説明

車載用操作装置

【課題】 車両に乗車しているユーザに良好な操作感を与えることが可能な車載用操作装置を提供する。
【解決手段】 車載用操作装置1は、車両に搭載された表示装置6の画面に対応した位置を指定するポインティングデバイスとして構成されており、車両のインストルメントパネル等に取り付けられたハプティックデバイス(触覚装置)2と、これを制御するコントローラ10と、を備える。ハプティックデバイス2は、ユーザにより操作されるトラックボール部21を有しており、コントローラ10は、操作されている方向に抗する操作反力をトラックボール部21に付加するようモータ31,32を制御するとともに、加速度センサ51により検知される加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を操作反力に合成してトラックボール部21に付加するようモータ31,32を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には様々な車載機器が搭載されており、これらの車載機器を統括して操作するための車載用操作装置が、車両のインストルメントパネル等に設けられることがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−335192号公報
【特許文献2】特開2000−66753号公報
【特許文献3】特開2004−189141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加速時やカーブ走行時など車両に加速度が作用する状況下では、車両に乗車しているユーザに対して加速度の方向とは反対方向に慣性力が働くことから、車載用操作装置を操作するユーザは、その影響によって操作性に違和感を感じてしまう場合がある。
【0005】
特許文献1には、車両に加わる加速度に応じて、スティック型入力部の操作方向ごとに操作量に対する操作反力量を大きくするように構成した車両用ジョイスティック型入力装置が開示されている。しかしながら、これによると、段落0065,66および図15,16にあるように、ユーザに働く慣性力のベクトルをスティック型入力部の可動方向ごとに分解し、その大きさに応じて該可動方向における操作反力を補正することから、例えば、スティック型入力部を慣性力のベクトルに沿った方向(番号5の方向)に向かって操作する場合と、それとは反対の方向(番号1の方向)に向かって操作する場合とで、操作反力特性が同じとなっており(図16の“加速度影響:大”)、慣性力を受けているユーザにとっては操作性の違和感を拭うことができない。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みて為されたものであり、車両に乗車しているユーザに良好な操作感を与えることが可能な車載用操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車載用操作装置では、
車両に乗車しているユーザにより操作される被操作体と、
被操作体に対し、操作が許容される方向に力を付加することが可能なアクチュエータと、
車両に作用する加速度の方向を検出する加速度検出手段と、
車両に作用している加速度と同方向の力を被操作体に付加するようアクチュエータを制御する作動制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明によると、被操作体の操作が許容される方向に力を付加することが可能なアクチュエータを用いて、車両に作用している加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を被操作体に付加することで、被操作体を操作する際に、慣性力と同方向に係る操作には通常よりも強い力を要し、慣性力と反対方向に係る操作には通常よりも弱い力で済むことから、ユーザは、慣性力を受けている状態であっても良好な操作感を得ることができる。
【0009】
次に、本発明の車載用操作装置では、
被操作体が操作されている方向を検出する操作方向検出手段を備え、
作動制御手段は、
被操作体が操作されている方向に抗する操作反力を被操作体に付加するようアクチュエータを制御するとともに、
車両に加速度が作用している場合に、加速度と同方向の力を当該操作反力に合成して被操作体に付加するようアクチュエータを制御するように構成することができる。
【0010】
上記本発明によると、被操作体が操作されている方向に抗する操作反力を被操作体に付加することで、ユーザは被操作体の操作感を得ることができるとともに、車両に加速度が作用している場合に、車両に作用している加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を当該操作反力に合成して被操作体に付加することで、操作している被操作体に対して慣性力の影響が的確に反映されることになるため、ユーザは、慣性力を受けている状態であっても違和感を感じることなく被操作体を操作することができる。
【0011】
次に、本発明の車載用操作装置では、
加速度検出手段は、車両に作用する加速度の大きさを検出し、
作動制御手段は、加速度と同方向の力を、車両に作用している加速度の大きさに応じた大きさで被操作体に付加するようアクチュエータを制御するように構成することができる。
【0012】
上記本発明によると、加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を、車両に作用している加速度の大きさに応じた大きさで被操作体に付加することで、被操作体に対して慣性力の影響が的確に反映されることになるため、ユーザは、慣性力を受けている状態であっても違和感を感じることなく被操作体を操作することができる。
【0013】
次に、本発明の車載用操作装置では、
被操作体は、ユーザが接触する接触面に沿った方向に可動なように構成することができる。
【0014】
上記本発明によると、被操作体が接触面に沿った方向に可動なように構成されている場合には、ユーザは被操作体との摩擦力を利用して操作を行うことから、操作時においてユーザの手は被操作体に接触しているだけであり(すなわち、例えばスティック形状などの把持した状態で操作を行うものとは異なる)、慣性力の影響を特に受けやすい。従って、被操作体がこのように構成されている場合には、上述の如く、加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を被操作体に付加するようにアクチュエータを制御する意義が特に大きい。
【0015】
次に、本発明の車載用操作装置では、
被操作体は、可動域のうち端部を除いた箇所において、ユーザが接触する接触面の面内方向のいずれにも可動なように構成することができる。
【0016】
上記本発明によると、被操作体が、可動域のうち端部を除いた箇所において、接触面の面内方向のいずれにも可動なように構成されていることによって、アクチュエータが被操作体に対して車両に作用している加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を的確に付加することができるので、ユーザは、慣性力を受けている状態であってもより良好な操作感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る車載用操作装置1の電気的ブロック図の概略を示す図である。車載用操作装置1は、車両に搭載された表示装置6の画面に対応した位置を指定するポインティングデバイスとして構成されており、車両のインストルメントパネル等に取り付けられたハプティックデバイス(触覚装置)2と、これを制御するコントローラ(作動制御手段)10と、を備える。ハプティックデバイス2は、ユーザにより操作されるトラックボール部(被操作体)21を有しており、コントローラ10は、操作されている方向に抗する操作反力をトラックボール部21に付加するようモータ31,32を制御するとともに、加速度センサ51により検知される加速度と同方向の力(すなわち、ユーザに働く慣性力とは反対方向の力)を操作反力に合成してトラックボール部21に付加するようモータ31,32を制御する。以下、各々の詳細について説明する。
【0018】
(1)車載用操作装置の構成
(1−1)ハプティックデバイス
ハプティックデバイス2では、筐体28がトラックボール部21の操作面21aを露出させた状態でこれを保持している。図2は、ハプティックデバイス2の外観の概略を示す図である。ハプティックデバイス2は、表示装置6の画面に対応した位置を指定するためのトラックボール部21の他に、その位置に対応付けられた操作を選択するための決定スイッチ201と、元の画面に戻すための戻りスイッチ202とを外面に有している。
【0019】
トラックボール部21aは、球面状の操作面21aを有しており、その裏側からは支柱24が延出し、収納部27に差し込まれている。支柱24の途中には球状部22が形成され、収納部27に設けられている軸受23でこれを支持することにより、支柱24は収納部27に対して揺動自在に支承されている。
【0020】
このように構成されることで、トラックボール部21は、ユーザが接触する接触面である操作面21aに沿った方向に可動とされており、ユーザが自身の手(指先)とトラックボール部21との摩擦力を利用して操作を行うタッチ操作式とされている。
【0021】
また、トラックボール部21は、操作面21aに沿った半球状の可動域とされ、その範囲内で自在に動かすことができる。すなわち、ユーザは、自身の手(指先)が操作面21aに接触した箇所から、その接触面の面内方向のいずれの方向(360度)にも動かすことができる(可動域の端部を除く)。
【0022】
トラックボール部21の操作面21aは、軸受23に指示されている球状部22を中心とする球面とされている。また、操作面21aの中央部には、ユーザに中心位置を知らせるための突起部29が設けられている。
【0023】
収納部27には、トラックボール部21が操作されている方向(操作方向)を検出するオプティカルイメージセンサ(操作方向検出手段)41が設置されている。オプティカルイメージセンサ41は、図示しない光源とともに収納部27内の底面に実装されている。他方、トラックボール部21から延出する支柱24の下端には、軸受23に支持されている球状部22を中心とする球面状の端面25aを有する下端部25が設けられており、この端面25aには、所定の検出パターンが形成されている。
【0024】
操作方向の検出には、光源から光を照射し、下端部25の端面25aに形成された検出パターンの像を導光管26を介してオプティカルイメージセンサ41に導くことにより、支柱24の揺動方向と揺動量(揺動角度)、すなわちX−Y直交座標におけるトラックボール部21の操作量を検出することができるようになっている。オプティカルイメージセンサ41により検出された位置検出信号は、コントローラ10に対してフィードバックされる。なお、操作方向検出手段としては、直交するX軸,Y軸にそれぞれ設けられたフォトエンコーダ等を適用することもできる。
【0025】
収納部27には、トラックボール部21に対して操作が許容される方向に沿って力を付加することが可能なアクチュエータとしてのモータ31,32も設置されている。モータ31,32は、直交するX軸,Y軸に対してそれぞれ設けられており、支柱24と図示しないシャフトを介して接続され、その回転運動を軸線方向に沿った直線運動に変換して支柱24に伝えることで、トラックボール部21に対して力を与える。このモータ31,32は、コントローラ10からの駆動信号に基づき、トラックボール部21に対して操作方向に抗する操作反力を付加するように動作する。
【0026】
トラックボール部21に対して力を付加するアクチュエータとしては、モータ等の回転式のものに限らず、例えば流体圧シリンダ等の往復動式のものを適用可能であるし、他にも、支柱24や下端部25の動作を制動する電磁ブレーキ等の制動手段であってもよい。なお、支柱24や下端部25の動作を制動する手段であっても、トラックボール部21の操作方向に対してブレーキをかける(操作方向とは反対方向へ力を付加する)ことから、操作が許容される方向に沿って力を付加することが可能なものと言える。
【0027】
以上のように構成されるハプティックデバイス2は、トラックボール部21のユーザの手(指先)が触れる頂部付近において操作方向が車両の水平方向となるように、インストルメントパネル等に設置されている。このように設置することで、後述するように車両に水平方向の加速度が作用した場合でも、その影響を軽減してユーザに良好な操作感を与えることができる。
【0028】
(1−2)コントローラ
コントローラ10は、ハプティックデバイス2の制御を司るコントローラECU(Electronic Control Unit)100を備える。コントローラECU100は、CPU101,ROM102,RAM103,入力ポート109,出力ポート108がバス105を介して接続されたマイクロプロセッサからなる。また、車内ネットワークを構築するシリアル通信バス9とコントローラECU100内部のバス105とは、シリアル通信インターフェース(I/F)106を介して接続されている。ROM102は、CPU101が実行するプログラム及びそれに必要なデータを記憶している。RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際に作業領域として利用される。
【0029】
また、コントローラ10は、オプティカルイメージセンサ41からフィードバックされる位置検出信号をディジタル変換して入力ポート109に入力するA/D変換回路45も備える。また、コントローラ10は、オプティカルイメージセンサ41からフィードバックされた位置検出信号を基にコントローラECU100で演算され、出力ポート108から出力された制御信号に基づいてハプティックデバイス2に内蔵されたモータ31,32を駆動するドライバ回路35も備える。
【0030】
コントローラ10は、オプティカルイメージセンサ41からフィードバックされる位置検出信号によってトラックボール部21が操作されている方向を検知すると、その操作方向に抗する操作反力を付加するようにモータ31,32を駆動する。ここで、トラックボール部21の操作位置に応じてどの程度の操作反力を付加するかという操作反力パターンは(具体例は後述)、操作反力パターンデータ102aとしてROM102に記憶されている。
【0031】
シリアル通信バス9には、加速度センサ(加速度検出手段)51を有する制御系ECU55が接続されており、コントローラ10は、通信によって車両に作用する加速度の方向および大きさを取得する。加速度センサ51には、少なくとも水平方向において直交する2軸方向の加速度を検出可能な2軸または3軸の加速度センサを用いることができる。また、車両の進行方向と水平方向において直交する方向(横方向)の加速度を検出する場合は、車両が回転する速度(ヨーレート)を検出するヨーレートセンサを援用することもできる。
【0032】
コントローラ10は、トラックボール部21に上述したような操作反力を付加する制御を行うとともに、加速度センサ51によって検出した加速度の方向および大きさに基づき、該加速度と同方向で、該加速度の大きさに応じた大きさの力を操作反力に合成してトラックボール部21に付加するようモータ31,32を駆動する。
【0033】
シリアル通信バス9には、車両のインストルメントパネルに配された表示装置6が接続されており、コントローラ10は、オプティカルイメージセンサ41からフィードバックされる位置検出信号や決定スイッチ201の押下検出信号を表示装置6へ送信する。表示装置6は、位置検出信号や押下検出信号を受信すると、トラックボール部21の操作方向に対応付けて画面に表示されている各種操作を実行するための処理を行う。このように、車載用操作装置1は、表示装置6の画面に対応した位置を指定するポインティングデバイスとして機能する。
【0034】
(2)車載用操作装置の作動
車載用操作装置1のコントローラ10は、オプティカルイメージセンサ41からフィードバックされる位置検出信号によってトラックボール部21が操作されている方向を検知すると、その操作方向に抗する操作反力を付加するようにモータ31,32を駆動するとともに、車両に作用する加速度に応じて当該操作反力を補正することでユーザに良好な操作感を与えるべく、図6および図7のフローチャートに示す処理を平行して行う。
【0035】
図6は、反力補正値を算出する処理のフローチャートを示す図である。まず、コントローラ10は、加速度センサ51により検出される加速度に基づき、車両に作用する加速度の大きさの所定時間における平均値を算出する(S1)。ここで、平均値を算出するのは、車両の振動や不用意なハンドル操作などによって車両に突発的な加速度が働いた場合に、それがトラックボール部21の操作反力に影響してしまうことを防ぐためである。次に、コントローラ10は、算出した平均値に基づき車両に加速度が発生しているか否かを判断する(S2)。車両に加速度が発生しているか否かは、算出した平均値の絶対値が0であるか否かによって判断する。加速度が発生している場合には(S2:YES)、加速度の大きさに対応する反力補正値を算出する(S3)。具体的には、算出した平均値に所定の係数を掛け合わせることにより反力補正値を算出する。または、算出した平均値に対応する反力補正値を照合するためのテーブルをROM102に記憶させるようにしても良い。なお、微小な加速度に対しては操作反力を補正しないようにするために、算出した平均値が所定以上の場合にのみ、反力補正値を算出するようにしても良い。
【0036】
図7は、算出した反力補正値に基づいて操作反力を補正する処理のフローチャートを示す図である。まず、コントローラ10は、操作方向検出用の操作反力ギャップをトラックボール部21に付与する(T1)。これは、図3(b),図4(b),図5(b)に示す操作反力パターン8のように、トラックボール部21の中心位置(基本位置)の近傍で操作反力をその周囲よりも弱くして(弱部分82)、この範囲でトラックボール部21の動き出しを検出するためである。なお、トラックボール部21の中心位置(基本位置)の近傍で操作反力をその周囲よりも強くしても良い。
【0037】
次に、コントローラ10は、ユーザによるハプティックデバイス2の操作が開始されると、すなわちトラックボール部21の動き出しを検出すると(T2:YES)、その操作方向を検出して、操作方向をX成分とY成分とに分解する(T3)。ここで、Y方向とは車両の進行方向(前後方向)、X方向とは車両の進行方向と水平方向において直交する方向(横方向)である。
【0038】
そして、コントローラ10は、分解した操作方向のX成分と加速度のX成分、分解した操作方向のY成分と加速度のY成分を比較して、互いに同方向であるか逆方向であるかを判断する(T4,T5)。
【0039】
操作方向のX成分と加速度のX成分が逆方向の場合には(T4:逆方向)、操作方向のX成分とユーザに働く慣性力のX成分とが同方向となり、ユーザにとって操作が通常よりも軽くなり違和感を感じることから、操作反力(操作方向とは逆方向)のX成分に対して上述の反力補正値を加えて強補正することで、ユーザが感じる違和感を軽減する(T6)。換言すると、操作反力は操作方向と逆方向に印加されることから、強補正は操作反力に対して同方向の力を加えることになる。
【0040】
他方、操作方向のX成分と加速度のX成分が同方向の場合には(T4:同方向)、操作方向のX成分とユーザに働く慣性力のX成分とが逆方向となり、ユーザにとって操作が通常よりも重くなり違和感を感じることから、操作反力(操作方向とは逆方向)のX成分に対して上述の反力補正値を引いて弱補正することで、ユーザが感じる違和感を軽減する(T7)。なお、これらの関係は、Y方向についても同様である(T5:逆方向→T8/同方向→T9)。
【0041】
そして、コントローラ10は、上記のような強補正(操作反力に対して同方向の力)または弱補正(操作反力に対して逆方向の力)を操作反力に合成するようにモータ31,32を駆動することで、補正された操作反力をトラックボール部21に対して付加する(T10)。以上の処理は、コントローラ10が、ユーザによるハプティックデバイス2の操作が停止されるまで、すなわちトラックボール部21の動作が停止するまで続けられる(T11)。
【0042】
なお、このような処理に限らず、例えば、ハプティックデバイス2のトラックボール部21にタッチセンサを設け、タッチセンサがユーザの接触を感知している間のみ、操作方向を検出して補正した操作反力をトラックボール部21に付加する処理(T3ないしT10の処理)を行うようにすることもできる。
【0043】
以下、操作反力パターンの具体例について、図3ないし図5を用いて説明する。通常時(加速度が作用していない時)、ハプティックデバイス2のトラックボール部21には、図3(b),図4(b),図5(b)に示す操作反力パターン8に従った操作反力が付加されている。具体的には、トラックボール部21の可動域の端部に沿っては、端部が近づいたことをユーザに知らせるために、操作反力の強部分83が設けられている。強部分83の内側には、実行する操作に対応する領域に入ったことをユーザに知らせるために、操作反力の弱部分82が設けられている。その内側は、通常部分81となっている。なお、上述したように、中心位置(基本位置)の近傍にも、トラックボール部21の動き出しを検出するために、操作反力の弱部分82が設けられている。
【0044】
また、図3(c),図4(c),図5(c)に示すように、表示装置6の画面61には、トラックボール部21の操作方向に対応付けて各種操作を表す表示62〜65が表示されている。この表示例はオーディオ操作の場合であり、Y+方向の操作は停止(表示62),Y−方向の操作は再生(表示65),X+方向の操作は早送り(表示63),X−方向の操作は巻戻し(表示64)に対応する。そして、トラックボール部21を各方向に操作した場合に操作反力が弱部分82となる位置が実行するオーディオ操作に対応する領域とされ、この領域で決定スイッチ201が押下げされることでオーディオ操作が選択される。
【0045】
そして、車両に加速度が作用した場合には、以上のような操作反力に対して強補正または弱補正が施されてトラックボール部21に付加される。図3は直進加速の場合、図4はカーブ走行の場合、図5は加速+カーブ走行の場合に関する説明図である。
【0046】
直進加速の場合、図3(a)に示すように、車両71には加速方向(図では車両71の前方向)に加速度が発生するので、車両71に乗車しているユーザ72にはそれとは反対方向(図では車両71の後方向(Y−方向))に慣性力が働く。そのため、このままであると、ユーザ72は、トラックボール部21を慣性力と同方向(Y−方向)へ操作する場合には操作感を通常よりも軽く感じ、他方、慣性力と反対方向(Y+方向)へ操作する場合には操作感を通常よりも重く感じる。
【0047】
そこで、慣性力と同方向(Y−方向)への操作の場合には、トラックボール部21に付加する操作反力に上述の反力補正値を加えて強補正することでユーザが感じる違和感を軽減する。すなわち、図3(b),(c)に示すように、慣性力と同方向(Y−方向)への操作に対しては、通常パターン88から反力補正値を加えた強補正パターン89をトラックボール部21に付与する。
【0048】
他方、慣性力と反対方向(Y+方向)への操作の場合には、トラックボール部21に付加する操作反力に上述の反力補正値を引いて弱補正することでユーザが感じる違和感を軽減する。すなわち、図3(b),(c)に示すように、慣性力と反対方向(Y+方向)への操作に対しては、通常パターン88から反力補正値を引いた弱補正パターン87をトラックボール部21に付与する。
【0049】
カーブ走行の場合、図4(a)に示すように、車両71にはカーブ軌道の中心方向(図では車両71の右方向)に加速度が発生するので、車両71に乗車しているユーザ72にはそれとは反対方向(図では車両71の左方向(X−方向))に慣性力が働く。そのため、このままであると、ユーザ72は、トラックボール部21を慣性力と同方向(X−方向)へ操作する場合には操作感を通常よりも軽く感じ、他方、慣性力と反対方向(X+方向)へ操作する場合には操作感を通常よりも重く感じる。
【0050】
そこで、慣性力と同方向(X−方向)への操作の場合には、トラックボール部21に付加する操作反力に上述の反力補正値を加えて強補正することでユーザが感じる違和感を軽減する。すなわち、図4(b),(c)に示すように、慣性力と同方向(X−方向)への操作に対しては、通常パターン85から反力補正値を加えた強補正パターン86をトラックボール部21に付与する。
【0051】
他方、慣性力と反対方向(X+方向)への操作の場合には、トラックボール部21に付加する操作反力に上述の反力補正値を引いて弱補正することでユーザが感じる違和感を軽減する。すなわち、図4(b),(c)に示すように、慣性力と反対方向(X+方向)への操作に対しては、通常パターン85から反力補正値を引いた弱補正パターン84をトラックボール部21に付与する。
【0052】
加速+カーブ走行の場合、図5(a)に示すように、車両71には加速方向(図では車両71の前方向)とカーブ軌道の中心方向(図では車両71の右方向)とに加速度が発生するので、車両71に乗車しているユーザ72にはそれらとは反対方向(図では車両71の後方向(Y−方向)と左方向(X−方向))に慣性力が働く。そこで、トラックボール部21に付加する操作反力に上述の2つの場合と同様の補正を施す。
【0053】
なお、操作反力パターンは上述した形態に限らず、様々なパターンとすることができる。図8に、操作反力パターンと画面表示の変形例を示す。図は直進加速の場合である。図8(c)に示すように、画面には、ナビゲーション装置やオーディオ装置など種々の車載装置の操作を一括して行うための選択ボタン601〜606が表示されている。この場合、図8(b)に示すように、操作反力パターン8は、トラックボール部21の可動域において、選択ボタン601〜606の表示位置に対応させた位置に、実行する操作に対応する領域に入ったことをユーザに知らせるための弱部分82が設けられている。この弱部分82の位置で決定ボタン201が押下げされることで、選択ボタン601〜606のそれぞれに対応する操作が実行される。また、当該画面表示は、図3(c)等に示すオーディオ操作画面が表示されている状態から、ハプティックデバイス2の戻りスイッチ202が押下げされることで遷移する。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの形式に限定されるものではなく、これらに具現された発明と同一性の範囲内において適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】車載用操作装置の電気的ブロック図の概略を示す図
【図2】車載用操作装置の一部であるハプティックデバイスの外観の概略を示す図
【図3】車両が直進加速する場合の加速度方向,操作反力パターン,表示装置の表示例を説明する図
【図4】車両がカーブ走行する場合の加速度方向,操作反力パターン,表示装置の表示例を説明する図
【図5】車両が直進加速およびカーブ走行する場合の加速度方向,操作反力パターン,表示装置の表示例を説明する図
【図6】反力補正値を算出する処理を表すフローチャート
【図7】反力パターンの補正処理を表すフローチャート
【図8】図3の変形例を示す図
【符号の説明】
【0056】
1 車載用操作装置
2 ハプティックデバイス(触覚装置)
21 トラックボール部(被操作体)
21a 操作面
10 コントローラ(作動制御手段)
31,32 モータ(アクチュエータ)
41 オプティカルイメージセンサ(操作方向検出手段)
51 加速度センサ(加速度検出手段)
6 表示装置
8 操作反力パターン
81 操作反力の通常部分
82 操作反力の弱部分
83 操作反力の強部分
87 操作反力(X方向)の弱補正パターン
88 操作反力(X方向)の通常パターン
89 操作反力(X方向)の強補正パターン
84 操作反力(Y方向)の弱補正パターン
85 操作反力(Y方向)の通常パターン
86 操作反力(Y方向)の強補正パターン
100 コントローラECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車しているユーザにより操作される被操作体と、
前記被操作体に対し、操作が許容される方向に力を付加することが可能なアクチュエータと、
車両に作用する加速度の方向を検出する加速度検出手段と、
車両に作用している加速度と同方向の力を前記被操作体に付加するよう前記アクチュエータを制御する作動制御手段と、
を備えることを特徴とする車載用操作装置。
【請求項2】
前記被操作体が操作されている方向を検出する操作方向検出手段を備え、
前記作動制御手段は、
前記被操作体が操作されている方向に抗する操作反力を前記被操作体に付加するよう前記アクチュエータを制御するとともに、
車両に加速度が作用している場合に、前記加速度と同方向の力を当該操作反力に合成して前記被操作体に付加するよう前記アクチュエータを制御する請求項1に記載の車載用操作装置。
【請求項3】
前記加速度検出手段は、車両に作用する加速度の大きさを検出し、
前記作動制御手段は、前記加速度と同方向の力を、車両に作用している加速度の大きさに応じた大きさで前記被操作体に付加するよう前記アクチュエータを制御する請求項1または2に記載の車載用操作装置。
【請求項4】
前記被操作体は、ユーザが接触する接触面に沿った方向に可動とされてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車載用操作装置。
【請求項5】
前記被操作体は、可動域のうち端部を除いた箇所において、ユーザが接触する接触面の面内方向のいずれにも可動とされてなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車載用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−168639(P2007−168639A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370004(P2005−370004)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】