車体後部構造
【課題】 複数の縦稜線を有するリヤエンドパネルの剛性をパッチを用いることなく高めることを目的とする。
【解決手段】 リヤエンドパネル17は、上下方向に延びる複数の縦稜線17b〜17eにより折り曲げられて前後方向に屈曲することで面剛性が高められる。リヤエンドパネル17は、2本の縦稜線17b,17cの下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線17f,17gに挟まれた傾斜面17hを備え、傾斜面17hは鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、左右のリヤフレーム22の撓みに伴ってリヤエンドパネル17に曲げ荷重が加わったときに、縦稜線17b,17cの下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面17hにより防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネル17の剛性向上が可能になる。
【解決手段】 リヤエンドパネル17は、上下方向に延びる複数の縦稜線17b〜17eにより折り曲げられて前後方向に屈曲することで面剛性が高められる。リヤエンドパネル17は、2本の縦稜線17b,17cの下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線17f,17gに挟まれた傾斜面17hを備え、傾斜面17hは鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、左右のリヤフレーム22の撓みに伴ってリヤエンドパネル17に曲げ荷重が加わったときに、縦稜線17b,17cの下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面17hにより防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネル17の剛性向上が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のリヤフレームを車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで前記左右のリヤフレームの後端間を接続した車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車のキャブの後壁を構成するキャブバックパネルの面剛性を高めて振動の発生を抑制すべく、キャブバックパネルのベース部の車幅方向中央部を車体後方に湾曲させ、ベース部の車幅方向両側の第1領域に後方に突出して上下方向に延びる複数の第1ビードを形成するとともに、ベース部の車幅方向中央の第2領域に後方に突出して上下方向に延びる複数の第2ビードを形成したものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで5ドア車両では、後部荷室の開口部下方の後壁を構成するリヤエンドパネルの左右両端が左右のリヤフレームの後端に連結されているため、荒い路面を走行する場合や急旋回を行う場合にリヤフレームが撓むと、リヤエンドパネルはリヤフレームから曲げ荷重を受けることになる。
【0005】
リヤエンドパネルは面剛性を高めるために複数の縦稜線を有しているが、リヤフレームから曲げ荷重を受けると縦稜線の下端が折れの起点となって剛性が低下するため、従来は縦稜線の下端にパッチを重ね合わせて補強していた。しかしながら、パッチを用いて補強を行うと部品点数や組立工数が増加するため、パッチを用いることなくリヤエンドパネルの剛性を高めることが望ましい。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、複数の縦稜線を有するリヤエンドパネルの剛性をパッチを用いることなく高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、左右のリヤフレームを車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで前記左右のリヤフレームの後端間を接続した車体後部構造において、前記リヤエンドパネルは、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線により折り曲げられて前後方向に屈曲するとともに、前記2本の縦稜線の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線に挟まれた傾斜面を備え、前記傾斜面は鉛直方向に対して前後方向に傾斜することを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記リヤエンドパネルの上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナを結合したことを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記左右のリヤフレームと前記リヤエンドパネルの下縁とはフロアパネルで接続されて荷室を構成し、前記2本の横稜線のうちの上側の横稜線は下側の横稜線よりも後方に位置することを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記傾斜面は、車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されることを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記リヤエンドパネルの後面には前記上側の横稜線から上方に延びる凹部が形成され、前記凹部に固定した取付ブラケットにリヤバンパーの下端が固定されることを特徴とする車体後部構造が提案される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、車体側部に沿って前後方向に配置した左右のリヤフレームの後端が、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで接続される。リヤエンドパネルは、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線により折り曲げられて前後方向に屈曲することで面剛性が高められる。リヤエンドパネルは2本の縦稜線の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線に挟まれた傾斜面を備え、傾斜面は鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、左右のリヤフレームの撓みに伴ってリヤエンドパネルに曲げ荷重が加わったときに、縦稜線の下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面により防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネルの剛性向上が可能になる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、リヤエンドパネルの上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナを結合したので、リヤエンドパネルの上部をリヤエンドパネルスチフナで補強するとともにリヤエンドパネルの下部を傾斜面で補強することで、リヤエンドパネル全体の剛性を高めることができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、左右のリヤフレームとリヤエンドパネルの下縁とをフロアパネルで接続して構成される荷室は、上下の横稜線のうちの上側の横稜線が下側の横稜線よりも後方に位置するので、リヤエンドパネルの上部を下部よりも後方に張り出して荷室の容積を拡大することができる。
【0015】
また請求項4の構成によれば、リヤエンドパネルの傾斜面は車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されるので、リヤエンドパネルの中央部を下縁および左右の側縁の両方から後方に張り出して荷室の容積を最大限に拡大することができる。
【0016】
また請求項5の構成によれば、リヤエンドパネルの後面に上側の横稜線から上方に延びる凹部を形成し、この凹部に固定した取付ブラケットにリヤバンパーの下端を固定するので、取付ブラケットの支持剛性を高めてリヤバンパーの取付位置の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】5ドア車両を左後方から見た図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図2の4A方向矢視図および図4Aからリヤエンドパネルを除去した図。
【図5】図4Aの分解斜視図。
【図6】図3の6−6線断面図。
【図7】図3の7−7線断面図。
【図8】図3の8−8線断面図。
【図9】図4Bの9部拡大図。
【図10】図2の10方向矢視図。
【図11】図10の11A−11A断面図および11B−11B断面図。
【図12】図10の12方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図12に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、5ドア車両の後面には、車体後部に設けられた荷室11の開口部12を開閉するリヤゲート13が上下開閉自在に設けられる。開口部12の左右両側縁は左右のリヤピラー14,14によって区画され、開口部12の上縁はルーフパネル15の後縁によって区画され.開口部12の下縁はリヤバンパー16によって区画される。5ドア車両の車体構造は車体中心線を挟んで左右対称であるため、以下、代表として左半部の構造を説明する。
【0020】
図2〜図5に示すように、開口部12の下方のリヤバンパー16で覆われる部分には、車体左右方向に長い矩形状のリヤエンドパネル17が配置される。リヤエンドパネル17の上縁の前面には、前壁18a、上壁18bおよび下壁18cを有して車体後方に開口するコ字状断面のリヤエンドパネルスチフナ18が結合されて閉断面の開口下部フレーム30を構成する。リヤエンドパネル17の左端(左右方向外端)には概ね平板状のガータロアパネル19が結合され、ガータロアパネル19の前面には、前壁20a、外壁20b、上部内壁20cおよび下部内壁20dを有して車体後方に開口するコ字状断面のガータスチフナ20が結合される。その際に、ガータロアパネル19の前壁20a、上部内壁20cおよび下部内壁20dは、それぞれリヤエンドパネルスチフナ18の前壁18a、上壁18bおよび下壁18cに接続する。ガータロアパネル19およびガータスチフナ20は、リヤピラー14の下半部である下部リヤピラー21を構成する。
【0021】
車体左側部に沿って前後方向に配置されたボックス断面のリヤフレーム22の後端部の上面に、後方に開放するコ字状断面のリヤフレームガセット23の下端が結合され、リヤフレームガセット23の上端にガータスチフナ20の下端が結合される。またリヤフレーム22の右側面にはリヤエンドパネル17の左端と、荷室11の床面を構成するフロアパネル24の上向きに湾曲する上縁とが結合される。リヤエンドパネル17、リヤフレーム22およびフロアパネル24の接続部に、荷室11の内部側からリヤフレームエンドパッチ31が当てがわれて補強される(図12参照)。またリヤエンドパネルスチフナ18の左右方向中央部とフロアパネル24とが、リヤエンドパネル17の前面に沿って上下方向に延びる帯状のステー25で連結される。
【0022】
図3〜図7に示すように、リヤエンドパネル17の本体部17aは概ね平板状の部材であって、その上縁に沿って後方に張り出す膨出部17jがリヤエンドパネルスチフナ18と協働して閉断面を構成する。リヤエンドパネル17の左半部および右半部は、それぞれ上下方向に延びる4本の縦稜線17b,17c,17d,17eを備えており、これらの縦稜線17b,17c,17d,17eにおいて前後方向に屈曲することで.リヤエンドパネル17は全体として左右方向中央部が後方に突出するように緩く湾曲して面剛性が高められる。
【0023】
左右方向外側から2番目の縦稜線17cの下端から左右方向外側に向かって2本の横稜線17f,17gが間隔を広げながら延びており、その先端側(左右方向外側)は上方に湾曲する。上側の横稜線17fは下側の横稜線17gよりも後方に位置しており、従って2本の縦稜線17c,17dおよび2本の横稜線17f,17gの間にL字状の傾斜面17hが形成される。リヤエンドパネル17は全体として鉛直に配置されるが、傾斜面17hは前面側が斜め上方を向き、後面側が斜め下方を向くように傾斜する。
【0024】
リヤエンドパネル17の左右方向外側から2番目の縦稜線17cの僅かに外側位置、つまり傾斜面17hの左右方向内端の近傍に前方に向かって窪む凹部17iが上方に向かって延びており、この凹部にL字状の取付ブラケット26がボルト27,27で固定される。またリヤエンドパネル17の膨出部17jの後面に断面L字状の取付ブラケット28がボルト29…で固定される。そして下側の取付ブラケット26および上側の取付ブラケット28にリヤバンパー16が固定される。
【0025】
図3〜図5および図9から明らかなように、ガータロアパネル19およびガータスチフナ20を結合した下部リヤピラー21と、リヤエンドパネル17およびリヤエンドパネルスチフナ18を結合した開口下部フレーム30とが接続される接続部32に臨むように、閉断面を構成するガータロアパネル19およびガータスチフナ20の内部に第1バルクヘッド33が配置される。第1バルクヘッド33は左右方向内向きの前部フランジ33aと、左右方向外向きの上部フランジ33bと、左右方向外向きの後部フランジ33cと、左右方向内向きの下部フランジ33dとを備えており、前部フランジ33aはガータスチフナ20の前壁20aに結合され、上部フランジ33bはガータスチフナ20の上部内壁20cに結合され、後部フランジ33cはガータロアパネル19に結合され、下部フランジ33dはガータスチフナ20の下部内壁20dに結合される。
【0026】
図4、図5および図11(B)に示すように、ガータロアパネル19およびガータスチフナ20を結合して閉断面に構成された下部リヤピラー21の上部に、第2バルクヘッド34が配置される。第2バルクヘッド34は上向きの前部フランジ34aと、下向きの内側フランジ34bと、下向きの後部フランジ34cと、下向きの外側フランジ34dとを備えており、前部フランジ34aはガータスチフナ20の前壁20aに結合され、内側フランジ34bはガータスチフナ20の上部内壁20cに結合され、後部フランジ34cはガータロアパネル19に結合され、外側フランジ34dはガータスチフナ20の外壁20bに結合される。
【0027】
図10に示すように、リヤピラー14は、下部リヤピラー21の上部に接続部35を介して接続される上部リヤピラー36を備える。図11(B)に示すように、下部リヤピラー21は平板状のガータロアパネル19の前部に断面コ字状のガータスチフナ20を結合して閉断面に構成されるのに対し、図11(A)に示すように、上部リヤピラー36は、後壁37aおよび外壁37bを有して断面L字状に形成されたリヤピラーアウター37と、前壁38aおよび内壁38bを有して断面L字状に形成されたリヤピラーインナー38とを結合して閉断面に構成される。リヤピラーアウター37の後壁37aは、ガータロアパネル19の上端に接続されたガータミッドパネル39(図3、図5および図11(A)参照)により覆われ、リヤピラーアウター37の外壁37bは、サイドパネル組立体40(図3および図11(A)参照)により覆われる。
【0028】
またガータスチフナ20の上部は基本的に前壁20a、外壁20bおよび上部内壁20cを有してコ字状断面に形成されるが(図11(B)参照)、その上端の接続部35の近傍では外壁20bが上側ほど幅狭になるように切り欠かれており、接続部35の位置では前壁20aおよび上部内壁20cによってL字状断面に形成される(図11(A)参照)。そしてガータスチフナ20の前壁20aおよび上部内壁20cの内側に、リヤピラーインナー38が重ね合わされて結合される(図11(A)参照)。そのとき、ガータスチフナ20の前壁20aからリヤピラーインナー38の前壁38aが左右方向外側に突出してフランジ38cを形成しており、このフランジ38cの後面に、リヤピラーアウター37の外壁37bを左右方向外側に折り曲げて形成したフランジ37cが重ね合わされて結合される。またリヤピラーアウター37の後壁37aの左右方向内端を後方に折り曲げて形成したフランジ37dと、リヤピラーインナー38の内壁38bの後端のフランジ38dとが重ね合わされて結合される。
【0029】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
自動車が路面の段差を乗り超えたり高速で旋回したりして左右のリヤフレーム22,22の後端が撓むと、そこに左右両端部を接続されたリヤエンドパネル17に曲げ荷重が入力する。リヤエンドパネル17は面剛性を高めるために複数の縦稜線17b,17c,17d,17eにおいて前後方向に屈曲しているため、前記曲げ荷重が入力したときに縦稜線17b,17c,17d,17eの下端が折れの基端となって剛性が低下する可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、リヤエンドパネル17は、2本の縦稜線17b,17cの下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線17f,17gに挟まれた傾斜面17hを備え、傾斜面17hは鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、縦稜線17f,17gの下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面17hにより防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネル17の剛性向上が可能になる。
【0031】
また傾斜面17hを区画する上下の横稜線17f,17gのうち、上側の横稜線17fは下側の横稜線17gよりも後方に位置し、かつ傾斜面17hは車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されるので、リヤエンドパネル17の下部および左右両側部に対して中央部を後方に張り出して荷室11の容積を最大限に拡大することができる。
【0032】
しかもリヤエンドパネル17の上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナ18を結合して補強したので、リヤエンドパネル17の下部を傾斜面17hで補強したことと相まって、リヤエンドパネル17全体の剛性を高めることができる。更に、リヤエンドパネル17の後面に上側の横稜線17fから上方に延びる凹部17iを形成し、この凹部17iに固定した取付ブラケット26にリヤバンパー16の下端を固定したので、リヤエンドパネル17に対する取付ブラケット26の支持剛性を高めてリヤバンパー16の取付位置の精度を高めることができる。
【0033】
また下部リヤピラー21の閉断面と開口下部フレーム30の閉断面とが接続される接続部32の近傍で、ガータスチフナ20はリヤフレーム22および開口下部フレーム30を接続する下部内壁20dを備えており、接続部32に臨む下部内壁20dに開口下部フレーム30の閉断面を拘束する第1バルクヘッド33を結合するので、図9に矢印で示すように、第1バルクヘッド33を大型化することなくリヤフレーム22からの荷重をガータスチフナ20の下部内壁20dを介して開口下部フレーム30に伝達することができる。しかも、その際に第1バルクヘッド33は下部リヤピラー21の閉断面および開口下部フレーム30の閉断面を共に拘束して荷重伝達効率を高めることができる。
【0034】
またガータスチフナ20の下部内壁20dはリヤフレーム22から開口下部フレーム30に向かって滑らかに車体内側に湾曲するので(図5参照)、下部内壁20dが直角に折れ曲がる場合に比べて、リヤフレーム22から開口下部フレーム30への荷重伝達をスムーズに行うことができる。
【0035】
また第1バルクヘッド33は前部フランジ33a、上部フランジ33b、後部フランジ33cおよび下部フランジ33dによって下部リヤピラー21の閉断面の4面に結合されるので、第1バルクヘッド33を下部リヤピラー21に強固に結合して剛性向上効果を更に高めることができる。このとき、第1バルクヘッド33の下端を車体内向きに折り曲げた下部フランジ33dと、ガータスチフナ20の下部内壁20dの上端を車体内向きに折り曲げた上部フランジ部20eとを結合するので(図9参照)、第1バルクヘッド33の下端をガータスチフナ20の下部内壁20dに接近させて荷重伝達効率を高めることができる。
【0036】
またリヤエンドパネル17は縦稜線17bによって面剛性を高められているが、その縦稜線17bの上方への延長線の近傍に第1バルクヘッド33を配置したので(図3参照)、リヤエンドパネル17の縦稜線17bを第1バルクヘッド33に対する荷重伝達経路に利用することができる。更に、リヤエンドパネル17の上縁に第1バルクヘッド33の後部の形状に倣って後方に膨出する膨出部17j(図5参照)を形成したので、リヤエンドパネル17の上縁とリヤエンドパネルスチフナ18とによって閉断面に構成される開口下部フレーム30の断面積を増加させて剛性を高めることができる。
【0037】
図11(A)に示すように、上部リヤピラー36は、後壁37aおよび外壁37bを有する断面L字状のリヤピラーアウター37と、前壁38aおよび内壁38bを有する断面L字状のリヤピラーインナー38とを結合して閉断面に構成されるが、リヤピラーインナー38の前壁38aから車体外側に延びるフランジ38cと、リヤピラーアウター37の外壁37bから車体外側に延びるフランジ37cとが結合されるので、前記両フランジ38c,37cが車体外側に延びて車体前方に延びることがなく、前方の荷室11の容積を圧迫するのを防止することができる。
【0038】
下部リヤピラー21のガータスチフナ20は基本的に前壁20a、外壁20bおよび上部内壁20cを有してコ字状断面に形成されているが、上部リヤピラー36との接続部35の近傍では外壁20bが斜めに切り欠かれてL字状断面になっているため(図10および図11参照)、リヤピラーインナー38に対してリヤピラーアウター37を左右方向外側から接近させて組付ける際に、リヤピラーアウター37がガータスチフナ20の外壁20bと干渉して組付けの妨げになるのを防止することができる。しかもガータスチフナ20の外壁20bは上方側ほど幅が狭くなるように斜めに切り欠かれるので、ガータスチフナ20の外壁20bを切り欠いたことによる強度の急変を防止することができる。
【0039】
また図11(A)に示すように、リヤピラーアウター37の後壁37aから車体後側に延びるフランジ37dと、リヤピラーインナー38の内壁38bから車体後方に延びるフランジ38dとを結合するので、リヤピラーインナー38に対してリヤピラーアウター37を左右方向外側から接近させるだけで組付けることが可能になって組付け性が向上する。
【0040】
また下部ピラー21および上部ピラー36の接続部35の近傍において、下部リヤピラー21の内部に第2バルクヘッド34を設けたので、バルクヘッド34によりリヤピラー14の剛性を更に高めることができる。更に、ガータロアパネル19が開口部12の下縁を補強するリヤエンドパネルスチフナ18に結合されるので、リヤピラー14の剛性を更に高めることができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
例えば、実施の形態ではリヤエンドパネル17の左右両半部がそれぞれ4本の縦稜線17b,17c,17d,17eを備えているが、縦稜線の本数は左右それぞれ2本以上であれば良い。
【符号の説明】
【0043】
11 荷室
16 リヤバンパー
17 リヤエンドパネル
17b 縦稜線
17c 縦稜線
17f 横稜線
17g 横稜線
17h 傾斜面
17i 凹部
18 リヤエンドパネルスチフナ
22 リヤフレーム
24 フロアパネル
26 取付ブラケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のリヤフレームを車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで前記左右のリヤフレームの後端間を接続した車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車のキャブの後壁を構成するキャブバックパネルの面剛性を高めて振動の発生を抑制すべく、キャブバックパネルのベース部の車幅方向中央部を車体後方に湾曲させ、ベース部の車幅方向両側の第1領域に後方に突出して上下方向に延びる複数の第1ビードを形成するとともに、ベース部の車幅方向中央の第2領域に後方に突出して上下方向に延びる複数の第2ビードを形成したものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで5ドア車両では、後部荷室の開口部下方の後壁を構成するリヤエンドパネルの左右両端が左右のリヤフレームの後端に連結されているため、荒い路面を走行する場合や急旋回を行う場合にリヤフレームが撓むと、リヤエンドパネルはリヤフレームから曲げ荷重を受けることになる。
【0005】
リヤエンドパネルは面剛性を高めるために複数の縦稜線を有しているが、リヤフレームから曲げ荷重を受けると縦稜線の下端が折れの起点となって剛性が低下するため、従来は縦稜線の下端にパッチを重ね合わせて補強していた。しかしながら、パッチを用いて補強を行うと部品点数や組立工数が増加するため、パッチを用いることなくリヤエンドパネルの剛性を高めることが望ましい。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、複数の縦稜線を有するリヤエンドパネルの剛性をパッチを用いることなく高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、左右のリヤフレームを車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで前記左右のリヤフレームの後端間を接続した車体後部構造において、前記リヤエンドパネルは、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線により折り曲げられて前後方向に屈曲するとともに、前記2本の縦稜線の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線に挟まれた傾斜面を備え、前記傾斜面は鉛直方向に対して前後方向に傾斜することを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記リヤエンドパネルの上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナを結合したことを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記左右のリヤフレームと前記リヤエンドパネルの下縁とはフロアパネルで接続されて荷室を構成し、前記2本の横稜線のうちの上側の横稜線は下側の横稜線よりも後方に位置することを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記傾斜面は、車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されることを特徴とする車体後部構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記リヤエンドパネルの後面には前記上側の横稜線から上方に延びる凹部が形成され、前記凹部に固定した取付ブラケットにリヤバンパーの下端が固定されることを特徴とする車体後部構造が提案される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、車体側部に沿って前後方向に配置した左右のリヤフレームの後端が、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネルで接続される。リヤエンドパネルは、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線により折り曲げられて前後方向に屈曲することで面剛性が高められる。リヤエンドパネルは2本の縦稜線の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線に挟まれた傾斜面を備え、傾斜面は鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、左右のリヤフレームの撓みに伴ってリヤエンドパネルに曲げ荷重が加わったときに、縦稜線の下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面により防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネルの剛性向上が可能になる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、リヤエンドパネルの上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナを結合したので、リヤエンドパネルの上部をリヤエンドパネルスチフナで補強するとともにリヤエンドパネルの下部を傾斜面で補強することで、リヤエンドパネル全体の剛性を高めることができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、左右のリヤフレームとリヤエンドパネルの下縁とをフロアパネルで接続して構成される荷室は、上下の横稜線のうちの上側の横稜線が下側の横稜線よりも後方に位置するので、リヤエンドパネルの上部を下部よりも後方に張り出して荷室の容積を拡大することができる。
【0015】
また請求項4の構成によれば、リヤエンドパネルの傾斜面は車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されるので、リヤエンドパネルの中央部を下縁および左右の側縁の両方から後方に張り出して荷室の容積を最大限に拡大することができる。
【0016】
また請求項5の構成によれば、リヤエンドパネルの後面に上側の横稜線から上方に延びる凹部を形成し、この凹部に固定した取付ブラケットにリヤバンパーの下端を固定するので、取付ブラケットの支持剛性を高めてリヤバンパーの取付位置の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】5ドア車両を左後方から見た図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図2の4A方向矢視図および図4Aからリヤエンドパネルを除去した図。
【図5】図4Aの分解斜視図。
【図6】図3の6−6線断面図。
【図7】図3の7−7線断面図。
【図8】図3の8−8線断面図。
【図9】図4Bの9部拡大図。
【図10】図2の10方向矢視図。
【図11】図10の11A−11A断面図および11B−11B断面図。
【図12】図10の12方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図12に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、5ドア車両の後面には、車体後部に設けられた荷室11の開口部12を開閉するリヤゲート13が上下開閉自在に設けられる。開口部12の左右両側縁は左右のリヤピラー14,14によって区画され、開口部12の上縁はルーフパネル15の後縁によって区画され.開口部12の下縁はリヤバンパー16によって区画される。5ドア車両の車体構造は車体中心線を挟んで左右対称であるため、以下、代表として左半部の構造を説明する。
【0020】
図2〜図5に示すように、開口部12の下方のリヤバンパー16で覆われる部分には、車体左右方向に長い矩形状のリヤエンドパネル17が配置される。リヤエンドパネル17の上縁の前面には、前壁18a、上壁18bおよび下壁18cを有して車体後方に開口するコ字状断面のリヤエンドパネルスチフナ18が結合されて閉断面の開口下部フレーム30を構成する。リヤエンドパネル17の左端(左右方向外端)には概ね平板状のガータロアパネル19が結合され、ガータロアパネル19の前面には、前壁20a、外壁20b、上部内壁20cおよび下部内壁20dを有して車体後方に開口するコ字状断面のガータスチフナ20が結合される。その際に、ガータロアパネル19の前壁20a、上部内壁20cおよび下部内壁20dは、それぞれリヤエンドパネルスチフナ18の前壁18a、上壁18bおよび下壁18cに接続する。ガータロアパネル19およびガータスチフナ20は、リヤピラー14の下半部である下部リヤピラー21を構成する。
【0021】
車体左側部に沿って前後方向に配置されたボックス断面のリヤフレーム22の後端部の上面に、後方に開放するコ字状断面のリヤフレームガセット23の下端が結合され、リヤフレームガセット23の上端にガータスチフナ20の下端が結合される。またリヤフレーム22の右側面にはリヤエンドパネル17の左端と、荷室11の床面を構成するフロアパネル24の上向きに湾曲する上縁とが結合される。リヤエンドパネル17、リヤフレーム22およびフロアパネル24の接続部に、荷室11の内部側からリヤフレームエンドパッチ31が当てがわれて補強される(図12参照)。またリヤエンドパネルスチフナ18の左右方向中央部とフロアパネル24とが、リヤエンドパネル17の前面に沿って上下方向に延びる帯状のステー25で連結される。
【0022】
図3〜図7に示すように、リヤエンドパネル17の本体部17aは概ね平板状の部材であって、その上縁に沿って後方に張り出す膨出部17jがリヤエンドパネルスチフナ18と協働して閉断面を構成する。リヤエンドパネル17の左半部および右半部は、それぞれ上下方向に延びる4本の縦稜線17b,17c,17d,17eを備えており、これらの縦稜線17b,17c,17d,17eにおいて前後方向に屈曲することで.リヤエンドパネル17は全体として左右方向中央部が後方に突出するように緩く湾曲して面剛性が高められる。
【0023】
左右方向外側から2番目の縦稜線17cの下端から左右方向外側に向かって2本の横稜線17f,17gが間隔を広げながら延びており、その先端側(左右方向外側)は上方に湾曲する。上側の横稜線17fは下側の横稜線17gよりも後方に位置しており、従って2本の縦稜線17c,17dおよび2本の横稜線17f,17gの間にL字状の傾斜面17hが形成される。リヤエンドパネル17は全体として鉛直に配置されるが、傾斜面17hは前面側が斜め上方を向き、後面側が斜め下方を向くように傾斜する。
【0024】
リヤエンドパネル17の左右方向外側から2番目の縦稜線17cの僅かに外側位置、つまり傾斜面17hの左右方向内端の近傍に前方に向かって窪む凹部17iが上方に向かって延びており、この凹部にL字状の取付ブラケット26がボルト27,27で固定される。またリヤエンドパネル17の膨出部17jの後面に断面L字状の取付ブラケット28がボルト29…で固定される。そして下側の取付ブラケット26および上側の取付ブラケット28にリヤバンパー16が固定される。
【0025】
図3〜図5および図9から明らかなように、ガータロアパネル19およびガータスチフナ20を結合した下部リヤピラー21と、リヤエンドパネル17およびリヤエンドパネルスチフナ18を結合した開口下部フレーム30とが接続される接続部32に臨むように、閉断面を構成するガータロアパネル19およびガータスチフナ20の内部に第1バルクヘッド33が配置される。第1バルクヘッド33は左右方向内向きの前部フランジ33aと、左右方向外向きの上部フランジ33bと、左右方向外向きの後部フランジ33cと、左右方向内向きの下部フランジ33dとを備えており、前部フランジ33aはガータスチフナ20の前壁20aに結合され、上部フランジ33bはガータスチフナ20の上部内壁20cに結合され、後部フランジ33cはガータロアパネル19に結合され、下部フランジ33dはガータスチフナ20の下部内壁20dに結合される。
【0026】
図4、図5および図11(B)に示すように、ガータロアパネル19およびガータスチフナ20を結合して閉断面に構成された下部リヤピラー21の上部に、第2バルクヘッド34が配置される。第2バルクヘッド34は上向きの前部フランジ34aと、下向きの内側フランジ34bと、下向きの後部フランジ34cと、下向きの外側フランジ34dとを備えており、前部フランジ34aはガータスチフナ20の前壁20aに結合され、内側フランジ34bはガータスチフナ20の上部内壁20cに結合され、後部フランジ34cはガータロアパネル19に結合され、外側フランジ34dはガータスチフナ20の外壁20bに結合される。
【0027】
図10に示すように、リヤピラー14は、下部リヤピラー21の上部に接続部35を介して接続される上部リヤピラー36を備える。図11(B)に示すように、下部リヤピラー21は平板状のガータロアパネル19の前部に断面コ字状のガータスチフナ20を結合して閉断面に構成されるのに対し、図11(A)に示すように、上部リヤピラー36は、後壁37aおよび外壁37bを有して断面L字状に形成されたリヤピラーアウター37と、前壁38aおよび内壁38bを有して断面L字状に形成されたリヤピラーインナー38とを結合して閉断面に構成される。リヤピラーアウター37の後壁37aは、ガータロアパネル19の上端に接続されたガータミッドパネル39(図3、図5および図11(A)参照)により覆われ、リヤピラーアウター37の外壁37bは、サイドパネル組立体40(図3および図11(A)参照)により覆われる。
【0028】
またガータスチフナ20の上部は基本的に前壁20a、外壁20bおよび上部内壁20cを有してコ字状断面に形成されるが(図11(B)参照)、その上端の接続部35の近傍では外壁20bが上側ほど幅狭になるように切り欠かれており、接続部35の位置では前壁20aおよび上部内壁20cによってL字状断面に形成される(図11(A)参照)。そしてガータスチフナ20の前壁20aおよび上部内壁20cの内側に、リヤピラーインナー38が重ね合わされて結合される(図11(A)参照)。そのとき、ガータスチフナ20の前壁20aからリヤピラーインナー38の前壁38aが左右方向外側に突出してフランジ38cを形成しており、このフランジ38cの後面に、リヤピラーアウター37の外壁37bを左右方向外側に折り曲げて形成したフランジ37cが重ね合わされて結合される。またリヤピラーアウター37の後壁37aの左右方向内端を後方に折り曲げて形成したフランジ37dと、リヤピラーインナー38の内壁38bの後端のフランジ38dとが重ね合わされて結合される。
【0029】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
自動車が路面の段差を乗り超えたり高速で旋回したりして左右のリヤフレーム22,22の後端が撓むと、そこに左右両端部を接続されたリヤエンドパネル17に曲げ荷重が入力する。リヤエンドパネル17は面剛性を高めるために複数の縦稜線17b,17c,17d,17eにおいて前後方向に屈曲しているため、前記曲げ荷重が入力したときに縦稜線17b,17c,17d,17eの下端が折れの基端となって剛性が低下する可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、リヤエンドパネル17は、2本の縦稜線17b,17cの下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線17f,17gに挟まれた傾斜面17hを備え、傾斜面17hは鉛直方向に対して前後方向に傾斜するので、縦稜線17f,17gの下部が折れの起点になって剛性が低下するのを傾斜面17hにより防止することができ、これによりパッチのような補強部材を用いることなくリヤエンドパネル17の剛性向上が可能になる。
【0031】
また傾斜面17hを区画する上下の横稜線17f,17gのうち、上側の横稜線17fは下側の横稜線17gよりも後方に位置し、かつ傾斜面17hは車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されるので、リヤエンドパネル17の下部および左右両側部に対して中央部を後方に張り出して荷室11の容積を最大限に拡大することができる。
【0032】
しかもリヤエンドパネル17の上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナ18を結合して補強したので、リヤエンドパネル17の下部を傾斜面17hで補強したことと相まって、リヤエンドパネル17全体の剛性を高めることができる。更に、リヤエンドパネル17の後面に上側の横稜線17fから上方に延びる凹部17iを形成し、この凹部17iに固定した取付ブラケット26にリヤバンパー16の下端を固定したので、リヤエンドパネル17に対する取付ブラケット26の支持剛性を高めてリヤバンパー16の取付位置の精度を高めることができる。
【0033】
また下部リヤピラー21の閉断面と開口下部フレーム30の閉断面とが接続される接続部32の近傍で、ガータスチフナ20はリヤフレーム22および開口下部フレーム30を接続する下部内壁20dを備えており、接続部32に臨む下部内壁20dに開口下部フレーム30の閉断面を拘束する第1バルクヘッド33を結合するので、図9に矢印で示すように、第1バルクヘッド33を大型化することなくリヤフレーム22からの荷重をガータスチフナ20の下部内壁20dを介して開口下部フレーム30に伝達することができる。しかも、その際に第1バルクヘッド33は下部リヤピラー21の閉断面および開口下部フレーム30の閉断面を共に拘束して荷重伝達効率を高めることができる。
【0034】
またガータスチフナ20の下部内壁20dはリヤフレーム22から開口下部フレーム30に向かって滑らかに車体内側に湾曲するので(図5参照)、下部内壁20dが直角に折れ曲がる場合に比べて、リヤフレーム22から開口下部フレーム30への荷重伝達をスムーズに行うことができる。
【0035】
また第1バルクヘッド33は前部フランジ33a、上部フランジ33b、後部フランジ33cおよび下部フランジ33dによって下部リヤピラー21の閉断面の4面に結合されるので、第1バルクヘッド33を下部リヤピラー21に強固に結合して剛性向上効果を更に高めることができる。このとき、第1バルクヘッド33の下端を車体内向きに折り曲げた下部フランジ33dと、ガータスチフナ20の下部内壁20dの上端を車体内向きに折り曲げた上部フランジ部20eとを結合するので(図9参照)、第1バルクヘッド33の下端をガータスチフナ20の下部内壁20dに接近させて荷重伝達効率を高めることができる。
【0036】
またリヤエンドパネル17は縦稜線17bによって面剛性を高められているが、その縦稜線17bの上方への延長線の近傍に第1バルクヘッド33を配置したので(図3参照)、リヤエンドパネル17の縦稜線17bを第1バルクヘッド33に対する荷重伝達経路に利用することができる。更に、リヤエンドパネル17の上縁に第1バルクヘッド33の後部の形状に倣って後方に膨出する膨出部17j(図5参照)を形成したので、リヤエンドパネル17の上縁とリヤエンドパネルスチフナ18とによって閉断面に構成される開口下部フレーム30の断面積を増加させて剛性を高めることができる。
【0037】
図11(A)に示すように、上部リヤピラー36は、後壁37aおよび外壁37bを有する断面L字状のリヤピラーアウター37と、前壁38aおよび内壁38bを有する断面L字状のリヤピラーインナー38とを結合して閉断面に構成されるが、リヤピラーインナー38の前壁38aから車体外側に延びるフランジ38cと、リヤピラーアウター37の外壁37bから車体外側に延びるフランジ37cとが結合されるので、前記両フランジ38c,37cが車体外側に延びて車体前方に延びることがなく、前方の荷室11の容積を圧迫するのを防止することができる。
【0038】
下部リヤピラー21のガータスチフナ20は基本的に前壁20a、外壁20bおよび上部内壁20cを有してコ字状断面に形成されているが、上部リヤピラー36との接続部35の近傍では外壁20bが斜めに切り欠かれてL字状断面になっているため(図10および図11参照)、リヤピラーインナー38に対してリヤピラーアウター37を左右方向外側から接近させて組付ける際に、リヤピラーアウター37がガータスチフナ20の外壁20bと干渉して組付けの妨げになるのを防止することができる。しかもガータスチフナ20の外壁20bは上方側ほど幅が狭くなるように斜めに切り欠かれるので、ガータスチフナ20の外壁20bを切り欠いたことによる強度の急変を防止することができる。
【0039】
また図11(A)に示すように、リヤピラーアウター37の後壁37aから車体後側に延びるフランジ37dと、リヤピラーインナー38の内壁38bから車体後方に延びるフランジ38dとを結合するので、リヤピラーインナー38に対してリヤピラーアウター37を左右方向外側から接近させるだけで組付けることが可能になって組付け性が向上する。
【0040】
また下部ピラー21および上部ピラー36の接続部35の近傍において、下部リヤピラー21の内部に第2バルクヘッド34を設けたので、バルクヘッド34によりリヤピラー14の剛性を更に高めることができる。更に、ガータロアパネル19が開口部12の下縁を補強するリヤエンドパネルスチフナ18に結合されるので、リヤピラー14の剛性を更に高めることができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】
例えば、実施の形態ではリヤエンドパネル17の左右両半部がそれぞれ4本の縦稜線17b,17c,17d,17eを備えているが、縦稜線の本数は左右それぞれ2本以上であれば良い。
【符号の説明】
【0043】
11 荷室
16 リヤバンパー
17 リヤエンドパネル
17b 縦稜線
17c 縦稜線
17f 横稜線
17g 横稜線
17h 傾斜面
17i 凹部
18 リヤエンドパネルスチフナ
22 リヤフレーム
24 フロアパネル
26 取付ブラケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリヤフレーム(22)を車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネル(17)で前記左右のリヤフレーム(22)の後端間を接続した車体後部構造において、
前記リヤエンドパネル(17)は、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線(17b,17c)により折り曲げられて前後方向に屈曲するとともに、前記2本の縦稜線(17b,17c)の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線(17f,17g)に挟まれた傾斜面(17h)を備え、前記傾斜面(17h)は鉛直方向に対して前後方向に傾斜することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤエンドパネル(17)の上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナ(18)を結合したことを特徴とする、請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記左右のリヤフレーム(22)と前記リヤエンドパネル(17)の下縁とはフロアパネル(24)で接続されて荷室(11)を構成し、前記2本の横稜線(17f,17g)のうちの上側の横稜線(17f)は下側の横稜線(17g)よりも後方に位置することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記傾斜面(17h)は、車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されることを特徴とする、請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記リヤエンドパネル(17)の後面には前記上側の横稜線(17f)から上方に延びる凹部(17i)が形成され、前記凹部(17i)に固定した取付ブラケット(26)にリヤバンパー(16)の下端が固定されることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車体後部構造。
【請求項1】
左右のリヤフレーム(22)を車体側部に沿って前後方向に配置し、略鉛直方向に起立して車体左右方向に延びるリヤエンドパネル(17)で前記左右のリヤフレーム(22)の後端間を接続した車体後部構造において、
前記リヤエンドパネル(17)は、上下方向に延びる少なくとも2本の縦稜線(17b,17c)により折り曲げられて前後方向に屈曲するとともに、前記2本の縦稜線(17b,17c)の下部間を接続するように左右方向に延びる2本の横稜線(17f,17g)に挟まれた傾斜面(17h)を備え、前記傾斜面(17h)は鉛直方向に対して前後方向に傾斜することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤエンドパネル(17)の上縁に沿ってリヤエンドパネルスチフナ(18)を結合したことを特徴とする、請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記左右のリヤフレーム(22)と前記リヤエンドパネル(17)の下縁とはフロアパネル(24)で接続されて荷室(11)を構成し、前記2本の横稜線(17f,17g)のうちの上側の横稜線(17f)は下側の横稜線(17g)よりも後方に位置することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記傾斜面(17h)は、車体外側部分が上向きに延びてL字状に形成されることを特徴とする、請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記リヤエンドパネル(17)の後面には前記上側の横稜線(17f)から上方に延びる凹部(17i)が形成され、前記凹部(17i)に固定した取付ブラケット(26)にリヤバンパー(16)の下端が固定されることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車体後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−30757(P2012−30757A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174195(P2010−174195)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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