説明

車載用広帯域アンテナ

【課題】GPSアンテナと一体化したときの干渉が低減されるとともに、アンテナ特性の調整が容易で小型・低背な車載用広帯域アンテナを提供する。
【解決手段】本実施形態の車載用広帯域では、給電エレメント110の先端部114を無給電エレメント120とは反対側に180度折り返し、台座130の側面132上に配置している。また、無給電エレメント120の先端部124を給電エレメント110とは反対側に180度折り返し、折り返し部123を台座130の側面133に配置するとともに先端部124を台座130の上面131に配置している。このように、給電エレメント110の先端部114及び無給電エレメント120の先端部124を互いに遠ざかる方向に180度折り返すことにより、それぞれの先端部が他方のエレメントに影響してアンテナ特性が劣化するのを防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される複合アンテナに適用可能な車載用広帯域アンテナに関し、特にGPSアンテナと一体化して複合アンテナを構成することができる車載用広帯域アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、車両にGPSやETC、VICS等の機器が搭載されるようになっており、それに伴って車両に搭載されるアンテナの数も増加してきている。このような車両に搭載されるアンテナ数の増加に対応するために、各アンテナの設置スペースをできるだけ小さくすることが強く求められており、アンテナの小型・低背化や複数のアンテナを一体化した複合アンテナの開発が進められている。一般的な車載用アンテナとして、車両内での配置を容易とするために、その寸法を例えば10cm四方以下でかつ高さも数cm以下とするのが好ましい。
【0003】
携帯電話では、800MHz帯、900MHz帯等の周波数帯の利用が伝搬特性がよく通信可能な範囲も広いことから、車載用の携帯電話としてもこの周波数帯での利用が強く望まれている。そのため、この周波数帯に対応した車載用広帯域アンテナのニーズが高いが、例えば824MHzでは波長が364mmとなり、大きな寸法のアンテナが必要となる。これに加えて、車載用アンテナでは、設置場所周辺の機器等の影響を低減するために、電気的に地板として動作する基板ないしは地板を備えた基板を設け、その上にアンテナエレメントを配置する方法が用いられる。
【0004】
基板上で動作する小型低背なアンテナとして、例えば逆Lアンテナや逆Fアンテナ等が知られている。これらのアンテナでは、アンテナエレメントの寸法として波長の1/4程度の長さが必要になる。逆Lアンテナや逆Fアンテナで基板に平行な方向の電波を放射する場合は、基板に対する配置等を調整することで、基板から放射される基板に平行な方向の電波を積極的に利用することで周波数帯域を広げることができる。これに対し、基板上で基板に直交する方向の電波を放射する場合には、逆Lアンテナや逆Fアンテナでは周波数帯域が狭くなるといった課題がある。
【0005】
そこで、より広帯域な周波数帯を利用できるようにするための対策として、寄生素子(無給電エレメント)を用いる方法が知られている(特許文献1、2)。無給電エレメントを給電エレメントの近傍に配置すると、両者の結合により無給電エレメントが給電エレメントの動作周波数に近い別の周波数で動作する。これにより、給電エレメントと無給電エレメントのそれぞれの動作周波数を合わせた広い周波数帯域で動作せることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−201278号公報
【特許文献2】特開2006−238269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、給電エレメントに無給電エレメントを追加して広帯域化を図った車載用広帯域アンテナでは、2つのエレメントを並列に配列するために比較的大きなスペースが必要となり、車両に搭載するためのスペースを確保するのが難しくなる、といった問題がある。そこで、車載用広帯域アンテナの設置スペースを低減するために、車載用広帯域アンテナを一層小型・低背化するとともに、車載用広帯域アンテナをGPSアンテナと一体化して複合アンテナとして搭載可能にすることが強く望まれる。
【0008】
しかし、従来はアンテナ特性を損なうことなく所定寸法の給電エレメントと無給電エレメントとを狭い空間内に配置するのが極めて難しく、またGPSアンテナと一体化したときの干渉を低減するのが困難であった。さらに、給電エレメントと無給電エレメントとを狭い空間内に配置すると、アンテナ特性の調整が難しくなってしまうといった問題も生じる。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、GPSアンテナと一体化したときの干渉が低減されるとともに、アンテナ特性の調整が容易で小型・低背な車載用広帯域アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車載用広帯域アンテナの第1の態様は、放射部と、該放射部に接続されて略垂直方向に配置された給電素子部及び接地素子部とを有する給電エレメントと、前記給電エレメントと結合可能に配置された動作部と、該動作部に接続されて前記給電素子部及び接地素子部と略平行になるように配置された無給電側接地素子部とを有する無給電エレメントと、前記給電エレメント及び前記無給電エレメントが配置される所定高さの台座と、少なくとも前記給電素子部に接続される配線パターンが配置される配線部と、前記台座が搭載される台座搭載部とを有する基板と、を備え、前記給電エレメントは、少なくとも前記放射部の主要部分が前記台座の上面長手方向に配置されて先端が前記無給電エレメントと反対側に180度折り返され、前記無給電エレメントは、前記動作部の少なくとも一部が前記台座の上面で前記放射部と略平行に配置されて先端が前記給電エレメントと反対側に180度折り返されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、パッチアンテナで形成されたGPSアンテナと組み合わせて車載用複合アンテナを構成することを特徴とする。
【0012】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記無給電エレメントが、前記台座の前記GPSアンテナの配置領域側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記台座の前記配線パターン側の側面に、一端から順に前記接地素子部、前記給電素子部、及び前記無給電側接地素子部が配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記台座の前記配線パターン側の側面に凹部が垂直方向に形成され、少なくとも前記接地素子部と前記給電素子部が前記凹部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記給電エレメントのインピーダンス調整部が前記凹部に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記無給電エレメントは、前記給電エレメントとの結合の大きさを調整可能なスタブを備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記台座が4つの側面を有する略直方体形状に形成されており、前記給電エレメント及び前記無給電エレメントの一部が1以上の前記側面に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の車載用広帯域アンテナの他の態様は、前記基板は、前記配線部を挟んで前記台座搭載部と反対側に別の台座搭載部を備えた略コの字形状に形成されており、別の台座と該別の台座に配置された別の給電エレメントとを備える受信アンテナを前記別の台座搭載部に搭載してダイバーシティな構成を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、GPSアンテナと一体化したときの干渉が低減されるとともに、アンテナ特性の調整が容易で小型・低背な車載用広帯域アンテナを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用広帯域アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の車載用広帯域アンテナの各エレメントの折り返し方向を示す模式図及びVSWR特性を示すグラフである。
【図3】比較例1の車載用広帯域アンテナの各エレメントの折り返し方向を示す模式図及びVSWR特性を示すグラフである。
【図4】比較例2の車載用広帯域アンテナの各エレメントの折り返し方向を示す模式図及びVSWR特性を示すグラフである。
【図5】比較例3の車載用広帯域アンテナの各エレメントの折り返し方向を示す模式図及びVSWR特性を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態の車載用広帯域アンテナの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態における車載用広帯域アンテナについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車載用広帯域アンテナを、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の車載用広帯域アンテナの概略構成を示す斜視図であり、同図(a)は給電点側から見た斜視図、同図(b)は開放端側から見た斜視図である。
【0023】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100は、幅が概略一定な板状ないしは線状の給電エレメント110及び無給電エレメント120を備え、これらが略直方体形状の台座130上に配置された構成を有している。給電エレメント110は、放射部111と給電線路に接続される給電素子部112と地板に接続される接地素子部113とを有して逆Fアンテナとしている。給電エレメント110は、逆Fアンテナに限定されず、例えば逆Lアンテナとしてもよい。放射部111は、主要部分が台座130の上面131の長手方向に配置され、給電素子部112及び接地素子部113は、台座130の側面に配置されている。これにより、給電素子部112及び接地素子部113は、給電エレメント110の一部で屈曲されて放射部111に対して略垂直方向に配置されている。
【0024】
無給電エレメント120は、給電エレメント110と結合可能に配置された動作部121と地板に接続される無給電側接地素子部122とを有している。動作部121は台座130の上面131の長手方向に配置され、無給電側接地素子部122は台座130の側面に配置されている。これにより、無給電側接地素子部122も無給電エレメント120の一部で屈曲されて動作部121に対して略垂直方向に配置されている。
【0025】
給電エレメント110の放射部111及び無給電エレメント120の動作部121は、台座130の上面131において略平行に近接して配置された容量結合部をそれぞれ有している。給電エレメント110と無給電エレメント120とを近接させて容量結合部を形成することで、アンテナ特性を調整することが可能となる。また、給電エレメント110の給電素子部112及び接地素子部113と無給電エレメント120の無給電側接地素子部122は、台座130の側面で略平行となるように配置されている。
【0026】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100は、パッチアンテナで形成されたGPSアンテナと組み合わせて車載用複合アンテナとして用いることが可能に構成されており、GPSアンテナに隣接して配置することができる。車載用広帯域アンテナ100を載置する基板140は、GPSアンテナを搭載するための配置領域150の一端側に台座130を搭載するための台座搭載部141を備えており、給電素子部112側には少なくとも給電素子部112と給電線路160とを接続するための配線パターン142aを配置するための配線部142を備えている。
【0027】
基板140は車両に略水平に搭載され、これにより放射部111等が略水平に設置されるとともに、給電素子部112、接地素子部113、及び無給電側接地素子部122が垂直方向に設置される。基板140は、電気的に地板として動作する、または地板を備えた複合体となっている。あるいは、車載用広帯域アンテナ100の地板を台座130の底面に設けてもよい。
【0028】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、給電エレメント110、無給電エレメント120、及びそれぞれの素子部がすべて台座130の上面131または側面に配置されていることから、アンテナ寸法が台座130の寸法で決まる。そこで、車載用広帯域アンテナ100の動作周波数の最低周波数に対応する波長をλとするとき、台座130の長手方向の寸法(最大寸法)をλ/4未満とし、台座130の最大幅(上面131の長手方向と直交する方向)をλ/10以下とし、さらに台座130の高さをλ/10程度とすることで、車載用広帯域アンテナ100の小型・低背化を図っている。
【0029】
逆Fアンテナや逆Lアンテナ等ではエレメント長を略λ/4とする必要があるが、台座130の長手方向の寸法をλ/4未満とすると、給電エレメント110を台座130の長手方向だけに配置することはできず、一部を折り曲げて配置する必要がある。同様に、無給電エレメント120についても、台座130の長手方向に必要な長さを配置することができないときは、その一部を折り曲げて配置する必要がある。
【0030】
上記のように、給電エレメント110や無給電エレメント120の一部を折り曲げて台座130に配置する必要があるとき、台座130の上面131が狭いために折り曲げ部を上面131に配置するのが困難となる。それに加えて、折り曲げ部の配置場所によってはアンテナ特性が劣化してしまうといった問題が生じる。給電エレメント110や無給電エレメント120では、共振時は先端部の電位が最大となることから、先端部を折り曲げて他方のエレメントに近接させてしまうと、相互に強い影響が及んでアンテナ特性が劣化してしまう。
【0031】
例えば、給電エレメント110の先端部を折り曲げて無給電エレメント120に近接させてしまうと、無給電エレメント120が給電エレメント110の動作周波数の近傍の周波数で動作する、といった効果が低減されてしまい、十分な広帯域化を実現することができなくなってしまうおそれがある。
【0032】
そこで、本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、一方のエレメントの折り返し部を他方のエレメントの反対側に折り曲げるようにする。給電エレメント110及び無給電エレメント120ともその先端部を折り曲げるときは、それぞれの折り曲げ部を相互に反対側となるように(外向きになるように)折り曲げる。また、折り曲げ部を台座130上に配置するために、配置台座130の上面131に加えてその側面も利用できるようにする。台座130の側面として、図1に示す側面132、133、134を用いることができる。このような側面を利用して折り返し部を配置することで、他方のエレメントからできるだけ離して相互の影響をできるだけ低減するようにすることができる。
【0033】
図1では、給電エレメント110の先端部114を無給電エレメント120とは反対側に180度折り返し、台座130の側面132上に配置している。また、無給電エレメント120の先端部124を給電エレメント110とは反対側に180度折り返し、折り返し部123を台座130の側面133に配置するとともに先端部124を台座130の上面131に配置している。このように、給電エレメント110の先端部114及び無給電エレメント120の先端部124を互いに遠ざかる方向に180度折り返すことにより、それぞれの先端部が他方のエレメントに影響してアンテナ特性が劣化するのを防止している。
【0034】
給電エレメント110の先端部114及び無給電エレメント120の先端部124のそれぞれの折り返し方向が、車載用広帯域アンテナ100の特性にどのように影響するかを、シミュレーション結果を用いて説明する。図2は、本実施形態の車載用広帯域アンテナ100の特性を示す図であり、同図(a)は車載用広帯域アンテナ100の給電エレメント110及び無給電エレメント120の折り返し方向を示す模式図であり、同図(b)はVSWR特性を示すグラフである。
【0035】
図2(a)は、給電エレメント110の先端部114及び無給電エレメント120の先端部124が、互いに遠ざかる方向(外側)に折り返されていることを示している。先端部114,124を互いに遠ざかるように折り返すことで、図2(b)に示すようなVSWR特性が得られ、低側周波数F1と高側周波数F2との間の広帯域で良好な特性が得られることがわかる。ここで、低側周波数F1=880MHz、高側周波数F2=960MHzである。
【0036】
また、比較例1として、給電エレメント及び無給電エレメントを折り返さずに直線状としたときのアンテナ特性を図3に示す。同図(a)は、給電エレメント11及び無給電エレメント12がともに直線状であることを示す模式図であり、同図(b)は、VSWR特性を示すグラフである。図3(b)に示すVSWR特性より、給電エレメント11及び無給電エレメント12を直線状としたときには、周波数F1〜F2の広帯域で良好な特性が得られることがわかる。本実施形態の車載用広帯域アンテナ100のアンテナ特性である図2(b)を図3(b)と比較すると、両者でほぼ同程度のVSWR特性が得られることがわかる。
【0037】
一方、給電エレメント及び無給電エレメントの折り返し方向を本実施形態の車載用広帯域アンテナ100と異なるようにしたときのシミュレーション結果を図4、5に示す。図4では、比較例2として同図(a)に示すように、給電エレメント21の先端部と無給電エレメント22の先端部をともに左方向に折り返しており、そのときのVSWR特性を同図(b)に示している。また、図5では、比較例3として同図(a)に示すように、給電エレメント31の先端部と無給電エレメント32の先端部とが互いに近接する内側方向に折り返しており、そのときのVSWR特性を同図(b)に示している。
【0038】
図4より、給電エレメント21の先端部と無給電エレメント22の先端部をともに左方向に折り返した場合には、VSWR特性が大きく劣化して周波数F1〜F2の帯域で動作させることができなくなることがわかる。これは、無給電エレメント22の先端部が給電エレメント21の放射部に近接することにより、給電エレメント21が無給電エレメント22の先端部の影響を強く受けてVSWR特性が大幅に劣化することを示している。
【0039】
また図5より、給電エレメント31の先端部と無給電エレメント32の先端部とが互いに近接する内側方向に折り返した場合にも、VSWR特性が大きく劣化して周波数F1〜F2の帯域で動作させることができなくなることがわかる。この場合には、給電エレメント31の先端部と無給電エレメント32の先端部とが近接して干渉することにより、相互に強い影響を受けてVSWR特性が大幅に劣化することを示している。
【0040】
上記のシミュレーション結果より、給電エレメント110の先端部114及び無給電エレメント120の先端部124が、それぞれ他方のエレメントに与える影響をできるだけ低減するために、相互に遠ざかる外側方向に折り返すのが好ましいことがわかる。これにより、給電エレメント110及び無給電エレメント120を折り返さずに直線状にしたときとほぼ同程度のVSWR特性が得られるようにすることができる。
【0041】
折り返された先端部が他方のエレメントに与える影響をできるだけ低減するために、さらに、給電エレメント110の先端部114と無給電エレメント120の先端部124の少なくとも一方を、台座130の長手方向の側面(132、134)に配置するのが好ましい。先端部114、124の少なくとも一方を台座130の長手方向の側面に配置することにより、他方のエレメントに与える影響をさらに低減することができる。
【0042】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、給電エレメント110の先端部114が長手方向の側面132に配置されている。また、給電エレメント110及び無給電エレメント120の一部を台座130の側面に配置することで、車載用広帯域アンテナ100の寸法、すなわち台座130の寸法を小さくすることが可能となる。本実施形態では、給電エレメント110の先端部114と無給電エレメント120の折り返し部123を、それぞれ台座130の側面132と側面133に配置しており、これによりそれぞれで必要なエレメント長を確保している。
【0043】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100のアンテナ特性に影響するものとして、さらに鏡像電流によるものがある。一般に、地板上で動作する逆Fアンテナや逆Lアンテナでは、地板上に鏡像電流が発生する。この鏡像電流は、エレメントに流れる電流のうち基板(地板)面と平行な方向の成分を打ち消すように作用する、といった特性がある。このような鏡像電流による影響は、エレメントと基板(地板)との距離が小さくなるほど強くなる。
【0044】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、給電エレメント110の放射部111の少なくとも主要部分を高さλ/10程度の台座130の上面131に配置しており、これにより地板との距離を大きくして鏡像電流の影響を低減している。また、放射部111の一部を台座の側面に配置するときは、台座130の高さの半分より上側に配置するのがよい。
【0045】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100は、図1に示す配置領域にGPSアンテナを配置することで車載用複合アンテナを構成することができる。GPSアンテナと組み合わせたとき、GPSアンテナの影響を受けて車載用広帯域アンテナ100のアンテナ特性が劣化するのをできるだけ低減する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、給電エレメント110の少なくとも主要部分を所定高さの台座130の上面131に配置することで、配置領域150に搭載されるGPSアンテナより垂直方向に高くなるようにしている。このように、給電エレメント110の主要部分をGPSアンテナより高い位置に配置することで、GPSアンテナからの干渉を低減するようにしている。本実施形態では、台座130の高さをλ/10程度としており、これによりGPSアンテナからの干渉を低減することができる。
【0047】
また、給電エレメント110をGPSアンテナの設置領域150から遠い台座130の図面上左側に配置し、無給電エレメント120をGPSアンテナの設置領域150に近い台座130の図面上右側に配置するのが好ましい。本実施形態では、給電エレメント110の先端部114が、GPSアンテナの設置領域150からさらに遠くなる方向に折り返されていることから、GPSアンテナからの影響をより一層低減することができる。
【0048】
さらに、給電エレメント110の給電素子部112及び接地素子部113と、無給電エレメント120の無給電側接地素子部122とを、台座130の端部側から順に接地素子部113、給電素子部112、無給電側接地素子部122の順に配列しており、給電素子部112が接地素子部113と無給電側接地素子部122とで挟まれるようにしている。無給電側接地素子部122と給電素子部112とを近接させることにより、インピーダンスの調整を容易にしている。
【0049】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100をさらに小型化するために、給電素子部112及び接地素子部113が配置される台座130の側面134上に凹部134aを形成している。凹部134aを形成することで、給電素子部112及び接地素子部113を基板140に接続するための接続パッド部を凹部134a内に設けることができる。これにより、接続パッド部が側面134よりGPSアンテナ側に突出するのを防止又は低減することができ、車載用広帯域アンテナ100を搭載するための基板140、特に配線部142の必要スペースを低減させることが可能となる。なお、本実施形態では、給電素子部112及び接地素子部113を配置する部分のみに凹部134aを形成するようにしているが、これに限らず、例えば無給電側接地素子部122も含むように凹部134aを形成してもよい。
【0050】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、給電エレメント110の給電素子部112と接地素子部113とを接続する接続線路115を設けており、給電素子部112と接地素子部113と接続線路115とでコの字形状のインピーダンス調整部110aを形成している。インピーダンス調整部110aは、上記の凹部134a内に配置され、放射部111が接続線路115に接続されている。インピーダンス調整部110aでは、給電素子部112及び接地素子部113の長さ(高さ)と接続線路115の長さを調整することで、インピーダンスの大きさを調整することが可能となっている。
【0051】
上記のようなインピーダンス調整部110aを設けることで、給電エレメント110と無給電エレメント120の両方あるいはいずれか一方に対し、インピーダンスを調整するための曲折部等を設けることなく直線状に配置することが可能となる。また、インピーダンス調整部110aを設けることで、インピーダンス調整を行うためのエレメント位置が明確になり、その調整が容易となる。
【0052】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ100では、180度折り返された先端部114,124の長さを調整したり、給電エレメント110及び無給電エレメント120のそれぞれにおけるエレメント間の結合(近接距離)や両エレメント110、120間の結合(近接距離)を調整することでアンテナ特性を調整することができる。アンテナ特性の調整をさらに容易にするために、給電エレメントと110との距離を調整するためのスタブを無給電エレメント120に設けることができる。給電エレメント110の放射部111と無給電エレメント120の動作部121との間で略平行に配置されて近接する結合部において、無給電エレメント120側から給電エレメント110側に突出するスタブを設け、該スタブの幅や給電エレメント110との距離を調整することで、アンテナ特性を容易に調整することが可能となる。
【0053】
上記説明のように、本実施形態によれば、給電エレメント110及び無給電エレメント120を台座130上に配置し、それぞれの先端部114、124を互いに遠ざかる方向に折り返すことで、GPSアンテナと一体化したときの干渉を低減することが可能になるとともに、アンテナ特性の調整が容易で小型・低背な車載用広帯域アンテナ100を提供することが可能となる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車載用広帯域アンテナを、図6を用いて以下に説明する。図6は、本実施形態の車載用広帯域アンテナの概略構成を示す斜視図であり、同図(a)は給電点側から見た斜視図、同図(b)は開放端側から見た斜視図である。
【0055】
本実施形態の車載用広帯域アンテナ200は、基板240が台座搭載部141、配線部142に加えて、さらに別の台座搭載部243を備えた略コの字形状に形成されている。台座搭載部141には第1実施形態の車載用広帯域アンテナ100と同様の給電エレメント110と無給電エレメント120とを有する第1アンテナ部201が搭載され、別の台座搭載部243には給電エレメント210を有する第2アンテナ部202が搭載された構成となっている。GPSアンテナの配置領域150は、台座搭載部141と別の台座搭載部243との間に設けることができる
【0056】
本実施形態では、第1アンテナ部201が送受信アンテナとして動作し、第2アンテナ部202が受信アンテナとして動作する。基板240を略コの字形状とすることで、第1アンテナ部201と第2アンテナ部202との距離を確保しており、これにより第1アンテナ部201と第2アンテナ部202とでダイバーシティの構成としている。第1アンテナ部201と第2アンテナ部202との距離をできるだけ長くするために、略コの字形状の基板240の対向する2辺の端部にそれぞれ配置するのがよい。
【0057】
第2アンテナ部202は、幅が概略一定な板状ないしは線状の給電エレメント210を備え、これが略直方体形状の台座230上に配置されている。給電エレメント210は、放射部211と配線パターン242aに接続される給電素子部212とを有している。放射部211は、主要部分が台座230の上面231の長手方向に配置され、給電素子部212は、1アンテナ部201の給電素子部112とほぼ対向する台座230の側面に配置されている。これにより、給電素子部212は、給電エレメント210の一部で屈曲されて放射部211に対して略垂直方向に配置されており、配線パターン242aを経由して給電線路260に接続されている。
【0058】
第2アンテナ部202でも、給電エレメント210の放射部211と給電素子部212とが台座230の上面231または側面に配置されていることから、第2アンテナ部202の寸法が台座230の寸法で決まる。台座230の上面231だけでなく側面にも放射部211を配置することで、台座230の長手方向の寸法(最大寸法)をλ/4未満としており、さらに台座230の最大幅(上面231の長手方向と直交する方向)をλ/10以下、台座230の高さをλ/10程度とすることで、第2アンテナ部202の小型・低背化を図っている。
【0059】
台座230の長手方向の寸法をλ/4未満としたことから、給電エレメント210の必要なエレメント長を台座230上に配置するために、先端部214を第1アンテナ部201と反対側に180度折り返し、台座230の側面232上に配置している。これにより、第1アンテナ部201との干渉をできるだけ低減するとともに、第1アンテナ部201と第2アンテナ部202との間にGPSアンテナを搭載して複合アンテナを構成したとき、GPSアンテナとの干渉も低減することができる。その結果、第1アンテナ部201とのダイバーシティな受信特性により良好なアンテナ特性を有する車載用広帯域アンテナ200を提供することができる。
【0060】
また、給電エレメント210の放射部211の主要部分を高さλ/10程度の台座230上に配置することで、地板との距離を大きくして鏡像電流の影響を低減するとともに、GPSアンテナより垂直方向に高くすることでGPSアンテナからの影響も低減できるようにしている。
【0061】
さらに、第2アンテナ部202でも、給電素子部212が配置される台座230の側面234上に凹部234aを形成しており、給電素子部212を基板240に接続するための接続パッド部を凹部234a内に設けている。これにより、接続パッド部が側面234より第1アンテナ部201側に突出するのを防止又は低減することができ、基板240、特に配線部142の必要スペースを低減させることが可能となって車載用広帯域アンテナ200を小型化することができる。
【0062】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る車載用広帯域アンテナの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における車載用広帯域アンテナの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
100、200 車載用広帯域アンテナ
110、210 給電エレメント
110a インピーダンス調整部
111 放射部
112 給電素子部
113 接地素子部
114、214 先端部
115 接続線路
120 無給電エレメント
121 動作部
122 無給電側接地素子部
123 折り返し部
124 先端部
130、230 台座
131、231 上面
132、133、134、135、232、234 側面
134a、234a 凹部
140、240 基板
141 台座搭載部
142 配線部
142a、242a 配線パターン
150 配置領域
160、260 給電線路
201 第1アンテナ部
202 第2アンテナ部
243 別の台座搭載部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射部と、該放射部に接続されて略垂直方向に配置された給電素子部及び接地素子部とを有する給電エレメントと、
前記給電エレメントと結合可能に配置された動作部と、該動作部に接続されて前記給電素子部及び接地素子部と略平行になるように配置された無給電側接地素子部とを有する無給電エレメントと、
前記給電エレメント及び前記無給電エレメントが配置される所定高さの台座と、
少なくとも前記給電素子部に接続される配線パターンが配置される配線部と、前記台座が搭載される台座搭載部とを有する基板と、を備え、
前記給電エレメントは、少なくとも前記放射部の主要部分が前記台座の上面長手方向に配置されて先端が前記無給電エレメントと反対側に180度折り返され、
前記無給電エレメントは、前記動作部の少なくとも一部が前記台座の上面で前記放射部と略平行に配置されて先端が前記給電エレメントと反対側に180度折り返されている
ことを特徴とする車載用広帯域アンテナ。
【請求項2】
パッチアンテナで形成されたGPSアンテナと組み合わせて車載用複合アンテナを構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項3】
前記無給電エレメントが、前記台座の前記GPSアンテナの配置領域側に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項4】
前記台座の前記配線パターン側の側面に、一端から順に前記接地素子部、前記給電素子部、及び前記無給電側接地素子部が配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項5】
前記台座の前記配線パターン側の側面に凹部が垂直方向に形成され、少なくとも前記接地素子部と前記給電素子部が前記凹部に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項6】
前記給電エレメントのインピーダンス調整部が前記凹部に形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項7】
前記無給電エレメントは、前記給電エレメントとの結合の大きさを調整可能なスタブを備えている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項8】
前記台座が4つの側面を有する略直方体形状に形成されており、前記給電エレメント及び前記無給電エレメントの一部が1以上の前記側面に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車載用広帯域アンテナ。
【請求項9】
前記基板は、前記配線部を挟んで前記台座搭載部と反対側に別の台座搭載部を備えた略コの字形状に形成されており、
別の台座と該別の台座に配置された別の給電エレメントとを備える受信アンテナを前記別の台座搭載部に搭載してダイバーシティな構成を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用広帯域アンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90011(P2012−90011A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233945(P2010−233945)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】