説明

車両

【課題】ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することが可能な懸架装置を備えた車両を提供する。
【解決手段】この自動二輪車(車両)1は、車体(2〜5)と後輪15との間に設けられるとともに、車体(2〜5)と後輪15とが相対的に移動するときの衝撃を吸収するリヤサスペンション16を備えている。また、リヤサスペンション16は、空気が充填される上部ガス室71と、上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも小さい場合に、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を吸い込むように構成された空気圧調節部46とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に関し、特に、懸架装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車(車両)用のサスペンション装置(懸架装置)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、空気が充填されたガス室を内部に有する管状部材(外筒部)と、管状部材内に配置されるピストンとを備えたサスペンション装置が開示されている。このサスペンション装置は、サスペンション装置が伸縮する際に、ガス室の空気が圧縮および膨張されることにより、反力が発生されるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特表2001−501155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたサスペンション装置では、通常、サスペンション装置の反力を大きくするために、ガス室に高圧の空気が充填される。このように、ガス室に高圧の空気が充填された場合、ガス室からサスペンション装置の外部に空気が漏れるのを完全に防止するのは困難であるので、ガス室からサスペンション装置(懸架装置)の外部に空気が徐々に漏れる。このため、長期的に見て、ガス室の空気圧が低下するという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することが可能な懸架装置を備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による車両は、車体と、車輪と、車体と車輪との間に設けられるとともに、車体と車輪とが相対的に移動するときの衝撃を吸収する懸架装置とを備えている。そして、懸架装置は、空気が充填されるガス室と、ガス室の空気圧が所定の値よりも小さい場合に、懸架装置の外部からガス室に空気を吸い込むように構成された第1空気圧調節手段とを含む。
【0007】
この一の局面による車両では、上記のように、懸架装置に、空気が充填されるガス室と、ガス室の空気圧が所定の値よりも小さい場合に、懸架装置の外部からガス室に空気を吸い込むように構成された第1空気圧調節手段とを設けることによって、ガス室から懸架装置の外部に空気が徐々に漏れることによりガス室の空気圧が所定の値よりも小さくなった場合に、第1空気圧調節手段により懸架装置の外部からガス室に空気を吸い込むことができるので、ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0008】
上記一の局面による車両において、好ましくは、懸架装置の第1空気圧調節手段は、懸架装置が伸縮することにより、懸架装置の外部からガス室に空気を吸い込むように構成されている。このように構成すれば、車両の走行中に、地面の凹凸などに起因して懸架装置が伸縮することにより、懸架装置の外部からガス室に空気を自動的に吸い込むことができるので、容易に、ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による車両において、好ましくは、懸架装置の第1空気圧調節手段は、第1逆止弁を含む。このように構成すれば、ガス室の空気圧が所定の値よりも小さい場合に、第1逆止弁により、懸架装置の外部からガス室に、容易に、空気を吸い込むことができるとともに、懸架装置の外部からガス室に吸い込まれた空気が逆流するのを抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による車両において、好ましくは、ガス室は、懸架装置の伸長時に空気が圧縮されるとともに、懸架装置の圧縮時に空気が膨張される第1ガス室と、懸架装置の伸長時に空気が膨張されるとともに、懸架装置の圧縮時に空気が圧縮される第2ガス室とを有する。このように構成すれば、懸架装置の伸縮時に、第1ガス室および第2ガス室の空気を圧縮および膨張することにより、容易に、反力を発生させることができるので、車体と車輪とが相対的に移動するときの衝撃を、容易に、吸収することができる。
【0011】
上記ガス室が第1ガス室および第2ガス室を有する車両において、好ましくは、懸架装置は、外筒部と、外筒部に移動可能に挿入される軸部と、軸部に取り付けられる第1ピストン部とをさらに含み、第1ガス室は、少なくとも外筒部の内面と軸部の外面と第1ピストン部とによって囲まれた領域に設けられ、第2ガス室は、少なくとも外筒部の内面と第1ピストン部とによって囲まれた領域に設けられる。このように構成すれば、第1ガス室および第2ガス室を、容易に、設けることができる。
【0012】
上記懸架装置が外筒部、軸部および第1ピストン部を含む車両において、好ましくは、軸部は、オイルが充填されるオイル室を有し、懸架装置は、軸部のオイル室内に配置される第2ピストン部をさらに含み、懸架装置の伸縮時に、第2ピストン部が軸部のオイル室内を移動することにより、懸架装置に減衰力が発生される。このように構成すれば、懸架装置に減衰力を効果的に発生させることができる。
【0013】
上記ガス室が第1ガス室および第2ガス室を有する車両において、好ましくは、第1ガス室は、第1空気圧調節手段を介して、懸架装置の外部に接続されている。このように構成すれば、第1空気圧調節手段により懸架装置の外部から第1ガス室に空気を吸い込むことができるので、第1ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0014】
上記第1ガス室が第1空気圧調節手段を介して懸架装置の外部に接続されている車両において、好ましくは、懸架装置の圧縮時に第1ガス室の空気が膨張されることにより第1ガス室の空気圧が所定の値よりも小さくなった場合に、懸架装置の外部から第1ガス室に空気が吸い込まれる。このように構成すれば、容易に、懸架装置の圧縮時に、懸架装置の外部から第1ガス室に自動的に空気を吸い込むことができる。
【0015】
上記第1ガス室が第1空気圧調節手段を介して懸架装置の外部に接続されている車両において、好ましくは、懸架装置は、第1ガス室から第2ガス室に空気を供給する第2空気圧調節手段をさらに含み、懸架装置の伸長時に第2ガス室の空気が膨張されることにより第2ガス室の空気圧が第1ガス室の空気圧よりも小さくなった場合に、第1ガス室から第2ガス室に第2空気圧調節手段を介して空気が供給される。このように構成すれば、第2ガス室の空気圧が第1ガス室の空気圧よりも小さくなった場合に、第2空気圧調節手段により第1ガス室から第2ガス室に空気を供給することができるので、第2ガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0016】
上記懸架装置が第2空気圧調節手段を含む車両において、好ましくは、懸架装置の第2空気圧調節手段は、第2逆止弁を含む。このように構成すれば、第2ガス室の空気圧が第1ガス室の空気圧よりも小さくなった場合に、第2逆止弁により、第1ガス室から第2ガス室に、容易に、空気を供給することができるとともに、第1ガス室から第2ガス室に供給された空気が逆流するのを抑制することができる。
【0017】
上記ガス室が第1ガス室および第2ガス室を有する車両において、好ましくは、懸架装置は、第1ガス室から懸架装置の外部に空気を排出する第3空気圧調節手段をさらに含み、懸架装置の伸長時に第1ガス室の空気が圧縮されることにより第1ガス室の空気圧が所定の値よりも大きくなった場合に、第1ガス室から懸架装置の外部に第3空気圧調節手段を介して空気が排出される。このように構成すれば、第1ガス室の空気圧が所定の値よりも大きくなった場合に、第3空気圧調節手段により第1ガス室から懸架装置の外部に空気を排出することができるので、第1ガス室の空気圧が所定の値よりも高くなるのを抑制することができる。
【0018】
上記懸架装置が第3空気圧調節手段を含む車両において、好ましくは、懸架装置の第3空気圧調節手段は、第3逆止弁を含む。このように構成すれば、第1ガス室の空気圧が所定の値よりも大きくなった場合に、第3逆止弁により、第1ガス室から懸架装置の外部に、容易に、空気を排出することができるとともに、第1ガス室から懸架装置の外部に排出された空気が逆流するのを抑制することができる。
【0019】
上記懸架装置が第3空気圧調節手段を含む車両において、好ましくは、第3空気圧調節手段は、第3空気圧調節手段を介して第1ガス室から懸架装置の外部に空気が排出される空気圧の所定の値を調節するための調節部を有する。このように構成すれば、調節部により第1ガス室の空気圧を調節することができるので、第1ガス室の空気圧が高くまたは低くなりすぎるのを抑制することができる。
【0020】
上記一の局面による車両において、好ましくは、懸架装置は、リヤサスペンションである。このように構成すれば、リヤサスペンションのガス室の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2〜図4は、図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。なお、第1実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、FWD方向は、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による自動二輪車1の構造について詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方に、前後方向に延びるメインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3は、上方から後方に延びる上側フレーム部3aと、下側から後方に延びる下側フレーム部3bとを有している。この上側フレーム部3aの後部と下側フレーム部3bの後部とは、ピボット軸支持部材4および連結部材5により接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3、ピボット軸支持部材4および連結部材5によって、車体フレームが構成されている。なお、ヘッドパイプ2、メインフレーム3、ピボット軸支持部材4および連結部材5は、本発明の「車体」の一例である。
【0024】
また、ヘッドパイプ2の上部には、ハンドル6が取り付けられている。また、ヘッドパイプ2の前方には、前照灯7が設けられている。また、ヘッドパイプ2の下方には、前輪8と、前輪8の上方に配置されるフロントフェンダ9が配置されている。この前輪8は、一対のフロントフォーク10の下端部に回転可能に取り付けられている。また、フロントフォーク10は、前輪8と車体とが相対的に移動するときの衝撃を吸収する機能を有する。
【0025】
また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの上部には、燃料タンク11が配置されている。また、燃料タンク11の後方には、シート12が配置されている。また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの下方には、エンジン13が配置されている。また、ピボット軸支持部材4には、図2に示すように、ピボット軸4aが設けられており、このピボット軸4aに、リヤアーム14の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム14の後端部には、後輪15が回転可能に取り付けられている。なお、後輪15は、本発明の「車輪」の一例である。
【0026】
また、ピボット軸支持部材4の後部には、支持部4bが設けられている。この支持部4bには、リヤサスペンション16の上部取付部16aがねじ60により取り付けられている。なお、リヤサスペンション16は、本発明の「懸架装置」の一例である。また、ピボット軸支持部材4の後部の下部には、支持部4cが設けられている。この支持部4cには、揺動部材17がねじ61により揺動可能に取り付けられている。この揺動部材17には、リヤサスペンション16の下部取付部16bが、ねじ62により取り付けられている。また、揺動部材17は、リヤアーム14の支持部14aに連結部材18により連結されている。これにより、リヤアーム14が上下に揺動するのに伴って、揺動部材17がピボット軸支持部材4の支持部4cを中心として揺動するので、リヤサスペンション16を伸縮させることが可能となる。
【0027】
また、リヤサスペンション16は、図3および図4に示すように、上部取付部16a側に固定される円筒形状のロッド部20と、ロッド部20に取り付けられるピストン部21と、下部取付部16b側に固定され、ロッド部20およびピストン部21が内側に配置される外筒部22とを含んでいる。なお、ロッド部20は、本発明の「軸部」の一例であり、ピストン部21は、本発明の「第1ピストン部」の一例である。
【0028】
また、ロッド部20の上端部には、ロッド部20の上部側の開口部を塞ぐように、上部蓋体23が固定されている。また、ロッド部20の内周面と上部蓋体23の外周面との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材24が配置されている。また、上部蓋体23のねじ穴23aには、上部取付部16aの下部のねじ部16cが締め付けられることにより固定されている。この上部取付部16aには、貫通穴16dが設けられており、この貫通穴16dに上記したねじ60(図2参照)が挿入されて、上部取付部16aがピボット軸支持部材4の支持部4b(図2参照)に取り付けられている。また、上部蓋体23のねじ穴23aの内周面と上部取付部16aの下部の外周面との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材25が配置されている。
【0029】
また、ロッド部20の下端部の内周面には、ピストン部21が固定されている。これらロッド部20の内周面、上部蓋体23およびピストン部21に囲まれた領域に、約1気圧(1.013×10Pa)の空気が充填された内部ガス室70が設けられている。また、ピストン部21は、外筒部22の内側を、ピストン部21よりも上側に配置される上部ガス室71と、ピストン部21よりも下側に配置される下部ガス室72とに分割する機能を有する。すなわち、上部ガス室71は、外筒部22の内面、ロッド部20の外面およびピストン部21などによって囲まれた領域に設けられているとともに、下部ガス室72は、外筒部22の内面、ピストン部21および後述する下部蓋体33によって囲まれた領域に設けられている。なお、上部ガス室71は、本発明の「ガス室」および「第1ガス室」の一例であり、下部ガス室72は、本発明の「ガス室」および「第2ガス室」の一例である。この上部ガス室71は、リヤサスペンション16の伸長時(図3の状態)に空気が圧縮されるとともに、リヤサスペンション16の圧縮時(図4の状態)に空気が膨張されるように構成されている。また、下部ガス室72は、リヤサスペンション16の伸長時に空気が膨張されるとともに、リヤサスペンション16の圧縮時に空気が圧縮されるように構成されている。また、上部ガス室71および下部ガス室72は、リヤサスペンション16が伸長した状態(図3の状態)で、たとえば、約9気圧(9×1.013×10Pa)の空気圧を有するように構成されている。なお、上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧は、上部ガス室71および下部ガス室72の容積などを変更することにより、任意の空気圧に設定することが可能である。
【0030】
また、ピストン部21の下部には、取付穴21aが形成されており、取付穴21aには、クッションゴム26が取り付けられている。このクッションゴム26の底面26aは、ピストン部21の底面よりも下側に配置されており、リヤサスペンション16の圧縮時に、クッションゴム26の底面26aが下部蓋体33に当接されるように構成されている。これにより、リヤサスペンション16の圧縮時に、ピストン部21が下部蓋体33に直接的に当接するのを抑制することが可能である。
【0031】
また、ピストン部21の外周面と外筒部22の内周面との間には、軸受部材27が取り付けられている。これにより、ピストン部21を、外筒部22の内周面に沿って外筒部22の軸方向に移動しやすくすることが可能である。また、ピストン部21の外周面と軸受部材27との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材28が配置されている。また、シール部材28よりも上側で、かつ、ピストン部21の外周面と外筒部22の内周面との間には、ゴム製のシール部材29が配置されている。これらシール部材28および29により、下部ガス室72の空気が、上部ガス室71に漏れる(移動する)のを抑制することが可能である。なお、シール部材28および29は、それぞれ2つ以上配置してもよい。この場合、下部ガス室72の空気が、上部ガス室71に漏れる(移動する)のをより抑制することが可能である。
【0032】
ここで、第1実施形態では、ピストン部21には、上部ガス室71と、下部ガス室72とを連結する空気通路部21bが設けられている。この空気通路部21bには、空気通路部21bを開閉する弁部材30a、および、弁部材30aを押圧する圧縮コイルバネ30bからなる逆止弁30と、圧縮コイルバネ30bがピストン部21から外れるのを防止するための栓部材31とが設けられている。これら逆止弁30(弁部材30a、圧縮コイルバネ)および栓部材31によって、空気圧調節部32が構成されている。なお、逆止弁30は、本発明の「第2逆止弁」の一例であり、空気圧調節部32は、本発明の「第2空気圧調節手段」の一例である。また、空気圧調節部32は、圧縮コイルバネ30bが弁部材30aを所定の押圧力で押圧することにより、空気通路部21bを塞いでいる。この空気圧調節部32は、下部ガス室72の空気圧が上部ガス室71の空気圧よりも小さい圧力になった場合に、空気通路部21bを開放して、上部ガス室71から下部ガス室72へ空気を供給するように構成されている。
【0033】
具体的には、第1実施形態では、圧縮コイルバネ30bの弁部材30aに対する押圧力は、空気通路部21bを塞ぐために必要な最小の押圧力であり、無視できる程度まで小さい押圧力に構成されている。このため、リヤサスペンション16の伸長時に、上部ガス室71の容積が減少されて上部ガス室71の空気が圧縮されるとともに、下部ガス室72の容積が増加されて下部ガス室72の空気が膨張されることにより、下部ガス室72の空気圧が上部ガス室71の空気圧よりも小さくなった場合、弁部材30aが下部ガス室72側に移動されて上部ガス室71から下部ガス室72に空気が供給される。
【0034】
また、外筒部22の下端部には、外筒部22の下部側の開口部を塞ぐように、下部蓋体33が固定されている。また、外筒部22の内周面と下部蓋体33の外周面との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材34が配置されている。また、下部蓋体33のねじ穴33aには、下部取付部16bの上部のねじ部16eが締め付けられることにより固定されている。この下部取付部16bには、挿入孔16fが設けられており、この挿入孔16fに上記したねじ62(図2参照)が挿入されて、下部取付部16bが揺動部材17に取り付けられている。また、下部蓋体33のねじ穴33aの内周面と下部取付部16bの上部の外周面との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材35が配置されている。これらシール部材34および35により、下部ガス室72からリヤサスペンション16の外部に空気が漏れるのを抑制することは可能である。しかしながら、ゴム製のシール部材34および35は空気を透過するので、長期的に見て、下部ガス室72からリヤサスペンション16の外部に空気が徐々に漏れる。
【0035】
また、外筒部22の上端部には、外筒部22の内周面とロッド部20の外周面との間にごみなどが侵入するのを抑制するためダストシール36が取り付けられている。また、ダストシール36の下側で、かつ、外筒部22の内周面とロッド部20の外周面との間には、軸受支持部材37が固定されている。この軸受支持部材37の内周面とロッド部20の外周面との間には、軸受部材38が取り付けられている。これにより、ロッド部20を、外筒部22の内周面に沿って外筒部22の軸方向に移動しやすくすることが可能である。また、軸受支持部材37の内周面とロッド部20の外周面との間には、ゴム製のシール部材39が配置されている。また、軸受支持部材37の外周面と外筒部22の内周面との間には、ゴム製のOリングからなる2つのシール部材40が配置されている。これらシール部材39および40により、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が漏れるのを抑制することが可能である。しかしながら、ゴム製のシール部材39および40は空気を透過するので、長期的に見て、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が徐々に漏れる。
【0036】
また、軸受支持部材37の下側には、金属リング41と、金属リング41の下部に固定されたクッションゴム42とが配置されている。このクッションゴム42は、リヤサスペンション16の伸長時に、クッションゴム42の底面がピストン部21の上面に当接されるように構成されている。これにより、リヤサスペンション16の伸長時に、ピストン部21が金属リング41に直接的に当接するのを抑制することが可能である。
【0037】
また、金属リング41、および、外筒部22の金属リング41が固定された領域には、それぞれ、空気通路孔41aおよび22aが形成されている。また、外筒部22の金属リング41が固定された領域の外周面には、環状部材43が固定されている。
【0038】
また、第1実施形態では、環状部材43には、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を吸い込むための空気通路部43aと、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気を排出するための空気通路部43bとが設けられている。
【0039】
また、第1実施形態では、空気通路部43aには、空気通路部43aを開閉する弁部材44a、および、弁部材44aを押圧する圧縮コイルバネ44bからなる逆止弁44と、圧縮コイルバネ44bが環状部材43から外れるのを防止するための栓部材45とが設けられている。これら逆止弁44(弁部材44a、圧縮コイルバネ44b)および栓部材45によって、空気圧調節部46が構成されている。なお、逆止弁44は、本発明の「第1逆止弁」の一例であり、空気圧調節部46は、本発明の「第1空気圧調節手段」の一例である。また、空気圧調節部46は、圧縮コイルバネ44bが弁部材44aを所定の押圧力で押圧することにより、空気通路部43aを塞いでいる。この空気圧調節部46は、上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも小さい圧力になった場合に、空気通路部43aを開放して、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71へ空気を吸い込むように構成されている。
【0040】
具体的には、第1実施形態では、圧縮コイルバネ44bの弁部材44aに対する押圧力は、空気通路部43aを塞ぐために必要な最小の押圧力であり、無視できる程度まで小さい押圧力に構成されている。このため、リヤサスペンション16の圧縮時に、上部ガス室71の容積が増加されて上部ガス室71の空気が膨張されることにより、上部ガス室71の空気圧がリヤサスペンション16の外部の空気圧(大気圧)よりも小さくなった場合、弁部材44aが上部ガス室71側に移動されてリヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気が吸い込まれる。
【0041】
また、第1実施形態では、空気通路部43bには、空気通路部43bを開閉する弁部材47a、および、弁部材47aを押圧する圧縮コイルバネ47bからなる逆止弁47と、圧縮コイルバネ47bが環状部材43から外れるのを防止するとともに、圧縮コイルバネ47bの押圧力を調節することにより上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が排出される空気圧の値を調節する調節ねじ48とが設けられている。これら逆止弁47(弁部材47a、圧縮コイルバネ47b)および調節ねじ48によって、空気圧調節部49が構成されている。なお、逆止弁47は、本発明の「第3逆止弁」の一例であり、調節ねじ48は、本発明の「調節部」の一例である。また、空気圧調節部49は、本発明の「第3空気圧調節手段」の一例である。また、空気圧調節部49は、圧縮コイルバネ47bが弁部材47aを所定の押圧力で押圧することにより、空気通路部43bを塞いでいる。この空気圧調節部49は、上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも大きい圧力になった場合に、空気通路部43bを開放して、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部へ空気を排出するように構成されている。
【0042】
具体的には、第1実施形態では、調節ねじ48は、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも大きくなった場合に、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が排出されるように調節されている。そして、リヤサスペンション16の伸長時に、上部ガス室71の容積が減少されて上部ガス室71の空気が圧縮されることにより、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも大きくなった場合に、弁部材47aがリヤサスペンション16の外部側に移動されて上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部へ空気が排出される。これにより、上部ガス室71の空気圧が所定の値(約9気圧(9×1.013×10Pa))よりも大きい空気圧になるのを抑制することが可能である。なお、調節ねじ48には、空気通路部48aが設けられており、空気通路部43bを通過した空気は、調節ねじ48の空気通路部48aを介してリヤサスペンション16の外部に排出される。
【0043】
また、環状部材43の内周面と外筒部22の外周面との間には、Oリングからなるゴム製の2つのシール部材50が配置されており、空気通路部43aおよび43b内の空気が、リヤサスペンション16の外部に漏れるのを抑制することが可能である。
【0044】
図5および図6は、図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの動作を説明するための図である。次に、図3〜図6を参照して、第1実施形態による自動二輪車1のリヤサスペンション16の動作について説明する。
【0045】
ここでは、まず、リヤサスペンション16が伸長した状態(図3の状態)で上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)である場合(上部ガス室71および下部ガス室72からリヤサスペンション16の外部に空気がほとんど漏れていない場合)について説明する。
【0046】
リヤサスペンション16に圧縮する方向の力が作用すると、下部ガス室72の空気圧に抗してリヤサスペンション16が短縮される。この場合、第1実施形態では、上部ガス室71の容積が増加されて上部ガス室71の空気が膨張されることにより、図5のA1に示すように、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)まで低下する。そして、図4に示すように、リヤサスペンション16がさらに短縮されることにより、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)よりも小さくなる。このとき、空気圧調節部46により、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気が吸い込まれて、図5のA2に示すように、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)に保持される。
【0047】
また、リヤサスペンション16に圧縮する方向の力が作用して、下部ガス室72の空気圧に抗してリヤサスペンション16が短縮された場合、下部ガス室72の容積が減少されて下部ガス室72の空気が圧縮されることにより、図5のB1に示すように、下部ガス室72の空気圧がP1気圧(数十気圧)まで上昇する。
【0048】
次に、リヤサスペンション16に伸長する方向の力が作用すると、リヤサスペンション16が伸長される。この場合、上部ガス室71の容積が減少されて上部ガス室71の空気が圧縮されることにより、図5のA3に示すように、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)まで上昇する。そして、第1実施形態では、図3に示すように、リヤサスペンション16がさらに伸長されることにより、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも大きくなる。このとき、空気圧調節部49により、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が排出されて、図5のA4に示すように、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)に保持される。
【0049】
また、リヤサスペンション16に伸長する方向の力が作用して、リヤサスペンション16が伸長された場合、下部ガス室72の容積が増加されて下部ガス室72の空気が膨張されることにより、図5のB2に示すように、下部ガス室72の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)まで低下する。
【0050】
次に、リヤサスペンション16が伸長した状態(図3の状態)で上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧が、たとえば、P2気圧(約9気圧(9×1.013×10Pa)未満)(図6参照)である場合(上部ガス室71および下部ガス室72からリヤサスペンション16の外部に空気が漏れていた場合)について説明する。
【0051】
リヤサスペンション16に圧縮する方向の力が作用すると、下部ガス室72の空気圧に抗してリヤサスペンション16が短縮される。この場合、上部ガス室71の容積が増加されて上部ガス室71の空気が膨張されることにより、図6のA5に示すように、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)まで低下する。そして、図4に示すように、リヤサスペンション16がさらに短縮されることにより、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)よりも小さくなる。このとき、空気圧調節部46により、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気が吸い込まれて、図6のA6に示すように、上部ガス室71の空気圧が約1気圧(1.013×10Pa)に保持される。
【0052】
また、リヤサスペンション16に圧縮する方向の力が作用して、下部ガス室72の空気圧に抗してリヤサスペンション16が短縮された場合、下部ガス室72の容積が減少されて下部ガス室72の空気が圧縮されることにより、図6のB3に示すように、下部ガス室72の空気圧がP3気圧(P1気圧未満)まで上昇する。
【0053】
次に、リヤサスペンション16に伸長する方向の力が作用すると、リヤサスペンション16が伸長される。この場合、上部ガス室71の容積が減少されて上部ガス室71の空気が圧縮されることにより、図6のA7に示すように、上部ガス室71の空気圧がP4気圧まで上昇する。
【0054】
また、リヤサスペンション16に伸長する方向の力が作用して、リヤサスペンション16が伸長された場合、下部ガス室72の容積が増加されて下部ガス室72の空気が膨張されることにより、図6のB4に示すように、下部ガス室72の空気圧がP4気圧まで低下する。
【0055】
そして、第1実施形態では、図3に示すように、リヤサスペンション16がさらに伸長された場合、空気圧調節部32により、上部ガス室71から下部ガス室72に空気が供給される。このとき、上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧は、図6のA8およびB5に示すように、P4気圧に保持される。
【0056】
その後、リヤサスペンション16に圧縮する方向の力、および、伸長する方向の力が交互に作用することにより、上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧がP4気圧から約9気圧(9×1.013×10Pa)まで上昇する。このようにして、リヤサスペンション16が伸長した状態で、上部ガス室71および下部ガス室72の空気圧を約9気圧(9×1.013×10Pa)に保持することが可能となる。
【0057】
第1実施形態では、上記のように、リヤサスペンション16が圧縮されることにより上部ガス室71の空気が膨張された状態で、上部ガス室71の空気圧がリヤサスペンション16の外部の空気圧よりも小さい場合に、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を吸い込むように構成された空気圧調節部46を設けることによって、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気が徐々に漏れることにより上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも小さくなった場合に、空気圧調節部46によりリヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を吸い込むことができるので、リヤサスペンション16の伸縮により、上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、リヤサスペンション16の空気圧調節部46を、リヤサスペンション16が伸縮することにより、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を吸い込むように構成することによって、車両の走行中に、地面の凹凸などに起因してリヤサスペンション16が伸縮することにより、リヤサスペンション16の外部から上部ガス室71に空気を自動的に吸い込むことができるので、容易に、上部ガス室71の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、リヤサスペンション16の伸長時に下部ガス室72の空気が膨張されることにより下部ガス室72の空気圧が上部ガス室71の空気圧よりも小さくなった場合に、上部ガス室71から下部ガス室72に空気を供給する空気圧調節部32を設けることによって、空気圧調節部32により上部ガス室71から下部ガス室72に空気を供給することができるので、下部ガス室72の空気圧が所定の値よりも低下するのを抑制することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、リヤサスペンション16の伸長時に上部ガス室71の空気が圧縮されることにより上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも大きくなった場合に、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気を排出する空気圧調節部49を設けることによって、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも大きくなった場合に、上部ガス室71からリヤサスペンション16の外部に空気を排出することができるので、上部ガス室71の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)よりも高くなるのを抑制することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図7および図8は、本発明の第2実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、リヤサスペンションに減衰機構を設ける例について説明する。
【0062】
この第2実施形態では、リヤサスペンション81は、図7および図8に示すように、上部取付部81a側に固定される円筒形状のロッド部82と、ロッド部82の下部に取り付けられ、減衰機構を構成するピストン部83と、下部取付部81b側に固定され、ロッド部82およびピストン部83が内側に配置される外筒部84とを含んでいる。なお、ロッド部82は、本発明の「軸部」の一例であり、ピストン部83は、本発明の「第1ピストン部」の一例である。
【0063】
また、第2実施形態では、ロッド部82の内部には、ピストン部85および86が配置されている。そして、ロッド部82の内部は、ピストン部85の上側に配置され、空気が充填される内部ガス室73と、ピストン部85の下側に配置され、オイルが充填されるオイル室74とに分割されている。また、オイル室74の内部は、ピストン部86により、ピストン部86の上側に配置される上部オイル室74aと、ピストン部86の下側に配置される下部オイル室74bとに分割されている。なお、ピストン部86は、本発明の「第2ピストン部」の一例である。
【0064】
また、ピストン部85の外周面とロッド部82の内周面との間には、ゴム製のOリングからなるシール部材87が配置されている。また、ピストン部85は、ロッド部82の内周面に沿ってロッド部82の軸方向に移動可能に構成されている。
【0065】
また、第2実施形態では、ピストン部86には、オイルを通過させるための複数のオリフィス86aおよび86bが形成されている。この複数のオリフィス86aは、ピストン部86よりも下側の下部オイル室74bのオイルを上側の上部オイル室74aに通過させる機能を有するとともに、複数のオリフィス86bは、上部オイル室74aのオイルを下側の下部オイル室74bに通過させる機能を有する。また、複数のオリフィス86aおよび86bの上側には、オリフィス86aの上面を塞ぐとともに、オリフィス86bの上面を開口するように板状のワッシャ86cが配置されている。また、複数のオリフィス86aおよび86bの下側には、オリフィス86aの下面を開口するとともに、オリフィス86bの下面を塞ぐように板状のワッシャ86dが配置されている。
【0066】
また、ピストン部86は、下部取付部81bの挿入穴81cに固定されたロッド部88に固定されている。これにより、リヤサスペンション81の伸縮時に、ピストン部86の外周面は、ロッド部82の内周面に沿ってロッド部82の軸方向に移動される。
【0067】
また、ロッド部82の下端部には、上記第1実施形態のピストン部21と同様の機能を有するピストン部83が設けられている。すなわち、ピストン部83には、上記第1実施形態と同様に、空気圧調節部32が設けられており、ピストン部83の下側に配置される下部ガス室75の空気圧が上部ガス室76の空気圧よりも小さい場合に、ピストン部83の上側に配置される上部ガス室76から下部ガス室75に空気を供給する機能を有する。なお、下部ガス室75は、本発明の「ガス室」および「第2ガス室」の一例であり、上部ガス室76は、本発明の「ガス室」および「第1ガス室」の一例である。
【0068】
また、ピストン部83の内周面とロッド部88の外周面との間には、ゴム製のシール部材89が配置されている。また、ピストン部83の上部には、クッションゴム90が取り付けられている。このクッションゴム90の上面は、ピストン部83の上面よりも上側に配置されており、リヤサスペンション81の伸長時(図7の状態)に、クッションゴム90の上面がピストン部86に当接されるように構成されている。これにより、リヤサスペンション81の伸長時に、ピストン部83がピストン部86に直接的に当接するのを抑制することが可能である。また、ロッド部88の下部には、クッションゴム91が取り付けられている。このクッションゴム91の上面は、リヤサスペンション81の圧縮時(図8の状態)に、クッションゴム91の上面がピストン部83に当接されるように構成されている。これにより、リヤサスペンション81の圧縮時に、ピストン部83が下部蓋体33に直接的に当接するのを抑制することが可能である。
【0069】
なお、この第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態の構造と同様であるのでその説明を省略する。
【0070】
次に、図7および図8を参照して、第2実施形態による自動二輪車のリヤサスペンション81の動作について説明する。
【0071】
まず、リヤサスペンション81に圧縮する方向の力が作用した場合について説明する。リヤサスペンション81に圧縮する方向の力が作用すると、下部ガス室75の空気圧に抗してリヤサスペンション81が短縮されることにより、減衰力が発生する。
【0072】
具体的には、図8に示すように、外筒部84およびピストン部86に対してロッド部82が下降されると、上部オイル室74aの圧力が上昇し、ピストン部86のワッシャ86dが開かれる。そして、上部オイル室74a内のオイルが、ピストン部86のオリフィス86bを介して矢印C方向に流れて、下部オイル室74b内に流入する。この場合、オイルがピストン部86のオリフィス86bを流れる抵抗により、減衰力が発生することとなる。
【0073】
次に、リヤサスペンション81に伸長する方向の力が作用する場合について説明する。リヤサスペンション81に伸長する方向の力が作用すると、リヤサスペンション81が伸長されることにより、減衰力が発生する。
【0074】
具体的には、図7に示すように、外筒部84およびピストン部86に対してロッド部82が上昇されると、下部オイル室74bの圧力が上昇し、ピストン部86のワッシャ86cが開かれる。そして、下部オイル室74b内のオイルが、ピストン部86のオリフィス86aを介して矢印D方向に流れて、上部オイル室74a内に流入する。この場合、オイルがピストン部86のオリフィス86aを流れる抵抗により、減衰力が発生することとなる。
【0075】
なお、この第2実施形態のその他の動作は、上記第1実施形態の動作と同様である。すなわち、リヤサスペンション81の圧縮時に、上部ガス室76の空気圧がリヤサスペンション81の外部の空気圧よりも小さくなった場合、リヤサスペンション81の外部から上部ガス室76に空気が吸い込まれる。また、リヤサスペンション81の伸長時に、下部ガス室75の空気圧が上部ガス室76の空気圧よりも小さくなった場合、上部ガス室76から下部ガス室75に空気が供給される。また、リヤサスペンション81の伸長時に、上部ガス室76の空気圧が所定の値(約9気圧(9×1.013×10Pa))よりも大きくなった場合、上部ガス室76からリヤサスペンション81の外部に空気が排出される。
【0076】
第2実施形態では、上記のように、リヤサスペンション81の伸縮時に、ピストン部86をロッド部82の内周面に沿ってロッド部82の軸方向に移動させることにより、オイルをピストン部86のワッシャ86cおよび86dを通過させてリヤサスペンション16に減衰力が発生するように構成することによって、リヤサスペンション16の伸縮を、効果的に減衰させることができる。
【0077】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0079】
たとえば、上記実施形態では、懸架装置を備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、懸架装置を備えた車両であれば、自動車、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、懸架装置の一例としてのリヤサスペンションに本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、フロントフォークに本発明を適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、上部ガス室の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)(所定の値)よりも大きくなった場合に、上部ガス室からリヤサスペンションの外部に空気を排出して上部ガス室の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)(所定の値)よりも大きくなるのを抑制する空気圧調節部を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、上部ガス室の空気圧が所定の値よりも大きくなるのを抑制するための空気圧調節部を設けなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、リヤサスペンションが圧縮された状態で、上部ガス室の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)になるように調節ねじを調節した例について示したが、本発明はこれに限らず、リヤサスペンションが圧縮された状態で、上部ガス室の空気圧が約9気圧(9×1.013×10Pa)以外の気圧になるように調節ねじを調節してもよい。
【0083】
また、上記第2実施形態では、減衰機構を構成するピストン部を、ロッド部の内部に設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、減衰機構を構成するピストン部を、ロッド部の外部に設けてもよいし、減衰機構をピストン部以外の部材により構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンション周辺の構造を詳細に説明するための図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの動作を説明するための図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構造を詳細に説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1 自動二輪車(車両)
2 ヘッドパイプ(車体)
3 メインフレーム(車体)
4 ピボット軸支持部材(車体)
5 連結部材(車体)
15 後輪(車輪)
16 リヤサスペンション(懸架装置)
20、82 ロッド部(軸部)
21、83 ピストン部(第1ピストン部)
22、84 外筒部
30 逆止弁(第2逆止弁)
32 空気圧調節部(第2空気圧調節手段)
44 逆止弁(第1逆止弁)
46 空気圧調節部(第1空気圧調節手段)
47 逆止弁(第3逆止弁)
48 調節ねじ(調節部)
49 空気圧調節部(第3空気圧調節手段)
71、76 上部ガス室(ガス室、第1ガス室)
72、75 下部ガス室(ガス室、第2ガス室)
74 オイル室
86 ピストン部(第2ピストン部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
車輪と、
前記車体と前記車輪との間に設けられるとともに、前記車体と前記車輪とが相対的に移動するときの衝撃を吸収する懸架装置とを備え、
前記懸架装置は、
空気が充填されるガス室と、
前記ガス室の空気圧が所定の値よりも小さい場合に、前記懸架装置の外部から前記ガス室に前記空気を吸い込むように構成された第1空気圧調節手段とを含む、車両。
【請求項2】
前記懸架装置の前記第1空気圧調節手段は、前記懸架装置が伸縮することにより、前記懸架装置の外部から前記ガス室に前記空気を吸い込むように構成されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記懸架装置の前記第1空気圧調節手段は、第1逆止弁を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記ガス室は、
前記懸架装置の伸長時に前記空気が圧縮されるとともに、前記懸架装置の圧縮時に前記空気が膨張される第1ガス室と、
前記懸架装置の伸長時に前記空気が膨張されるとともに、前記懸架装置の圧縮時に前記空気が圧縮される第2ガス室とを有する、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記懸架装置は、外筒部と、前記外筒部に移動可能に挿入される軸部と、前記軸部に取り付けられる第1ピストン部とをさらに含み、
前記第1ガス室は、少なくとも前記外筒部の内面と前記軸部の外面と前記第1ピストン部とによって囲まれた領域に設けられ、
前記第2ガス室は、少なくとも前記外筒部の内面と前記第1ピストン部とによって囲まれた領域に設けられる、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記軸部は、オイルが充填されるオイル室を有し、
前記懸架装置は、前記軸部のオイル室内に配置される第2ピストン部をさらに含み、
前記懸架装置の伸縮時に、前記第2ピストン部が前記軸部のオイル室内を移動することにより、前記懸架装置に減衰力が発生される、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記第1ガス室は、前記第1空気圧調節手段を介して、前記懸架装置の外部に接続されている、請求項4に記載の車両。
【請求項8】
前記懸架装置の圧縮時に前記第1ガス室の前記空気が膨張されることにより前記第1ガス室の前記空気圧が所定の値よりも小さくなった場合に、前記懸架装置の外部から前記第1ガス室に前記空気が吸い込まれる、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記懸架装置は、前記第1ガス室から前記第2ガス室に前記空気を供給する第2空気圧調節手段をさらに含み、
前記懸架装置の伸長時に前記第2ガス室の前記空気が膨張されることにより前記第2ガス室の前記空気圧が前記第1ガス室の空気圧よりも小さくなった場合に、前記第1ガス室から前記第2ガス室に前記第2空気圧調節手段を介して前記空気が供給される、請求項7に記載の車両。
【請求項10】
前記懸架装置の前記第2空気圧調節手段は、第2逆止弁を含む、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記懸架装置は、前記第1ガス室から前記懸架装置の外部に前記空気を排出する第3空気圧調節手段をさらに含み、
前記懸架装置の伸長時に前記第1ガス室の前記空気が圧縮されることにより前記第1ガス室の前記空気圧が所定の値よりも大きくなった場合に、前記第1ガス室から前記懸架装置の外部に前記第3空気圧調節手段を介して前記空気が排出される、請求項4に記載の車両。
【請求項12】
前記懸架装置の前記第3空気圧調節手段は、第3逆止弁を含む、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記第3空気圧調節手段は、前記第3空気圧調節手段を介して前記第1ガス室から前記懸架装置の外部に前記空気が排出される前記空気圧の所定の値を調節するための調節部を有する、請求項11に記載の車両。
【請求項14】
前記懸架装置は、リヤサスペンションである、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−25679(P2008−25679A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197521(P2006−197521)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】