車載機器遠隔制御装置
【課題】検知手段を設けることなく、定期送信方式での他の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を防止できる車載機器遠隔制御装置を得る。
【解決手段】車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機1に送信するとともに、この呼出信号に応答する応答信号を携帯機1から受信し、応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機1に送信し、この質問信号に対する回答信号を携帯機1から受信して認証ECU6により認証を行い、認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、携帯機1は、LF受信部1cで受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定部を有し、この起動判定部は、受信した起動符号と予め決められた擬似雑音系列符号との相関値が、所定以上の場合に有効と判断して、応答信号を送信する。
【解決手段】車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機1に送信するとともに、この呼出信号に応答する応答信号を携帯機1から受信し、応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機1に送信し、この質問信号に対する回答信号を携帯機1から受信して認証ECU6により認証を行い、認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、携帯機1は、LF受信部1cで受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定部を有し、この起動判定部は、受信した起動符号と予め決められた擬似雑音系列符号との相関値が、所定以上の場合に有効と判断して、応答信号を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者により所持される携帯機と自動車側に設けられた作動制御手段との相互通信が確立したことを条件として、自動車のドアの施解錠を行うスマートキーシステムに代表される車載機器遠隔制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機を所有したユーザが、車両のアウタドアハンドルに配設された起動スイッチまたはタッチセンサを操作すると、その携帯機と相互通信し、正規ユーザであることが確認されれば、ドアをアンロックすることでユーザが車室内に入れるようにする車載機器遠隔制御装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)
また、車両側より車外の予め定められたエリアに定期的に呼出信号を送信すると共に、その呼出信号を受信した携帯機からの返信で正規ユーザであることが確認された場合で、前記エリアで車外から触ることのできる部位に設けられた解錠用タッチセンサ、施錠用タッチセンサで操作が認められた場合、ドアの施解錠を行う車載機器遠隔制御装置が知られている。(例えば、特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開昭60−119873号公報(第2〜8頁、図1)
【特許文献2】特開2006−9352号公報(第6〜11頁、図1)
【特許文献3】特許第3758303号公報(第2〜6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、車両側より車外の予め定められたエリアに定期的に呼出信号を送信する方式(以下、定期送信方式と称す)では、複数車両が駐車する駐車場等で、当該車両の近傍に他の車両が停止しているときに、両車両が同じタイミングで電波を送信すると、両電波の干渉により、両電波に歪みが生じ、各車両の通信エリアが極端に狭くなる。
このため、携帯機を当該車両の送信アンテナの近傍にもってこないと、この携帯機と当該車両の車載局との間の通信を行うことができない。従って、スマートキーシステムの使用上、不便この上ないという不具合を招く。
この解決方法として、特許文献3では、車両の近傍に位置する他車両等の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けて、他車両等の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を防止している。しかしながら、この検知手段は、車両側に受信アンテナを設置しなければならないなど、システムの大幅なコストアップが必要となる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けることなく、定期送信方式での他の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を防止できる車載機器遠隔制御装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる車載機器遠隔制御装置においては、それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機に送信し、
携帯機は、呼出信号を受信し、この受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機に送信し、
携帯機は、送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された回答信号の認証を行い、回答信号が認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
車載局から送信される呼出信号の起動符号は、車載局の擬似雑音系列符号であり、携帯機の起動判定手段は、受信した起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機に送信し、
携帯機は、呼出信号を受信し、この受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機に送信し、
携帯機は、送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された回答信号の認証を行い、回答信号が認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
車載局から送信される呼出信号の起動符号は、車載局の擬似雑音系列符号であり、携帯機の起動判定手段は、受信した起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断するので、他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けることなく、定期送信方式での他の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を低下することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を示すブロック構成図である。
図1において、スマートエントリシステムは、ユーザに所持される携帯機1と、車両側に搭載されるLF(low frequency)送信機5(送信手段)、RF(radio frequency)受信機2(受信手段)、および認証ECU6によって構成されている。このスマートエントリシステムは、ボデーECU7によって構成される制御機構と連携している。ここで、車両側の通信に係わる部分の、LF送信機5とRF受信機2および認証ECU6を総称して車載局と称す。
LF送信機5は、車外に送信するアンテナとして運転席外側ドアハンドル11(図3参照)に内蔵設置されたアンテナ5aと、助手席ドアハンドルに内蔵設置されたアンテナ5bとを有している。また、アンテナ5aと同じ場所に内蔵設置されたタッチセンサ3aと、アンテナ5bと同じ場所に内蔵設置されたタッチセンサ3bが配置され、これらのタッチセンサは、ドアハンドルに人が触れたことを検知した信号を認証ECU6に入力する。
ボデーECU7は、認証ECU6からの指示により、運転席のドア施解錠アクチュエータa71、助手席のドア施解錠アクチュエータb73を駆動すると共に、運転席側ドアスイッチa72と助手席側ドアスイッチb74の開閉信号を認証ECU6に入力する。ボデーECU7と認証ECU6は、配線を通じてローカル通信が行えるようになっている。ボデーECU7は、ドアの開閉状態の認識を行うと共に、ドアの施錠または解錠を制御及びパワーウィンドウの開閉を制御する。そして、ドアが開閉されると、ボデーECU7から認証ECU6に向けて、ドアの開閉が示されるようになっている。
認証ECU6は、タッチセンサ3a、タッチセンサ3b、RF受信機2から入力され、携帯機1の認証を行うとともに、ボデーECU7及びLF送信機5を制御する。
【0009】
携帯機1は、RF帯域を用いた電波の送信を行うRF送信部1a(送信手段)と、LF帯域を用いた電波の受信を行うLF受信部1c(受信手段)と、制御部MPU1bを有する構成となっている。制御部MPU1bには、スマート通信用暗号キーが記憶されている。LF受信部1bは、認証ECU6からの質問を示す電波である質問信号を受信する。制御部MPU1bは、LF受信部1bからの質問信号を受け取ると暗号キーで暗号化した応答信号を生成し、RF送信部1aからRF帯域の電波の送信を行うようになっている。
RF受信機2は、認証ECU6と配線で接続されたもので、携帯機1におけるRF送信部1aが送信したRF帯域の電波(応答信号)を受け取り、それを認証ECU6に伝えるようになっている。
【0010】
図2は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の車外送信方式でのドア解錠時の動作を示す説明図である。
図2において、携帯機1を携帯する使用者が、運転席側アンテナ5aの通信エリア8a内に入って、アンテナ5aからの呼出し信号、起動符号が有効な場合、応答信号を送信し、この応答信号をRF受信機2が受信する。
【0011】
図3は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の運転席外側ドアハンドルを示す説明図である。
図3において、運転席外側ドアハンドル11には、車外に送信するアンテナであるアンテナ5aと、ドアハンドルに人が触れたことを検知するタッチセンサ3aとが内蔵設置されている。
【0012】
図4は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を搭載し、隣り合って駐車した車両を示す説明図である。
図4において、車外送信方式の車両98と車両99の2台が隣り合って駐車している。車両99は、通信エリア8aのアンテナ5aと、通信エリア8bのアンテナ5bを有している。車両98は、通信エリア9aのアンテナ95aと、通信エリア9bのアンテナ95bとを有している。
図4は、車両99の携帯機1を携帯する使用者が、自車両のアンテナ5aの通信エリア8aと他車両98のアンテナ95bの通信エリア9bが重なるエリアに位置した場合、他車両98のアンテナ95bからの定期的に送信される呼出信号と、自車両99のアンテナ5aから送信される呼出信号、回答信号との干渉により通信が成立せず、スマートエントリシステムが機能しなくなる例である。
【0013】
図5は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機と車載局との間で通信する信号の構成を示す図である。
図5(a)は、呼出信号の構成で、プリアンブル(例えば2ms程度のバースト信号)、起動符号(従来例では8〜32bitコード、本発明では31〜127chipのPN(pseudo−noise)符号、すなわち擬似雑音系列符号)を有し、図5(b)は、応答信号の構成で、プリアンブル、固定長のID情報からなる固定IDコード(例えば20ビットで各車両識別用)、応答した携帯機の識別情報を含む識別コード(例えば3bit)、及び誤り制御情報として例えばパリティbit(1ビット)から構成される。図5(c)は、質問信号の構成で、プリアンブル、固定IDコード、回答すべき携帯機の識別情報を含む識別コード(例えば3bit)、毎回ランダムに生成される平文(例えば32ビット)である質問コード、及び誤り制御情報として例えばパリティbit(1ビット)から構成される。図5(d)は、回答信号の構成で、プリアンブル、固定IDコード、携帯機の識別コード、受信した質問コードを暗号キーで暗号化した暗号文である回答コード、及びパリティbit(1ビット)から構成される。
【0014】
図6は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部を示す詳細図である。
図6において、1b、1cは図1におけるものと同一のものである。LF受信部1cの受信アンテナ52からの受信信号のプリアンブルで起動する受信回路57は、呼出信号の起動符号が有効かどうかを判定し、有効な場合、制御部MPU1bを起動させるwake信号を出力する起動判定部57a(起動判定手段)と、質問信号を復調して制御部MPU1bに復調データdataを出力する復調部B(57b)と、一連の通信が終了した場合、制御部MPU1bからのリセット信号resetを受信して受信回路57を受信待機状態に戻す制御部57cから構成されている。
【0015】
図7は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部の起動判定部を示す構成図である。
図7(a)は、起動判定部の従来例を示し、受信アンテナ52からの受信信号を復調する復調部A31と、復調された起動符号ビットが格納されるシフトレジスタ32と、所定の起動符号bitがセットされているレジスタ33と、シフトレジスタ32とレジスタ33の対応する全てのビットが一致することを判定する一致判定部34から構成されている。
図7(b)は、本発明の起動判定部57aを示し、受信アンテナ52からの受信信号を復調する復調部C41と、復調された起動符号ビットが格納されるシフトレジスタ42と、所定の起動符号bitがセットされているレジスタ43と、シフトレジスタ42とレジスタ43の相関を判定する相関判定部45から構成されている。シフトレジスタ42とレジスタ43の対応するビットの積和演算を行う積和演算部44により演算し、この結果により相関判定部45で相関を判定する。
【0016】
図8は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の起動判定部の通信干渉発生率を試算した例を示す図である。
図8において、図7の従来例及び本発明例による、隣接車両の条件での通信干渉発生率を試算した数値が示されている。
【0017】
図9は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
図10は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
図11は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機の制御部で実行されるプログラムの制御を示すフローチャートである。
【0018】
次に、動作について説明する。
図2のように、LF送信機5は周期的に呼び出し信号を送信しており、携帯機1を携帯する使用者が、運転席側アンテナ5aの通信エリア8a内に入って、アンテナ5aからの呼出し信号、起動符号が有効な場合、応答信号を送信し、この応答信号をRF受信機2が受信する。RF受信機2は、認証ECU6と配線で接続されており、携帯機1のRF送信部1aが送信したRF帯域の電波(応答信号)を受け取り、それを認証ECU6に伝える。
認証ECU6は、携帯機1からの応答信号を受け取り、質問信号を携帯機1に送信してその回答信号により携帯機1を認証し、この認証に応じて、ボデーECU7に指示して、ドアの解錠または施錠を行わせる。
【0019】
携帯機1のLF受信部1cの起動判定部57aは、図7(a)の従来例では、受信アンテナ52からの受信信号は、復調部A31で、起動符号nビットが復調され、逐次、シフトレジスタ32に格納される。一方、レジスタ33には、所定の起動符号bitがセットされていて、シフトレジスタ32とレジスタ33の対応する全てのビットが一致(式1が成立)した場合、一致判定部34からwake信号が出力される。
【0020】
【数1】
【0021】
一方、図7(b)の本発明の起動判定部57aでは、受信アンテナ52からの受信信号は、復調部C41で起動符号mビットが復調され、逐次、シフトレジスタ42に格納される。一方、レジスタ43には、所定の起動符号bitがセットされていて、シフトレジスタ42とレジスタ43の相関値の絶対値が所定値以上(シフトレジスタ42とレジスタ43の相関が大きい)の場合、相関判定部45からwake信号が出力される。
なお、相関値は、シフトレジスタ42とレジスタ43の対応するビットについて、式2の演算を積和演算部44で実施する。但し、式2では、復調された0は+1、復調された1は−1として扱われる。
【0022】
【数2】
【0023】
例えばm=31の場合、相関値の絶対値は0〜31となり、前記所定値は例えば26とする。
【0024】
図8は、起動符号をPN符号とした場合で、図4のような隣接車両の条件での通信干渉発生率を試算したものである。
従来例では、起動符号は16bitで、送信速度2kbptsとして、本発明では、起動符号は31bitのM系列PN符号で、送信速度は通信時間を従来例とほぼ同じにするため、2kbpsとした場合の比較例である。従来例での干渉確率は1bitでも重なると干渉するので、式3で算出され、本発明例では1bit以上ずれていれば、干渉は発生しないので、式4で算出される。
干渉発生確率=通信時間×2÷通信間隔 ・・・・・(3)
干渉発生確率=1bitの時間÷通信間隔 ・・・・・(4)
図8の本発明の数値例では、干渉発生率は、従来例より1/80に減少し、実用的に許容できるレベルであることが分かる。
【0025】
続いて、本発明の認証ECU6で実施される制御プログラムで、携帯機1が車内になく、車両電源がОFF状態(キーシリンダがロック位置)のドア施錠された駐車中の車両が、呼出信号の車外定期送信を実施している状態での、ドア解錠のための通信手続き部分の例について、図9を用いて説明する。
図9において、このプログラムは送信間隔(例えば500ms間隔)で実行される。ステップ101で、応答信号の受信待ち時間を規定するRF受信タイマ1をセットし、呼出信号を送信する。ステップ102では、RF受信タイマ1のタイムアップを確認して、タイムアップしていれば、ステップ112へ移行し、D(運転)席許可フラグをリセットしてステップ114の戻り処理に移行する。
ステップ102で、タイムアップしていなければ、ステップ103で、応答信号を受信したかどうか確認し、受信していないなら、ステップ102に戻り、応答信号を受信したならステップ104で、受信した応答番号のIDを確認する。このIDが当該車両のものでないならステップ102に戻り、IDが当該車両のものであるなら、ステップ105で、認証が終わっているかどうかの確認のため、D席許可フラグの状態を確認する。D席許可フラグが1ならば、ステップ114に移行し、D席許可フラグが0ならば、ステップ106に移行する。
【0026】
ステップ106で、質問及び回答通信での、繰返し通信回数を規定する送信カウンタを初期化し、ステップ107で、認証のための回答信号の受信待ち時間を規定するRF受信タイマ2をセットし、質問信号を送信して送信カウンタを+1する。
ステップ108で、RF受信タイマ2がタイムアップしていれば、ステップ113に移行し、タイムアップしていなければ、ステップ109で、回答信号の受信を確認する。回答信号が未受信なら、ステップ108に移行し、回答信号を受信していれば、ステップ110で、回答コードの照合を行い、一致すれば、ステップ111でD席許可フラグをセットし、ステップ114に移行する。回答コードの照合が不成立の場合は、ステップ113に移行し、送信回数が所定回数(例えば3回)未満であれば、ステップ107に戻り、質問信号を再送信する。一方、送信回数が所定回数(例えば3回)以上であれば、ステップ114に移行する。
【0027】
図9のプログラム実行に対応して、呼出信号を受信してから携帯機1の制御部1bで実行されるプログラム例が図11である。
以下、図11の説明を行う。
ステップ401で、質問信号の受信待ち時間を規定するLF受信タイマをセットし、応答信号を送信する。ステップ402で、LF受信タイマのタイムアップを確認し、タイムアップしていれば、ステップ406に移行し、タイムアップしていなければ、ステップ403で、質問信号の受信を確認し、未受信であれば、ステップ402に戻り、受信していれば、ステップ404で、IDの一致を確認し、回答すべき携帯機かどうかの識別コードの一致を確認したら、ステップ405で、自身の暗号キーで回答コードを生成し、回答信号として送信し、ステップ406の戻り処理に移行する。
ステップ404で、IDと識別コードともに一致していない場合は、ステップ406に移行する。
【0028】
図9のプログラム実行と並行して、ドア解錠のための図10に示す制御プログラム例が、図9の実行間隔(例えば500ms)より短い間隔(例えば20ms)により認証ECU6で実行される。
図10において、ステップ201で、D席許可フラグが1かどうか確認して、1ならばステップ202で、D席タッチセンサ3aがONかどうか確認し、ONならば、ステップ203で、ドア解錠指令をボデーECU7に指令し、ステップ204で、D席許可フラグを0にしてステップ205の戻り処理に移行する。ステップ201で、D席許可フラグが0なら、ステップ205に移行する。ステップ202で、D席タッチセンサ3aがONでないなら、ステップ205に移行する。
これにより、携帯機との通信によるドア解錠が行われる。
【0029】
実施の形態1によれば、PN符号の起動符号を定期送信して、携帯機の起動判定部57aでは、相関値が所定以上の場合起動させるようにしたので、図4のような使用状況での通信干渉発生確率を、従来に比べ大幅に減少させ、実用的に問題とならないレベルにすることができる。
また、従来技術のような、車両側に他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けるという製造コストを増加させることなく、通信干渉を実用的に問題とならないレベルに低下できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の車外送信方式でのドア解錠時の動作を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の運転席外側ドアハンドルを示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を搭載し、隣り合って駐車した車両を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機と車載局との間で通信する信号の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部を示す詳細図である。
【図7】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部の起動判定部を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の起動判定部の通信干渉発生率を試算した例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機の制御部で実行されるプログラムの制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯機
1a RF送信部
1b 制御部MPU
1c LF受信部
11 運転席外側ドアハンドル
2 RF受信機
3a タッチセンサa
3b タッチセンサb
31 復調部A
32 シフトレジスタ
33 レジスタ
34 一致判定部
41 復調部C
42 シフトレジスタ
43 レジスタ
44 積和演算部
45 相関判定部
5 LF送信機
5a アンテナ
5b アンテナ
52 受信アンテナ
57 受信回路
57a 起動判定部
57b 復調部B
57c 制御部
6 認証ECU
7 ボデーECU
71 ドア施解錠アクチュエータa
72 ドアスイッチa
73 ドア施解錠アクチュエータb
74 ドアスイッチb
8a,8b 通信エリア
9a,9b 通信エリア
95a アンテナ
95b アンテナ
98,99 車両
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者により所持される携帯機と自動車側に設けられた作動制御手段との相互通信が確立したことを条件として、自動車のドアの施解錠を行うスマートキーシステムに代表される車載機器遠隔制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機を所有したユーザが、車両のアウタドアハンドルに配設された起動スイッチまたはタッチセンサを操作すると、その携帯機と相互通信し、正規ユーザであることが確認されれば、ドアをアンロックすることでユーザが車室内に入れるようにする車載機器遠隔制御装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)
また、車両側より車外の予め定められたエリアに定期的に呼出信号を送信すると共に、その呼出信号を受信した携帯機からの返信で正規ユーザであることが確認された場合で、前記エリアで車外から触ることのできる部位に設けられた解錠用タッチセンサ、施錠用タッチセンサで操作が認められた場合、ドアの施解錠を行う車載機器遠隔制御装置が知られている。(例えば、特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開昭60−119873号公報(第2〜8頁、図1)
【特許文献2】特開2006−9352号公報(第6〜11頁、図1)
【特許文献3】特許第3758303号公報(第2〜6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、車両側より車外の予め定められたエリアに定期的に呼出信号を送信する方式(以下、定期送信方式と称す)では、複数車両が駐車する駐車場等で、当該車両の近傍に他の車両が停止しているときに、両車両が同じタイミングで電波を送信すると、両電波の干渉により、両電波に歪みが生じ、各車両の通信エリアが極端に狭くなる。
このため、携帯機を当該車両の送信アンテナの近傍にもってこないと、この携帯機と当該車両の車載局との間の通信を行うことができない。従って、スマートキーシステムの使用上、不便この上ないという不具合を招く。
この解決方法として、特許文献3では、車両の近傍に位置する他車両等の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けて、他車両等の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を防止している。しかしながら、この検知手段は、車両側に受信アンテナを設置しなければならないなど、システムの大幅なコストアップが必要となる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けることなく、定期送信方式での他の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を防止できる車載機器遠隔制御装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる車載機器遠隔制御装置においては、それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機に送信し、
携帯機は、呼出信号を受信し、この受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機に送信し、
携帯機は、送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された回答信号の認証を行い、回答信号が認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
車載局から送信される呼出信号の起動符号は、車載局の擬似雑音系列符号であり、携帯機の起動判定手段は、受信した起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を携帯機に送信し、
携帯機は、呼出信号を受信し、この受信された呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された応答信号の受信に応じて、質問信号を携帯機に送信し、
携帯機は、送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を車載局に送信し、
車載局は、携帯機から送信された回答信号の認証を行い、回答信号が認証されたとき、車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
車載局から送信される呼出信号の起動符号は、車載局の擬似雑音系列符号であり、携帯機の起動判定手段は、受信した起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断するので、他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けることなく、定期送信方式での他の電波送信源からの送信電波と自車両の送信電波との干渉を低下することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を示すブロック構成図である。
図1において、スマートエントリシステムは、ユーザに所持される携帯機1と、車両側に搭載されるLF(low frequency)送信機5(送信手段)、RF(radio frequency)受信機2(受信手段)、および認証ECU6によって構成されている。このスマートエントリシステムは、ボデーECU7によって構成される制御機構と連携している。ここで、車両側の通信に係わる部分の、LF送信機5とRF受信機2および認証ECU6を総称して車載局と称す。
LF送信機5は、車外に送信するアンテナとして運転席外側ドアハンドル11(図3参照)に内蔵設置されたアンテナ5aと、助手席ドアハンドルに内蔵設置されたアンテナ5bとを有している。また、アンテナ5aと同じ場所に内蔵設置されたタッチセンサ3aと、アンテナ5bと同じ場所に内蔵設置されたタッチセンサ3bが配置され、これらのタッチセンサは、ドアハンドルに人が触れたことを検知した信号を認証ECU6に入力する。
ボデーECU7は、認証ECU6からの指示により、運転席のドア施解錠アクチュエータa71、助手席のドア施解錠アクチュエータb73を駆動すると共に、運転席側ドアスイッチa72と助手席側ドアスイッチb74の開閉信号を認証ECU6に入力する。ボデーECU7と認証ECU6は、配線を通じてローカル通信が行えるようになっている。ボデーECU7は、ドアの開閉状態の認識を行うと共に、ドアの施錠または解錠を制御及びパワーウィンドウの開閉を制御する。そして、ドアが開閉されると、ボデーECU7から認証ECU6に向けて、ドアの開閉が示されるようになっている。
認証ECU6は、タッチセンサ3a、タッチセンサ3b、RF受信機2から入力され、携帯機1の認証を行うとともに、ボデーECU7及びLF送信機5を制御する。
【0009】
携帯機1は、RF帯域を用いた電波の送信を行うRF送信部1a(送信手段)と、LF帯域を用いた電波の受信を行うLF受信部1c(受信手段)と、制御部MPU1bを有する構成となっている。制御部MPU1bには、スマート通信用暗号キーが記憶されている。LF受信部1bは、認証ECU6からの質問を示す電波である質問信号を受信する。制御部MPU1bは、LF受信部1bからの質問信号を受け取ると暗号キーで暗号化した応答信号を生成し、RF送信部1aからRF帯域の電波の送信を行うようになっている。
RF受信機2は、認証ECU6と配線で接続されたもので、携帯機1におけるRF送信部1aが送信したRF帯域の電波(応答信号)を受け取り、それを認証ECU6に伝えるようになっている。
【0010】
図2は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の車外送信方式でのドア解錠時の動作を示す説明図である。
図2において、携帯機1を携帯する使用者が、運転席側アンテナ5aの通信エリア8a内に入って、アンテナ5aからの呼出し信号、起動符号が有効な場合、応答信号を送信し、この応答信号をRF受信機2が受信する。
【0011】
図3は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の運転席外側ドアハンドルを示す説明図である。
図3において、運転席外側ドアハンドル11には、車外に送信するアンテナであるアンテナ5aと、ドアハンドルに人が触れたことを検知するタッチセンサ3aとが内蔵設置されている。
【0012】
図4は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を搭載し、隣り合って駐車した車両を示す説明図である。
図4において、車外送信方式の車両98と車両99の2台が隣り合って駐車している。車両99は、通信エリア8aのアンテナ5aと、通信エリア8bのアンテナ5bを有している。車両98は、通信エリア9aのアンテナ95aと、通信エリア9bのアンテナ95bとを有している。
図4は、車両99の携帯機1を携帯する使用者が、自車両のアンテナ5aの通信エリア8aと他車両98のアンテナ95bの通信エリア9bが重なるエリアに位置した場合、他車両98のアンテナ95bからの定期的に送信される呼出信号と、自車両99のアンテナ5aから送信される呼出信号、回答信号との干渉により通信が成立せず、スマートエントリシステムが機能しなくなる例である。
【0013】
図5は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機と車載局との間で通信する信号の構成を示す図である。
図5(a)は、呼出信号の構成で、プリアンブル(例えば2ms程度のバースト信号)、起動符号(従来例では8〜32bitコード、本発明では31〜127chipのPN(pseudo−noise)符号、すなわち擬似雑音系列符号)を有し、図5(b)は、応答信号の構成で、プリアンブル、固定長のID情報からなる固定IDコード(例えば20ビットで各車両識別用)、応答した携帯機の識別情報を含む識別コード(例えば3bit)、及び誤り制御情報として例えばパリティbit(1ビット)から構成される。図5(c)は、質問信号の構成で、プリアンブル、固定IDコード、回答すべき携帯機の識別情報を含む識別コード(例えば3bit)、毎回ランダムに生成される平文(例えば32ビット)である質問コード、及び誤り制御情報として例えばパリティbit(1ビット)から構成される。図5(d)は、回答信号の構成で、プリアンブル、固定IDコード、携帯機の識別コード、受信した質問コードを暗号キーで暗号化した暗号文である回答コード、及びパリティbit(1ビット)から構成される。
【0014】
図6は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部を示す詳細図である。
図6において、1b、1cは図1におけるものと同一のものである。LF受信部1cの受信アンテナ52からの受信信号のプリアンブルで起動する受信回路57は、呼出信号の起動符号が有効かどうかを判定し、有効な場合、制御部MPU1bを起動させるwake信号を出力する起動判定部57a(起動判定手段)と、質問信号を復調して制御部MPU1bに復調データdataを出力する復調部B(57b)と、一連の通信が終了した場合、制御部MPU1bからのリセット信号resetを受信して受信回路57を受信待機状態に戻す制御部57cから構成されている。
【0015】
図7は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部の起動判定部を示す構成図である。
図7(a)は、起動判定部の従来例を示し、受信アンテナ52からの受信信号を復調する復調部A31と、復調された起動符号ビットが格納されるシフトレジスタ32と、所定の起動符号bitがセットされているレジスタ33と、シフトレジスタ32とレジスタ33の対応する全てのビットが一致することを判定する一致判定部34から構成されている。
図7(b)は、本発明の起動判定部57aを示し、受信アンテナ52からの受信信号を復調する復調部C41と、復調された起動符号ビットが格納されるシフトレジスタ42と、所定の起動符号bitがセットされているレジスタ43と、シフトレジスタ42とレジスタ43の相関を判定する相関判定部45から構成されている。シフトレジスタ42とレジスタ43の対応するビットの積和演算を行う積和演算部44により演算し、この結果により相関判定部45で相関を判定する。
【0016】
図8は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の起動判定部の通信干渉発生率を試算した例を示す図である。
図8において、図7の従来例及び本発明例による、隣接車両の条件での通信干渉発生率を試算した数値が示されている。
【0017】
図9は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
図10は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
図11は、この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機の制御部で実行されるプログラムの制御を示すフローチャートである。
【0018】
次に、動作について説明する。
図2のように、LF送信機5は周期的に呼び出し信号を送信しており、携帯機1を携帯する使用者が、運転席側アンテナ5aの通信エリア8a内に入って、アンテナ5aからの呼出し信号、起動符号が有効な場合、応答信号を送信し、この応答信号をRF受信機2が受信する。RF受信機2は、認証ECU6と配線で接続されており、携帯機1のRF送信部1aが送信したRF帯域の電波(応答信号)を受け取り、それを認証ECU6に伝える。
認証ECU6は、携帯機1からの応答信号を受け取り、質問信号を携帯機1に送信してその回答信号により携帯機1を認証し、この認証に応じて、ボデーECU7に指示して、ドアの解錠または施錠を行わせる。
【0019】
携帯機1のLF受信部1cの起動判定部57aは、図7(a)の従来例では、受信アンテナ52からの受信信号は、復調部A31で、起動符号nビットが復調され、逐次、シフトレジスタ32に格納される。一方、レジスタ33には、所定の起動符号bitがセットされていて、シフトレジスタ32とレジスタ33の対応する全てのビットが一致(式1が成立)した場合、一致判定部34からwake信号が出力される。
【0020】
【数1】
【0021】
一方、図7(b)の本発明の起動判定部57aでは、受信アンテナ52からの受信信号は、復調部C41で起動符号mビットが復調され、逐次、シフトレジスタ42に格納される。一方、レジスタ43には、所定の起動符号bitがセットされていて、シフトレジスタ42とレジスタ43の相関値の絶対値が所定値以上(シフトレジスタ42とレジスタ43の相関が大きい)の場合、相関判定部45からwake信号が出力される。
なお、相関値は、シフトレジスタ42とレジスタ43の対応するビットについて、式2の演算を積和演算部44で実施する。但し、式2では、復調された0は+1、復調された1は−1として扱われる。
【0022】
【数2】
【0023】
例えばm=31の場合、相関値の絶対値は0〜31となり、前記所定値は例えば26とする。
【0024】
図8は、起動符号をPN符号とした場合で、図4のような隣接車両の条件での通信干渉発生率を試算したものである。
従来例では、起動符号は16bitで、送信速度2kbptsとして、本発明では、起動符号は31bitのM系列PN符号で、送信速度は通信時間を従来例とほぼ同じにするため、2kbpsとした場合の比較例である。従来例での干渉確率は1bitでも重なると干渉するので、式3で算出され、本発明例では1bit以上ずれていれば、干渉は発生しないので、式4で算出される。
干渉発生確率=通信時間×2÷通信間隔 ・・・・・(3)
干渉発生確率=1bitの時間÷通信間隔 ・・・・・(4)
図8の本発明の数値例では、干渉発生率は、従来例より1/80に減少し、実用的に許容できるレベルであることが分かる。
【0025】
続いて、本発明の認証ECU6で実施される制御プログラムで、携帯機1が車内になく、車両電源がОFF状態(キーシリンダがロック位置)のドア施錠された駐車中の車両が、呼出信号の車外定期送信を実施している状態での、ドア解錠のための通信手続き部分の例について、図9を用いて説明する。
図9において、このプログラムは送信間隔(例えば500ms間隔)で実行される。ステップ101で、応答信号の受信待ち時間を規定するRF受信タイマ1をセットし、呼出信号を送信する。ステップ102では、RF受信タイマ1のタイムアップを確認して、タイムアップしていれば、ステップ112へ移行し、D(運転)席許可フラグをリセットしてステップ114の戻り処理に移行する。
ステップ102で、タイムアップしていなければ、ステップ103で、応答信号を受信したかどうか確認し、受信していないなら、ステップ102に戻り、応答信号を受信したならステップ104で、受信した応答番号のIDを確認する。このIDが当該車両のものでないならステップ102に戻り、IDが当該車両のものであるなら、ステップ105で、認証が終わっているかどうかの確認のため、D席許可フラグの状態を確認する。D席許可フラグが1ならば、ステップ114に移行し、D席許可フラグが0ならば、ステップ106に移行する。
【0026】
ステップ106で、質問及び回答通信での、繰返し通信回数を規定する送信カウンタを初期化し、ステップ107で、認証のための回答信号の受信待ち時間を規定するRF受信タイマ2をセットし、質問信号を送信して送信カウンタを+1する。
ステップ108で、RF受信タイマ2がタイムアップしていれば、ステップ113に移行し、タイムアップしていなければ、ステップ109で、回答信号の受信を確認する。回答信号が未受信なら、ステップ108に移行し、回答信号を受信していれば、ステップ110で、回答コードの照合を行い、一致すれば、ステップ111でD席許可フラグをセットし、ステップ114に移行する。回答コードの照合が不成立の場合は、ステップ113に移行し、送信回数が所定回数(例えば3回)未満であれば、ステップ107に戻り、質問信号を再送信する。一方、送信回数が所定回数(例えば3回)以上であれば、ステップ114に移行する。
【0027】
図9のプログラム実行に対応して、呼出信号を受信してから携帯機1の制御部1bで実行されるプログラム例が図11である。
以下、図11の説明を行う。
ステップ401で、質問信号の受信待ち時間を規定するLF受信タイマをセットし、応答信号を送信する。ステップ402で、LF受信タイマのタイムアップを確認し、タイムアップしていれば、ステップ406に移行し、タイムアップしていなければ、ステップ403で、質問信号の受信を確認し、未受信であれば、ステップ402に戻り、受信していれば、ステップ404で、IDの一致を確認し、回答すべき携帯機かどうかの識別コードの一致を確認したら、ステップ405で、自身の暗号キーで回答コードを生成し、回答信号として送信し、ステップ406の戻り処理に移行する。
ステップ404で、IDと識別コードともに一致していない場合は、ステップ406に移行する。
【0028】
図9のプログラム実行と並行して、ドア解錠のための図10に示す制御プログラム例が、図9の実行間隔(例えば500ms)より短い間隔(例えば20ms)により認証ECU6で実行される。
図10において、ステップ201で、D席許可フラグが1かどうか確認して、1ならばステップ202で、D席タッチセンサ3aがONかどうか確認し、ONならば、ステップ203で、ドア解錠指令をボデーECU7に指令し、ステップ204で、D席許可フラグを0にしてステップ205の戻り処理に移行する。ステップ201で、D席許可フラグが0なら、ステップ205に移行する。ステップ202で、D席タッチセンサ3aがONでないなら、ステップ205に移行する。
これにより、携帯機との通信によるドア解錠が行われる。
【0029】
実施の形態1によれば、PN符号の起動符号を定期送信して、携帯機の起動判定部57aでは、相関値が所定以上の場合起動させるようにしたので、図4のような使用状況での通信干渉発生確率を、従来に比べ大幅に減少させ、実用的に問題とならないレベルにすることができる。
また、従来技術のような、車両側に他の電波送信源からの送信電波を検知する検知手段を設けるという製造コストを増加させることなく、通信干渉を実用的に問題とならないレベルに低下できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の車外送信方式でのドア解錠時の動作を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の運転席外側ドアハンドルを示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置を搭載し、隣り合って駐車した車両を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機と車載局との間で通信する信号の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部を示す詳細図である。
【図7】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機のLF受信部の起動判定部を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の起動判定部の通信干渉発生率を試算した例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の認証ECUで実施されるドア解錠のための制御プログラムの制御を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1による車載機器遠隔制御装置の携帯機の制御部で実行されるプログラムの制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯機
1a RF送信部
1b 制御部MPU
1c LF受信部
11 運転席外側ドアハンドル
2 RF受信機
3a タッチセンサa
3b タッチセンサb
31 復調部A
32 シフトレジスタ
33 レジスタ
34 一致判定部
41 復調部C
42 シフトレジスタ
43 レジスタ
44 積和演算部
45 相関判定部
5 LF送信機
5a アンテナ
5b アンテナ
52 受信アンテナ
57 受信回路
57a 起動判定部
57b 復調部B
57c 制御部
6 認証ECU
7 ボデーECU
71 ドア施解錠アクチュエータa
72 ドアスイッチa
73 ドア施解錠アクチュエータb
74 ドアスイッチb
8a,8b 通信エリア
9a,9b 通信エリア
95a アンテナ
95b アンテナ
98,99 車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、上記車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
上記車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を上記携帯機に送信し、
上記携帯機は、上記呼出信号を受信し、この受信された上記呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により上記所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を上記車載局に送信し、
上記車載局は、上記携帯機から送信された上記応答信号の受信に応じて、質問信号を上記携帯機に送信し、
上記携帯機は、上記送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を上記車載局に送信し、
上記車載局は、上記携帯機から送信された回答信号の認証を行い、上記回答信号が認証されたとき、上記車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
上記車載局から送信される上記呼出信号の上記起動符号は、上記車載局の擬似雑音系列符号であり、上記携帯機の上記起動判定手段は、上記受信した上記起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断することを特徴とする車載機器遠隔制御装置。
【請求項1】
それぞれ送信手段及び受信手段を有する携帯機と車載局との間の通信に基づき、上記車載局により車載機器の作動状態を制御する車載機器遠隔制御装置において、
上記車載局は、所定の起動符号を含む呼出信号を上記携帯機に送信し、
上記携帯機は、上記呼出信号を受信し、この受信された上記呼出信号に含まれる所定の起動符号が有効かどうかを判定する起動判定手段を有し、この起動判定手段により上記所定の起動符号が有効と判断された場合、応答信号を上記車載局に送信し、
上記車載局は、上記携帯機から送信された上記応答信号の受信に応じて、質問信号を上記携帯機に送信し、
上記携帯機は、上記送信された質問信号を受信し、この質問信号に対する回答信号を上記車載局に送信し、
上記車載局は、上記携帯機から送信された回答信号の認証を行い、上記回答信号が認証されたとき、上記車載機器の作動状態を制御するよう構成され、
上記車載局から送信される上記呼出信号の上記起動符号は、上記車載局の擬似雑音系列符号であり、上記携帯機の上記起動判定手段は、上記受信した上記起動符号と自身の保持する擬似雑音系列符号との相関を求め、この求めた相関値が所定以上の場合に有効と判断することを特徴とする車載機器遠隔制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−68255(P2009−68255A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237704(P2007−237704)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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