説明

車体構造の製造方法及び車体構造

【課題】構成部品、製造コスト、質量の増加を招くことなく、効率的な剛性及び遮音効果が得られる車体構造の製造方法及び車体構造を提供する。
【解決手段】車体の中空閉断面構造内を中空金属球移動規制部材43によって発泡材充填部45と中空金属球充填部46とに区画し、この中空金属球充填部46内を粒状の中空金属球61で充填し、中空閉断面構造内で発泡樹脂材料62を泡膨張させることで中空金属球充填部45内が中空金属球61及び発泡樹脂材62で充填し、発泡材充填部45内を発泡樹脂材62で充填する。これにより中空金属球充填部46が中空金属球61及び発泡樹脂材62によって補剛されて剛性が向上し、発泡材充填部46内が発泡樹脂材62で充填されて制振及び遮音機能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造の製造方法及び車体構造に関し、特に中空閉断面構造内に発泡材を充填して補剛する車体構造の製造方法及び車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の中空閉断面構造を有するフロントピラー、センタピラー、サイドシル、サブフレーム等の車体構造は一般に骨格部材としての機能を果たしているが、更に剛性を高める補剛が要求される。
【0003】
このような骨格部材となる中空閉断面構造を補剛する手法として特許文献1に種々のものが開示されている。例えば、アウタパネルとインナパネルを備えた中空閉断面構造のセンタピラーにドアを支持するドアヒンジを取り付けるにあたり、アウタパネルとインナパネルとの間にプレート状のリンホースを挟み込み、リンホースに補強用プレートを取り付けて補剛し、アウタパネル上にドアヒンジを配置すると共に、ボルトをドアヒンジ、アウタパネル、リンホース、補強プレートの各貫通孔に貫通させ、補強プレートに取り付けたナットに螺合する。
【0004】
また、センタピラーのアウタパネルとインナパネルとで形成した中空閉断面構造内に補強のための硬質樹脂製の補強ブロックを配置し、補強ブロックの周囲の閉空間内に充填材を満して補剛し、アウタパネル上にドアヒンジを配置し、ボルトをドアヒンジ、アウタパネル、補強ブロック、インナパネルを貫通させてナットに螺合する。
【0005】
更に、特許文献2や特許文献3には、フロントピラーのアウタパネルとインナパネルとの間にリンホースメントを設け、アウタパネルとリンホースとの間の閉空間内及びインナパネルとリンホースの間に発泡樹脂材を配置して、フロントピラーの剛性を高めるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−163055号公報
【特許文献2】特開2005−238991号公報
【特許文献3】特開2009−96439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように車体の剛性が要求されるピラー等の中空閉断面構造内にリンホース、硬質ブロックや発泡樹脂材等を配置することで車体構造の剛性向上が得られる。しかし、車体構造内にリンホース、硬質ブロック、発泡樹脂材等を配設することから、構成部品が増加して製造コストが増大すると共に、車体質量の増大が懸念される。
【0008】
一方、中空閉断面構造には更に剛性の向上が要求される部分や、遮音機能が要求される部分がある。
【0009】
かかる点に鑑みなされた本発明目的は、中空閉断面構造の構成部品、製造コスト、質量の増加を招くことなく、効率的な剛性及び遮音効果が得られる車体構造の製造方法及び車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1に記載の車体構造の製造方法の発明は、中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状の中空金属球充填によって補剛する車体構造の製造方法であって、上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面構造内を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、該中空金属球充填部内を上記中空金属球で充填し、上記中空閉断面構造内で発泡樹脂材料を発泡膨張させて上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び発泡材充填部内を発泡樹脂材で充填することを特徴とする。
【0011】
これによると、車体の中空閉断面構造内を中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって、例えば遮音等が要求される部分と剛性が要求される部分に応じて発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、この中空金属球充填部内を剛性を有しかつ軽量な粒状の中空金属球で充填し、中空閉断面構造内で発泡樹脂材料を発泡膨張させることで、中空金属球充填部内が中空金属球及び発泡樹脂材で充填され、発泡材充填部内が発泡樹脂材で充填される。これにより中空金属球充填部が中空金属球及び発泡樹脂材によって補剛されて剛性が向上し、発泡材充填部内が発泡樹脂材で充填されて発泡材充填部における制振及び遮音機能が得られる。従って、中空閉断面構造における補剛部材等の削減や省略が可能になり構造構成部品の増加を招くことなく中空閉断面構造の簡素化及び形状等の制限が緩和されると共に、製造コスト、質量の増加等を招くことなく、車体構造の効率的な剛性及び遮音効果が得られる。
【0012】
上記目的を達成する請求項2に記載の車体構造の製造方法の発明は、中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状の中空金属球の充填によって補剛する車体構造の製造方法であって、上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面構造を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、該中空金属球充填部内を上記中空金属球で充填し、上記発泡材充填部内で発泡樹脂材料を発泡膨張させて上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び発泡充填部を発泡樹脂材で充填することを特徴とする。
【0013】
これによると、車体の中空閉断面構造内を中空金属球移動規制部材によって、例えば制振及び遮音等が要求される部分と剛性が要求される部分に応じて発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、この中空金属球充填部内を剛性を有する軽量な粒状の中空金属球で充填し、発泡材充填部内で発泡樹脂材料を発泡膨張させることで発泡材充填部内が発泡樹脂材で効率的に充填され、中空金属球充填部内が中空金属球及び発泡樹脂材で充填される。これにより中空金属球充填部が中空金属球及び発泡樹脂材によって補剛されて剛性が向上し、発泡材充填部内が発泡樹脂材で充填されて発泡材充填部における制振及び遮音機能が得られる。従って、中空閉断面構造における補剛部材等の削減や省略が可能になり構造構成部品の増加を招くことなく中空閉断面構造の簡素化及び形状等の制限が緩和されると共に、製造コスト、質量の増加を招くことなく、車体構造の効率的な剛性及び遮音効果が得られる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車体構造の製造方法において、上記発泡樹脂材料が加熱発泡型の発泡樹脂材料であって、塗装乾燥工程における熱源により加熱発泡させることを特徴とする。
【0015】
これによると、塗装乾燥工程における熱源により発泡樹脂材料を加熱発泡させることで、発泡樹脂材料の加熱発泡のための専用の加熱手段が不要になる設備及び製造コストの抑制が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造の製造方法において、中空金属球充填部に開口する材料供給口から発泡樹脂材料及び中空金属球を中空断面構造内に供給することを特徴とする。
【0017】
これによると、単一の材料供給口から発泡樹脂材料及び中空金属球を供給することで、車体構造の簡素化が得られる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造の製造方法において、中空金属球充填部に開口する材料供給口から中空金属球を中空金属球充填部内に供給し、発泡材充填部に開口する材料供給口から発泡樹脂材料を発泡材充填部内に供給することを特徴とする。
【0019】
これによると、中空金属球充填部に開口する材料供給口から中空金属球を中空金属球充填部内に供給し、発泡材充填部に開口する材料供給口から発泡樹脂材料を発泡材充填部内に供給することで、効率的に中空金属球を金属球充填部内に供給し、発泡樹脂材料を発泡材充填部に供給することができる。
【0020】
上記目的を達成する請求項6に記載の車体構造の発明は、中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状中空金属球の充填によって補剛する車体構造であって、上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面構造内を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、該中空金属球充填部内を充填する上記中空金属球と、上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び上記発泡材充填部内を充填する発泡樹脂材とを備えたことを特徴とする。
【0021】
これによると、車体の中空閉断面構造内を中空金属球移動規制部材によって、例えば制振及び遮音等が要求される部分と剛性が要求される部分に応じて区画された中空金属球充填部が充填された粒状の中空金属球及び発泡樹脂材によって補剛されて剛性が向上し、発泡材充填部内に発泡樹脂材で充填されて発泡材充填部における制振及び遮音機能が得られる。更に、中空閉断面構造における補剛部材等に削減や省略が可能になり構造構成部品の増加を招くことなく中空閉断面構造の簡素化及び形状等の制限が緩和されると共に、製造コスト、質量の増加を招くことなく車体構造の効率的な剛性及び遮音効果が得られる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車体構造において、上記中空閉断面構造が中空閉断面形状で車体前後方向に延在するサイドシル及び該サイドシルに下端が連結された中空閉断面形状のピラーであって、上記発泡材充填部が、中空状で連結するサイドシルとピラーとの連結部であって、上記中空金属球充填部が、該連結部に連続するピラーであることを特徴とする。
【0023】
これによると、制振及び遮音が要求されるサイドシルとピラーとの連結部の制振及び遮音が確保でき、剛性が要求されピラーが補剛され、ピラーの剛性が確保できる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の車体構造において、車幅方向に延在して両端が車体フレームに取り付けられる後フレームメンバ及び、該後フレームメンバと離間して車体幅方向に延在する中空状で中央部範囲にデファレンシャル装置を支持するリヤデフ取付部を備え側端部範囲に後端が後フレームメンバに連結されて前後方向に延在する縦フレームメンバが結合されて両端が車体フレームに取り付けられる前フレームメンバとを備えたサブフレームを備え、上記中空閉断面構造が上記前フレームメンバであって、上記発泡材充填部が上記前フレームメンバの中央部範囲、金属球充填部が側端部範囲であることを特徴とする。
【0025】
これによると、サブフレームにおける剛性が要求される前フレームメンバの側端部範囲の剛性が向上し、デファレンシャル装置の支持により制振及び遮音が要求される中央部範囲の制振及び遮音効果が期待できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、車体の中空閉断面構造内を中空金属球移動規制部材によって、例えば遮音等が要求される部分と剛性が要求される部分に応じて発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、中空金属球充填部内が中空金属球及び発泡樹脂材で充填され、発泡材充填部内が発泡樹脂材で充填される。これにより中空金属球充填部が中空金属球及び発泡樹脂材によって補剛されて剛性が向上し、発泡材充填部内が発泡樹脂材で充填されて発泡材充填部における制振及び遮音機能が得られる。中空閉断面構造における補剛部材等の削減や省略が可能になり構造構成部品の増加を招くことなく中空閉断面構造の簡素化及び形状等の制限が緩和されると共に、製造コスト、質量の増加を招くことなく、車体構造の効率的な剛性及び遮音効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動車の要部斜視図である。
【図2】図1におけるII部断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のV部拡大図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】作業工程説明図である。
【図8】作業工程説明図である。
【図9】中空金属球の断面図である。
【図10】本発明の第2実施の形態に係るサブフレームの斜視図である。
【図11】サブフレームの一部を破断した斜視図である。
【図12】作業工程説明図である
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による車体構造及び該車体構造の製造方法の実施の形態を図を参照して説明する。
【0029】
(第1実施の形態)
図1は、車体1の要部斜視図であり、図2は図1のII部断面図、図3は図2のIII−III線断面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は図4のV部拡大図、図6は図2のVI−VI線断面図である。
【0030】
車体1の側部にフロントドア開口部2及びリヤドア開口部3が形成される。フロントドア開口部2及びリヤドア開口部3の下部に車体前後方向に沿ってサイドシル10が延在し、フロントドア開口部2とリヤドア開口部3との間に上下方向に延在するセンタピラー20が配置され、フロントドア開口部2の前縁に沿ってフロントピラー30が配置され、センタピラー20の下端がサイドシル10の車体前後方向の中間部に結合し、フロントピラー30の下端がサイドシル10の前端に結合される。
【0031】
左右のサイドシル10は車幅方向に延在するクロスメンバによって連結されると共にフロアパネル5が架け渡され、左右のフロントピラー30間にフロアパネル5の前端に沿って接合されて車幅方向に延在して車室とエンジンルームとを区画するトーボードが架設される。また、フロントドア開口部2及びリヤドア開口部3の上縁に沿ってサイドレール6が延在し、センタピラー20の上部及びフロントピラー30の上部がサイドレール6に接合され、左右のサイドレール6間にルーフパネル7が架設される。
【0032】
これらサイドシル10、センタピラー20、フロントピラー30は中空閉断面構造であって、サイドシル10はサイドシルアウタパネル11とサイドシルインナパネル12によって車体前後方向に延在する中空閉断面状に形成され、センタピラー20はセンタピラーアウタパネル21とセンタピラーインナパネル22によって上下方向に延在する中空閉断面状に形成され、フロントピラー30はフロントピラーアウタパネル31とフロントピラーインナパネル32によって上下方向に延在する中空閉断面状に形成される。
【0033】
サイドシル10とセンタピラー20との連結部20Aは、図3に示すようにサイドシルアウタパネル11の上縁とセンタピラーアウタパネル21の下端が接合し、サイドシルインナパネル12の上縁とセンタピラーインナパネル22の下端が接合して中空状で連続するT字状に形成される。サイドシル10とフロントピラー30との連結部30Aは、サイドシルアウタパネル11の前端とフロントピラーアウタパネル31の下端が接合し、サイドシルインナパネル12の前端とフロントピラーインナパネル32の下端が接合して中空状で連続するL字状に形成される。
【0034】
ここで、サイドシル10とセンタピラー20との連結部20A及びサイドシル10とフロントピラー30との接続部30Aは剛性が要求されると共に、制振及び遮音機能が要求される。一方、サイドシル10に下端が連結し上端がサイドレール6に連結して上下方向に掛け渡された中空閉断面状のセンタピラー20の下部範囲、即ち上下方向中央から下端近傍の範囲20Bは、ドアヒンジが配設されてドア開閉に伴う荷重が繰り返し入力され、かつ衝突時等の荷重入力に対処すべく比較的大きな剛性が要求される。同様にフロントピラー30の上下方向中央部から下端近傍の範囲30Bは、ドアヒンジが配設されてドア開閉に伴う荷重が繰り返し入力され、かつ衝突時の荷重入力に対処すべく比較的大きな剛性が要求される。
【0035】
特に制振及び遮音機能が要求される遮音要求範囲であるサイドシル10とセンタピラー20との連結部20Aにおいて、この連結部20Aを隔てたサイドシル10内を対向するセパレータ41、42によって液密状に区画し、連結部20Aの上端となるセンタピラー20の下端近傍内が中空金属球移動規制部材43によって上下にサイドシル10側とセンタピラー20側とに区画する。これにより、連結部20Aはサイドシルアウタパネル11、サイドシルルインナパネル12、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22、セパレータ41、42、及び中空金属球移動規制部材43によって区画された中空閉断面構造の発泡材充填部45が形成される。ここで、この中空金属球移動規制部材43、44は後述する例えば直径1〜5mの中空金属球61の通過を阻止する一方、未発泡の液状或いはビーズ状、本実施の形態では液状の加熱発泡型の発泡樹脂材料63の通過移動及び流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過が可能な多孔板或いはメッシュ等によって構成する。
【0036】
センタピラー20における比較的要求剛性の大きな中央から下端近傍の範囲20B、即ち剛性要求範囲20Bの上端に対応してセンタピラー20内を上下に区画する中空金属球移動規制部材44を設ける。
【0037】
これにより、剛性要求範囲20Bに、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22、中空金属球移動規制部材43、44によって区画された中空閉断面構造の中空金属球充填部46を形成する。センタピラーインナパネル22における中空金属充填部46の若干上方に粒状の中空金属球61及び未発泡の発泡樹脂材料63を供給する材料供給孔47が開口する。
【0038】
ここで、この中空金属球移動規制部材43、44は後述する例えば直径1〜5mの中空金属球61の通過を阻止する一方、未発泡の液状或いはビーズ状、本実施の形態では液状の加熱発泡型の発泡樹脂材料63の通過移動及び流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過が可能な多孔板或いはメッシュ等によって構成する。
【0039】
同様に、制振及び遮音が要求される遮音要求範囲である連結部30Aに近接するサイドシル10の前端内をセパレータ51によって液密状に区画し、連結部30Aの上方となるフロントピラー30の下端近傍内を中空金属球移動規制部材53によって上下にサイドシル10側とフロントピラー30側とに区画する。これにより連結部30Aにサイドシルアウタパネル11、サイドシルルインナパネル12、フロントピラーアウタパネル31、フロントピラーインナパネル32、セパレータ51、及び中空金属球移動規制部材53によって区画された中空閉断面構造の発泡材充填部55を形成する。この中空金属球移動規制部材53は、中空金属球移動規制部材43と同様に中空金属球61の通過を阻止する一方、未発泡の発泡樹脂材料63の通過移動及び流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過が可能な多孔板或いはメッシュ等によって構成する。
【0040】
フロントピラー30における比較的要求剛性の大きな中央から下端近傍の範囲30B、即ち剛性要求範囲30Bの上端に対応してフロントピラー30内を上下に区画する中空金属球移動規制部材54を設ける。この中空金属球移動規制部材54は、中空金属球移動規制部材43と同様に中空金属球61の通過を阻止する一方、未発泡の発泡樹脂材料63の通過移動及び流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過が可能な多孔板或いはメッシュ等によって構成する。
【0041】
これにより、剛性要求範囲30Bに、フロントピラーアウタパネル31、フロントピラーインナパネル32、中空金属球移動規制部材53、54によって区画された中空閉断面構造の中空金属球充填部56を形成する。フロントピラーインナパネル32における中空金属球充填部56の若干上方に粒状の中空金属球61及び発泡樹脂材料63を供給する材料供給孔57が開口する。
【0042】
そして、センタピラー20に配置される中空金属球移動規制部材44及びフロントピラー30内に配置される中空金属球移動規制部材54が未装着状態で、図7及び図8に図2及び図3に対応する作業説明図を示すように、センタピラー20のセンタピラーインナパネル22に開口する材料供給孔47から未発泡の発泡樹脂材料63をセンタピラー20内に予め設定された量だけ供給する。材料供給孔47から供給された未発泡の発泡樹脂材料63は筒状に形成されたセンタピラーアウタパネル21及びセンタピラーインナパネル22の内面に沿って流下及び滴下して中空金属球移動規制部材43を通過して、センタピラー20の下部及びセパレータ41、42によって仕切られたサイドシル10によって中空T字状に区画形成された発泡材充填部45内に滞留する。
【0043】
この発泡樹脂材料63の供給に続いて、材料供給孔47から中空金属球61をセンタピラー20内に供給し、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22、中空金属球移動規制部材43によって区画形成された中空金属球充填部46内に充填する。この粒状の中空金属球61が充填された中空金属球充填部46の上方を中空金属球移動規制部材44によって閉じる。また、このように単一の材料供給口47から中空金属球61及び発泡樹脂材料63を供給することから、中空金属球61及び発泡樹脂材料63を供給する材料供給口をそれぞれ個別に形成する場合に比べセンタピラーインナパネル22等の形状の簡素化は得られる。
【0044】
なお、粒状の中空金属球61は、中空にして比重を軽減したものであって、図9に断面を示すように、例えば直径dが1〜5mmで、肉厚tが70〜100μmで見かけの密度が0.8〜0.9g/cmの軽量な中空鉄球によって構成される。この中空鉄球は、例えば特開2009−121599号公報に開示されるように、発泡樹脂球の表面に、酸化鉄を含むスラリを噴霧して皮膜を付け、得られた皮膜付発泡樹脂材を焼結することで得られる。
【0045】
同様に、フロントピラー30のフロントピラーインナパネル32に開口する材料供給孔57から未発泡の発泡樹脂材料63をフロントピラー30内に予め設定された量だけ供給する。材料供給孔57から供給された発泡樹脂材料63はフロントピラーアウタパネル31及びフロントピラーインナパネル32によって筒状に形成されたフロントピラー30の内面に沿って流下及び滴下して中空金属球移動規制部材53を通過してフロントピラー30、サイドシル10、セパレータ51、中空金属球移動規制部材53によって区画されたサイドシル10の前部にL字状に区画形成された発泡材充填部55内に滞留する。また、単一の材料供給口57から中空金属球61及び発泡樹脂材料63を供給することから、中空金属球61及び発泡樹脂材料63を供給する材料供給口をそれぞれ別個に形成する場合に比べフロントピラーインナパネル32の形状の簡素化は得られる。
【0046】
この発泡樹脂材料63の供給に続いて、材料供給孔57から中空金属球61をフロントピラー30内に供給し、フロントピラーアウタパネル31、フロントピラーインナパネル32、中空金属球移動規制部材53によって区画形成された中空金属球充填部56内に充填する。この中空金属球61が充填された中空金属球充填部56の上方を中空金属球移動規制部材53によって閉じる。
【0047】
しかる後、組み立てられた車体は塗装され、この塗装乾燥工程における熱源により発泡材充填部45、55に供給された発泡樹脂材料63を加熱発泡させる。このように塗装乾燥工程における熱源によって発泡材充填部45、55に供給された発泡樹脂材料63を加熱発泡させることで、加熱発泡のための専用の加熱手段が不要になる設備及び製造コストの抑制が得られる。
【0048】
この発泡樹脂材料63の発泡膨張により、図2及び図3に示すように、センタピラー20の下部、サイドシルアウタパネル11、サイドシルインナパネル12、対向するセパレータ41、42及び金属球移動規制部材43によってT字状に区画された発泡材充填部45内が発泡した発泡樹脂材62で満たされ、更に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材が金属球移動規制部材43を通過して図3及び図4のV部拡大図を図5に示すように、センタピラーアウタ21、センタピラーインナパネル22及び金属球移動規制部材43、44によって区画された中空金属球充填部46内に充填された各中空金属球61間及び中空金属球61とセンタピラー20の内面との間の隙間に侵入して中空金属球充填部46内が粒状の中空金属球61と発泡樹脂材62によって充填される。
【0049】
この発泡充填に伴う発泡材充填部45及び中空金属球充填部46内に残留する空気及び発泡ガス、或いは余剰の発泡樹脂材62が中空金属球移動規制部材44を介して放出され、発泡材充填部45及び中空金属球充填部46内に残留ガスが滞留することが回避されて、ボイドの発生が抑制されて円滑な発泡充填が確保できる。
【0050】
同様に、サイドシル10の前端に形成された発泡材充填部55内の発泡樹脂材料63の発泡膨張に伴い、フロントピラーアウタパネル31及びフロントピラーインナパネル32によって形成されたフロントピラー30の下部、サイドシルアウタパネル11、サイドシルインナパネル12、セパレータ51及び中空金属球移動規制部材53によって区画された発泡材充填部55内が発泡された発泡樹脂材62で満たされ、更に図2及び図6に示すように中空金属球移動規制部材53を通過してフロントピラーアウタパネル31、フロントピラーインナパネル32及び金属球移動規制部材53、54によって区画された中空金属球充填部56内に充填された各中空金属球61間及び中空金属球61とフロントピラー30の内面との間の隙間に侵入して中空金属球61と発泡樹脂材62によって中空金属球充填部56を充填する。
【0051】
この発泡充填に伴う発泡材充填部55及び中空金属充填部56内の空気及び発泡ガス、或いは余剰の発泡材52が金属球移動規制部材54を介して放出されて、発泡材充填部55及び中空金属充填部56内に残留ガスの滞留がなくなりボイドの発生が抑制されて円滑な発泡充填が確保できる。
【0052】
このようにサイドシル10とセンタピラー20との連結部20Aにおいて、サイドシル10、セパレータ41、42、センタピラー20の下部、及び金属球移動規制部材43によって中空T字状に区画された発泡材充填部45内に充填された発泡樹脂材62を備えることで、サイドシルアウタパネル11、サイドシルインナパネル12、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22で構成されるサイドシル10とセンタピラー20との連結部20Aの断面変形が抑制されて剛性が確保されて潰れにくくなる。これにより、サイドシル10とセンタピラー20との連結部20Aに荷重が作用した際に、入力された荷重を吸収しつつ受け止めることができる。更に、サイドシルアウタパネル11、サイドシルインナパネル12、対向するセパレータ41、42、センタピラー20の下部によって中空T字状に区画された発泡材充填部45内に発泡樹脂材62が充填されて、サイドシル10とセンタピラー20との連結部分20Aにおける制振及び遮音効果が得られる。
【0053】
一方、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22及び金属球移動規制部材43、44によって区画された中空金属球充填部46内に比較的剛性の高い中空金属球61が充填され、かつ各中空金属球61間及び中空金属球61とセンタピラー20の内面との間の隙間に侵入し、中空金属球充填部46内に中空金属球61と発泡樹脂材62が充填されてセンタピラーアウタパネル21とセンタピラーインナパネル22によって中空筒状に形成されたセンタピラー20の断面変形が抑制されて比較的大きな剛性が確保される。また、該部範囲における遮音及び振動抑制が得られる。
【0054】
更に、センタピラー20にドアヒンジや外方から荷重が加わる際には、荷重が入力される部分、例えば図4及び図5に矢印Pで示す荷重がセンタピラーアウタパネル21部分に入力すると、センタピラーアウタパネル21が撓み乃至変形し、この撓み乃至変形に伴ってセンタピラーアウタパネル21の撓み乃至変形発生範囲に接する中空金属球61が隣接する中空金属球61に圧接して摩擦力による荷重吸収及び分散し、個々の中空金属球61が次々に隣接する中空金属球61に圧接して荷重を吸収分散してセンタピラーアウタパネル21及びセンタピラーインナパネル22の広い範囲に荷重分散すると共に、各中空金属球61間及び中空金属球61とセンタピラー20の内面との間の隙間に介在する発泡樹脂材62の変形によって荷重が吸収され、センタピラー20の変形に伴う大きな抗力が確保される。
【0055】
また、センタピラーアウタパネル21、センタピラーインナパネル22及び中空金属球移動規制部材43、44によって区画された中空金属球充填部46内に中空金属球61が充填され、かつ各中空金属球61間及び中空金属球61とセンタピラー20の内面との間の隙間に侵入し、中空金属球充填部46内に中空金属球61と発泡樹脂材62が充填されることから、中空金属充填部46内において中空金属球61の移動が規制され、安定した状態で各中空金属球61が保持される。
【0056】
同様に、サイドシル10とフロントピラー30との接合部30Aにおいて、サイドシル10の前部、セパレータ51、フロントピラー30の下部、及び金属球移動規制部材53によって中空L字状に区画された発泡材充填部55内に充填された発泡樹脂材62を備えることで、サイドシル10とフロントピラー20との接続部30Aの断面変形が抑制されて剛性が確保される。これにより、サイドシル10とフロントピラー30との接合部30Aに荷重が作用した際に、入力された荷重を吸収しつつ受け止めることができる。更に、サイドシル10、フロントピラー30、セパレータ51及び中空金属球移動規制部材53によって中空L字状に区画された発泡材充填部55内に発泡樹脂材62が充填されて、該部範囲における遮音及び振動抑制が得られる。
【0057】
一方、フロントピラー30及び金属球移動規制部材53、54によって区画された中空金属球充填部56内に比較的剛性の高い中空金属球61が充填され、かつ各中空金属球61間及び中空金属球61とフロントピラー30の内面との間の隙間に発泡樹脂材62が侵入して中空金属球充填部56内に中空金属球61と発泡樹脂材62が充填されることで、フロントピラーアウタパネル31とフロントピラーインナパネル32によって中空筒状に形成されたセンタピラー20の断面変形が抑制されて剛性が確保される。また、該部範囲における遮音及び振動抑制が得られる。
【0058】
更に、フロントピラー30にドアヒンジや外方から荷重が加わると、荷重が作用する部分、例えば、フロントピラーアウタパネル31に作用すると、フロントピラーアウタパネル31が撓み乃至変形し、この撓み乃至変形発生範囲に接する中空金属球61が隣接する中空金属球61に圧接して摩擦力による荷重吸収及び分散し、個々の中空金属球61が次々に隣接する中空金属球61に圧接して荷重を吸収分散してフロントピラーアウタパネル31及びフロントピラーインナパネル32の広い範囲に荷重分散すると共に、各中空金属球61間及び中空金属球61とセンタピラー20の内面との間の隙間に介在する発泡樹脂材62の変形によって荷重が吸収され、フロントピラー30の変形に伴う大きな抗力が確保される。
【0059】
従って、制振及び遮音が要求されるサイドシル10とセンタピラー20との連結部20A内をセパレータ41、42及びメッシュ等の金属球移動規制部材43によって区画して連結部20Aに発泡材充填部45及びセンタピラー20の下部範囲に中空金属球充填部46を形成し、発泡材充填部45内に発泡樹脂材料63を供給し、かつ中空金属球充填部46に中空金属球61を充填し、同様に振動及び遮音が要求されるサイドシル10とフロントピラー30との連結部30A内をセパレータ51及びメッシュ等の金属球移動規制部材53によって区画して連結部30Aに発泡材充填部55及びフロントピラー30の下部範囲に中空金属球充填部56を形成し、発泡材充填部55内に発泡樹脂材料63を供給し、かつ中空金属球充填部56に中空金属球61を充填し、塗装乾燥の際の乾燥熱で発泡樹脂材料63を発泡膨張させることで、発泡材充填部45、55に発泡樹脂材62が充填されて、中空金属球充填部46、56に中空金属球61及び発泡樹脂材62が充填されることから、簡単な構成及び作業で効率的にサイドシル10とセンタピラー20との連結部20A及びサイドシル10とフロントピラー30の連結部30Aにおける遮音効果が得られ、かつセンタピラー20及びフロントピラー30の剛性が確保できる。
【0060】
また、サイドシル10、センタピラー20、フロントピラー30及びサイドシル10とセンタピラー20との連結部20A及びサイドシル10とフロントピラー30との連結部30を含むサイドシル10、センタピラー20、フロントピラー30等におけるリンホース等の補剛部材等の削減や省略が可能になり構造構成部品の増加を招くことなくこれらの車体構造の簡素化及び形状等の制限が緩和されると共に、製造コスト、質量の増加を招くことなく、車体構造の効率的な剛性及び遮音効果が得られる。
【0061】
なお、以上説明では、センタピラー20に開口する材料供給孔47から供給された発泡樹脂材料63が中空金属球充填部46を経由して発泡材充填部45に供給される場合を例に説明したが、図2及び図7に47aで示すようにサイドシルインナパネル12に材料供給孔を形成し、中空金属充填部46を経由することなく、発泡材充填部55に発泡樹脂材料63を供給するようにすることもできる。これにより、中空金属球充填部46に材料供給口47から中空金属球61を供給し、発泡材充填部45に材料供給口47aから発泡樹脂材料62を供給することで、効率的に中空金属球61を金属球充填部46内に供給し、発泡樹脂材料63を発泡材充填部45に供給することができる。
【0062】
また、サイドシル10とセンタピラー20の連結部20A及びセンタピラー20、及びサイドシル10とフロントピラー30の連結部30A及びフロントピラー30を対象に説明したが、サイドレール6や車体フレーム等の他の中空断面構造に適用することができる。更に、中空金属球61は、中空にして比重を軽減したものであって球形に限定されるものではなく、立方体等の球形に類似した形状でよく、素材は鉄、炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄系金属や他の金属によって構成することができる。
【0063】
(第2実施の形態)
図10は、車体下面に配設されてデファレンシャル装置及びリヤサスペンションを支持するサブフレーム70の斜視図、図11はサブフレーム70の一部破断説明図である。
【0064】
サブフレーム70は、中央部範囲72が隆起し両側部範囲73、74が水平に延在するように湾曲して車体幅方向に延在する中空状の前フレームメンバ71と、前サフレームメンバ71に対して後方に離間して車体幅方向に延在する後フレームメンバ75と、後フレームメンバ75の前側に結合されて車体幅方向に延在するサポートメンバ76と、車体前後方向に延在して前フレームメンバ71の各側端部範囲73、74とサポートメンバ76の各端部に結合する縦フレームメンバ77とを有する井桁状に一体構成される。前フレームメンバ71の両端に取付部材71aが取り付けられて封止される。同様に後フレームメンバ75の両端に取付部材75aが取り付けられて封止される。
【0065】
前フレームメンバ71の隆起した中央部範囲72の両端下面にリヤデフ取付部78a、78bが取り付けられると共にサポートメンバ76の中央部にリヤデフ支持部78cが設けられる。これらリヤデフ取付部78a、78bに図示しないデファレンシャル装置が取り付けられ、かつリヤデフ支持部78cにデファレンシャル装置の後端が支持される。各縦フレームメンバ77にサスペンション装置を支持するサスペンション支持ブラケット79が取り付けられる。
【0066】
このように構成されたサブフレーム70は、前フレームメンバ71の両端に取り付けられた取付部71a及び後フレームメンバ75の両端に取り付けられた取付部75aが図示しない弾性ブッシュ等を介して車体90の下面の両側に沿って車体前後方向に延在する車体フレーム91に取り付けられる。
【0067】
ここで、前フレームメンバ71の縦フレームメンバ77の結合部77Aにはサスペンション装置から荷重が縦フレームメンバ77を介して繰り返し入力され、かつ前フレームメンバ71の端部には比較的大きな荷重が入力されることから、前フレームメンバ71には端部から結合部77Aに連続する側端部範囲73、74にはサスペンション装置の支持剛性を確保するために大きな剛性が要求される一方、デファレンシャル装置からのリヤデフ取付部78a、78bを介して振動が入力される中央部範囲72には制振及び遮音が要求される。
【0068】
この前フレームメンバ71内を制振及び遮音が要求される遮音要求範囲となる中央部範囲72と、比較的要求剛性の大きな剛性要求範囲である側端部範囲73、74との間を中空金属球移動規制部材81、82によって区画する。これにより、前部フレームメンバ71が中空断面構造の発泡材充填部83と中空金属球充填部84、85が形成される。中空金属球移動規制部材81、82は第1実施の形態における中空金属球移動規制部材43、44、53、54等と同様に、例えば直径1〜5mの中空金属球61の通過を阻止する一方、未発泡の発泡樹脂材料62の通過移動及び流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過が可能な多孔板或いはメッシュ等によって構成する。また、前フレームメンバ71における側端部範囲73、74の下面に前フレームメンバ71内に中空金属球61及び未発泡の発泡樹脂材料63を供給する材料供給孔86、87が開口する。
【0069】
そして、図12に作業説明図を示すように、サブフレーム70を上下反転させた状態で、前フレームメンバ71に開口する材料供給86、87から未発泡の発泡樹脂材料63を前フレームメンバ71内に予め設定された量だけ供給する。材料供給孔86、87から供給された未発泡の発泡樹脂材料63は前フレームメンバ71の内面に沿って流下して中空金属球移動規制部材81、82を通過して、下方に湾曲する中央部範囲の底部、即ち発泡材充填部83内に滞留する。
【0070】
この発泡樹脂材料63の供給に続いて、材料供給孔86及び87からそれぞれ中空金属球61を供給して中空金属球充填部84、85内に中空金属球61を充填する。
【0071】
しかる後、サブフレーム70を電着塗装及び乾燥を行うと共に、この乾燥熱で発泡材充填部83内の発泡樹脂材料63を発泡膨張させる。
【0072】
この発泡樹脂材料63の発泡膨張により中空金属球移動規制部材81、82によって区画された発泡材充填部83内、換言すると前フレームメンバ71の中央部範囲72内が発泡された発泡樹脂材62で満たされ、更に中空金属球移動規制部材81、82を通過して中空金属球充填部84、85内に充填された各中空金属球61間及び中空金属球61と前フレームメンバ71の内面との間の隙間に侵入して中空金属球61と発泡樹脂材62によって中空金属球充填部84、85に充填される。この発泡充填に伴う発泡材充填部83及び中空金属充填部84、85内に残留する空気及び発泡ガス、或いは余剰の発泡材62は材料供給孔86、87から放出されて、発泡材充填部83及び中空金属充填部86、87内に残留ガスが滞留することがなくなりボイドの発生が抑制されて円滑な発泡充填が確保される。
【0073】
このように、前フレームメンバ71において中空金属球移動規制部材81、82によって区画された発泡材充填部83内に充填された発泡樹脂材62を備えることで中央部範囲72の断面変形が抑制されて剛性が確保され、かつ中空金属球移動規制部材81、82によって区画された中空金属球充填部86、87内に比較的剛性の高い中空金属球61が充填され、かつ各中空金属球61間及び中空金属球61と前フレームメンバ71の内面との間の隙間に侵入し、側端部範囲73、74内が中空金属球61と発泡樹脂材62によって充填され、中空筒状に形成された側端部範囲73、74の断面変形が抑制されて剛性が確保されて前フレームメンバ71の剛性が向上し、サブフレーム70全体の剛性が向上する。
【0074】
特に、前フレームメンバ71の車体フレーム91に連結される端部と縦フレーム77が結合される結合部77Aとの間の中空金属球61及び発泡樹脂材62が充填されて側端部範囲73、74の剛性が確保されてサスペンション支持剛性が向上する一方、デファレンシャル装置からのリヤデフ取付部78a、78bを介して振動が入力される中央部範囲72においては該部に発泡樹脂材62が充填されて振動が抑制されると共に遮音される。
【0075】
従って、制振動及び遮音が要求される前フレームメンバ71の中央部範囲72と剛性が要求される側端部範囲73、74との間を金属球移動規制部材81、82により区画して発泡材充填部83と中空金属球充填部84、85を形成し、発泡材充填部83内に発泡樹脂材料63を供給し、かつ中空金属球充填部84、85に中空金属球61を充填し、塗装乾燥の際の乾燥熱で発泡樹脂材料63を発泡膨張させることで、発泡材充填部83に発泡樹脂材62が充填されて、中空金属球充填部84、85に中空金属球61及び発泡樹脂材62が充填されることから、簡単な構成及び作業で中央部範囲72における制振及び遮音効果が得られ、かつ側端部範囲73、74の剛性が確保できる。また、中空金属球61が軽量で安価に得られることと相俟って製造コスト及び質量の増加を回避することができる。
【0076】
なお、以上説明では、前フレームメンバ71の側端部範囲73、74に開口する材料供給孔86か、87ら供給された発泡樹脂材料63を中空金属球充填部84、85を経由して発泡材充填部83に供給する場合を例に説明したが、図12に86aで示すように中央部範囲72に材料供給孔を形成し、中空金属充填部84、85を経由することなく、発泡材充填部83に発泡樹脂材料63を供給するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1 車体
10 サイドシル(中空閉断面構造)
11 サイドシルアウタパネル
12 サイドシルインナパネル
20 センタピラー(中空閉断面構造)
20A サイドシルとセンタピラーとの連結部(遮音要求範囲)
20B 剛性要求範囲
21 センタピラーアウタパネル
22 センタピラーインナパネル
30 フロントピラー(中空閉断面構造)
30A サイドシルとフロントピラーとの連結部(遮音要求範囲)
31 フロントピラーアウタパネル
32 フロントピラーインナパネル
41、42 セパレータ
43 中空金属球移動規制部材
44 中空金属球移動規制部材
45 発泡材充填部
46 中空金属球充填部
47 材料供給孔
51 セパレータ
53 中空金属球移動規制部材
54 中空金属球移動規制部材
55 発泡材填部
56 中空金属球充填部
57 材料供給孔
61 中空金属球
62 発泡樹脂材
63 発泡樹脂材料
70 サブフレーム
71 前フレームメンバ(中空閉断面構造)
72 中央部範囲
73、74 側端部範囲
75 後フレームメンバ
76 サポートメンバ
77 縦フレームメンバ
77A 前フレームメンバと縦フレームメンバの結合部
91 車体フレーム
78a、78b リヤデフ取付部
81、82 中空金属球移動規制部材
83 発泡材充填部
84、85 中空金属球充填部
86、87、86a 材料供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状の中空金属球充填によって補剛する車体構造の製造方法であって、
上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面内を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、
該中空金属球充填部内を上記中空金属球で充填し、
上記中空断面構造内で発泡樹脂材料を発泡膨張させて上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び発泡材充填部内を発泡樹脂材で充填することを特徴とする車体構造の製造方法。
【請求項2】
中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状の中空金属球の充填によって補剛する車体構造の製造方法であって、
上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面内を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、
該中空金属球充填部内を上記中空金属球で充填し、
上記発泡材充填部内で発泡樹脂材料を発泡膨張させて上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び発泡材充填部を発泡樹脂材で充填することを特徴とする車体構造の製造方法。
【請求項3】
上記発泡樹脂材料が加熱発泡型の発泡樹脂材料であって、
塗装乾燥工程における熱源により加熱発泡させることを特徴とする請求項1または2に記載の車体構造の製造方法。
【請求項4】
中空金属球充填部に開口する材料供給口から発泡樹脂材料及び中空金属球を中空断面構造内に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造の製造方法。
【請求項5】
中空金属球充填部に開口する材料供給口から中空金属球を中空金属球充填部内に供給し、発泡材充填部に開口する材料供給口から発泡樹脂材料を発泡材充填部内に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造の製造方法。
【請求項6】
中空閉断面構造内において発泡樹脂材料を発泡膨張させた発泡樹脂材及び粒状中空金属球の充填によって補剛する車体構造であって、
上記中空金属球の通過を阻止すると共に流動性を有する未硬化状態の発泡樹脂材の通過を許容する中空金属球移動規制部材によって上記中空閉断面内を発泡材充填部と中空金属球充填部とに区画し、
該中空金属球充填部内を充填する上記中空金属球と、
上記充填された中空金属球間の隙間を含む中空金属球充填部内及び上記発泡材充填部内を充填する発泡樹脂材とを備えたことを特徴とする車体構造。
【請求項7】
上記中空閉断面構造が
中空閉断面形状で車体前後方向に延在するサイドシル及び該サイドシルに下端が連結された中空閉断面形状のピラーであって、
上記発泡材充填部が、中空状で連結するサイドシルとピラーとの連結部であって、
上記中空金属球充填部が、該連結部に連続するピラーであることを特徴とする請求項6の車体構造。
【請求項8】
車幅方向に延在して両端が車体フレームに取り付けられる後フレームメンバ及び、該後フレームメンバと離間して車体幅方向に延在する中空状で中央部範囲にデファレンシャル装置を支持するリヤデフ取付部を備え側端部範囲に後端が後フレームメンバに連結されて前後方向に延在する縦フレームメンバが結合されて両端が車体フレームに取り付けられる前フレームメンバとを備えたサブフレームを備え、
上記中空断面構造が上記前フレームメンバであって、
上記発泡材充填部が上記前フレームメンバの中央部範囲、金属球充填部が側端部範囲であることを特徴とする請求項6の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−189781(P2011−189781A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55501(P2010−55501)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】