説明

車体側部構造

【課題】ロッカに車体幅方向外側から荷重が入力された際のクロスメンバへの荷重伝達効率を向上させる。
【解決手段】アウタ側バルクヘッド300がセンターピラーインナパネル210の下端部212に形成された貫通孔214から車体幅方向内側に突出し、車体幅方向内縦壁部302が、インナ側バルクヘッド400車体幅方向外側縦壁部402と間隔S1をあけて対向配置されている。これによりアウタ側バルクヘッド300とインナ側バクルヘッド400との間の間隔が減少されるので、側面衝突等で車体幅方向外側からロッカ100に荷重Fが入力された際に空走区間が減少する。よって、荷重入力時の初期荷重伝達がなされない空走区間が減少するので、クロスメンバ50への荷重伝達効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロッカ内に、アウタ側バルクヘッドとインナ側バルクヘッドとを配設することによって、ロッカのドアロックストライカ配設部位を補強すると共に、側面衝突時にドアロックストライカに作用する剥離方向の荷重を低減するセンタピラーレス車のロッカ構造が提案されている。
【特許文献1】特開2006−273296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、センターピラーを有する車体の場合、ロッカ内に配設されたセンターピラーインナの下端部(一般面)の左右両側(車体幅方向外側と車体幅方向内側)にそれぞれバクルヘッドを備える構成とすることが多い。このような構成の場合は、製造上(部品公差や組付け公差などの関係上)、左右のバルクヘッドとセンターピラーとの間に間隔を設けることが必要となる。このため、左右のバルクヘッド間の間隔が大きい。
【0004】
このように左右のバルクヘッド間の間隔が大きいと、側面衝突等で車体幅方向外側からロッカに荷重が入力された際に空走区間が存在する。そして、この空走区間は荷重入力時の初期荷重伝達がなされないので、クロスメンバへの荷重伝達効率が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、上記を考慮し、ロッカに車体幅方向外側から荷重が入力された際のクロスメンバへの荷重伝達効率を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車体側部の下端部に車体前後方向を長手方向として設けられたロッカと、前記ロッカの車体幅方向外側を構成し車体幅方向内側を開口側として配置された断面ハット形状のロッカアウタパネルと、前記ロッカの車体幅方向内側を構成し車体幅方向外側を開口側として配置された断面ハット形状のロッカインナパネルと、が、前記車体側部の車体前後方向中間部に略車体上下方向を長手方向として配置されたセンターピラーインナパネルの下端部が挟持された状態で接合されることによって構成された閉断面構造のロッカ本体と、車体幅方向に沿って配置され、前記ロッカインナパネルにおける前記センターピラーインナパネルの下端部の車体幅方内側に位置する部位に、車体幅方向外側端部が接合されたクロスメンバと、前記ロッカ本体内における前記センターピラーインナパネルの下端部に形成された貫通孔と、前記ロッカ本体内に設けられ、車体幅方向外側端部がロッカアウタパネルに接合され且つ車体幅方向内側に延設され前記センターピラーインナパネルの下端部に形成された前記貫通孔から車体幅方向内側に突出したアウタ側バルクヘッドと、前記ロッカ本体内に設けられ、車体幅方向内側端部が前記ロッカインナパネルに接合され且つ車体幅方向外側に延設され車体幅方向外側端部が前記アウタ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部と間隔をあけて対向配置され、前記アウタ側バルクヘッドよりも強度が小さく且つ前記アウタ側バルクヘッドよりも車体幅方向の幅が狭いインナ側バルクヘッドと、を備えている
【0007】
請求項1の発明では、アウタ側バルクヘッドがセンターピラーインナパネルの下端部に形成された貫通孔から車体幅方向内側に突出し、インナ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部がアウタ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部と間隔をあけて対向配置されている。
【0008】
これより、センターピラーインナパネルの下端部に貫通孔を形成しない構成と比較し、アウタ側バルクヘッドとインナ側バクルヘッドと間の間隔が減少されるので、側面衝突等で車体幅方向外側からロッカに荷重が入力された際の空走区間が減少する。よって、荷重入力時の初期荷重伝達がなされない空走区間が減少するので、クロスメンバへの荷重伝達効率が向上する。
【0009】
また、センターピラーの下端部を介さないで、アウタ側バルクヘッドからインナ側バクルヘッドへと荷重が伝達されるので、荷重伝達効率が向上する(荷重を伝達する車体幅方向の部材が減るので荷重伝達効率が向上する)。
【0010】
また、インナ側バルクヘッドの強度をアウタ側バルクヘッドの強度よりも小さく設定されている。そして、インナ側バルクヘッドとアウタ側バルクヘッドとの強度差をコントロール(調整)することで、荷重の伝達やロッカの変形のコントロールが可能となり、その結果、例えば、設計の自由度が増え、開発期間の短縮や試験数の削減が可能となる。
【0011】
また、インナ側バルクヘッドの車体幅方向の幅を狭くすることで、ロッカインナパネルとクロスメンバと接合部位の支持剛性が剛結結合から自由端(フリー端)結合となり、クロスメンバに作用するモーメントが低減又はキャンセルされる。
【0012】
なお、アウタ側バルクヘッドがセンターピラーインナパネルの下端部に形成された貫通孔から車体幅方向内側に突出するように設定することで(アウタ側バルクヘッドがセンターピラーインナパネルの下端部を横切るように設定することで)、アウタ側バルクヘッドで主に荷重を受け、インナ側バルクヘッドによってクロスメンバの支持剛性を自由端(モーメント=0)とすることが可能となる(アウタ側バクルヘッドとインナ側バルクヘッドとで機能分担が可能となる)。また、ロッカの図心と最外壁(ロッカアウタパネルの最外壁)との距離を大きくすることができ、稜線荷重分担が増加する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ロッカに車体幅方向外側から荷重が入力された際のクロスメンバへの荷重伝達効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1と図2を用いて、本発明に係る車体側部構造について説明する。図1は、本実施形態に係る車体側部構造が適用された車体側部を車体幅方向外側から見た側面図である。図2は、本実施形態の車体側部構造が適用された車体側部を示す図1のA−A線に沿った縦断面図である(車体幅方向に沿った縦断面図である)。なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印OUTは車体車幅方向外側方向を示す。
【0015】
図1に示すように、車体側部10の車体前方側には、図示しないフロントサイドドアによって開閉されるフロント側ドア開口部12が形成されており、車体側部10の車体後方側には、図示しないリヤサイドドアによって開閉されるリヤ側ドア開口部14が形成されている。フロント側ドア開口部12及びリヤ側ドア開口部14の下縁側(フロントサイドドア及びリヤサイドドアの下側)、すなわち、車体側部10の下端部には、車体前後方向を長手方向として配置されたロッカ100が設けられている。また、車体側部10の車体前後方向中間部には、略車体上下方向を長手方向として配置されたセンターピラー(Bピラー)200が設けられている。
【0016】
図2に示すように、センターピラー200は、略車体上下方向を長手方向として配置された閉断面構造の車体骨格材とされている。センターピラー200は、車体幅方向外側に配置され且つ水平断面がハット形状とされたセンターピラーアウタパネル204と、車体幅方向内側に配置され且つ水平断面がハット形状とされたセンターピラーインナパネル210と、を有し、それぞれの開口側を向き合わせて接合されることで閉断面が構成されている。また、センターピラーアウタパネル204とセンターピラーインナパネル210とで構成される閉断面内には、センターピラー200を補強する断面ハット形状のセンターピラーリインフォースメント202が設けられている。
【0017】
ロッカ100は、車体前後方向を長手方向として配置された閉断面構造の車体骨格材とされている。ロッカ100は、車体幅方向内側に配置され且つ開口側を車体幅方向外側に向けた断面ハット形状のロッカインナパネル110と、ロッカインナパネル110の車体幅方向外側に配置され且つ開口側を車体幅方向内側に向けた断面ハット形状のロッカアウタパネル120と、を有している。
【0018】
そして、センターピラーインナパネル210の下端部(一般面)212がロッカインナパネル110の上下のフランジ部112、114とロッカアウタパネル120の上下のフランジ部122、124との間に挟持された状態(三枚が重なった状態)で、スポット溶接されることによって、閉断面構造のロッカ本体102が構成されている。
【0019】
センターピラーリインフォースメント202の下端部202Aは、ロッカアウタパネル120の車体幅方向外側に向けて膨出した膨出部126の上部に接合されている。センターピラーアウタパネル204の下端部204Aは、ロッカアウタパネル120に沿って車体幅方向内側に湾曲されている。そして、下端部204Aの先端部分が、センターピラーインナパネル210の下端部212、ロッカインナパネル110のフランジ部114、及びロッカアウタパネル120のフランジ部124が接合された接合部位に、スポット溶接によって接合されている。なお、センターピラーアウタパネル204の下端部204Aの先端部分は、フランジ部114、124が部分的に切りかかれ、二枚又は三枚が重なった状態とされてスポット溶接されている。
【0020】
ロッカ100の車体幅方向内側には、フロアパン30が配設されている。フロアパン30の車体幅方向外側の端末部30Aは、上方に折り曲げられ、ロッカインナパネル110の車体幅方向内側に向けて膨出した膨出部116の下部に接合されている。
【0021】
フロアパン30の上面側で車体前後方向中間部には、車体幅方向を長手方向として配置された、閉断面構造のフロアクロスメンバ50が配設されている。フロアクロスメンバ50の車体幅方向外側端部は、ロッカインナパネル110の膨出部116とフロアパン30の上面とにスポット溶接されている。
【0022】
ロッカ本体102内(閉断面構造内)におけるセンターピラーインナパネル210の下端部212には、車体幅方向に貫通した貫通孔214が形成されている。また、ロッカ本体102内(閉断面構造内)における車体幅方向外側にアウタ側バルクヘッド300が設けられ、車体幅方向内側にはインナ側バルクヘッド400が設けられている。
【0023】
アウタ側バルクヘッド300は、鋼板を折り曲げることにより形成され、縦断面形状が車体幅方向外側縦壁部304、上端部316、下端部326、及び車体幅方向内側縦壁部302で構成された車体前後方向に延在した箱形状とされている。上辺部316は、ロッカアウタパネル120の内壁面(上面)に沿って車体上方側に上り勾配となった斜辺部312と斜辺部312の端部から下側に延出したのち車体幅方向内側に湾曲した湾曲部314とで構成さている。下端部326は、ロッカアウタパネル120の内壁面(下面)に沿って車体下方側に下り勾配となった斜辺部322と斜辺部322の端部から上側に延出したのち車体幅方向内側に湾曲した湾曲部324とで構成されている。
【0024】
また、アウタ側バルクヘッド400は、車体幅方向外側縦壁部304がロッカアウタパネル120に接合されると共に車体幅方向内側に延設されセンターピラーインナパネル210の下端部212に形成された貫通孔214から車体幅方向内側に突出している。別の言い方をすると、アウタ側バルクヘッド400が、センターピラーインナパネル210の下端部212を横切るように設定されている。
【0025】
インナ側バルクヘッド400も、鋼板を折り曲げることにより形成され、縦断面形状は、車体幅方向内側縦壁部404、上端部416、下端部426、及び車体幅方向外側縦壁部402で構成された車体前後方向に延在した箱形状とされている。上辺部416は、ロッカインナパネル110の内壁面(上面)に沿って車体上方側に上り勾配となった斜辺部412と斜辺部412の端部から下側に延出したのち車体幅方向内側に湾曲した湾曲部414とで構成さている。下端部426は、ロッカインナパネル110の内壁面(下面)に沿って車体下方側に下り勾配となった斜辺部422と斜辺部422の端部から上側に延出したのち車体幅方向内側に湾曲した湾曲部424とで構成さている。
【0026】
また、インナ側バルクヘッド400は車体幅方向内側縦壁部404がロッカインナパネル110に接合されると共に車体幅方向外側に延設され車体幅方向外側縦壁部402が、アウタ側バルクヘッド300の車体幅方向内側縦壁部302と間隔S1をあけて対向配置されている。
【0027】
なお、インナ側バルクヘッド400の車体幅方向外側縦壁部402とアウタ側バルクヘッド300の車体幅方向内側縦壁部302とは、同じ大きさとされ、且つ、車体上下方向及び車体前後方向の同じ位置に形成されている。言い換えると、側面視において、インナ側バルクヘッド400の車体幅方向外側縦壁部402とアウタ側バルクヘッド300の車体幅方向内側縦壁部302とが重なるように設定されている。
【0028】
また、インナ側バルクヘッド400は、アウタ側バルクヘッド300よりも強度が小さく且つアウタ側バルクヘッド300よりも車体幅方向の幅が狭く設定されている(本実施形態では、アウタ側バルクヘッド300は必要とされる最小限の幅とされている)。
【0029】
なお、インナ側バルクヘッド400をアウタ側バルクヘッド300よりも強度を小さくする方法は、どのような方法でもよい。例えば、バルクヘッドを構成する鋼板の板厚を薄くする方法や鋼板の材質を変える方法等がある。
【0030】
つぎに本実施形態の作用について説明する。
【0031】
ここで、本発明が適用されていない比較例としての車体側部11について、図3を用いて説明する。図3は比較例の車体側部を示す縦断面図である。なお、本実施形態と構造が異なる部分のみを説明し、他の部分の説明は省略する。また、同一の部材には同一の符号を付す。
【0032】
図3に示すように、車体側部11のロッカ101のロッカ本体102内(閉断面構造内)におけるセンターピラーインナパネル209の下端部211には、貫通孔214(図2参照)が形成されていない。
【0033】
ロッカ本体102内(閉断面構造内)におけるセンターピラーインナパネル209の下端部211とロッカアウタパネル120との間(車体幅方向外側)にアウタ側バルクヘッド600が設けられ、センターピラーインナパネル209の下端部211とロッカインナタパネル110との間(車体幅方向内側)にインナ側バルクヘッド700が設けられている。
【0034】
アウタ側バルクヘッド600は、鋼板を折り曲げることにより形成され、縦断面形状が、車体幅方向外側縦壁部604、上端部616、下端部626、及び車体幅方向内側端部602で構成された車体前後方向に延在した箱形状とされている。また、アウタ側バルクヘッド600は、車体幅方向外側縦壁部604がロッカアウタパネル120に接合され、車体幅方向内側縦壁部602がセンターピラーインナパネル209の下端部211と間隔をあけて対向配置されている。なお、この間隔は製造上(部品公差や組付け公差などの関係上)、必要とされる間隔とされている。
【0035】
インナ側バルクヘッド700も、鋼板を折り曲げることにより形成され、縦断面形状が車体幅方向内側縦壁部704、上端部716、下端部726、及び車体幅方向外側縦壁部702で構成された車体前後方向に延在した箱形状とされている。また、インナ側バルクヘッド700は、車体幅方向内側縦壁部704がロッカインナパネル110に接合され、車体幅方向外側縦壁部704がセンターピラーインナパネル209の下端部211と間隔をあけて対向配置されている。なお、この間隔は製造上(部品公差や組付け公差などの関係上)、必要とされる間隔とされている。
【0036】
このように、アウタ側バクルヘッド600の車体幅方向内側縦壁部602及びインナ側バクルヘッド700の車体幅方向外側縦壁部702が、それぞれセンターピラーインナパネル209の下端部211と間隔をあけて対向配置されている。よって、本実施形態の間隔S1(図2参照)よりもアウタ側バクルヘッド600の車体幅方向内側縦壁部602とインナ側バクルヘッド700の車体幅方向外側縦壁部702との間隔S2が大きい(S2>S1)。
【0037】
このため、比較例の車体側部11のロッカ101に、側面衝突等で車体幅方向外側から荷重Fが入力されると、前述したアウタ側バクルヘッド600の車体幅方向内側縦壁部602及びインナ側バクルヘッド700の車体幅方向外側縦壁部702との間隔S2分、正確には間隔S2から下端部211の板厚tを引いた間隔S3分、空走区間が存在する。そして、この空走区間は荷重入力時の初期荷重伝達がなされないので、クロスメンバ50への荷重伝達効率が低下する。
【0038】
これに対して、本実施形態の車体側部10は、アウタ側バルクヘッド300がセンターピラーインナパネル210の下端部212に形成された貫通孔214から車体幅方向内側に突出し、車体幅方向内縦壁部302が、インナ側バルクヘッド400車体幅方向外側縦壁部402と間隔S1をあけて対向配置されている。
【0039】
これによりアウタ側バルクヘッド300とインナ側バクルヘッド400との間の間隔S1が、比較例の間隔S3(S2−t)よりも減少されているので(S3>S1)、側面衝突等で車体幅方向外側からロッカ100に荷重Fが入力された際に空走区間が減少する。よって、荷重入力時の初期荷重伝達がなされない空走区間が減少するので、クロスメンバ50への荷重伝達効率が向上する。
【0040】
更に、センターピラー210の下端部212を介さないで、アウタ側バルクヘッド300からインナ側バクルヘッド400へと荷重が伝達されるので(荷重を伝達する車体幅方向の部材が減るので)、この観点からも荷重伝達効率が向上する。
【0041】
また、インナ側バルクヘッド400の強度をアウタ側バルクヘッド300よりも小さく設定されている。よって、インナ側バクルヘッド400とアウタ側バルクヘッド300との強度差をコントロール(調整)することで、荷重の伝達やロッカ100の変形のコントロールが可能となり、例えば、開発期間の短縮や試験数の削減が可能となる。
【0042】
また、インナ側バルクヘッド400の車体幅方向の幅を狭くすることで、ロッカインナパネル110とフロアクロスメンバ50と接合部位の支持剛性を剛結結合から自由端(フリー端)結合となり、フロアクロスメンバ50に作用するモーメントが低減又はキャンセルされる。
【0043】
なお、アウタ側バルクヘッド300がセンターピラーインナパネル210の下端部212に形成された貫通孔214から車体幅方向内側に突出するように設定することで(アウタ側バルクヘッド300がセンターピラーインナパネル210の下端部212を横切るように設定することで)、アウタ側バルクヘッド300で主に荷重を受け、前述したようにインナ側バルクヘッド400によって支持剛性を自由端(モーメント=0)とすることが可能となる(アウタ側バクルヘッド300とインナ側バルクヘッド400とで機能分担が可能となる)。また、ロッカ100の図心と最外壁(本実施形態ではロッカアウタパネル120の膨出部126)との距離を大きくすることができ、稜線荷重分担が増加する。
【0044】
言い換えると、アウタ側バルクヘッド300とインナ側バルクヘッド400との強度差及び荷重分担をコントロールすることで、ロッカ100の変形(量)のコントロールが可能となる共にフロアクスメンバ50への荷重マネジメント(荷重割付)が可能となる。
【0045】
なお、比較例の車体側部11の場合は、ロッカ101(ロッカ本体102)の縦断面における車体幅方向の略中央部分にセンターピラーインナパネル209の下端部211が配置されているので、センターピラーインナパネル209の下端部211の左右に配置されているアウタ側バルクヘッド600とインナ側バルクヘッド700との強度を略同一に設定する必要が生じる。これは、アウタ側バルクヘッド600とインナ側バルクヘッド700との強度が同等の場合が、最も荷重伝達効率が良いとされているからである(荷重伝達を「ストロークに対する荷重分布面積」と定義)。
【0046】
したがって、本実施形態のように、アウタ側バクルヘッド600とインナ側バルクヘッド700とで強度を変え機能分担を図ることが、比較例の車体側部11はできない又は困難とされている。また、ロッカ101の変形(量)のコントロール及びフロアクスメンバ50への荷重マネジメント(荷重割付)を図ることも、比較例の車体側部11はできない又は困難とされている。
【0047】
なお、フロアクロスメンバ50は、上下曲げ変形のモーメント耐力で強度が設定される(モーメント耐力がフロアクロスメンバ50の強度を決定するための主な設計条件となる)。よって、フロアクロスメンバ50は、車体幅方向の軸力に対する断面耐力にはマージンが大きい(余裕がある)。したがって、本発明を適用することで、フロアクロスメンバ50の軽量化を行なうことが可能となる。
【0048】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る車体側部構造が適用された車体側部を車体幅方向外側から見た側面図である。
【図2】本実施形態に係る車体側部構造が適用された車体側部を示す図1のA−A線に沿った縦断面図である。
【図3】比較例の車体側部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 車体側部
50 フロアクロスメンバ(クロスメンバ)
100 ロッカ
102 ロッカ本体
110 ロッカインナパネル
120 ロッカアウタパネル
200 センターピラー
210 センターピラーインナパネル
212 下端部
300 アウタ側バルクヘッド
302 車体幅方向内側縦壁部(アウタ側バルクヘッドの車体幅方向内側端部)
304 車体幅方向外側縦壁部(アウタ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部)
400 インナ側バルクヘッド
402 車体幅方向外側縦壁部(インナ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部)
404 車体幅方向内側縦壁部(インナ側バルクヘッドの車体幅方向内側端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の下端部に車体前後方向を長手方向として設けられたロッカの車体幅方向外側を構成し車体幅方向内側を開口側として配置された断面ハット形状のロッカアウタパネルと、前記ロッカの車体幅方向内側を構成し車体幅方向外側を開口側として配置された断面ハット形状のロッカインナパネルと、が、前記車体側部の車体前後方向中間部に略車体上下方向を長手方向として配置されたセンターピラーインナパネルの下端部が挟持された状態で接合されることによって構成された閉断面構造のロッカ本体と、
車体幅方向に沿って配置され、前記ロッカインナパネルにおける前記センターピラーインナパネルの下端部の車体幅方内側に位置する部位に、車体幅方向外側端部が接合されたクロスメンバと、
前記ロッカ本体内における前記センターピラーインナパネルの下端部に形成され貫通孔と、
前記ロッカ本体内に設けられ、車体幅方向外側端部がロッカアウタパネルに接合され且つ車体幅方向内側に延設され前記センターピラーインナパネルの下端部に形成された前記貫通孔から車体幅方向内側に突出したアウタ側バルクヘッドと、
前記ロッカ本体内に設けられ、車体幅方向内側端部が前記ロッカインナパネルに接合され且つ車体幅方向外側に延設され車体幅方向外側端部が前記アウタ側バルクヘッドの車体幅方向外側端部と間隔をあけて対向配置され、前記アウタ側バルクヘッドよりも強度が小さく且つ前記アウタ側バルクヘッドよりも車体幅方向の幅が狭いインナ側バルクヘッドと、
を備える車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−155509(P2010−155509A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334272(P2008−334272)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】