説明

車載無線通信装置及び車載無線通信システム

【課題】車輌のドアの施錠/開錠などを行うためにユーザが携帯する通信器(キー)の位置を特定してユーザに知らせることができる車載無線通信装置及び車載無線通信システムを提供する。
【解決手段】車内用アンテナ11、12及び車外用アンテナ13〜15からユーザが携帯する通信器30へ送信する無線の要求信号の信号強度を、例えば最小強度から最大強度へ上昇させる。要求信号を受信した通信器30からの応答信号を受信用アンテナ28にて受信し、このときの要求信号の信号強度から通信器30までの距離を算出することができ、各アンテナから通信器30までの距離を基に通信器30の位置を特定する。特定した通信器30の位置を表示部25に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが携帯する通信器との間で通信を行って車輌のドアの施錠/開錠などを行う車載無線通信装置及び車載無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが例えばカード型の通信器(キー)を携帯し、車輌からの所定範囲内にユーザが近づいた場合、又は車輌の特定箇所にユーザが触れた場合等に、車輌のドアを自動的に開錠するシステム、所謂スマートエントリシステムが実用化されている。このシステムは、従来のように機械キーによる開錠操作をユーザが行う必要がなく、又は例えばキーホルダー型の通信器に設けられた開錠ボタンを押下して開錠を行う必要がないため、利便性が高い。特に、ユーザが荷物を抱えて両手が塞がれている場合などに有効である。また、このシステムでは、通信器を携帯したユーザが車両からの所定範囲外に離れた場合には、自動的の車輌のドアを施錠することができる。更には、通信器を携帯したユーザが車内のボタンを操作することにより、機械キーによる操作を行うことなく、車輌のエンジンを始動させることも可能である。
【0003】
このシステムにおいては、車輌にはユーザが携帯する通信器との間で通信を行う車載無線通信装置が搭載され、車載無線通信装置から出力される無線信号をユーザが携帯する通信器が受信し、これに対する応答信号を車載無線通信装置が受信することで、車輌のドアの施錠状態を制御するようにしてある。また、車載無線通信装置は、ユーザが携帯する通信器が車内にあるか車外にあるかを区別する必要があるため、車内へ無線信号を出力する車内用アンテナと、車外へ無線信号を出力する車外用アンテナとが設けられている。これにより、ユーザが通信器を車内に置き忘れた場合に車輌のドアが施錠されるなどの誤動作の発生を防止することができる。
【0004】
特許文献1においては、携帯機の位置をより正確且つ効率よく検知できるリモートコントロールシステムが提案されている。このリモートコントロールシステムでは、携帯機検知用信号を出力する車輌の検知アンテナからの出力信号を携帯機が受信したか否かに応じてユーザが車輌に接近しているか否かを認識し、車輌のドアのロック・アンロックを制御する。車輌の検知アンテナには、携帯機が車室内にあることを検知する室内検知用信号を出力する室内検知アンテナを含む。この室内検知アンテナの出力の大きさを2段階又は3段階等に切り替えて、各段階の大きさの出力信号それぞれについて、携帯機が室内検知用信号を受信したか否かに応じて携帯機の位置を判定する。
【特許文献1】特開2005−105715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスマートエントリシステムでは、ユーザが車輌内に通信器を置き忘れた状態でドアの施錠を行おうとした場合に、警報を発してユーザに通知する機能が備えられている。警報が発せられた場合には、ユーザは車内の通信器を探し出してドアの施錠を行う必要がある。しかし通信器は小型である場合が多いため、車内で紛失した場合などには通信器の位置特定に手間取るという問題があった。従来のシステムでは、警報により通信器が車内に存在することを通知することはできるが、通信器の車内での位置を通知することはできなかった。
【0006】
特許文献1に記載のリモートコントロールシステムは、携帯機が車内にあるか車外にあるかを正確且つ効率よく検知することを目的とするものである。このため、車内での携帯機の位置を正確に特定できるものではなく、上述の問題を解決することはできない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、可搬型の通信器へ信号強度を上昇させながら無線による要求信号を送信し、この要求信号に対する通信器からの応答信号を受信した場合に、送信した要求信号の信号強度に応じて通信器の位置を特定する構成とすることにより、通信器の正確な位置特定を行うことができる車載無線通信装置及び車載無線通信システムを提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、要求信号の送信手段を複数設けて車輌の異なる位置にそれぞれ配設し、各送信手段が送信した要求信号に対する通信器からの応答信号をそれぞれ受信し、受信した場合の要求信号の信号強度に応じて各送信手段から通信器までの距離をそれぞれ算出し、算出した距離を基に通信器の位置を特定する構成とすることにより、通信器のより正確な位置特定を行うことができる車載無線通信装置を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、車輌の外装部分に配設されて車外へ要求信号を送信する送信手段を備える場合に、この送信手段からの要求信号を利用して車内の通信器の位置を特定する構成とすることにより、車内用の送信手段を増設することなく位置特定の精度を高めることができる車載無線通信装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、特定した通信器の位置を表示する位置表示手段を設ける構成とすることにより、ユーザが通信器の位置を容易に認識することができる車載無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る車載無線通信装置は、車輌に搭載され、可搬型の通信器へ応答を要求する要求信号を無線により送信する送信手段と、該送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信する受信手段と、該受信手段が受信した応答信号に応じて前記車輌のドアの施錠状態を制御する制御手段とを備える車載無線通信装置において、前記送信手段は、要求信号の信号強度を上昇させながら送信するようにしてあり、前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、前記通信器の位置を特定する位置特定手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第2発明に係る車載無線通信装置は、前記車輌の異なる位置にそれぞれ配設された複数の前記送信手段を備え、前記位置特定手段は、各送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信した場合に、各送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、各送信手段から前記通信器までの距離をそれぞれ算出し、算出した複数の距離を基に、前記通信器の位置を特定するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、第3発明に係る車載無線通信装置は、前記車輌の外装部分に配設された前記送信手段を備え、前記位置特定手段は、前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した信号強度に応じて、前記通信器の前記車輌内での位置を特定するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、第4発明に係る車載無線通信装置は、前記位置特定手段が特定した前記通信器の位置を表示する位置表示手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第5発明に係る車載無線通信システムは、可搬型の通信器と、車輌に搭載され、前記通信器へ応答を要求する要求信号を無線により送信する送信手段、該送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信する受信手段、及び該受信手段が受信した応答信号に応じて前記車輌のドアの施錠状態を制御する制御手段を有する車載無線通信装置とを備える車載無線通信システムにおいて、前記車載無線通信装置は、前記送信手段が、要求信号の信号強度を上昇させながら送信するようにしてあり、前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、前記通信器の位置を特定する位置特定手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、アンテナなどの送信手段からユーザが携帯する可搬型の通信器へ送信する要求信号の信号強度を、例えば最小強度から最大強度へ上昇させる。要求信号の信号強度と要求信号の到達範囲とは対応関係にあるため、要求信号の送信手段と通信器との間の距離により通信器で受信可能な要求信号の信号強度が規定される。よって、要求信号を受信した通信器からの応答信号を受信し、このとき送信していた要求信号の信号強度を求めることにより、要求信号の送信手段と通信器との間の距離を算出することができ、算出した距離から通信器の位置を特定することができる。送信手段が送信する要求信号が指向性の高い信号の場合には、1つの送信手段を備えるのみで通信器の位置を十分に特定することができる。要求信号が指向性の低い信号の場合には、3つ以上の送信手段を備えて位置特定を行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、要求信号の送信手段を複数備えて、車輌の異なる位置にそれぞれ配設する。上述のようにして各送信手段から通信器までの距離を算出することができ、それぞれの距離から通信器の位置を高精度に特定することができる。搭載する送信手段の数が多いほどより高精度に位置特定を行うことができるが、車輌内の限られた空間内で通信器の位置を特定する場合には、3つ程度の送信手段を備えればよい。
【0018】
また、本発明においては、車両の外装部分に配設されて車外への要求信号を送信する送信手段を利用して、車内の通信器の位置を特定する。スマートエントリシステムでは車輌にユーザが接近した場合にドアの開錠を行うため車外へ要求信号を送信する送信手段が車輌の外装部分に設けられるが、この送信手段から車外へ送信される要求信号は一部が車内へも送信される。よって、この一部の要求信号を車内の通信器の位置特定に利用することが可能である。上述のように、送信手段の数が多いほど位置特定の精度を高めることができるが、多数の送信手段を供えることはコストの増加を招来する。車外用の送信手段を車内用の送信手段と共に位置特定に用いることで、コストの増加を招来することなく、位置特定のための送信手段の数を増すことができる。
【0019】
また、本発明においては、通信器の位置を特定し、車輌に搭載されたディスプレイなどにこの位置を表示する。車輌にはカーナビゲーション又はバックモニタ等のためのディスプレイが搭載されている場合が多く、例えば車輌のエンジンを停止した際などに、このディスプレイを利用して通信器の位置を表示することができる。これにより、ユーザに通信器の位置を容易に且つ確実に認識させることができる。
【発明の効果】
【0020】
第1発明及び第5発明による場合は、送信手段から通信器への要求信号を信号強度を上昇させながら送信し、通信器からの応答信号を受信した場合の要求信号の信号強度を基に通信器の位置を特定する構成とすることにより、簡単な構成で精度よく通信器の位置を特定することができる。これにより、特定した通信器の位置をユーザに通知することができ、ユーザは通信器の位置を認識することができるため、ユーザが通信器を車内に置き忘れる又は紛失する等のことを防止できる。よって、スマートエントリシステムなどの車載無線通信システム及び車載無線通信装置の利便性を向上することができる。
【0021】
また、第2発明による場合は、要求信号の送信手段を複数備えて車輌の異なる位置にそれぞれ配設し、各送信手段から通信器までの距離を算出して、それぞれの距離から通信器の位置を特定する構成とすることにより、通信器の位置特定の精度をより高めることができる。よって、車載無線通信装置の信頼性を高めることができ、利便性をより向上することができる。
【0022】
また、第3発明による場合は、車外用の送信手段からの要求信号を利用して車内の通信器の位置を特定する構成とすることにより、車内用の送信手段を増設することなく位置特定の精度を高めることができる。よって、車載無線通信装置のコストの増加を抑制することができ、高性能で低価格な車載無線通信装置を提供することができる。
【0023】
また、第4発明による場合は、特定した通信器の位置を車輌に搭載されたディスプレイなどに表示する構成とすることにより、通信装置の位置をユーザが容易に認識することができるため、車載通信装置の利便性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。本実施の形態に係る車載無線通信システムは所謂スマートエントリシステムであり、スマートキー(通信器)を携帯したユーザがドアに設けられたスイッチなどに触れることによって、ドアを自動的に開錠することができる。更には、運転席近傍に設けられたスタートボタンを操作することによりエンジンの始動を行う構成とすることも可能である。図1は、本発明に係る車載無線通信システムの構成を示す模式図である。また、図2は、本発明に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【0025】
図において1は車輌であり、ユーザが携帯する可搬型(カード型又はキーホルダー型等)の通信器30との間で無線通信を行う車載無線通信装置10が車輌1には搭載してある。車載無線通信装置10は、通信器30への無線信号を送信する5つのアンテナを備えている。図1に示すように、車輌1内の前側には車内用アンテナ11が配設してあり、車輌1内の後側には車内用アンテナ12が配設してある。また、車輌1の外装部分、詳しくは車輌1の前側左右のドアには車外用アンテナ13、14がそれぞれ配設してあり、後部のドアには車外用アンテナ15が配設してある。なお、図1においては、無線信号の信号強度が最大強度の場合に、各アンテナが送信した無線信号が到達できる範囲を破線の円で図示してある(以下、無線通信範囲11a〜15aという)。
【0026】
車外用アンテナ13〜15は、車輌1の外部へ向けて無線による要求信号を送信し、車輌1へのユーザ(が携帯する通信器30)の接近を検知するためのものである。車外用アンテナ13〜15による無線通信範囲13a〜15aは車輌1のドアから数mの範囲であり、車輌1のドアの開閉を行うユーザの全身を覆うことができる程度の範囲にしてある。また、車外用アンテナ13〜15による無線通信範囲13a〜15aは車輌1の内部にまで及んでおり、ドアの近傍であれば車輌1内の通信器30へ無線信号を送信することができるようにしてある。
【0027】
車内用アンテナ11、12は、車輌1の内部へ向けて無線による要求信号を送信し、車輌1内に通信器30が存在するか否かを検知するためのものである。車内用アンテナ11、12の無線通信範囲11a、12aを合わせることによって、車輌1の車室(運転席、助手席、後部座席及びダッシュボード近辺等を含む)を全域に亘って覆うことができるようにしてある。また、車内用アンテナ11、12の無線通信範囲11a、12aと車外用アンテナ13〜15の無線通信範囲13a〜15aとは、一部に重複する部分が存在する。
【0028】
また、車載無線通信装置10は通信器30から送信される応答信号を受信するための受信アンテナ28を備えている。受信アンテナ28は、図1においては図示を省略するが、例えば車輌1のダッシュボード近辺又は天井等に配設してあり、車輌1の周囲数m程度の範囲で通信器30から送信される応答信号を受信することができるようにしてある。
【0029】
更に、車載無線通信装置10は、車内用アンテナ11、12又は車外用アンテナ13〜15を利用した無線信号の送信処理を行う送信部16〜20、受信アンテナ28を介した応答信号の受信処理を行う受信部29、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ID記憶部24、表示部25、音声出力部26、及び車輌1のドアを施錠するロック機構27と、これらの各部を制御する制御部21とを備えている。
【0030】
制御部21は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、ROM22に予め記憶されたプログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。ROM22は、マスクROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、車載無線通信装置10の動作に必要な種々のソフトウェアプログラムがあらかじめ記憶してある。RAM23は、制御部21が制御処理又は演算処理等を行う際に発生する一時的なデータを記憶するものであり、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等の書き換え可能なメモリ素子により構成してある。
【0031】
ID記憶部24は、車載無線通信装置10に付される一のIDと、この車載無線通信装置10との間で無線通信を行う通信器30にそれぞれ付されたIDとを記憶している。車載無線通信装置10が複数の通信器30と無線通信を行う場合には、ID記憶部24には複数のIDを記憶する。車載無線通信装置10は、自らに付されたIDを含む送信データを無線信号として通信器30へ送信すると共に、通信器30からの応答信号に含まれるIDとID記憶部24に記憶してあるIDとが一致するか否かを調べ、一致する場合にのみロック機構27によるドアの施錠状態の制御処理及び後述の通信器30の位置特定処理等を行うようにしてある。また、車載無線通信装置10及び通信器30が無線通信を暗号化して行う場合には、暗号化のための鍵情報などをID記憶部24に記憶してもよい。なお、ID記憶部24は、EEPROM又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性のメモリ素子により構成してある。
【0032】
表示部25は、液晶ディスプレイなどにより構成されるものであり、車輌1にカーナビゲーション又はバックモニタ等の装置が搭載されている場合には、これらの装置のための液晶ディスプレイと共用であってもよい。音声出力部26は、スピーカなどにより構成されるものであり、ユーザへの警告音又はメッセージ等を出力することができるようにしてある。車輌1にオーディオ又はカーナビゲーション等の装置が搭載されている場合には、これらの装置のためのスピーカと共用であってもよい。
【0033】
ロック機構27は、車輌1のドアの施錠及び開錠を行う機械機構と、この機械機構を動作させるモータ又はアクチュエータ等の動力源と、この動力源を駆動する駆動回路とにより構成され、制御部21が駆動回路へ施錠命令又は開錠命令を与えることにより、車輌1のドアの施錠又は開錠を行うことができるようにしてある。また、図示は省略するが、車載無線通信装置10が車輌1のエンジンを始動する始動回路を更に備えて、制御部21の制御により車輌1のエンジンを始動することができる構成としてもよい。
【0034】
送信部16〜20は、車輌1の適所に配設されたアンテナを介して周波数が約100KHz程度のLF(Low Frequency)の無線信号を送信するものである。送信部16〜20は、制御部21から与えられる送信データを変調してLFの信号を生成する変調回路、及び変調された信号を増幅してアンテナから送信するための増幅回路等をそれぞれ有している。また、詳細は後述するが、送信部16〜20は、無線信号の信号強度を変化させながら送信する機能を有している。
【0035】
受信部29は、車輌1の適所に配設された受信用アンテナ28を介して、通信器30から送信される周波数が300MHz程度のUHF(Ultra High Frequency)の無線信号を受信するものである。受信部29は、受信用アンテナ28にて受信した無線信号を増幅する増幅回路、及び増幅された信号を復調して通信器30からの送信データを取得する復調回路等を有しており、復調したデータを制御部21へ与えるようにしてある。
【0036】
通信器30は、受信用アンテナ31及び送信用アンテナ32と、受信部33、送信部34及びID記憶部36と、これらによる無線信号の送受信処理の制御を行う制御部35とを備えている。受信部33は、受信用アンテナ31に接続してあり、受信用アンテナ31を介して車載無線通信装置10から送信されるLFの無線信号を受信するものである。受信部33は、受信用アンテナ31にて受信した無線信号を増幅する増幅回路、及び増幅された信号を復調して車載無線通信装置からの送信データを取得する復調回路等を有しており、復調したデータを制御部35へ与えるようにしてある。
【0037】
送信部34は、送信用アンテナ32に接続してあり、送信用アンテナ32を介してUHFの無線信号を車載無線通信装置10へ送信するものである。送信部34は、制御部35から与えられる送信データを変調してUHFの信号を生成する変調回路、及び変調された信号を増幅して送信用アンテナ32から送信するための増幅回路等を有している。
【0038】
ID記憶部36は、各通信器30にそれぞれ付される一のIDと、通信器30が通信を行うことができる車載無線通信装置10に付された一のIDとを記憶している。制御部35は、ID記憶部36に記憶されたIDを読み出して認証処理を行うことによって、車載無線通信装置10との間で正規の通信のみを行うようにしてある。また、車載無線通信装置10及び通信器30が無線通信を暗号化して行う場合には、暗号化のための鍵情報などをID記憶部36に記憶してもよい。なお、ID記憶部36は、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性のメモリ素子により構成してある。
【0039】
例えば、車輌1のドアに設けられた開錠用のスイッチがユーザにより触れられた場合、車載無線通信装置10は車外用アンテナ13、14又は15から無線による要求信号を送信する。ユーザが携帯する通信器30が車外用アンテナ13、14又は15の無線通信範囲13a、14a又は15a内に存在する場合には、通信器30は車載無線通信装置10からの要求信号を受信し、これに対する応答信号を送信する。通信器30からの応答信号を受信した車載無線通信装置10は、次いで、車内用アンテナ11又は12から要求信号を送信する。通信器30が車内用アンテナ11又は12の無線通信範囲11a又は12a内に存在し、通信器30から応答信号が送信された場合、即ち通信器30が車内に存在する場合には、車載無線通信装置10は車輌1のドアの開錠に係る処理を行わない。通信器30が車内用アンテナ11又は12の無線通信範囲11a又は12a内に存在せず、通信器30からの応答信号を受信しない場合、即ち通信器30が車外に存在する場合には、車載無線通信装置10は車輌1のドアの開錠に係る処理を開始する。車輌1のドアの施錠を行う場合も同様に、車載無線通信装置10は車内に通信器30が存在する場合には、ドアの施錠に係る処理を行わないようにしてある。
【0040】
また、本発明に係る車載無線通信装置10は、車内に存在する通信器30の位置を特定する機能を備えており、車輌1のエンジンを停止した場合又はユーザが車載無線通信装置10に指示を与えた場合等に通信器30の位置を特定し、ユーザへ通知するようにしてある。図3は、本発明に係る車載無線通信システムでの通信器30の位置特定方法を説明するための模式図である。なお、図3においては車内用アンテナ11の場合について図示するが、車内用アンテナ12及び車外用アンテナ13〜15の場合についても同様である。
【0041】
車載無線通信装置10の送信部16は、要求信号の信号強度Lを最小強度Lminから最大強度Lmaxまで一定の傾きで上昇させながら通信器30へ送信することができる。図3(a)にはこの場合に送信部16が送信する要求信号の信号強度Lをグラフとして示してあり、要求信号の信号強度は周期Tの間に最小強度Lminから最大強度Lmaxまで傾き(Lmax−Lmin)/Tで上昇している。また、図3(b)に示すように、車内用アンテナ11から要求信号が到達する範囲(無線通信範囲)Hは、要求信号が最小強度Lminの場合には最小範囲Hminであり、最大強度Lmaxの場合には最大範囲Hmaxである。無線通信範囲Hは要求信号の信号強度Lに略比例して広がる。
【0042】
ここで、送信部16にて要求信号の信号強度Lを最小強度Lminから上昇させ始め、時間ta(ta<T)経過したときに受信部29にて通信器30からの応答信号を受信したとする。このときに送信部16から送信されていた要求信号の信号強度はLaであり、この要求信号による無線通信範囲Haは信号強度Laに比例する。また、信号強度Laは時間taに比例することから、車載無線通信装置10は通信器30の応答信号を受信したときの時間taからこのときの無線通信範囲Haを算出することができる。ここで算出した無線通信範囲Haは、車内用アンテナ11から通信器30まで距離に相当する。
【0043】
更に、送信部17〜20にて同様の処理を行い、車内用アンテナ12及び車外用アンテナ13〜15から通信器30までの距離を算出することができる。車載無線通信装置10は5つのアンテナを備えているため、各アンテナから通信器30までの距離を算出することによって、車輌1内での通信器30の位置を特定することができる。
【0044】
図4は、本発明に係る車載無線通信装置10が行う通信器30の位置特定処理の手順を示すフローチャートである。車載無線通信装置10は、5つの通信部16〜20のうちの1つの通信部にて最小強度Lminの要求信号の送信を開始し(ステップS1)、この要求信号の信号強度Lの上昇を開始すると共に(ステップS2)、タイマによる計時を開始する(ステップS3)。計時を行うタイマは、例えば車載無線通信装置10の制御部21内に設けられているタイマ(図示は省略する)を用いるものとする。
【0045】
次いで、受信部29にて通信器30からの応答信号を受信したか否かを調べ(ステップS4)、受信していない場合には(S4:NO)、応答信号を受信するまで待機する。応答信号を受信した場合(S4:YES)、タイマにより信号強度Lの上昇開始からの時間taを取得し(ステップS5)、取得した時間taを基に、対応するアンテナから通信器30までの距離Haを算出する(ステップS6)。
【0046】
次いで、車輌1に搭載した5つのアンテナ(車内用アンテナ11、12及び車外用アンテナ13〜15)の全てについて距離Haの算出を終了したか否かを調べる(ステップS7)。少なくとも1つのアンテナについて距離Haの算出を終了していない場合(S7:NO)、要求信号を送信するアンテナを切り替えて(ステップS8)、即ち5つの通信部16〜20のうちの別の通信部に切り替えて、ステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返し行う。全てのアンテナについて距離Haの算出を終了した場合(S7:YES)、算出した複数の距離Haを基に発信機30の位置を特定し(ステップS9)、特定した発信機30の位置を表示部25に表示して(ステップS10)、処理を終了する。
【0047】
通信器30の位置を特定した車載無線通信装置10は、特定結果を表示部25に表示するようにしてある。図5は、本発明に係る車載無線通信装置10が表示部25に表示する通信器30の位置の表示例である。車載無線通信装置10は、車輌1を表象する模式的な俯瞰図101を表示部25の中央に表示すると共に、車輌1の俯瞰図101にマーカー130を重ねて表示することにより特定した通信器30の位置を表示するようにしてある。マーカー130には、例えば赤丸又は点滅する丸等の図形を用いてもよく、通信器30を表象する模式的な図形を用いてもよい。更に、車載無線通信装置10は、マーカー130を指し示す矢印150を表示部25に表示し、通信器30の位置を強調するようにしてある。また、表示部25への表示と共に、音声出力部26による警告音の出力又は音声メッセージの出力等を行ってもよい。
【0048】
以上の構成の車載無線通信システム及び車載無線通信装置10においては、車輌1に搭載された車内用アンテナ11、12及び車外用アンテナ13〜15の無線通信範囲に通信器30が存在すれば、車載無線通信装置10が通信器30の位置を特定して表示部25に表示することができる。よって、ユーザは通信器30の位置を容易に把握することができるため、通信器30の車輌1内での置き忘れ又は紛失等を防止することができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、車輌1に車内用アンテナ11、12及び車外用アンテナ13〜14の5つのアンテナを搭載する構成としたが、これに限るものではなく、少なくとも3つ程度のアンテナを搭載すれば本発明の位置特定を行うことができる。もちろん、6つ以上のアンテナを車輌1に搭載してもよく、アンテナの数が多いほど位置特定の精度を高めることができる。また、各アンテナの搭載位置は図1に示した位置に限らない。また、図5に示した表示部25による通信器30の位置表示は一例であってこれに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る車載無線通信システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車載無線通信システムでの通信器の位置特定方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る車載無線通信装置が行う通信器の位置特定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る車載無線通信装置が表示部に表示する通信器の位置の表示例である。
【符号の説明】
【0051】
1 車輌
10 車載無線通信装置
11、12 車内用アンテナ(送信手段)
13〜15 車外用アンテナ(送信手段)
16〜20 送信部
21 制御部(制御手段、位置特定手段、位置表示手段)
24 ID記憶部
25 表示部(位置表示手段)
27 ロック機構
28 受信用アンテナ(受信手段)
29 受信部
30 通信器
31 受信アンテナ
32 送信アンテナ
33 受信部
34 送信部
35 制御部
36 ID記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され、可搬型の通信器へ応答を要求する要求信号を無線により送信する送信手段と、該送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信する受信手段と、該受信手段が受信した応答信号に応じて前記車輌のドアの施錠状態を制御する制御手段とを備える車載無線通信装置において、
前記送信手段は、要求信号の信号強度を上昇させながら送信するようにしてあり、
前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、前記通信器の位置を特定する位置特定手段を備えること
を特徴とする車載無線通信装置。
【請求項2】
前記車輌の異なる位置にそれぞれ配設された複数の前記送信手段を備え、
前記位置特定手段は、
各送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信した場合に、各送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、各送信手段から前記通信器までの距離をそれぞれ算出し、
算出した複数の距離を基に、前記通信器の位置を特定するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の車載無線通信装置。
【請求項3】
前記車輌の外装部分に配設された前記送信手段を備え、
前記位置特定手段は、前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した信号強度に応じて、前記通信器の前記車輌内での位置を特定するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載無線通信装置。
【請求項4】
前記位置特定手段が特定した前記通信器の位置を表示する位置表示手段を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車載無線通信装置。
【請求項5】
可搬型の通信器と、車輌に搭載され、前記通信器へ応答を要求する要求信号を無線により送信する送信手段、該送信手段が送信した要求信号に対する前記通信器からの応答信号を受信する受信手段、及び該受信手段が受信した応答信号に応じて前記車輌のドアの施錠状態を制御する制御手段を有する車載無線通信装置とを備える車載無線通信システムにおいて、
前記車載無線通信装置は、
前記送信手段が、要求信号の信号強度を上昇させながら送信するようにしてあり、
前記受信手段が前記通信器からの応答信号を受信した場合に、前記送信手段が送信した要求信号の信号強度に応じて、前記通信器の位置を特定する位置特定手段を有すること
を特徴とする車載無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−255750(P2008−255750A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101954(P2007−101954)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】