説明

車体構造

【課題】車両衝突時に骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収する。
【解決手段】車体構造10は、断面コの字状に形成されたインナチャンネル30と、断面コの字状に形成されると共に、インナチャンネル30と互いの開口部が向き合うように配置され、インナチャンネル30とでサイドメンバ20を構成するサイドレール40と、断面コの字状に形成されると共に、インナチャンネル30と結合されたリインフォースメント50とを備えている。リインフォースメント50に形成された一方の対向補強壁部51の自由端51Aは、サイドレール40に形成された一方の第二対向壁部41の自由端41Aと突き当てられており、他方の対向補強壁部52の長手方向の一部の自由端59Aは、他方の第二対向壁部42の自由端42Aよりも連結補強壁部53側且つ一方の対向補強壁部51側に位置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体側部構造が開示されている。この車体側部構造では、サイドメンバにロッカが形成されており、このロッカの車両前後方向前側部における車幅方向内側の上側隅部には、前側リインフォースメントが設けられ、この上側隅部における曲げ圧縮に対する剛性が高められている。また、ロッカの車両前後方向後側部における車幅方向内側の下側隅部には、後側リインフォースメントが設けられており、この下側隅部における曲げ圧縮に対する剛性が高められている。そして、このようにロッカの各部の曲げ圧縮に対する剛性が高められることにより、ロッカへ入力される衝突荷重を合理的に受けることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−203893号公報
【特許文献2】特開2006−62558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、例えば車両前面衝突時などにサイドメンバを特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収するようにはなっていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両衝突時に骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体構造は、一対の第一対向壁部と、前記一対の第一対向壁部の端部を連結する第一連結壁部とを有する断面コの字状に形成された第一骨格構成部材と、一対の第二対向壁部と、前記一対の第二対向壁部の端部を連結する第二連結壁部とを有する断面コの字状に形成されると共に、前記第一骨格構成部材と互いの開口部が向き合うように配置され、且つ、前記一対の第二対向壁部の自由端側が前記一対の第一対向壁部の内側で前記一対の第一対向壁部の自由端側とそれぞれ重ねられた状態で結合されて、前記第一骨格構成部材とで長手状の骨格部材を構成する第二骨格構成部材と、一対の対向補強壁部と、前記一対の対向補強壁部の端部を連結する連結補強壁部とを有すると共に、前記第一骨格構成部材と同じ側に開口する断面コの字状に形成され、且つ、前記骨格部材の長手方向に延びる長手状に形成されて前記第一骨格構成部材と結合された補強部材と、を備え、前記一対の対向補強壁部のうち一方は、前記一対の第二対向壁部のうち一方と互いの自由端が突き合わされ、前記一対の対向補強壁部のうち他方は、少なくとも長手方向の一部の自由端が前記一対の第二対向壁部のうち他方の自由端よりも前記連結補強壁部側且つ前記一方の対向補強壁部側に位置されている。
【0007】
この車体構造では、骨格部材の内部に、断面コの字状の補強部材が設けられており、この補強部材に形成された一方の対向補強壁部は、第二骨格構成部材に形成された一方の第二対向壁部と互いの自由端が突き合わされている。一方、補強部材に形成された他方の対向補強壁部は、少なくとも長手方向の一部の自由端が第二骨格構成部材に形成された他方の第二対向壁部の自由端よりも連結補強壁部側且つ一方の第二対向壁部側に位置されている。
【0008】
従って、例えば、車両の衝突により骨格部材に対して長手方向から衝突荷重が入力された場合には、一方の対向補強壁部の自由端と一方の第二対向壁部の自由端とが突き当たることで骨格部材における一方側(一方の第一対向壁部、一方の第二対向壁部、一方の対向補強壁部が設けられた側)の変形が抑制される。これに対し、他方の対向補強壁部における少なくとも長手方向の一部の自由端と他方の第二対向壁部の自由端とは突き当たらないので、この結果、骨格部材は、上述の一方側に凸をなすように折り曲げられる。
【0009】
つまり、この車体構造では、一方の対向補強壁部の自由端と一方の第二対向壁部の自由端とが突き合わされることにより、骨格部材における一方側の耐力が確保されている。これに対し、他方の対向補強壁部の少なくとも長手方向の一部の自由端が他方の第二対向壁部の自由端よりも連結補強壁部側且つ一方の第二対向壁部側に位置されることにより、骨格部材における他方側(他方の第一対向壁部、他方の第二対向壁部、他方の対向補強壁部が設けられた側)の耐力は、上述の骨格部材における一方側の耐力よりも低くなっている。そして、この耐力差により、骨格部材は、上述の一方側に凸をなすように折り曲げられる。
【0010】
このように、請求項1に記載の車体構造によれば、車両衝突時には、骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0011】
なお、一方の対向補強壁部の自由端と一方の第二対向壁部の自由端との突き合わせとは、はじめから両者が突き当たって配置されている場合だけでなく、車両衝突時になってはじめて両者が突き当たるように両者が若干離れて配置されている場合も含まれる趣旨である。
【0012】
請求項2に記載の車体構造は、請求項1に記載の車体構造において、前記他方の対向補強壁部に、前記一方の対向補強壁部側に凹み、前記長手方向の一部を底部とする凹状部が形成され、前記他方の対向補強壁部の長手方向における前記凹状部の両側が、前記他方の第二対向壁部と互いの自由端が突き合わされた構成とされている。
【0013】
この車体構造では、例えば、車両の衝突によって骨格部材に対して長手方向から衝突荷重が入力された場合には、他方の対向補強壁部の長手方向における凹状部の両側の自由端と他方の第二対向壁部との自由端とが突き当たることで骨格部材におけるこの部位の変形が抑制される。これに対し、他方の対向補強壁部における凹状部の底部の自由端と他方の第二対向壁部の自由端とは突き当たらないので、この結果、骨格部材は、この凹状部を起点として折り曲げられる。
【0014】
このように、請求項2に記載の車体構造によれば、車両衝突時には、骨格部材の長手方向における特定の位置を起点として骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0015】
請求項3に記載の車体構造は、請求項2に記載の車体構造において、前記骨格部材が、前記一対の第一対向壁部の対向方向を車両上下方向とするように配置されると共に車体側部にて車両前後方向に延在するサイドメンバとされ、前記サイドメンバが、車両前後方向中央部に形成されたロッカ部と、前記ロッカ部の前端部又は後端部から車両前後方向に沿って前記ロッカ部から遠ざかるに従って車両上下方向上側に向かうように傾斜するキック部とを有し、前記凹状部が、前記ロッカ部、前記キック部、前記ロッカ部と前記キック部と連結部のうちの少なくともいずれかの車両上下方向上側に形成された構成とされている。
【0016】
この車体構造によれば、凹状部は、ロッカ部、キック部、ロッカ部とキック部との連結部のうちの少なくともいずれかの車両上下方向上側に形成されているので、例えば、車両の衝突によってサイドメンバに対して車両前後方向から衝突荷重が入力された場合には、このロッカ部からキック部に至る領域のいずれかの箇所を起点としてサイドメンバを車両上下方向上側に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0017】
なお、キック部は、ロッカ部に対する車両前後方向前側に形成されていても良く、また、ロッカ部に対する車両前後方向後側に形成されていても良い。また、キック部がロッカ部に対する車両前後方向前側に形成されている場合、上述の車両衝突とは、例えば車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突に相当し、キック部がロッカ部に対する車両前後方向後側に形成されている場合、上述の車両衝突とは、例えば車両後面衝突又は車両後面オフセット衝突に相当する。
【0018】
請求項4に記載の車体構造は、請求項1に記載の車体構造において、前記他方の対向補強壁部が、長手方向に亘って自由端が前記他方の第二対向壁部の自由端よりも前記連結補強壁部側且つ前記一方の第二対向壁部側に位置された構成とされている。
【0019】
この車体構造によれば、例えば、車両の衝突によって骨格部材に対して長手方向から衝突荷重が入力された場合には、他方の対向補強壁部の自由端が長手方向に亘って他方の第二対向壁部の自由端と突き当たらないので、骨格部材におけるいずれかの箇所を起点として骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0020】
請求項5に記載の車体構造は、請求項2又は請求項4に記載の車体構造において、前記骨格部材が、前記他方の対向補強壁部が前記一方の対向補強壁部に対する車両上下方向上側又は下側に位置するように配置されると共に車体側部にて車両前後方向に延在するサイドメンバとされた構成とされている。
【0021】
この車体構造によれば、他方の対向補強壁部が一方の対向補強壁部に対する車両上下方向上側に配置されている場合には、車両の衝突によってサイドメンバに対して車両前後方向から衝突荷重が入力されたときには、サイドメンバを車両上下方向上側に折り曲げることができる。一方、他方の対向補強壁部が一方の対向補強壁部に対する車両上下方向下側に配置されている場合には、車両の衝突によってサイドメンバに対して車両前後方向から衝突荷重が入力されたときには、サイドメンバを車両上下方向上側に折り曲げることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、本発明によれば、車両衝突時に骨格部材を特定の方向に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体構造が適用された車体の左側半分を示す平面図である。
【図2】図1に示される車体の左側面図である。
【図3】図1に示されるサイドメンバを構成するインナチャンネル及びリインフォースメントの斜視図である。
【図4】図3の要部拡大斜視図である。
【図5】図1に示されるサイドメンバを図4の5−5線で切断した断面図(背面断面図)である。
【図6】図1に示されるサイドメンバを図4の6−6線で切断した断面図(背面断面図)である。
【図7】図1に示されるインナチャンネル及びリインフォースメントの接合箇所における要部拡大斜視図である。
【図8】図1に示されるサイドメンバを図7の8−8線で切断した断面図(背面断面図)である。
【図9】車両衝突時に図1に示されるサイドメンバに対して作用する荷重とこのときにサイドメンバが変形する方向を説明する図である。
【図10】図1に示されるサイドメンバの車両衝突時の変形状態を示す断面図(背面断面図)である。
【図11】本発明の一実施形態に係る車体構造の変形例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る車体構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0025】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。
【0026】
図1,図2に示される車体60は、例えば、乗用自動車等の車両のものであり、骨格部材としてのサイドメンバ20の他に、複数のクロスメンバ61〜67と、サスペンションメンバ68とを備えている。
【0027】
なお、この車体60は、左右対称に構成されており、ここでは、左側半分の構成について説明し、右側半分の構成については図示及びその説明を省略する。
【0028】
サイドメンバ20は、車体左側の側部に配置されると共に、車両前後方向に延在する長手状に形成されている。このサイドメンバ20における車両前後方向中央部は、ロッカ部22とされており、このロッカ部22に対する車両前後方向前側には、キック部24が形成され、ロッカ部22に対する車両前後方向後側には、キック部26が形成されている。
【0029】
キック部24は、図2に示されるように、ロッカ部22の前端部から車両前後方向前側に向かうに従って(ロッカ部22から遠ざかるに従って)車両上下方向上側に向かうように傾斜しており、キック部26は、ロッカ部22の後端部から車両前後方向後側に向かうに従って(ロッカ部22から遠ざかるに従って)車両上下方向上側に向かうように傾斜している。
【0030】
そして、このサイドメンバ20におけるロッカ部22からキック部24に至る領域と、このサイドメンバ20におけるロッカ部22からキック部26に至る領域には、本発明の一実施形態に係る車体構造10がそれぞれ適用されている。
【0031】
なお、車両前後方向後側の車体構造10は、車両前後方向前側の車体構造10と略前後対称に構成されている。従って、以下では、車両前後方向前側の車体構造10について説明し、車両前後方向後側の車体構造10についてはその説明を省略する。
【0032】
図3〜図8に示されるように、サイドメンバ20は、第一骨格構成部材としてのインナチャンネル30と、第二骨格構成部材としてのサイドレール40とによって構成されている。なお、図3,図4では、サイドメンバ20からサイドレール40が省かれて、インナチャンネル30及び後述するリインフォースメント50のみが示されている。
【0033】
インナチャンネル30は、図5,図6に示されるように、車両上下方向に対向する一対の第一対向壁部31,32と、この一対の第一対向壁部31,32の車両幅方向内側の端部を連結する第一連結壁部33とを有する断面コの字状に形成されている。
【0034】
一方、サイドレール40は、車両上下方向に対向する一対の第二対向壁部41,42と、この一対の第二対向壁部41,42の車両幅方向外側の端部を連結する第二連結壁部43とを有する断面コの字状に形成されている。
【0035】
また、このサイドレール40は、インナチャンネル30と互いのコの字形における開口部が向き合うように配置されている。つまり、インナチャンネル30は、車両幅方向外側に開口するように配置され、サイドレール40は、車両幅方向内側に開口するように配置されている。
【0036】
そして、一対の第二対向壁部41,42の自由端側は、一対の第一対向壁部31,32の内側に配置されると共に、この一対の第一対向壁部31,32の自由端側とそれぞれ重ねられた状態とされて、この一対の第一対向壁部31,32の自由端側と車両前後方向に亘って溶接部46により結合されている。
【0037】
また、このインナチャンネル30及びサイドレール40によって構成されたサイドメンバ20の内部には、補強部材としてのリインフォースメント50が設けられている。
【0038】
リインフォースメント50は、車両上下方向に対向する一対の対向補強壁部51,52と、この一対の対向補強壁部51,52の車両幅方向内側の端部を連結する連結補強壁部53とを有すると共に、インナチャンネル30と同じ側(車両幅方向外側)に開口する断面コの字状に形成されている。また、このリインフォースメント50は、サイドメンバ20の長手方向(車両前後方向)に延びる長手状に形成されている。
【0039】
一対の対向補強壁部51,52には、図7,図8にその一部が示されるように、長手方向における複数の位置の自由端側に切欠部54が形成されている。そして、一対の対向補強壁部51,52の自由端側は、一対の第一対向壁部31,32の自由端側とそれぞれ重ねられた状態とされて、この一対の第一対向壁部31,32の自由端側と各切欠部54において溶接部56によって結合されている。
【0040】
また、図5,図6に示されるように、車両上下方向下側に配置された一方の対向補強壁部51の自由端51Aは、一方の第二対向壁部41の自由端41Aと突き当てられている。
【0041】
一方、図4,図6に示されるように、車両上下方向上側に配置された他方の対向補強壁部52における長手方向の一部には、一方の対向補強壁部51側(車両上下方向下側)に凹む凹状部58が形成されている。この凹状部58は、より具体的には、図3に示されるように、他方の対向補強壁部52における長手方向の三箇所、すなわち、ロッカ部22、キック部24、ロッカ部22とキック部24との連結部28にそれぞれ形成されている。
【0042】
凹状部58の底部59は、図6に示されるように、他方の第二対向壁部42に向かうに従って一方の対向補強壁部51側(車両上下方向下側)に向かうように傾斜されており、その自由端59Aは、他方の第二対向壁部42の自由端42Aよりも連結補強壁部53側且つ一方の対向補強壁部51側(車両幅方向内側且つ車両上下方向下側)に位置されている。また、図5に示されるように、この他方の対向補強壁部52の長手方向における凹状部58の両側の自由端52Aは、他方の第二対向壁部42の自由端42Aと突き当てられている。
【0043】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
本発明の一実施形態に係る車体構造10では、図5,図6に示されるように、サイドメンバ20の内部に、断面コの字状のリインフォースメント50が設けられており、このリインフォースメント50に形成された一方の対向補強壁部51の自由端51Aは、サイドレール40に形成された一方の第二対向壁部41の自由端41Aと突き当てられている。
【0045】
一方、リインフォースメント50に形成された他方の対向補強壁部52の長手方向の一部には、一方の対向補強壁部51側(車両上下方向下側)に凹む凹状部58が形成されている。そして、凹状部58の底部59の自由端59Aは、他方の第二対向壁部42の自由端42Aよりも連結補強壁部53側且つ一方の対向補強壁部51側(車両幅方向内側且つ車両上下方向下側)に位置されている。
【0046】
従って、図9に示されるように、例えば、車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突によりサイドメンバ20に対して車両前後方向前側から衝突荷重Fが入力された場合には、図10に示されるように、一方の対向補強壁部51の自由端51Aと一方の第二対向壁部41の自由端41Aとが突き当たることでサイドメンバ20における車両上下方向下側の変形が抑制される。
【0047】
また、このとき、図5に示されるように、他方の対向補強壁部52の長手方向における凹状部58の両側の自由端52Aと他方の第二対向壁部42との自由端42Aとが突き当たることでサイドメンバ20におけるこの部位の変形も抑制される。
【0048】
これに対し、図10に示されるように、凹状部58の底部59の自由端59Aと他方の第二対向壁部42の自由端42Aとは突き当たらないので、この結果、サイドメンバ20は、図9の矢印Aで示されるように、ロッカ部22からキック部24に至る領域における凹状部58が形成された部位(図9のB,C,D点;図3も参照)を起点として車両上下方向上側に折り曲げられる。
【0049】
つまり、この車体構造10では、一方の対向補強壁部51の自由端51Aと一方の第二対向壁部41の自由端41Aとが突き当てられることにより、サイドメンバ20における車両上下方向下側の耐力が確保されている。これに対し、他方の対向補強壁部52には、複数の凹状部58が形成されることにより、サイドメンバ20における車両上下方向上側の耐力は、サイドメンバ20における車両上下方向下側の耐力よりも低くなっている。そして、この耐力差により、サイドメンバ20は、車両上下方向下側に凸をなすように車両上下方向上側に折り曲げられる。
【0050】
このように、本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、例えば車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突時には、サイドメンバ20を特定の方向(車両上下方向上側)に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0051】
また、リインフォースメント50に凹状部58を設けただけであるので、質量やコストの増加を抑えつつ、衝突エネルギを吸収することができる。
【0052】
しかも、凹状部58は、ビードとしての役割も果たすので、この凹状部58によりリインフォースメント50の剛性も確保することができる。
【0053】
なお、インナチャンネル30とサイドレール40とを結合する前に、インナチャンネル30の内側にリインフォースメント50を結合しておけば、一方の第二対向壁部41の自由端41Aと一方の対向補強壁部51の自由端51Aとの突き当てと、他方の第二対向壁部42の自由端42Aと他方の対向補強壁部52の自由端52Aとの突き当てを利用して、インナチャンネル30とサイドレール40との車両幅方向における互いの位置決め(つまり、サイドメンバ20の組み幅)も保証することができる。
【0054】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0055】
上記実施形態において、車体構造10は、凹状部58がサイドメンバ20における車両上下方向上側に形成された構成とされていたが、これと断面が上下反対の構成とされていても良い。この場合には、例えば車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突時に、サイドメンバ20を車両上下方向下側に折り曲げることができる。
【0056】
また、上記実施形態において、凹状部58は、ロッカ部22、キック部24、ロッカ部22とキック部24との連結部28の三箇所に形成されていたが、このうちの二箇所又は一箇所に形成されていても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、他方の対向補強壁部52の長手方向の一部に凹状部58が形成されていたが、図11に示されるように、他方の対向補強壁部52は、長手方向に亘って自由端52Aが他方の第二対向壁部42の自由端42Aよりも連結補強壁部53側且つ一方の対向補強壁部51側(車両幅方向内側且つ車両上下方向下側)に位置されるように、車両幅方向に対して車両上下方向下側に傾斜されていても良い。
【0058】
このように構成されていても、例えば、車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突によりサイドメンバ20に対して車両前後方向前側から衝突荷重が入力された場合には、他方の対向補強壁部52の自由端52Aが長手方向に亘って他方の第二対向壁部42の自由端42Aと突き当たらないので、サイドメンバ20におけるいずれかの箇所を起点としてサイドメンバ20を特定の方向(車両上下方向上側)に折り曲げて衝突エネルギを吸収することができる。
【0059】
なお、図11に示される変形例では、他方の対向補強壁部52がサイドメンバ20における車両上下方向上側に形成された構成とされていたが、これと断面が上下反対の構成とされていても良い。この場合には、例えば車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突時に、サイドメンバ20を車両上下方向下側に折り曲げることができる。
【0060】
また、上記実施形態において、本発明の一実施形態に係る車体構造10は、サイドメンバ20に適用されていたが、例えば、図12に示されるように、上述のクロスメンバ61〜67のいずれかに相当する骨格部材としてのクロスメンバ70に適用されても良い。
【0061】
この図12に示される変形例において、クロスメンバ70は、第一骨格構成部材80と、第二骨格構成部材90とによって構成されており、また、このクロスメンバ70の内部には、補強部材としてのリインフォースメント100が設けられている。また、このクロスメンバ70は、第一骨格構成部材80と第二骨格構成部材90とが車両上下方向に対向するように配置されている。なお、この第一骨格構成部材80、第二骨格構成部材90、リインフォースメント100の構成は、上述のインナチャンネル30、サイドレール40、リインフォースメント50と同様の構成となっており、各部材の構成については、同一符合を用いてその説明を省略する。
【0062】
また、本発明の一実施形態に係る車体構造10は、サイドメンバやクロスメンバ以外の骨格部材に適用されても良い。
【0063】
また、上記実施形態において、車体構造10は、車両幅方向内側にインナチャンネル30及びリインフォースメント50が配置され、車両幅方向外側にサイドレール40が配置された構成とされていたが、これと断面が左右反対の構成とされていても良い。
【0064】
また、上記実施形態において、一方の対向補強壁部51の自由端51Aと一方の第二対向壁部41の自由端41Aとは、はじめから突き当たって配置されていたが、車両衝突時になってはじめて突き当たるように若干離れて配置されていても良い。
【0065】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10 車体構造
20 サイドメンバ(骨格部材)
22 ロッカ部
24,26 キック部
28 連結部
30 インナチャンネル(第一骨格構成部材)
31,32 第一対向壁部
33 第一連結壁部
40 サイドレール(第二骨格構成部材)
41,42 第二対向壁部
43 第二連結壁部
50 リインフォースメント(補強部材)
51,52 対向補強壁部
53 連結補強壁部
58 凹状部
59 底部
70 クロスメンバ(骨格部材)
80 第一骨格構成部材
90 第二骨格構成部材
100 リインフォースメント(補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第一対向壁部と、前記一対の第一対向壁部の端部を連結する第一連結壁部とを有する断面コの字状に形成された第一骨格構成部材と、
一対の第二対向壁部と、前記一対の第二対向壁部の端部を連結する第二連結壁部とを有する断面コの字状に形成されると共に、前記第一骨格構成部材と互いの開口部が向き合うように配置され、且つ、前記一対の第二対向壁部の自由端側が前記一対の第一対向壁部の内側で前記一対の第一対向壁部の自由端側とそれぞれ重ねられた状態で結合されて、前記第一骨格構成部材とで長手状の骨格部材を構成する第二骨格構成部材と、
一対の対向補強壁部と、前記一対の対向補強壁部の端部を連結する連結補強壁部とを有すると共に、前記第一骨格構成部材と同じ側に開口する断面コの字状に形成され、且つ、前記骨格部材の長手方向に延びる長手状に形成されて前記第一骨格構成部材と結合された補強部材と、
を備え、
前記一対の対向補強壁部のうち一方は、前記一対の第二対向壁部のうち一方と互いの自由端が突き合わされ、
前記一対の対向補強壁部のうち他方は、少なくとも長手方向の一部の自由端が前記一対の第二対向壁部のうち他方の自由端よりも前記連結補強壁部側且つ前記一方の対向補強壁部側に位置されている、
車体構造。
【請求項2】
前記他方の対向補強壁部には、前記一方の対向補強壁部側に凹み、前記長手方向の一部を底部とする凹状部が形成され、
前記他方の対向補強壁部の長手方向における前記凹状部の両側は、前記他方の第二対向壁部と互いの自由端が突き合わされている、
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記骨格部材は、前記一対の第一対向壁部の対向方向を車両上下方向とするように配置されると共に車体側部にて車両前後方向に延在するサイドメンバとされ、
前記サイドメンバは、車両前後方向中央部に形成されたロッカ部と、前記ロッカ部の前端部又は後端部から車両前後方向に沿って前記ロッカ部から遠ざかるに従って車両上下方向上側に向かうように傾斜するキック部とを有し、
前記凹状部は、前記ロッカ部、前記キック部、前記ロッカ部と前記キック部と連結部のうちの少なくともいずれかの車両上下方向上側に形成されている、
請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記他方の対向補強壁部は、長手方向に亘って自由端が前記他方の第二対向壁部の自由端よりも前記連結補強壁部側且つ前記一方の第二対向壁部側に位置されている、
請求項1に記載の車体構造。
【請求項5】
前記骨格部材は、前記他方の対向補強壁部が前記一方の対向補強壁部に対する車両上下方向上側又は下側に位置するように配置されると共に車体側部にて車両前後方向に延在するサイドメンバとされている、
請求項2又は請求項4に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−46234(P2011−46234A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194648(P2009−194648)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】