説明

車体構造

【課題】ワイヤーハーネスの取付作業性を向上させ、ワイヤーハーネスの取り付けを合理的なものとし、コストを低減させることのできる車体構造を提供すること。
【解決手段】開断面構造のクロスカービーム(1)に型抜き方向に延びるボス部(4)を形成し、該ボス部(4)の係止孔(4a)にクリップ(12)の係止爪(12a)を型抜き方向で係止させてワイヤーフレーム(10)をクロスカービームの開断面構造内に配索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に係り、詳しくはワイヤーハーネスが配索されるクロスカービームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネル内にパイプ状のクロスカービームが左右のフロントピラーを連結するよう設けられており、当該パイプ状のクロスカービームにブラケット等の部材を介してステアリングコラムやヒータユニット等のインストルメントパネル周辺の各種装置が取り付けられていた。
そして、インストルメントパネル内を通るワイヤーハーネスは、ブラケットを介したり、クロスカービーム本体に係止孔を穿設しクリップ等を係止させる等して、当該クロスカービームに配索されていた。
【0003】
しかし、このようなワイヤーハーネスの配索は、クロスカービームに取り付けられている各種装置との干渉を避けるために迂回して配索されていた。
このため、ワイヤーハーネスの取付作業は複雑で困難になる上、迂回して配索する分ワイヤーハーネスの長さを延長したり、当該ワイヤーハーネスと各種装置との干渉を防止するためのプロテクタ部材や、配索ルートを規制するためのガイド部材等を設ける等して部品点数が多くなり、コストが増加するという問題があった。
【0004】
そこで、インストルメントパネルを補強するパイプ状のリインホースメント(クロスカービーム)に凹部を形成し、当該凹部にワイヤーハーネスを収容することで、取付性の向上を図る技術が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−306169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術におけるリインホースメントや、従来からのクロスカービームのようにパイプ形状をなす部材は加工が困難という問題がある。
そして、パイプ形状のクロスカービームにはブラケット等を介して各種装置が取り付けられるため、取付作業の複雑化や、部品点数増加によるコスト増加等を招くという問題もある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、クロスカービームの加工を容易なものとするとともに、ワイヤーハーネスの取付作業性を向上させ、ワイヤーハーネスの取り付けを合理的なものとし、コストを低減させることのできる車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の車体構造では、車幅方向に延びて車体の左右のフロントピラー間を連結するよう設けられ、前記車幅方向に対して垂直方向を型抜き方向とする鋳造または射出成形により成形されて該型抜き方向の一方に開放した開断面構造をなすクロスカービームと、該クロスカービームに前記開断面構造内を前記型抜き方向に延びて形成され、前記型抜き方向と同一方向に穿設された係止孔を有するボス部と、該ボス部の係止孔に係止可能な係止手段を有するワイヤーハーネスとを備え、前記ワイヤーハーネスは、前記係止手段が前記ボス部の係止孔に型抜き方向の他方に向かい押し込まれて係止され、前記クロスカービームの前記開断面構造内に配索されてなることを特徴としている。
【0008】
つまり、型抜き方向の一方に解放した開断面構造をなすクロスカービームに、型抜き方向と同一方向に穿設された係止孔を有するボス部を形成し、当該ボス部の係止孔に係止手段を係止させることでクロスカービームの開断面構造内にワイヤーハーネスを配索する。
請求項2の車体構造では、請求項1において、さらに、前記クロスカービームは、前記開断面構造内を前記型抜き方向に向け延びる板状のリブを備え、前記ボス部は前記リブと一体成形されてなることを特徴としている。
【0009】
つまり、クロスカービームに形成され強度を確保するリブと、ワイヤーハーネスが取り付けられるボス部とを一体に成形する。
請求項3の車体構造では、請求項1または2において、前記クロスカービームは断面コ字形状であることを特徴としている。
つまり、クロスカービームの断面形状を鋳造または射出成形する上で簡易な形状である断面コ字形状とする。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いる本発明の請求項1の車体構造によれば、クロスカービームは加工が容易な鋳造または射出成形により型抜き方向の一方に開放した開断面構造をなすよう成形され、ワイヤーハーネスの取り付けは、当該ワイヤーハーネスの係止手段を前記クロスカービームの閉断面構造内に型抜き方向に延びて形成されたボス部の係止孔に当該型抜き方向に押し込むだけの簡易な作業で行うことができる。
【0011】
また、クロスカービームの開断面構造内に位置するようワイヤーハーネスを配索することで、特にプロテクタ等の部材を設けることなく周囲の装置との干渉を防止することができる。
さらに、ワイヤーハーネスの配索において、従来のようにインストルメントパネル周辺の各種装置を迂回させる必要がなく、ワイヤーハーネスの長さを必要最低限の長さに短縮することができる。
【0012】
以上のように本発明に係る車体構造では、クロスカービームの加工を容易なものとするとともに、ワイヤーハーネスの取付作業性を向上させることができ、且つワイヤーハーネスの取り付けを合理的なものとしコストを大幅に低減させることができる。
請求項2の車体構造によれば、ボス部をリブと一体に成形することで、コストを増加させることなくクロスカービームの強度を確保することができる。
【0013】
請求項3の車体構造によれば、鋳造または射出成形によるクロスカービームの成形を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1乃至3を参照すると、図1には本発明に係る車体構造の分解斜視図が、図2には本発明に係る車体構造の組立斜視図が、図3には図2のA−A線に沿う断面図がそれぞれ示されている。
図1に示すクロスカービーム1は、車両のインストルメントパネル(図示せず)の車両前方側において、車幅方向に延び車体の左右のフロントピラー(図示せず)間を連結するよう設けられている。
【0015】
当該クロスカービーム1は例えばマグネシウム合金で形成されており、車両前後方向を型抜き方向とした鋳造または射出成形で成形されている。
当該クロスカービーム1の本体2は、上面部2a、下面部2b、壁部2cから構成され、断面が車両前方に開放した略コ字形状の開断面構造をなしている。
また、当該クロスカービーム1には、開断面構造内を壁部2cから車両前後方向に延び且つ上面部2aと下面部2bとを連結するよう車両前方から視て斜め上下方向に延びて板状のリブ4が複数形成されている。
【0016】
そして、当該複数あるリブ4のうちの一部のリブ4には、上下方向略中央部分に位置して、壁部2cから開断面構造内を車両前後方向に延びる円筒状のボス部6が一体に形成されている。
つまり、クロスカービーム1には、車両前方から視て車幅方向略直線上に、所定の間隔を開けてボス部6が複数並んで形成されている。
【0017】
円筒状であるボス部6の中空部は、車両前後方向、即ちクロスカービーム1の型抜き方向と同一方向に貫通した係止孔6aを形成している。
また、クロスカービーム1の本体2には、車幅方向一方側の車両の運転席側部分に位置して、図示しないステアリングコラムや計器類やセンサ類の取付部8a、8bが形成されており、車幅方向中央の車両後方側部分に位置して、図示しないヒータユニットの取付部8cが形成されている。なお、当該クロスカービーム1には、この他にもインストルメントパネル周辺の各種装置や各種部材を設ける取付部が形成されていてもよい。
【0018】
また、上記各種装置等へ接続される配線を束状にして形成されたワイヤーハーネス10には、係止爪12aを有したクリップ12(係止手段)が上記クロスカービーム1のボス部6に対応して複数設けられており、当該クリップ12の係止爪12aがボス部6の係止孔6aに係止されることで、クロスカービーム1にワイヤーハーネス10が配索されている。
【0019】
そして、当該ワイヤーハーネス10は、クロスカービーム1の開断面構造内に位置するよう配索されている。
以下このように構成された本発明に係る車体構造の作用について説明する。
ワイヤーハーネス10については、各クリップ12の係止爪12aをクロスカービーム1の閉断面構造内において車両前後方向に延びて形成されている各ボス部6の係止孔6aに車両前方から車両後方に向かって押し込むことで係止させ、取り付ける。
【0020】
このように当該ワイヤーハーネス10の取り付けは、取付箇所がクロスカービーム1に集約されている上、クリップ12を開断面構造内に延びているボス部6の係止孔6aに車両前方から車両後方に向かって押し込むだけの簡易な作業で行うことができる。
また、クロスカービーム1は加工が容易な鋳造または射出成形で成形されるものであり、ボス部6についてもリブ4と一体に成形されているため、コストを増加させることなく強度を確保することができる。
【0021】
また、クロスカービーム1に固定されたワイヤーハーネス10は、断面コ字状の開断面構造内に位置するよう配索されるため、特にプロテクタ等の部材を設けることなく周囲の装置との干渉を防止することができる。
さらにワイヤーハーネス10は、開断面構造内に配索されることで、従来のようにインストルメントパネル周辺の各種装置を迂回させる必要がなく、略直線状に配索することができ、ワイヤーハーネス10の長さを必要最低限の長さに短縮することができる。
【0022】
以上のように本発明に係る車体構造では、クロスカービーム1の加工を容易なものとするとともに、ワイヤーハーネス10の取付作業性を向上させることができ、ワイヤーハーネス10の取り付けを合理的なものとしコストを大幅に低減させることができる。
以上で本発明に係る車体構造の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0023】
例えば、上記実施形態ではクロスカービームの断面はコ字形状をなしているが、断面U字形状等、型抜き方向の一方に開放した形状であれば他の形状であっても構わない。
また、上記実施形態ではリブは車両前方方向から視て斜め方向に延びているが、例えば車両上下方向や車両幅方向に延びた形状であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車体構造の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る車体構造の組立斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 クロスカービーム
2 本体
4 リブ
6 ボス部
6a 係止孔
10 ワイヤーハーネス
12 クリップ(係止手段)
12a 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びて車体の左右のフロントピラー間を連結するよう設けられ、前記車幅方向に対して垂直方向を型抜き方向とする鋳造または射出成形により成形されて該型抜き方向の一方に開放した開断面構造をなすクロスカービームと、
該クロスカービームに前記開断面構造内を前記型抜き方向に延びて形成され、前記型抜き方向と同一方向に穿設された係止孔を有するボス部と、
該ボス部の係止孔に係止可能な係止手段を有するワイヤーハーネスとを備え、
前記ワイヤーハーネスは、前記係止手段が前記ボス部の係止孔に型抜き方向の他方に向かい押し込まれて係止され、前記クロスカービームの前記開断面構造内に配索されてなることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
さらに、前記クロスカービームは、前記開断面構造内を前記型抜き方向に向け延びる板状のリブを備え、
前記ボス部は前記リブと一体成形されてなることを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記クロスカービームは断面コ字形状であることを特徴とする請求項1または2記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−126897(P2008−126897A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315701(P2006−315701)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(506390890)メリディアン テクノロジーズ ジャパン インク (1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】