説明

車体前部構造

【課題】フード部材の前部下方で車幅方向に沿って配置された骨格部材の剛性を確保しつつ、車両前方からの衝突に対する衝撃吸収ストロークを確保することができる車体前部構造を得る。
【解決手段】車体前部構造10を構成するラジエータサポートアッパ26は、エンジンフードの前部の下方に配置されており、それぞれ車幅方向に長手の右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとを車両上下方が軸線とされたピン36周りに相対角変位可能に連結して構成されている。右アッパメンバ26Rの被嵌合部40には左アッパメンバ26Lの嵌合部42が圧入嵌合されることで、ラジエータサポートアッパ26の形状が一直線状に維持されている。ラジエータサポートアッパ26の車幅方向中央部に規定荷重を超える荷重が入力されると、圧入による被嵌合部40と嵌合部42との嵌合が解消され、衝撃吸収ストロークが創出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フード部材の前部下方に骨格部材が配置された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内の前方位置に配置されたラジエータを支持する支持機構が、車両前方からの衝突荷重の入力を受けて、ラジエータを下降させる構造とされたラジエータの支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−035385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両前方からの衝突に対する衝撃吸収ストロークを確保する課題に対しては、未だ改善が要求されている。
【0005】
本発明は、フード部材の前部下方で車幅方向に沿って配置された骨格部材の剛性を確保しつつ、車両前方からの衝突に対する衝撃吸収ストロークを確保することができる車体前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車体前部構造は、車両の前部を上側から覆うフード部材と、前記フード部材の車幅方向一端側に対する車両下方に設けられた第1側部骨格部材と、前記フード部材の車幅方向他端側に対する車両下方に設けられた第2側部骨格部材と、前記フード部材の前部における車両下方で車幅方向に延在され、車幅方向外端が前記第1側部骨格部材に結合された第1横骨格部材と、前記フード部材の前部における車両下方で車幅方向に延在され、車幅方向外端が前記第2側部骨格部材に結合された第2横骨格部材と、前記第1横骨格部材及び第2横骨格部材に対する車両前後方向の前側で、該第1横骨格部材の車幅方向内端側と前記第2横骨格部材の車幅方向内端側とを、車両上下方向に沿った軸線周りに相対角変位可能に連結する軸部材と、前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位が規制されるように、該第1横骨格部材の車幅方向内端側と第2横骨格部材の車幅方向内端側とを接続し、所定の荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に、前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位の規制状態が解除される接続構造と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車体前部構造では、フード部材の前部下方で、軸部材を介して互いの車幅方向内端で連結された第1、第2横骨格部材が車幅方向に沿って配置されている。通常は、第1、第2横骨格部材は、接続構造により軸部材周りの相対角変位が規制されることで、所要の形状(姿勢)、剛性に保たれている。そして、第1、第2の横骨格部材の接続構造による接続部位に対し所定荷重を超える荷重が車両後向きに作用した場合、接続構造による上記の規制状態が解除される。すると、第1、第2横骨格部材は、上記の荷重により、それぞれの第1、第2側部骨格部材との結合部位の近傍を支点にしつつ、軸部材の軸心周りでかつ該軸部材が車両後方に移動する方向に変位(回転)される。これにより、第1、第2横骨格部材の車幅方向内端側が車両後方に移動することとなり、衝撃吸収ストロークが創出される。
【0008】
このように、請求項1記載の車体前部構造では、フード部材の前部下方で車幅方向に沿って配置された骨格部材の剛性を確保しつつ、車両前方からの衝突に対する衝撃吸収ストロークを確保することができる。また、本車体前部構造では、第1、第2横骨格部材がその車両前側で軸部材により連結されているので、上記荷重を受けた場合に第1、第2横骨格部材が軸部材に案内されて適正に変位されやすい。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の車体前部構造において、前記第1横骨格部材は、車両上方を向く上壁において前記第1側部骨格部材に対し上側締結具にて締結されると共に、前記上側締結具による締結部位よりも車両前側で車両前方を向く前壁において前記第1側部骨格部材に対し前側締結具にて締結されており、前記第2横骨格部材は、車両上方を向く上壁において前記第2側部骨格部材に対し上側締結具にて締結されると共に、前記上側締結具による締結部位よりも車両前側で車両前方を向く前壁において前記第2側部骨格部材に対し前側締結具にて締結されており、前記第1横骨格部材及び第2横骨格部材の各前壁に形成されると共に前記前側締結具が挿通された締結孔は、それぞれ前記前側締結具の挿通部位に対し車幅方向外側に位置する締結具逃がし部を有する。
【0010】
請求項2記載の車体前部構造では、第1、第2横骨格部材は、上記所定荷重を超える荷重によって第1、第2側部骨格部材に対し変位される際には、それぞれ上側締結具を支点にしつつ変位することとなる。この変位の際、前側締結具は前壁の締結具孔における締結具逃がし部に移動するので、第1、第2横骨格部材の対応する上側締結具周りの回転変位が阻害されにくい。すなわち、第1、第2横骨格部材は、接続構造により剛性が確保されながら、該接続構造による規制解除後は、低荷重で車両後方に変位され、衝撃吸収ストロークの創出に寄与する。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の車体前部構造において、前記接続構造は、前記第1横骨格部材における少なくとも車幅方向内端部に車両後向きに開口するように形成された被嵌合部に、前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に設けられた嵌合部が圧入により嵌合されることで、前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位が規制されるように該第1横骨格部材の車幅方向内端側と第2横骨格部材の車幅方向内端側とを接続している。
【0012】
請求項3記載の車体前部構造では、第1横骨格部材の被嵌合部に第2横骨格部材の嵌合部が圧入により嵌合することで、所定荷重以下の荷重に対して第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が維持される。すなわち、第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が摩擦により維持され、これらの静摩擦力として規制解除のための所定荷重を設定することができる。また、嵌合構造とすることで、嵌合部位において断面2次モーメントが大きくなるので、第1、第2横骨格部材の接続部分の(第1、第2側部骨格部材間である車幅方向中央部)における剛性が確保されやすい。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車体前部構造は、請求項3記載の車体前部構造において、前記接続構造は、前記被嵌合部及び嵌合部の少なくとも一方から他方側に突出したリブにおいて該他方側に接触する構造とされている。
【0014】
請求項4記載の車体前部構造では、リブによる嵌合で、規制解除のための所定荷重となる静摩擦力が付与される。したがって本車体前部構造では、規制解除のための所定荷重をリブの寸法形状、数、配置等によって設定、調整することができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の車体前部構造において、前記接続構造は、前記第1横骨格部材における車幅方向内端部に形成された第1フランジと、前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に形成され前記第1フランジに突き合わされた第2フランジと、所定荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に破断されるように前記第1フランジ及び第2フランジの少なくとも一方に設けられると共に、他方のフランジに係合された係合部と、を含んで構成されている。
【0016】
請求項5記載の車体前部構造では、第1横骨格部材の第1フランジに第2横骨格部材の第2フランジが突き合わされると共に、一方のフランジに設けられた係合部が他方のフランジに係合することで、所定値以下の荷重に対し第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が維持される。すなわち、第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が係合部とフランジとの干渉構造により維持され、係合部又はフランジの破断荷重として規制解除のための荷重の所定値を設定することができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の車体前部構造において、前記接続構造は、前記第1横骨格部材における車幅方向内端部に形成された第1フランジと、前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に形成され前記第1フランジに突き合わされた第2フランジと、所定荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に剥離されるように前記第1フランジと第2フランジとを溶着により接合した溶着部と、を含んで構成されている。
【0018】
請求項6記載の車体前部構造では、第1横骨格部材の第1フランジに第2横骨格部材の第2フランジが突き合わされると共に、これらのフランジが溶着部において溶着されることで、所定値以下の荷重に対し第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が維持される。すなわち、第1、第2横骨格部材の形状(姿勢)が係合部とフランジとの溶着構造により維持され、溶着剥離荷重として規制解除のための荷重の所定値を設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る車体前部構造は、フード部材の前部下方で車幅方向に沿って配置された骨格部材の剛性を確保しつつ、車両前方からの衝突に対する衝撃吸収ストロークを確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車体前部構造を構成するラジエータサポートを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を構成する嵌合構造を拡大して示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車体前部構造を構成する嵌合構造を示す図であって、(A)は平面図、(B)は図3(A)の3B−3B線に沿った断面図、(C)は図3(A)の3C−3C線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車体前部構造を構成するラジエータサポートアッパの変形状態を拡大して示す平面断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車体前部構造を構成するラジエータサポートアッパとラジエータサポートサイドとの結合状態を拡大して示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る車体前部構造が適用された自動車の前部を示す側断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造を構成する嵌合構造を拡大して示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車体前部構造を構成するラジエータサポートを示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る車体前部構造を構成する係合構造を示す図であって、(A)は正面図、(B)は図9(A)の9B−9B線に沿った断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る車体前部構造を構成するラジエータサポートアッパの変形状態を拡大して示す平面断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る車体前部構造を構成する係合構造を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は図11(A)の11B−11B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造10について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印RHは車幅方向の一方側である右方向を、矢印LHは車幅方向の他方側である左方向をそれぞれ示す。
【0022】
図6には、車体前部構造10が適用された自動車11の前部が模式的な側断面図にて示されている。この図に示される如く、自動車11は、車両上向きに開口する空間であるエンジンルーム12を有する。エンジンルーム12は、図示しないエンジン等のパワーユニットが配置される空間とされている。エンジンルーム12に配置されるエンジンとしては、内燃機関に限られず、例えば電気モータであっても良く、また例えば内燃機関と電気モータとのハイブリッドであっても良い。
【0023】
このエンジンルーム12の前端は、フロントグリル14、フロントバンパ16にて規定されている。また、エンジンルーム12は、その上側の開口端が、フード部材としてのエンジンフード18にて開放可能に閉止されている。エンジンフード18は、図示しない後端部においてフードヒンジを介して、車体に対し車幅方向に沿った軸周りに回転可能に支持されており、該軸周りに回動することで、エンジンルーム12を上方から開閉するようになっている。
【0024】
エンジンフード18の前端近傍には、ストライカ20が設けられている。ストライカ20は、車体側のフードロック機構を構成するラッチ22に係合されることで、エンジンルーム12を閉止した状態に保持されるようになっている。なお、エンジンルーム12を開放する際には、図示しないリリース機構によりラッチ22のストライカ20への係合を解除するようになっている。
【0025】
そして、車体前部構造10では、エンジンフード18の下方すなわちエンジンルーム12内の前部に骨格部材であるラジエータサポート24が配置されている。この実施形態では、ラジエータサポート24は、エンジンルーム12を閉止する状態のストライカ20及びラッチ22に対する車両前側に配置されている。ラジエータサポート24は、図示しないエンジン冷却用のラジエータ、空調装置のコンデンサ等の空冷式熱交換器を車体に対し支持する構成とされている。また、図示は省略するが、ラジエータサポート24は、ラッチ22を含むフードロック機構、フードクッションゴム、ホーン(警笛)等の部品が取り付けられている。以下、ラジエータサポート24の構造を具体的に説明する。
【0026】
図1に示される如く、ラジエータサポート24は、車幅方向に延在するラジエータサポートアッパ26と、車幅方向に延在するラジエータサポートロア28と、ラジエータサポートアッパ26及びラジエータサポートロア28の車幅方向外端を連結する左右一対のラジエータサポートサイド30とで、正面視で略矩形枠上を成す部分を含んで構成されている。また、この実施形態におけるラジエータサポート24は、ラジエータサポートアッパ26の車幅方向の各端部から車幅方向外側でかつ車両後方に向けて延在された左右一対のラジエータサポートアッパサイド32を含んでいる。ラジエータサポートアッパサイド32における図示しない車幅方向端部は、エプロンアッパメンバ等の車体骨格部に結合されている。
【0027】
図6に示される如く、ラジエータサポート24を構成するラジエータサポートアッパ26は、エンジンフード18の直下方でかつストライカ20の直前方に配置されている。なお、フロントグリル14の背面からラジエータサポートアッパ26の上面にかけて樹脂製のカバー部材34にて覆われている。
【0028】
車体前部構造10では、図1に示される如く、ラジエータサポート24のラジエータサポートアッパ26が左右に分割された構造とされている。すなわち、ラジエータサポートアッパ26は、第1横骨格部材及び第2横骨格部材の何れか一方としての右アッパメンバ26Rと、第1横骨格部材及び第2横骨格部材の他方としての左アッパメンバ26Lとを主要部として構成されている。右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとは、それぞれの車幅方向内端側において、車両上下方向が軸線方向とされた軸部材としてのピン36によって相対角変位可能に連結されている。
【0029】
より具体的には、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとは、それぞれ車両後向きに開口する略「コ」字状の断面形状を有する。したがって、右アッパメンバ26Rは、前壁26RFの上下端から上壁26RU、下壁26RLが車両後向きに張り出されて構成されている。同様に、左アッパメンバ26Lは、前壁26LFの上下端から上壁26LU、下壁26LLが車両後向きに張り出されて構成されている。
【0030】
そして、図2に分解斜視図にて示される如く、右アッパメンバ26Rの車幅方向内端側における前壁26RFには、車両上下方向の中央部から車両前方に突出して軸受部26RSが形成されている。一方、左アッパメンバ26Lの車幅方向内端側における前壁26LFには、軸受部26RSを上下から挟むように車両前方に突出して上下一対の軸受部26LSが形成されている。右アッパメンバ26Rの軸受部26RSと左アッパメンバ26Lの軸受部26LSとをセンタリングし、ピン36を挿入することで、上記した通り右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとが車両上下方向に沿う軸線(ピン36)周りに相対角変位可能とされている。
【0031】
なお、ピン36は、頭部36Aを有する頭付きピンとされており、軸受部26LS、26RSへの挿通後に先端をかしめることで右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lに対し抜け止めされている。
【0032】
また、ラジエータサポートアッパ26は、接続構造としての嵌合構造38によって、その形状(右アッパメンバ26R及び左アッパメンバ26Lの姿勢)が維持されるようになっている。具体的には、嵌合構造38は、右アッパメンバ26Rの車幅方向内端側の部分である被嵌合部40と、左アッパメンバ26Lの車幅方向内端から右アッパメンバ26R側に突出されると共に被嵌合部40に嵌合される嵌合部42とを含んで構成されている。
【0033】
被嵌合部40は、前壁26RFと上壁26RUと下壁26RLとで車両後向きに開口する略「コ」字状の断面形状を成している。また、被嵌合部40は、車幅方向における内向き(左アッパメンバ26L側)にも開口している。さらに、この実施形態では、図3(A)及び図3(B)に示される如く、被嵌合部40における嵌合部42の嵌合範囲を外れた部分でかつ嵌合部42の先端近傍には、前壁26RFと上壁26RUと下壁26RLとを繋ぐ隔壁26RDが形成されている。
【0034】
一方、嵌合部42は、図2及び図3(B)に示される如く、左アッパメンバ26Lの車幅方向内端を塞ぐ端壁26LEから右アッパメンバ26R側に突出されている。この嵌合部42は、前壁42Fと、上壁42Uと、下壁42Lとを有し、車両後方に開口する略「コ」字状の断面形状を成している。また、この実施形態では、嵌合部42における基端(端壁26LE)側と反対側の端部には、前壁42Fと上壁42Uと下壁42Lとを繋ぐ端壁42Eが形成されており、側面視で嵌合部42は端壁42Eによって閉止されている。
【0035】
嵌合部42における上壁42Uと下壁42Lとの外面間距離は、上壁26RUと下壁26RLとの内面間距離よりも若干小さく設定されている。また、前壁42Fの前面から上壁42U、42Lの車両後端までの距離は、前壁26RFの背面から上壁26RU、26RLの車両後端までの距離と同等に設定されている。
【0036】
そして、嵌合構造38では、嵌合部42の上壁42U、下壁42Lのそれぞれからリブ44が車両上下方向に突出されている。この実施形態における上下のリブ44は、車両前後方向に長手とされると共に車幅方向に並列して複数形成されている。上下のリブ44の車両上下方向に沿った先端間距離は、非嵌合状態における上壁26RUと下壁26RLとの内面間距離よりも若干大きく設定されている。このため、嵌合構造38では、被嵌合部40に対し嵌合部42が圧入により嵌合される構成とされている。これにより、嵌合構造38では、各リブ44が上壁26RU、下壁26RLの内面に接触することで、被嵌合部40と嵌合部42との間に静摩擦に基づく嵌合力が得られる構成とされている。
【0037】
以上により、ラジエータサポートアッパ26は、嵌合構造38への車両後向きで上記嵌合力以下の入力荷重に対しては、その形状が維持されるようになっている。すなわち、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lと正面視及び平面視で略一直線を成す形状(姿勢)が維持される構成である。
【0038】
一方、嵌合構造38では、上記嵌合力を超える荷重が車両後向きに作用した場合、嵌合構造38による右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの拘束状態が解消されるようになっている。以下、この荷重を規定荷重(所定荷重)ということとする。このため、図4に示される如く、規定荷重を超える荷重が嵌合構造38(例えばピン36による結合部又はその近傍)に車両後向きに作用した場合に、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとがピン36周りに互いに逆向きに回動される構成とされている。
【0039】
この規定荷重は、ラジエータサポート24がラジエータ等の支持剛性を確保するのに要求される荷重以上で、かつ後述するインパクタIの衝突の際に作用する衝撃吸収荷重よりも小さい値として設定されている。規定荷重の設定は、各リブ44の寸法形状、数、配置により行うことができる。
【0040】
以上説明したラジエータサポートアッパ26を構成する右アッパメンバ26R及び左アッパメンバ26Lは、それぞれ樹脂材にて構成されている。嵌合部42は、樹脂の射出成形によって左アッパメンバ26Lに一体に形成されている。また、ピン36は金属製とされている。さらに、ラジエータサポート24では、ラジエータサポートロア28、左右のラジエータサポートサイド30、ラジエータサポートアッパサイド32は金属製とされているが、これらの少なくとも一部を樹脂材にて構成しても良い。
【0041】
また、車体前部構造10では、図5に示される如く、右側のラジエータサポートサイド30の上端に右アッパメンバ26Rの車幅方向外端が結合されている。なお、図1に示される如く、左側のラジエータサポートサイド30に対する左アッパメンバ26Lの結合構造は、右側のラジエータサポートサイド30に対する右アッパメンバ26Rの結合構造と左右対称に構成されているので、以下、前者について説明し、後者の説明を省略する。
【0042】
ラジエータサポートサイド30の上端には、車幅方向内向きに突出するようにブラケット46が固定されている。この実施形態では、ブラケット46は、ラジエータサポートアッパサイド32の車幅方向内端と共通のボルト48にて共締めされることで、ラジエータサポートサイド30に固定されている。このブラケット46は、右アッパメンバ26Rの前壁26RFの背面に接触する前壁46Fと、上壁26RUの下面に接触する上壁46Uとを有する。前壁46F、46Uにはそれぞれ図示しないボルト孔が形成されると共に、右アッパメンバ26Rとの接触面の裏面に図示しないウェルドナットが固定されている。
【0043】
右アッパメンバ26Rの上壁26RUには上壁46Uのボルト孔に対応して図示しないボルト孔が形成されており、これらのボルト孔を貫通した上側締結具としての上側ボルト50が上記ウェルドナットに螺合されている。これにより、右アッパメンバ26Rは、上壁26RUにおいてブラケット46(ラジエータサポートサイド30)に締結固定されている。
【0044】
また、右アッパメンバ26Rの前壁26RFには、前壁46Fのボルト孔に対応して締結具孔としてのボルト孔52が形成されており、これらのボルト孔を貫通した前側締結具としての前側ボルト54が上記ウェルドナットに螺合されている。これにより、右アッパメンバ26Rは、前壁26RFにおいてもブラケット46(ラジエータサポートサイド30)に締結固定されている。そして、ボルト孔52は、前側ボルト54による締結部位に対する車幅方向外側に連続する締結具逃がし部としてのボルト逃がし部52Aを有する長孔(スリット孔)とされている。
【0045】
以上説明した車体前部構造10においては、左右のラジエータサポートサイド30(ブラケット46)が本発明における第1、第2側部骨格部材に相当する。なお、ブラケット46をラジエータサポートアッパサイド32の部品と捉えることで、左右のラジエータサポートアッパサイド32が本発明における第1、第2側部骨格部材に相当するものと捉えることも可能である。
【0046】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0047】
上記構成の車体前部構造10では、通常は、被嵌合部40に嵌合部42が嵌合していることで、ラジエータサポートアッパ26は所要の形状に保持されると共に、所要の剛性が確保されている。これにより、車体前部構造10では、ラジエータ、コンデンサ、フードロック機構、フードクッションゴム、ホーン(警笛)等の部品の支持剛性、強度が確保されている。また、ラジエータサポート24は、フードクッションゴム、ラッチ22を介したエンジンフード18の建付けの観点から要求される剛性、強度についても確保されている。
【0048】
そして、歩行者保護大腿部試験においては、図6に示される如く、エンジンフード18の前端からフロントグリル14にかけての部分にインパクタIが車両後下向き(矢印F方向)に衝突する。すると、フロントグリル14、エンジンフード18(カバー部材34)の前端が変形しながらインパクタIの衝突による衝撃エネルギが吸収される。この荷重がラジエータサポートアッパ26におけるピン36又はその近傍を介して嵌合構造38に伝達され、該伝達荷重が上記規定荷重を超える場合、被嵌合部40と嵌合部42とがピン36周りに相対角変位される。すなわち、嵌合構造38によるラジエータサポートアッパ26の拘束状態が解消され、これにより、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとが、ピン36を後退させるように該ピン36周りに互いに逆向きに相対角変位を生じる(図4の矢印R参照)。
【0049】
すなわち、ラジエータサポートアッパ26は、車幅方向中央部が車両後方に移動され、インパクタIの衝突による衝撃吸収ストロークが増す。例えば車幅方向に長手の単一部材より成るラジエータサポートアッパを備えた比較例では、衝撃吸収過程で高剛性、高強度のラジエータサポートアッパに底付きを生じる。これに対して車体前部構造10では、上記の通り規定荷重を超える衝突荷重の入力によってラジエータサポートアッパ26が中折れするように変形するので、上記比較例に対し衝撃吸収ストロークを大きくすることができる。
【0050】
しかも、車体前部構造10では、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lにおけるラジエータサポートサイド30(ブラケット46)との結合部位にボルト逃がし部52Aを有するボルト孔52が形成されている。このため、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lは、車幅方向外端側で上側ボルト50周りに回動しつつ、車幅方向内端側でピン36回りに回動する。この際、前側ボルト54がボルト逃がし部52Aに移動することで、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lは、それぞれの上側ボルト50周りに低抵抗で回動する。
【0051】
すなわち、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lは、上記した規定荷重により角変位されて上記の如く衝撃吸収ストロークの増加に寄与する。換言すれば、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lの上側ボルト50周りの角変位に要する荷重による規定荷重(衝撃吸収に伴う荷重)への影響を小さく抑えることができる。
【0052】
さらに、車体前部構造10では、嵌合部42に形成された各リブ44によって該嵌合部42と被嵌合部40との静摩擦力(規定荷重)が設定されている。したがって、リブ44の寸法形状や配置、数等によって、車種やラジエータサポート24による支持部品の仕様に応じた適切な静摩擦力の設定(チューニング)が可能である。
【0053】
またさらに、車体前部構造10では、上下方向に長手のピン36によって右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとが互いの車幅方向内端側で相対角変位可能に連結されている。例えば、ピン36による連結構造(ガイド構造)を有しない比較例では、図6に示す矢印F方向からの荷重によりラジエータサポートアッパ26に捩れが生じ、嵌合構造38によるラジエータサポートアッパ26の拘束状態の解消に要する荷重が大きくなる懸念がある。これに対して、車体前部構造10では、ラジエータサポートアッパ26の捩れが抑制されると共にピン36によって衝突荷重が嵌合構造38の外れ方向の荷重として効率的に伝達される。
【0054】
この点を補足すると、ピン36は、ラジエータサポートアッパ26の断面の外側(前壁26RF、26LFに対する前方)に配置されている。このため、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lを断面内で連結する比較例に対し、断面2次モーメントが大きくなり、捩れ、曲げに対するラジエータサポートアッパ26の剛性が高い。これによってもラジエータサポートアッパ26の捩れ抑制効果が高い。さらに、上記比較例に対してラジエータサポートアッパ26の図心から離間して配置されるので、金属製のピン36による剛性向上効果(補強効果)も得られる。
【0055】
しかも、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとを相対角変位可能に連結するピン36は、該右アッパメンバ26R及び左アッパメンバ26Lガイド機能を果たす。このため、ピン36によって矢印F方向からの荷重(の一部)が嵌合構造38の外れ方向の荷重として効率的に伝達される。これにより、仮にピン36が後傾する方向に捩れを生じた場合でも、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとは、ピン36にてガイドされてこじりを生じることが抑制されつつ、嵌合構造38による拘束状態が解消される。
【0056】
これにより、車体前部構造10では、インパクタIの衝突方向の影響を受けにくく、嵌合構造38によるラジエータサポートアッパ26の拘束状態を良好に解消することができる。
【0057】
また、車体前部構造10では、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの接続に嵌合構造38を採用しているので、上記した通常時に、分割構造であるラジエータサポートアッパ26の剛性、強度を確保しやすい。すなわち、右アッパメンバ26Rの被嵌合部40と、左アッパメンバ26Lの嵌合部42とが長手方向の一部において重なり合う構成であるため、嵌合構造を採用しない比較例と比較して、ラジエータサポートアッパ26全体としての断面2次モーメントが増加し、上記比較例と比較して前後方向の曲げ、捩れに対する剛性が向上する。しかも、車体前部構造10では、上記した通りピン36によってもラジエータサポートアッパ26の曲げ、捩れに対する剛性が向上されている。これらにより、車体前部構造10では、自動車11の操縦安定性の向上にも寄与する。
【0058】
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
(第2の実施形態)
図7には、本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造60を構成する嵌合構造62が図2に対応する分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体前部構造60は、嵌合構造62がストッパ構造(位置決め構造)64を有する点で、第1の実施形態に係る車体前部構造10とは異なる。
【0060】
具体的には、嵌合構造62を構成する被嵌合部66は、右アッパメンバ26Rにおける他の部分よりも、上壁26RU、下壁26RLの車両前後方向に沿った幅が短くされている。この実施形態では、被嵌合部66における上壁26RU、下壁26RLの車両後端は、後述するストッパフランジ68Sの厚み分だけ、他の部分よりも車両前方に位置する位置決め部66Aとされている。
【0061】
一方、被嵌合部66とで嵌合構造62を構成する嵌合部68は、前壁68Fと、上壁68Uと、下壁68Lと、上壁68U及び下壁68Lの車両後縁から上下に張り出された上下一対のストッパフランジ68Sを有し、ハット形の断面形状を成している。また、この実施形態では、嵌合部68における左アッパメンバ26L側と反対側の端部には、前壁68Fと上壁68Uと下壁68Lとを繋ぐ端壁68Eが形成されており、側面視で嵌合部68は端壁68Eによって閉止されている。
【0062】
そして、前壁68Fの前面からストッパフランジ68Sの前面の前後方向に沿った距離は、被嵌合部66を構成する前壁26RFの背面から上壁26RU、下壁26RLの後端までの距離と同等又は僅かに小とされている。したがって、嵌合構造62では、被嵌合部66に嵌合(圧入)された嵌合部68のストッパフランジ68Sが被嵌合部66を構成する上壁26RU、下壁26RLの後端に突き当てられる構成とされている。すなわち、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとで一直線状を成す状態でストッパフランジ68Sが上壁26RU、下壁26RLの後端に突き当たることで、該右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの矢印R(図4参照)周りの相対角変位が禁止されるストッパ構造64が構成されている。車体前部構造60における他の構成は、図示しない部分を含め車体前部構造10の対応する構成と同じである。
【0063】
したがって、第2の実施形態に係る車体前部構造60によっても、基本的第1の実施形態に係る車体前部構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車体前部構造60では、嵌合構造62がストッパ構造64を備えるため、左アッパメンバ26L側のストッパフランジ68Sを被嵌合部66の上壁26RU、下壁26RLの後端に突き当てて位置決めすることにより、該右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとを精度良く連結することができる。すなわち、寸法精度の高いラジエータサポートアッパ26を得ることができる。
【0064】
なお、上記した第1、第2の実施形態では、嵌合部42、68にリブ44が設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、被嵌合部40、66を構成する上壁26RU、下壁26RLにリブ44を設けた構成としても良い。また、リブ44の寸法形状、数、配置は、要求される規定荷重に応じて適宜設定すれば良い。
【0065】
(第3の実施形態)
図8には、本発明の第3の実施形態に係る車体前部構造70が図1に対応する斜視図にて示されている。また、図9(A)には、車体前部構造70の要部が正面図にて示されており、図9(B)には車体前部構造70の要部が側断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体前部構造70は、接続構造としての嵌合構造38に代えて、接続構造としての係合構造(干渉構造)72を備える点で、第1の実施形態に係る車体前部構造10とは異なる。
【0066】
具体的には、車体前部構造70を構成する右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lの車幅方向内端には、フランジ74、76が形成されている。フランジ74は、右アッパメンバ26R(上壁26RU、下壁26RL)の車幅方向内端から上下方向の両側に張り出している。同様に、フランジ76は、左アッパメンバ26L(上壁26RU、下壁26LL)の車幅方向内端から上下方向の両側に張り出している。これらフランジ74、76の何れか一方が本発明の第1フランジに相当し、他方が第2フランジに相当する。
【0067】
これらのフランジ74とフランジ76とは互いに突き合わされており、係合部としての係合爪部78、80によって上記の突合せ状態が維持される構成とされている。具体的には、フランジ74における車両前後方向の後部(ピン36から離間した部分)には、フランジ76側に向けて係合爪部78が突出されている。この係合爪部78先端の爪78Aがフランジ76の反フランジ74側の面に係合されている。また、フランジ76における車両前後方向の後部(ピン36から離間した部分)には、フランジ74側に向けて係合爪部80が突出されている。この係合爪部80先端の爪80Aがフランジ76の反フランジ74側の面に係合(干渉)されている。これらにより、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの矢印R方向の相対角変位が禁止される構成である。すなわち、係合構造72では、フランジ74の係合爪部78、フランジ76の係合爪部80が突き当て相手方のフランジに係合(干渉)されている。
【0068】
一方、係合構造72では、規定荷重を超える荷重がピン36による結合部又はその近傍を介して車両後向きに作用した場合、図10に示される如く、係合爪部78、80が破断され、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの拘束状態が解消されるようになっている。これにより、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとがピン36周りに互いに逆向き(矢印R方向)に回動される構成とされている。
【0069】
図9(A)に示される如く、車体前部構造70を構成する右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lは、剛性、強度を確保するための隔壁26RD、26LDが適宜形成されている。また、右アッパメンバ26Rの車幅方向内端は、端壁26REに閉止されている。車体前部構造70における他の構成は、図示しない部分を含め車体前部構造10の対応する構成と同じである。
【0070】
上記構成の車体前部構造70では、例えば規定荷重を超える荷重がピン36による結合部又はその近傍に車両後向きに作用した場合に、係合爪部78、80が破断することで、係合構造72による拘束が解消される。このため、ラジエータサポートアッパ26は、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとがピン36周りに矢印R方向に回動されることで、衝突荷重により車幅方向中央部で中折れする如く変形される。このため、車体前部構造70によっても、インパクタIの衝突の際に衝撃吸収ストロークが確保されるという、車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、車体前部構造70によっても、ピン36によるラジエータサポートアッパ26の捩れ剛性の確保(通常時、衝突時とも)が図られる。さらに、車体前部構造70では、規定荷重について、係合爪部78、80の寸法形状、数、配置などによって設定(チューニング)することができる。
【0072】
なお、第3の実施形態では、係合爪部78、係合爪部80が相異なるフランジに形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、一方のフランジにのみ1つ又は複数の係合爪部を設けても良く、フランジとは別体として構成された係合爪部を両フランジに係合させる構成としても良い。後者の場合、例えば係合爪部を構成する樹脂材に炭素繊維などの強化繊維を配合することで、破断前の係合爪部(ラジエータサポートアッパ26の曲げ)の変形(フランジ74、76の離間)を小さく抑えることが可能となる。この別体の係合爪部は、フランジ74、76の少なくとも一方に対し脱落防止等のために取り付けられる。すなわち、別体の係合爪部についても、フランジに設けられた構造とされている。
【0073】
(第4の実施形態)
図11(A)には、本発明の第4の実施形態に係る車体前部構造90の要部が斜視図にて示されており、図11(B)には、車体前部構造90の要部が正断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体前部構造90は、嵌合構造62に代えて溶着構造92を備える点で、第3の実施形態に係る車体前部構造70とは異なる。
【0074】
溶着構造92は、右アッパメンバ26R側のフランジ74と左アッパメンバ26L側のフランジ76とが超音波溶着等による溶着部Wにて固定されることで、フランジ74とフランジ76との離間が禁止され、ラジエータサポートアッパ26の形状(姿勢)が維持される構成である。
【0075】
一方、溶着構造92では、規定荷重を超える荷重がピン36による結合部又はその近傍を介して車両後向きに作用した場合、溶着部Wが剥離され、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとの拘束状態が解消されるようになっている。このため、図10に示される構成と同様に、規定荷重を超える車両後向きの荷重により、右アッパメンバ26Rと左アッパメンバ26Lとがピン36周りに互いに逆向き(矢印R方向)に回動される構成とされている。車体前部構造90における他の構成は、図示しない部分を含め車体前部構造70(車体前部構造10)の対応する構成と同じである。
【0076】
したがって、第4の実施形態に係る90によっても、分割構造のラジエータサポートアッパ26の変形(中折れ)が許容されるメカニズムが異なることを除き、基本的に第3の実施形態に係る車体前部構造70と同様の作用によって童謡の効果を得ることができる。なお、車体前部構造90においては、溶着部Wの溶着径(面積)、数、配置によって規定荷重を設定(チューニング)することができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、接続構造として嵌合構造38、62、係合構造72、溶着構造92が個別に設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、嵌合構造38、62、係合構造72、溶着構造92の一部又は全部を組み合わせて本発明の接続構造を構成しても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、ラジエータサポートサイド30にブラケット46が設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ラジエータサポートサイド30を樹脂材にて形成する場合には、右アッパメンバ26R、左アッパメンバ26Lが締結により固定される固定部をラジエータサポートサイド30に一体に形成しても良い。
【0079】
また、上記した実施形態では、前側締結部、上側締結部としてボルト50、54を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前側締結部、上側締結部の少なくとも一方としてリベットなどの締結具を用いるようにしても良い。
【0080】
その他、本発明は、嵌合構造38、62、係合構造72、溶着構造92の具体的な構成等に限定されることはなく、各種変形して実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0081】
10 車体前部構造
18 エンジンフード(フード部材)
26R 右アッパメンバ(第1横骨格部材、第2横骨格部材)
26RF 前壁
26RU 上壁
26L 左アッパメンバ(第2横骨格部材、第1横骨格部材)
26LF 前壁
26LU 上壁
30 ラジエータサポートサイド(第1側部骨格部材、第2側部骨格部材)
36 ピン(軸部材)
38 嵌合構造(接続構造)
40 被嵌合部
42 嵌合部
44 リブ
50 上側ボルト(上側締結具)
52 ボルト孔
52A ボルト逃がし部
54 前側ボルト(前側締結具)
60・70・90 車体前部構造
62 嵌合構造(接続構造)
66 被嵌合部
68 嵌合部
72 係合構造(接続構造)
74 フランジ(第1フランジ、第2フランジ)
76 フランジ(第2フランジ、第1フランジ)
78・80 係合爪部(係合部)
92 溶着構造(接続構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部を上側から覆うフード部材と、
前記フード部材の車幅方向一端側に対する車両下方に設けられた第1側部骨格部材と、
前記フード部材の車幅方向他端側に対する車両下方に設けられた第2側部骨格部材と、
前記フード部材の前部における車両下方で車幅方向に延在され、車幅方向外端が前記第1側部骨格部材に結合された第1横骨格部材と、
前記フード部材の前部における車両下方で車幅方向に延在され、車幅方向外端が前記第2側部骨格部材に結合された第2横骨格部材と、
前記第1横骨格部材及び第2横骨格部材に対する車両前後方向の前側で、該第1横骨格部材の車幅方向内端側と前記第2横骨格部材の車幅方向内端側とを、車両上下方向に沿った軸線周りに相対角変位可能に連結する軸部材と、
前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位が規制されるように、該第1横骨格部材の車幅方向内端側と第2横骨格部材の車幅方向内端側とを接続し、所定の荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に、前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位の規制状態が解除される接続構造と、
を備えた車体前部構造。
【請求項2】
前記第1横骨格部材は、車両上方を向く上壁において前記第1側部骨格部材に対し上側締結具にて締結されると共に、前記上側締結具による締結部位よりも車両前側で車両前方を向く前壁において前記第1側部骨格部材に対し前側締結具にて締結されており、
前記第2横骨格部材は、車両上方を向く上壁において前記第2側部骨格部材に対し上側締結具にて締結されると共に、前記上側締結具による締結部位よりも車両前側で車両前方を向く前壁において前記第2側部骨格部材に対し前側締結具にて締結されており、
前記第1横骨格部材及び第2横骨格部材の各前壁に形成されると共に前記前側締結具が挿通された締結孔は、それぞれ前記前側締結具の挿通部位に対し車幅方向外側に位置する締結具逃がし部を有する請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記接続構造は、前記第1横骨格部材における少なくとも車幅方向内端部に車両後向きに開口するように形成された被嵌合部に、前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に設けられた嵌合部が圧入により嵌合されることで、前記第1横骨格部材と第2横骨格部材との前記軸部材の軸線周りの相対角変位が規制されるように該第1横骨格部材の車幅方向内端側と第2横骨格部材の車幅方向内端側とを接続している請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記接続構造は、前記被嵌合部及び嵌合部の少なくとも一方から他方側に突出したリブにおいて該他方側に接触する構造とされている請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記接続構造は、
前記第1横骨格部材における車幅方向内端部に形成された第1フランジと、
前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に形成され前記第1フランジに突き合わされた第2フランジと、
所定荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に破断されるように前記第1フランジ及び第2フランジの少なくとも一方に設けられると共に、他方のフランジに係合された係合部と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記接続構造は、
前記第1横骨格部材における車幅方向内端部に形成された第1フランジと、
前記第2横骨格部材における車幅方向内端部に形成され前記第1フランジに突き合わされた第2フランジと、
所定荷重を超える車両後向きの荷重が作用した場合に剥離されるように前記第1フランジと第2フランジとを溶着により接合した溶着部と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−11977(P2012−11977A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153049(P2010−153049)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】