説明

車体補強部材

【課題】 内部の空間を有効利用した車体補強部材を提供する。
【解決手段】 車体補強部材であるストラットタワーバー17のバー本体18内に、エンジンルーム14内の音に共鳴することによってエンジンルーム14内の音を吸収するための共鳴管26を設け、バー本体18と共鳴管26とで、いわゆるヘルムホルツ共鳴の原理に基づく吸音器29を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の剛性を高めるための車体補強部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の例えば前部には、エンジンのような駆動源が収容された駆動源搭載ルームが設けられており、その内部には、例えばストラットタイプのサスペンション部材が取り付けられる一対のストラットタワーが車幅方向で互いに対向して設けられている。従来、車体の前部の剛性を高めるために、ストラットタワーを互いに連結する中空の棒状をなした車体補強部材であるストラットタワーバーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
各ストラットタワーが走行路面からサスペンション部材を介して突き上げ力を受けたとき、この突き上げ力の一部がストラットタワーバーに該ストラットタワーバーをその長手方向に圧縮する圧縮力として作用するので、突き上げ力による各ストラットタワーの変形を抑制することができる。
【特許文献1】特開2002−308149号(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストラットタワーバーのような車体補強部材による車体の補強強度を高めるべくストラットタワーバーの剛性を高めるために、ストラットタワーバーの径すなわちストラットタワーバーの太さを太くすることが考えられている。
【0005】
しかしながら、ストラットタワーバーを太くすることにより広がったストラットタワーバーの内部の空間を有効に利用することは考えられておらず、ストラットタワーバー内の空間が無駄な空間となっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、内部の空間を有効利用した車体補強部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の駆動源が収容された駆動源搭載ルーム内に車両の幅方向に沿って配置され、走行路面からの衝撃を緩和するためのサスペンション部材を取り付けるべく前記駆動源搭載ルーム内に設けられた一対のサスペンション取付部を互いに連結する棒状の車体補強部材であって、中空のバー本体と、該バー本体を前記各サスペンション取付部に取り付けるための一対の取付部材とを備え、前記バー本体の内部には、共鳴により前記駆動源搭載ルーム内の音を吸収するための共鳴管が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成では、車体補強部材のバー本体内に共鳴管を設けることにより、バー本体と共鳴管とで共同していわゆるヘルムホルツ共鳴を原理とする吸音器が構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バー本体と該バー本体内に設けられた各共鳴管とで吸音器を構成することができるので、車体補強部材の剛性を高めるべくバー本体の内径を大きくすることにより広がったバー本体内の空間を、駆動源搭載ルーム内の音を吸収するための吸音空間として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0011】
本実施例は、ストラットタイプのサスペンション部材を備える車両に、本発明を適用した例を示す。
【0012】
本発明に係る車両10の前部11には、図1に示すように、車両10の駆動源であるエンジン13が収容されたエンジンルーム14が設けられている。エンジン13は、図示の例では、エンジンルーム14のほぼ中央部に配置されている。
【0013】
エンジンルーム14内には、図示しない一対のサスペンション部材を取り付けるためのサスペンション取付部である一対のストラットタワー15が、車幅方向で互いに対向して設けられている。前記各サスペンション部材は、従来よく知られているように、車両10が走行路面から受ける突き上げ力を緩和するための衝撃緩和部材である。
【0014】
各ストラットタワー15は、エンジンルーム14の図示しない底部に該底部から上方へ立ち上がるように形成されている。各ストラットタワー15の上面15aには、それぞれ上方へ突出する突起16が形成されている。
【0015】
また、エンジンルーム14内には、車両10の前部11を補強するための車体補強部材であるストラットタワーバー17が設けられている。ストラットタワーバー17は、鉄及びステンレスのような金属で形成されており、図1及び図2に示すように、車幅方向に沿って配置されたバー本体18と、該バー本体を各ストラットタワー15に取り付けるための一対の取付部材19とを備える。
【0016】
バー本体18は、横断面が円形をなした中空の管部材からなり、その両端20は開放している。各取付部材19は、一端19aに、バー本体18の端部21に取り付けられる取付部22を有し、他端19bに、各ストラットタワー15に固定される円形の固定部23を有する。各固定部23には、各ストラットタワー15の突起16の挿入を許す挿入孔23aがそれぞれ形成されている。各取付部22は、バー本体18の各端部21にその各開口24を閉鎖しないように取り付けられており、図示の例では、バー本体18の両端部21に溶接により固定されている。また、各固定部23は、図示の例では、その挿入孔23a内にストラットタワー15の突起16を挿入した状態でボルト及びナットのような締結部材25により各ストラットタワー15の上面15aに固定されている。バー本体18が各取付部材19を介して各ストラットタワー15に固定されることにより、各ストラットタワー15は、ストラットタワーバー17により互いに連結される。
【0017】
車両10の走行時、各ストラットタワー15が前記前輪及び前記各サスペンション部材を介して走行路面から上方へ向けての突き上げ力を受けたとき、その突き上げ力の一部がストラットタワーバー17のバー本体18に該バー本体をその長手方向に圧縮する圧縮力として各取付部材19を介して作用する。これにより、各ストラットタワー15が突き上げ力により車両10の内方へ向けて変形することが阻止されるので、このストラットタワーバー17の補強機能により、各ストラットタワー15が突き上げ力により変形することによる車両10の前部11全体の歪みを防止することができる。
【0018】
本発明に係るストラットタワーバー17には、図2に示すように、バー本体18の内部に、エンジンルーム14内の音に共鳴することによりエンジンルーム14内の音を吸収するための一対の共鳴管26が設けられている。各共鳴管26は、バー本体18と共同していわゆるヘルムホルツ共鳴の原理に基づく吸音器29を構成している。
【0019】
各共鳴管26は、両端26a,26bが開放するゴムホースからなり、図3に示すように、エンジンルーム14内に発生した音の周波数帯域のうち200Hzの周波数成分の音の腹位置すなわち音圧が最大となる位置に対応する位置である、バー本体18の両端部21内に配置されている。
【0020】
バー本体18の両端部21には、図2に示すように、それぞれ両端20の開口24を閉鎖するように円形の蓋部材27が設けられており、各蓋部材27の中心には、それぞれ円形の孔28が形成されている。各共鳴管26は、図示の例では、各蓋部材27の孔28の縁部28aに該縁部からバー本体18の内部へ向けて該バー本体の長手方向に沿って伸びるように各蓋部材27に一体に形成されている。
【0021】
各共鳴管26の共鳴周波数は、下記の式1により求めることができる。
【0022】
f=(1/2π)・{S/(V・l))}1/2 (式1)
式1において、fは、各管部材の共鳴周波数であり、Vは、バー本体18の体積であり、Sは、各共鳴管26の断面積であり、lは、各共鳴管26の軸線方向の長さ寸法である。
【0023】
従って、エンジンルーム14内に発生した音の周波数帯域のうち200Hzの周波数成分の音に各共鳴管26を共鳴させる場合、バー本体18の内径を15mm、バー本体18の長手方向の長さ寸法を900mm、各共鳴管26の内径及び各蓋部材27の孔28の径を7mmとすると、各共鳴管26の軸線方向の長さ寸法を20mmに設定すればよい。
【0024】
例えばエンジン13が駆動することによりエンジンルーム14内に音が発生し、その音が各蓋部材27の孔28を経て各共鳴管26内に入ると、従来よく知られているように、各共鳴管26内の空気は、音から受ける音圧によりバー本体18内に押し込まれ、バー本体18内の空気から受ける気圧によりバー本体18の外方へ向けて再び押し戻される。この繰り返しにより、各共鳴管26内の空気は、エンジンルーム14内の音の前記した所定の周波数で単振動する。この単振動により各共鳴管26内の空気と各共鳴管26との間に摩擦が生じ、この摩擦により音のエネルギーが熱エネルギーに変換され、これにより、エンジンルーム14内の所定の周波数成分の音が吸収される。
【0025】
このように、ストラットタワーバー17のバー本体18内に共鳴管26を設けることにより、バー本体18と共鳴管26とで共同していわゆるヘルムホルツ共鳴を原理とする吸音器29を構成することができるので、ストラットタワーバー17の剛性を高めるべくバー本体18の内径を大きくすることにより広がったバー本体18内の空間を、エンジンルーム14内の音を吸収するための吸音空間として有効に利用することができる。
【0026】
また、各共鳴管26が、前記したように、エンジンルーム14内に発生した音の周波数帯域のうち所定の周波数成分の音の腹位置に配置されていることから、エンジンルーム14内の音をより効率よく吸収することができる。
【0027】
本実施例では、各共鳴管26の長さ寸法が、200Hzの周波数成分の音に共鳴させるように設定された例を示したが、これに代えて、各共鳴管26の長さ寸法を、200Hz以外の周波数成分の音に共鳴させるように設定することができる。この場合、音の周波数成分に応じて式1により求めることにより、各共鳴管26の長さ寸法を設定することができる。このとき、各共鳴管26が、前記したように、それぞれゴムホースからなることから、各共鳴管26の長さ寸法を短くする際には、各共鳴管26を所望の長さに容易に切ることができる。
【0028】
また、各共鳴管26が例えば金属からなる場合、各共鳴管26の長さ寸法を長くすべく長さ寸法の長い共鳴管を新たに形成するのに製造コストが比較的多くかかってしまうが、本実施例によれば、各共鳴管26がそれぞれゴムホースからなることから、各共鳴管26が金属で成形された場合に比べて、製造コストの増大を招くことなく、新たに長さ寸法の長い共鳴管を容易に形成することができる。
【0029】
また、本実施例では、各共鳴管26が各蓋部材27に一体に形成された例を示したが、これに代えて、各共鳴管26を各蓋部材27と別体に形成することができる。
【0030】
更に、本実施例では、バー本体18が、両端開放の管部材からなり、バー本体18の両端20の開口24を閉鎖するように蓋部材27が設けられた例を示したが、各蓋部材27を不要とすることができる。この場合、図示しないが、両端が閉鎖した管部材でバー本体18を構成し、その端壁に開口を形成し、開口の縁部に該縁部からバー本体18の内方へ該バー本体の長手方向に沿って伸びるように各共鳴管26を前記端壁と一体又は別体に形成することができる。
【0031】
また、本実施例では、各共鳴管26がそれぞれバー本体18の両端部21に設けられた例を示したが、これに代えて、エンジンルーム14内に発生した音の周波数帯域のうち吸音する所期の周波数成分の腹位置に応じて、バー本体18への各共鳴管26の配置を変えることができる。
【0032】
更に、本実施例では、ストラットタイプの前記サスペンション部材を備える車両10に本発明を適用した例を示したが、これに代えて、例えば、マルチリンクタイプのサスペンション部材を備える車両に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るストラットタワーバーがエンジンルーム内に配置された状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るストラットタワーバーを概略的に示す縦断面図である。
【図3】エンジンルーム内に発生した音の200Hzにおける波形を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 車両
13 駆動源(エンジン)
14 駆動源搭載ルーム(エンジンルーム)
15 サスペンション取付部(ストラットタワー)
17 車体補強部材(ストラットタワーバー)
18 バー本体
19 取付部材
29 吸音器
26 共鳴管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源が収容された駆動源搭載ルーム内に車両の幅方向に沿って配置され、走行路面からの衝撃を緩和するためのサスペンション部材を取り付けるべく前記駆動源搭載ルーム内に設けられた一対のサスペンション取付部を互いに連結する棒状の車体補強部材であって、中空のバー本体と、該バー本体を前記各サスペンション取付部に取り付けるための一対の取付部材とを備え、前記バー本体の内部には、共鳴により前記駆動源搭載ルーム内の音を吸収するための共鳴管が設けられていることを特徴とする車体補強部材。
【請求項2】
前記共鳴管は、ゴムホースからなることを特徴とする請求項1に記載の車体補強部材。
【請求項3】
前記共鳴管は、前記駆動源搭載ルーム内に生じる音の周波数帯域のうち所定の周波数成分の音圧が最大となる位置にほぼ対応する位置で、前記バー本体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載の車体補強部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−38850(P2007−38850A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225378(P2005−225378)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】