説明

車載用電気機器群

【課題】筐体の内部に異物が侵入するのを防ぎつつ、筐体の内部に収容された電気基板の種類を、簡単かつ確実に筐体の外部から識別する。
【解決手段】本発明の車載用電気機器群は、電子部品が実装される電気基板3と、該電気基板3を収容する筐体とを備える。筐体は、電気基板3を収容する第1部材21および第2部材を有し、第1部材21及び第2部材はそれぞれ複数の挟持部を有し、第1部材21の挟持部に、電気基板3の特定部位を外部に露出させるための貫通孔が形成され、電気基板3の周縁には、その電気基板3の種類を判別するための印が貫通孔のうちの特定の貫通孔から露出する位置に設けられている。そして、各車載用電気機器内に収容されている電気基板3の種類は、各車載用電気機器の第1部材21の貫通孔から露出した電気基板3の色または電気基板3の表面に表示された印と、孔の位置とを組み合わせた情報によって識別可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電気機器群に関する。さらに詳しくは、筐体の外部から電気基板の種類を簡単かつ確実に識別することができる車載用電気機器群に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には多数のグレードが設定されている。車両の装備は、それらグレードに応じて決定されている。これに加えて、多数のオプション装置がラインナップされており、車両の装備は、ユーザの意思により自由に選択できるようになっている。とくに、車載用のコントロール装置においては、このような車両装備の多様化に伴い、コントロール装置内部に収容される電気基板の種類が多様化されている。
【0003】
一方、コントロール装置の形状は、車両搭載上の制限により、車両の装備に因らず同じ形状となるのが常であり、電気基板の種類が異なっても、一種類の筐体に収容されるように構成されている。
【0004】
ところが、一般的に筐体は、その内部を確認する構造を有しておらず、一旦コントロール装置を組み立ててしまうと、後になって、筐体内部に収容されている電気基板の種類を確認することが難しい。たとえば、コントロール装置を被制御部に接続し、動作の確認を行ったうえで、電気基板の種類を特定している。これは、非常に手間のかかる作業であり、また、動作確認のための設備も必要となる。また、コントロール装置の筐体表面に、内部に収容されている電気基板の種類に応じて、異なったシールを貼り付ける、あるいは、識別マークを書き込むまたは刻印することで、電気基板の種類を識別することも行われている。しかしながら、識別シールを筐体の表面に貼り付けるまたは識別マークを筐体の表面に書き込む方法では、貼り付けるまたは書き込むための作業コストが増加するだけでなく、人為的ミス(貼り付け間違い、忘れ)を完全に防止することができない。また、識別マークの刻印では、部品点数の増加、金型の増加を招くという問題がある。
【0005】
特許文献1には、筐体の内部に収容されている複数の電気基板の種類を特定するために、筐体の内部を確認するための小窓が筐体に形成されている医用電気機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−78667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、筐体の内部を確認するための小窓からその筐体内部に異物(水、埃など)が侵入し、機能不具合が発生してしまう恐れがある。この問題に対応するために、確認用窓にたとえば透明なパネルを取り付けると、部品点数の増加による部品コストアップ、および、取り付け作業の増加によるコストアップにつながってしまう。さらに、小窓から筐体の内部を覗くことができたとしても、筐体の内部は暗いため、外部から確認する作業は容易でない。その確認のため仮に、光源を追加すると、さらなる部品点数の増加、および、取り付け作業の増加によるコストアップにつながってしまう。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、筐体の内部に異物が侵入するのを防ぎつつ、筐体の内部に収容された電気基板の種類を、簡単かつ確実に筐体の外部から識別できる車載用電気機器群を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車載用電気機器群によれば、電子部品が実装される電気基板と、該電気基板を収容する筐体とを備え、前記筐体は、前記電気基板をその厚み方向に挟み込むようにして収容する第1部材および第2部材を有し、前記第1部材および前記第2部材は、それぞれ、前記電気基板の周縁に局所的に密着しながら当該電気基板を挟持するための複数の挟持部を有し、前記第1部材の挟持部に、前記電気基板の特定部位を外部に露出させるための貫通孔が形成され、前記電気基板の周縁には、その電気基板の種類を判別するための印が前記貫通孔のうちの特定の貫通孔から露出する位置に設けられている車載用電気機器からなる車載用電気機器群であって、各車載用電気機器内に収容されている前記電気基板の種類が、各車載用電気機器の前記第1部材の挟持部に形成されているそれぞれの貫通孔から露出した前記電気基板の色または前記電気基板の表面に表示された印と、前記孔の位置とを組み合わせた情報によって識別可能であることにより、上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の車載用電気機器群によれば、各車載用電気機器内に収容されている前記電気基板の種類が、各車載用電気機器の前記第1部材の挟持部に形成されているそれぞれの貫通孔から露出した前記電気基板の色または前記電気基板の表面に表示された印と、孔の位置とを組み合わせた情報によって識別可能であることにより、多数の種類の電気基板を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の車載用電気機器を説明するための分解斜視図である。
【図2】電気基板と、印が表示される領域を説明するための平面図であり、(a)は、オート仕様およびマニュアル仕様のうちいずれか一方の場合の切り欠きの位置と識別マークが表示される領域を示し、(b)は、他方の場合の切り欠きの位置と識別マークが表示される領域を示している。
【図3】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1、A2、A3およびA4のいずれにも印を表示しないものである。
【図4】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A2と領域A3に印を表示したものである。
【図5】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1と領域A4に印を表示したものである。
【図6】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1、A2、A3およびA4すべてに印を表示したものである。
【図7】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1と領域A2に印を表示したものである。
【図8】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A3と領域A4に印を表示したものである。
【図9】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1と領域A3に印を表示したものである。
【図10】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A2と領域A4に印を表示したものである。
【図11】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A1のみに印を表示したものである。
【図12】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A2のみに印を表示したものである。
【図13】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A4のみに印を表示したものである。
【図14】電気基板の種類の表示例を説明するための、電気基板の平面図であり、図2における、領域A3のみに印を表示したものである。
【図15】筐体の蓋の平面図である。
【図16】実施の形態1の車載用電気機器のX−X断面(図17参照)を説明するための図である。
【図17】実施の形態1の車載用電気機器の内部に収容された電気基板の種類を判別するための方法を説明するための平面図であり、(a)は、図4の電気基板を筐体の内部に収容した場合、(b)は、図7の電気基板を筐体の内部に収容した場合、(c)は、図9の電気基板を筐体の内部に収容した場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の車載用電気機器は、車両に搭載される車載用電気機器であって、電子部品が実装される電気基板と、その電気基板を収容する筐体とを備えている。そして、筐体は、電気基板をその厚み方向に挟み込むようにして収容する第1部材および第2部材を有する。第1部材および前記第2部材は、それぞれ、電気基板の周縁に局所的に密着しながら電気基板を挟持するための複数の挟持部を有し、第1部材の挟持部に、電気基板の特定部位を外部に露出させるための貫通孔が形成されている。また、電気基板の周縁には、その電気基板の種類を判別するための印が前記貫通孔のうちの特定の貫通孔から露出する位置に設けられている。本発明は、電気基板を筐体内で位置決めおよび固定するために設けられた部分を活用して、筐体内部に収容されている電気基板の種類を識別するものである。
【0013】
以下で、図面を参照して本発明の車載用電気機器を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の車載用電気機器(以下、コントロール装置という)100を説明するための分解斜視図である。本発明のコントロール装置100は、とくに限定されるものではないが、たとえば、車のエアコンやオーディオなどを制御する。実施の形態1のコントロール装置100は、図1に示されるように、電子部品が実装される電気基板3と、電気基板3を内部に収容する筐体2と、電気基板3に接続され、電気基板3と筐体2の外部の被制御機器を連絡するコネクタ5と、ねじ4とから構成されている。
【0015】
図2(a)および(b)は、電気基板3と、印(以下、識別マークという)が表示される領域A1〜A4を説明するための平面図である。電気基板3は、図2(a)および(b)に示されるように、基材に対してみどり色の絶縁性樹脂を含浸した板状のプリント配線板32と、プリント配線板32上に実装された、たとえば、集積回路、抵抗器、コンデンサなどの電子部品31とから構成されている。プリント配線板32の表面には、銅箔などの導電性材料の配線がパターニングされている(図示せず)。
【0016】
プリント配線板32には、各ねじ4を通過させるための複数の空間が形成され、その空間のうちの特定の空間に隣接する位置に識別マークが設けられる。具体的には、プリント配線板32の四隅に切り欠き3eが形成されている。また、プリント配線板32の対向する一組の側縁には、略U字状に切り込まれた切り欠き3a、切り欠き3b、切り欠き3c、切り欠き3dが形成されている。切り欠き3a、3b、3c、3dおよび3eは、後述のねじ4の軸部分を通過させるための部分である。また、プリント配線板32に形成される切り欠き3a、3b、3cおよび3dの位置は、電気基板3の仕様、具体的には、エアコンのスイッチパネルであれば、オート仕様かマニュアル仕様かに応じて異なる。図2(a)は、オート仕様およびマニュアル仕様のうちいずれか一方の場合の切り欠きの位置と識別マークが表示される領域を示し、(b)は、他方の場合の切り欠きの位置と識別マークが表示される領域を示している。同図(a)と(b)では、切り欠きの位置と、それに隣り合って設けられた識別マークが表示される領域が逆転している。以下では、図2(a)の電気基板3を用いた場合を例として説明する。
【0017】
本実施の形態に用いられるプリント配線板32には、識別マークが電気基板3の種類に応じて所定の位置に、プリント配線板32の周縁に沿って印刷される。一般的に、プリント配線板32には、その製造段階で、プリント配線板32上の電子部品31が実装される予定の位置に、電子部品31の実装忘れを防止するための印がシルク印刷される。とくに、本実施の形態に用いられるプリント配線板32には、上述のシルク印刷を施す工程において、電子部品31の実装箇所の印刷と同時に、識別マークが印刷される。識別マークは、プリント配線板32の周縁に印刷されるので、電気基板3上の電子部品31を実装する面積が狭まるなどの影響を与えない。また、電気基板製造時に施される印刷工程を利用するので、電気基板の種類を判別する識別マークを印刷するために新たな工程を増やす必要がない。
【0018】
識別マークは、図3に示されるように、プリント配線板32の切り欠き3a、3b、3c、3dが形成された側縁に沿って印刷される。たとえば、識別マークは、切り欠き3aに隣り合う領域A1、切り欠き3bに隣り合う領域A2、切り欠き3cに隣り合う領域A3、切り欠き3dに隣り合う領域A4の少なくともいずれか一箇所に印刷される。なお、識別マークが、領域A1〜A4のうち、いずれの領域にも印刷されない場合を、電気基板3の一種類を判別するために用いることもできる。
【0019】
図3〜図14は、電気基板3の種類の表示例を説明するための、電気基板3の平面図である。図3は、領域A1、A2、A3およびA4のいずれにも識別マークを表示しないものである。図4は、領域A2と領域A3に識別マークを表示したものである。図5は、領域A1と領域A4に識別マークを表示したものである。図6は、領域A1、A2、A3およびA4すべてに識別マークを表示したものである。図7は、領域A1と領域A2に識別マークを表示したものである。図8は、領域A3と領域A4に識別マークを表示したものである。図9は、領域A1と領域A3に識別マークを表示したものである。図10は、領域A2と領域A4に識別マークを表示したものである。図11は、領域A1のみに識別マークを表示したものである。図12は、領域A2のみに識別マークを表示したものである。図13は、領域A4のみに識別マークを表示したものである。図14は、領域A3のみに識別マークを表示したものである。図示しないが、このほかにも、領域A1、領域A2および領域A3に識別マークを表示したもの、領域A1、領域A2および領域A4に識別マークを表示したもの、領域A1、領域A3および領域A4に識別マークを表示したもの、領域A2、領域A3および領域A4に識別マークを表示したものが考えられる。
【0020】
このように、本実施の形態では、識別マークの有無と4つの位置を組み合わせるだけで、24=16種類もの電気基板3を識別することが可能である。なお、図3〜図14では、領域A1に表示された識別マークに対してm1、領域A2に表示された識別マークに対してm2、領域A3に表示された識別マークに対してm3、領域A4に表示された識別マークに対してm4という符号を付している。
【0021】
筐体2は、電気基板3をその厚み方向に挟み込むようにして収容する、第1部材(以下、蓋という)21と第2部材(以下、受け具という)22とから構成されている。蓋21と受け具22は、電気基板3を挟持するための複数の挟持部を有する。挟持部は、それぞれ、電気基板3の周縁に密着する。
【0022】
蓋21は、一面が開口された箱状の部材である。筐体2は、この開口した部分と後述の受け具22の開口した部分とが向かい合うような状態で、一体にされたものである。
【0023】
図15は、蓋21を説明するための平面図である。蓋21には、図1および図15に示されるように、その外側四隅に第5押圧部21eが、また、その一組の対向する辺に沿って第1押圧部21a、第2押圧部21b、第3押圧部21cおよび第4押圧部21dが凹状に形成されている。第1押圧部21a、第2押圧部21b、第3押圧部21c、第4押圧部21dおよび第5押圧部21eは、蓋21の開口の側に、電気基板3の表面に当接する面を有している。
【0024】
また、第1押圧部21a、第2押圧部21b、第3押圧部21cおよび第4押圧部21dには、それぞれ2つずつ貫通孔(以下、孔という)が形成されており、第5押圧部21eには、それぞれ1つずつ孔21e1が形成されている。具体的には、第1押圧部21aには、図15に示されるように、孔21a1、孔21a2が隣り合って形成され、第2押圧部21bには、孔21b1、孔21b2が隣り合って形成され、第3押圧部21cには、孔21c1、孔21c2が隣り合って形成され、第4押圧部21dには、孔21d1、孔21d2が隣り合って形成されている。これらの孔21a1、21a2、21b1、21b2、21c1、21c2、21d1、21d2は、コントロール装置100を一体にするねじ4を挿入するための孔であると同時に、電気基板3に表示された識別マークまたは電気基板3の表面そのものを筐体2の外部から確認できるようにするための孔でもある。すなわち、蓋21の第1〜第4押圧部に、電気基板3の特定部位を外部に露出させるための孔が形成されているのである。
【0025】
第1〜第4押圧部に形成された孔についてさらに詳しく説明すると、一般的に、筐体2は、オート用とマニュアル用を兼用しているが、ねじ孔の位置については、オート用とマニュアル用とで筐体2の異なる箇所に形成されている。したがって、コントロール装置100がオート仕様の場合には、マニュアル用のねじ孔が未使用になり、コントロール装置100がマニュアル仕様の場合には、オート用のねじ孔が未使用になる。本実施の形態では、複数のねじ孔のうち、未使用のねじ孔を、筐体2の内部を確認するための小窓として利用する。
【0026】
つまり、蓋21の各挟持部には、ねじ4が挿通可能な複数の孔が形成されている。電気基板3の識別マークは、電気基板3が筐体2の内部に収容された状態で、これらの孔のうちねじ4が挿通されない孔から外部に露出可能な位置に設けられている。言い換えれば、複数の孔21a1、21a2、21b1、21b2、21c1、21c2、21d1、21d2は、蓋21と受け具2を一体にするためのねじ4を螺合する孔と、電気基板3の表面または電気基板3の表面に表示された識別マークを露出させるための孔とが兼用可能に形成されているのである。本実施の形態では、このような従来から用いられている筐体2を、そのまま活用することができる。したがって、コストアップにつながることもない。
【0027】
受け具22は、蓋21と同様に、一面が開口された箱状の部材である。受け具22の内側には、電気基板3の周縁を載置し、ねじ4を螺合するために、四隅に第5載置部22eが設けられ、また、受け具22の内壁に沿って、第1載置部22a、第2載置部22b、第3載置部22cおよび第4載置部22dが設けられている。また、第1載置部22a、第2載置部22b、第3載置部22c、第4載置部22dおよび第5載置部22eには、それぞれ、後述のねじ4が螺合しながら挿入されるための螺合穴(ねじ孔)22a2、22b1、22c2、22d1および22e1が形成されている。螺合穴22a2、22b1、22c2、22d1の位置は、電気基板3の仕様に応じて異なる。図2(a)に示される仕様の電気基板3を筐体2の内部に収容する場合には、図1に示される受け具22を用い、図2(b)に示される仕様の電気基板3を筐体2の内部に収容する場合には、螺合穴の位置が図1に示される位置と異なる受け具22を用いる。
【0028】
筐体2の挟持部は、第1載置部22aと第1押圧部21a、第2載置部22bと第2押圧部21b、第3載置部22cと第3押圧部21cおよび第4載置部22dと第4押圧部21dから構成されている。具体的には、電気基板3が筐体2内に収容されている状態では、蓋21の第1押圧部21aと第1載置部22aとが向かい合って電気基板3を挟持し、蓋21の第2押圧部21bと第2載置部22bとが向かい合って電気基板3を挟持し、蓋21の第3押圧部21cと第3載置部22cとが向かい合って電気基板3を挟持し、蓋21の第4押圧部21dと第4載置部22dとが向かい合って電気基板3を挟持する。この電気基板3の挟持の際には、各押圧部21a〜21dに形成された2つの孔のうち、一方の孔の下には、電気基板3に形成された切り欠き3a〜3dのうちのいずれか1つが位置し、他方の孔の下には、電気基板3の識別マークが表示される領域A1〜A4のいずれか1つが位置する。
【0029】
コネクタ5は、図1および図15に示されるように、電気基板3を外部の機器と電気的に接続するためのものである。コネクタ5の一端は、電気基板3に接触し、他端は、筐体2に形成されたコネクタ挿入孔21eを経て筐体2の外部に突出している。
【0030】
ねじ4は、蓋21と受け具22を締結するためのものである。図1に示されるように、筐体2の四隅の第5押圧部21eに形成された孔21e1と、第1押圧部21a、第2押圧部21b、第3押圧部21cおよび第4押圧部21dのそれぞれに形成された2つの孔のうち、コントロール装置100の仕様(オート仕様かマニュアル仕様か)に応じて、いずれか一方に挿入される。本実施の形態では、図1に示されるように、図2(a)の電気基板3を用いているので、ねじ4が孔21a2、孔21b1、孔21c2、孔21d2に挿入されているが、図2(b)の電気基板3を用いた場合には、ねじ4が孔21a1、孔21b2、孔21c1、孔21d1に挿入される。したがって、本実施の形態では、筐体2の内部に収容された電気基板3の種類の識別が可能であるとともに、コントロール装置100がオート仕様かマニュアル仕様かという判別もねじ4の挿入位置を確認するだけで可能である。
【0031】
図16は、図17のX−X断面図であり、電気基板3を筐体2の受け具22と蓋21との間に挟み込んだ状態を示している。図16に示されるように、たとえば、ねじ4は、蓋21に形成された孔21d1を貫通し、さらに、電気基板3に形成された切り欠き3dを経て、受け具22に形成された螺合孔22d1に螺合する。また、図16において、蓋21のねじ4が挿入されない孔21c1は、電気基板32上に印刷された識別マークm3を露出させている。
【0032】
このように、電気基板3の周縁には、その電気基板3の種類を判別するための識別マークが、特定の孔(図16では、孔21c1)から露出する位置に設けられている。全てのねじ4を締め付けると、ねじ4のねじ頭が、蓋21の第1押圧部〜第4押圧部を介して、切り欠き3eおよび切り欠き3a、3b、3c、3dの周縁を押圧し、筐体2の内部で電気基板3が位置決めおよび固定される。このように、筐体2に形成された、識別マークを露出させるための孔の周縁と電気基板3の表面とが、識別マークを露出させるための孔と隣り合って形成された孔に挿入されるねじ4の押圧力により密着するので、識別マークを露出させるための孔から筐体2の内部へ異物が侵入するのを効果的に防止できる。また、筐体2の挟持部と電気基板3とが密着しているので、光源などを設けなくても、電気基板3に施された識別マークを視認しやすい。
【0033】
上記構成により、本発明の車載用電気機器内の電気基板3の種類を識別する方法について以下で説明する。
【0034】
図17は、実施の形態1の車載用電気機器100の内部に収容された電気基板3の種類を判別するための方法を説明するための平面図であり、(a)は、図4の電気基板を筐体の内部に収容した場合、(b)は、図7の電気基板を筐体の内部に収容した場合、(c)は、図9の電気基板を筐体の内部に収容した場合を示している。
【0035】
図17(a)〜(c)に示されるコントロール装置100において、筐体2の内部に収容されている電気基板3の種類を特定する際には、まず、筐体2の蓋21に形成された孔21a1、21a2、21b1、21b2、21c1、21c2、21d1、21d2のうち、ねじ4が挿入されていない方の孔、ここでは、孔21a1、孔21b2、孔21c1、孔21d2から露出している電気基板3の表面の色を確認する。たとえば、図17(a)に示されるコントロール装置100では、第1押圧部21aに形成された孔21a1から、プリント配線板32の表面、すなわちみどり色が露出している。また、第2押圧部21bに形成された孔21b2から、プリント配線板32に印刷された白色(図中斜線で示している)の識別マークm2が露出している。また、第3押圧部21cに形成された孔21c1から、プリント配線板32に印刷された白色(図中斜線で示している)の識別マークm3が露出している。さらに、第4押圧部21dに形成された孔21d2から、プリント配線板32の表面、すなわちみどり色が露出している。表1に、図17(a)〜(c)の筐体2に形成された孔21a1、孔21b2、孔21c1、孔21d2から露出した部分の色をまとめる。
【0036】
【表1】

【0037】
すなわち、本実施の形態では、筐体2の内部に収容されている電気基板3の種類は、それぞれの孔から露出しているプリント配線板32のみどり色またはプリント配線板32の表面に表示された識別マークの白色と、孔の位置とを組み合わせた情報によって簡単かつ確実に特定される。
【0038】
以上の実施の形態1の車載用電気機器100によれば、筐体2の蓋21には、複数の孔21a1、21b2、21c1、21d2が、電気基板3の周縁を挟持した部分であって、電気基板3と対向する部分に形成されており、蓋21に形成されたそれぞれの孔から、電気基板3の種類に応じて、電気基板3または電気基板3の表面に表示された識別マークが露出している。これにより、電気基板3を筐体2内で位置決めおよび固定するために、電気基板3に密接して設けられた部分(すなわち、第1押圧部21a、第2押圧部21b、第3押圧部21cおよび第4押圧部21d)を活用して、筐体2内部に収容されている電気基板3の種類を識別することができる。したがって、筐体2の内部に異物が侵入するのを防ぎつつ、筐体2の内部に収容された電気基板3の種類を、簡単かつ確実に筐体2の外部から識別することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態1では、電気基板3の表面に印刷された識別マークを表示させるための孔として、ねじ孔を利用した形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、筐体2の、電気基板3の周縁を挟持した部分であって、電気基板3と対向する部分に形成された孔であれば、ねじ孔でなくても構わない。たとえば、蓋21に識別マークを表示させるための専用の孔を新たに形成してもよい。
【0040】
また、上記実施の形態1では、電気基板3の4ヶ所にそれぞれ形成された切り欠き3a、3b、3c、3dの位置について、図2(a)および(b)に示されるような2種類をあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記各ヶ所で切り欠き3a、3b、3c、3dの位置をそれぞれ変更することにより、この切り欠きの位置変更だけで最大で24=16通りの判別が可能になる。切り欠きの数がさらに増えれば判別可能な数もさらに増えることはいうまでもない。
【0041】
また、上記実施の形態1では、電気基板3に形成されたねじ4を通すための空間が切り欠き3a、3b、3c、3dである形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電気基板3に形成されたねじ4を通すための空間として、電気基板3に貫通孔が形成された形態であってもよい。
【0042】
また、上記実施の形態1では、識別マークを表示させるための孔を蓋21に4箇所設けた形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、識別マークを表示させるための孔の数は問わない。識別マークを表示させるための孔を4箇所以上設けた場合では、上記実施の形態1の場合より多くの電気基板を識別することもできる。
【0043】
また、上記実施の形態1では、識別マークm1〜m4が白い色のみである場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、識別マークの色も問わない。識別マークの色を何種類か設定することにより、上記実施の形態1の場合より多くの電気基板を識別することもできる。とくに、識別マークの色を何種類か設定した場合には、識別マークを表示させるための孔の数が少なくても、多様な電気基板の識別が可能である。
【0044】
また、上記実施の形態1では、識別マークが、シルク印刷によって表示された形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、識別マークを凸版印刷や凹版印刷など他の印刷方法によって印刷する形態であってもよい。
【0045】
また、上記実施の形態1では、識別マークが、プリント配線板32の表面に表示された形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリント配線板32の配線材料(たとえば、銅箔の場合には茶褐色などの識別マークになる)そのものを所定の位置にパターニングして、識別マークとして用いてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態1では、識別マークが、円形状を呈している場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、識別マークは、符号や文字などの記号であってもよい。識別マークの形状を何種類か設定することにより、上記実施の形態1の場合より多くの電気基板を識別することもできる。とくに、識別マークの形状を何種類か設定した場合には、識別マークを表示させるための孔の数が少なくても、多様な電気基板の識別が可能である。あるいは、識別マークを記号にして、さらに、何種類かの色を設定することにより、より多くの種類の電気基板を識別することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 筐体
21 蓋(第1部材)
21a 第1押圧部(挟持部)
21b 第2押圧部(挟持部)
21c 第3押圧部(挟持部)
21d 第4押圧部(挟持部)
21a1、21a2、21b1、21b2、21c1、21c2、21d1、21d2 孔(貫通孔)
22 受け具(第2部材)
22a 第1載置部(挟持部)
22b 第2載置部(挟持部)
22c 第3載置部(挟持部)
22d 第4載置部(挟持部)
3 電気基板
3a、3b、3c、3d 切り欠き(複数の空間)
31 電子部品
4 ねじ
m1、m2、m3、m4 識別マーク(印)
100 コントロール装置(車載用電気機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される電気基板と、該電気基板を収容する筐体とを備え、前記筐体は、前記電気基板をその厚み方向に挟み込むようにして収容する第1部材および第2部材を有し、前記第1部材および前記第2部材は、それぞれ、前記電気基板の周縁に局所的に密着しながら当該電気基板を挟持するための複数の挟持部を有し、前記第1部材の挟持部に、前記電気基板の特定部位を外部に露出させるための貫通孔が形成され、前記電気基板の周縁には、その電気基板の種類を判別するための印が前記貫通孔のうちの特定の貫通孔から露出する位置に設けられている車載用電気機器からなる車載用電気機器群であって、
各車載用電気機器内に収容されている前記電気基板の種類が、
各車載用電気機器の前記第1部材の挟持部に形成されているそれぞれの貫通孔から露出した前記電気基板の色または前記電気基板の表面に表示された印と、
前記孔の位置とを組み合わせた情報によって識別可能であることを特徴とする車載用電気機器群。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−116478(P2012−116478A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285355(P2011−285355)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2007−160538(P2007−160538)の分割
【原出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】