車体前部構造
【課題】圧縮荷重支えフレーム部をフロアフレームに連結可能で、かつ、圧縮荷重支えフレーム部の剛性を確保できる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、右フロントサイドフレーム11を備えている。右フロントサイドフレーム11は、車体前後方向に延出されて車体幅方向外側に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部31を備えている。圧縮荷重支えフレーム部31は、略コ字状を形成する上下の壁部35,36および側壁部37を有するとともに、圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成されている。そして、圧縮下向き湾曲部位41のうち、側壁部37に荷重の伝達方向に沿って延びる上下の後補強ビード48,49が設けられている。
【解決手段】車体前部構造10は、右フロントサイドフレーム11を備えている。右フロントサイドフレーム11は、車体前後方向に延出されて車体幅方向外側に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部31を備えている。圧縮荷重支えフレーム部31は、略コ字状を形成する上下の壁部35,36および側壁部37を有するとともに、圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成されている。そして、圧縮下向き湾曲部位41のうち、側壁部37に荷重の伝達方向に沿って延びる上下の後補強ビード48,49が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームに車体前後方向の荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部を備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、車体前部の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出された軸荷重受け部材(以下、「圧縮荷重支えフレーム部」という)と、車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されたモーメント受け部材(以下、「曲げ荷重支えフレーム部」という)とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−290311号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、圧縮荷重支えフレーム部が車体前後方向に延出されることで、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を支えることが可能である。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部が圧縮荷重支えフレーム部の中央部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されることで車体幅方向中心に作用する荷重を支えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧縮荷重支えフレーム部は、後端部がフロアフレームの前端部に結合(連結)されている。
ここで、車体のなかには、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた状態(ずらされた状態)で設けられたものがある。
【0005】
この車両の場合、圧縮荷重支えフレーム部の後部を車体幅方向中心に向けて湾曲形成してフロアフレームの前端部に結合(連結)することが考えられる。
しかし、圧縮荷重支えフレーム部の後部を湾曲形成した場合、湾曲形成した後部の剛性を確保することが難しい。
このため、フロントサイドフレームに車体前方から荷重が作用した場合に、作用した荷重を圧縮荷重支えフレーム部で支えることが難しいとされている。
【0006】
本発明は、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた車両において、圧縮荷重支えフレーム部をフロアフレームに連結可能で、かつ、圧縮荷重支えフレーム部の剛性を確保できる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前部構造の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の曲げ荷重支えフレーム部とを備えた車体前部構造において、前記圧縮荷重支えフレーム部は、断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部を有するとともに、後部が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成され、前記後部のうち、前記側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記圧縮荷重支えフレーム部の開口部を塞ぐことで閉断面を形成する蓋部材を備え、前記蓋部材に、前記補強ビードに対峙する外側補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記曲げ荷重支えフレーム部は、断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部のうち、この側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の後部を車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成した。
よって、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた場合でも、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部をフロアフレームに連結することができる。
【0011】
さらに、圧縮荷重支えフレーム部の後部のうち、側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードを設けた。
よって、後部の剛性(すなわち、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を)を補強ビードで確保することができる。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた車両において、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部をフロアフレームに連結可能で、かつ、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を確保することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の開口部を蓋部材で塞いで閉断面を形成した。この蓋部材に外側補強ビードを設け、外側補強ビードを補強ビードに対峙させた。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部を蓋部材で補強することが可能になり、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を一層良好に確保することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、曲げ荷重支えフレーム部の側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードを設けることで、曲げ荷重支えフレーム部の剛性を高めることができる。
よって、曲げ荷重支えフレーム部の車体幅方向中心側への湾曲状に張出量を小さく抑えた状態で、車体幅方向中心に作用する荷重を曲げ荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0014】
このように、曲げ荷重支えフレーム部の張出量を小さく抑えることで、エンジンルーム内の空間を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部の張出量を小さく抑えることで、フロントサイドフレームの軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0016】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す側面図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。なお、図2においては車体前部構造の構成の理解を容易にするためにサブフレームを除去した状態で示す。
車体前部構造10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム11と、左右のフロントサイドフレーム11の前端部11aに車体幅方向に架け渡されたバンパビーム12と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bにそれぞれ設けられた左右のアダプタ(アダプタ)14と、左右のアダプタ14を介して左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bにそれぞれ連結された左右のフロアフレーム(フロアフレーム)16と、左右のフロントサイドフレーム11をそれぞれ補強する左右のスチフナ(スチフナ)18と、左右のフロントサイドフレーム11の下方に設けられたサブフレーム21とを備えている。
【0017】
なお、左右のフロントサイドフレーム11、左右のアダプタ14、左右のフロアフレーム16および左右のスチフナ18はそれぞれ左右対称の部材であり、以下右側部材について説明して左側部材の説明を省略する。
【0018】
サブフレーム21は、左右のフロントサイドフレーム11および左右のフロアフレーム16に設けられたサブフレーム取付手段22を介して左右のフロントサイドフレーム11および左右のフロアフレーム16に設けられている。
【0019】
サブフレーム取付手段22は、左右のフロントサイドフレーム11の前端部11aから下方に張り出された左右の前サブフレーム取付部23と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bに設けられた左右の中央サブフレーム取付部(サブフレーム取付部)24と、左右のフロアフレーム16の前端部16aに設けられた左右の後サブフレーム取付部25とを備えている。
【0020】
左右の前サブフレーム取付部23、左右の中央サブフレーム取付部24および左右の後サブフレーム取付部25はそれぞれ左右対称の部材であり、図1に右側取付部のみを図示する。
【0021】
左右の前サブフレーム取付部23、左右の中央サブフレーム取付部24および左右の後サブフレーム取付部25にサブフレーム21が取り付けられている。
これにより、サブフレーム取付手段22で左右のフロントサイドフレーム11の下方にサブフレーム21が支持されている。
【0022】
左右の中央サブフレーム取付部24は、左右のスチフナ18にそれぞれ備えられている。左右のスチフナ18は、左右のフロントサイドフレーム11をそれぞれ補強するための部材である。
【0023】
図3は本発明に係るフロントサイドフレームおよびフロアフレームを示す斜視図である。
右フロントサイドフレーム11は、車体前部構造10(図1参照)の骨格を構成する部材で、車体前後方向に延出された圧縮荷重支えフレーム部31と、圧縮荷重支えフレーム部31の車体幅方向外側に設けられたカバーフレーム部(蓋部材)32と、圧縮荷重支えフレーム部31の車体幅方向内側に設けられた曲げ荷重支えフレーム部(サイドフレーム部)33とを備えている。
【0024】
この右フロントサイドフレーム11は後部に下向き湾曲部位28(図1も参照)が形成されている。
下向き湾曲部位28は、右フロアフレーム16に右アダプタ14を介して後端部11bを連結させるために、右フロアフレーム16に向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0025】
図4は図3の分解斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図5のフロントサイドフレームを分解した状態を示す断面図である。
圧縮荷重支えフレーム部31は、車体前後方向に延出された部材である。
この圧縮荷重支えフレーム部31は、上下の壁部35,36および側壁部37で車体幅方向外方に開口するように断面略コ字状に形成され、上壁部35から上方に向けて上フランジ(上張出片)38が形成され、下壁部36から下方に向けて下フランジ(下張出片)39が形成されている。
【0026】
圧縮荷重支えフレーム部31は、後部に圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)を有し、圧縮下向き湾曲部位41に上下の後補強ビード(補強ビード)48,49が形成されている。
圧縮下向き湾曲部位41は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
圧縮荷重支えフレーム部31に圧縮下向き湾曲部位41を設けることで、圧縮荷重支えフレーム部31の後端部31aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0027】
この圧縮荷重支えフレーム部31は、上壁部35および側壁部37が交差して形成された上稜線部42と、下壁部36および側壁部37が交差して形成された下稜線部43とを有している。
上稜線部42および下稜線部43は、図4に示すように、車体前後方向に延出されている。よって、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を圧縮荷重支えフレーム部31(主に、上下の稜線部42,43)で支えることができる。
すなわち、圧縮荷重支えフレーム部31は、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を支える軸荷重受け部材である。
【0028】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)に上下の後補強ビード48,49を形成した理由について説明する。
図7は本発明に係るフロントサイドフレームを示す分解平面図である。
図2に示すように、右フロントサイドフレーム11の圧縮荷重支えフレーム部31に対して右フロアフレーム16が車体幅方向中心20側に距離Dだけオフセットされて設けられている。
【0029】
そこで、図7に示すように、圧縮荷重支えフレーム部31の下向き湾曲部位(後部)41を車体幅方向中心20側に湾曲形成することで、右フロアフレーム16に連結可能とした。
具体的には、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心20(図2参照)に向けて半径Rで僅かに湾曲形成されている。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部31の後端部31aが、図4に示す右フロアフレーム16の前端部16aに右アダプタ14を介して連結される。
【0030】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心20に向けて湾曲形成されることで、車体前方から作用する荷重に対する圧縮下向き湾曲部位41の剛性を確保することが難しい。
そこで、圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)に上下の後補強ビード48,49を形成した。
【0031】
図8は図7の8矢視図である。
上後補強ビード48は、圧縮下向き湾曲部位41(側壁部37)の上壁部35寄りに設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された上傾斜線63に沿って形成されている。
上傾斜線63は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように設定されている。
【0032】
よって、上後補強ビード48は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この上後補強ビード48は、一例として、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0033】
下後補強ビード49は、圧縮下向き湾曲部位41(側壁部37)の下壁部36寄りで、かつ、上後補強ビード48の下方に設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された下傾斜線64に沿って形成されている。
下傾斜線64は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、下端16cを通過するように、上傾斜線63に対して傾斜角が大きく設定されている。
【0034】
よって、下後補強ビード49は、前端部16aの下端16cに向けて下り勾配に形成されている。
この下後補強ビード49は、一例として、上後補強ビード48と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0035】
ここで、圧縮下向き湾曲部位41に車体前方から荷重F1が作用した場合、作用した荷重F1は矢印の如く右フロアフレーム16に伝えられる。
よって、上後補強ビード48を上端16bに向けるとともに下後補強ビード49を下端16cに向けることで(すなわち、上下の後補強ビード48,49を右フロアフレーム16に向けることで)、上下の後補強ビード48,49は荷重F1の伝達方向に沿って設けられている。
これにより、上下の後補強ビード48,49で荷重F1を支えることが可能になり、圧縮下向き湾曲部位41の剛性を確保することができる。
【0036】
また、圧縮荷重支えフレーム部31は、側壁部37のうち、圧縮下向き湾曲部位41の車体前方に上下の前補強ビード69,70が設けられている。
上前補強ビード69は、圧縮荷重支えフレーム部31の長手方向に沿って略水平に設けられ、上後補強ビード48と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている。
【0037】
下前補強ビード70は、上前補強ビード69の下方に、圧縮荷重支えフレーム部31の長手方向に沿って略水平に設けられ、下後補強ビード49と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている。
【0038】
このように、上下の前補強ビード69,70を設けることで、車体前方から作用した荷重F1を上下の前補強ビード69,70で支えることができ、圧縮荷重支えフレーム部31の剛性を一層高めることができる。
【0039】
図4〜図6に戻って、カバーフレーム部32は、車体前後方向に延出された帯状の板材である。
このカバーフレーム部32は、圧縮荷重支えフレーム部31の上フランジ38に上辺45が溶接され、圧縮荷重支えフレーム部31の下フランジ39に下辺46が溶接されている。
カバーフレーム部32が圧縮荷重支えフレーム部31に溶接されることで、圧縮荷重支えフレーム部31の開口部44がカバーフレーム部32で塞がれ、カバーフレーム部32および圧縮荷重支えフレーム部31で閉断面が形成されている。
【0040】
カバーフレーム部32はカバー下向き湾曲部位47(図4参照)を有し、カバー下向き湾曲部位47に上下の外側補強ビード(外側補強ビード)76,77が形成されている。
カバー下向き湾曲部位47は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0041】
カバーフレーム部32にカバー下向き湾曲部位47を設けることで、カバーフレーム部32の後端部32aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0042】
図9は図7の9矢視図である。
上外側補強ビード76は、カバー下向き湾曲部位47のうち略中央の上辺45寄りに設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された上傾斜線78に沿って形成されることで、上後補強ビード48(図8参照)に対峙されている。
【0043】
上傾斜線78は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように設定されている。
よって、上外側補強ビード76は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この上外側補強ビード76は、一例として、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0044】
下外側補強ビード77は、カバー下向き湾曲部位47のうち略中央の下辺46寄りで、かつ、上外側補強ビード76の下方に設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された下傾斜線79に沿って形成されることで、下後補強ビード49(図8参照)に対峙されている。
【0045】
上傾斜線78は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように、
下傾斜線79は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、下端16cを通過するように、上傾斜線78に対して傾斜角が大きく設定されている。
【0046】
よって、下外側補強ビード77は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この下外側補強ビード77は、一例として、上外側補強ビード76と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0047】
ここで、カバーフレーム部32に車体前方から荷重F1が作用した場合、作用した荷重F1は矢印の如く右フロアフレーム16に伝えられる。
よって、上外側補強ビード76を上端16bに向けるとともに下外側補強ビード77を下端16cに向けることで(すなわち、上下の外側補強ビード76,77を右フロアフレーム16に向けることで)、上下の外側補強ビード76,77は荷重F1の伝達方向に沿って設けられている。
これにより、上下の外側補強ビード76,77でカバー下向き湾曲部位47(カバーフレーム部32)の剛性を確保することができる。
【0048】
剛性を確保したカバーフレーム部32が圧縮荷重支えフレーム部31(図8参照)に溶接され、カバーフレーム部32および圧縮荷重支えフレーム部31で閉断面が形成されている(図5参照)。
これにより、カバーフレーム部32のカバー下向き湾曲部位47で圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41の剛性が一層良好に確保できる。
【0049】
図4〜図6に戻って、曲げ荷重支えフレーム部33は、上下の壁部51,52および側壁部53で車体幅方向外方に開口するように断面略コ字状に形成され、上壁部51から上方に向けて上フランジ(上張出片)54が形成され、下壁部52から下方に向けて下フランジ(下張出片)55が形成されている。
【0050】
曲げ荷重支えフレーム部33は後部に曲げ下向き湾曲部位58(図4参照)を有し、曲げ下向き湾曲部位58に上下の内側補強ビード(内側補強ビード)95,96が形成されている。
曲げ下向き湾曲部位58は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0051】
曲げ荷重支えフレーム部33に曲げ下向き湾曲部位58を設けることで、曲げ荷重支えフレーム部33の後端部33aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0052】
曲げ荷重支えフレーム部33は、圧縮荷重支えフレーム部31の略後半部31bに被せた状態で圧縮荷重支えフレーム部31に溶接されている。
この状態で、曲げ荷重支えフレーム部33の開口部59が圧縮荷重支えフレーム部31で塞がれ、圧縮荷重支えフレーム部31および曲げ荷重支えフレーム部33で閉断面が形成されている。
【0053】
この曲げ荷重支えフレーム部33は、上壁部51および側壁部53が交差して形成された上稜線部61と、下壁部52および側壁部53が交差して形成された下稜線部62とを有している。
【0054】
曲げ荷重支えフレーム部33は、図4に示す曲げ荷重支えフレーム部33の前端部33bが圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cに設けられ、前端部33bから後端部33aに向かうにしたがって(すなわち、車体後方に向かうにしたがって)車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
【0055】
よって、上稜線部61および下稜線部62は、圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cから車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
これにより、車体前方において車体幅方向中心20(図2参照)に向けて荷重が発生した際に、荷重により生じる曲げモーメントを曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上下の稜線部61,62)で支えることができる。
すなわち、曲げ荷重支えフレーム部33は、曲げモーメントを支えるモーメント受け部材である。
【0056】
図10は図7の10矢視図である。
上内側補強ビード95は、曲げ下向き湾曲部位58(側壁部53)の上壁部51寄りに設けられ、車体後方に向けて僅かに下り勾配に配置された上傾斜線97に沿って形成されている。
ここで、上傾斜線97は、僅かに下り勾配に配置されることで略水平に配置されている。よって、上内側補強ビード95は車体前後方向を向いて成形されている。
この上内側補強ビード95は、一例として、車体幅方向外側に膨出されている(図6参照)。
【0057】
下内側補強ビード96は、曲げ下向き湾曲部位58(側壁部53)の下壁部52寄りで、かつ、上内側補強ビード95の下方に設けられ、車体後方に向けて僅かに下り勾配に配置された下傾斜線98に沿って形成されている。
ここで、下傾斜線98は、僅かに下り勾配に配置されることで略水平に配置されている。よって、下内側補強ビード96は車体前後方向を向いて成形されている。
この下内側補強ビード96は、一例として、車体幅方向外側に膨出されている(図6参照)。
【0058】
このように、上下の内側補強ビード95,96を車体前後方向に向けて形成することで、図2に示す右フロントサイドフレーム11に発生する曲げモーメントM1を曲げ荷重支えフレーム部33で支えることができる。
図2に示す曲げモーメントM1は、右フロントサイドフレーム11に荷重F2が車体幅方向中心20に向けて作用した場合に発生するモーメントである。
これにより、曲げモーメントM1に対する曲げ荷重支えフレーム部33の剛性を上下の内側補強ビード95,96で確保することができる。
【0059】
さらに、曲げ荷重支えフレーム部33の剛性を上下の内側補強ビード95,96で確保することで、曲げ荷重支えフレーム部33を車体幅方向中心20側へ湾曲状に張り出させる張出量S(図2参照)を小さく抑えることが可能になる。
すなわち、図2に示す張出量Sを小さく抑えた状態で、右フロントサイドフレーム11に発生する曲げモーメントM1を曲げ荷重支えフレーム部33で支えることができる。
【0060】
このように、曲げ荷重支えフレーム部33の張出量Sを小さく抑えることで、エンジンルーム内の空間99(図2参照)を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部33の張出量Sを小さく抑えることで、右フロントサイドフレーム11の軽量化を図ることができる。
【0061】
図3に戻って、右フロアフレーム16は、右フロントサイドフレーム11の車体後方に設けられてフロア27(図2参照)の骨材となる部材である。
すなわち、右フロアフレーム16は、右フロントサイドフレーム11の後端部11bに右アダプタ14を介して前端部16aが連結されることで、右フロントサイドフレーム11(サイドフレーム部)の後端部11bから車体後方に向けて延出されている。
【0062】
この右フロアフレーム16は、前半部65が車体後方に向けて下り勾配に形成され、後半部66が車体後方に向けて略水平に形成されている。
前半部65から車幅方向外方に向けてアウトリガー67が張り出され、後半部66から車幅方向中心に向けてクロスメンバ取付部68aが設けられている。
クロスメンバ取付部68aは、クロスメンバ68(図2参照)が設けられる部位である。
【0063】
図11は図4の要部を拡大して示す分解斜視図である。
右フロアフレーム16は、内外の壁部71,72および底壁部73で上方に開口するように断面略コ字状に形成され、内壁部71(図3も参照)から車体幅方向中心20に向けて内フランジ(内張出片)74が形成され、外壁部72から車体幅方向外方に向けて外フランジ(外張出片)75が形成されている。
【0064】
外フランジ75は、前端部75aが右アダプタ14に溶接可能に折り曲げられている。
内外のフランジ74,75のうち、右フロアフレーム16の前半部65にダッシュボード81(図1参照)が載置されている。
また、内外のフランジ74,75のうち、右フロアフレーム16の後半部66にフロアパネル82(図1参照)が載置されている。
【0065】
右フロアフレーム16の前端部16aに、右アダプタ14を介して右フロントサイドフレーム11の後端部11b(図3参照)が結合(連結)されている。
右アダプタ14は、板状のプレートをプレス成形で折り曲げた連結用の部材である。
この右アダプタ14は、右フロントサイドフレーム11および右フロアフレーム16を仕切る仕切壁84と、仕切壁84に設けられて右フロントサイドフレーム11や右フロアフレーム16に結合された周壁85とを備えている。
【0066】
右アダプタ14の周壁85は、仕切壁84の上辺から車体後方に折り曲げられた上結合部86と、仕切壁84の下辺から車体後方に折り曲げられた下結合部87と、仕切壁84の内辺から車体後方に折り曲げられた内結合部88と、仕切壁84の外辺から車体後方に折り曲げられた外結合部89とを備えている。
【0067】
上結合部86に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた上壁部51の後端部51aが溶接(結合)されている。
下結合部87に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた下壁部52の後端部52aが溶接(結合)されるとともに、右フロアフレーム16に備えた底壁部73の前端部73aが溶接(結合)されている。
【0068】
内結合部88に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた側壁部53の後端部53aが溶接(結合)されるとともに、右フロアフレーム16に備えた内壁部71の前端部71aが溶接(結合)されている。
【0069】
外結合部89に、圧縮荷重支えフレーム部31に備えた側壁部37の後端部37aが溶接(結合)されるとともに、カバーフレーム部32の後端部32aが溶接(結合)されている。
さらに、外結合部89に、右フロアフレーム16に備えた外壁部72の前端部72aが溶接(結合)されている。
【0070】
つぎに、車体前部構造10に車体前方から後方に向けて荷重F3が作用する例を図12に基づいて説明する。
図12は本発明に係る車体前部構造に車体前方から荷重が作用した例を説明する図である。
車体前方から後方に向けてバンパビーム12(想像線で示す)に荷重F3が作用する。作用した荷重F3でバンパビーム12が実線で示す後方位置Pまで変形する。
よって、バンパビーム12を介して右フロントサイドフレーム11の前端部11aに圧縮荷重F4および曲げ荷重F5が作用する。
【0071】
圧縮荷重F4は、右フロントサイドフレーム11を圧縮しようとする荷重である。
曲げ荷重F5は、右フロントサイドフレーム11を車体幅方向中心20側に曲げようとする荷重である。右フロントサイドフレーム11に曲げ荷重F5が作用することで、右フロントサイドフレーム11に曲げモーメントM2が発生する。
【0072】
圧縮荷重F4は、圧縮荷重支えフレーム部31(主に、上稜線部42、下稜線部43)で支えられる。
上稜線部42および下稜線部43は、車体前後方向に延出されているので圧縮荷重F4を良好に支えることができる。
【0073】
ここで、図8に示すように、圧縮荷重支えフレーム部31に上下の後補強ビード48,49や上下の前補強ビード69,70が設けられている。
また、図9に示すように、カバーフレーム部32に上下の外側補強ビード76,77が設けられている。カバーフレーム部32で圧縮荷重支えフレーム部31が補強されている。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部31で圧縮荷重F4を一層良好に支えることができる。
【0074】
一方、曲げモーメントM2は曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上稜線部61、下稜線部62)で支えられる。
上稜線部61および下稜線部62は、圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cから車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上稜線部61、下稜線部62)で曲げモーメントM2を良好に支えることができる。
【0075】
ここで、図10に示すように、曲げ荷重支えフレーム部33に上下の内側補強ビード95,96が設けられている。よって、上下の内側補強ビード95,96で曲げ下向き湾曲部位58の剛性を確保することができる。
これにより、曲げ荷重支えフレーム部33で曲げモーメントM2を一層良好に支えることができる。
【0076】
なお、前記実施の形態では、圧縮荷重支えフレーム部31や曲げ荷重支えフレーム部33を車体幅方向外方に開口させた例について説明したが、これに限らないで、車体幅方向中心20に向けて開口させることも可能である。
【0077】
また、前記実施の形態では、上下の後補強ビード48,49および上下の外側補強ビード76,77を車体幅方向中心20に向けて膨出させ、上下の内側補強ビード95,96を車体幅方向外方に向けて膨出させた例について説明したが、各補強ビードの膨出方向は適宜選択することが可能である。
【0078】
さらに、前記実施の形態で示した左右のフロントサイドフレーム11、圧縮荷重支えフレーム部31、カバーフレーム部32、曲げ荷重支えフレーム部33、上壁部35,51、下壁部36,52、側壁部37,53、圧縮下向き湾曲部位41、上下の後補強ビード48,49、上下の外側補強ビード76,77、上下の内側補強ビード95,96などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームに車体前後方向の荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係るフロントサイドフレームおよびフロアフレームを示す斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図5のフロントサイドフレームを分解した状態を示す断面図である。
【図7】本発明に係るフロントサイドフレームを示す分解平面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】図7の9矢視図である。
【図10】図7の10矢視図である。
【図11】図4の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係る車体前部構造に車体前方から荷重が作用した例を説明する図である。
【符号の説明】
【0081】
10…車体前部構造、11…左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、31…圧縮荷重支えフレーム部、32…カバーフレーム部(蓋部材)、33…曲げ荷重支えフレーム部、35,51…上壁部、36,52…下壁部、37,53…側壁部、41…下向き湾曲部位(後部)、44…開口部、48,49…上下の後補強ビード(補強ビード)、76,77…上下の外側補強ビード(外側補強ビード)、95,96…上下の内側補強ビード(内側補強ビード)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームに車体前後方向の荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部を備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、車体前部の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出された軸荷重受け部材(以下、「圧縮荷重支えフレーム部」という)と、車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されたモーメント受け部材(以下、「曲げ荷重支えフレーム部」という)とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−290311号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、圧縮荷重支えフレーム部が車体前後方向に延出されることで、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を支えることが可能である。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部が圧縮荷重支えフレーム部の中央部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されることで車体幅方向中心に作用する荷重を支えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧縮荷重支えフレーム部は、後端部がフロアフレームの前端部に結合(連結)されている。
ここで、車体のなかには、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた状態(ずらされた状態)で設けられたものがある。
【0005】
この車両の場合、圧縮荷重支えフレーム部の後部を車体幅方向中心に向けて湾曲形成してフロアフレームの前端部に結合(連結)することが考えられる。
しかし、圧縮荷重支えフレーム部の後部を湾曲形成した場合、湾曲形成した後部の剛性を確保することが難しい。
このため、フロントサイドフレームに車体前方から荷重が作用した場合に、作用した荷重を圧縮荷重支えフレーム部で支えることが難しいとされている。
【0006】
本発明は、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた車両において、圧縮荷重支えフレーム部をフロアフレームに連結可能で、かつ、圧縮荷重支えフレーム部の剛性を確保できる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前部構造の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の曲げ荷重支えフレーム部とを備えた車体前部構造において、前記圧縮荷重支えフレーム部は、断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部を有するとともに、後部が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成され、前記後部のうち、前記側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記圧縮荷重支えフレーム部の開口部を塞ぐことで閉断面を形成する蓋部材を備え、前記蓋部材に、前記補強ビードに対峙する外側補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記曲げ荷重支えフレーム部は、断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部のうち、この側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の後部を車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成した。
よって、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた場合でも、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部をフロアフレームに連結することができる。
【0011】
さらに、圧縮荷重支えフレーム部の後部のうち、側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードを設けた。
よって、後部の剛性(すなわち、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を)を補強ビードで確保することができる。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部に対してフロアフレームが車体幅方向中心側にオフセットされた車両において、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部をフロアフレームに連結可能で、かつ、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を確保することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の開口部を蓋部材で塞いで閉断面を形成した。この蓋部材に外側補強ビードを設け、外側補強ビードを補強ビードに対峙させた。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部を蓋部材で補強することが可能になり、圧縮荷重支えフレーム部の湾曲状後部の剛性を一層良好に確保することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、曲げ荷重支えフレーム部の側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードを設けることで、曲げ荷重支えフレーム部の剛性を高めることができる。
よって、曲げ荷重支えフレーム部の車体幅方向中心側への湾曲状に張出量を小さく抑えた状態で、車体幅方向中心に作用する荷重を曲げ荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0014】
このように、曲げ荷重支えフレーム部の張出量を小さく抑えることで、エンジンルーム内の空間を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部の張出量を小さく抑えることで、フロントサイドフレームの軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0016】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す側面図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。なお、図2においては車体前部構造の構成の理解を容易にするためにサブフレームを除去した状態で示す。
車体前部構造10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム11と、左右のフロントサイドフレーム11の前端部11aに車体幅方向に架け渡されたバンパビーム12と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bにそれぞれ設けられた左右のアダプタ(アダプタ)14と、左右のアダプタ14を介して左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bにそれぞれ連結された左右のフロアフレーム(フロアフレーム)16と、左右のフロントサイドフレーム11をそれぞれ補強する左右のスチフナ(スチフナ)18と、左右のフロントサイドフレーム11の下方に設けられたサブフレーム21とを備えている。
【0017】
なお、左右のフロントサイドフレーム11、左右のアダプタ14、左右のフロアフレーム16および左右のスチフナ18はそれぞれ左右対称の部材であり、以下右側部材について説明して左側部材の説明を省略する。
【0018】
サブフレーム21は、左右のフロントサイドフレーム11および左右のフロアフレーム16に設けられたサブフレーム取付手段22を介して左右のフロントサイドフレーム11および左右のフロアフレーム16に設けられている。
【0019】
サブフレーム取付手段22は、左右のフロントサイドフレーム11の前端部11aから下方に張り出された左右の前サブフレーム取付部23と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11bに設けられた左右の中央サブフレーム取付部(サブフレーム取付部)24と、左右のフロアフレーム16の前端部16aに設けられた左右の後サブフレーム取付部25とを備えている。
【0020】
左右の前サブフレーム取付部23、左右の中央サブフレーム取付部24および左右の後サブフレーム取付部25はそれぞれ左右対称の部材であり、図1に右側取付部のみを図示する。
【0021】
左右の前サブフレーム取付部23、左右の中央サブフレーム取付部24および左右の後サブフレーム取付部25にサブフレーム21が取り付けられている。
これにより、サブフレーム取付手段22で左右のフロントサイドフレーム11の下方にサブフレーム21が支持されている。
【0022】
左右の中央サブフレーム取付部24は、左右のスチフナ18にそれぞれ備えられている。左右のスチフナ18は、左右のフロントサイドフレーム11をそれぞれ補強するための部材である。
【0023】
図3は本発明に係るフロントサイドフレームおよびフロアフレームを示す斜視図である。
右フロントサイドフレーム11は、車体前部構造10(図1参照)の骨格を構成する部材で、車体前後方向に延出された圧縮荷重支えフレーム部31と、圧縮荷重支えフレーム部31の車体幅方向外側に設けられたカバーフレーム部(蓋部材)32と、圧縮荷重支えフレーム部31の車体幅方向内側に設けられた曲げ荷重支えフレーム部(サイドフレーム部)33とを備えている。
【0024】
この右フロントサイドフレーム11は後部に下向き湾曲部位28(図1も参照)が形成されている。
下向き湾曲部位28は、右フロアフレーム16に右アダプタ14を介して後端部11bを連結させるために、右フロアフレーム16に向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0025】
図4は図3の分解斜視図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図5のフロントサイドフレームを分解した状態を示す断面図である。
圧縮荷重支えフレーム部31は、車体前後方向に延出された部材である。
この圧縮荷重支えフレーム部31は、上下の壁部35,36および側壁部37で車体幅方向外方に開口するように断面略コ字状に形成され、上壁部35から上方に向けて上フランジ(上張出片)38が形成され、下壁部36から下方に向けて下フランジ(下張出片)39が形成されている。
【0026】
圧縮荷重支えフレーム部31は、後部に圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)を有し、圧縮下向き湾曲部位41に上下の後補強ビード(補強ビード)48,49が形成されている。
圧縮下向き湾曲部位41は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
圧縮荷重支えフレーム部31に圧縮下向き湾曲部位41を設けることで、圧縮荷重支えフレーム部31の後端部31aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0027】
この圧縮荷重支えフレーム部31は、上壁部35および側壁部37が交差して形成された上稜線部42と、下壁部36および側壁部37が交差して形成された下稜線部43とを有している。
上稜線部42および下稜線部43は、図4に示すように、車体前後方向に延出されている。よって、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を圧縮荷重支えフレーム部31(主に、上下の稜線部42,43)で支えることができる。
すなわち、圧縮荷重支えフレーム部31は、車体前方から車体後方に向けて作用する荷重を支える軸荷重受け部材である。
【0028】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)に上下の後補強ビード48,49を形成した理由について説明する。
図7は本発明に係るフロントサイドフレームを示す分解平面図である。
図2に示すように、右フロントサイドフレーム11の圧縮荷重支えフレーム部31に対して右フロアフレーム16が車体幅方向中心20側に距離Dだけオフセットされて設けられている。
【0029】
そこで、図7に示すように、圧縮荷重支えフレーム部31の下向き湾曲部位(後部)41を車体幅方向中心20側に湾曲形成することで、右フロアフレーム16に連結可能とした。
具体的には、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心20(図2参照)に向けて半径Rで僅かに湾曲形成されている。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部31の後端部31aが、図4に示す右フロアフレーム16の前端部16aに右アダプタ14を介して連結される。
【0030】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41が車体幅方向中心20に向けて湾曲形成されることで、車体前方から作用する荷重に対する圧縮下向き湾曲部位41の剛性を確保することが難しい。
そこで、圧縮下向き湾曲部位41(図4参照)に上下の後補強ビード48,49を形成した。
【0031】
図8は図7の8矢視図である。
上後補強ビード48は、圧縮下向き湾曲部位41(側壁部37)の上壁部35寄りに設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された上傾斜線63に沿って形成されている。
上傾斜線63は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように設定されている。
【0032】
よって、上後補強ビード48は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この上後補強ビード48は、一例として、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0033】
下後補強ビード49は、圧縮下向き湾曲部位41(側壁部37)の下壁部36寄りで、かつ、上後補強ビード48の下方に設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された下傾斜線64に沿って形成されている。
下傾斜線64は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、下端16cを通過するように、上傾斜線63に対して傾斜角が大きく設定されている。
【0034】
よって、下後補強ビード49は、前端部16aの下端16cに向けて下り勾配に形成されている。
この下後補強ビード49は、一例として、上後補強ビード48と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0035】
ここで、圧縮下向き湾曲部位41に車体前方から荷重F1が作用した場合、作用した荷重F1は矢印の如く右フロアフレーム16に伝えられる。
よって、上後補強ビード48を上端16bに向けるとともに下後補強ビード49を下端16cに向けることで(すなわち、上下の後補強ビード48,49を右フロアフレーム16に向けることで)、上下の後補強ビード48,49は荷重F1の伝達方向に沿って設けられている。
これにより、上下の後補強ビード48,49で荷重F1を支えることが可能になり、圧縮下向き湾曲部位41の剛性を確保することができる。
【0036】
また、圧縮荷重支えフレーム部31は、側壁部37のうち、圧縮下向き湾曲部位41の車体前方に上下の前補強ビード69,70が設けられている。
上前補強ビード69は、圧縮荷重支えフレーム部31の長手方向に沿って略水平に設けられ、上後補強ビード48と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている。
【0037】
下前補強ビード70は、上前補強ビード69の下方に、圧縮荷重支えフレーム部31の長手方向に沿って略水平に設けられ、下後補強ビード49と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている。
【0038】
このように、上下の前補強ビード69,70を設けることで、車体前方から作用した荷重F1を上下の前補強ビード69,70で支えることができ、圧縮荷重支えフレーム部31の剛性を一層高めることができる。
【0039】
図4〜図6に戻って、カバーフレーム部32は、車体前後方向に延出された帯状の板材である。
このカバーフレーム部32は、圧縮荷重支えフレーム部31の上フランジ38に上辺45が溶接され、圧縮荷重支えフレーム部31の下フランジ39に下辺46が溶接されている。
カバーフレーム部32が圧縮荷重支えフレーム部31に溶接されることで、圧縮荷重支えフレーム部31の開口部44がカバーフレーム部32で塞がれ、カバーフレーム部32および圧縮荷重支えフレーム部31で閉断面が形成されている。
【0040】
カバーフレーム部32はカバー下向き湾曲部位47(図4参照)を有し、カバー下向き湾曲部位47に上下の外側補強ビード(外側補強ビード)76,77が形成されている。
カバー下向き湾曲部位47は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0041】
カバーフレーム部32にカバー下向き湾曲部位47を設けることで、カバーフレーム部32の後端部32aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0042】
図9は図7の9矢視図である。
上外側補強ビード76は、カバー下向き湾曲部位47のうち略中央の上辺45寄りに設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された上傾斜線78に沿って形成されることで、上後補強ビード48(図8参照)に対峙されている。
【0043】
上傾斜線78は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように設定されている。
よって、上外側補強ビード76は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この上外側補強ビード76は、一例として、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0044】
下外側補強ビード77は、カバー下向き湾曲部位47のうち略中央の下辺46寄りで、かつ、上外側補強ビード76の下方に設けられ、車体後方に向けて下り勾配に配置された下傾斜線79に沿って形成されることで、下後補強ビード49(図8参照)に対峙されている。
【0045】
上傾斜線78は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、上端16bを通過するように、
下傾斜線79は、右フロアフレーム16の前端部16aのうち、下端16cを通過するように、上傾斜線78に対して傾斜角が大きく設定されている。
【0046】
よって、下外側補強ビード77は、前端部16aの上端16bに向けて下り勾配に形成されている。
この下外側補強ビード77は、一例として、上外側補強ビード76と同様に、図2に示す車体幅方向中心20側に膨出されている(図6参照)。
【0047】
ここで、カバーフレーム部32に車体前方から荷重F1が作用した場合、作用した荷重F1は矢印の如く右フロアフレーム16に伝えられる。
よって、上外側補強ビード76を上端16bに向けるとともに下外側補強ビード77を下端16cに向けることで(すなわち、上下の外側補強ビード76,77を右フロアフレーム16に向けることで)、上下の外側補強ビード76,77は荷重F1の伝達方向に沿って設けられている。
これにより、上下の外側補強ビード76,77でカバー下向き湾曲部位47(カバーフレーム部32)の剛性を確保することができる。
【0048】
剛性を確保したカバーフレーム部32が圧縮荷重支えフレーム部31(図8参照)に溶接され、カバーフレーム部32および圧縮荷重支えフレーム部31で閉断面が形成されている(図5参照)。
これにより、カバーフレーム部32のカバー下向き湾曲部位47で圧縮荷重支えフレーム部31の圧縮下向き湾曲部位41の剛性が一層良好に確保できる。
【0049】
図4〜図6に戻って、曲げ荷重支えフレーム部33は、上下の壁部51,52および側壁部53で車体幅方向外方に開口するように断面略コ字状に形成され、上壁部51から上方に向けて上フランジ(上張出片)54が形成され、下壁部52から下方に向けて下フランジ(下張出片)55が形成されている。
【0050】
曲げ荷重支えフレーム部33は後部に曲げ下向き湾曲部位58(図4参照)を有し、曲げ下向き湾曲部位58に上下の内側補強ビード(内側補強ビード)95,96が形成されている。
曲げ下向き湾曲部位58は、右フロアフレーム16の前端部16aに向けて下向きに湾曲形成された部位である。
【0051】
曲げ荷重支えフレーム部33に曲げ下向き湾曲部位58を設けることで、曲げ荷重支えフレーム部33の後端部33aを右アダプタ14を介して右フロアフレーム16の前端部16aに連結させることが可能になる。
【0052】
曲げ荷重支えフレーム部33は、圧縮荷重支えフレーム部31の略後半部31bに被せた状態で圧縮荷重支えフレーム部31に溶接されている。
この状態で、曲げ荷重支えフレーム部33の開口部59が圧縮荷重支えフレーム部31で塞がれ、圧縮荷重支えフレーム部31および曲げ荷重支えフレーム部33で閉断面が形成されている。
【0053】
この曲げ荷重支えフレーム部33は、上壁部51および側壁部53が交差して形成された上稜線部61と、下壁部52および側壁部53が交差して形成された下稜線部62とを有している。
【0054】
曲げ荷重支えフレーム部33は、図4に示す曲げ荷重支えフレーム部33の前端部33bが圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cに設けられ、前端部33bから後端部33aに向かうにしたがって(すなわち、車体後方に向かうにしたがって)車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
【0055】
よって、上稜線部61および下稜線部62は、圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cから車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
これにより、車体前方において車体幅方向中心20(図2参照)に向けて荷重が発生した際に、荷重により生じる曲げモーメントを曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上下の稜線部61,62)で支えることができる。
すなわち、曲げ荷重支えフレーム部33は、曲げモーメントを支えるモーメント受け部材である。
【0056】
図10は図7の10矢視図である。
上内側補強ビード95は、曲げ下向き湾曲部位58(側壁部53)の上壁部51寄りに設けられ、車体後方に向けて僅かに下り勾配に配置された上傾斜線97に沿って形成されている。
ここで、上傾斜線97は、僅かに下り勾配に配置されることで略水平に配置されている。よって、上内側補強ビード95は車体前後方向を向いて成形されている。
この上内側補強ビード95は、一例として、車体幅方向外側に膨出されている(図6参照)。
【0057】
下内側補強ビード96は、曲げ下向き湾曲部位58(側壁部53)の下壁部52寄りで、かつ、上内側補強ビード95の下方に設けられ、車体後方に向けて僅かに下り勾配に配置された下傾斜線98に沿って形成されている。
ここで、下傾斜線98は、僅かに下り勾配に配置されることで略水平に配置されている。よって、下内側補強ビード96は車体前後方向を向いて成形されている。
この下内側補強ビード96は、一例として、車体幅方向外側に膨出されている(図6参照)。
【0058】
このように、上下の内側補強ビード95,96を車体前後方向に向けて形成することで、図2に示す右フロントサイドフレーム11に発生する曲げモーメントM1を曲げ荷重支えフレーム部33で支えることができる。
図2に示す曲げモーメントM1は、右フロントサイドフレーム11に荷重F2が車体幅方向中心20に向けて作用した場合に発生するモーメントである。
これにより、曲げモーメントM1に対する曲げ荷重支えフレーム部33の剛性を上下の内側補強ビード95,96で確保することができる。
【0059】
さらに、曲げ荷重支えフレーム部33の剛性を上下の内側補強ビード95,96で確保することで、曲げ荷重支えフレーム部33を車体幅方向中心20側へ湾曲状に張り出させる張出量S(図2参照)を小さく抑えることが可能になる。
すなわち、図2に示す張出量Sを小さく抑えた状態で、右フロントサイドフレーム11に発生する曲げモーメントM1を曲げ荷重支えフレーム部33で支えることができる。
【0060】
このように、曲げ荷重支えフレーム部33の張出量Sを小さく抑えることで、エンジンルーム内の空間99(図2参照)を大きく確保することができ、設計の自由度を高めることができる。
さらに、曲げ荷重支えフレーム部33の張出量Sを小さく抑えることで、右フロントサイドフレーム11の軽量化を図ることができる。
【0061】
図3に戻って、右フロアフレーム16は、右フロントサイドフレーム11の車体後方に設けられてフロア27(図2参照)の骨材となる部材である。
すなわち、右フロアフレーム16は、右フロントサイドフレーム11の後端部11bに右アダプタ14を介して前端部16aが連結されることで、右フロントサイドフレーム11(サイドフレーム部)の後端部11bから車体後方に向けて延出されている。
【0062】
この右フロアフレーム16は、前半部65が車体後方に向けて下り勾配に形成され、後半部66が車体後方に向けて略水平に形成されている。
前半部65から車幅方向外方に向けてアウトリガー67が張り出され、後半部66から車幅方向中心に向けてクロスメンバ取付部68aが設けられている。
クロスメンバ取付部68aは、クロスメンバ68(図2参照)が設けられる部位である。
【0063】
図11は図4の要部を拡大して示す分解斜視図である。
右フロアフレーム16は、内外の壁部71,72および底壁部73で上方に開口するように断面略コ字状に形成され、内壁部71(図3も参照)から車体幅方向中心20に向けて内フランジ(内張出片)74が形成され、外壁部72から車体幅方向外方に向けて外フランジ(外張出片)75が形成されている。
【0064】
外フランジ75は、前端部75aが右アダプタ14に溶接可能に折り曲げられている。
内外のフランジ74,75のうち、右フロアフレーム16の前半部65にダッシュボード81(図1参照)が載置されている。
また、内外のフランジ74,75のうち、右フロアフレーム16の後半部66にフロアパネル82(図1参照)が載置されている。
【0065】
右フロアフレーム16の前端部16aに、右アダプタ14を介して右フロントサイドフレーム11の後端部11b(図3参照)が結合(連結)されている。
右アダプタ14は、板状のプレートをプレス成形で折り曲げた連結用の部材である。
この右アダプタ14は、右フロントサイドフレーム11および右フロアフレーム16を仕切る仕切壁84と、仕切壁84に設けられて右フロントサイドフレーム11や右フロアフレーム16に結合された周壁85とを備えている。
【0066】
右アダプタ14の周壁85は、仕切壁84の上辺から車体後方に折り曲げられた上結合部86と、仕切壁84の下辺から車体後方に折り曲げられた下結合部87と、仕切壁84の内辺から車体後方に折り曲げられた内結合部88と、仕切壁84の外辺から車体後方に折り曲げられた外結合部89とを備えている。
【0067】
上結合部86に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた上壁部51の後端部51aが溶接(結合)されている。
下結合部87に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた下壁部52の後端部52aが溶接(結合)されるとともに、右フロアフレーム16に備えた底壁部73の前端部73aが溶接(結合)されている。
【0068】
内結合部88に、曲げ荷重支えフレーム部33に備えた側壁部53の後端部53aが溶接(結合)されるとともに、右フロアフレーム16に備えた内壁部71の前端部71aが溶接(結合)されている。
【0069】
外結合部89に、圧縮荷重支えフレーム部31に備えた側壁部37の後端部37aが溶接(結合)されるとともに、カバーフレーム部32の後端部32aが溶接(結合)されている。
さらに、外結合部89に、右フロアフレーム16に備えた外壁部72の前端部72aが溶接(結合)されている。
【0070】
つぎに、車体前部構造10に車体前方から後方に向けて荷重F3が作用する例を図12に基づいて説明する。
図12は本発明に係る車体前部構造に車体前方から荷重が作用した例を説明する図である。
車体前方から後方に向けてバンパビーム12(想像線で示す)に荷重F3が作用する。作用した荷重F3でバンパビーム12が実線で示す後方位置Pまで変形する。
よって、バンパビーム12を介して右フロントサイドフレーム11の前端部11aに圧縮荷重F4および曲げ荷重F5が作用する。
【0071】
圧縮荷重F4は、右フロントサイドフレーム11を圧縮しようとする荷重である。
曲げ荷重F5は、右フロントサイドフレーム11を車体幅方向中心20側に曲げようとする荷重である。右フロントサイドフレーム11に曲げ荷重F5が作用することで、右フロントサイドフレーム11に曲げモーメントM2が発生する。
【0072】
圧縮荷重F4は、圧縮荷重支えフレーム部31(主に、上稜線部42、下稜線部43)で支えられる。
上稜線部42および下稜線部43は、車体前後方向に延出されているので圧縮荷重F4を良好に支えることができる。
【0073】
ここで、図8に示すように、圧縮荷重支えフレーム部31に上下の後補強ビード48,49や上下の前補強ビード69,70が設けられている。
また、図9に示すように、カバーフレーム部32に上下の外側補強ビード76,77が設けられている。カバーフレーム部32で圧縮荷重支えフレーム部31が補強されている。
これにより、圧縮荷重支えフレーム部31で圧縮荷重F4を一層良好に支えることができる。
【0074】
一方、曲げモーメントM2は曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上稜線部61、下稜線部62)で支えられる。
上稜線部61および下稜線部62は、圧縮荷重支えフレーム部31の中央部31cから車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心20側に湾曲状に張り出されている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部33(主に、上稜線部61、下稜線部62)で曲げモーメントM2を良好に支えることができる。
【0075】
ここで、図10に示すように、曲げ荷重支えフレーム部33に上下の内側補強ビード95,96が設けられている。よって、上下の内側補強ビード95,96で曲げ下向き湾曲部位58の剛性を確保することができる。
これにより、曲げ荷重支えフレーム部33で曲げモーメントM2を一層良好に支えることができる。
【0076】
なお、前記実施の形態では、圧縮荷重支えフレーム部31や曲げ荷重支えフレーム部33を車体幅方向外方に開口させた例について説明したが、これに限らないで、車体幅方向中心20に向けて開口させることも可能である。
【0077】
また、前記実施の形態では、上下の後補強ビード48,49および上下の外側補強ビード76,77を車体幅方向中心20に向けて膨出させ、上下の内側補強ビード95,96を車体幅方向外方に向けて膨出させた例について説明したが、各補強ビードの膨出方向は適宜選択することが可能である。
【0078】
さらに、前記実施の形態で示した左右のフロントサイドフレーム11、圧縮荷重支えフレーム部31、カバーフレーム部32、曲げ荷重支えフレーム部33、上壁部35,51、下壁部36,52、側壁部37,53、圧縮下向き湾曲部位41、上下の後補強ビード48,49、上下の外側補強ビード76,77、上下の内側補強ビード95,96などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームに車体前後方向の荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係るフロントサイドフレームおよびフロアフレームを示す斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図5のフロントサイドフレームを分解した状態を示す断面図である。
【図7】本発明に係るフロントサイドフレームを示す分解平面図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】図7の9矢視図である。
【図10】図7の10矢視図である。
【図11】図4の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係る車体前部構造に車体前方から荷重が作用した例を説明する図である。
【符号の説明】
【0081】
10…車体前部構造、11…左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、31…圧縮荷重支えフレーム部、32…カバーフレーム部(蓋部材)、33…曲げ荷重支えフレーム部、35,51…上壁部、36,52…下壁部、37,53…側壁部、41…下向き湾曲部位(後部)、44…開口部、48,49…上下の後補強ビード(補強ビード)、76,77…上下の外側補強ビード(外側補強ビード)、95,96…上下の内側補強ビード(内側補強ビード)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部構造の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の曲げ荷重支えフレーム部とを備えた車体前部構造において、
前記圧縮荷重支えフレーム部は、
断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部を有するとともに、後部が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成され、
前記後部のうち、前記側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードが設けられたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記圧縮荷重支えフレーム部の開口部を塞ぐことで閉断面を形成する蓋部材を備え、
前記蓋部材に、前記補強ビードに対峙する外側補強ビードが設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記曲げ荷重支えフレーム部は、
断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部のうち、この側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードが設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前部構造の骨格を構成するフロントサイドフレームに、車体前後方向に延出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部から車体後方に向かうにしたがって車体幅方向中心側に湾曲状に張り出されて車体幅方向のいずれか一方に開口する断面略コ字状の曲げ荷重支えフレーム部とを備えた車体前部構造において、
前記圧縮荷重支えフレーム部は、
断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部を有するとともに、後部が車体幅方向中心に向けて湾曲状に形成され、
前記後部のうち、前記側壁部に荷重の伝達方向に沿って延びる補強ビードが設けられたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記圧縮荷重支えフレーム部の開口部を塞ぐことで閉断面を形成する蓋部材を備え、
前記蓋部材に、前記補強ビードに対峙する外側補強ビードが設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記曲げ荷重支えフレーム部は、
断面略コ字状を形成する上下の壁部および側壁部のうち、この側壁部に車体前後方向に延びる内側補強ビードが設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−116000(P2010−116000A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289733(P2008−289733)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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