説明

車軸ケース

【課題】バックプレートタイプの車軸ケースよりも部品点数を削減できるだけでなく、バックプレートタイプの車軸ケースと同等以上の強度を有する車軸ケースを提供する。
【解決手段】本体12の長手方向の端面とスピンドル14の長手方向の端面の外径及び板厚を略等しくするだけでなく、図4(B)に示すように、本体12の前記長手方向端面における板厚の中心線CTと、前記スピンドル14の前記長手方向端面における板厚の中心線CTとをスムーズに繋ぐようなスピンドル形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の本体の長手方向端面にスピンドルの長手方向端面を突き合わせて溶接する突合せ溶接部を備えた車軸ケースに関する。
【0002】
車軸ケースとスピンドルの突合せ溶接構造において溶接溶け込み100%を確保するために、別部品(バックプレート)を使用しており、組立時にはこのバックプレートをスピンドルに挿入する工数が発生する(このようなバックプレートを使用するタイプはバックプレートタイプと呼ばれており、例えば、特許文献1参照)。また、バックプレートに代えて従来知られているバックプレート機能を持たせたスピンドルを使用するタイプはインロータイプと呼ばれており、このインロータイプは、バックプレートタイプに比較して強度上劣る(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−115405号公報
【特許文献2】特開昭63−281729 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したようにバックプレートタイプの車軸ケースはインロータイプの車軸ケースに比べて強度上有利であるが、部品点数が多くなるという問題がある。一方、インロータイプの車軸ケースは、バックプレートタイプの車軸ケースに比べて部品点数は少ないが、強度上劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、バックプレートタイプの車軸ケースよりも部品点数を削減できるだけでなく、バックプレートタイプの車軸ケースと同等以上の強度を有する車軸ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の車軸ケースは、本体の円筒状の長手方向端面にスピンドルの長手方向端面を突き合わせて溶接する突合せ溶接部を備えた車軸ケースにおいて、
(1)前記突合せ溶接部は、
【0006】
前記本体の長手方向の端面と前記スピンドルの長手方向の端面の外径及び板厚を略等しくするとともに、前記本体の前記端面及び前記スピンドルの前記端面双方のうちのいずれか一方の端面を板厚同一のまま外径より縮径して他方の端面の内径が嵌合する小径部を形成して突き合わせて溶接したものであることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、
(2)前記いずれか一方の端面として前記本体の前記長手方向の前記端面を縮径してもよい。
また、
(3)前記いずれか一方の端面として前記スピンドルの前記長手方向の前記端面を縮径してもよい。
さらに、
(4)前記本体の前記長手方向端面における板厚の中心線と、前記スピンドルの前記長手方向端面における板厚の中心線とは、直線的につながっていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではバックプレートタイプに対し、インロータイプとすることで部品削減(バックプレート廃止)および組立工数の削減ができる。
本発明では従来のインロータイプに対し、接合端部の本体板厚中心線とスピンドルの板厚中心線が従来のものに比べてより直線的に連続することになり、車軸ケースASSYへの入力に対する同接合部の応力集中を緩和する形状となるので、バックプレートタイプと同等の強度を有する。
【0009】
本発明ではバックプレートタイプからの変更であっても、組立の設備をそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、例えばトラックなどに好適な車軸ケース(車軸ケースASSY)10に実現された。
【実施例1】
【0011】
図1を参照して本発明の車軸ケースの一例を説明する。図1は、本発明の車軸ケース10の一例を示す斜視図である。
【0012】
車軸ケ−ス10は、長手方向両端部が円筒状の本体12と、この本体12の長手方向(矢印L方向)両端面にその長手方向両端面が突き合わされて溶接されたスピンドル14とから構成されている。
図1に示す車軸ケース10をバックプレートタイプからインロータイプに変更した例について図2と図4を参照して説明する。図2は、従来のバックプレートタイプを示す断面図であり、図4は、本発明のインロータイプを示す断面図である。
【0013】
図2に示すようなバックプレートタイプから、図4に示すようなインロータイプにすることにより、バックプレートを廃止でき、部品点数及び組立工数を削減できる。図4に示すようなインロータイプにするためには、本体12の円筒状の長手方向端面にスピンドル14の長手方向端面を突き合わせて溶接する突合せ溶接部を備えた車軸ケース10において、本体12の長手方向の端面と前記スピンドル14の長手方向の端面の外径及び板厚を略等しくするとともに、前記本体12の前記端面及び前記スピンドル14の前記端面双方のうちのいずれか一方(例えばスピンドル14)の端面を板厚同一のまま外径より縮径して他方(例えば本体12)の端面の内径12Aに嵌合する小径部14Aを形成してこれに結合する。この逆に、本体12の長手方方向端面を縮径してもよい。ここで、本体12の長手方向の端面とスピンドル14の長手方向の端面の外径及び板厚を略等しくするとは、スピンドル14の外径及び板厚が本体12の外径及び板厚の1倍から1.3倍までをいう。
【0014】
ところが、図3に示すような従来からのインロータイプでは、図2(B)及び図3(B)に示すように車軸ケースASSY12への入力に対し、溶接ルートWR近傍に応力集中部位ができ、バックプレートタイプと比較して強度的に劣る。
【0015】
そこで、図4に示すように、両者の板厚中心線をスムーズに繋ぐようなスピンドル形状とすることで車軸ケースASSY10への入力に対する応力集中を緩和でき、バックプレートタイプと同等の強度を確保できる。なお、図5に示すように、本体12の内径を縮径してもよい。
本発明では, 図2に示すようなバックプレートタイプから、図4に示すようなインロータイプにしたので部品削減(バックプレート廃止)および組立工数の削減ができた。
【0016】
本発明では図4(B)に示すように従来のインロータイプに対し、接合端面おける本体10の板厚中心線CTとスピンドル14の板厚中心線CTが従来のものに比べてより直線的に連続することになり、車軸ケースASSYへの入力に対する同接合部の応力集中を緩和する形状になるので、バックプレートタイプと同等の強度を有する。
本発明ではバックプレートタイプからの変更であっても、組立の設備をそのまま使用することができる。
なお、上記の例ではスピンドル14を本体12の内側に嵌合した例を説明したが、図5に示すように本体12をスピンドル14の内側に嵌合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の車軸ケースの一例を示す斜視図である。
【図2】従来のバックプレートタイプを示す断面図であり
【図3】従来のインロータイプを示す断面図である。
【図4】本発明の車軸ケース示す断面図である。
【図5】本発明のケースを示す断面図であるが、本体をスピンドルの内側に嵌合したタイプである。
【符号の説明】
【0018】
10 車軸ケースASSY
12 本体
12A 本体の端面の内径
14 スピンドル
CT スピンドルの長手方向端面における板厚の中心線
CT 本体の長手方向端面における板厚の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の円筒状の長手方向端面にスピンドルの長手方向端面を突き合わせて溶接する突合せ溶接部を備えた車軸ケースにおいて、
前記突合せ溶接部は、
前記本体の長手方向の端面と前記スピンドルの長手方向の端面の外径及び板厚を略等しくするとともに、前記本体の前記端面及び前記スピンドルの前記端面双方のうちのいずれか一方の端面を板厚同一のまま外径より縮径して他方の端面の内径が嵌合する小径部を形成して突き合わせて溶接したものであることを特徴とする車軸ケース。
【請求項2】
前記いずれか一方の端面として前記本体の前記長手方向の前記端面を縮径したことを特徴とする請求項1に記載の車軸ケース。
【請求項3】
前記いずれか一方の端面として前記スピンドルの前記長手方向の前記端面を縮径したことを特徴とする請求項1に記載の車軸ケース。
【請求項4】
前記本体の前記長手方向端面における板厚の中心線と、前記スピンドルの前記長手方向端面における板厚の中心線とは、直線的につながっているものであることを特徴とする請求項1から3までのうちのいずれか一項に記載の車軸ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−126021(P2010−126021A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303645(P2008−303645)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】