説明

車体前部構造

【課題】 フロントバルクヘッドをできるだけ車体前方に配置し、車体の前部左右のコーナ部分を絞り込んで大型ヘッドランプを配置し、ラジエータの上部を十分に支える。
【解決手段】 車体20は、左右両側のフロントサイドフレーム31と、左右両側の上部のフロントアッパメンバ32と、フロントサイドフレームの前端部に接合したフロントバルクヘッド34と、フロントバルクヘッドの上部コーナから後方へ延びてフロントアッパメンバに接合したアッパサイドフレーム35とからなる。フロントバルクヘッドはアッパクロスメンバ51を備える。アッパサイドフレームの前端部は、アッパクロスメンバの両端部に対して、後方への段差Diを有して連結し、連結部材70でも連結した。連結部材は、ラジエータ26をアッパクロスメンバとアッパサイドフレームに取付けるステーを兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバルクヘッドの後部に水冷エンジン用ラジエータを配置した、車体前部構造の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、車体前部にエンジンを搭載した場合に、フロントバルクヘッドの後部に水冷エンジン用ラジエータを配置することが多い。このような車体前部構造は種々の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−96761公報(図1)
【0003】
特許文献1に示す従来の車体前部構造の概要を、次の図5に基づいて説明する。図5は従来の車体前部構造の概要図である。
従来の車体100は前部にフロントバルクヘッド101を備える。このフロントバルクヘッド101は、前部上部で車幅方向に延びたアッパクロスメンバ102と、前部下部で車幅方向に延びたロアクロスメンバ103と、これらアッパ・ロアクロスメンバ102,103の両端間を繋ぐ左右のサイドステイ104,104とからなる。アッパクロスメンバ102は、左右両端から後方へ左右のアッパサイドフレーム105,105を延ばし、その端部を左右のフロントアッパメンバ106,106に接合したものである。
【0004】
さらに車体100の前部は、左右のヘッドランプ107(左側のみを示す。)を配置するためのランプ取付部108,108を有する。ランプ取付部108,108は、フロントバルクヘッド101の側方でアッパサイドフレーム105,105の下方に設けることになる。
このような車体100の前部において、エンジンルーム111内に水冷エンジン112及び水冷エンジン用ラジエータ113を配置することができる。ラジエータ113は、走行風によって冷却するためにフロントバルクヘッド101の後部に配置することになる。
【0005】
ラジエータ113の取付け構造は、アッパクロスメンバ102の左右両端部分にアッパサイドフレーム105,105の前端部分を重ね合わせて接合し、これらの重ね合わせ領域121,121から後方へステー122,122を延ばし、その後端にラジエータ113の上部を取付け、一方、ロアクロスメンバ103にラジエータ113の下部を取付けるようにした構成である。
【0006】
ラジエータ113の上部を、高剛性である重ね合わせ領域121,121で支えるようにしたので、この支える部分を補強部材によって補強する必要はない。
図中、123,123はステー取付ボルト、124はラジエータ113の上部支持ピン、125はラジエータ113の下部支持ピン、126,127はマウント用ブッシュである。
【0007】
ところで、車両の走行性能を高めるために、高出力のエンジン112を搭載した場合には、ラジエータ113も冷却性能を高めるために大型化することになる。ある一定の大きさの車体100において、車室のスペースを確保した上で、エンジンルーム111に大型のエンジン112及び大型のラジエータ113を配置するのであるから、エンジンルーム111をできるだけ広くするための工夫が必要となる。エンジンルーム111のスペースを大きくするには、フロントバルクヘッド101をできるだけ車体前方に配置することが考えられる。
【0008】
さらに近年、車体100のデザイン上の要請から、車体前部における左右のコーナ部分を大きく湾曲させつつ後退させた、いわゆる絞り込んだ外観形状にする傾向にある。さらには、この絞り込んだコーナ部分に大型のヘッドランプ107を配置することで、車体100のデザイン性を高めようとする傾向にある。
【0009】
このように、(1)エンジンルーム111のスペースを拡大するために、フロントバルクヘッド101をできるだけ車体前方に配置するという第1条件と、(2)車体100の前部左右のコーナ部分を絞り込むとともに、この部分に大型のヘッドランプ107を配置するという第2条件との、相反する2つの条件を達成するには改良の余地がある。
しかも、上記2条件を達成した上で、更にアッパクロスメンバ102によってラジエータ113の上部を支える必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、(1)フロントバルクヘッドをできるだけ車体前方に配置することで、エンジンルームのスペースを拡大することができ、(2)車体の前部左右のコーナ部分を絞り込むとともに、この部分に大型のヘッドランプを配置することができ、しかも(3)車体前部にてラジエータの上部を十分に支えることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、車体前部の左右両側で車体前後に延びた左右のフロントサイドフレームと、これら左右のフロントサイドフレームの車幅方向外側で且つ上側で車体前後に延びた左右のフロントアッパメンバと、左右のフロントサイドフレームの前端部に接合したフロントバルクヘッドと、このフロントバルクヘッドの上部コーナから後方へ延びて左右のフロントアッパメンバに接合した左右のアッパサイドフレームとからなる車体前部構造において、
フロントバルクヘッドが、前部上部で車幅方向に延びたアッパクロスメンバと、前部下部で車幅方向に延びたロアクロスメンバとを備え、
左右のアッパサイドフレームの前端部を、アッパクロスメンバの左右両端部に対し、後方への段差を有して連結するとともに連結部材によっても連結し、
これらの連結部材が、フロントバルクヘッドの後部に配置されたラジエータの上部をアッパクロスメンバ及び左右のアッパサイドフレームに取付けるための、ステーを兼ねたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、アッパクロスメンバの左右両端部に対し、左右のアッパサイドフレームの前端部を後方への段差を有して連結するようにしたので、この段差の分だけ車体前後方向に、フロントバルクヘッドと左右のアッパサイドフレームとを相対的にずらすことができる。
従って、フロントバルクヘッドをできるだけ車体前方に配置することにより、エンジンルームのスペースを拡大することができる。そして、拡大したエンジンルームに、より大型のエンジン及びより大型のラジエータを配置することができる。
また、フロントバルクヘッドに対して左右のアッパサイドフレームを後退させることにより、車体の前部左右のコーナ部分を絞り込むとともに、この部分に大型のヘッドランプを容易に配置することができる。
【0013】
さらには、左右のアッパサイドフレームの前端部を、アッパクロスメンバの左右両端部に対し、後方への段差を有して連結するだけではなく、連結部材で連結することにより補強したので、段差を有しているにもかかわらず、アッパクロスメンバの左右両端部に対する左右のアッパサイドフレームの前端部の連結剛性を、十分に確保することができる。この結果、車体の剛性を十分に確保することができる。
【0014】
さらにまた、連結部材が、アッパクロスメンバ及びアッパサイドフレームにラジエータの上部を取付けるためのステーを兼ねたので、別部材のステーを設けることなく簡単な構成によって、車体にラジエータの上部を取付けることができる。
しかも、ラジエータ側から伝わる外力を、ステーを介してアッパクロスメンバ及びアッパサイドフレームの両方に分散させることができる。従って、アッパクロスメンバ及びアッパサイドフレームを補強することなく、ラジエータの上部を十分に支えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車体中心(車幅中心)を示す。また、以下に示す各部材同士の接合については、例えばスポット溶接等の溶接による。
図1は本発明に係る車体前部の斜視図であり、車体20の前部構造を示す。図2は本発明に係る車両前部の平面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように車両10は、車体20(すなわち、車体フレーム20)をダッシュボード21によって前部のエンジンルーム22と後部の車室23とに仕切った自動車である。車体20の前部の構成について以下に説明する。「車体20の前部」とは、車体20のうち、ダッシュボード21よりも前の部分のことを言う。ダッシュボード21は仕切板であり、ダッシュパネルとも言う。
エンジンルーム22は、水冷式エンジン24、トランスミッション25及び水冷エンジン用ラジエータ26を配置したものである(図2参照)。
【0017】
車体20の前部は、車体前部の両側で車体前後に延びた左右のフロントサイドフレーム31,31と、左右のフロントサイドフレーム31,31の車幅方向外側で且つ上方で車体前後に延びた左右のフロントアッパメンバ32,32と、左右のフロントサイドフレーム31,31と左右のアッパフレーム32,32との間に各々掛け渡した左右のフロントダンパハウジング33,33(図1参照)と、左右のフロントサイドフレーム31,31の前端部に接合したフロントバルクヘッド34と、フロントバルクヘッド34の上部コーナから後方へ延びて左右のフロントアッパメンバ32,32に接合した左右のアッパサイドフレーム35,35とからなる構成を、主要な構成としたモノコックボディである。
【0018】
フロントサイドフレーム31及びフロントアッパメンバ32は、略矩形状中空断面を呈する閉断面体である。
フロントアッパメンバ32は、図示せぬフロントピラーから前方へ延び、さらにフロントダンパハウジング33の上を超えて前下方へ傾きつつ延び、さらに車幅中央側へ大きく湾曲しつつ延び、その湾曲部41,41の先端42,42をロントサイドフレーム31,31の前端における外側面に接合した部材である。
一方、左右のアッパサイドフレーム35,35は斜め後方へ延び、その後端部35a,35aを、フロントアッパメンバ32,32の長手中央における湾曲部41,41の基端43,43に接合した、略矩形状中空断面を呈する閉断面体である。
【0019】
図1に示すように、フロントバルクヘッド34は正面視略矩形状の枠体であって、この枠体の車幅方向の幅は左右のフロントサイドフレーム31,31の車幅方向の間隔、及び左右のフロントアッパメンバ32,32の車幅方向の間隔よりも小さい。
詳しく説明するとフロントバルクヘッド34は、前部上部で車幅方向に延びたアッパクロスメンバ51と、前部下部で車幅方向に延びたロアクロスメンバ52と、左右の上部サイドステー53,53と、左右の下部サイドステー54,54とからなる。アッパ・ロアクロスメンバ51,52、上部サイドステー53,53及び下部サイドステー54,54は略矩形状中空断面を呈する閉断面体である。
【0020】
左右の上部サイドステー53,53は、アッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aから下方且つ側方へ延び、左右のフロントサイドフレーム31,31の前端における内側面に各々接合することによって、アッパクロスメンバ51をフロントサイドフレーム31,31に接合する部材である。
一方、左右の下部サイドステー54,54は、ロアクロスメンバ52の左右両端部から上方且つ側方へ延び、左右のフロントサイドフレーム31,31の前端における内側面に各々接合することによって、ロアクロスメンバ52をフロントサイドフレーム31,31に接合する部材である。
【0021】
ところで、図2に示すように、車両10に搭載された水冷式エンジン24は、高出力の大型エンジンである。この結果、車両10の走行性能を高めることができる。高出力のエンジン24を搭載したので、ラジエータ26も冷却性能を高めるために大型化することになる。一定の大きさの車体20において、車室23のスペースを確保した上で、エンジンルーム22に大型のエンジン24及び大型のラジエータ26を配置するためには、エンジンルーム22をできるだけ広くする必要がある。
これに対して本発明では、エンジンルーム22のスペースを大きくするために、フロントバルクヘッド34をできるだけ車体20前方に配置することにした。ラジエータ26は、走行風によって冷却するためにフロントバルクヘッド34の後部、すなわち真後ろに隣接させて配置することになる。
【0022】
さらには本発明では、車体20のデザイン上の要請から、図1及び図2に示すように、車体20前部における左右のコーナ部分61,61を大きく湾曲させつつ後退させた、いわゆる絞り込んだ外観形状にするとともに、この絞り込んだコーナ部分61,61に大型のヘッドランプ62,62を配置したものである。
詳しくは、絞り込んだコーナ部分61は、フロントアッパメンバ32の湾曲部41とアッパサイドフレーム35と上部サイドステー53とで囲んだ、比較的大きい略三角形状の空間部Sp(図1参照)を有する。この結果、空間部Spに大型のヘッドランプ62を配置することができる。
【0023】
図3(a),(b)は本発明に係る車体前部の左のコーナ部分の構成図であり、(a)は左のコーナ部分61を左前方から見た斜視構成を示し、(b)は左のコーナ部分61を上方から見た構成を示す。
【0024】
図2及び図3に示すように、左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b,35bは、フロントバルクヘッド34におけるアッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対し、後方への段差Di,Diを有して、溶接等により連結したことを特徴とする。
すなわち、アッパクロスメンバ51の端部51aに対する、アッパサイドフレーム35の前端部35bの連結位置を、後方へ寸法Sh1だけずらす(オフセトする)ことによって、後方への段差Diを設けた。言い換えると、アッパクロスメンバ51の端部51aにおいて、前端面から後方へ寸法Sh1だけ寄せた位置に、アッパサイドフレーム35の前端部35bを接合した。
この結果、アッパクロスメンバ51の端部51aに対して、アッパサイドフレーム35の前端部35bを接合等により連結できる範囲Wiは、図3(a)のハッチングにて示す寸法Sh2だけになる。
【0025】
連結できる範囲Wiが小さくなったことによる車体剛性を補うために、本発明では、アッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対して、左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b、35bを、連結部材70,70によっても連結したことを特徴とする。つまり、アッパクロスメンバ51と左右のアッパサイドフレーム35,35とのコーナ部分を、連結部材70,70にて連結することで、平面視略トラス構造(略三角状)として、コーナ部分の剛性を確保した。
【0026】
図4は本発明に係る車体前部の左のコーナ部分の分解図である。
図3及び図4に示すように、連結部材70は、鋼板のプレス成形品であり、平面視略く字状(略L字状)を呈する平盤部材である。このような連結部材70は、アッパクロスメンバ51の端部51a及びアッパサイドフレーム35の前端部35bに上から重ねてボルト止めした構成である。すなわち、連結部材70の一端部71は、アッパクロスメンバ51の端部51aにボルト72にて固定し、連結部材70の他端部73は、アッパサイドフレーム35の前端部35bにボルト74にて固定したものである。
【0027】
さらには、連結部材70,70は、ラジエータ26の上部をアッパクロスメンバ51及び左右のアッパサイドフレーム35,35に取付けるための、ステーを兼ねる。具体的には、連結部材70は中央部75に支持用孔76を設けたものである。ラジエータ26の上部端部から上方へ延びた上部支持ピン81を、マウント用ブッシュ82を介して支持用孔76に嵌合することで、ラジエータ26の上部を支えることができる。
なお、ラジエータ26の下部端部から下方へ延びた下部支持ピン83を、マウント用ブッシュ84を介してロアクロスメンバ52の支持用孔52aに嵌合することで、ラジエータ26の下部を支えることができる。
このようなラジエータ取付け構造であるから、車体20にてラジエータ26を十分に支えるように取付けることができる。
【0028】
次に、上記構成の車体前部構造の作用を説明する。
図2及び図3に示すように、フロントバルクヘッド34におけるアッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対し、左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b、35bを後方への段差Di,Diを有して、溶接等により連結するようにしたので、この段差Di,Diの分だけ車体20前後方向に、フロントバルクヘッド34と左右のアッパサイドフレーム35,35とを相対的にずらすことができる。
【0029】
従って、図2に示すように、フロントバルクヘッド34をできるだけ車体20前方に配置することにより、エンジンルーム22のスペースを拡大することができる。そして、拡大したエンジンルームに、より大型のエンジン24及びより大型のラジエータ26を配置することができる。
また、フロントバルクヘッド34に対して左右のアッパサイドフレーム35,35を後退させることにより、車体20の前部左右のコーナ部分61,61を絞り込むとともに、このコーナ部分61,61に大型のヘッドランプ62,62を容易に配置することができる。
【0030】
さらには、左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b、35bを、アッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対して、後方への段差Di,Diを有して連結するだけではなく、連結部材70,70で連結することにより補強したので、段差Di,Diを有しているにもかかわらず、アッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対する左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b、35bの連結剛性(接合した場合には接合剛性)を、十分に確保することができる。この結果、車体20の剛性を十分に確保することができる。
【0031】
特に、上述のように、アッパクロスメンバ51の端部51aに対して、アッパサイドフレーム35の前端部35bの連結位置は、後方へずれている。この結果、図3(b)に示すように、アッパサイドフレーム35の前端部35bのうち、車体中心側の端面35c(すなわち、端部51aに連結する連結面35c)は、アッパクロスメンバ51の端部51aよりも後方へずれて、一部35dが後に、はみ出る。このような「はみ出た部分35d」を図3に示すように上から見たときに、はみ出た部分35dと端部51aとで、略L字状のコーナ部が形成されることになる。このコーナ部の上面に、平面視略L字状の連結部材70を逆向きに重ねて固定した。このようにして、コーナ部における上部を連結部材70によって補強したものである。従って、「はみ出た部分35d」が有るにもかかわらず、車体20における車幅方向の剛性を十分に高めることができる。
【0032】
さらにまた、図2及び図3に示すように、連結部材70,70が、アッパクロスメンバ51及びアッパサイドフレーム35,35にラジエータ26の上部を取付けるためのステーを兼ねたので、別部材のステーを設けることなく簡単な構成によって、車体20にラジエータ26の上部を取付けることができる。
【0033】
しかも、ラジエータ26側から伝わる外力を、ステー70,70(すなわち、連結部材70,70)を介して、アッパクロスメンバ51及びアッパサイドフレーム35,35の両方に分散させることができる。従って、アッパクロスメンバ51及びアッパサイドフレーム35,35を補強することなく、ラジエータ26の上部を十分に支えることができる。
【0034】
さらまた、連結部材70を平面視略く字状(略L字状)に形成し、その中央部75でラジエータ26の上部を支えるようにしたので、ラジエータ26側から伝わる車体前後方向の外力及び車幅方向の外力の両方を、アッパクロスメンバ51及びアッパサイドフレーム35,35に効率良く伝えて、分散させることができる。
【0035】
なお、本発明は実施の形態では、アッパクロスメンバ51の左右両端部51a,51aに対する、左右のアッパサイドフレーム35,35の前端部35b、35bの連結構造は、溶接等による接合に限定されるものではなく、例えば、ボルトやリベット等の締結部材による締結や、一体成形による構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の車体前部構造は、エンジンルーム22に水冷式エンジン24及びエンジン用ラジエータ26を配置し、さらに、車体20前部における左右のコーナ部分61,61を絞り込んだ外観形状にするとともに、この絞り込んだコーナ部分61,61に大型のヘッドランプ62,62を配置した乗用車等の車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る車体前部の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両前部の平面図である。
【図3】本発明に係る車体前部の左のコーナ部分の構成図である。
【図4】本発明に係る車体前部の左のコーナ部分の分解図である。
【図5】従来の車体前部構造の概要図である。
【符号の説明】
【0038】
10…車両、20…車体、22…エンジンルーム、24…水冷式エンジン、26…ラジエータ、31…フロントサイドフレーム、32…フロントアッパメンバ、34…フロントバルクヘッド、35…アッパサイドフレーム、35b…アッパサイドフレームの前端部、51…アッパクロスメンバ、51a…アッパクロスメンバの左右両端部、52…ロアクロスメンバ、70…連結部材(ステー)、Di…段差、Wi…連結できる範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の左右両側で車体前後に延びた左右のフロントサイドフレームと、これら左右のフロントサイドフレームの車幅方向外側で且つ上側で車体前後に延びた左右のフロントアッパメンバと、前記左右のフロントサイドフレームの前端部に接合したフロントバルクヘッドと、このフロントバルクヘッドの上部コーナから後方へ延びて前記左右のフロントアッパメンバに接合した左右のアッパサイドフレームとからなる車体前部構造において、
前記フロントバルクヘッドは、前部上部で車幅方向に延びたアッパクロスメンバと、前部下部で車幅方向に延びたロアクロスメンバとを備え、
前記左右のアッパサイドフレームの前端部は、前記アッパクロスメンバの左右両端部に対し、後方への段差を有して連結するとともに連結部材によっても連結し、
これらの連結部材は、前記フロントバルクヘッドの後部に配置されたラジエータの上部を前記アッパクロスメンバ及び前記左右のアッパサイドフレームに取付けるための、ステーを兼ねたことを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−36027(P2006−36027A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218940(P2004−218940)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】