。
【0048】
オルタネータスタータ201は同期伝動ベルト480によって駆動される。ベルト480は、オルタネータスタータスプロケット202と係合する。スプロケット202は、歯が設けられた輪郭を有する。しかしながら、オルタネータスタータの運転はエンジンのタイミングに依存しないので、スプロケット202は、ベルト480とコンパチブルであれば、マルチリブドやVベルトなどの他の如何なるベルト形状を含んでも良い。アイドルプーリ203はカムシャフトスプロケット50とスプロケット202との間に配置される。ベルト480は、スプロケット202とアイドルプーリ203の付加に適応するために長さにおいて異なるだけで、実質的にベルト48と同一である。同期伝動ベルト480を含む可撓性連動装置は、更にチェーンを含んでも良い。
【0049】
別の実施形態では、オルタネータスタータ201の筐体が、取付位置200においてフレーム640に一体化される。オルタネータスタータ201の筐体が、取付位置200においてフレーム640の一体化された部分として鋳型成形あるいは機械成形される。そして、回転子(図示せず)を含むオルタネータスタータ201の一部は、オルタネータスタータ201が独立した部品であるときと同様の方法で、この筐体の中に組み立てられる。この実施形態は、更に機械的な結合と、他の方法では取付位置200へのオルタネータスタータの取り付けに用いられる付帯的なファスナを省くことにより、全モジュールの構造的な一体化を高める。この構成要素である筐体を駆動装置モジュールのフレームの一体的な部分として製造する方法は、パワーアシステッドステアリングポンプ16、燃料噴射ポンプ301や、エアコン用コンプレッサ14を含むフレームに取り付けられる他の如何なる補機の構成部に対しても応用できる。
【0050】
上述のどの実施形態においても、オルタネータスタータ201は、2つのモードで用いられる。第1のモードでは、オルタネータスタータは、単にエンジンが運転されている際に、エンジンの様々な電気的な構成部に電力を提供する交流発電機として作動する。
【0051】
第2のモードでは、オルタネータスタータ201は、スタータとして作動する。この第2のモードでは、エンジン10は通常の方法で始動される。しかしながら、例えば停止信号において、燃料を消費し、排ガスを放出しながら、アイドル状態で運転される場合とは異なって、エンジンを停止することもできる。そして、車両を始動させる必要がある場合には、電源、例えば12Vや42Vのバッテリーが、スタータモータとして作動させるためにオルタネータスタータ201に電力を供給する。例えば、スロットル入力に対する応答として、オルタネータスタータは始動され、ベルト480はオルタネータスタータ201により駆動される。それにより、掛け回された構成部品が駆動され、エンジン10が回転されてエンジン10が始動される。一旦エンジンが駆動されると、オルタネータとしての機能が再開される。従来技術とは異なり、オルタネータスタータ201を1つの構成部に合体させることは、これらのことを可能にし、そうでなければ、個別の構成部がエンジンにおいて単独の機能を果たす位置で使用されなければならない。これは通常、曲げ板(flexplate)や弾み車(flywheel)に隣接するエンジンの別の部分に設置される個別のスタータの必要性を除去する。
【0052】
またスタータを省き、オルタネータスタータをフレーム640に合体させることは、個別のスタータとスタータの取り付けに関する組立工程を取り除くことにより、材料費を著しく低減する。また、ここに説明されるように、それは駆動装置モジュールの組立にそのとき組み込まれるので、エンジンの重要な組立経路からスタータの取り付けが除かれる。
【0053】
図15は、燃料噴射ポンプ部を有する別の代替的な実施形態を図示する。この実施形態では、燃料噴射ポンプ301はフレーム6400の位置300に取り付けられる。追加された燃料噴射ポンプ取付部を除いて、フレーム6400は略フレーム65と同一である。燃料噴射ポンプ301は同期伝動ベルト4800によって駆動される。ベルト4800は、燃料噴射ポンプスプロケット302と係合する。
【0054】
伝統的なロータリあるいは直列式噴射ポンプ(in−line injection pumps)を用いる圧縮点火式エンジンにおいては、適正な燃料噴射ポンプの作動は、エンジンのタイミングに依存し、同期ベルトを用いることを必要とする。スパーク点火式、あるいは通常のレール式(rail type)燃料噴射システムに適合された圧縮点火式エンジンにおいては、適正な燃料ポンプの作動は、エンジンのタイミングに依存することも、しないこともある。適正な機能が、クランクシャフトの回転に対する同期的関係に依存しない場合には、スプロケット302はベルト4800の背面(図示せず)の上を走行する。ベルト4800は、Vリブドベルトやマルチリブドベルト、そしてVベルトを含む他の如何なるベルト形状であってもよい。
【0055】
スプロケット302は歯付の輪郭形状を有する。アイドルプーリ303はクランクシャフトスプロケット50とスプロケット302の間に配置される。スプロケット302とアイドルプーリ303との付加により調整される長さの違いを除いて、ベルト4800は略ベルト48と同一である。
【0056】
また、この配置は燃料噴射ポンプ301をエンジン10の別の位置に単独で配置する必要性を取り除く。それは更に、モジュールとは独立した燃料噴射ポンプを取り付けるための個別のステップを無くす。これは、フレーム6400がエンジン10に連結される前に、フレーム6400に燃料噴射ポンプ301を予め取り付け可能とすることにより、エンジン組立の全体を著しく簡略なものとする。
【0057】
図16を参照すると、スプロケット202がシャフト205に取り付けられている。シャフトシール306は、シャフト205に沿ってフレーム640から汚染物質が進入するのを防止する。オルタネータスタータ201は、本明細書の別の場所で説明されたのと同様に、フレーム640がエンジン10に連結される前にファスナ310、311を用いてフレーム640に取り付けられる。オルタネータスタータ201とエンジン10との間には、他の如何なる構造上の連結も必要とされない。フレーム640は、オルタネータスタータ201を完全に支持する。しかしながら、もし必要であれば、フレーム64からとは別に、オルタネータスタータ201からエンジン10へのファスナが、更に組立を強固なものとするために追加されてもよい。
【0058】
図17を参照すると、燃料噴射ポンプ301が、フレーム6400のフレームボス6401にファスナ306を用いて連結されている。ポンプ301は、フレーム6400がエンジン10に連結される前にフレーム6400に連結される。スプロケット302はファスナ304を用いてシャフト305に取り付けられる。燃料噴射ポンプ301とエンジン10との間には、他の如何なる構造上の連結も必要とされない。フレーム6400は完全に燃料噴射ポンプ301を支持する。燃料ライン(図示せず)は、燃料タンクからこのポンプへと延び、ユーザの要求などに応じて、ポンプから各シリンダー(図示せず)に延びていてもよい。しかしながら、必要であるならば、フレーム64からとは別に、燃料噴射ポンプからエンジン10へのファスナが、更に組立を堅固なものとするために追加されていもよい。
【0059】
図18は、フレーム64の側面に取り付けられるタンク(reservoir)400を図示する。タンク400は、ストラップやクリップ(図示せず)はもちろん、ネジが切られたファスナを用いてフレーム64に取り付けられてもよい。チューブ401は、タンク400とパワーステアリングポンプ16との間に、供給流体経路及び戻り流体経路を備える。
【0060】
別の代替的な実施形態では、タンク400は、例えばフレーム64の一体的な部分である。フレーム64の製造過程において、パワーステアリング用流体を貯留するための空洞(図示せず)がフレーム64に形成される。
【0061】
図19は、リフティングフレームの斜視図である。リフティングフレームは、駆動装置モジュールをエンジンの組立工程において吊るしておいたり、その他の操作を行ったりするために用いられる。リフティングフレーム600は本体601を備える。プレート602は、本体601に取り付けられる。プレート602は、ロッド606、607をフレーム64に係合するための穴604、605を備える。取付具603は、駆動ホイールと係合するために円形の外形を有する。
【0062】
使用に当たっては、リフティングフレーム600は、初めクランクシャフト駆動ホイールと係合される。次に、穴604、605が、エンジン取付ブラケット120のロッド606、607と係合するように、プレート602が、幾分持ち上げられる。図7参照。リフティングフレーム600は、ここにおいて、組立の工程のためにフレーム65に適切に係合される。フレーム600は、一旦組立が完了すれば取り外すことができる。
【0063】
図20を参照すると、アライメントフレーム700は、取付ブラケット701を備え、フレーム700は取付ブラケット701により、取り外し可能な状態でエンジンに取り付けられる。フレーム700は更に、ガイド702、703を備え、ロッド704、705はガイド702、703を挿通して摺動自在に係合される。ロッド704、705は、ガイド702、703を通る長手方向の主軸に沿って軸方向に移動可能である。ロッド705、704の端部706、707は、それぞれフレーム64の対応する穴708、709に係合する。
【0064】
一般に組立工程は、エンジンの組立の一部として、駆動装置モジュールをエンジンブロックに取り付ける工程を含む。運転中、回転部を有するエンジンブロックは、有効な動力を発生する。ここにおいて説明される駆動装置モジュールは、自己完結しており、エンジンブロックに取り付けられる。モジュールは、運転中にエンジンブロックにより発生された有効な動力の一部を受け取り、ここにおいてより十分に説明されるように、それは大体においてクランクシャフトとの接続によるものである。ブロック、特にクランクシャフトから受け取る有効な動力の一部を利用することにより、モジュールはこのような形態の動力を、例えば運転のためのエンジンからの要求に応じてエンジンに供給する。これは、電気系統についてのここでのより詳細な説明において述べられるように、モジュールの設けられた構成部によって生産される電力を含む。それはまた、ここでより詳細に説明されるように、例えばパワーステアリングなどの流体駆動装置のためのモジュールに設けられた構成部により発生される流体動力を含んでも良い。流体動力用の流体は、水や、作動液、あるいはパワーステアリング流体等の非圧縮性流体を含んでもよい。モジュールは、例えばクランクシャフトを1つ又は複数のカムシャフトに機械的に連結するものや、ここでより詳しく説明されるように可撓性連動装置を用いて他の複数の補機を連動するというような、エンジンの複数の回転部を駆動する機械的な動力を提供してもよい。
【0065】
モジュールの取付工程はフレーム700のエンジンへの取付作業を含む。取付作業は、ファスナの使用により、あるいはフレーム700を取り付けるエンジンに設けられた如何なる形式の取付位置、あるいは取付具に対する連結により達成される。ロッド704、705は、その後フレーム64を支持するために延ばされる。フレーム64は、図19に図示されるように、エンジン取付ブラケット120に取り付けられたリフティングフレーム600用いて操作される。フレーム64はその後、ロッド端部707、708に穴708、709を用いてそれぞれ係合される。そして、フレーム64は、ロッド704、705をそれぞれガイド703、704を通して滑らせることにより、エンジンの前面と係合するように押し込まれる。本明細書の別のところで説明されるように、ロッド704、705と穴703、702は、エンジンと、カムシャフトとクランクシャフトを含むエンジンの構成部とに対するフレーム64の適切なアライメントを保証するために、所定の位置に配置される。フレーム64の取付位置は、更に、各構成部の適正な関係を保証するために基準面A−Aから決定される。
【0066】
一旦フレーム64が、エンジンの適切な位置に置かれると、リフティングフレーム600が取り外される。フレーム64は、工程のこのステップではアライメントフレームロッド704、705により支持される。そして、ネジが切られたファスナがフレーム64を通してエンジンに捩じ込まれる。一旦フレーム64がエンジンに固定されると、ロッド704、705は穴708、709から引き抜かれ、フレーム700はエンジンから取り除かれる。回転ボルトドライバ等の取付装置が、ファスナをエンジンに確りと留め付けるために用いられてもよい。回転ボルトドライバは、組立工程において、ファスナの適切で迅速なアライメントを確かなものとするために、各ロッド706、707に更に係合してもよい。その後、本明細書の別のところで説明されるように、駆動ホイールが、それらの各々のシャフトに留め付けられる。
【0067】
図21は駆動トルク制御リンクを備えるエンジンの正面立面図である。取付ブラケット801はフレーム64に取り付けられている。取付ブラケット802は乗物のフレーム805に取り付けられている。トルクリンク803は取付ブラケット801と802の間に、ファスナ804を用いて連結される。ファスナ804は、エンジンの振動を低減するためにゴムブッシング(図示せず)を備えていてもよく、この振動はファスナ804がゴムブッシングを備えていないとトルクリンク803を介して乗物のフレーム805に伝達される。取付ブラケット801は、取付ブラケット801とエンジンマウントとの距離を最大にするにはフレーム64に配置されることが好ましく、これによりエンジンのトルクは、エンジンマウント800からできるだけ離れた位置に作用する。しかしながら、取付ブラケット801、802の位置は、所与の乗物の形状に必要とされるデザインに合わせて変更することが可能である。
【0068】
図22は、オイルギャラリ(oil gallery)を備える別の実施形態の側断面図である。モジュールフレーム64はエンジン10の前面に取り付けられた状態で示されており、これはブロック904に取り付けられたシリンダヘッド900を有する。フレーム64の一部はギャラリ902を有する。ギャラリ902は、流体継手部とシリンダヘッドとエンジンブロックとの間の流体通路とを提供し、例えば、ブロック(図示せず)に取り付けられるオイルパンへと繋がる。オイルポンプ(図示せず)によりシリンダヘッドに送り込まれた油はヘッド900を通ってヘッド排出管(head drain)901に流れる。ヘッドド排出管901はギャラリ902に接続されている。油はギャラリ902を通ってブロック取入口(block intake aperture)903へと流れる。その後、油はブロック取入口903に接続されるエンジンの一部へと流れる。ギャラリ902は、液漏れを防止するために、シリンダヘッドとブロックに密封されている。
【0069】
図23はオイルギャラリの正面図である。取入領域906と排出領域907を有するギャラリ902が図示されている。しかしながら、ユーザの必要に応じて、流体が領域907からギャラリ902に入り、領域906から出ることも可能である。ガスケット905は、ギャラリ902からの流体の液漏れを防止するためにギャラリ902を密封する。ギャラリ902は、様々なエンジン構成部の間における流体の流れに適合するための如何なる形状にもデザインできるので、図23に示されるギャラリ902の形状は、例として示されたものであって、これに限定されるものではない。
【0070】
またギャラリ902は、エンジンとモジュールに強めの冷却(enhanced cooling)を提供するために空気通路として使用されてもよい。この実施形態では、空気ギャラリは、モジュールフレームとエンジンとの間で空気が循環することを可能にする。このギャラリは空気がモジュールベースの外部から入ることを許す。空気は、対流とモジュールの上部に設けられた出口(図示されず)からの排気により循環する。
【0071】
強制的な空気の流動機構を、モジュールギャラリ902を通る冷却空気の流れを与えるために用いてもよい。この実施形態では、空気は空気ポンプすなわち圧縮機により、フレームの十分な冷却効果が得られる速さで、ギャラリ内を強制的に通される。ギャラリの形状は、十分にフレームを冷却するようにモジュールフレームを横切って空気の流れが集中するように配置される。ギャラリは更に冷却空気の流れに対して最大の表面積で接するように冷却フィンを備えてもよい。
【0072】
また、他の実施形態のギャラリ902は、フレーム64とそれが取り付けられるエンジンとの間のエアギャップを確立するために大きさが拡大されている。この空気で占められる領域は、フレームとベルトをエンジンの熱から遮断し食い止める。空気の断熱層を用いたモジュール温度の低下は、ベルトの運転寿命を増加させる効果がある。
【0073】
これまでの説明と例示的な本発明の実施形態は、図面を用いて示され、様々な変形例と代替的な実施形態により詳細に説明された。しかしながら、これまでの本発明に関する説明は、単に例示されたものであり、本発明の範囲は、従来技術の視点から理解される請求項によってのみ制限される。更に、ここにおいて例示的に開示された本発明は、ここで具体的に開示されない如何なる構成要素がない場合にも適切に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来の補機駆動装置の外観を示す。
【図2】従来のデュアルオーバヘッドカム駆動装置を示す。
【図3】エンジン駆動モジュールのフレームの立面図である。
【図4】図7の4−4線における断面図である。
【図5】カムシャフト駆動装置を示すエンジン駆動モジュールのフレームの立面図である。
【図6】位置決めされたカムシャフトスプロケットの詳細を描いたものである。
【図7】カムシャフト駆動装置のカバーが取り付けられた状態でのエンジン駆動モジュールのフレームの立面図である。
【図8】カムシャフト駆動装置のカバーと補機とが取り付けられた状態でのエンジン駆動モジュールのフレームの立面図である。
【図9】補足的なブラケットの後ろからの据え付け状態を示す立面図である。
【図10】補足的なブラケットの横からの据え付け状態を示す立面図である。
【図11】補足的なブラケットの側立面図である。
【図12】補足的なブラケットの横からの据え付け状態を示す立面図である。
【図13】駆動装置のフレームとクランクシャフトに組み付けられる、捩り振動ダンパを有するクランクシャフト駆動ホイールの詳細図である。
【図14】同期ベルトにより駆動されるオルタネータスタータを有する代替的な実施形態を示す。
【図15】燃料噴射ポンプ部品を備える代替的な実施形態を示す。
【図16】オルタネータスタータの側断面図である。
【図17】燃料噴射ポンプの側断面図である。
【図18】パワーアシステッドステアリングポンプ用貯留タンクの正面からの立面図である。
【図19】リフティングフレームの斜視図である。
【図20】エンジン組立のためのアライメントフレームの側断面図である。
【図21】駆動トルク制御リンクを有するエンジンの正面からの立面図である。
【図22】オイルギャラリを備える代替的な実施形態の側断面図である。
【図23】オイルギャラリを備える代替的な実施形態の正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック、シリンダヘッド、クランクシャフト、及びカムシャフトを備える内燃機関を有するとともに、エンジン補機を有する形式の改良された動力装置であって、
駆動装置モジュールが取り外し可能に前記シリンダブロック、前記クランクシャフト、及び前記カムシャフトに取り付けられ、前記モジュールが可撓性連動動力伝達駆動装置を有するとともに、前記クランクシャフト、前記カムシャフト、前記エンジン補機の間にいおいて機械的な動力を伝達するように構成されている
ことを特徴とする動力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−8300(P2008−8300A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208856(P2007−208856)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【分割の表示】特願2002−502293(P2002−502293)の分割
【原出願日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】