説明

車載用電波式レーダ装置及びその製造方法

【課題】外筐体に設けられる外部接続コネクタと内部回路とを接続する伝送線を磁気シールドしつつ、外部接続コネクタを内部回路の位置に規制されることなく、自由に設置できるようにする。
【解決手段】外筐体60は、外筐体本体61と、その内周面に施されているシールド層62とを有して構成されている。内部回路からの伝送線73は、外筐体60のシールド層62の外周側を、このシールド層62に沿って所望の位置迄伸び、そこに外部接続コネクタ70が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーダ装置やカーナビゲーション装置等、車両に搭載され、外部との間で信号を受送信する車載用信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯域の電波を用いた電波式レーダ装置は、雨、霧等が存在する悪天候下でも電波ビームの減衰量が小さく、車載用として必要とする最大検知距離を確保できるため、前方車との車間距離や相対速度を計測するセンサとして商品化されつつある。このような車載用レーダ装置は、外部へ電磁ノイズが漏れるのを防ぐため、外部からの電磁ノイズの侵入を防ぐために、各種磁気シールドを施すことが考えられている。
【0003】
例えば、特開平7−66746号公報に記載の装置では、外筐体の内面と内部回路との間に、導電材で形成された直筒を配し、その中に信号線等を設けることで、内部回路と外筐体内面との間の空間内の遮断周波数を高めると共に、信号線等から発生する電磁ノイズを遮蔽するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、仮に、信号線が外筐体に設けられた外部接続コネクタと内部回路とを接続するものである場合、導電材で形成された直筒でこの信号線を覆っているため、外筐体上であって内部回路から最短距離の位置にコネクタを設ける必要があり、コネクタの設置に位置的な制約を受けてしまうという問題点がある。このような制約は、サイズや配置に関して、極めて厳しい制約を受ける車載用装置にとって、好ましいことではない。例えば、車両のある凹部に車載用装置を設置しようとするときに、車載用装置のある箇所に外部接続コネクタを設けると、このコネクタに外部接続ケーブルを接続できないという問題や、この外部接続ケーブルが仮に接続できたとしても、このケーブルが邪魔になって凹部に車載用装置を設置できないという問題が起こり得る。また、仮に、適当な長さの筒を適宜屈曲させて、これを磁気シールド用の直筒の換わりに使用すれば、コネクタを自由な位置に設けられることになるが、この場合には、外筐体内に、比較的長く且つ屈曲した筒の配置スペースを確保する必要が生じて、装置全体の大型化を招いてしまう。
【0005】
また、以上の従来技術では、直筒の内部回路側の端部開口から、信号線から発した電磁ノイズが漏れ、十分な磁気シールを行うことができないという問題点もある。
【0006】
そこで、本出願に係る発明は、このような従来の問題点に着目し、外筐体に設けられる外部接続部と内部回路とを接続する伝送線を磁気シールドしつつ、装置を大型化させることなく、外部接続部を自由な位置に設置することができる車載用信号処理装置を提供することを第1の目的とする。
【0007】
さらに、本出願に係る発明は、十分な磁気シールドを行うことができる車載用信号処理装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための第1の目的を達成するための車載用信号処理装置は、
車両に搭載され、信号及び/又は電力を含む伝送対象を外部との間で受信及び/又は送信する車載用信号処理装置において、
前記伝送対象が入力する、及び/又は前記伝送対象を出力する内部回路と、
前記内部回路を覆い、内周側に導電性を有するシールド層が施されている外筐体と、
前記外部との間で前記伝送対象を送受信するため、前記外筐体に取り付けられ且つ該外筐体の外側に臨んでいる外部接続部と、
前記内部回路と前記外部接続部とを電気的に接続する伝送線と、
を備え、
前記伝送線は、前記外部接続部を基点として、前記外筐体の外周面と前記シールド層との間を、該外筐体の内周面が広がっている方向又は該外筐体の外周面が広がっている方向に伸びてから、該シールド層を貫通して、前記内部回路に接続されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記第2の目的を達成するための車載用信号処理装置は、
車両に搭載され、信号及び/又は電力を含む伝送対象を外部との間で受信及び/又は送信する車載用信号処理装置において、
前記伝送対象が入力する、及び/又は前記伝送対象を出力する内部回路を有する内部回路基板と、
前記内部回路基板を支える基板支持台と、
前記内部回路基板及び前記基板支持台を覆い、内周側に導電性を有するシールド層が施されている外筐体と、
前記外部との間で前記伝送対象を送受信するため、前記シールド層を外周側から内周側へ貫通して、前記内部回路と電気的に接続されている伝送線と、
を備え、
前記基板支持台は、前記伝送線による前記シールド層の貫通位置と前記内部回路基板との間の該伝送線の外周を覆い、且つ導電材で形成された筒状のシールド部を有し、
前記内部回路基板は、前記筒状のシールド部に接触して、前記筒状のシールド部の端部開口を塞ぎ、
前記内部回路基板は、導電層と前記伝送線を通ってきたノイズを除去するノイズ除去手段とを有し、該ノイズ除去手段は、前記シールド層からの前記伝送線が前記導電層を貫通する直前又は直後の位置に設けられている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本願に係る発明によれば、外部接続部から内部回路までの信号線を、外筐体のシールド層の外周側に沿わせて、目的の位置まで導いているので、外部接続部は内部回路の位置に規制されることなく、自由な位置に設けることができる。
【0011】
また、本願に係る他の発明によれば、外筐体のシールド層から内部回路までの間の伝送線を、内部回路が設けられている基板の導電層と外部筐体のシールド層と基板支持台のシールド部で覆うと共に、基板の導電層の直前又は直後にノイズ除去手段を設けたので、この伝送線にノイズがのっていても、このノイズにより内部回路を含めた各種回路への影響を効率よく且つ確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る車載用信号処理装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
本実施形態の車載用信号処理装置は、図8に示すように、車載用レーダ装置1で、自車両2の前端部に取り付けて、先行車等の物体5までの相対距離や相対速度や方位角度等を計測するものである。
【0014】
この車載用レーダ装置1は、図1に示すように、送信アンテナ11と、二つの受信アンテナ12a,12bと、各アンテナ11,12a,12bの電波放射側を覆うレドーム65と、送信アンテナ11に送信信号を与えると共に受信アンテナ12a,12bからの受信信号を受け付ける高周波回路21と、受信信号に基づいて各種演算処理を行う信号処理回路41と、高周波回路21と信号処理回路41との間のインタフェース回路21と、角速度センサ55と、伝送線中のノイズを除去するフィルタ回路(ノイズ除去手段)54と、これらの各回路等に電力を供給する電源回路51と、各回路等を覆う外筐体60と、外部接続コネクタ(外部接続部)70と、を備えている。
【0015】
高周波回路21は、信号処理回路41からの互いに異なる周波数f1,f2の2種類の変調信号に基づいて、2種類の送信信号f1,f2を時差を付けて出力する発信器25と、この送信信号f1,f2を増幅して送信アンテナ11等に送る送信側アンプ26a,26bと、各受信アンテナ12a,12bからの受信信号を増幅する受信側アンプ27a,27bと、各受信側アンプ27a,27bの出力に送信側アンプ26bの出力をミキシングするミキサ28a,28bと、各ミキサ28a,28bからの信号の和信号及び差信号を生成する和・差信号生成回路29と、を有している。
【0016】
信号処理回路41は、高周波回路21からインタフェース回路31を介して入力した和信号(sum)及び差信号(diff)、さらに角速度センサ48からの角速度信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するA/D変換器44と、ディジタル信号に変換された和信号及び差信号等にFFT(Fast Fourier Transform)処理を施すFFT回路45と、FFT回路45からの信号に基づいて物体までの距離や相対速度や方位角度を求める計測演算部46と、高周波回路21に送る変調信号f1,f2を生成する変調器47と、を有している。
【0017】
ここで、本実施形態における車載用レーダ装置による距離計測等の原理について簡単に説明する。
【0018】
発信器25は、変調器47からの変調信号に基づいて、二つの周波数f1,f2の信号を時間的に切換ながら、送信側アンプ26aを介して送信アンテナ11に送る。送信アンテナ11は、発信器25からの2種類の送信信号f1,f2に対応した2種類の高周波電波信号を出力する。自車両の前方物体5からの反射波は、各受信アンテナ12a,12bで受信され、各受信アンテナ12a,12bからの受信信号がミキサ28a,28bを介して和・差信号生成回路29に入力する。この和・差信号生成回路29は、二つの受信信号の和信号(sum)及び差信号(diff)を求めて、これをインタフェース回路31を介して信号処理回路41へ送る。和信号(sum)及び差信号(diff)は、信号処理回路41のA/D変換器44でディジタル信号に変換された後、FFT回路45で、周波数軸上で解析され、図9の下段に示すような周波数スペクトラムに変換される。計測演算部46では、例えば、和信号の周波数スペクトラムで、信号強度が最大となる位置の周波数から物体(ターゲット)の相対速度を求める。さらに、和信号の周波数スペクトラムで、送信周波数のそれぞれに対応するピーク信号を検出して、図9の上段に示すように、そのピーク信号の位相差から相対距離を求める。また、和信号と差信号との比率から、物体の方位角度を求める。
【0019】
計測演算部46で求められた物体の相対距離等は、フィルタ回路54、伝送線73を構成する信号線73b、外部接続コネクタ70及び外部接続ケーブル85等を介して、車両制御装置や警報発生装置等の外部装置86に送られる。また、これらの外部装置86からは、動作開始指令や自車両速度等が、外部接続ケーブル85、外部接続コネクタ70、伝送線73を構成する信号線73b、フィルタ回路54等を介して、計測演算部46に入力する。また、車両電源87からの電力は、外部接続ケーブル85、外部接続コネクタ70、伝送線73を構成する電源線73a、フィルタ回路54を介して、電源回路51に入力する。
【0020】
外筐体60は、図2及び図3に示すように、ほぼ直方体形状で、一つの面に相当する箇所が開口69しており、そこから対抗面の方向に凹み、この凹んだ空間が収納室63を形成している。この外筐体60は、絶縁性を有する樹脂で形成されている外筐体本体61と、その内周面の全体に施されている導電性のシールド層62と、を有して構成されている。この外筐体60の外周壁の外周面には、外部接続コネクタ70が設けられ、外筐体60の底壁64の内周面には、内部回路接続コネクタ75が設けられ、外筐体60の底壁64には、呼吸弁吸気90が設けられている。外部接続コネクタ70のコネクタピン71と内部回路接続コネクタ75のコネクタピン76とは、伝送線73で接続されている。この伝送線73は、外部接続コネクタ70のコネクタピン71から、外筐体本体61の外周壁内を通り、さらに、外筐体本体61の底壁64を通って、内部回路接続コネクタ75のコネクタピン76に接続されている。なお、ここでは、外筐体本体61を絶縁性の樹脂で形成したが、これは、主として、伝送線73とシールド層62との間の絶縁を確保するためであるから、絶縁性を有する被覆材で伝送線73を覆う場合には、外筐体本体61は導線材で形成してもよい。したがって、外筐体60の全体を導電性を有する金属で形成し、その中に、被覆材で覆われた伝送線73を通すようにしてもよい。また、伝送線73は、外筐体本体61の外周面に沿って設けても、外筐体本体61の内周面に沿って設けてもよく、要は、施工性のよいルートに設けるとよい。
【0021】
呼吸弁90は、図7に示すように、貫通孔が形成されている弁本体91と、貫通孔内への塵や埃の侵入を抑えるために複数の微小通気孔が形成されている弁蓋92と、貫通孔の中間辺りに設けられている防水呼吸膜93と、を有して構成されている。防水呼吸膜93は、水分子よりも微細な多数の通気孔が形成されている膜、つまり空気を通すが水を通さない膜である。このため、外筐体60の内外圧力差が生じることはない。
【0022】
以上で説明した外筐体60の収納室63内に、図2〜図4に示すように、インタフェース基板30、信号処理回路基板40、電源回路基板50、これらの基板30,40,50を支える基板支持台80が収納されている。各基板30,40,50は、いずれも、導電材で形成されたGND電位層32,42,52と、このGND電位層32,42,52を両側から挟み込む二枚の絶縁層33a,33b,43a,43b,53a,53bと、絶縁層絶縁層33a,33b,43a,43b,53a,53b上に形成されている各種回路と、を有して構成されている。基板支持台80は、導電性を有する金属で形成され、外筐体60の底壁64の内周面上に置かれる支持プレート部81と、支持プレート部81のほぼ四隅に形成されている基板連結ロッド82,82,…と、支持プレート部81のほぼ中央に形成されている筒状のシールド部83と、を有している。支持プレート部81のほぼ中央は貫通しており、この貫通孔の内縁に沿って筒状のシールド部83が形成されている。各基板30,40,50には、基板連結ロッド82,82,…が貫通しており、基板相互間にスペーサ85が配されている。
【0023】
インタフェース基板30の絶縁層33a,33bには、前述したインタフェース回路31が形成され、信号処理回路基板40の絶縁層43a,43bには、信号処理回路41が形成され、電源回路基板50の絶縁層53a,53bには、電源回路51及びフィルタ回路54が形成されていと共に角速度センサ55が設けられている。フィルタ回路54は、図5に示すように、電源回路基板50の二枚の絶縁層53a,53bのうち、外筐体60の底壁64に対して遠い側の絶縁層53a上に形成されている。このフィルタ回路54からは、この絶縁層53a及びGND層52、さらにもう一方の絶縁層53bを貫通した伝送ピン78が設けられている。
【0024】
電源回路基板50、信号処理回路基板40及びインタフェース基板30が取り付けられた基板支持台80は、前述したように、外筐体60の収納室63内に収められる。この過程で、図4及び図5に示すように、外筐体60の内部回路接続コネクタ75のコネクタピン76に、電源回路基板50の伝送ピン78が、中継コネクタ77を介して接続される。この結果、外部接続コネクタ70のコネクタピン71と電源回路基板50の伝送ピン78とは、伝送線73、内部回路接続コネクタ75のコネクタピン76及び中継コネクタ77を介して接続される。このように、本実施形態では、回路基板50にコネクタとしての伝送ピン78を設け、外筐体60に内部回路接続コネクタ75を設けたので、回路基板50を外筐体60内に収める際に、簡単に、外筐体60を通ってきた伝送線73と回路基板50とを電気的に接続することができる。さらに、回路基板50にコネクタとしての伝送ピン78を設けたので、この回路基板50を外筐体60内に収納せずとも、この回路基板50を含む各回路の動作試験を間単に行うことができる。
【0025】
また、本実施形態では、外筐体60のシールド層62と電源回路基板50のGND層52との間に位置する伝送線、つまり、内部回路接続コネクタ75のコネクタピン76、中継コネクタ77、及び電源回路基板50の伝送ピン78の先端部は、その外周側が基板支持台80の筒状のシールド部83に覆われ、両端側がそれぞれ外筐体60のシールド層62、電源回路基板50のGND層52に覆われる。また、外部接続コネクタ70と内部回路接続コネクタ75との間の伝送線73は、前述したように、外筐体60のシールド層62の外周側に位置している。つまり、本実施形態では、外部接続コネクタ70と電源回路基板50とを接続する伝送線73,76,77,78は、全ての部分で、外筐体60のシールド層62や基板支持台80のシールド部83等により、各種回路との間を電磁気的に仕切られる。さらに、内部回路接続コネクタ75から電源回路基板50に伸びている伝送線76,77,78は、電源回路基板50のGND層52を貫通した直後に設けられているフィルタ回路54に接続される。したがって、外部接続コネクタ70から電源回路基板50までの間の伝送線から電磁ノイズが発生したとしても、この電磁ノイズは、外筐体のシールド層62や筒状のシールド部83等の導電体で遮蔽される上に、電源回路基板50のGND層52を伝送線が出た直後にフィルタ回路54が設けられているので、各種回路51,41,31に対する電磁ノイズの影響を抑えることができる。なお、ここでは、電源回路基板50のGND層52とシールド部83とは、両者の間に絶縁層53bが介在しているため、導電材相互間に隙間が存在するものの、この隙間、具体的には、絶縁層53bの厚さ分の隙間は、伝送線を通っている信号の波長の半分未満であるため、この隙間から電磁ノイズが漏れ出ることはない。また、本実施形態では、伝送線が電源回路基板50のGND層52を貫通した直後の位置にフィルタ回路54を設けたが、GND層52を貫通する直前の位置にフィルタ回路54を設けても同様の効果を得ることができる。ここで、GND層52を貫通した直後の位置、または貫通する直前の位置とは、GND層52とフィルタ回路54との間に、他の処理回路を存在させることなく、GND層52からの距離をできる限り短くした位置のことである。
【0026】
また、本実施形態では、外筐体60のシールド層62の外周側を這わせる伝送線73の長さやそのルートを調整することで、外筐体60の任意の位置に外部接続コネクタ70を設けることができる。しかも、伝送線73は、シールド層62の外周側の外筐体本体61内を通っているので、外筐体60の収納室63がこの伝送線73により狭められることがなく、外筐体内60の収納室63を有効利用することができる。
【0027】
外筐体60の開口69は、図7に示すように、アンテナ支持台23により塞がれる。このアンテナ支持台23は、収納室が形成されている支持台本体24aと、支持台本体24aの開口を塞ぐ蓋24bとを有して構成されている。支持台本体24a及び蓋24bは、いずれも導電性を有する金属で形成されている。支持台本体24aの収納室内には、高周波回路基板20が設けられている。この高周波回路基板20は、絶縁層22と、この絶縁層22上に形成されている前述の高周波回路21とを有している。この高周波回路21とインタフェース回路30や電源回路50等の他の回路とは、高周波回路21から伸びている貫通式コネクタピン79で電気的に接続されている。支持台本体24aの収納室の底壁に相当する部分の外周面には、送受信アンテナ11,12a,12bが設けられている。この送受信アンテナ11,12a,12bは、レドーム65により覆われる。このレドーム65は、Oリング68を介して、固定用プレート66及びネジ67により外筐体60に連結される。なお、このレドーム65は、電波透過時の電波減衰率が極めて小さい樹脂で形成されている。また、ここでは、アンテナ支持台23の全ての導電性を有する金属で形成したが、例えば、絶縁性を有する樹脂で基本的な形状を形成し、その外周を導電性を有する金属等で覆うようにしてもよい。
【0028】
図4に示すように、導電性を有するアンテナ支持台23、インタフェース回路基板30のGND層32、信号処理回路基板40のGND層42、電源回路基板50のGND層52は、いずれも、導電性を有する外筐体60のシールド層62と、電気的に接続されている。具体的には、アンテナ支持台23は、図7に示すように、外筐体60の開口69の縁部のシールド層62と直接接することで、シールド層62と電気的に接続されている。また、インタフェース回路基板30のGND層32、信号処理回路基板40のGND層42、電源回路基板50のGND層52は、図4及び図6に示すように、基板支持台80の基板連結ロッド82に接し、この基板連結ロッド82が形成されている基板支持台80の支持プレート部81が外筐体60のシールド層62と接触することで、このシールド層62と電気的に接続されている。したがって、各回路基板30,40,50のGND層32,42,52は、いずれも同電位(GND電位)に成る。
【0029】
高周波の電波を発信する送信アンテナ11及び高周波の電波を受信する受信アンテナ12a,12bは、導電性を有するアンテナ支持台23で、他の回路21,31,41,51と電磁気的に遮断されているため、各回路に対して、これらのアンテナによる磁気的な影響を回避することができる。また、高周波回路21は、前述したように、導電性を有するアンテナ支持台23に覆われ、インタフェース回路基板30のGND層32とアンテナ支持台23との間の回路は、インタフェース回路基板30のGND層32とアンテナ支持台23と外筐体60のシールド層62とにより覆われ、インタフェース回路基板30のGND層32と信号処理回路基板40のGND層42との間の回路は、インタフェース回路基板30のGND層32と信号処理回路基板40のGND層42と外筐体60のシールド層62とにより覆われ、信号処理回路基板40のGND層42と電源回路基板50のGND層52との間の回路は、信号処理回路基板40のGND層42と電源回路基板50のGND層52と外筐体60のシールド層62とにより覆われているので、回路相互間での磁気的な影響を極めて効率よく且つ効果的に抑えることができる。
【0030】
なお、以上の実施形態では、信号線と電源線を含めたものを伝送線として扱って、これを磁気シールドしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、信号線のみ、また電源線のみを本実施形態と同様に、磁気シールドしてもよい。
【0031】
また、以上の実施形態では、外部接続部が外部接続コネクタである場合の例であるが、この外部接続コネクタを設けず、外部接続ケーブルを外部接続部として直接外筐体に設けた場合にも、このケーブルからの伝送線を本実施形態と同様に、磁気シールドするとよい。
【0032】
また、以上の実施形態は、本発明を車載用レーダ装置に適用したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、信号や電力等の伝送対象を扱う車載装置であれば、いかなるものに、本発明を適用してもよく、例えば、カーナビゲーション装置、ETC(Electronic Toll Collection)装置等に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の回路ブロック図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の分解断面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の導電材相互の接続を示す説明図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における電源回路基板と伝送線との接続を示す説明図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における電源回路基板及び基板支持台を外筐体内に収納した際の断面図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の断面図(内部の回路を省略)である。
【図8】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置の取付け位置を示す説明図である。
【図9】本発明に係る一実施形態における車載用レーダ装置による距離計測及び速度計測の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1…車載用レーダ装置、2…自車両、5…物体、11…送信アンテナ、12a,12b…受信アンテナ、20…高周波回路基板、21…高周波回路、22,33a,33b,43a,43b,53a,53b…絶縁層、30…インタフェース回路基板、31…インタフェース回路、32,42,52…GND層(基板の導電層)、40…信号処理回路基板、41…信号処理回路、50…電源回路基板(内部回路基板)、51…電源回路、54…フィルタ回路(ノイズ除去手段)、60…外筐体、61…外筐体本体、62…シールド層、70…外部接続コネクタ(外部接続部)、73…伝送線、75…内部回路コネクタ、77…中継コネクタ、80…基板支持台、83…シールド部、85…外部接続ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、信号及び/又は電力を含む伝送対象を外部との間で受信及び/又は送信する車載用信号処理装置において、
前記伝送対象が入力する、及び/又は前記伝送対象を出力する内部回路と、
前記内部回路を覆い、内周側に導電性を有するシールド層が施されている外筐体と、
前記外部との間で前記伝送対象を送受信するため、前記外筐体に取り付けられ且つ該外筐体の外側に臨んでいる外部接続部と、
前記内部回路と前記外部接続部とを電気的に接続する伝送線と、
を備え、
前記伝送線は、前記外部接続部を基点として、前記外筐体の外周面と前記シールド層との間を、該外筐体の内周面が広がっている方向又は該外筐体の外周面が広がっている方向に伸びてから、該シールド層を貫通して、前記内部回路に接続されている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用信号処理装置において、
前記内部回路を有する内部回路基板と、
前記外筐体内に配され、前記内部回路基板を支える基板支持台と、
を備え、
前記基板支持台は、前記伝送線による前記シールド層の貫通位置と前記内部回路基板との間の該伝送線の外周を覆い、且つ導電材で形成された筒状のシールド部を有し、
前記内部回路基板は、前記筒状のシールド部に接触して、前記筒状のシールド部の端部開口を塞ぎ、
前記内部回路基板は、導電層と前記伝送線を通ってきたノイズを除去するノイズ除去手段とを有し、該ノイズ除去手段は、前記シールド層からの前記伝送線が前記導電層を貫通する直前又は直後の位置に設けられている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項3】
車両に搭載され、信号及び/又は電力を含む伝送対象を外部との間で受信及び/又は送信する車載用信号処理装置において、
前記伝送対象が入力する、及び/又は前記伝送対象を出力する内部回路を有する内部回路基板と、
前記内部回路基板を支える基板支持台と、
前記内部回路基板及び前記基板支持台を覆い、内周側に導電性を有するシールド層が施されている外筐体と、
前記外部との間で前記伝送対象を送受信するため、前記シールド層を外周側から内周側へ貫通して、前記内部回路と電気的に接続されている伝送線と、
を備え、
前記基板支持台は、前記伝送線による前記シールド層の貫通位置と前記内部回路基板との間の該伝送線の外周を覆い、且つ導電材で形成された筒状のシールド部を有し、
前記内部回路基板は、前記筒状のシールド部に接触して、前記筒状のシールド部の端部開口を塞ぎ、
前記内部回路基板は、導電層と前記伝送線を通ってきたノイズを除去するノイズ除去手段とを有し、該ノイズ除去手段は、前記シールド層からの前記伝送線が前記導電層を貫通する直前又は直後の位置に設けられている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項4】
請求項2及び3のいずれか一項に記載の車載用信号処理装置において、
前記内部回路基板の前記導電層は、前記内部回路のグランド層を成し、前記外筐体の前記シールド層と電気的に接続されている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の車載用信号処理装置において、
前記内部回路基板の前記導電層と、前記基板支持台の前記シールド部とは、隙間なく接触しているか、又は、隙間があっても、使用する信号の波長の半分未満の長さである、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の車載用信号処理装置において、
前記筒状のシールド部内には、伝送線相互を接続するコネクタが少なくとも1つ設けられている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載の車載用信号処理装置において、
前記外筐体には、外周側から内周側へ貫通した貫通部分が形成され、
塵や埃の浸入を阻む大きさの多数の孔が形成されている塵浸入抑止手段と、水分子の浸入を阻む大きさの多数の微小孔が形成されている水浸入抑止手段と、を備えた呼吸弁が、前記貫通部分に設けられている、
ことを特徴とする車載用信号処理装置。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項に記載の車載用信号処理装置と、
電波を発する送信アンテナと、
電波を受信する受信アンテナと、
前記送信アンテナに送信信号を送り、前記受信アンテナから受信信号を受信する高周波回路と、
前記高周波回路との間で信号又は電力を送信及び/又は受信する高周波関連回路を有する高周波関連回路基板と、
前記高周波回路を覆い、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナを外周面に搭載し、前記高周波関連回路基板と該高周波回路と該送信アンテナ及び該受信アンテナとをそれぞれ電磁気的に遮蔽すべく、導電性材を有して形成されているアンテナ支持台と、
を備えていることを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車載用レーダ装置において、
前記高周波関連回路基板は、前記内部回路基板としての回路基板と他の回路基板とを有し、
前記他の回路基板は、グランド層としての導電層を有し、
前記内部回路基板の導電層と前記他の回路基板の導電層との間に存在する回路は、該内部回路基板の導電層と該他の回路の導電層と前記外筐体の前記シールド層とにより覆われ、
前記他の回路基板の導電層と前記アンテナ支持台との間に存在する回路は、該他の回路基板の導電層と該アンテナ支持台と前記外筐体の前記シールド層とにより覆われ、
前記アンテナ支持台の前記導電性材と前記他の回路基板の導電層と前記内部回路基板の導電層とは、電気的に接続されている、
ことを特徴とする車載用レーダ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波信号を送受信する送受信部と、
前記送受信部が送受信する電波信号を処理する信号処理部と、
内部に前記信号処理部を収容し、内周面に導電性シールド層を有する絶縁性の外筐体と、
前記送受信部を保持し、前記外筐体の開口部を塞ぐように配置され、前記導電性シールド層と電気的に接続される導電性部材と、
を有する車載用電波式レーダ装置において、
前記送受信部のグランド及び前記信号処理部のグランドは、少なくとも前記導電性シールド層又は前記導電性部材に電気的に接続されている、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用電波式レーダ装置において、
前記信号処理手段は、複数の回路基板が、共通の基板連結台によって積み重ねられて構成されている、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載用電波式レーダ装置において、
前記基板連結台は、導電性を有し、
前記複数の回路基板は、前記基板連結台を介して、グランドが互いに接続されている、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載用電波式レーダ装置において、
前記絶縁性の外筐体は、絶縁性の部材を導電性の部材で覆うことにより構成されている、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車載用電波式レーダ装置において、
前記絶縁性の筐体は、外周面に、信号及び/又は電力を含む伝送対象をレーダ装置外部と入出力する外部接続コネクタを有する、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置。
【請求項6】
電波信号を送受信する送受信部を導電性部材に取り付け、
前記送受信部が送受信する電波信号を処理する信号処理部を、内周面に導電性シールド層を有する絶縁性の外筐体の内部に収容し、
前記導電性部材を、前記外筐体の開口部を塞ぐように配置するとともに、前記導電性シールド層と電気的に接続し、
前記送受信部のグランド及び前記信号処理部のグランドを、少なくとも前記導電性シールド層又は前記導電性部材に電気的に接続する、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置の製造方法
【請求項7】
請求項6に記載の車載用電波式レーダ装置の製造方法において、
前記信号処理手段を、複数の回路基板を基板連結台によって積み重ねて構成する、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置の製造方法
【請求項8】
請求項6に記載の車載用電波式レーダ装置の製造方法において、
前記信号処理手段を、複数の回路基板を導電性を有する基板連結台によって積み重ねて構成し、
前記複数の回路基板のグランドを互いに接続する、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置の製造方法
【請求項9】
請求項6に記載の車載用電波式レーダ装置の製造方法において、
前記絶縁性の外筐体を、絶縁性の部材を導電性の部材で覆うことによって構成する、
ことを特徴とする車載用電波式レーダ装置の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53159(P2006−53159A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301589(P2005−301589)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【分割の表示】特願2001−353272(P2001−353272)の分割
【原出願日】平成13年11月19日(2001.11.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】