説明

車載動画表示装置

【課題】走行中の安全性を確保しつつ、運転者にとっての娯楽性を向上させることが可能な表示制御を行う車載動画表示装置を提供する。
【解決手段】表示処理では、車両の走行状態に基づく各パラメータを取得し(S110)、車両が走行中である場合には(S120;NO)、取得した各パラメータを負荷換算テーブルに入力することにより、車両の運転に対する運転者の負荷レベルを出力し、この負荷レベルを表す運転負荷推定情報を生成する(S130)。そして、生成した運転負荷推定情報に基づいて、負荷レベルが許容レベル範囲内である場合に限り(S150;YES)、静止画コマ送り映像を表示する(S160)。これにより、運転中の動画像の表示を一律に禁止する場合と比較して、運転者の注意力が散漫にならない範囲内で、テレビ等の娯楽的内容を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて各種の動画像を表示する車載動画表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のセンターコンソール等に取り付けられて、表示面の向きを運転席側から助手席側(またはその逆)に回動するためのモータを備える車載動画表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車載動画表示装置では、車両が走行中である場合に、表示面の向きが運転席側であり、且つ、その表示面に動画像が表示されていることを認識すると、モータで駆動することによって表示面の向きを助手席側に回動したりする表示制御を行うことにより、運転者に対して、車両の走行時における動画像の表示を一律に禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−200788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の車載動画表示装置では、車両の走行時であってもナビゲーション画面のような静止画コマ送り映像については運転者に向けて表示しているのに対し、テレビ等の動画像の表示だけを一律に禁止することから、両者の整合性がとれず、運転者にとって娯楽性を過度に奪うものであるという不満がでる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために、走行中の安全性を確保しつつ、運転者にとっての娯楽性を向上させることが可能な表示制御を行う車載動画表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載の車載動画表示装置は、少なくとも表示面が車両における運転席側から視認可能な位置に取り付けられ、その表示面に動画像を表示する表示手段と、推定情報生成手段と、表示制御手段とを備える。
【0008】
具体的には、推定情報生成手段が、車両の走行状態に基づいてその車両の運転に対する運転者の負荷レベルを表す運転負荷推定情報を生成し、表示制御手段が、車両の走行時に、推定情報生成手段にて推定された運転負荷推定情報に基づいて、上記の負荷レベルが予め設定された許容レベル範囲内である場合に限り、上記の動画像を構成するコマ画像が一定の設定間隔毎にスキップ送りで運転席側に表示されるように表示手段を制御する。
【0009】
このように構成された車載動画表示装置では、車両が走行中である場合に、表示面が運転者にとって視認可能な位置にあり、且つ、その表示面に動画像が表示されていても、運転者に対して、一律に動画像の表示を禁止することなく、運転者に余裕が比較的ある場合に限り、ナビゲーション画面のような静止画コマ送り映像で動画像が表示されることになる。
【0010】
したがって、本発明の車載動画表示装置によれば、車両の走行中であっても走行に影響を与えない範囲内で、テレビ等の動画像を運転者に提示することができ、ひいては、走行中の安全性を確保しつつ、運転者にとっての娯楽性を向上させることができる。また、運転者以外の搭乗者(例えば、助手席に着座した搭乗者)にも、同様の動画像を提示することができることから、モータ等のような表示面を回動させるための構成を省略することが可能となり、製造コストを抑制することができる。
【0011】
なお、運転負荷推定情報は、車両の走行状態として、例えば車両の速度や現在地における外部環境等に基づいて負荷レベルを推定することができる。また、テレビ等の動画像をナビゲーション画面のような静止画コマ送り映像(コマ画像)で表示した場合であっても、その動画像に対応する音声を通常通り出力しておくことにより、一瞬のコマ画像を視認させれば、運転者にその動画像の内容を比較的ストレスなく把握させることができる。
【0012】
ところで、本発明の車載動画表示装置では、請求項2に記載のように、表示制御手段が、上記の負荷レベルに応じて長くなるようにスキップ送りの間隔を設定してもよい。このように構成された車載動画表示装置では、負荷レベルが大きいほど、コマ画像が切り替わるタイミングが遅くなるので、運転者に余裕が比較的ない場合に過度に表示面に注意を向けさせることを抑制することができる。
【0013】
また、請求項3に記載のように、運転者の視線の向きを検出する視線検出手段を備えるとともに、表示制御手段が、この視線検出手段による検出結果に基づき、運転者の視線が表示面から逸脱している場合、前述の運転負荷推定情報の内容(ひいては、負荷レベルの大きさ)にかかわらず、表示手段による動画像の通常表示を許可する制御を行ってもよい。なお、ここでの通常表示とは、スキップ送りを行うことなく、予め規定された等倍速で動画像を表示することをいう。
【0014】
このように構成された車載動画表示装置では、運転者に余裕が比較的ない場合であっても、運転者が表示面に注意を向けていなければ、通常通りに動画像を表示することになるので、運転者に車両の走行中であっても走行に影響を与えずに済み、さらには運転者以外の搭乗者には制限を課さずにテレビ等の動画像を視聴させることができる。
【0015】
また、請求項4に記載のように、運転者の視線の向きを検出する視線検出手段を備えるとともに、表示制御手段は、上記の負荷レベルが許容レベル範囲内であっても、視線検出手段による検出結果に基づき、運転者の視線が予め設定された制限時間を超えて表示面に向いている場合には、例外的に表示手段による動画像の表示を禁止する制御を行ってもよい。
【0016】
このように構成された車載動画表示装置では、運転者に余裕がある場合であっても、運転者が過度に表示面に注意を向けていると走行に影響を与えかねないので、このようなときには例外的に動画像の表示を禁止することにより、運転者に対して車両の走行に注意を向けさせることができ、安全性をより重視することができる。
【0017】
さらには、請求項5に記載のように、表示制御手段は、動画像の表示を禁止する場合には、運転者の視線を車両前方に向けさせるための注意喚起用静止画像を表示手段に表示させる制御を行ってもよい。この場合、動画像が表示されない理由を直感的に運転者に知得させることが可能となるので、当該車載動画表示装置が故障かもしれないという無用の不安感を抱かせることなく、運転者に安全走行を迅速に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用された車載動画表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】制御部が実行する表示処理を示すフローチャートである。
【図4】車載動画表示装置の動作例を説明するためのマトリックス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[全体構成]
図1は、本実施形態の車両制御システム1の構成を示すブロック図であり、図2は、本発明が適用された車載動画表示装置3の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、車両制御システム1は、車両のフロントガラスの下端から車室内側へ延出するダッシュボードに配置された二つのディスプレイ装置11,13を有する車載動画表示装置3を備えている。なお、二つのディスプレイ装置11,13は共に、その表示面が車両における運転席側から視認可能な位置に取り付けられており、そのうち一方は運転席側から比較的近い位置(例えばセンターコンソール)に配置され、他方は運転席側から比較的遠い位置(助手席側から比較的近い位置)に配置されている。以下では、二つのディスプレイ装置11,13のうち、運転席側から比較的近い位置に配置された方をメインディスプレイ装置11、運転席側から比較的遠い位置に配置された方をサブディスプレイ装置13と称する。
【0021】
また、車載動画表示装置3は、車間制御電子制御装置(以下、「車間制御ECU」)5に接続され、その車間制御ECU5は、LAN通信バスを介して、エンジン電子制御装置(以下、「エンジンECU」)7、ブレーキ電子制御装置(以下、「ブレーキECU」)9などの各種ECUと接続されている。なお、各ECUは、いずれも周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、少なくともLAN通信バスを介して通信を実施するためのバスコントローラを備えている。
【0022】
車載動画表示装置3は、基本的には、二つのディスプレイ装置11,13のうち少なくとも一方によってテレビ等といった各種の動画像を表示したり、車両の現在地が重畳された地図等といった各種の静止画コマ送り映像あるいは静止画像を表示したりする装置である。なお、本実施形態では、複数の静止画像(コマ画像)が、1秒以内でコマ送りされる映像を通常再生映像とし、1秒を超えてコマ送りされる映像を静止画コマ送り映像とする。また、通常再生映像および静止画コマ送り映像を動画像と総称する。
【0023】
ブレーキECU9は、図示しないステアリングセンサ、ヨーレートセンサからの検出情報(操舵角、ヨーレート)に加え、図示しないM/C圧センサからの情報に基づいて判断したブレーキペダル状態を車間制御ECU5に送信する。そして、車間制御ECU5から目標加速度、ブレーキ要求等を受信し、これら受信した情報や判断したブレーキ状態に従って、ブレーキ油圧回路に備えられた増圧制御弁・減圧制御弁を開閉するブレーキアクチュエータを駆動することでブレーキ力を制御するように構成されている。
【0024】
エンジンECU7は、図示しない車速センサ、スロットル開度センサ、アクセルペダル開度センサからの検出情報(車速、エンジン制御状態、アクセル操作状態)を車間制御ECU5に送信する。そして、車間制御ECU5からは目標加速度、フューエルカット要求等を受信し、これら受信した情報から特定される運転状態に応じて、内燃機関のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ等に対して駆動命令を出力することで、内燃機関の駆動力を制御するように構成されている。
【0025】
車間制御ECU5は、前方レーダ6からターゲット情報、エンジンECU7から車速やエンジン制御状態、ブレーキECU9から操舵角、ヨーレート、ブレーキ操作状態等を受信する。また、車間制御ECU5は、図示しないクルーズコントロールスイッチ,目標車間設定スイッチなどによる設定値を車載動画表示装置3に出力するとともに、これら設定値及び前方レーダ6から受信したターゲット情報に基づいて、先行車両との車間距離を適切な距離に調節するための制御指令として、エンジンECU7に対しては、目標加速度、フューエルカット要求等を送信し、ブレーキECU9に対しては、目標加速度、ブレーキ要求等を送信する。さらに、車間制御ECU5は、エンジンECU7から受信した車速、ブレーキECU9から受信した操舵角、ブレーキ操作状態を車載動画表示装置3に出力するように構成されている。
【0026】
なお、前方レーダ6は、FMCW方式のいわゆる「ミリ波レーダ」として構成されたものであり、周波数変調されたミリ波帯のレーダ波を送受信することにより、車両や路側物等の物体を認識し、これらの認識結果に基づいて、自車両の前方を走行する先行車両に関するターゲット情報を作成して、車間制御ECU5に送信する。ちなみに、ターゲット情報には、少なくとも先行車両との相対速度、及び先行車両の位置(距離,方位)が含まれている。
【0027】
[車載動画表示装置の構成]
ここで、車載動画表示装置3の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、車載動画表示装置3は、前述した二つのディスプレイ装置11,13の他、ユーザからの各種指示を入力するための操作スイッチ群15と、各種のガイド音声や地上デジタルテレビ放送による音声等を出力するための音声出力装置17と、地上デジタルテレビ放送を受信するための地上デジタルテレビ放送受信機19と、運転者の視線の向きを検出するための画像センサ21と、各種情報を記憶するための外部メモリ23と、車両の現在位置を検出する位置検出器25と、地図データやプログラム等の各種データを記憶する外部記憶装置であるハードディスクドライブ(以下、「HDD」)27と、制御部30とを備えている。
【0028】
位置検出器25は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置等を検出するGPS受信機31と、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ33と、車間制御ECU5から車速を表す検出信号を入力する車速検出器35とを備えている。なお、これら各機器31,33,35は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。
【0029】
HDD27は、制御部30からの制御に基づいてハードディスクからデータを読み出し、これを制御部30へ入力する。このHDD27が記憶しているデータには、地図データ、位置検出精度向上のためのマップマッチングデータ、経路案内用データ、ナビゲーション機能を実現するためのプログラムが含まれている。
【0030】
ディスプレイ装置11,13は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置であり、制御部30からの画像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示する。例えば、テレビ画面として、地上デジタルテレビ放送受信機19によって受信した放送の動画像が表示される。また、ナビゲーション画面として、位置検出器25にて検出した車両の現在地を示すマークと、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねてなる静止画コマ送り映像が表示される。
【0031】
操作スイッチ群15は、ディスプレイ装置11,13と一体にそれぞれ構成され表示画面上に設置されるタッチパネル、及びディスプレイ装置11,13の周囲にそれぞれ設けられたメカニカルなキースイッチ等によって構成される。これにより、地上デジタルテレビ放送受信機19にて受信可能な放送チャンネルを切り替えたり、音量を調整したり、ディスプレイ装置11,13の表示画面をそれぞれテレビ画面またはナビゲーション画面のいずれかに選択したりする。
【0032】
音声出力装置17は、各種情報を音声によってユーザに報知するためのものである。これにより、ルート案内等の各種案内をメインディスプレイ装置11による表示と音声出力装置17からの音声出力との両方で実行できる。また、音声出力装置17は、二つの地上デジタルテレビ放送受信機19によってそれぞれ受信した地上デジタルテレビ放送の音声を出力する。
【0033】
なお、音声出力装置17は、車両のフロントガラスに向けて車内の天井部などに配置され、フロントガラスに反射して運転席側および助手席側にそれぞれ別々に指向するように音声を出力する複数の放射器からなる超指向性の音響反射システムを有して構成されていることが望ましい。これにより、メインディスプレイ装置11およびサブディスプレイ装置13によって互いに異なる放送チャンネルの内容を運転者および同乗者にそれぞれ視聴させることができる。
【0034】
地上デジタルテレビ放送受信機19は、各ディスプレイ装置11,13に対して一つずつ設けられ、送信所から放送される地上デジタルテレビ放送波を受信し、受信した地上デジタルテレビ放送波をデコードして得られる映像信号および音声信号を制御部30へ出力する。なお、ここでの映像信号は、複数の静止画像(コマ画像)が少なくとも1秒以内の間隔でコマ送り(即ち、動画像が通常再生)可能な信号をいう。
【0035】
画像センサ21は、運転者の顔及び瞳孔の少なくとも一方の動きを追跡して視線の向きを検出し、各ディスプレイ装置11,13についてそれぞれ運転者が表示面を見ているか否かを特定するためのセンサであり、CCDやCMOS等の固体撮像素子を有して構成されている。そして、画像センサ21は、この固体撮像素子によって運転者の顔を撮像し、その撮像信号を制御部30へ出力する。なお、運転者の瞳孔を追跡する場合には、運転者の眼と画像センサ21との距離を固定する必要があるため、運転者の眼に対して固体撮像素子の撮像画面を固定することが可能なヘッドマウンドタイプを使用してもよい。
【0036】
制御部30は、CPU,ROM,RAM,I/O,計時タイマー及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御部30は、ROMやHDD27等から読み出したプログラムに従って、各種処理を実行する。
【0037】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器25からの各種検出信号に基づいて座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、HDD27から読み込んだ現在位置付近の地図等を静止画コマ送り映像によって表示する処理である。また、経路案内処理は、HDD27に格納されている地図データと、操作スイッチ群15の操作による指示によって指定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路を算出し、その算出した経路に対する走行案内を行う処理である。
【0038】
また、制御部30は、地上デジタル放送の視聴が選択されている場合、地上デジタルテレビ放送受信機19から入力される映像信号及び音声信号を、ディスプレイ装置11,13及び音声出力装置17にそれぞれ出力する。このとき、制御部30は、後述する表示処理を実行する。
【0039】
なお、外部メモリ23は、例えば電気的に書き替え可能な不揮発性の半導体メモリ等が用いられ、車両状態や外部環境を表すパラメータを入力すると、後述する負荷レベルを出力することが可能な負荷換算テーブルが記憶されている。
【0040】
[表示処理]
ここで、制御部30が実行する表示処理を、図3に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、以下では、メインディスプレイ装置11に対する処理について説明するが、サブディスプレイ装置13に対する処理についても基本的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。但し、サブディスプレイ装置13に対する処理では、サブディスプレイ装置13への動画像の表示を禁止した場合には、自動的にメインディスプレイ装置11への動画像の表示も禁止する。
【0041】
まず、本処理が開始されると、S110では、負荷換算テーブルに入力するための各パラメータを取得する。具体的には、ナビゲーション関係の処理と同様に車両の現在位置を算出したり、現在位置付近の地図を読み込んだりする。さらには、車間制御ECU5から、クルーズコントロールスイッチ,目標車間設定スイッチなどによる設定値の他、車速、操舵角、ブレーキ操作状態等を表す各種情報を入力する。
【0042】
続くS120では、S110で取得した各パラメータのうち、車速がゼロ、つまり、車両が停止しているか否かを判断し、車速が停止している場合には、車両の運転に対する運転者の負荷がないものとして、S145に移行し、映像信号に基づく通常再生映像をメインディスプレイ装置11に表示し、S110に戻る。一方、車速が非ゼロ、つまり、車両が走行中である場合には、S130に移行する。
【0043】
S130では、外部メモリ23から負荷換算テーブルを読み出し、S110で取得した各パラメータをこの負荷換算テーブルに入力することにより、車両の運転に対する運転者の負荷レベルを出力し、この負荷レベルを表す運転負荷推定情報を生成する。具体的には、負荷換算テーブルでは、クルーズコントロール機能が使用されている場合や、目標車間距離が設定されている場合(特に目標車間距離が大きい場合)には、負荷レベルが非常に小さいものとして扱われる。また、車速や操舵角が小さい場合や、ブレーキ操作がなされていない場合、車両の現在地が郊外地である場合、車両の走行中の道路形状が直線形状である場合にも、負荷レベルが小さいものとして扱われる。逆に、車速や操舵角が大きい場合や、ブレーキ操作がなされている場合、車両の現在地が市街地である場合、車両の走行中の道路形状が曲線形状(カーブ形状)である場合には、負荷レベルが大きいものとして扱われる。なお、図示しない照度センサからの検出信号に基づき、車両周囲の明るさに応じて負荷レベルを調整してもよいし、ワイパの操作状態に基づき、天候に応じて負荷レベルを調整してもよい。
【0044】
続くS140では、画像センサ21から入力される撮像信号に基づいて、例えば運転者の顔がメインディスプレイ装置11の表示面を向いているか否かを判断し、ここで肯定的に判断した場合には、運転者の視線が表示面を向いているものとして、計時タイマーをオンにし、S150に移行する。一方、否定的に判断した場合には、運転者の視線が表示面から逸脱しているものとして、S145に移行し、映像信号に基づく通常再生映像をメインディスプレイ装置11に表示し、S110に戻る。
【0045】
S150では、S130で生成した運転負荷推定情報に基づいて、負荷レベルが予め設定された許容レベル範囲内であるか否かを判断し、負荷レベルが許容範囲内である場合には、車両の運転に対する運転者の負荷が小さいものとして、S155に移行し、負荷レベルが許容範囲を上回る場合には、運転者の負荷が大きいものとして、S180に移行する。
【0046】
S155では、この負荷レベルに応じて後述する設定間隔を選択する。具体的には、負荷レベルが大きいほど長くなり、負荷レベルが小さいほど短くなるように、予め設定された設定間隔(例えば、2〜10秒)を読み出す。
【0047】
S160では、地上デジタルテレビ放送受信機19から入力された映像信号に基づいて、この映像信号を構成するコマ画像(静止画像)を、S155における設定間隔毎にスキップさせながら、そのスキップした時間に対応する動画像を断続的に表示、つまり、静止画コマ送り映像をメインディスプレイ装置11に表示する。
【0048】
続くS170では、計時タイマーによる経過時間と、画像センサ21から入力される撮像信号とに基づいて、運転者の視線が予め設定された制限時間を超えて表示面を継続的に向いているか否かを判断し、ここで肯定的に判断した場合には、娯楽性よりも安全性を重視する必要があるものとして、S180に移行する。一方、否定的に判断した場合には、静止画コマ送り映像の表示が運転に影響を与えないものとして、計時タイマーをオフにし、S110に戻る。
【0049】
S180では、メインディスプレイ装置11による動画像(静止画コマ送り映像,通常再生映像)の表示を停止し、続くS190では、運転者の視線を車両前方に向けさせるための簡単な記号や文字、図形等の少なくとも一つを含む注意喚起用静止画像をメインディスプレイ装置11に表示し、計時タイマーをオフにして、S110に戻る。
【0050】
[動作例]
このように構成された車載動画表示装置3では、図4に示すように、車両が停止している場合には、運転負荷がないため、両方のディスプレイ装置11,13において、通常再生映像が表示される。また、車両が走行中である場合に、運転者の視線がいずれの表示面にも向いていなければ、運転に影響を与えずに済むため、両方のディスプレイ装置11,13において、通常再生映像が表示される。
【0051】
一方、車両が走行中であり、運転者の視線が表示面に向いた場合には、運転に影響を与える可能性があるため、運転者の視線が表示面に向いている状態が一定時間続く、あるいは、運転負荷が大きいものと推定されると、少なくともメインディスプレイ装置11において、動画像の表示が中止されることになる。なお、この場合、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いていなければ、サブディスプレイ装置13においては、通常再生映像が表示され続けることになる。また、この場合、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いていれば、両方のディスプレイ装置11,13において、動画像の表示が中止されることになる。ちなみに、動画像の表示が中止されたディスプレイ装置11,13には、注意喚起用静止画像が表示されることになる。
【0052】
さらに、車両が走行中であり、運転者の視線がメインディスプレイ装置11の表示面に向いた後の一定時間内に運転者の視線がその表示面から逸脱する場合、運転に影響を与えない可能性があるため、運転負荷が小さいものと推定されると、メインディスプレイ装置11において、静止画コマ送り映像が表示されることになる。なお、この場合、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いていなければ、サブディスプレイ装置13においては、通常再生映像が表示され続けることになる。また、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いた後の一定時間内に運転者の視線がその表示面から逸脱する場合には、両方のディスプレイ装置11,13において、静止画コマ送り映像が表示されることになる。
【0053】
[効果]
以上説明したように、本実施形態の車載動画表示装置3では、車両の走行状態に基づいて車両の運転に対する運転者の負荷レベルを推定し、負荷レベルが小さいものと判定した場合に限り、静止画コマ送り映像を表示するので、安全運転を妨げることなく、テレビ等の娯楽的内容を運転者に提供することができる。
【0054】
また、車載動画表示装置3では、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いていなければ、負荷レベルにかかわらず、通常再生映像をサブディスプレイ装置13に表示するので、運転者の注意力が散漫にならない範囲内で、助手席の同乗者に娯楽的内容を提供することができる。
【0055】
さらに、車載動画表示装置3では、運転者の視線がサブディスプレイ装置13の表示面に向いていれば、負荷レベルに応じて、サブディスプレイ装置13だけでなく、両方のディスプレイ装置11,13に対する表示制御を行うので、運転者の視線がサブディスプレイ装置13からメインディスプレイ装置11に移ることを防止でき、より安全性を高めることができる。
【0056】
[発明との対応]
本実施形態において、ディスプレイ装置11,13が表示手段、表示処理のうち、S110,130が推定情報生成手段、S120,S150〜S190が表示制御手段、S140及び画像センサ21が視線検出手段に相当する。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態の車載動画表示装置3は、二つのディスプレイ装置11,13を備えるが、いずれか一つを備えていればよく、さらには、いわゆるデュアルビューディスプレイ装置といった一つのディスプレイ装置によって、見る角度により内容の異なる2種類の画像を同時に表示可能なものを備えてもよい。なお、デュアルビューディスプレイ装置は、表示面に配置されたスリットによって、2種類の画像に対応する光の照射方向を、運転席側と助手席側とにそれぞれ個々の画像が表示されるように分離するものである。
【0059】
この場合、二つのディスプレイ装置11,13を一つに統合することになるので、省スペース化を図ることができ、画像センサ21をディスプレイ装置11,13毎に設ける必要がないので、さらに部品点数を少なくすることができる。
【0060】
また、デュアルビューディスプレイ装置を備える構成では、運転者の視線が表示面に向いている場合であっても、助手席側には常時、通常再生映像を表示すればよく、換言すれば、運転席側に表示される分についてのみ、先の表示処理を行えばよい。これにより、制御部30の処理負担を軽減することができる。
【0061】
また、上記実施形態の車載動画表示装置3では、運転負荷が小さい場合に、運転者がサブディスプレイ装置13に視線が向くと、サブディスプレイ装置13に静止画コマ送り映像を表示するようにしているが、これに限らず、例えばサブディスプレイ装置13による動画像の表示を禁止するようにしてもよい(図4参照)。つまり、サブディスプレイ装置13は、運転席から比較的離れた位置にあるため、運転者が見づらいことによって凝視する可能性を低減することを意図したものである。
【0062】
同様に、上記実施形態の車載動画表示装置3では、運転負荷が小さい場合に、運転者がサブディスプレイ装置13に視線が向くと、メインディスプレイ装置11に静止画コマ送り映像を表示するようにしているが、これに限らず、メインディスプレイ装置11による動画像の表示を禁止するようにしてもよい(図4参照)。
【0063】
なお、上記実施形態の車載動画表示装置3では、地上デジタルテレビ放送受信機19から入力される映像信号に基づく動画像を例にして説明したが、テレビに限らず、DVDやハードディスク等のメディアに記録された動画像についても適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…車両制御システム、3…車載動画表示装置、5…車間制御ECU、6…前方レーダ、7…エンジンECU、9…ブレーキECU、11…メインディスプレイ装置、13…サブディスプレイ装置、15…操作スイッチ群、17…音声出力装置、19…地上デジタルテレビ放送受信機、21…画像センサ、23…外部メモリ、25…位置検出器、30…制御部、31…GPS受信機、33…ジャイロスコープ、35…車速検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表示面が車両における運転席側から視認可能な位置に取り付けられ、該表示面に動画像を表示する表示手段と、
前記車両の走行状態に基づいて該車両の運転に対する運転者の負荷レベルを表す運転負荷推定情報を生成する推定情報生成手段と、
前記車両の走行時に、前記推定情報生成手段にて生成した運転負荷推定情報に基づいて、前記負荷レベルが予め設定された許容レベル範囲内である場合に限り、前記動画像を構成するコマ画像が一定の設定間隔毎にスキップ送りで前記運転席側に表示されるように前記表示手段を制御する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車載動画表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記負荷レベルに応じて長くなるように前記スキップ送りの間隔を設定することを特徴とする請求項1に記載の車載動画表示装置。
【請求項3】
前記運転者の視線の向きを検出する視線検出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記視線検出手段による検出結果に基づき、前記運転者の視線が前記表示面から逸脱している場合、前記運転負荷推定情報の内容にかかわらず、前記表示手段による動画像の通常表示を許可することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載動画表示装置。
【請求項4】
前記運転者の視線の向きを検出する視線検出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記負荷レベルが前記許容レベル範囲内であっても、前記視線検出手段による検出結果に基づき、前記運転者の視線が予め設定された制限時間を超えて前記表示面を向いている場合には、例外的に前記表示手段による動画像の表示を禁止することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車載動画表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記動画像の表示を禁止する場合、前記運転者の視線を車両前方に向けさせるための注意喚起用静止画像を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車載動画表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217097(P2012−217097A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82138(P2011−82138)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】