車体構造
【課題】 ピラー部材の上,下部に連設したルーフメンバとフロアメンバとにより、ピラー部材に入力した側面衝突入力の衝撃緩和を図りつつ車室内空間を確保できる車体構造の提供を図る。
【解決手段】 側面衝突によりピラー部材3に衝突荷重が入力すると、該ピラー部材3には衝突荷重が圧縮方向の軸力として上下方向に分散し、上方に作用する軸力は衝突初期では湾曲したピラー部材3の上部を略上方に変位させて反力を立ち上がらせるとともに衝撃を緩和し、衝突中盤以降では前記軸力がルーフメンバ6,フロアメンバ7に入力するが、湾曲して分離する第1,第2ルーフメンバ6A,6Bの中間部が連結部材12で連結されていることにより、ルーフメンバ6の剛性が高く、ルーフ部Rfの車室内側への変形を抑制するとともに、ルーフメンバ6,フロアメンバ7の変形により衝突エネルギー吸収量を増大できる。
【解決手段】 側面衝突によりピラー部材3に衝突荷重が入力すると、該ピラー部材3には衝突荷重が圧縮方向の軸力として上下方向に分散し、上方に作用する軸力は衝突初期では湾曲したピラー部材3の上部を略上方に変位させて反力を立ち上がらせるとともに衝撃を緩和し、衝突中盤以降では前記軸力がルーフメンバ6,フロアメンバ7に入力するが、湾曲して分離する第1,第2ルーフメンバ6A,6Bの中間部が連結部材12で連結されていることにより、ルーフメンバ6の剛性が高く、ルーフ部Rfの車室内側への変形を抑制するとともに、ルーフメンバ6,フロアメンバ7の変形により衝突エネルギー吸収量を増大できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突荷重を車体側面のピラー部材で受けるようにした車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の側面衝突に対応させた車体構造としては、センタピラー等のピラー部材全周を閉断面構造化するとともに、そのピラー部材の下方に積極的に強度不連続部を設け、側面衝突時において同部位で的確に内側に折れ曲がるように変形させることにより、ピラー部材の中央部分と上方部分での局部的な折れ曲がりを防止し、ピラー部材を略均一に内側に変位させるとともに、その内側への変形量を比較的少なくするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−72740号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の車体構造では、衝突初期にピラー部材下部を車室内方に折り曲げてしまうが故に、車体の強度はその折れ曲がり強度によって支配されてしまい、大幅な強度向上を期待することが困難になってしまう。
【0004】
そこで、本発明はピラー部材の上,下部に車幅方向に連設したルーフメンバとフロアメンバとにより、ピラー部材に入力した側面衝突入力の衝撃緩和を図りつつ車室内空間を確保できる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、
前記ルーフメンバを、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバで構成し、これら第1,第2ルーフメンバの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材で互いに連結したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面衝突によりピラー部材に衝突荷重が入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのピラー部材には衝突荷重が圧縮方向の軸力として上下方向に分散し、上方に作用する軸力は衝突初期では湾曲したピラー部材の上部を略上方に変位させて反力を立ち上がらせるとともに衝撃を緩和し、衝突中盤以降では前記軸力がルーフメンバ,フロアメンバに入力するが、このルーフメンバが互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバによって二重構造として形成され、かつ、それらの車幅方向中間部が連結部材で連結されることにより、このルーフメンバの剛性が増大してルーフ部が車室内方に進入するのを抑制して車室内空間を確保するとともに、該ルーフメンバおよびフロアメンバの変形によって衝突エネルギー吸収量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
図1〜図4は本発明にかかる車体構造の第1実施形態を示し、図1は車体の骨格構造の斜視図、図2は車体片側の骨格部材の分解斜視図、図3は側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示す図1中A部の断面説明図、図4は横軸の変位と縦軸の荷重によって示す反力特性を破線で示す従来と比較したグラフである。
【0009】
この第1実施形態の車体構造は、図1に示すようにルーフ部Rfの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレール1と、フロア部Frの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシル2と、上下に対向する前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2とを連結するピラー部材としてのセンタピラー3と、を備えており、このセンタピラー3は全体的に車体外方に湾曲形成してあり、その最大曲率部3aがセンタピラー3の下部、つまり、側面衝突される相手車両のバンパー位置に略対応する部位に形成されている。
【0010】
前記ルーフサイドレール1、前記サイドシル2および前記センタピラー3は、それぞれ断面矩形状の中空部材で形成され、ルーフサイドレール1はセンターピラー3よりも車体前方を前方ルーフサイドレール1A、車体後方を後方ルーフサイドレール1Bで形成するとともに、サイドシル2はセンタピラー3よりも車体前方を前方サイドシル2A、車体後方を後方サイドシル2Bで形成してある。
【0011】
また、前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2との間には、センタピラー3の車体前方に所定間隔をおいてフロントピラー4が配置されるとともに、センタピラー3の車体後方に所定間隔をおいてリアピラー5が配置される。
【0012】
前記左,右のルーフサイドレール1には前記センタピラー5の連結部分でルーフメンバ6が連結されるとともに、前記左,右のサイドシル2には前記センターピラー5の連結部分でフロアメンバ7が連結される。
【0013】
また、前記左,右のルーフサイドレール1の車体前端部間にはフロントルーフボウ8が連結されるとともに、車体後端部間にはリアルーフボウ9が連結され、かつ、前記左,右のサイドシル2の車体前端部間にはフロントクロスメンバ10が連結されるとともに、車体後端部間にはリアクロスメンバ11が連結される。
【0014】
ここで本発明は、前記ルーフメンバ6を、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバとしての上方ルーフメンバ6Aおよび第2ルーフメンバとしての下方ルーフメンバ6Bで構成し、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材12で互いに連結してある。
【0015】
前記上方ルーフメンバ6Aは車幅方向中央部が最大曲率部となるように全体的に車体上方に湾曲して車体上方に配置され、かつ、前記下方ルーフメンバ6Bは車幅方向中央部が最大曲率部となるように全体的に車体下方に湾曲して車体下方に配置される。
【0016】
上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bはそれぞれ断面矩形状の中空部材で形成され、上方ルーフメンバ6Aは、図2に示すようにその車幅方向端部に形成した縮幅部6Awをセンタピラー3の上端部内に挿入して溶接し、その上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部下面に下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部に設けたフランジ6Bfをスポット溶接して、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの端部どうしを結合してある。
【0017】
上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bは、それぞれの車幅方向中央部が最大曲率部となっており、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bは、車幅方向両端部が互いに結合された状態で中央側間が中央部に向かって徐々に拡開し、それぞれの最大曲率部またはその近傍を上記ルーフメンバ連結部材12によって連結してある。
【0018】
即ち、ルーフメンバ連結部材12は断面矩形状の中空部材で形成して、これを車体上下方向に立てた状態で上方,下方ルーフメンバ6A,6B間に挟み込み、その連結部材12の上下両端部に設けたフランジ12fを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bにスポット溶接してある。
【0019】
また、このようにセンタピラー3に上方,下方ルーフメンバ6A,6Bを結合した状態で、前方ルーフサイドレール1Aの車体後方端部に設けたフランジ1Afを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの結合部前面にスポット溶接するとともに、後方ルーフサイドレール1Bの車体前方端部に設けたフランジ1Bfを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの結合部後面にスポット溶接してある。
【0020】
一方、上記フロアメンバ7の車幅方向端部に脆弱部としての凹設部7aを形成し、この凹設部7aを中間にしてフロアメンバ7上面に、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてある。
【0021】
フロアメンバ7は、図2に示すように断面矩形状の中空部材で形成され、その車幅方向端部に形成した縮幅部7wをセンタピラー3の下端部に差し込んで溶接してあり、このセンタピラー3の下端部の前面に前方サイドシル2Aの車体後方端部に設けたフランジ2Afをスポット溶接するとともに、センタピラー3の下端部の後面に後方サイドシル2Bの車体前方部に設けたフランジ2Bfをスポット溶接してある。
【0022】
尚、このとき前記フランジ2Afおよび2Bfは、前方,後方サイドシル2A,2Bの各端部の車幅方向内方側の略半分に設けてあり、前方,後方サイドシル2A,2B端部の車幅方向内方半部をセンタピラー3の前,後面に結合し、前方,後方サイドシル2A,2B端部の車幅方向外方半部に設けたフランジ2Af′,2Bf′はセンタピラー3の外側に配置して互いに結合してある。
【0023】
また、前記凹設部7aは図2に示すようにフロアメンバ7を部分的に上方からプレス等して凹設して形成してあり、一方、前記荷重受け部材13はその凹設部7aを挟んで車幅方向に対峙する一対の内側部材13Aと外側部材13Bとで構成してある。
【0024】
内側部材13Aは、車幅方向外側に荷重受け面13Aaを設けてフランジ13Afを介してフロアメンバ7にスポット溶接する一方、外側部材13Bは、車幅方向内側に荷重受け面13Baを設けてフランジ13Bfを介してフロアメンバ7およびセンタピラー3に跨ってスポット溶接し、それぞれの荷重受け面13Aa,13Baを所定間隔をおいて対向配置してある。
【0025】
以上の構成によりこの第1実施形態の車体構造によれば、図3(a)に示すように自動車などの衝突物が側面衝突してセンタピラー3の最大曲率部3aに衝突荷重Fが入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのセンタピラー3は伸展方向の変形力を受けて初期反力が立ち上がり、最大曲率部3aを中心に圧縮方向の軸力f1,f2として衝突荷重Fを上下方向に分散する。
【0026】
図3(a)に示す衝突初期では、上方に作用する軸力f1は湾曲したセンタピラー3の上部3Tを車幅方向内方に向かう斜め上方K1に変位させる一方、下方に作用する軸力f2はセンタピラー3の下部3Bを車幅方向内方に向かう斜め下方K2に変位させるとともに、フロアメンバ7の凹設部7aを下方に変形させて、図4中P1領域に示すように衝突直後の衝撃を緩和する。
【0027】
そして、衝突状態が進行して図3(b)に示す衝突中盤では、前記軸力f1がルーフメンバ6に入力するが、このルーフメンバ6が互いに離れる方向に湾曲して分離する上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bによって二重構造として形成してあるので、このルーフメンバ6の剛性が増大してルーフ部Rfが車室内方に進入するのを抑制し、車室内空間を確保することができる。
【0028】
つまり、本実施形態では上記ルーフメンバ6を構成する上方ルーフメンバ6Aは全体的に車体上方に湾曲し、かつ、下方ルーフメンバ6Bは全体的に車体下方に湾曲しているので、前記軸力f1によるセンタピラー3の上部3Tの斜め上方K1への変位により、下方ルーフメンバ6Bに作用する圧縮力f3により下方突出方向K3への緊張状態が発生して、迅速な反力の立ち上がりを促進するとともに、センタピラー3の軸力f1が増大して上方ルーフメンバ6Aの圧縮力f4により、上方突出方向K4への変形と下方ルーフメンバ6Bの下方突出方向K3への変形とが増長することで反力が増加する。
【0029】
また、これと同時にセンタピラー3の下部3Bの斜め下方K2への変形が進むと、フロアメンバ7の凹設部7aが図3(b)に示すように下方への変形が増大し、この変形が所定量に達すると荷重受け部材13の内側部材13Aおよび外側部材13Bのそれぞれの荷重受け面13Aa,13Baは互いに当接して反力が増大し、図4中P2領域に示す特性となる。
【0030】
更に、衝突状態が進行することにより図3(c)に示すように、センタピラー3の上部3Tの変形が底付くと、ルーフメンバ6の上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの相対位置が上昇し、上方ルーフメンバ6Aへの荷重伝達が増加する。
【0031】
このため、上方ルーフメンバ6Aは上方突出方向K4への変形が増長し、ルーフメンバ連結部材12で連結されている下方ルーフメンバ6Bもその上方への変形に追随する。
【0032】
一方、センタピラー3の下部3Bの変形およびフロアメンバ7の凹設部7aの変形が進むことにより、荷重受け部材の内側部材13Aと外側部材13Bとの反力も増加してフロアメンバ7の変形が抑制され、これに伴って図4中P3領域に示すようにセンタピラー3の上部3Tの変形も抑制される。
【0033】
従って、本実施形態では図4に示すように、破線に示す従来の特性に比較して、車室内空間の維持および衝突初期の迅速な反力の立ち上がり、および安定した反力維持といった特性を持つ車体構造を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態では上方ルーフメンバ6Aと下方ルーフメンバ6Bとは、車幅方向両端部が結合された状態で中央側間が中央部に向かって徐々に拡開し、それぞれの最大曲率部またはその近傍を上記ルーフメンバ連結部材12によって連結したので、局部的な曲げ変形を抑制するとともに、上方,下方ルーフメンバ6A,6Bそれぞれへの荷重分散効果にも寄与することができる。
【0035】
更に、フロアメンバ7の車幅方向端部に凹設部7aを形成し、この凹設部7aを中間にしてフロアメンバ7上面には、幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けたので、センタピラー3の下部3Bおよびフロアメンバ7において車幅方向内方への変形後に荷重受け部材13が干渉して荷重伝達機能および変形拘束機能を発揮する。
【0036】
従って、ある程度変形が進行すると、その変形を拘束するとともに荷重伝達効率が増加するので、強度を高めて車室内空間が阻害されるのを抑制しつつ反力を維持することができる。
【0037】
図5,図6は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図5は車体の骨格構造の斜視図、図6は骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【0038】
この第2実施形態の車体構造は、図5に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、ルーフメンバ6を全体的に車体上方に湾曲する上方ルーフメンバ6Aと、全体的に車体下方に湾曲する下方ルーフメンバ6Bとで構成してあるが、特に本実施形態では下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部をセンタピラー3に連結し、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部を下方ルーフメンバ6Bにルーフサイドレール1よりも車幅方向内方で連結してある。
【0039】
つまり、図6に示すように下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部をセンタピラー3の上部3Tの配置方向に沿って斜め下方に折曲し、その先端部に縮幅部6Bwを形成して、この縮幅部6Bwをセンタピラー3の上端部に差し込んで溶接するとともに、前記下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部に、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部をフランジ6Afを介してスポット溶接してある。
【0040】
このとき、下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部の車体前後面には、前記上方ルーフメンバ6Aを連結した箇所よりも車幅方向外方部分に、前方ルーフサイドレール1Aおよび後方ルーフサイドレール1Bをそれぞれのフランジ1Af,1Bfを介して連結してある。
【0041】
従って、この第2実施形態の車体構造によれば、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部を下方ルーフメンバ6Bのルーフサイドレール1よりも車幅方向内方で連結してあるので、下方ルーフメンバ6Bのルーフサイドレール1よりも車幅方向外方部分が上方ルーフメンバ6Aによって拘束されることが無いため、衝突直後にセンタピラー3の上部3Tからルーフメンバ6に軸力f1が伝達された際に、衝撃吸収効果をより高めることができるとともに、反力の立ち上がりを迅速化することができる。
【0042】
図7,図8は本発明の第3実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図7は車体の骨格構造の斜視図、図8は図7中B部の拡大断面図である。
【0043】
この第3実施形態の車体構造は、図7に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、ルーフメンバ6を全体的に車体上方に湾曲する上方ルーフメンバ6Aと、全体的に車体下方に湾曲する下方ルーフメンバ6Bとで構成してあるが、特に本実施形態では上方ルーフメンバ6Aの強度を下方ルーフメンバ6Bよりも大きくしてある。
【0044】
即ち、本実施形態では図8に示すように矩形状の閉断面構造とした上方ルーフメンバ6Aの肉厚T1を、同様に矩形状の閉断面構造とした下方ルーフメンバ6Bの肉厚T2よりも厚く(T1>T2)形成することにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してある。
【0045】
従って、この第3実施形態の車体構造によれば、上方ルーフメンバ6Aの強度を下方ルーフメンバ6Bよりも大きくしたので、センタピラー3から入力される軸力f1による変形促進を主に下方ルーフメンバ6Bで受け持つとともに、その後の変形拘束および反力維持を主に上方ルーフメンバ6Aで受け持つことにより、衝突時の衝撃緩和を図りつつ、車室内への変形抑制や反力向上をより増大することができる。
【0046】
図9は第3実施形態の第1変形例を示し、矩形状の閉断面構造とした上方ルーフメンバ6Aを厚肉形成するとともに、高さL1を下方ルーフメンバ6Bの高さL2よりも高く(L1>L2)形成することにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してあり、同様の作用効果を奏する。
【0047】
図10は第3実施形態の第2変形例を示し、上方,下方ルーフメンバ6A,6Bはそれぞれ矩形状の閉断面構造に形成されるが、上方ルーフメンバ6Aの内部の前後(図中左右方向)略中央部に仕切壁6Apを設けることにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してあり、同様の作用効果を奏する。
【0048】
図11,図12は本発明の第4実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図11は車体の骨格構造の斜視図、図12はフロアメンバの片側端部を示す斜視図である。
【0049】
この第4実施形態の車体構造は、図11に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、フロアメンバ7の車幅方向端部に脆弱部を形成し、この脆弱部を中間にしてフロアメンバ7上面には、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、脆弱部の所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてある。
【0050】
そして、本実施形態では図12に示すように、脆弱部をフロアメンバ7の車体前後方向両側面に形成した一対の凹設部7bで形成しており、これら凹設部7bは、ルーフサイドレール1よりも車幅方向内方の位置に形成してある。
【0051】
従って、この第4実施形態の車体構造によれば、フロアメンバ7に形成した凹設部7bをルーフサイドレール1よりも車幅方向内方に形成したので、衝突荷重Fの入力位置からの変形許容範囲が長く成るセンタピラー3の上部3Tを下部3Bよりも先行して変位させ、ルーフメンバ6の変形による反力が向上するようなタイミングでセンタピラー3の下部3Bに入力が増加し、当該部分が略車幅方向内方に変位する。
【0052】
従って、相対的に上部3Tよりも強度が高くなる下部3Bへの入力を増加させて、構造上の強度バランスに適応した荷重配分となるようにコントロールでき、効率的な部材構成が成立するとともに、局部的な変形を抑制して反力を高く維持する効果がある。
【0053】
図13,図14は第4実施形態の第1変形例を示し、図13に示すように断面矩形状の中空部材で形成したフロアメンバ7の外形状を一様に形成する一方、その肉厚を図14に示すように薄肉化することにより脆弱部としての肉厚変化部7cを形成してある。
【0054】
即ち、この第1変形例では図14(a)に示すように、図13中C部から断面にした肉厚変化部7cの上下側の肉厚T3を、図14(b)に示すように、図13中D部から断面にした一般部分の肉厚T4よりも薄く(T3<T4)形成してあり、センタピラー3の下部3Bから軸力f2が入力された場合に肉厚変化部7cから変形するようになっており、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
図15は第4実施形態の第2変形例を示し、図15(a)に示すように、前記図13中C部から断面にした肉厚変化部7cの車体前後側の肉厚T5を、図15(b)に示すように、図13中D部から断面にした一般部分の肉厚T6よりも薄く(T5<T6)形成して、センタピラー3の下部3Bから軸力f2が入力された場合に肉厚変化部7cから変形するようになっており、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
図16,図17は本発明の第5実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図16は車体の骨格構造の斜視図、図17は荷重受け部材の拡大斜視図である。
【0057】
この第5実施形態の車体構造は、図16に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、フロアメンバ7に形成した凹設部7aを中間にしたフロアメンバ7上面には、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてあり、特に本実施形態では荷重受け部材13に、互いに干渉した後に凹設部7aの変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大する伝達荷重増大手段14を設けてある。
【0058】
即ち、本実施形態の荷重受け部材13は第1実施形態と同様に一対の内側部材13Aと外側部材13Bとで構成してあり、内側部材13Aの車幅方向外側に階段状の荷重受け面13Abを形成するとともに、外側部材13Bの車幅方向内側に前記荷重受け面13Abの形状に略沿った荷重受け面13Bbを形成し、これら荷重受け面13Ab,13Bbによって上記伝達荷重増大手段14を構成してある。
【0059】
従って、この第5実施形態の車体構造によれば、フロアメンバ7に形成した凹設部7aを挟んで設けた荷重受け部材13に伝達荷重増大手段14を設けて、互いに干渉した後に凹設部7aの変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大するようにしたので、凹設部7aの変形許容範囲、つまり内側部材13Aと外側部材13Bとが干渉するまでの範囲では凹設部7aの変形によってエネルギー吸収量を増大する一方、センタピラー3の上部3Tおよびルーフメンバ6は変形による可動範囲が大きいので徐々に反力を増大させることで、それらの部分の変形を十分に行わせた後に、センタピラー3の下部3Bの耐力を向上させることができる。
【0060】
図18は第5実施形態の変形例を示し、内側部材13Aの車幅方向外側に車幅方向内側から外側に向かって下方傾斜する傾斜面13Acを形成するとともに、外側部材13Bの車幅方向内側に前記傾斜面13Acに略沿った傾斜面13Bcを形成し、これら傾斜面13Ac,13Bcによって伝達荷重増大手段14を構成してあり、この場合にあっても第5実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
図19,図20は本発明の第6実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図19は車体の骨格構造の斜視図、図20は骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【0062】
この第6実施形態の車体構造は、図19に示すように前記各実施形態と同様の構成となり、センタピラー3の上部3Tにルーフメンバ6およびルーフサイドレール1が連結されるが、本実施形態では図20にも示すように、ルーフメンバ6を構成する第1ルーフメンバを、全体的に車体前方に湾曲して車体前方に配置される前方ルーフメンバ6Cで構成し、かつ、第2ルーフメンバを、全体的に車体後方に湾曲して車体後方に配置される後方ルーフメンバ6Dで構成してある。
【0063】
そして、前記前方,後方ルーフメンバ6C,6Dの車幅方向端部を二股状連結部材15を介してセンタピラー3の上部3Tに結合してあり、かつ、前方ルーフメンバ6Cの端部前面に前方ルーフサイドレール1Aを結合するとともに、後方ルーフメンバ6Dの端部後面に後方ルーフサイドレール1Bを結合してある。
【0064】
このとき、センタピラー3は、その上部3Tをセンタピラー3の中心線Cよりも車体前方に傾かせて形成してある。
【0065】
また、前方,後方ルーフメンバ6C,6Dは、これらの車幅方向中央部の最大曲率部またはその近傍を、車体前後方向に配置したルーフメンバ連結部材12Aによって連結してある。
【0066】
従って、この第6実施形態の車体構造によれば、衝突荷重Fがセンタピラー3に入力されると、センタピラー3の上方に作用する軸力f1が前方に傾斜した上部3Tから主に前方ルーフメンバ6Cに入力されて、この前方ルーフメンバ6Cをその湾曲方向となる車体前方に大きく変形する。
【0067】
すると、前方ルーフメンバ6Cの前方変位が、ルーフメンバ連結部材12Aを介して連結した後方ルーフメンバ6Dに伝達され、この後方ルーフメンバ6Dはその湾曲方向による本来の変形し易い方向(車体後方)とは逆方向に力が働くため、大きな耐力を発生させることができる。
【0068】
そして、変形が進行することにより、センタピラー3から前方,後方ルーフメンバ6C,6Dに軸力f1が伝達されるようになり、後方ルーフメンバ6Dに後方に曲がろうとする入力が増加することにより、ルーフメンバ連結部材12Aによって後方ルーフメンバ6Dを車体後方に引っ張る力が発生して耐力を更に高めることができる。
【0069】
ところで、本発明の車体構造は前記第1〜第6実施形態およびそれらの各変形例に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車体片側の骨格部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示す図1中A部の断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態における横軸の変位と縦軸の荷重によって示す反力特性を破線で示す従来と比較したグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態における骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図8】図7中B部の拡大断面図である。
【図9】第3実施形態の第1変形例を示す図8に対応した拡大断面図である。
【図10】第3実施形態の第2変形例を示す図8に対応した拡大断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるフロアメンバの片側端部を示す斜視図である。
【図13】第4実施形態の第1変形例を示すフロアメンバの端部斜視図である。
【図14】図13中C部の断面を(a)にD部の断面を(b)に示す拡大断面図である。
【図15】第4実施形態の第2変形例を示す図13中C部の断面を(a)にD部の断面を(b)に示す拡大断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図17】本発明の第5実施形態における荷重受け部材の拡大斜視図である。
【図18】第5実施形態の変形例を示す図17に対応した拡大斜視図である。
【図19】本発明の第6実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図20】本発明の第6実施形態における骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ルーフサイドレール
2 サイドシル
3 センタピラー(ピラー部材)
6 ルーフメンバ
6A 上方ルーフメンバ(第1ルーフメンバ)
6B 下方ルーフメンバ(第2ルーフメンバ)
6C 前方ルーフメンバ(第1ルーフメンバ)
6D 後方ルーフメンバ(第2ルーフメンバ)
7 フロアメンバ
7a,7b 凹設部(脆弱部)
12,12A ルーフメンバ連結部材
13 荷重受け部材
14 伝達荷重増大手段
Rf ルーフ部
Fr フロア部
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突荷重を車体側面のピラー部材で受けるようにした車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の側面衝突に対応させた車体構造としては、センタピラー等のピラー部材全周を閉断面構造化するとともに、そのピラー部材の下方に積極的に強度不連続部を設け、側面衝突時において同部位で的確に内側に折れ曲がるように変形させることにより、ピラー部材の中央部分と上方部分での局部的な折れ曲がりを防止し、ピラー部材を略均一に内側に変位させるとともに、その内側への変形量を比較的少なくするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−72740号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の車体構造では、衝突初期にピラー部材下部を車室内方に折り曲げてしまうが故に、車体の強度はその折れ曲がり強度によって支配されてしまい、大幅な強度向上を期待することが困難になってしまう。
【0004】
そこで、本発明はピラー部材の上,下部に車幅方向に連設したルーフメンバとフロアメンバとにより、ピラー部材に入力した側面衝突入力の衝撃緩和を図りつつ車室内空間を確保できる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、
前記ルーフメンバを、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバで構成し、これら第1,第2ルーフメンバの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材で互いに連結したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面衝突によりピラー部材に衝突荷重が入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのピラー部材には衝突荷重が圧縮方向の軸力として上下方向に分散し、上方に作用する軸力は衝突初期では湾曲したピラー部材の上部を略上方に変位させて反力を立ち上がらせるとともに衝撃を緩和し、衝突中盤以降では前記軸力がルーフメンバ,フロアメンバに入力するが、このルーフメンバが互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバによって二重構造として形成され、かつ、それらの車幅方向中間部が連結部材で連結されることにより、このルーフメンバの剛性が増大してルーフ部が車室内方に進入するのを抑制して車室内空間を確保するとともに、該ルーフメンバおよびフロアメンバの変形によって衝突エネルギー吸収量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
図1〜図4は本発明にかかる車体構造の第1実施形態を示し、図1は車体の骨格構造の斜視図、図2は車体片側の骨格部材の分解斜視図、図3は側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示す図1中A部の断面説明図、図4は横軸の変位と縦軸の荷重によって示す反力特性を破線で示す従来と比較したグラフである。
【0009】
この第1実施形態の車体構造は、図1に示すようにルーフ部Rfの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレール1と、フロア部Frの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシル2と、上下に対向する前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2とを連結するピラー部材としてのセンタピラー3と、を備えており、このセンタピラー3は全体的に車体外方に湾曲形成してあり、その最大曲率部3aがセンタピラー3の下部、つまり、側面衝突される相手車両のバンパー位置に略対応する部位に形成されている。
【0010】
前記ルーフサイドレール1、前記サイドシル2および前記センタピラー3は、それぞれ断面矩形状の中空部材で形成され、ルーフサイドレール1はセンターピラー3よりも車体前方を前方ルーフサイドレール1A、車体後方を後方ルーフサイドレール1Bで形成するとともに、サイドシル2はセンタピラー3よりも車体前方を前方サイドシル2A、車体後方を後方サイドシル2Bで形成してある。
【0011】
また、前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2との間には、センタピラー3の車体前方に所定間隔をおいてフロントピラー4が配置されるとともに、センタピラー3の車体後方に所定間隔をおいてリアピラー5が配置される。
【0012】
前記左,右のルーフサイドレール1には前記センタピラー5の連結部分でルーフメンバ6が連結されるとともに、前記左,右のサイドシル2には前記センターピラー5の連結部分でフロアメンバ7が連結される。
【0013】
また、前記左,右のルーフサイドレール1の車体前端部間にはフロントルーフボウ8が連結されるとともに、車体後端部間にはリアルーフボウ9が連結され、かつ、前記左,右のサイドシル2の車体前端部間にはフロントクロスメンバ10が連結されるとともに、車体後端部間にはリアクロスメンバ11が連結される。
【0014】
ここで本発明は、前記ルーフメンバ6を、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバとしての上方ルーフメンバ6Aおよび第2ルーフメンバとしての下方ルーフメンバ6Bで構成し、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材12で互いに連結してある。
【0015】
前記上方ルーフメンバ6Aは車幅方向中央部が最大曲率部となるように全体的に車体上方に湾曲して車体上方に配置され、かつ、前記下方ルーフメンバ6Bは車幅方向中央部が最大曲率部となるように全体的に車体下方に湾曲して車体下方に配置される。
【0016】
上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bはそれぞれ断面矩形状の中空部材で形成され、上方ルーフメンバ6Aは、図2に示すようにその車幅方向端部に形成した縮幅部6Awをセンタピラー3の上端部内に挿入して溶接し、その上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部下面に下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部に設けたフランジ6Bfをスポット溶接して、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの端部どうしを結合してある。
【0017】
上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bは、それぞれの車幅方向中央部が最大曲率部となっており、これら上方,下方ルーフメンバ6A,6Bは、車幅方向両端部が互いに結合された状態で中央側間が中央部に向かって徐々に拡開し、それぞれの最大曲率部またはその近傍を上記ルーフメンバ連結部材12によって連結してある。
【0018】
即ち、ルーフメンバ連結部材12は断面矩形状の中空部材で形成して、これを車体上下方向に立てた状態で上方,下方ルーフメンバ6A,6B間に挟み込み、その連結部材12の上下両端部に設けたフランジ12fを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bにスポット溶接してある。
【0019】
また、このようにセンタピラー3に上方,下方ルーフメンバ6A,6Bを結合した状態で、前方ルーフサイドレール1Aの車体後方端部に設けたフランジ1Afを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの結合部前面にスポット溶接するとともに、後方ルーフサイドレール1Bの車体前方端部に設けたフランジ1Bfを上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの結合部後面にスポット溶接してある。
【0020】
一方、上記フロアメンバ7の車幅方向端部に脆弱部としての凹設部7aを形成し、この凹設部7aを中間にしてフロアメンバ7上面に、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてある。
【0021】
フロアメンバ7は、図2に示すように断面矩形状の中空部材で形成され、その車幅方向端部に形成した縮幅部7wをセンタピラー3の下端部に差し込んで溶接してあり、このセンタピラー3の下端部の前面に前方サイドシル2Aの車体後方端部に設けたフランジ2Afをスポット溶接するとともに、センタピラー3の下端部の後面に後方サイドシル2Bの車体前方部に設けたフランジ2Bfをスポット溶接してある。
【0022】
尚、このとき前記フランジ2Afおよび2Bfは、前方,後方サイドシル2A,2Bの各端部の車幅方向内方側の略半分に設けてあり、前方,後方サイドシル2A,2B端部の車幅方向内方半部をセンタピラー3の前,後面に結合し、前方,後方サイドシル2A,2B端部の車幅方向外方半部に設けたフランジ2Af′,2Bf′はセンタピラー3の外側に配置して互いに結合してある。
【0023】
また、前記凹設部7aは図2に示すようにフロアメンバ7を部分的に上方からプレス等して凹設して形成してあり、一方、前記荷重受け部材13はその凹設部7aを挟んで車幅方向に対峙する一対の内側部材13Aと外側部材13Bとで構成してある。
【0024】
内側部材13Aは、車幅方向外側に荷重受け面13Aaを設けてフランジ13Afを介してフロアメンバ7にスポット溶接する一方、外側部材13Bは、車幅方向内側に荷重受け面13Baを設けてフランジ13Bfを介してフロアメンバ7およびセンタピラー3に跨ってスポット溶接し、それぞれの荷重受け面13Aa,13Baを所定間隔をおいて対向配置してある。
【0025】
以上の構成によりこの第1実施形態の車体構造によれば、図3(a)に示すように自動車などの衝突物が側面衝突してセンタピラー3の最大曲率部3aに衝突荷重Fが入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのセンタピラー3は伸展方向の変形力を受けて初期反力が立ち上がり、最大曲率部3aを中心に圧縮方向の軸力f1,f2として衝突荷重Fを上下方向に分散する。
【0026】
図3(a)に示す衝突初期では、上方に作用する軸力f1は湾曲したセンタピラー3の上部3Tを車幅方向内方に向かう斜め上方K1に変位させる一方、下方に作用する軸力f2はセンタピラー3の下部3Bを車幅方向内方に向かう斜め下方K2に変位させるとともに、フロアメンバ7の凹設部7aを下方に変形させて、図4中P1領域に示すように衝突直後の衝撃を緩和する。
【0027】
そして、衝突状態が進行して図3(b)に示す衝突中盤では、前記軸力f1がルーフメンバ6に入力するが、このルーフメンバ6が互いに離れる方向に湾曲して分離する上方ルーフメンバ6Aおよび下方ルーフメンバ6Bによって二重構造として形成してあるので、このルーフメンバ6の剛性が増大してルーフ部Rfが車室内方に進入するのを抑制し、車室内空間を確保することができる。
【0028】
つまり、本実施形態では上記ルーフメンバ6を構成する上方ルーフメンバ6Aは全体的に車体上方に湾曲し、かつ、下方ルーフメンバ6Bは全体的に車体下方に湾曲しているので、前記軸力f1によるセンタピラー3の上部3Tの斜め上方K1への変位により、下方ルーフメンバ6Bに作用する圧縮力f3により下方突出方向K3への緊張状態が発生して、迅速な反力の立ち上がりを促進するとともに、センタピラー3の軸力f1が増大して上方ルーフメンバ6Aの圧縮力f4により、上方突出方向K4への変形と下方ルーフメンバ6Bの下方突出方向K3への変形とが増長することで反力が増加する。
【0029】
また、これと同時にセンタピラー3の下部3Bの斜め下方K2への変形が進むと、フロアメンバ7の凹設部7aが図3(b)に示すように下方への変形が増大し、この変形が所定量に達すると荷重受け部材13の内側部材13Aおよび外側部材13Bのそれぞれの荷重受け面13Aa,13Baは互いに当接して反力が増大し、図4中P2領域に示す特性となる。
【0030】
更に、衝突状態が進行することにより図3(c)に示すように、センタピラー3の上部3Tの変形が底付くと、ルーフメンバ6の上方,下方ルーフメンバ6A,6Bの相対位置が上昇し、上方ルーフメンバ6Aへの荷重伝達が増加する。
【0031】
このため、上方ルーフメンバ6Aは上方突出方向K4への変形が増長し、ルーフメンバ連結部材12で連結されている下方ルーフメンバ6Bもその上方への変形に追随する。
【0032】
一方、センタピラー3の下部3Bの変形およびフロアメンバ7の凹設部7aの変形が進むことにより、荷重受け部材の内側部材13Aと外側部材13Bとの反力も増加してフロアメンバ7の変形が抑制され、これに伴って図4中P3領域に示すようにセンタピラー3の上部3Tの変形も抑制される。
【0033】
従って、本実施形態では図4に示すように、破線に示す従来の特性に比較して、車室内空間の維持および衝突初期の迅速な反力の立ち上がり、および安定した反力維持といった特性を持つ車体構造を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態では上方ルーフメンバ6Aと下方ルーフメンバ6Bとは、車幅方向両端部が結合された状態で中央側間が中央部に向かって徐々に拡開し、それぞれの最大曲率部またはその近傍を上記ルーフメンバ連結部材12によって連結したので、局部的な曲げ変形を抑制するとともに、上方,下方ルーフメンバ6A,6Bそれぞれへの荷重分散効果にも寄与することができる。
【0035】
更に、フロアメンバ7の車幅方向端部に凹設部7aを形成し、この凹設部7aを中間にしてフロアメンバ7上面には、幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けたので、センタピラー3の下部3Bおよびフロアメンバ7において車幅方向内方への変形後に荷重受け部材13が干渉して荷重伝達機能および変形拘束機能を発揮する。
【0036】
従って、ある程度変形が進行すると、その変形を拘束するとともに荷重伝達効率が増加するので、強度を高めて車室内空間が阻害されるのを抑制しつつ反力を維持することができる。
【0037】
図5,図6は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図5は車体の骨格構造の斜視図、図6は骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【0038】
この第2実施形態の車体構造は、図5に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、ルーフメンバ6を全体的に車体上方に湾曲する上方ルーフメンバ6Aと、全体的に車体下方に湾曲する下方ルーフメンバ6Bとで構成してあるが、特に本実施形態では下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部をセンタピラー3に連結し、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部を下方ルーフメンバ6Bにルーフサイドレール1よりも車幅方向内方で連結してある。
【0039】
つまり、図6に示すように下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部をセンタピラー3の上部3Tの配置方向に沿って斜め下方に折曲し、その先端部に縮幅部6Bwを形成して、この縮幅部6Bwをセンタピラー3の上端部に差し込んで溶接するとともに、前記下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部に、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部をフランジ6Afを介してスポット溶接してある。
【0040】
このとき、下方ルーフメンバ6Bの車幅方向端部の車体前後面には、前記上方ルーフメンバ6Aを連結した箇所よりも車幅方向外方部分に、前方ルーフサイドレール1Aおよび後方ルーフサイドレール1Bをそれぞれのフランジ1Af,1Bfを介して連結してある。
【0041】
従って、この第2実施形態の車体構造によれば、上方ルーフメンバ6Aの車幅方向端部を下方ルーフメンバ6Bのルーフサイドレール1よりも車幅方向内方で連結してあるので、下方ルーフメンバ6Bのルーフサイドレール1よりも車幅方向外方部分が上方ルーフメンバ6Aによって拘束されることが無いため、衝突直後にセンタピラー3の上部3Tからルーフメンバ6に軸力f1が伝達された際に、衝撃吸収効果をより高めることができるとともに、反力の立ち上がりを迅速化することができる。
【0042】
図7,図8は本発明の第3実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図7は車体の骨格構造の斜視図、図8は図7中B部の拡大断面図である。
【0043】
この第3実施形態の車体構造は、図7に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、ルーフメンバ6を全体的に車体上方に湾曲する上方ルーフメンバ6Aと、全体的に車体下方に湾曲する下方ルーフメンバ6Bとで構成してあるが、特に本実施形態では上方ルーフメンバ6Aの強度を下方ルーフメンバ6Bよりも大きくしてある。
【0044】
即ち、本実施形態では図8に示すように矩形状の閉断面構造とした上方ルーフメンバ6Aの肉厚T1を、同様に矩形状の閉断面構造とした下方ルーフメンバ6Bの肉厚T2よりも厚く(T1>T2)形成することにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してある。
【0045】
従って、この第3実施形態の車体構造によれば、上方ルーフメンバ6Aの強度を下方ルーフメンバ6Bよりも大きくしたので、センタピラー3から入力される軸力f1による変形促進を主に下方ルーフメンバ6Bで受け持つとともに、その後の変形拘束および反力維持を主に上方ルーフメンバ6Aで受け持つことにより、衝突時の衝撃緩和を図りつつ、車室内への変形抑制や反力向上をより増大することができる。
【0046】
図9は第3実施形態の第1変形例を示し、矩形状の閉断面構造とした上方ルーフメンバ6Aを厚肉形成するとともに、高さL1を下方ルーフメンバ6Bの高さL2よりも高く(L1>L2)形成することにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してあり、同様の作用効果を奏する。
【0047】
図10は第3実施形態の第2変形例を示し、上方,下方ルーフメンバ6A,6Bはそれぞれ矩形状の閉断面構造に形成されるが、上方ルーフメンバ6Aの内部の前後(図中左右方向)略中央部に仕切壁6Apを設けることにより、上方ルーフメンバ6Aの断面剛性を下方ルーフメンバ6Bよりも高く形成してあり、同様の作用効果を奏する。
【0048】
図11,図12は本発明の第4実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図11は車体の骨格構造の斜視図、図12はフロアメンバの片側端部を示す斜視図である。
【0049】
この第4実施形態の車体構造は、図11に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、フロアメンバ7の車幅方向端部に脆弱部を形成し、この脆弱部を中間にしてフロアメンバ7上面には、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、脆弱部の所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてある。
【0050】
そして、本実施形態では図12に示すように、脆弱部をフロアメンバ7の車体前後方向両側面に形成した一対の凹設部7bで形成しており、これら凹設部7bは、ルーフサイドレール1よりも車幅方向内方の位置に形成してある。
【0051】
従って、この第4実施形態の車体構造によれば、フロアメンバ7に形成した凹設部7bをルーフサイドレール1よりも車幅方向内方に形成したので、衝突荷重Fの入力位置からの変形許容範囲が長く成るセンタピラー3の上部3Tを下部3Bよりも先行して変位させ、ルーフメンバ6の変形による反力が向上するようなタイミングでセンタピラー3の下部3Bに入力が増加し、当該部分が略車幅方向内方に変位する。
【0052】
従って、相対的に上部3Tよりも強度が高くなる下部3Bへの入力を増加させて、構造上の強度バランスに適応した荷重配分となるようにコントロールでき、効率的な部材構成が成立するとともに、局部的な変形を抑制して反力を高く維持する効果がある。
【0053】
図13,図14は第4実施形態の第1変形例を示し、図13に示すように断面矩形状の中空部材で形成したフロアメンバ7の外形状を一様に形成する一方、その肉厚を図14に示すように薄肉化することにより脆弱部としての肉厚変化部7cを形成してある。
【0054】
即ち、この第1変形例では図14(a)に示すように、図13中C部から断面にした肉厚変化部7cの上下側の肉厚T3を、図14(b)に示すように、図13中D部から断面にした一般部分の肉厚T4よりも薄く(T3<T4)形成してあり、センタピラー3の下部3Bから軸力f2が入力された場合に肉厚変化部7cから変形するようになっており、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
図15は第4実施形態の第2変形例を示し、図15(a)に示すように、前記図13中C部から断面にした肉厚変化部7cの車体前後側の肉厚T5を、図15(b)に示すように、図13中D部から断面にした一般部分の肉厚T6よりも薄く(T5<T6)形成して、センタピラー3の下部3Bから軸力f2が入力された場合に肉厚変化部7cから変形するようになっており、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
図16,図17は本発明の第5実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図16は車体の骨格構造の斜視図、図17は荷重受け部材の拡大斜視図である。
【0057】
この第5実施形態の車体構造は、図16に示すように基本的に第1実施形態と同様の構成となり、フロアメンバ7に形成した凹設部7aを中間にしたフロアメンバ7上面には、車幅方向に所定間隔δをもって対峙し、凹設部7aの所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材13を設けてあり、特に本実施形態では荷重受け部材13に、互いに干渉した後に凹設部7aの変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大する伝達荷重増大手段14を設けてある。
【0058】
即ち、本実施形態の荷重受け部材13は第1実施形態と同様に一対の内側部材13Aと外側部材13Bとで構成してあり、内側部材13Aの車幅方向外側に階段状の荷重受け面13Abを形成するとともに、外側部材13Bの車幅方向内側に前記荷重受け面13Abの形状に略沿った荷重受け面13Bbを形成し、これら荷重受け面13Ab,13Bbによって上記伝達荷重増大手段14を構成してある。
【0059】
従って、この第5実施形態の車体構造によれば、フロアメンバ7に形成した凹設部7aを挟んで設けた荷重受け部材13に伝達荷重増大手段14を設けて、互いに干渉した後に凹設部7aの変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大するようにしたので、凹設部7aの変形許容範囲、つまり内側部材13Aと外側部材13Bとが干渉するまでの範囲では凹設部7aの変形によってエネルギー吸収量を増大する一方、センタピラー3の上部3Tおよびルーフメンバ6は変形による可動範囲が大きいので徐々に反力を増大させることで、それらの部分の変形を十分に行わせた後に、センタピラー3の下部3Bの耐力を向上させることができる。
【0060】
図18は第5実施形態の変形例を示し、内側部材13Aの車幅方向外側に車幅方向内側から外側に向かって下方傾斜する傾斜面13Acを形成するとともに、外側部材13Bの車幅方向内側に前記傾斜面13Acに略沿った傾斜面13Bcを形成し、これら傾斜面13Ac,13Bcによって伝達荷重増大手段14を構成してあり、この場合にあっても第5実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
図19,図20は本発明の第6実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図19は車体の骨格構造の斜視図、図20は骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【0062】
この第6実施形態の車体構造は、図19に示すように前記各実施形態と同様の構成となり、センタピラー3の上部3Tにルーフメンバ6およびルーフサイドレール1が連結されるが、本実施形態では図20にも示すように、ルーフメンバ6を構成する第1ルーフメンバを、全体的に車体前方に湾曲して車体前方に配置される前方ルーフメンバ6Cで構成し、かつ、第2ルーフメンバを、全体的に車体後方に湾曲して車体後方に配置される後方ルーフメンバ6Dで構成してある。
【0063】
そして、前記前方,後方ルーフメンバ6C,6Dの車幅方向端部を二股状連結部材15を介してセンタピラー3の上部3Tに結合してあり、かつ、前方ルーフメンバ6Cの端部前面に前方ルーフサイドレール1Aを結合するとともに、後方ルーフメンバ6Dの端部後面に後方ルーフサイドレール1Bを結合してある。
【0064】
このとき、センタピラー3は、その上部3Tをセンタピラー3の中心線Cよりも車体前方に傾かせて形成してある。
【0065】
また、前方,後方ルーフメンバ6C,6Dは、これらの車幅方向中央部の最大曲率部またはその近傍を、車体前後方向に配置したルーフメンバ連結部材12Aによって連結してある。
【0066】
従って、この第6実施形態の車体構造によれば、衝突荷重Fがセンタピラー3に入力されると、センタピラー3の上方に作用する軸力f1が前方に傾斜した上部3Tから主に前方ルーフメンバ6Cに入力されて、この前方ルーフメンバ6Cをその湾曲方向となる車体前方に大きく変形する。
【0067】
すると、前方ルーフメンバ6Cの前方変位が、ルーフメンバ連結部材12Aを介して連結した後方ルーフメンバ6Dに伝達され、この後方ルーフメンバ6Dはその湾曲方向による本来の変形し易い方向(車体後方)とは逆方向に力が働くため、大きな耐力を発生させることができる。
【0068】
そして、変形が進行することにより、センタピラー3から前方,後方ルーフメンバ6C,6Dに軸力f1が伝達されるようになり、後方ルーフメンバ6Dに後方に曲がろうとする入力が増加することにより、ルーフメンバ連結部材12Aによって後方ルーフメンバ6Dを車体後方に引っ張る力が発生して耐力を更に高めることができる。
【0069】
ところで、本発明の車体構造は前記第1〜第6実施形態およびそれらの各変形例に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車体片側の骨格部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示す図1中A部の断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態における横軸の変位と縦軸の荷重によって示す反力特性を破線で示す従来と比較したグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態における骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図8】図7中B部の拡大断面図である。
【図9】第3実施形態の第1変形例を示す図8に対応した拡大断面図である。
【図10】第3実施形態の第2変形例を示す図8に対応した拡大断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるフロアメンバの片側端部を示す斜視図である。
【図13】第4実施形態の第1変形例を示すフロアメンバの端部斜視図である。
【図14】図13中C部の断面を(a)にD部の断面を(b)に示す拡大断面図である。
【図15】第4実施形態の第2変形例を示す図13中C部の断面を(a)にD部の断面を(b)に示す拡大断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図17】本発明の第5実施形態における荷重受け部材の拡大斜視図である。
【図18】第5実施形態の変形例を示す図17に対応した拡大斜視図である。
【図19】本発明の第6実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図20】本発明の第6実施形態における骨格部材の要部を分解した拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ルーフサイドレール
2 サイドシル
3 センタピラー(ピラー部材)
6 ルーフメンバ
6A 上方ルーフメンバ(第1ルーフメンバ)
6B 下方ルーフメンバ(第2ルーフメンバ)
6C 前方ルーフメンバ(第1ルーフメンバ)
6D 後方ルーフメンバ(第2ルーフメンバ)
7 フロアメンバ
7a,7b 凹設部(脆弱部)
12,12A ルーフメンバ連結部材
13 荷重受け部材
14 伝達荷重増大手段
Rf ルーフ部
Fr フロア部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するピラー若しくはメンバーからなる骨格部材を湾曲させ、湾曲させた骨格部材の頂点どうしを連結する連結部材を設け、湾曲した骨格部材の変形を前記連結部材で抑制するよう構成したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、
フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、
上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、
左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、
左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、
前記ルーフメンバを、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバで構成し、これら第1,第2ルーフメンバの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材で互いに連結したことを特徴とする車体構造。
【請求項3】
第1ルーフメンバは、全体的に車体上方に湾曲して車体上方に配置される上方ルーフメンバであり、かつ、第2ルーフメンバは、全体的に車体下方に湾曲して車体下方に配置される下方ルーフメンバであることを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
第1ルーフメンバは、全体的に車体前方に湾曲して車体前方に配置される前方ルーフメンバであり、かつ、第2ルーフメンバは、全体的に車体後方に湾曲して車体後方に配置される後方ルーフメンバであることを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項5】
ルーフメンバ連結部材は、それぞれ湾曲した第1,第2ルーフメンバの最大曲率部またはその近傍を連結することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項6】
フロアメンバの車幅方向端部に脆弱部を形成し、フロアメンバ上面に、前記脆弱部を中間にして車幅方向に所定間隔をもって対峙し、脆弱部の所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材を設けたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項7】
脆弱部は、ルーフサイドレールよりも車幅方向内方に形成したことを特徴とする請求項6に記載の車体構造。
【請求項8】
荷重受け部材は、互いに干渉した後に脆弱部の変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大する伝達荷重増大手段を設けたことを特徴とする請求項6または7に記載の車体構造。
【請求項9】
下方ルーフメンバの車幅方向端部をピラー部材に連結し、上方ルーフメンバの車幅方向端部を下方ルーフメンバにルーフサイドレールよりも車幅方向内方で連結したことを特徴とする請求項3または5〜8のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項10】
上方ルーフメンバの強度を下方ルーフメンバよりも大きくしたことを特徴とする請求項3または5〜9のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項1】
車体を構成するピラー若しくはメンバーからなる骨格部材を湾曲させ、湾曲させた骨格部材の頂点どうしを連結する連結部材を設け、湾曲した骨格部材の変形を前記連結部材で抑制するよう構成したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、
フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、
上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、
左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、
左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、
前記ルーフメンバを、それぞれが車幅方向両端部で結合されるとともに、それぞれの車幅方向中間部分で互いに離れる方向に湾曲して分離する第1ルーフメンバおよび第2ルーフメンバで構成し、これら第1,第2ルーフメンバの車幅方向中間部をルーフメンバ連結部材で互いに連結したことを特徴とする車体構造。
【請求項3】
第1ルーフメンバは、全体的に車体上方に湾曲して車体上方に配置される上方ルーフメンバであり、かつ、第2ルーフメンバは、全体的に車体下方に湾曲して車体下方に配置される下方ルーフメンバであることを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
第1ルーフメンバは、全体的に車体前方に湾曲して車体前方に配置される前方ルーフメンバであり、かつ、第2ルーフメンバは、全体的に車体後方に湾曲して車体後方に配置される後方ルーフメンバであることを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項5】
ルーフメンバ連結部材は、それぞれ湾曲した第1,第2ルーフメンバの最大曲率部またはその近傍を連結することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項6】
フロアメンバの車幅方向端部に脆弱部を形成し、フロアメンバ上面に、前記脆弱部を中間にして車幅方向に所定間隔をもって対峙し、脆弱部の所定以上の変形によって互いに干渉する荷重受け部材を設けたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項7】
脆弱部は、ルーフサイドレールよりも車幅方向内方に形成したことを特徴とする請求項6に記載の車体構造。
【請求項8】
荷重受け部材は、互いに干渉した後に脆弱部の変形量が増大するに伴って荷重伝達量を増大する伝達荷重増大手段を設けたことを特徴とする請求項6または7に記載の車体構造。
【請求項9】
下方ルーフメンバの車幅方向端部をピラー部材に連結し、上方ルーフメンバの車幅方向端部を下方ルーフメンバにルーフサイドレールよりも車幅方向内方で連結したことを特徴とする請求項3または5〜8のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項10】
上方ルーフメンバの強度を下方ルーフメンバよりも大きくしたことを特徴とする請求項3または5〜9のいずれか1つに記載の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−36116(P2006−36116A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221678(P2004−221678)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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